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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169701
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】止水装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20241128BHJP
   E06B 7/22 20060101ALI20241128BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E06B7/22 F
E04H9/14 Z
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024167156
(22)【出願日】2024-09-26
(62)【分割の表示】P 2020116948の分割
【原出願日】2020-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100095212
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 武
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 誠
(57)【要約】
【課題】左右の側面と底面とを有する開口部の底面が下枠部材により形成されていても、水の通過を防止できるようになる止水装置を提供すること。
【解決手段】本止水装置20は、左右の側面と底面とを有する開口部を水が通過することを防止するための止水装置であって、左右の設置枠21と、これらの設置枠21の間に設置される止水パネル22とを含んで構成されており、出入口4等の開口部の底面は下枠部材8により形成されていて、左右の設置枠21は、この下枠部材8の上面に立設されるものとなっている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の側面と底面とを有する開口部を水が通過することを防止するための止水装置であって、
前記底面は下枠部材により形成され、この下枠部材の上面に立設される左右の設置枠と、これらの設置枠の間に設置される止水パネルとを含んで構成されていることを特徴とする止水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の止水装置において、前記左右の設置枠の下面には、前記下枠部材の上面に接触する下面シール部材が設けられているとともに、前記止水パネルの下面には、この止水パネルの下面と前記下枠部材の上面との間で圧縮される下部シール部材が設けられていることを特徴とする止水装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の止水装置において、前記左右の側面は左右の側枠部材により形成され、これらの側枠部材に沿って前記左右の設置枠が配置されることを特徴とする止水装置。
【請求項4】
請求項3に記載の止水装置において、前記左右の設置枠が前記左右の側枠部材に対して着脱可能となっていることを特徴とする止水装置。
【請求項5】
請求項4に記載の止水装置において、前記左右の設置枠には、前記左右の側枠部材に当たる外面シール部材が設けられていることを特徴とする止水装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の止水装置において、前記止水パネルには、前記左右の設置枠を前記左右の側枠部材に押圧するための押圧手段が設けられ、この押圧手段による押圧力によって前記左右の設置枠が前記左右の側枠部材に押圧されることにより、これらの設置枠が前記左右の側枠部材に取り付けられ、前記押圧力の解除により前記左右の設置枠は前記左右の側枠部材から取り外し可能となっていることを特徴とする止水装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の止水装置において、前記左右の設置枠に対して前記止水パネルが分離可能となっていることを特徴とする止水装置。
【請求項8】
請求項7に記載の止水装置において、前記止水パネルには、前記左右の設置枠を構成している部材により圧縮される側部シール部材が設けられていることを特徴とする止水装置。
【請求項9】
請求項8に記載の止水装置において、前記左右の設置枠を構成している前記部材は、貫通している前記開口部の貫通方向に前記止水パネルと対面する対面部材になっていることを特徴とする止水装置。
【請求項10】
請求項7~9のいずれかに記載の止水装置において、前記左右の設置枠には、前記止水パネルを押し下げるための押し下げ手段が設けられていることを特徴とする止水装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の止水装置において、前記開口部は出入口であることを特徴とする止水装置。
【請求項12】
請求項11に記載の止水装置において、前記出入口は扉により開閉されるものとなっており、前記左右の設置枠が立設される前記下枠部材の上面は、この下枠部材に前記扉の全閉位置を規定するために設けられている戸当り部の上面となっていることを特徴とする止水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大雨時や洪水時等において、左右の側面と底面とを有する開口部を水が通過することを防止するための止水装置に係り、例えば、開き戸装置の扉により開閉されるドア枠の内側の出入口による開口部や、通路、出入口等となっている開口部に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、左右の側面と底面とを有する開口部を水が通過することを防止するための止水装置が示されている。この止水装置は、左右の側面に取り付けられた左右の設置枠と、これらの設置枠の間に、これらの設置枠に対して分離可能に設置される止水パネルとを含んで構成されたものとなっており、左右の設置枠は、左右の側面にアンカー部材によって固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-78086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
止水装置は、大雨や洪水等の水災害の発生が予想されるときに使用されるものであり、このため、通常時の開口部は、充分の通行量等を確保できるようにするために、左右の側面に左右の設置枠が配置されていない大きな開口幅を有するものとなっていることが望まれる。
【0005】
本発明の目的は、通常時の開口部を、左右の側面に左右の設置枠が配置されていない大きな開口幅を有するものにできる止水装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る止水装置は、左右の側面と底面とを有する開口部を水が通過することを防止するために、前記左右の側面に取り付けられた左右の設置枠と、これらの設置枠の間に、これらの設置枠に対して分離可能に設置される止水パネルとを含んで構成される止水装置において、前記左右の設置枠が前記左右の側面に対して着脱可能となっていることを特徴とするものである。
【0007】
このように本発明に係る止水装置では、左右の設置枠が左右の側面に対して着脱可能となっているため、大雨や洪水等の水災害の発生が予想されるときには、左右の設置枠を左右の側面に配置して、これらの設置枠の間に止水パネルを設置することにより、開口部を水が通過することを阻止でき、また、水災害が発生するおそれがなくなったり、水災害が解消したときには、止水パネルを左右の設置枠から分離した後に、左右の設置枠を左右の側面から取り外すことができ、これにより、通常時の開口部を、左右の側面に左右の設置枠が配置されていない大きな開口幅を有するものに復帰させることができる。
【0008】
以上の本発明に係る止水装置において、左右の設置枠を左右の側面に対して着脱可能とする構成は、任意の形式や構造のものでよく、その一例の構成は、左右の設置枠を左右の側面にボルト等の締結具により取り外し可能に取り付けることであり、また、他の例の構成は、止水パネルに、左右の設置枠を左右の側面に押圧するための押圧手段を設け、この押圧手段による押圧力によって左右の設置枠を左右の側面に押圧することにより、これらの設置枠を左右の側面に取り付け可能とするとともに、押圧手段の押圧力の解除により、左右の設置枠を左右の側面から取り外し可能とするものである。
【0009】
また、これらのうち、左右の設置枠を左右の側面に対して着脱可能とする構成を、止水パネルに設けられた後者の押圧手段によるものとする場合には、この押圧手段は、左右の設置枠について共通化されたもの、すなわち、左右の設置枠を同時に左右の側面に押圧するものでもよく、あるいは、左右の設置枠ごとに止水パネルに設けられたものでもよい。
【0010】
これらのうち、押圧手段を、左右の設置枠ごとに止水パネルに設けられたものとすると、左右の設置枠を左右の側面に押圧手段の押圧力によって押圧する作業を行うと、それぞれの押圧手段の押圧力に対する反作用の反力により、止水パネルを左右の設置枠に対して固定した状態にすることができ、また、押圧力を解除すると、反作用の反力も消滅するため、止水パネルを左右の設置枠から分離することもできる。
【0011】
また、左右の設置枠を左右の側面に押圧するために、左右の設置枠ごとに止水パネルに設ける押圧手段は、任意の形式や構造のものでよく、その一例の押圧手段は、シリンダとピストンロッド等のように伸縮自在の伸縮棒手段によるものであり、他の例の押圧手段は、止水パネルに配置された雌ねじ部材と、この雌ねじ部材に設置枠に向かって螺入され、回転操作されることにより前進して設置枠を押圧する雄ねじ部材とを含んで構成されたねじ式のものである。
【0012】
これらのうち、左右の設置枠を左右の側面に押圧するために、左右の設置枠ごとに止水パネルに設ける押圧手段を、後者の雌ねじ部材と雄ねじ部材を含んで構成されたねじ式のものにすると、全体の構造を簡単化できるとともに、左右の設置枠を左右の側面に押圧するための作業を容易に実施できるようになる。
【0013】
また、左右の設置枠を左右の側面に押圧するために、左右の設置枠ごとに止水パネルに設ける押圧手段を、止水パネルに設置枠に向かってスライド自在に配置されたスライド部材と、このスライド部材を設置枠側に加圧して前進させるための加圧部材とを含んで構成されたものとし、この加圧部材による加圧によりスライド部材が前進して設置枠を押圧するようにしてもよい。
【0014】
このように左右の設置枠を左右の側面に押圧するために、左右の設置枠ごとに止水パネルに設ける押圧手段を、スライド部材と、このスライド部材を設置枠側に加圧して前進させるための加圧部材とを含んで構成されたものとする場合において、加圧部材は、スライド部材を設置枠側に加圧して前進させることができるものであれば、任意の部材でよく、加圧部材を、例えば、回動カム部材とし、この回動カム部材を、この回動カム部材を回動させるために回動操作される回動操作部材と共通の回動中心軸を有するものとし、そして、回動操作部材の中心部に設けられている前記回動中心軸を、回動カム部材の中心部から偏心した位置に配置することにより、この回動中心軸を中心に回動した回動カム部材の加圧によりスライド部材が前進して設置枠を押圧させることができるようになる。
【0015】
また、上述したように左右の設置枠を左右の側面に押圧するために、左右の設置枠ごとに止水パネルに設ける押圧手段を、スライド部材と、このスライド部材を設置枠側に加圧して前進させるための加圧部材とを含んで構成されたものとする場合には、加圧部材を、スライド部材のスライド方向に対して傾斜した傾斜部が設けられていて、スライド部材のスライド方向と傾斜部の傾斜方向との両方に対して角度をなす方向に直線移動操作される直線移動操作部材とし、この直線移動操作部材が直線移動操作されることにより、傾斜部からの押圧力によってスライド部材が前進して設置枠を押圧するようにしてもよい。
【0016】
そして、スライド部材と直線移動操作部材のそれぞれが左右の設置枠ごとに止水パネルに設けられ、2個の直線移動操作部材が止水パネルに左右に離れて配置される場合には、これらの直線移動操作部材を連結部材により連結し、この連結部材の操作により、2個の直線移動操作部材が同時に直線移動可能となるようにしてもよい。
【0017】
これによると、2個の直線移動操作部材が止水パネルに左右に離れて配置されていても、片手による連結部材の操作により、2個の直線移動操作部材を同時に直線移動させて、左右の設置枠ごとに止水パネルに設けられているそれぞれのスライド部材を加圧することができ、これにより、これらのスライド部材により左右の設置枠を左右の側面に同時に押圧することができる。
【0018】
また、上述したように、左右の設置枠を左右の側面に押圧するために左右の設置枠ごとに止水パネルに設ける押圧手段を、スライド部材と、このスライド部材を設置枠側に加圧して前進させるための加圧部材とを含んで構成されたものとする場合であって、加圧部材を、スライド部材のスライド方向に対して傾斜した傾斜部が設けられていて、スライド部材のスライド方向と傾斜部の傾斜方向との両方に対して角度をなす方向に直線移動操作される直線移動操作部材とし、この直線移動操作部材が直線移動操作されることにより傾斜部からの押圧力によってスライド部材が前進して設置枠を押圧するようにする場合には、スライド部材を前進させるための直線移動操作部材の直線移動操作方向は、任意の方向でよい。
【0019】
そして、スライド部材を前進させるための直線移動操作部材の直線移動操作方向を下方向とする場合には、止水パネルの下面に、この止水パネルと開口部の底面との間を防水シールするための下部シール部材を取り付け、直線移動操作部材の下方向への直線移動操作による止水パネルの下降により、下部シール部材を止水パネルと開口部の底面との間で圧縮し、これにより、下部シール部材によって止水パネルと開口部の底面との間を防水シールするようにしてもよい。
【0020】
これによると、直線移動操作部材により、止水パネルに設けられているスライド部材を加圧することによって行うスライド部材による左右の設置枠を左右の側面に押圧するための作業と、下部シール部材を止水パネルと開口部の底面との間で圧縮して防止機能を生じさせるための作業とを、直線移動操作部材を下方向に直線移動させる作業によって同時に実施できることになる。
【0021】
また、以上説明した本発明に係る止水装置において、止水パネルの下面に、この止水パネルと開口部の底面との間を防水シールするための下部シール部材を取り付ける場合には、左右の設置枠に止水パネルを押し下げるための押し下げ手段を設け、この押し下げ手段による止水パネルの押し下げにより、下部シール部材を止水パネルと開口部の底面との間で圧縮し、これにより、下部シール部材によって止水パネルと開口部の底面との間を防水シールするようにしてもよい。
【0022】
本発明に係る止水装置を、このような押し下げ手段を備えたものとする場合には、押し下げ手段を、左右方向の大きな寸法を有するものであって、左右の設置枠について共通化されたものとしてもよく、あるいは、押し下げ手段を、左右の設置枠ごとに設けられたものとしてもよい。
【0023】
これらのうち、押し下げ手段を、後者のように左右の設置枠ごとに設けられたものとすると、押し下げ手段を、左右方向の寸法が小さい小型化されたものにできる。
【0024】
また、このような押し下げ手段は、任意の形式、構造のものとして構成することができ、その一例の押し下げ手段は、左右の設置枠に設けた楔受け部材と、この楔受け部材と止水パネルとの間に挿入されることにより、止水パネルを押し下げるための楔とを含んで構成されたものであり、また、他の例の押し下げ手段は、設置枠に配置された雌ねじ部材と、この雌ねじ部材に止水パネルに向かって下向きに螺入され、回転操作されることにより前進して止水パネルを押し下げる雄ねじ部材とを含んで構成されたものである。
【0025】
これらのうち、押し下げ手段を、後者のように雌ねじ部材と雄ねじ部材とを含んで構成されたものとすると、下部シール部材を止水パネルと開口部の底面との間で圧縮して、この下部シール部材により止水パネルと開口部の底面との間を防水シールするための作業を、下部シール部材の圧縮量を確認しながら容易に実施することができる。
【0026】
さらに、以上説明した本発明に係る止水装置において、左右の設置枠と止水パネルとのうち、少なくとも一方に、止水パネルが開口部の貫通方向に移動操作されることにより左右の設置枠と止水パネルとの間で圧縮される左右の側部シール部材を配置してもよい。
【0027】
これによると、止水パネルを左右の設置枠の間に設置するために、この止水パネルを開口部の貫通方向に移動操作するための作業を行うと、左右の側部シール部材が左右の設置枠と止水パネルとの間で圧縮されるため、左右の設置枠と止水パネルとの間を防水シールすることができ、この防水シールを行うための作業を、止水パネルを左右の設置枠の間に設置するための作業として実施できることになる。
【0028】
以上説明した本発明に係る止水装置は、大雨時や洪水時等において、水が浸入するおそれがある任意の開口部に用いることができ、この開口部は、例えば、開き戸装置の扉により開閉されるドア枠の内側の出入口となっている開口部でもよく、あるいは、通路となっている開口部でもよく、あるいは、その他の出入口等となっている開口部でもよい。また、出入口は、引戸装置や折戸装置等の扉によって開閉される出入口でもよく、あるいは、地下街や地下鉄等へ通じる地上での出入口でもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、通常時の開口部を、左右の側面に左右の設置枠が配置されていない大きな開口幅を有するものにできるという効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る止水装置が適用される開き戸装置となっている玄関ドアを室外側から見た正面図である。
図2図2は、図1の玄関ドアの扉を開いたときの状態を室外側から見た正面図であって、玄関ドアのドア枠に止水装置がセットされていないときの状態を示す図である。
図3図3は、図1の玄関ドアの扉を開いたときの状態を室外側から見た正面図であって、玄関ドアのドア枠に止水装置がセットされたときの状態を示す図である。
図4図4は、図3のときの止水装置を室内側から見た図である。
図5図5は、図3のS5-S5線断面図である。
図6図6は、設置枠を示し、(A)は平面図、(B)は室外側から見た正面図、(C)は右側面図である。
図7図7は、止水パネルだけを示す図であって、室外側から見た正面図である。
図8図8は、止水パネルだけを示す図であって、室内側から見た図である。
図9図9は、止水パネルの左側面図である。
図10図10は、玄関ドアのドア枠に左右の設置枠を配置したときの状態を室外側から見た正面である。
図11図11は、止水パネルを左右の設置枠の間に設置する作業の途中状態を示す図9と同様の図である。
図12図12は、止水パネルを左右の設置枠の間に設置する作業が完了したときの状態を示す図9と同様の図である。
図13図13は、本実施形態に係る止水装置が玄関ドアの扉を閉じていても用いることができることを示す図5と同様の図である。
図14図14は、止水パネルに設けられている押圧手段についての別実施形態を示す図3と同様の図である。
図15図15は、止水パネルに設けられている押圧手段についてのさらに別実施形態を示す図3と同様の図である。
図16図16は、図15で示されている止水パネルに設けられている押圧手段のための左右2個の直線移動操作部材を連結部材により連結した実施形態を示す図3と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る止水装置が適用される開き戸装置の全体が示されている。この開き戸装置は、扉1をドア枠2にヒンジ3により開閉自在に取り付けた玄関ドアであり、図2には、扉1を開けたときのドア枠2の状態が示されている。室外と室内との境界部になっている玄関に配置されているドア枠2の内側の出入口4は、扉1により開閉される本実施形態における開口部となっている。
【0032】
ドア枠2は、図1及び図2に示されているように、左右の側枠部材5,6と、上下の上枠部材7及び下枠部材8とからなる四方枠であり、左右の側枠部材5,6により、出入口4の左右の側面が形成され、沓摺部材である下枠部材8により、出入口4の底面が形成され、上枠部材7により、出入口4の上面が形成されている。図2に示されているように、左右の側枠部材5,6と、上枠部材7と、下枠部材8には、閉じたときの扉1が当接することにより、この扉1の全閉位置を規定するための戸当り部5A,6A,7A,8Aが設けられ、また、これらの戸当り部5A,6A,7A,8Aには、閉じたときの扉1とドア枠2との間の気密性を確保するための気密部材9,10,11,12が配置されている。
【0033】
なお、気密部材9,10,11,12のうち、左右の側枠部材5,6の戸当り部5A,6Aに配置されている気密部材9,10は、後述する図5にも示されている。
【0034】
図3には、扉1を開いた出入口4の下側の部分に本実施形態の止水装置20をセットし、この部分を止水装置20により塞いでいるときの状態が室外側から見た正面図として示されている。この止水装置20は、ドア枠2の左右の側枠部材5,6に配置された左右2個の設置枠21と、これらの設置枠21の間に設置された止水パネル22とを含んで構成されたものとなっている。図4には、止水装置20を室内から見た状態が示されており、図5は、図3のS5-S5線断面図である。これらの図3図5に示されているように、左右2個の設置枠21は、出入口4の底面を形成している下枠部材8の戸当り部8Aの上面に立設されて、出入口4の左右の側面を形成している側枠部材5,6に沿って配置されるものとなっており、左右一対のものとなっているこれらの設置枠21は、止水パネル22と同じ又は略同じ高さ寸法を有する左右対称の形状及び構造のものとして構成されている。
【0035】
図6には、このように左右対称の形状及び構造のものとして構成されている左右2個の設置枠21のうち、図3における左側の設置枠21が示されており、図6(A)は平面図、図6(B)は室外側から見た正面図、図6(C)は右側面図である。設置枠21を構成する部材のうち、板金の折り曲げ品である本体25は、止水パネル22と同じ又は略同じ高さ寸法を有するものであり、また、この本体25は、出入口4の貫通方向が幅方向となっている側面部25Aと、この側面部25Aにおける室外側の端部から、左右方向となっている出入口4の幅方向の外側へ直角に屈曲して延出している延出部25Bとからなるアングル形状のものとなっている。
【0036】
本体25のうち、側面部25Aには、上下2本のピン部材26,27が、出入口4の貫通方向における同じ位置において、出入口4の幅方向の内側へ突設され、さらに、この側面部25Aには、上部ピン部材26及び下部ピン部材27よりも室内側の位置において、後述の説明から分かるように、止水パネル22と出入口4の貫通方向における室内側において対面することになる対面部材28が、側面部25Aから出入口4の幅方向の内側へ突出した状態で取り付けられ、この対面部材28は、本体25と同じ高さ寸法を有している。また、側面部25Aにおける出入口4の幅方向の外側の外面には、外面シール部材29が本体25の上下全長に渡って固定されているとともに、本体25と対面部材28の下面には、すなわち、設置枠21全体の下面には、下面シール部材30が固定されている。
【0037】
平面視で四角形となっている対面部材28の上面には、止水パネル22を下向きに押し下げるための押し下げ手段31が配置され、左右2個の設置枠21ごとに設けられているこの押し下げ手段31は、雄ねじ部材32と、この雄ねじ部材32を支持する支持部材33とが主要部材となっているねじ式のものであり、支持部材33は、対面部材28の上面に固定された下部33Aと、この下部33Aの室内側の端部から立ち上がっている立上り部33Bと、この立上り部33Bの上端から下部33Aと平行に室外側へ延出している上部33Cとからなる全体形状が略コ字形状の部材となっている。下部33Aよりも室外側へ延出長さが長くなっている上部33Cの先部には、下向きとなっている雄ねじ部材32が螺入されている雌ねじ部34が形成されている。このため、支持部材33は、雄ねじ部材32が螺入、支持されている雌ねじ部材となっている。
【0038】
雄ねじ部材32の上端部には、この雄ねじ部材32を回転操作するための摘み部材32Aが固定されているとともに、雄ねじ部材32の下端部には、この雄ねじ部材32が摘み部材32Aで回転操作されて下向きに、すなわち、止水パネル22側に前進したときに、止水パネル22の上面に当接する当接部材32Bが雄ねじ部材32に対して回転自在に取り付けられている。
【0039】
図7及び図8には、止水パネル22だけが示されており、図7は、止水パネル22を室外側から見た正面図であり、図8は、止水パネル22を室内側から見た背面図である。図7に示されているように、止水パネル22の室外側の面22Aには、止水パネル22の左右方向の両端部の近傍において、それぞれの設置枠21を前述したドア枠2の左右の側枠部材5,6に押圧するための押圧手段35が配置されている。この押圧手段35は、上下方向には複数個、本実施形態では、2個設けられ、また、止水パネル22の左右方向の両端部の近傍に設けられている押圧手段35は、左右対称の形状及び構造のものとして構成されている。
【0040】
それぞれの押圧手段35は、押し下げ手段31と同様に、雄ねじ部材36と、この雄ねじ部材36を支持する支持部材37とが主要部材となっているねじ式のものであり、支持部材37は、止水パネル22の室外側の面22Aに固定された基部37Aと、この基部37Aの左右方向の両端部から室外側に延出している2個の延出部37Bとからなる全体形状がコ字形状の部材となっている。それぞれの延出部37Bには、雌ねじ部38が形成されており(図5も参照)、これらの雌ねじ部38に、雄ねじ部材36が、左右方向のうち、設置枠21が配置される側となっている出入口4の幅方向の外側となっている横向きにされて螺入されている。このため、支持部材37は、雄ねじ部材36が螺入、支持されている雌ねじ部材となっている。
【0041】
雄ねじ部材36における出入口4の幅方向の内側の端部には、この雄ねじ部材36を回転操作するための摘み部材36Aが固定されているとともに、雄ねじ部材32における出入口4の幅方向の外側の端部には、この雄ねじ部材36が摘み部材36Aで回転操作されて出入口4の幅方向の外側に、すなわち、設置枠21側に前進したときに、この設置枠21の前述した本体25に当接する当接部材36Bが雄ねじ部材36に対して回転自在に取り付けられている。
【0042】
図8に示されているように、止水パネル22の室内側の面22Bには、止水パネル22の左右方向の両端部又はその近傍において、上下方向の長さを有する左右2個の側部シール部材40が固定されており、これらの側部シール部材40は、止水パネル22の上端から下端まで達している。そして、止水パネル22の下面には、左右方向の長さを有する下部シール部材41が固定されており、この下部シール部材41の長さ方向の両端部は、左右2個の側部シール部材40の下端部と接続シール部材42により接続され、これにより、左右2個の側部シール部材40と下部シール部材41は、連続している帯状シールの一部となっている。
【0043】
図9は、図7における止水パネル22の左側面図である。この図9、及び図7図8から分かるように、止水パネル22の左右両側面には、設置枠21に上下2個設けられているピン部材26,27を案内するための2個のガイド手段44,45が、上下に離れて配置されている。これらのガイド手段44,45は、止水パネル22の左右両側面に同じ形状及び構造のものとなって設けられている。
【0044】
図9に示されているように、2個のガイド手段44,45のうち、上部ガイド手段44は、連結部44Cで連結されて上下に分離した状態となっている上部44Aと下部44Bとからなり、上部44Aは、昇降部材46を上下に昇降自在に案内する案内部となっており、この昇降部材46は、上部44Aと昇降部材46との間に架け渡されたコイルばね等による弾性部材47により常時下方向へ弾性付勢されている。また、昇降部材46は、上端の折り曲げにより形成されている操作部46Aでの操作により、弾性部材47の弾性力に抗して上方へ引き上げ可能となっているとともに、昇降部材46の下部には、設置枠21のピン部材26,27のうち、上部ピン部材26が挿入可能の大きさとなっている凹部46Bが下向きに開口して形成されている。この凹部46Bを形成している昇降部材46の下部における室内側の下向き突出部46Cには、室内側から室外側へ斜め下方に傾斜した傾斜部46Dが形成されている。また、上部ガイド手段44の下部44Bの上面には、室内側から室外側へ斜め上方に傾斜した傾斜部48が設けられている。
【0045】
2個のガイド手段44,45のうち、下部ガイド手段45には、室内側に開口している開口部50が形成され、この開口部50は、設置枠21のピン部材26,27のうち、下部ピン部材27が通過可能となっている通路51を介して室内側に開口しているとともに、通路51の上部51Aと下部51Bは、互いに平行となって室内側から室外側へ斜め上方に傾斜している傾斜部となっている。
【0046】
以上のように左右両側面のそれぞれに上下2個のガイド手段44,45が設けられている止水パネル22の左右方向の幅寸法は、ガイド手段44,45の分を含めると、左右2個の設置枠21をドア枠2の側枠部材5,6に沿って配置したときにおけるこれらの設置枠21の前述した本体25の側面部25A同士の間の左右方向の寸法よりも少し小さい寸法となっており、このため、左右2個の設置枠21の本体25の側面部25A同士の間に、左右両側面に上下2個のガイド手段44,45が設けられている止水パネル22を挿入、配置するための作業を行うことができるようになっている。
【0047】
ドア枠2の内側の開口部となっている前述した出入口4の下側部分に本実施形態に係る止水装置20を配置するためには、作業者は、はじめに、図10から分かるように、左右2個の設置枠21を室外側から出入口4に持ち込み、これらの設置枠21をドア枠2の下枠部材8の戸当り部8Aの上面に立設させるとともに、側枠部材5,6に沿って配置する作業を行う。これにより、図5に示されているように、設置枠21の本体25の側面部25Aに固定されている外面シール部材29は、出入口4の左右の側面を形成している側枠部材5,6の戸当り部5A,6Aにおける出入口4側の側面に接触するとともに、設置枠21の下面に固定されている下面シール部材30は、図10に示されているように、下枠部材8の戸当り部8Aの上面に接触する。
【0048】
次に、作業者は、止水パネル22を、左右2個の設置枠21の本体25の側面部25A同士の間に挿入して設置するための作業を行う。この作業のうち、最初に行う作業は、止水パネル22をドア枠2の下枠部材8よりも高い位置に持ち上げながら止水パネル22を設置枠21に近づけることにより、左右2個の設置枠21に設けられている上部ピン部材26と下部ピン部材27のうち、上部ピン部材26を、図11において二点鎖線で示されている上部ピン部材26’のように、止水パネル22の左右両側面に設けられている上部ガイド手段44の下部44Bに形成されている傾斜部48の上に載置するとともに、下部ピン部材27を、図11において二点鎖線で示されている下部ピン部材27’のように、止水パネル22の左右両側面に設けられている下部ガイド手段45の通路51の下部51Bの上に載せる作業である。
【0049】
この後に、作業者は、上下2本のピン部材26,27をそれぞれが室内側から室外側へ斜め上方へ傾斜している傾斜部48と下部51Bによって案内させながら、止水パネル22を室外側から室内側へ斜め下方へ移動させる作業を行い、これにより、上部ピン部材26と下部ピン部材27は、図11において二点鎖線で示されている上部ピン部材26”と下部ピン部材27”のように、傾斜部48と下部51Bのそれぞれの上部の位置に達する。
【0050】
さらに、作業者が止水パネル22を室外側から室内側へ斜め下方へ移動させる作業を行うと、上部ピン部材26は、上部ガイド手段44の昇降部材46のうち、下向き突出部46Cの傾斜部46Dに当接し、この傾斜部46Dは室内側から室外側へ斜め下方に傾斜しているため、昇降部材46は、ピン部材26からの押圧力により、弾性部材47の弾性力に抗して上方へスライドし、これにより、上部ピン部材26は、図12に示されているように、昇降部材46の下向きに開口している凹部46Bの内部に侵入するとともに、昇降部材46は弾性部材47の弾性力により下方へスライドする。このように昇降部材46が弾性部材47の弾性力により下方へスライドすると、上部ピン部材26は、上下方向のみにスライド移動自在となっている昇降部材46の凹部46Bの内部に挿入された状態となるため、止水パネル22は、ドア枠2の内側の開口部となっている出入口4の貫通方向に移動不能の状態となる。また、このときには、下部ピン部材27は、図12に示されているように、下部ガイド手段45における通路51を介して室内側に開口している開口部50の内部に達している。
【0051】
そして、作業者が以上のようにして止水パネル22に対して行う作業は、止水パネル22を、ドア枠2の内側の出入口4の貫通方向のうち、室外側から室内側へ移動させる作業であって、止水パネル22を室外側から室内側へ移動させながら、止水パネル22を斜め下方へ移動させる作業であるため、止水パネル22の下面に固定されている下部シール部材41が、下枠部材8の戸当り部8Aの上面に接触するとともに、止水パネル22の室内側の面22Bに設けられている左右2個の側部シール部材40は、左右2個の設置枠21のそれぞれを構成している部材のうち、止水パネル22の室内側の面22Bと出入口4の貫通方向に対面している対面部材28とにより圧縮される。
【0052】
このため、左右2個の設置枠21の間に止水パネル22を設置する作業を行うことにより、止水パネル22の室内側の面22Bと対面部材28とにより左右2個の側部シール部材40を圧縮することができて、これらの側部シール部材40により、左右2個の設置枠21と止水パネル22との間を防水シールすることができる。
【0053】
なお、止水パネル22の左右両側面に設ける下部ガイド手段45にも、上述の上部ガイド手段44に設けられている昇降部材46と同様の昇降部材を設け、これにより、下部ピン部材27を、下部ガイド手段45に上下方向のみにスライド移動自在となって設けられていて、ばね等の弾性部材で常時下方へ弾性付勢されている昇降部材の下向きに開口した凹部の内部に挿入できるようにすることにより、止水パネル22の下部も、出入口4の貫通方向に移動不能の状態となるようにしてもよい。
【0054】
この後に、作業者は、左右2個の設置枠21ごとに設けられている押し下げ手段31により、止水パネル22を押し下げるための作業を行う。この作業は、それぞれの設置枠21に設けられている図6の押し下げ手段31の摘み部材32Aを回転操作することにより行われ、これにより、前述の雌ねじ部材となっている支持部材33の雌ねじ部34に止水パネル22に向かって螺入されている雄ねじ部材32が回転して、雄ねじ部材32の下端に設けられている当接部材32Bが止水パネル22の上面に当接し、さらに摘み部材32Aを回転操作すると、左右2個の設置枠21のそれぞれに設けられた押し下げ手段31の雄ねじ部材32からの下向きの押圧力により、止水パネル22が押し下げられる。これにより、止水パネル22の下面に固定されている下部シール部材41は、止水パネル22の下面と、ドア枠2の下枠部材8における戸当り部8Aの上面との間で圧縮される。
【0055】
これにより、上部ガイド手段44の昇降部材46が弾性部材47の弾性力に抗して上方へスライド自在となっていて、下部ガイド手段45の開口部50の上下寸法が下部ピン部材27の直径よりも大きくなっていても、下部シール部材41により止水パネル22と下枠部材8との間を防水シールすることができる。
【0056】
次いで作業者は、止水パネル22の室外側の面22Aにおける止水パネル22の左右方向の両端部の近傍において、上下に複数個設けられている押圧手段35により、左右2個の設置枠21をドア枠2の左右の側枠部材5,6に押圧するための作業を行う。この作業は、図5から分かるように、それぞれの押圧手段35の摘み部材36Aを回転操作することにより行われ、これにより、前述の雌ねじ部材となっている支持部材37の雌ねじ部38に設置枠21に向かって横向きに螺入されている雄ねじ部材36が回転して、雄ねじ部材36の先端に設けられている当接部材36Bが設置枠21の本体25の側面部25Aに当接し、さらに摘み部材36Aを回転操作すると、止水パネル22の左右方向の両端部の近傍に設けられているそれぞれの押圧手段35の雄ねじ部材36からの横向きの押圧力により、左右2個の設置枠21のそれぞれの本体25の側面部25Aが出入口4の幅方向の外側へ押圧され、これにより、本体25の側面部25Aの外面に設けられている外面シール部材29が、ドア枠2の左右の側枠部材5,6の戸当り部5A,6Aにおける出入口4の内側の側面に強く当る。
【0057】
これにより、左右2個の設置枠21と左右の側枠部材5,6との間が外面シール部材29により防水シールされるとともに、左右2個の設置枠21は、押圧手段35からの押圧力により、ドア枠2の左右の側枠部材5,6に取り付けられる。そして、このときには、前述したように、設置枠21の下面に固定された下面シール部材30は、ドア枠2の下枠部材8の戸当り部8Aの上面に接触しているため、設置枠21と下枠部材8との間も下面シール部材30により防水シールされている。
【0058】
なお、押し下げ手段31により止水パネル22を押し下げる作業を行う以前において、それぞれの押圧手段35により左右2個の設置枠21を左右の側枠部材5,6に押圧する作業を行い、次いで、押し下げ手段31により止水パネル22を押し下げる作業を行うことにより、押圧手段35によって止水パネル22と連結されているそれぞれの設置枠21を、押し下げ手段31によって止水パネル22と共に押し下げることにより、設置枠21と下枠部材8との間を、下面シール部材30により一層確実に防水シールするようにしてもよい。
【0059】
上述したように止水パネル22の左右方向の両端部の近傍に設けられている押圧手段35により、左右2個の設置枠21をドア枠2の左右の側枠部材5,6に押圧するための作業を行うと、それぞれの押圧手段35の押圧力の反作用としての反力が止水パネル22に作用する。これらの反力は、止水パネル22の左右方向の両端部の近傍に設けられている押圧手段35において、互いに出入口4の幅方向の内側への逆向きの荷重となって止水パネル22に作用するため、これらの押圧手段35により左右2個の設置枠21をドア枠2の左右の側枠部材5,6に押圧すると、止水パネル22を、互いに逆向きの反力となっている上記荷重により、左右2個の設置枠21に固定された状態にすることができる。
【0060】
このため、押圧手段35を左右2個の設置枠21ごとに分けて止水パネル22に設けることにより、左右2個の設置枠21をドア枠2の左右の側枠部材5,6に押圧することと、止水パネル22を左右2個の設置枠21に固定された状態にすることとの両方を実現することができる。
【0061】
以上により、本実施形態に係る止水装置20は、図3に示されているように、ドア枠2の内側の出入口4の下側部分に設置される。そして、大雨時や洪水時等において、玄関の室外側に水に達しても、左右2個の設置枠21と止水パネル22とにより、水が出入口4の下側部分を通過して室内側に流入することを防止できる。また、このときには、図5に示されているように、ヒンジ3で開閉自在となっている扉1をドア枠2に対して開けておくことができるため、人は止水パネル22の上方を跨ぐことにより、玄関を室外側から室内側へ、あるいは、室内側から室外側へ通過することができる。
【0062】
また、本実施形態に係る止水装置20は、図13に示されているように、扉1をドア枠2に対して閉じても用いることができるため、閉じた扉1により、大雨時や洪水時等において、水と共に流れて来る流木等の浮遊物やその他の物により止水パネル22が損傷することを扉1によって防止できる。
【0063】
大雨や洪水等の水災害が発生するおそれがなくなったり、水災害が解消したときには、作業者は、それぞれの押圧手段35の摘み部材36Aを逆回転操作することにより、これらの押圧手段35の雄ねじ部材36から左右2個の設置枠21の本体25の側面部25Aに作用している押圧力を解除する。これにより、押圧手段35の押圧力の反作用として止水パネル22に作用していた反力の荷重も消滅する。次いで作業者は、それぞれの設置枠21に設けられている押し下げ手段31の摘み部材32Aを逆回転操作し、これにより、これらの押し下げ手段31の雄ねじ部材32の下端部に設けられている当接部材32Bを止水パネル22の上面から上方へ移動させて、押し下げ手段31による止水パネル22の押し下げ力を解除する。
【0064】
この後に、作業者は、押し下げ手段31の上部ガイド手段44に設けられている昇降部材46を、この昇降部材46の上端部に設けられている操作部46Aを持ち上げ操作することにより、弾性部材47の弾性力に抗して上昇させながら、止水パネル22を室内側から室外側へ斜め上方へ移動させる作業を行う。これにより、それぞれの設置枠21に上下2本設けられているピン部材26,27は、止水パネル22の左右両側面に設けられている上部ガイド手段44と下部ガイド手段45から離れ、止水パネル22を左右2個の設置枠21から分離させることができる。また、この止水パネル22に設けられている押圧手段35からの押圧力が解除されている左右2個の設置枠21を、ドア枠2の左右の側枠部材5,6から取り外すことができる。
【0065】
以上の説明から分かるように、本実施形態に係る止水装置20の左右2個の設置枠21は、止水パネル22に設けられている押圧手段35による押圧力により、ドア枠2の左右に側枠部材5,6に取り付け可能となっているとともに、この押圧力の解除により、側枠部材5,6から取り外し可能となっているため、左右2個の設置枠21は、これらの側枠部材5,6に対して着脱可能となっている。このため、通常時の出入口4を、それぞれの設置枠21が側枠部材5,6に配置されていない状態にすることができ、これにより、この出入口4を大きな開口幅を確保することができる。
【0066】
図14には、別実施形態に係る押圧手段55が示されている。それぞれの設置枠21ごとに止水パネル22に設けられているこの実施形態に係る押圧手段55は、止水パネル22の室外側の面22Aにおいて、複数個のガイド部材56に案内されて、左右方向である出入口4の幅方向にスライド自在となって配置されているスライド部材57と、スライド部材57を出入口4の幅方向の内側に常時弾性付勢しているコイルばね等による弾性部材58と、中心部に配置された回動中心軸59Aと一体化され、回動中心軸59Aを中心に回動自在となっている円形の摘み部材59と、この摘み部材59から回動中心軸59Aの軸方向に離れて配置された円形の回動カム部材60とを有するものとなっている。回動中心軸59Aは、止水パネル22の厚さ方向、すなわち、出入口4の貫通方向が軸方向となっているものである。
【0067】
そして、回動カム部材60も回動中心軸59Aと一体化され、この回動カム部材60は回動中心軸59Aを中心に回動自在となっているが、回動中心軸59Aは、円形の回動カム部材60の中心部に配置されておらず、この中心部から偏心した位置において、回動カム部材60に配置されている。これを言い換えると、この実施形態での回動操作部材となっている円形の摘み部材59と、この摘み部材59から回動中心軸59Aの軸方向に離れて配置された回動カム部材60は、回動中心軸59Aが共通となったものになっているが、摘み部材59に対して回動カム部材60は、偏心している。このような回動カム部材60の外周面に、弾性部材58の弾性力により出入口4の幅方向の内側に常時付勢されているスライド部材57における出入口4の幅方向の内側の端部において当接している。
【0068】
この実施形態の押圧手段55では、回動カム部材60の外周面のうち、回動中心軸59Aから近い箇所にスライド部材57における出入口4の幅方向の内側の端部が当接しているときには、スライド部材57における出入口4の幅方向の外側の端部は、設置枠21から離れている。また、それぞれの押圧手段55の摘み部材59を回動操作し、これにより、それぞれの回動カム部材60を回動させ、回動カム部材60の外周面のうち、回動中心軸59Aから遠い箇所にスライド部材57における出入口4の幅方向の内側の端部を当接させて、スライド部材57を弾性部材58の弾性力に抗して出入口4の幅方向の外側にスライド移動させると、それぞれのスライド部材57における出入口4の幅方向の外側の端部が設置枠21を押圧し、それぞれの設置枠21がドア枠2の左右の側枠部材5,6に押圧される。また、それぞれの摘み部材59を逆回動操作すると、スライド部材57は弾性部材58の弾性力により出入口4の幅方向の内側にスライド移動するため、スライド部材57による設置枠21の押圧が解除される。
【0069】
この実施形態の押圧手段55における回動カム部材60は、スライド部材57を設置枠21側に加圧するための加圧部材ともなっており、回動カム部材60により、スライド部材57を設置枠21側に加圧するためには、回動操作部材となっている摘み部材59を回動中心軸59Aを中心に半回転程度させればよいため、押圧手段55によってそれぞれの設置枠21をドア枠2の左右の側枠部材5,6に押圧する作業を短時間のうちに容易に行える。
【0070】
図15には、別実施形態に係る押圧手段65が示されている。それぞれの設置枠21ごとに止水パネル22に設けられているこの実施形態に係る押圧手段65は、止水パネル22の室外側の面22Aにおいて、複数個のガイド部材66に案内されて、左右方向である出入口4の幅方向にスライド自在となって配置されているスライド部材67と、スライド部材67を出入口4の幅方向の内側に常時弾性付勢しているコイルばね等による弾性部材68と、複数個のガイド部材69により案内されて上下方向に移動自在となっている押し下げ部材70とを有するものとなっている。それぞれの押し下げ部材70は、押し下げ部材70の上端部に設けられた操作部70Aにより上下方向に直線移動操作されるものであるため、押し下げ部材70は、この実施形態の押圧手段65における直線移動操作部材となっている。
【0071】
スライド部材67における出入口4の幅方向の内側の端面は、上方から下方へ出入口4の幅方向の内側に傾斜している傾斜部67Aとなっており、また、押し下げ部材70におけるスライド部材67側の側部にも、上方から下方へ出入口4の幅方向の内側に傾斜している傾斜部70Bが形成され、これらの傾斜部67Aと傾斜部70Bは、スライド部材67のスライド方向である左右方向に対して傾斜している傾斜部となっている。押し下げ部材70は、止水パネル22の室外側の面22Aにおいて、押し下げ部材70ごとに上下に複数個が配置されているスライド部材67について共通のものとなっているため、押し下げ部材70には、複数個のスライド部材67と同数の傾斜部70Bが設けられている。
【0072】
なお、押し下げ部材70の直線移動方向である上下方向は、スライド部材67のスライド方向である左右方向と、スライド部材67の傾斜部67A及び押し下げ部材70の傾斜部70Bの傾斜方向との両方に対して角度をなす方向となっている。
【0073】
この実施形態では、それぞれの押し下げ部材70を、操作部70Aの操作により図15の図示状態よりも上昇させ、これにより、それぞれのスライド部材67の傾斜部67Aが、弾性部材68の弾性力により押し下げ部材70の傾斜部70Bのうちの下部に当接しているときには、それぞれのスライド部材67における出入口4の幅方向の外側の端部は、設置枠21から離れている。また、それぞれの押し下げ部材70を、操作部70Aの操作により図15の図示状態まで押し下げ、これにより、それぞれのスライド部材67の傾斜部67Aが、押し下げ部材70の傾斜部70Bのうちの上記下部よりも上側の上部に当接すると、それぞれのスライド部材67は弾性部材68の弾性力に抗して出入口4の幅方向の外側にスライド移動し、これにより、これらのスライド部材67における出入口4の幅方向の外側の端部が設置枠21を押圧して、左右2個の設置枠21がドア枠2の左右の側枠部材5,6に押圧される。また、それぞれの押し下げ部材70を、操作部70Aの操作により上昇させると、それぞれのスライド部材67は弾性部材68の弾性力により出入口4の幅方向の内側にスライド移動し、スライド部材67による設置枠21の押圧が解除される。
【0074】
この実施形態の押圧手段65における押し下げ部材70は、スライド部材67を設置枠21側に加圧するための加圧部材ともなっており、この押し下げ部材70を下方に直線移動させるだけにより、スライド部材67を設置枠21側に加圧することができるため、押圧手段65によってそれぞれの設置枠21をドア枠2の左右の側枠部材5,6に押圧する作業を一層短時間のうちに容易に行える。
【0075】
また、この実施形態の押圧手段65におけるそれぞれの押し下げ部材70は、止水パネル22の室外側の面22Aに上下に複数個が配置されているスライド部材67の個数と同数の傾斜部70Bがこれらの押し下げ部材70のそれぞれに設けられていることにより、複数個のスライド部材67について共通のものとなっているため、押し下げ部材70の押し下げ操作により、複数個のスライド部材67を同時に設置枠21側に加圧することができる。
【0076】
さらに、この実施形態の押圧手段65における押し下げ部材70の押し下げ操作により、それぞれのスライド部材67を弾性部材68の弾性力に抗して出入口4の幅方向の外側にスライド移動させた後も、さらに押し下げ部材70を強く押し下げ操作を行うと、押し下げ部材70とガイド部材69との間に大きな下向きの摩擦力が生じ、これにより、スライド部材67と設置枠21との間の摩擦力よりも大きな押し下げ力となっている上記大きな摩擦力により、止水パネル22をスライド部材67と共に下降させることができ、この後に、上記押し下げ操作を解除すると、押し下げ部材70とガイド部材69との間の大きな摩擦力により、止水パネル22は、スライド部材67と共に下降位置を維持する。
【0077】
このため、この実施形態によると、これまでの実施形態の設置枠21に設けられていた押し下げ手段31を省略しても、押し下げ部材70を強く押し下げ操作を行うことにより、止水パネル22の下面に固定されている下部シール部材41を止水パネル22の下面とドア枠2の下枠部材8との間で圧縮して、これらの止水パネル22の下面と下枠部材8との間を防水シールすることができる。
【0078】
また、大雨や洪水等の水災害が発生するおそれがなくなったり、水災害が解消したときに、作業者が押し下げ部材70を、押し下げ部材70とガイド部材69との間の摩擦力によりも大きな押し上げ力を操作部70Aに作用させて上昇させることにより、この実施形態に係る押圧手段65をもとの状態に復帰させることができる。
【0079】
図16の実施形態では、左右2個の設置枠21ごとに止水パネル22に設けられている2個の押圧手段65における2個の押し下げ部材70が、上端部において、連結部材71により連結されている。すなわち、止水パネル22の室外側の面22Aに左右に離れて配置されている2個の押し下げ部材70は、図16の実施形態では、これらの押し下げ部材の上端部において、連結部材71により連結されている。
【0080】
この実施形態によると、連結部材71を片手で押し下げ操作すると、左右に離れて配置されている2個の押し下げ部材70を同時に押し下げることができ、このため、止水パネル22の室外側の面22Aに配置されている全部のスライド部材67を設置枠21側である出入口4の幅方向の外側にスライド移動させて左右2個の設置枠21を同時に押圧することができ、また、片手で連結部材71を押し上げ操作することにより、左右に離れて配置されている2個の押し下げ部材70を同時に上昇させて、全部のスライド部材67を出入口4の幅方向の内側にスライド移動させ、これらのスライド部材67による左右2個の設置枠21の押圧を同時に解除することができる。
【0081】
このように図16の実施形態によると、全部のスライド部材67による左右2個の設置枠21の押圧作業と、左右2個の設置枠21に対して作用している全部のスライド部材67からの押圧力の解除作業とを、作業者は片手により行えることになり、これらの作業をさらに一層短時間のうちに容易に行える。
【0082】
なお、図14図16の実施形態では、スライド部材57,67を出入口4の幅方向の内側へ常時弾性付勢するための弾性部材58,68が、スライド部材57,67とガイド部材56,66との間に架け渡されていたが、これらの弾性部材58,68を、スライド部材57,67の裏側において、スライド部材57,67と止水パネル22との間に架け渡してもよい。
【0083】
また、図15及び図16の実施形態では、図3及び図5等で示した押し下げ手段31が省略されているが、図15及び図16の実施形態に係る左右2個の設置枠21に押し下げ手段31を設けてもよい。
【0084】
さらに、それぞれの実施形態において、通常時等に、左右2個の設置枠21を必要に応じて出入口4の側枠部材5,6に図示しないクランプ等の固定手段を用いて又は用いないで設置した状態にしてもおいてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、例えば、開き戸装置の扉により開閉されるドア枠の内側の出入口による開口部や、通路、出入口等となっている開口部を、大雨時や洪水時等において、水が通過することを防止するために利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 玄関ドアの扉
2 玄関ドアのドア枠
4 開口部となっているドア枠の内側の出入口
5,6 出入口の左右の側面を形成している左右の側枠部材
8 出入口の底面を形成している下枠部材
8A 下枠部材の戸当り部
20 止水装置
21 設置枠
22 止水パネル
28 対面部材
29 外面シール部材
31 押し下げ手段
35,55,65 押圧手段
30 下面シール部材
40 側部シール部材
41 下部シール部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16