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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169702
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】爪及び爪周り用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20241128BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 23/02 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241128BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 31/085 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P17/00 101
A61P31/10
A61P43/00 101
A61P29/00
A61P23/02
A61P43/00 113
A61P43/00 121
A61K9/08
A61K9/06
A61K47/38
A61K47/10
A61K31/137
A61K31/167
A61K31/19
A61K31/085
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024167205
(22)【出願日】2024-09-26
(62)【分割の表示】P 2019224650の分割
【原出願日】2019-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2018234341
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 智史
(57)【要約】
【課題】爪及び爪周りへの適用において、伸展性等に優れた医薬組成物を提供する。
【解決手段】(A)抗真菌剤;(B)セルロース系高分子;及び(C)抗炎症剤、局所麻
酔剤、殺菌剤、及び抗ヒスタミン剤からなる群から選択される1種又は2種以上の化合物
を含有する爪及び/又は爪周り用医薬組成物を調製する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)抗真菌剤;
(B)セルロース系高分子;及び
(C)抗炎症剤、局所麻酔剤、殺菌剤、及び抗ヒスタミン剤からなる群から選択される1
種又は2種以上の化合物を含有する爪及び/又は爪周り用医薬組成物。
【請求項2】
爪及び/又は爪周りが、爪溝及び/又は黄線部付近の溝である、請求項1に記載の医薬
組成物。
【請求項3】
前記(A)抗真菌剤が、アミン系抗真菌剤である、請求項1又は2に記載の医薬組成物
【請求項4】
前記(A)抗真菌剤が、テルビナフィン及びその塩からなる群より選択される少なくと
も1種である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記(B)成分の総含有量が、0.01~10質量%である、請求項1~4のいずれか
1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
(A)成分の総含有量1質量部に対する、(B)成分の総含有量が、0.1~20質量
部である、項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
さらに、エタノールを含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記エタノールの含有量が、組成物全量に対して20質量%以上である、請求項7記載
の医薬組成物。
【請求項9】
ジェル剤又は液剤である、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爪及び爪周り用医薬組成物に関する。より詳細には、抗真菌剤を含有する、
爪及び爪周り用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
真菌の生育を阻むための抗真菌剤は、真菌感染に起因する様々な疾患や症状を治療、予
防、改善するために広く用いられている。抗真菌を目的とした外用剤は、特に、白癬、皮
膚カンジダ、癜風など皮膚感染症の治療に用いられている(特許文献1)。
【0003】
一方で、真菌感染症は、爪や爪周りにも発症することがあり、適切な治療が望まれてい
る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-232853号号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、爪や爪周りに関する抗真菌剤については、適切な医薬組成物は十分に研
究されているとは言えない状況である。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、抗真菌剤を含有する、爪及び爪周り用医
薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
爪や爪周りは、身体の中でも特有の凹凸を持つことから、真菌に感染した場合、抗真菌
剤を含有する製剤を患部である爪や爪周りの深部へ十分に送り届けることは困難である。
抗真菌剤を含有する医薬組成物の爪や爪周りへの送達技術については、より詳細な検討が
必要である。
【0008】
本発明は、爪及び爪周りへの伸展性が向上され、爪及び爪周りの乾燥を低減させる製剤
を提供することを目的とする。本発明者らは、(A)抗真菌剤、(B)セルロース系高分
子、並びに(C)抗炎症剤、局所麻酔剤、殺菌剤、及び抗ヒスタミン剤からなる群から選
択される1種又は2種以上の化合物、を含有させることで、爪及び爪周りへの伸展性が向
上し、乾燥を防ぎ得る医薬組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記に掲げる医薬組成物を提供する。
項1.
(A)抗真菌剤;
(B)セルロース系高分子;及び
(C)抗炎症剤、局所麻酔剤、殺菌剤、及び抗ヒスタミン剤からなる群から選択される1
種又は2種以上の化合物を含有する爪及び/又は爪周り用医薬組成物。
項2.
爪及び/又は爪周りが、爪溝及び/又は黄線部付近の溝である、項1に記載の医薬組成
物。
項3.
前記(A)抗真菌剤が、アミン系抗真菌剤である、項1又は2に記載の医薬組成物。項
4.
前記(A)抗真菌剤が、テルビナフィン及びその塩からなる群より選択される少なくと
も1種である、項3に記載の医薬組成物。
項5.
前記(B)成分の総含有量が、0.01~10質量%である、項1~4のいずれか1項
に記載の医薬組成物。
項6.
(A)成分の総含有量1質量部に対する、(B)成分の総含有量が、0.1~20質量
部である、項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
項7.
さらに、エタノールを含有する、項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
項8.
前記エタノールの含有量が、組成物全量に対して20質量%以上である、項7記載の医
薬組成物。
項9.
ジェル剤又は液剤である、項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、爪及び爪周りの用途に適した医薬組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、(A)抗真菌剤並びに(B)セルロース系高分子、及び所定の(C)成分を
含有する医薬組成物に関する。本発明の爪周り用医薬組成物は、爪及び爪周りへの伸展性
が良好である。さらに、爪及び爪周りにおける、乾燥による皮膚の白化や、皮めくれを、
治療、改善、予防することができる。
【0012】
[(A)抗真菌剤(抗真菌成分)]
抗真菌剤とは、真菌の生育を阻害または抑制するか、真菌を殺菌する機能を有する物質
であり、真菌感染に起因する様々な疾患や症状を治療、予防、改善するために用いられて
いる。
【0013】
本発明の抗真菌剤の種類としては、例えば、アリルアミン系抗真菌剤、ベンジルアミン
系抗真菌剤、またはチオカルバミン系抗真菌剤などのアミン系抗真菌剤、イミダゾール系
抗真菌剤またはトリアゾール系抗真菌剤などのアゾール系抗真菌剤、又はモルフォリン系
抗真菌剤などが例示される。本発明の抗真菌剤の種類としては、本発明の効果をより顕著
に奏する観点から、アミン系抗真菌剤、アゾール系抗真菌剤が好ましく、アミン系抗真菌
剤がより好ましい。
【0014】
本発明のアミン系抗真菌剤として、アミンを共通に有する抗真菌剤として周知の化合物
であって、薬学的又は生理学的に許容可能な任意のアミン系抗真菌剤を使用することがで
きる。アミン系抗真菌剤として、例えば、テルビナフィンまたはナフチフィン等のアリル
アミン系抗真菌剤、ブテナフィン等のベンジルアミン系抗真菌剤、トルナフタート、リラ
ナフタート等のチオカルバミン系抗生物質が挙げられる。中でも、本発明の効果をより顕
著に奏する観点から、アリルアミン系抗真菌剤が好ましく用いられ、その中で、特に好ま
しくは、テルビナフィン、またはテルビナフィン塩酸塩等のテルビナフィンの塩が挙げら
れる。
【0015】
本発明のアゾール系抗真菌剤としては、アゾール骨格(1つ以上の窒素原子を含む複素
5員環化合物)を共通に有する抗真菌剤として周知の化合物であって、薬学的又は生理学
的に許容可能な任意のアゾール系抗真菌剤を使用することができる。アゾール系抗真菌剤
としては、例えば、イミダゾール環(2個の窒素原子を含む複素5員環)を有するイミダ
ゾール系抗真菌剤、トリアゾール環(3個の窒素原子を含む複素5員環)を有するトリア
ゾール系抗真菌剤等を挙げることができる。より具体的には、ミコナゾール、ラノコナゾ
ール、ルリコナゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、ネチコナ
ゾール、スルコナゾール、ビホナゾール、オキシコナゾール、エコナゾール及びこれらの
塩等のイミダゾール系抗真菌剤;フルコナゾール、イトラコナゾール、ホスフルコナゾー
ル、ボリコナゾール、エフィコナゾール、ブトコナゾール、フェンチコナゾール、セルタ
コナゾール及びこれらの塩等のトリアゾール系抗真菌剤を挙げることができ、本発明に好
適に使用することができる。本発明のアゾール系抗真菌剤としては、本発明の効果をより
顕著に奏する観点から、イミダゾール系抗真菌剤が好ましく、なかでも、ミコナゾール、
ルリコナゾール、イソコナゾール、ラノコナゾールが好ましい。
【0016】
本発明のモルフォリン系抗真菌剤としては、モルフォリンを共通に有する抗真菌剤とし
て周知の化合物であって、薬学的又は生理学的に許容可能な任意のモルフォリン系抗真菌
剤を使用することができる。モルフォリン系抗真菌剤として、代表的には、アモロルフィ
ンまたはその塩が例示される。これらの(A)成分は、すべて、1種単独で用いてもよく
、2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明において、抗真菌剤としては、限定はされないが、テルビナフィン、ブテナフィ
ン、ミコナゾール、イソコナゾール、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくと
も1種又は2種以上の組み合わせが好ましい一態様として例示される。
【0018】
(A)抗真菌剤の総含有量は、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、医薬組成物
全量に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは、0.1質量%以
上、さらに好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上である。(A
)抗真菌剤の総含有量は、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、医薬組成物全量に
対して、好ましくは、10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下、さらに好ま
しくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。医薬組成物全量に対して、(
A)抗真菌剤の総含有量は、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、好ましくは0.
01質量%~10質量%であり、より好ましくは0.1質量%~8質量%、さらに好まし
くは0.3質量%~5質量%、特に好ましくは0.5質量%~2質量%である。中でも、
1質量%が最も好ましい。
【0019】
[(B)セルロース系高分子]
本発明の(B)セルロース系高分子としては、以下の物質を用いることができ、これら
であれば、特に制限されない。すなわち、セルロース系高分子化合物としては、セルロー
ス又はセルロースのヒドロキシル基を他の官能基で置き換えることで得られるセルロース
系高分子化合物であって、皮膚、又は、爪及び爪周りに対して適用可能な化合物を用いる
ことができる。セルロースのヒドロキシル基を置換する官能基としてはメトキシ基、エト
キシ基、ヒドロキシメトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、カル
ボキシメトキシ基、カルボキシエトキシ基等がある。セルロース系高分子化合物を例示す
ると、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシ
メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロー
ス、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボ
キシエチルセルロースまたはこれらの塩などを挙げることができる。ここで、塩としては
薬理学的に許容される塩が好ましく、中でもアルカリ金属塩がさらに好ましく、ナトリウ
ム塩、カリウム塩などが特に好ましい。
【0020】
これらの(B)成分は、すべて、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意に組み合わ
せて用いてもよい。
【0021】
これらの(B)成分は、限定はされないが、本発明の効果をより顕著に奏する観点から
、このうち、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチ
ルセルロース、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロ
ース、カルボキシメチルセルロース、及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上が
好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセル
ロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムがより好
ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロ
ース、ヒドロキシエチルセルロースがさらに好ましい。
【0022】
(B)成分の総含有量は、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、医薬組成物全量
に対して、通常0.01質量%であり、好ましくは0.1質量%以上であり、より好まし
くは、0.5質量%以上、さらに好ましくは0.8質量%以上であり、特に好ましくは1
.5質量%以上である。(B)成分の総含有量は、製剤の使用感や扱いやすさの観点から
、医薬組成物全量に対して、通常10質量%以下であり、好ましくは、5質量%以下であ
り、より好ましくは4.5質量%以下、さらに好ましくは3.5質量%以下、特に好まし
くは2.5質量%以下である。医薬組成物全量に対して、(B)成分の総含有量は、本発
明の効果をより顕著に奏する観点から、通常0.01~10質量%であり、好ましくは0
.1~5質量%であり、より好ましくは0.5~4.5質量%であり、さらに好ましくは
0.8~3.5質量%であり、特に好ましくは1.5~2.5質量%である。
【0023】
本発明の医薬組成物において、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、(A)
成分に対する(B)成分の比率は、例えば、(A)成分の総含有量1質量部に対する、(
B)成分の総含有量は、通常0.1~20質量部であり、0.5~10質量部が好ましく
、0.625~5質量部がより好ましく、0.7~3質量部がさらに好ましく、0.8~
2.7質量部とすることが特に好ましい。また、1.4~2.5質量部、1.5~2質量
部も好ましい比率として提示することができる。
【0024】
さらに、例えば、(B)成分がヒドロキシプロピルメチルセルロースである場合、本発
明による効果をより顕著に奏する観点から、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有
量は、医薬組成物全量に対して、好ましくは0.1~1.5質量%であり、より好ましく
は0.2~1.3質量%、さらに好ましくは0.3~1.2質量%であり、特に好ましく
は0.4~1質量%である。また、0.5~5質量%、0.75質量%~2.5質量%、
1~2質量%も好ましい配合量として提示することができる。
例えば、(B)成分が疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースである場合、本発明
による効果をより顕著に奏する観点から、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースの
含有量は、医薬組成物全量に対して、好ましくは0.1~0.9質量%であり、より好ま
しくは0.2~0.8質量%、さらに好ましくは0.3~0.7質量%であり、特に好ま
しくは0.4~0.6質量%である。また、0.5~5質量%、1~2.5質量%、1.
2~2質量%も好ましい配合量として提示することができる。
【0025】
[(C)成分]
本発明の(C)成分としては、以下が挙げられる。
すなわち、(C)抗炎症剤、局所麻酔剤、殺菌剤、及び抗ヒスタミン剤からなる群から
選択される1種又は2種以上の化合物である。
【0026】
これらの(C)成分としては、医薬品、医薬部外品又は化粧品分野において外用剤の成
分として用いられる等級、グレードであれば、特に限定されない。
【0027】
(C)の総含有量は、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、医薬組成物全量に対
して、通常0.01質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以上であり、より好まし
くは、質量0.8%以上、さらに好ましくは1質量%以上、特に好ましくは1.2質量%
以上である。(C)の総含有量は、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、医薬組成
物全量に対して、通常5質量%以下であり、好ましくは、4.1質量%以下であり、より
好ましくは2.8質量%以下、さらに好ましくは2.5質量%以下、特に好ましくは2質
量%以下である。医薬組成物全量に対して、(C)の総含有量は、通常0.01~5質量
%、好ましくは0.1~4.1質量%であり、より好ましくは0.8~2.8質量%、さ
らに好ましくは1~2.5質量%、特に好ましくは1.2~2質量%である。
【0028】
本発明の医薬組成物において、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、(A)
成分に対する(C)成分の比率は、例えば、(A)成分の総含有量1質量部に対して、(
C)成分の総含有量が、通常0.01~5質量部、好ましくは、0.1~4.1質量部、
より好ましくは0.8~2.8質量部、さらに好ましくは1~2.5質量部、特に好まし
くは1.2~2質量部である。
【0029】
(C)成分の抗炎症剤としては、吉草酸酢酸プレドニゾロン、酢酸デキサメタゾン、酢
酸ヒドロコルチゾン、またはそれらの薬理学的に許容される塩などのステロイド系抗炎症
薬、アラントイン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸ステアリル
、アルジオキサ、ウフェナマート、ブフェキサマク、イブプロフェンピコノール、インド
メタシン、ジクロフェナク、ピロキシカム、イプシロン-アミノカプロン酸、ベルベリン
、リゾチーム、アズレンスルホン酸ナトリウム、ジメチルイソプロピルアズレン、ブロメ
ライン、セラペプターゼ、セミアルカリプロティナーゼ、またはそれらの薬理学的に許容
される塩などの非ステロイド系抗炎症薬が例示される。これらの薬剤のうち、本発明の効
果をより顕著に奏する観点から、非ステロイド系抗炎症薬が好ましく、グリチルリチン酸
、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸の塩、グリチルリチン酸の塩(例えば、グリチル
リチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム)、アラントインがより好まし
い。これらの薬剤から1種または2種以上を適宜組み合わせて使用することもできる。
【0030】
(C)成分の局所麻酔剤としては、リドカイン、ジブカイン、メピバカイン、ブピバカ
イン、ロピバカイン、レボブピバカイン、及びこれらの薬学的に許容される塩のようなア
ミン及びアミド構造を有するアミド型局所麻酔剤、プロカイン、クロロプロカイン、テト
ラカイン、及びこれらの塩のようなアミン及びエステル構造を有するエステル型局所麻酔
剤、アミノ安息香酸エチル、オキシポリエトキシドデカンなどが挙げられる。及び又はこ
れらの薬剤のうち、限定はされないが、アミン及びアミド構造を有するアミド型局所麻酔
剤が好ましく、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、特に好ましくは、リドカイン
、塩酸ジブカインが例示される。これらの薬剤から1種又は2種以上を適宜組み合わせて
使用することもできる。
【0031】
(C)成分の殺菌剤としては、塩化デカリニウム、酢酸デカリニウム、塩化ベンザルコ
ニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルへキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩
酸アルキルジアミノエチルグリシン、塩化セチルピリジニウム、安息香酸ナトリウム、ク
ロロブタノール、イソプロピルメチルフェノール、チモール、ソルビン酸、ソルビン酸カ
リウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチ
ル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フ
ェネチルアルコール、ベンジルアルコール、アクリノール、ヒノキチオール、レゾルシン
、安息香酸ベルベリン、またはビグアニド化合物が例示される。これらの薬剤から1種ま
たは2種以上を適宜組み合わせて使用することもできる。これらの薬剤のうち、本発明の
効果をより顕著に奏する観点から、イソプロピルメチルフェノールが好ましい。
【0032】
(C)成分の抗ヒスタミン剤としては、限定はされないが、クロルフェニラミン、イソ
チペンジル、ケトチフェン、ベポタスチン、ジメンヒドリナート、シプロヘプタジン、ジ
フェニルピラリン、プロメタジン、イプロヘプチン、エメダスチン、クレマスチン、アゼ
ラスチン、レボカバスチン、ヒドロキシジン、メキタジン、ロラタジン、フェキソフェナ
ジン、セチリジン、オキサトミド、テルフェナジン、エピナスチン、アステミゾール、エ
バスチン、ジフェニルイミダゾール、ジフェンヒドラミン、またはこれらの化合物の塩が
例示される。
【0033】
本発明の効果をより顕著に奏する観点から、抗ヒスタミン剤としての好ましい例は、ジ
フェンヒドラミン、ジフェニルピラリン、クロルフェニラミン、ジフェニルイミダゾール
、またはそれらの塩であり、より好ましい例は、クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミ
ンまたはそれらの塩であり、さらに好ましい例は、クロルフェニラミン、マレイン酸クロ
ルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン、塩酸塩である。これらの薬
剤から1種または2種以上を適宜組み合わせて使用することもできる。
【0034】
これらの(C)成分は、すべて、1種単独で用いても良く、2種以上を任意に組み合わ
せて用いても良い。
【0035】
本発明の効果をより顕著に奏する観点で好ましい(C)成分は、グリチルレチン酸、ア
ミン及びアミド構造を有するアミド型局所麻酔剤、イソプロピルメチルフェノール、ジフ
ェンヒドラミン、及びジフェンヒドラミンの塩からなる群より選択される1種又は2種以
上である。本発明の効果をより顕著に奏する観点で特に好ましい(C)成分は、グリチル
レチン酸、リドカイン、イソプロピルメチルフェノール、ジフェンヒドラミン、及びジフ
ェンヒドラミンの塩からなる群より選択される1種又は2種以上である。ジフェンヒドラ
ミンの塩としては、限定はされないが、塩酸ジフェンヒドラミンが好ましい。さらに、特
に好ましい(C)成分は、グリチルレチン酸、及び/又はイソプロピルメチルフェノール
である。
【0036】
さらに、例えば、(C)成分がグリチルレチン酸及びその塩、グリチルリチン酸及びそ
の塩からなる群より選択される少なくとも1種以上である場合、グリチルレチン酸及びそ
の塩、グリチルリチン酸及びその塩の含有量は、本願発明の効果を有顕著に奏する観点か
ら、医薬組成物全量に対して、好ましくは0.1~1質量%であり、より好ましくは0.
2~0.8質量%、さらに好ましくは0.25~0.5質量%である。
【0037】
例えば、(C)成分がアミン及びアミド構造を有するアミド型局所麻酔剤である場合、
このようなアミド型局所麻酔剤の含有量は、それぞれ、医薬組成物全量に対して、好まし
くは0.25~2.5質量%であり、より好ましくは0.5~2質量%である。特には、
例えば、(C)成分が、リドカイン又は又はジブカインもしくはそれらの塩である場合、
本願発明の効果をより顕著に奏する観点から、リドカイン、ジブカイン、又はそれらの塩
の含有量は、それぞれ、医薬組成物全量に対して、好ましくは0.25~2.5質量%で
あり、より好ましくは0.5~2質量%である。
【0038】
例えば、(C)成分がイソプロピルメチルフェノールである場合、本願発明の効果を顕
著に奏する観点から、イソプロピルメチルフェノールの含有量は、医薬組成物全量に対し
て、好ましくは0.3~3質量%であり、より好ましくは0.5~1質量%である。
【0039】
例えば、(C)成分が、ジフェンヒドラミン、及びそれらの塩である場合、本願発明の効
果を顕著に奏する観点から、ジフェンヒドラミン、及びそれらの塩の含有量は、医薬組成
物全量に対して、好ましくは0.1~2質量%であり、より好ましくは0.5~1質量%
である。
【0040】
本発明においては、(A)抗真菌剤、(B)セルロース系高分子、並びに(C)成分の
他に、その機能を損なわない範囲で、医薬品、医薬部外品、化粧品等として用いられ得る
、公知の任意の成分を、医薬組成物に含有させることができる。任意の成分として、特に
好ましくは、エタノールを含有させることができる。
【0041】
[エタノール]
本発明の医薬組成物に用いられるエタノールは、医薬品、医薬部外品、化粧品等で用い
られている等級、グレードであれば、特に制限されない。医薬組成物の原料として用いる
エタノールは、例えば、95%エタノール、99%エタノール(無水エタノール)等を適
宜用いることが可能である。
【0042】
エタノールの含有量は、使用感の観点から、医薬組成物全量に対して、20質量%以上
であることが好ましく、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは、40
質量%以上である。エタノールの含有量は、製剤の扱いやすさの観点から、医薬組成物全
量に対して、好ましくは、90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下、さら
に好ましくは70質量%以下である。医薬組成物全量に対して、エタノールの含有量は、
好ましくは20~90質量%であり、より好ましくは30~80質量%、さらに好ましく
は40~70質量%である。
【0043】
本発明の医薬組成物において、(A)成分に対するエタノールの比率は、使用感の観点
から、例えば、(A)成分の総含有量1質量部に対して、エタノールの含有量が15~1
80質量部とすることができ、好ましくは、25~140質量部、より好ましくは35~
100質量部、さらに好ましくは45~90質量部、特に好ましくは60質量部である。
【0044】
[塩]
本明細書でいう「塩」は、例えば、有機塩と無機塩とが例示される。有機塩としては、
アンモニウム、またはジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン等
が例示され、無機塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等との
塩が挙げられる。また、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸の塩
;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、酢酸、プロピオン
酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、安息香
酸、マンデル酸、ケイ皮酸、乳酸、グリコール酸、グルクロン酸、アスコルビン酸、ニコ
チン酸、サリチル酸等の有機酸との塩;又はアスパラギン酸、グルタミン酸などの酸性ア
ミノ酸との塩なども挙げられる。なお、「塩」には、塩の溶媒和物または水和物を含んで
いてもよい。特に(A)成分の塩の形態としては、特に限定はされないが、入手のしやす
さの観点から、好ましくは無機酸の塩であり、より好ましくは塩酸塩または硝酸塩などで
ある。
【0045】
[容器]
本発明の医薬組成物を充填する容器は特に限定されない。医薬品外用剤、医薬部外品、
化粧品用の容器として用いられるものであればよい。このような容器材質として、例えば
、医薬組成物との接触面の一部又は全部、好ましくは全部が、ポリオレフィン樹脂、アク
リル酸樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアミ
ド、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアリレ
ート、ポリスルホン、ポリイミド、セルロースアセテート、アルミニウム、及びガラスか
らなる群より選ばれる少なくとも1種の材料で構成されている容器が挙げられる。
【0046】
製剤の扱いやすさの観点から、本発明の医薬組成物を充填する容器の材質は、ポリエチ
レン(PE)(高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超
低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレ
ンなどを含む)、ポリプロピレン(PP)(アイソタクチックポリプロピレン、シンジオ
タクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレンなどを含む)、及びエチレン・
プロピレンコポリマー、ポリメチルペンテン、ポリブテンー1、1,2-ポリブタジエン
のようなポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレー
ト、ポリエチレンナフタレートが好ましく、ポリエチレンまたはポリプロピレンがより好
ましい。
【0047】
容器の形状は、限定はされないが、チューブ、滴下用容器、搾りだし容器であることが
好ましい。
【0048】
[剤形]
本発明の医薬組成物は、医薬品、医薬部外品等として幅広く利用可能な任意の形態で提
供される。好ましくは、皮膚外用剤として利用可能な製剤として提供される。本発明の医
薬組成物は、公知の形態であれば、特に限定されないが、本発明の効果をより顕著に奏す
る観点から、例えば、クリーム剤、液剤、懸濁剤、乳剤、ジェル剤、ローション剤、エア
ゾール剤、ミスト剤などの水性医薬組成物の形態で提供されることが好ましく、ジェル剤
、クリーム剤、液剤、懸濁剤、乳剤、ローション剤、ミスト剤であることがより好ましい
。特にはジェル剤であることが好ましい。ここで、水性医薬組成物とは、組成物全量に占
める水分または水溶性溶媒の割合が10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、さら
に好ましくは30質量%以上の剤形を指す。
【0049】
製剤は、第17改正日本薬局方総則に従い、又はこれに準拠して、各成分を混合する
ことにより製造できる。
【0050】
[製造方法]
本発明の医薬組成物は、公知の方法により製造することができる。必要に応じて、滅菌
工程やろ過工程を含めることができる。
【0051】
[基剤、担体、又はその他の成分]
本発明の医薬組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、医薬品、医薬部外品、化粧
品等として用いられ得る、公知の基剤又は担体と共に混合して製剤化することができる。
その他に、本発明の医薬組成物には、例えば、界面活性剤、油分、アルコール類、高級脂
肪酸、防腐剤、抗酸化剤、酸化防止剤、清涼化剤、各種高分子、保存剤、キレート剤、p
H調整剤、安定化剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、香料、着色剤、色素等
の添加剤を配合することができる。これらの添加剤は、1種を単独で又は2種以上を組み
合わせて使用できる。
【0052】
基剤又は担体としては、例えば、炭化水素、シリコーン油、エステル類、低級アルコー
ル、多価アルコール、精製水等が挙げられる。炭化水素としては、例えば、流動パラフィ
ン、スクワラン、ゲル化炭化水素(プラスチベースなど)、オゾケライト、α-オレフィ
ンオリゴマー、軽質流動パラフィン等が挙げられ、シリコーン油としては、例えば、メチ
ルポリシロキサン、架橋型メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、環状シ
リコーン、アルキル変性シリコーン、架橋型アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコ
ーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、架橋型ポリエーテ
ル変性シリコーン、架橋型アルキルポリエーテル変性シリコーン、シリコーン・アルキル
鎖共変性ポリエーテル変性シリコーン、シリコーン・アルキル鎖共変性ポリグリセリン変
性シリコーン、ポリエーテル変性分岐シリコーン、ポリグリセリン変性分岐シリコーン、
アクリルシリコン、フェニル変性シリコーン、シリコーンレジン等が挙げられ、エステル
類としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パル
ミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、テトラ2-エチ
ルヘキサン酸ペンタエリスリット等が挙げられ、低級アルコール類としては、例えば、イ
ソプロパノール等が挙げられ、多価アルコールとしては、例えば、ジエチレングリコール
モノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルのようなグリコールエー
テル;ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、
グリセリン、イソプレングリコール等が挙げられる。
【0053】
基剤又は担体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0054】
界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤が挙げられる。非イオン性界面活
性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エス
テル類、ヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシ
アルキレンアルキルエーテル、アミン類、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエチレン
ラウリルアルコールエーテルなどが例示される。ソルビタン脂肪酸エステル類としては、
例えば、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノ
パルミテート、ソルビタンモノステアレート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロ
ールソルビタン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等が挙げられ
、プロピレングリコール脂肪酸エステル類としては、例えば、モノステアリン酸プロピレ
ングリコールのようなプロピレングリコール脂肪酸エステル類などが挙げられ、ヒマシ油
誘導体としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油等が挙
げられ、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類としては、例えば、モノラウリ
ル酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノステアリン酸
ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、モノオレイン酸ポリオ
キシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、イソステアリン酸ポリオキシ
エチレン(20)ソルビタン等が挙げられ、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとし
ては、例えば、ポリオキシエチレンモノヤシ油脂肪酸グリセリル;グリセリンアルキルエ
ーテル;アルキルグルコシド;ポリオキシエチレンセチルエーテル等が挙げられ、アミン
類としては、例えば、ステアリルアミン、オレイルアミン等が挙げられ、シリコーン系界
面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ラウ
リルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、PEG-9ポリジメチルシロキ
シエチルジメチコン等が挙げられる。
【0055】
界面活性剤としては、この他に、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ
る。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸塩、パルミチン酸塩、ココイル
グルタミン酸塩、ヤシ油メチルアラニン塩、アシルメチルタウリン塩、ポリオキシエチレ
ンラウリル硫酸塩等が挙げられ、両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジアミノエ
チルグリシン塩、ヤシ油脂肪酸ベタイン塩等が挙げられる。
【0056】
油分としては、天然動植物油脂類、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、高級アル
コール、高級脂肪酸、動植物や合成の精油などが挙げられる。
【0057】
天然動植物油脂類としては、例えば、アボガド油、アマニ油、アーモンド油、オリーブ
油、カカオ油、牛脂、キリ油、小麦胚芽油、ゴマ油、米胚芽油、米糠油、サフラワー油、
大豆油、月見草油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、馬脂、パーシック油、パーム
油、パーム核油、ヒマシ油、ヒマワリ油、豚脂、ブドウ油、ホホバ油、マカデミアナッツ
油、ミンク油、綿実油、モクロウ、ミツロウ、サラシミツロウ、ヤシ油、硬化ヤシ油、落
花生油、ラノリン、卵黄油、ローズヒップ油等が挙げられる。
【0058】
炭化水素油としては、パラフィン系炭化水素、オレフィン系炭化水素が用いられ、例え
ば、スクワラン、スクワレン、セレシン、パラフィン、プリスタン、マイクロクリスタリ
ンワックス、流動パラフィン、ワセリン等が挙げられる。
【0059】
エステル油としては、合成エステル類、高級アルコールと高級脂肪酸とのエステル類が
用いられ、例えば、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン
酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、イソステアリン酸イソステアリル、トリイソステアリン
酸トリメチロールプロパン、2-エチルヘキサン酸セチル、ジ-2-エチルヘキサン酸ネ
オペンチルグリコール、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ-
2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、
オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール
、コハク酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシ
ン酸ジイソプロピル、乳酸セチル、乳酸テトラデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリ
スチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン
酸オクチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パル
ミチン酸2-ヘプチルウンデシル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、オレイ
ン酸フィトステリル、リンゴ酸ジイソステアリル、パラメトキシケイ皮酸エステル、テト
ラロジン酸ペンタエリスリット等が挙げられる。
【0060】
シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサ
ン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、オクタメチ
ルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロヘ
キサシロキサン、ステアロキシシリコーン等の高級アルコキシ変性シリコーン、アルキル
変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン等が挙げられる。
【0061】
アルコールとしては、例えば、低級アルコール、高級アルコール等が挙げられる。低級
アルコールとしては、例えば、イソプロパノール等が挙げられ、高級アルコールとしては
、例えば、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ス
テアリルアルコール、セタノール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。
【0062】
高級脂肪酸としては、飽和又は不飽和の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数12~22の脂肪
酸を用いることができ、例えば、イソステアリン酸、オキシステアリン酸、オレイン酸、
ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘニン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、ラノリン酸、リ
ノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
【0063】
防腐剤の好適な例としては、例えば、安息香酸、酢酸、フェノール、ヨードチンキ、パ
ラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアル
コール、デヒドロ酢酸などが挙げられる。
【0064】
抗酸化剤の好適な例としては、例えば亜硫酸塩、アスコルビン酸などが挙げられる。
【0065】
酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニ
ソール(BHA)、亜硫酸ナトリウム、エリソルビン酸、L-システイン塩酸塩、ビタミ
ンC類、ビタミンE類などが挙げられる。ビタミンC類としては、例えば、アスコルビゲ
ン-A、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、
ジパルミチン酸L-アスコルビル、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、デヒド
ロアスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸リン酸ナ
トリウム塩、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム等が挙げられる。ビタミンE類
としては、例えば、dl-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール、コハク
酸dl-α-トコフェロール、コハク酸dl-α-トコフェロールカルシウム等が挙げら
れる。
【0066】
清涼化剤としては、限定はされないが、メントール(l-メントール、dl-メントー
ルなど)、カンフル(d-カンフル、dl-カンフルなど)、ボルネオールなどのテルペ
ノイド、テルペノイドを含有する精油(ハッカ油)、またはその薬理学的に許容される塩
等が例示される。これらの薬剤から1種または2種以上を適宜組み合わせて使用すること
もできる。
【0067】
各種の高分子としては、ビニル系高分子、アクリル系高分子、ムコ多糖、デンプン系高
分子、デキストラン、デキストリン脂肪酸エステル、ペクチン、カゼイン、ジメチルジス
テアリルアンモニウムヘクトライト、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビ
ニルピロリドン)コポリマー、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、トリイソステア
リン酸エチレングリコール、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)メチルグ
ルコシド、ベントナイト、ヘクトライト、アルギン酸及び又はその塩、アルギン酸プロピ
レングリコールエステル、ポリエチレングリコール、増粘多糖類などが挙げられる。
【0068】
ビニル系高分子としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、又はポリビ
ニルメチルエーテル等を例示することができ、これらのうち、1種又は2種以上を用いる
こともできる。
【0069】
アクリル系高分子としては、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸
ヒドロキシエチル・アクリロイルジメチルタウリン塩共重合体(特に、アクリル酸ヒドロ
キシエチル・アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体)、アクリル酸ナトリウ
ム・アクリロイルジメチルタウリン共重合体、アクリル酸ナトリウム・アクリル酸メタク
リル酸ナトリウム・メタクリル酸ナトリウム・メタクリル酸アルキル共重合体、ステアレ
ス-10アリルエーテル・アクリレーツ共重合体、ポリアクリル酸又はその塩(カルボキ
シビニルポリマー)、アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム共重合体、アクリル酸
・メタクリル酸ポリオキシエチレングリコールエーテル共重合体、ポリアクリルアミド、
及びアクリルアミド・アクリル酸アンモニウム共重合体等を例示することができる。
【0070】
増粘多糖類としては、医薬品、医薬部外品又は化粧品分野において外用剤の成分として
用いられるもののうち、具体的には、カラギーナン、キサンタンガム、アラビアガム、ペ
クチン、ムコ多糖が挙げられる。ムコ多糖としては、コンドロイチン硫酸塩(ナトリウム
塩など)、ヒアルロン酸又はその塩(ナトリウム塩など)、及びヒアルロン酸誘導体又は
その塩、ヘパリン、ヘパリン類似物質のようなグリコサミノグリカン等を例示することが
できる。
【0071】
デンプン系高分子としては、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸(例えば、Natio
nal Starch, LLC社製、StructureXL)、変性コーンスターチ
、及びコーンスターチ等を例示することができる。
【0072】
保存剤としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリ
ウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安
息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安
息香酸ベンジル、パラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノールなどが挙げられる。
【0073】
キレート剤としては、EDTA・2ナトリウム塩、EDTA・カルシウム・2ナトリウ
ム塩などが挙げられる。
【0074】
pH調整剤としては、無機酸(塩酸、硫酸など)、有機酸(乳酸、乳酸ナトリウム、ク
エン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウムなど)、無機塩基(水酸化
カリウム、水酸化ナトリウムなど)、有機塩基(トリエタノールアミン、ジイソプロパノ
ールアミン、トリイソプロパノールアミンなど)などが挙げられる。
【0075】
安定化剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT
)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)などが挙げられる。
【0076】
溶解補助剤としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マ
ンニトール、安息香酸ベンジル、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノール
アミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0077】
懸濁化剤としては、例えばステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム
、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、モノステアリン酸グリセリンなどの界面活性
剤が挙げられる。
【0078】
等張化剤としては、例えば塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトールなどが挙げ
られる。
【0079】
緩衝剤としては、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩などの緩衝液などが挙
げられる。
【0080】
着色剤としては、無機顔料、天然色素などが挙げられる。
【0081】
本発明の医薬組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに、その他の有効成分
を含むこともできる。このような成分の具体例としては、例えば、鎮痒成分、保湿成分、
血行促進成分、収斂成分、ペプチド又はその誘導体、アミノ酸又はその誘導体、細胞賦活
化成分、ビタミン剤などが挙げられる。
【0082】
鎮痒成分としては、例えば、クロタミトン等が挙げられる。
【0083】
保湿成分としては、例えば、ヒアルロン酸又はその塩(ナトリウム塩など)、及びヒア
ルロン酸誘導体又はその塩、トレハロース、キシリトール、オリゴ糖のような糖類;ヘパ
リン類似物質、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、キチン、キトサンのような高分子化
合物;グリシン、アスパラギン酸、アルギニンのようなアミノ酸;乳酸ナトリウム、ピロ
リドンカルボン酸ナトリウムのような天然保湿因子;セラミド、コレステロール、リン脂
質のような脂質;カミツレエキス、ハマメリスエキス、チャエキス、シソエキスのような
植物抽出エキスなどが挙げられる。
【0084】
血行促進剤としては、例えば、アセチルコリン、カフェイン、カプサイシン、カンタリ
スチンキ、ガンマーオリザノール、ショオウキョウチンキ、ジンゲロン、セファランチン
、センブリエキス、タンニン酸、トウガラシチンキ、トラゾリン、ニコチン酸トコフェロ
ール、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸アミド等が挙げられる。
【0085】
収斂成分としては、硫酸亜鉛、クロルヒドロキシアルミニウム、塩化アルミニウム、ス
ルホ石炭酸亜鉛及びタンニン酸等が挙げられる。
【0086】
ペプチド又はその誘導体としては、ケラチン分解ペプチド、加水分解ケラチン、コラー
ゲン、魚由来コラーゲン、アテロコラーゲン、ゼラチン、エラスチン、エラスチン分解ペ
プチド、コラーゲン分解ペプチド、加水分解コラーゲン、塩化ヒドロキシプロピルアンモ
ニウム加水分解コラーゲン、エラスチン分解ペプチド、コンキオリン分解ペプチド、加水
分解コンキオリン、シルク蛋白分解ペプチド、加水分解シルク、ラウロイル加水分解シル
クナトリウム、大豆蛋白分解ペプチド、加水分解大豆蛋白、小麦蛋白、小麦蛋白分解ペプ
チド、加水分解小麦蛋白、カゼイン分解ペプチド、アシル化ペプチド(パルミトイルオリ
ゴペプチド、パルミトイルペンタペプチド、パルミトイルテトラペプチド等)などが挙げ
られる。
【0087】
アミノ酸又はその誘導体としては、ベタイン(トリメチルグリシン)、プロリン、ヒド
ロキシプロリン、アルギニン、リジン、セリン、グリシン、アラニン、フェニルアラニン
、β-アラニン、スレオニン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン、アスパラギン
酸、システイン、シスチン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、ヒスチジン
、タウリン、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸、カルニチン、カルノシ
ン、クレアチン等が挙げられる。
【0088】
細胞賦活化成分としては、γ-アミノ酪酸、ε-アミノカプロン酸などのアミノ酸類、
レチノール、チアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、パントテン酸類などのビタミ
ン類、グリコール酸、乳酸などのα-ヒドロキシ酸類、タンニン、フラボノイド、サポニ
ン、感光素301号などが挙げられる。
【0089】
ビタミン剤としては、ビタミンB類、ビタミンC類、ビタミンD類、ビタミンE類、ニ
コチン酸類、ビタミンK類、その他のビタミン類のいずれも用いることができる。ビタミ
ンB類としては、ビタミンB1類、ビタミンB2類、ビタミンB6類、ビタミンB12類
、ニコチン酸類、パントテン酸類、葉酸、ビオチン等が挙げられる。ビタミンE類として
は、例えば、dl-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール、コハク酸dl
-α-トコフェロール、コハク酸dl-α-トコフェロールカルシウム等;ビタミンB2
類としては、例えば、リボフラビン、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌ
クレオチド、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビンテトラ酪酸エステル、リボフラビ
ン5’-リン酸エステルナトリウム、リボフラビンテトラニコチン酸エステル等;ニコチ
ン酸類としては、例えば、ニコチン酸dl-α-トコフェロール、ニコチン酸ベンジル、
ニコチン酸メチル、ニコチン酸β-ブトキシエチル、ニコチン酸1-(4-メチルフェニ
ル)エチル等;ビタミンC類としては、例えば、アスコルビゲン-A、アスコルビン酸ス
テアリン酸エステル、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、ジパルミチン酸L-アスコ
ルビル、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、デヒドロアスコルビン酸、アスコ
ルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸リン酸ナトリウム塩、アスコルビン
酸リン酸エステルマグネシウム等;ビタミンD類としては、例えば、メチルヘスペリジン
、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール等;ビタミンK類としては、例えば、
フィロキノン、ファルノキノン等;ビタミンB1類としては、例えば、ジベンゾイルチア
ミン、ジベンゾイルチアミン塩酸塩チアミン塩酸塩、チアミンセチル塩酸塩、チアミンチ
オシアン酸塩、チアミンラウリル塩酸塩、チアミン硝酸塩、チアミンモノリン酸塩、チア
ミンリジン塩、チアミントリリン酸塩、チアミンモノリン酸エステルリン酸塩、チアミン
モノリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル塩酸塩、チ
アミントリリン酸エステル、チアミントリリン酸エステルモノリン酸塩等;ビタミンB6
類としては、例えば、塩酸ピリドキシン、酢酸ピリドキシン、塩酸ピリドキサール、5’
-リン酸ピリドキサール、塩酸ピリドキサミン等;ビタミンB12類としては、例えば、
シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、デオキシアデノシルコバラミン等;ニコチン
酸類としては、例えば、ニコチン酸、ニコチン酸アミド等;パントテン酸類としては、例
えば、パントテン酸、パントテン酸カルシウム、パントテニルアルコール(D-パンテノ
ール)、D-パンテサイン、D-パンテチン、補酵素A、パントテニルエチルエーテル等
;ビオチン、葉酸等;及びその薬理学的に許容される塩等のビタミン様作用因子などが挙
げられる。
【0090】
[pH]
本発明の医薬組成物のpHは、(A)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、製
剤形態、使用方法等に応じて適宜設定され、生理学的又は薬学的に許容できる範囲であれ
ば制限されないが、安全性の観点から、例えば、pH2~9とすることができ、好ましく
は、約3~8、より好ましくは、約5~7とすることができる。
【0091】
[粘度]本発明の医薬組成物の粘度は、製剤の扱いやすさの観点から、医薬組成物全量
に対して、好ましくは1~10Pa・sであり、より好ましくは2~8Pa・s、さらに
好ましくは4~6Pa・sである。なお、本明細書における粘度とは東機産業株式会社製
RB80型粘度計、M3ロータを用いて回転速度12rpm、測定時間1分にて測定した
際に得られた結果とする。
【0092】
[用途]
本発明の医薬組成物は、限定はされないが、好ましくは、水虫またはタムシ、カンジダ
症などの治療に用いられる。本発明の医薬組成物は、爪及び爪周り、特には、爪溝及び/
又は黄線部付近の溝の他、爪母、爪根、爪半月、爪甲、爪先、黄線、後爪郭、甘皮、側爪
郭、爪床、爪下皮などの爪及び爪周り全般に使用することができ、水虫またはタムシの治
療に用いられる。本発明の効果をより顕著に奏する観点から、特に好ましくは、溝及び/
又は黄線部付近の有効成分の届きにくい箇所の水虫に適用され得る。
【0093】
水虫は、白癬菌を原因菌とする皮膚の症状である。爪及び爪周りの症状と特徴としては
、かゆみ、小さなブツブツ、皮むけ、爪及び爪周りの乾燥、硬化、粉吹き、ガサガサなど
がある。白癬菌は特に爪及び爪周りの角質の成分のケラチンが存在する角質の厚い部分に
できやすく、爪及び爪周りに特に症状が現れることがある。
【0094】
タムシは、白癬菌を原因菌とする皮膚の症状である。皮膚上に小さな赤い輪ができ、徐
々に広がる症状がある。かゆみを伴い、水虫と類似するが、タムシは皮膚の薄い箇所にで
きやすい。
【0095】
カンジダ症は、カンジダ菌を原因菌とし、手の皮膚表面のガサガサ、指の間の皮膚むけ
、爪の根元の白への変色などが症状として現れる。
【0096】
本発明の医薬組成物は、限定はされないが、白癬菌による症状、癜風、カンジダ症、指
間びらん症、間擦疹等の治療に用いられ得る。
【0097】
本発明の医薬組成物は、限定はされないが、本発明の効果をより顕著に奏する観点から
、爪及び爪周り用のジェル剤又は液剤である水虫治療薬として提供されることが好ましい
【0098】
また、本発明の医薬組成物の使用方法は、爪及び爪周りの皮膚等の状態、年齢、性別な
どによって異なるが、例えば以下の方法とすればよい。即ち、1日数回(例えば、約1~
5回、好ましくは1~3回、より好ましくは1回)、適量(例えば、約0.5~2g)を
爪及び爪周り(例えば、爪溝及び/又は黄線部付近の溝)に適用すればよい。また、抗真
菌剤(例えばテルビナフィンまたはその塩)の1日使用量が、例えば約5~20mgとな
るように組成物を爪及び爪周り(例えば、爪溝及び/又は黄線部付近の溝)に適用すれば
よい。適用方法は、剤型に合わせて行い、好ましくは塗布とする。適用期間は、例えば約
30日間以上とすることが好ましい。
【0099】
[医薬組成物の広がり促進]
本発明では、(A)抗真菌剤、(B)セルロース系高分子、及び(C)成分を共存させ
ることにより、これらを含有する医薬組成物について、特に、爪及び爪周りへ広がりを促
進することができる。ここで、特に広がり促進は、本明細書中で、「伸展性」ともいう。
本発明において、医薬組成物の「伸展性」とは、医薬組成物が、爪及び爪周り、特には、
爪溝及び/又は黄線部付近の溝の他、爪母、爪根、爪半月、爪甲、爪先、黄線、後爪郭、
甘皮、側爪郭、爪床、爪下皮などの爪及び爪周り全般へ行き渡ることを言う。このような
広がりの促進のためには、上記の本発明の医薬組成物における各成分の濃度、pH、粘度
、製剤の条件等と同様の条件を採用する。
【0100】
[医薬組成物の艶感又は保湿感]
本発明では、医薬組成物に、(A)抗真菌剤、(B)セルロース系高分子、及び(C)
成分を共存させることにより、特に、爪及び爪周りに艶感及び/又は保湿感を付与するこ
とができる。本発明において、このような艶感又は保湿感を発揮するためには、上記の本
発明の医薬組成物における各成分の濃度、pH、粘度、製剤等の条件と同様の条件を採用
する。
【実施例0101】
次に、実施例や試験例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例や試
験例に限定されるものではない。
【0102】
[試験例1.表面張力測定試験]
表1~表5に示す実施例及び比較例の組成の医薬組成物を、常法に従って調製した。次
に、実施例及び比較例の組成物の表面張力を測定した。各組成物をそれぞれ適量取り、毛
管上昇方式表面張力計(キャピラリサイズ φ6×160mm、キャピラリ内径サイズφ
0.5mm; アズワン製、型番2380-05-10)による測定に供した。所定の比
較例に対する各実施例の表面張力低下率を式1に従って算出した。結果を表に合わせて示
す。表面張力が低いほど組成物は伸展するため、患部への適用後より適切に真菌へ薬剤を
届けることができる。式1:
表面張力低下率=(比較例の表面張力―実施例の表面張力)/比較例の表面張力×10
0(%)
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
【表4】
【0107】
【表5】
【0108】
実施例の組成物では、比較例の組成物と比べ表面張力が低下していることが確認された
。従って、テルビナフィン塩酸塩に、セルロース系高分子、及びイソプロピルメチルフェ
ノール、グリチルレチン酸、リドカインまたはジフェンヒドラミン塩酸塩を共存させるこ
とで組成物の伸展性が向上した。このような組成物は爪、爪周りの深部に存在する真菌に
対してより適切に組成物を届けられる。
【0109】
[試験例2.官能評価]
被験者5名について、表6に示す実施例及び比較例の医薬組成物を、爪及び爪周りに適
量塗布し、塗布時あるいは塗布30分後の、艶感、製剤ののびの良さ、及び保湿感をVA
S(Visual Analogue Scale)法によって評価した。すなわち、各
質問項目について長さ100mmの線分の左端から回答した斜線位置までの長さを測定し
、回答値とした。艶感の場合、塗布30分後の爪及び爪周りの状態について、「全く感じ
ない」を0mm(線分の左端)としての回答、「光り輝いて見えるほど強く感じる」を1
0mm(線分の右端)としての回答と定め、各組成物の艶感がどの程度か評価した。製剤
ののびの良さの場合、塗布時の爪及び爪周りの製剤の扱いやすさについて「全くのびない
」を0mm(線分の左端)としての回答、「隅々までよくのびた」を10mm(線分の右
端)としての回答と定め、各組成物の伸展性がどの程度か評価した。保湿感の場合、塗布
30分後の爪及び爪周りの状態について「全く感じない」を0mm(線分の左端)として
の回答、「非常に強く感じる」を10mm(線分の右端)としての回答と定め、各組成物
の保湿感がどの程度か評価した。被験者には、各組成物の組成を伏せて実施した 。
【0110】
【表6】
【0111】
テルビナフィン塩酸塩に、セルロース系高分子並びにイソプロピルメチルフェノールや
グリチルレチン酸を共存させることで爪及び爪周りの艶感、伸展性、及び保湿感が向上す
ることが確認された。
【0112】
以下、本発明の製剤処方例を示す。表7に記載の処方で、医薬組成物を常法により調製
した。これらの製剤は、爪及び爪周りに有効に用いられるジェル剤である。すべての製剤
は、PE製容器に収容して用いることも可能である。
【0113】
【表7】
【手続補正書】
【提出日】2024-10-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0113
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0113】
【表7】
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)抗真菌剤を0.1~2質量%;
(B)メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースまたはこれらの塩の1種又は2種以上;
(C)イソプロピルメチルフェノール、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸の塩、グリチルリチン酸の塩、アミン及びアミド構造を有するアミド型局所麻酔剤、マレイン酸クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン及びジフェンヒドラミンの塩からなる群から選択される1種又は2種以上の化合物;及びエタノール20質量%以上を含有する、爪溝及び/又は黄線部付近の溝用医薬組成物
(但し、以下(i)及び(ii)の外用組成物を除く;
(i)ネチコナゾールまたはその薬学的に許容される塩とトルナフテートを含有する抗真菌性外用組成物;
(ii)(A)抗真菌剤ならびに(B)組成物全量に対して、1~20質量%のサリチル酸および/またはその塩を含有する外用組成物)。
【請求項2】
(A)抗真菌剤を0.1~2質量%;
(B)メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースまたはこれらの塩の1種又は2種以上;
(C)イソプロピルメチルフェノール、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸の塩、グリチルリチン酸の塩、アミン及びアミド構造を有するアミド型局所麻酔剤、マレイン酸クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン及びジフェンヒドラミンの塩からなる群から選択される1種又は2種以上の化合物;及び水又は水溶性溶媒20質量%以上を含有する水性医薬組成物である、爪溝及び/又は黄線部付近の溝用医薬組成物(但し、以下(i)及び(ii)の外用組成物を除く;
(i)ネチコナゾールまたはその薬学的に許容される塩とトルナフテートを含有する抗真菌性外用組成物;
(ii)(A)抗真菌剤ならびに(B)組成物全量に対して、1~20質量%のサリチル酸および/またはその塩を含有する外用組成物)。
【請求項3】
(A)抗真菌剤を0.1~2質量%;
(B)メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースまたはこれらの塩の1種又は2種以上;及び
(C)イソプロピルメチルフェノール、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸の塩、グリチルリチン酸の塩、アミン及びアミド構造を有するアミド型局所麻酔剤、マレイン酸クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン及びジフェンヒドラミンの塩からなる群から選択される1種又は2種以上の化合物;を含有し、ジェル剤又は液剤である、爪溝及び/又は黄線部付近の溝用医薬組成物(但し、以下(i)及び(ii)の外用組成物を除く;
(i)ネチコナゾールまたはその薬学的に許容される塩とトルナフテートを含有する抗真菌性外用組成物;
(ii)(A)抗真菌剤ならびに(B)組成物全量に対して、1~20質量%のサリチル酸および/またはその塩を含有する外用組成物)。
【請求項4】
前記(A)抗真菌剤が、アミン系抗真菌剤又はアゾール系抗真菌剤である、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記(A)抗真菌剤が、テルビナフィン、ブテナフィン、ミコナゾール、ラノコナゾール、イソコナゾール、ルリコナゾール、及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記水溶性溶媒がエタノールである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
さらに、エタノールを含有する、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記(B)成分の総含有量が、0.01~10質量%である、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
(A)成分の総含有量1質量部に対する、(B)成分の総含有量が、0.1~20質量部である、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
(A)抗真菌剤を0.1~2質量%;
(B)メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースまたはこれらの塩の1種又は2種以上;
(C)イソプロピルメチルフェノール、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸の塩、グリチルリチン酸の塩、アミン及びアミド構造を有するアミド型局所麻酔剤、マレイン酸クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン及びジフェンヒドラミンの塩からなる群から選択される1種又は2種以上の化合物;及び水又は水溶性溶媒20質量%以上を共存させることで、爪溝及び/又は黄線部付近の溝用医薬組成物の伸展性を向上させる方法(但し、組成物が、以下(i)及び(ii)の外用組成物である場合を除く;
(i)ネチコナゾールまたはその薬学的に許容される塩とトルナフテートを含有する抗真菌性外用組成物;
(ii)(A)抗真菌剤ならびに(B)組成物全量に対して、1~20質量%のサリチル酸および/またはその塩を含有する外用組成物)。