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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169718
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】プラテン及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/02 20060101AFI20241128BHJP
   B65H 5/18 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B41J11/02
B65H5/18
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024168361
(22)【出願日】2024-09-27
(62)【分割の表示】P 2021022106の分割
【原出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高際 豊
(57)【要約】
【課題】吐出されたインクが布地に付着する位置が布地の所望の位置からずれる可能性を低減できるプラテン及び印刷装置を提供する。
【解決手段】プラテン5は板50、貼り付け材8、シート7を備える。板50の上面には貼り付け材8、シート7が下方から順に積載される。シート7は所定間隔で並んだ複数の突出部71を備える。突出部71はシート7の上面70から上方および前方に向かって突出する。突出部71は基部から先端に向かって細くなる。突出部71の先端はプラテン5にセットされたTシャツ90の繊維92を引っ掛ける。プリンタはヘッドからインクを吐出し、プラテン5にセットされたTシャツ90に印刷を行う。印刷が完了した後、ユーザはTシャツ90を前方に引き出してプラテン5から取り外す。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドによりインクが吐出される布地を支持するプラテンであって、
前記プラテンの上面から上方に突出する突出部を複数備え、
前記突出部の先端は、前記布地の毛羽又は繊維を引っ掛ける形状を有することを特徴とするプラテン。
【請求項2】
前記プラテンは上下方向と直交する第1方向、且つ前記上下方向及び前記第1方向と直交する第2方向に延び、
複数の前記突出部は、前記プラテンの前記上面から前記上方且つ前記第1方向及び前記第2方向において前記プラテンの外側に向かって突出することを特徴とする請求項1に記載のプラテン。
【請求項3】
複数の前記突出部は、前記外側として、前記布地が前記プラテンから取り外される取り外し方向に向かって突出することを特徴とする請求項2に記載のプラテン。
【請求項4】
前記プラテンは前記布地として衣服を支持し、
前記プラテンの前記第1方向の一端部には前記衣服の襟を位置決めする位置決め部が設けられ、
複数の前記突出部は、前記上方及び前記一端部に向かって突出することを特徴とする請求項2または3に記載のプラテン。
【請求項5】
複数の前記突出部は、前記上面の全面に設けられることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のプラテン。
【請求項6】
布地にインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記布地を支持するプラテンとを備え、
前記プラテンは、上面から上方に突出する突出部を複数備え、
前記突出部の先端は、前記布地の毛羽又は繊維に引っ掛ける形状を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
前記インクジェットヘッドは、下地インクを吐出する下地インクジェットヘッドと、
前記下地インクの上にカラーインクを吐出するカラーインクジェットヘッドとを有することを特徴とする請求項6に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラテン及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の印刷装置は、布等の媒体を下方から支持する媒体支持ユニットと、媒体にインクを吐出して印刷を行う印刷ヘッドとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-138362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記印刷装置では、布の種類によっては、インクが付くと、布が縮んでしまう可能性がある。すると、その後に吐出されるインクが布に付着する位置は布の所望の位置からずれる可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、吐出されたインクが布地に付着する位置が布地の所望の位置からずれる可能性を低減できるプラテン及び印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係るプラテンは、インクジェットヘッドによりインクが吐出される布地を支持するプラテンであって、前記プラテンの上面から上方に突出する突出部を複数備え、前記突出部の先端は、前記布地の毛羽又は繊維を引っ掛ける形状を有することを特徴とする。
【0007】
第一態様のプラテンは突出部の先端が布地の毛羽又は繊維を引っ掛けるので、インクにより布地の縮む量が低減される。従って、吐出されたインクが布地に付着する位置が布地の所望の位置からずれる可能性を低減できる。
【0008】
前記プラテンは上下方向と直交する第1方向、且つ前記上下方向及び前記第1方向と直交する第2方向に延び、複数の前記突出部は、前記プラテンの前記上面から前記上方且つ前記第1方向及び前記第2方向において前記プラテンの外側に向かって突出してもよい。
【0009】
この場合、プラテンは突出部によりプラテンの内側に向かって縮もうとする布地の縮み量を低減できる。
【0010】
複数の前記突出部は、前記外側として、前記布地が前記プラテンから取り外される取り外し方向に向かって突出してもよい。
【0011】
ユーザが布地をプラテンから取り外し方向に取り外す場合に、突出部が上方及び取り外し方向に向かって突出するので、取り外される布地と突出部の引っ掛かりが低減される。
【0012】
前記プラテンは前記布地として衣服を支持し、前記プラテンの前記第1方向の一端部には前記衣服の襟を位置決めする位置決め部が設けられ、複数の前記突出部は、前記上方及び前記一端部に向かって突出してもよい。
【0013】
ユーザが衣服をプラテンから一端部に向かって取り外す場合に、突出部が上方及び一端部に向かって突出するので、取り外される衣服と突出部の引っ掛かりが低減される。
【0014】
複数の前記突出部は、前記上面の全面に設けられてもよい。
【0015】
この場合、プラテンは上面の一部に突出部が設けられる場合と比較して、インクにより布地が縮む量を低減できる。
【0016】
本発明の第二態様に係る印刷装置は、布地にインクを吐出するインクジェットヘッドと、前記布地を支持するプラテンとを備え、前記プラテンは、上面から上方に突出する突出部を複数備え、前記突出部の先端は、前記布地の毛羽又は繊維に引っ掛ける形状を有することを特徴とする。
【0017】
第二態様の印刷装置は、第一態様と同様の効果を奏することができる。
【0018】
前記インクジェットヘッドは、下地インクを吐出する下地インクジェットヘッドと、前記下地インクの上にカラーインクを吐出するカラーインクジェットヘッドとを有してもよい。
【0019】
印刷装置は、下地インクにより布地が縮む量を低減するので、吐出されたカラーインクが布地に付着する位置が、下地インクが布地に付着した位置からずれる可能性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】プリンタ1を前右上方から見た斜視図である。
図2】筐体2の上部を取り除いたプリンタ1を前右上方から見た斜視図である。
図3】プラテン5の平面図である。
図4図3で示すプラテン5のA-A線矢視方向の断面図である。
図5】Tシャツ90が位置決めされたプラテン5の平面図である。
図6図5で示すプラテン5およびTシャツ90のB-B線矢視方向の断面図である。
図7】突出部71の水平方向における指向性の変形例の説明図である。
図8】突出部72が設けられた場合の図5で示すプラテン5およびTシャツ90のB-B線矢視方向の断面図である。
図9】突出部73が設けられた場合の図5で示すプラテン5およびTシャツ90のB-B線矢視方向の断面図である。
図10】突出部74が設けられた場合の図5で示すプラテン5およびTシャツ90のB-B線矢視方向の断面図である。
図11】突出部75が設けられたプラテン5の平面図である。
図12図11で示すプラテン5のC-C線矢視方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を参照して、本発明の一実施形態に係るプリンタ1およびプラテン5を説明する。
図1に示すプリンタ1はインクジェットプリンタであり、印刷媒体である布地にインクを吐出して印刷を行う。布地は例えば布帛、フェルト等であり、本実施形態ではTシャツ90である。図1の上方、下方、左下方、右上方、右下方、および左上方が、それぞれ、プリンタ1およびプラテン5の上方、下方、前方、後方、右方、および左方である。本実施形態において図面中の機械的要素は、実際のスケールを示す。
【0022】
図1を参照し、プリンタ1の概略構成を説明する。図1に示すように、プリンタ1は筐体2、搬送部6、プラテン支持部材3、およびプラテン5を備える。筐体2は直方体状である。筐体2には開口部21が形成される。開口部21は筐体2の前面から後面まで延びる。筐体2の前面において開口部21の右側には、入力部46が設けられる。ユーザは入力部46を操作することで各種情報をプリンタ1に入力する。
【0023】
搬送部6は開口部21の下部に設けられ、プラテン支持部材3を前後方向に搬送する。
詳細には、搬送部6は図2に示す一対のレール12を含む。一対のレール12は互いに左右方向に並び、前後方向に延びる。プラテン支持部材3は搬送部6の上方に位置し、一対のレール12によって支持される。プラテン支持部材3の下部には副走査モータ(図示略)が設けられる。プラテン支持部材3は副走査モータの駆動によって一対のレール12に沿って前後方向に移動できる。
【0024】
プラテン5は正面視で開口部21内に配置される。プラテン5はプラテン支持部材3によって支持され、プラテン支持部材3とともに印刷位置と着脱位置との間を前後方向に移動する。すなわち、プリンタ1の前後方向は副走査方向である。印刷位置はプラテン5が筐体2内部の後述するヘッド100、200と対向する位置である。着脱位置は印刷位置よりも前側で、図1に示す位置である。プラテン5が着脱位置にある場合、プラテン支持部材3およびプラテン5が一対のレール12の前端部に達し、プラテン支持部材3は筐体2の外側に配置される。プラテン5の構造の詳細は後述する。プラテン5の上面には布地の一例としてTシャツ90が載置される。
【0025】
図2に示すように、プリンタ1はレール11、ガイドシャフト9、キャリッジ20、およびヘッド100、200を図1に示す筐体2内に備える。レール11はプリンタ1の上部後方に設けられ、左右方向に延びる。ガイドシャフト9はレール11の前方に設けられ、左右方向に延びる。キャリッジ20はレール11とガイドシャフト9の前後方向の間に位置し、レール11とガイドシャフト9によって支持される。ガイドシャフト9の右端部の右側には主走査モータ19が設けられる。キャリッジ20は主走査モータ19の駆動によってレール11とガイドシャフト9に沿って左右方向に移動できる。
【0026】
ヘッド100、200は前後方向に並べられてキャリッジ20に搭載され、キャリッジ20とともに左右方向に移動する。ヘッド100はヘッド200よりも後方に位置する。
ヘッド100、200はそれぞれノズル(図示略)を下部に備え、ノズルから下方にインクを吐出する。
【0027】
プリンタ1は白、黒、イエロー、シアン、およびマゼンタの5色のインクを用いて、印刷媒体にカラー画像を印刷できる。以下では、5色のインクのうち白色のインクを白インクといい、黒、シアン、イエロー、およびマゼンタの4色のインクを総称してカラーインクという。白インクとカラーインクとを総称する場合、またはいずれかを特定しない場合、単にインクという。白インクは画像の白色を表す部分として、または他の色のインクの下地として印刷に用いられる。カラーインクは白インクによる下地の上に吐出され、カラー画像の印刷に用いられる。
【0028】
ヘッド100は、ノズルから白インクを吐出する。ヘッド200は、ノズルからカラーインクを吐出する。
【0029】
図3図4を参照し、プラテン5の詳細な構造を説明する。プラテン5は板50、貼り付け材8、およびシート7を備える。板50は前後方向および左右方向に延び、平面視で前後方向に長い長方形であり、例えば、金属からなる。板50の上面には貼り付け材8、シート7が下方から順に積層される。貼り付け材8は、例えば両面テープであり、板50とシート7とを固定する。図3に示すように、シート7は平面視で板50上面の全面を覆う。従って、プラテン5は平面視で板50と同形状であり、平面視で長手方向が前後方向、短手方向が左右方向となる長方形である。
【0030】
図4に示すように、シート7の上面70の全面には所定間隔で並んだ複数の突出部71が設けられる。突出部71は、例えばシート7の上面70から上方および前方に向かって突出する。複数の突出部71は、例えば、面ファスナのフック状に起毛された側の部材である。突出部71は基部から先端に向かって細くなる。突出部71の高さは例えば1.7mmである。突出部71は、例えば基部から先端に向かって細くなる。図6に示すように、先端がプラテン5にTシャツ90がセットされたTシャツ90の繊維92を引っ掛ける。また、突出部71はシート7の上面70から上方および前方に向かって突出するので、Tシャツ90が前方に引き出されてプラテン5から取り外される場合に、取り外されるTシャツ90と突出部71の引っ掛かりが低減される。
【0031】
図3に示すように、プラテン5の前端部53には位置決め部51が設けられる。位置決め部51は平面視で左右両側から中央に向かって前方に延びる棒状部材である。位置決め部51の後端部は板50の右前部および左前部を上下方向に貫通する複数の孔52を介して非図示の締結部材によって板50に締結される。
【0032】
図1図2図5図6を参照し、プリンタ1における印刷の概要を説明する。まず、ユーザは入力部46を操作することで、プラテン5を図1に示す着脱位置まで移動させる。ユーザはTシャツ90の襟91を前方に、身丈方向を前後方向にして裾を保持し、裾側からプラテン5を覆うようにTシャツ90を後方に移動させる。該時、Tシャツ90はシート7から上方に離隔した状態で移動される。
【0033】
図5に示すように、襟91が位置決め部51に当接し、プラテン5に対するTシャツ90の位置決めが完了される。ユーザはTシャツ90をシート7に載置し、プラテン5にセットする。該時、図6に示すように、突出部71の先端はプラテン5にセットされたTシャツ90の繊維92を引っ掛ける。ユーザは入力部46を操作することで、Tシャツ90がセットされたプラテン5を着脱位置から印刷位置に移動させる。
【0034】
プリンタ1はキャリッジ20を左右方向に走査させながらヘッド100から白インクを、ヘッド200からカラーインクをそれぞれ吐出する。プリンタ1は1回の走査によるインクの吐出が終了すると、プラテン5を前方に移動し、再びキャリッジ20を左右方向に走査させながらヘッド100、200からインクを吐出する。ヘッド100はヘッド200よりも後方に位置するので、カラーインクは白インクの上に吐出される。すなわち、白インクはカラーインクの下地として使用される。
【0035】
下地としてヘッド100から吐出された白インクがTシャツ90に付着すると、白インクによりTシャツ90が縮んでしまう可能性がある。Tシャツ90が縮んでしまった場合、その後に吐出されるカラーインクがTシャツ90に付着する位置はTシャツ90の白インクが付着した位置からずれる可能性がある。プラテン5は突出部71の先端がTシャツ90の繊維92を引っ掛けるので、白インクによりTシャツ90の縮む量が低減される。
従って、カラーインクがTシャツ90に付着する位置がTシャツ90の白インクが付着した位置からずれる可能性が低減され、所望の印刷結果が得られる。
【0036】
プリンタ1はTシャツ90に印刷が完了すると、プラテン5を図1に示す着脱位置まで移動する。ユーザは襟91を保持してTシャツ90を前方に引き出し、Tシャツ90をプラテン5から取り外す。該時、Tシャツ90はシート7上を摺動する。突出部71はシート7の上面70から上方および前方に向かって突出するので、シート7上を摺動するTシャツ90は突出部71に引っ掛かることなくプラテン5から取り外される。
【0037】
以上説明したように、プラテン5は板50、貼り付け材8、シート7を備える。板50の上面には貼り付け材8、シート7が下方から順に積載される。シート7は所定間隔で並んだ複数の突出部71を備える。突出部71はシート7の上面70から上方および前方に向かって突出する。図6に示すように、突出部71の先端はプラテン5にセットされたTシャツ90の繊維92を引っ掛ける。これにより、インクによりTシャツ90の縮む量が低減される。従って、プラテン5は吐出されたインクがTシャツ90に付着する位置がTシャツ90の所望の位置からずれる可能性を低減できる。
【0038】
シート7の上面70の全面には所定間隔で並んだ複数の突出部71が設けられる。この場合、プラテン5はシート7の上面70の一部に突出部71が設けられる場合と比較して、インクによりTシャツ90が縮む量を低減できる。
【0039】
プラテン5は前後方向および左右方向に延び、突出部71はシート7の上面70から上方および前方に向かって突出する。ユーザはTシャツ90を前方に引き出してプラテン5から取り外す場合に、取り外されるTシャツ90と突出部71の引っ掛かりが低減される。
【0040】
プラテン5の前端部53にはTシャツ90の襟91を位置決めする位置決め部51が設けられる。突出部71は上方および前方に向かって突出する。すなわち突出部71は、プラテン5の前端部53に向かって突出する。これにより、ユーザはTシャツ90をプラテン5から取り外す際に襟91を保持し、Tシャツ90を前方に引き出す場合に、取り外されるTシャツ90と突出部71の引っ掛かりが低減される。
【0041】
プリンタ1はTシャツ90にインクを吐出するヘッド100、200と、Tシャツ90を支持するプラテン5とを備える。プラテン5は突出部71の先端がTシャツ90の繊維92を引っ掛けるので、インクによりTシャツ90の縮む量が低減される。従って、プリンタ1は吐出されたインクがTシャツ90に付着する位置がTシャツ90の所望の位置からずれる可能性を低減できる。
【0042】
プリンタ1は下地として印刷に用いられる白インクを吐出するヘッド100と、白インクの上にカラーインクを吐出するヘッド200とを有する。プリンタ1は白インクによりTシャツ90が縮む量を低減するので、吐出されたカラーインクがTシャツ90に付着する位置が、白インクが布地に付着した位置からずれる可能性を低減できる。
【0043】
上記実施形態において、ヘッド100、200が本発明の「インクジェットヘッド」に相当する。Tシャツ90が本発明の「布地」または「衣服」に相当する。プリンタ1が本発明の「印刷装置」に相当する。白インクが本発明の「下地インク」に相当する。ヘッド100が本発明の「下地インクジェットヘッド」に相当する。ヘッド200が本発明の「カラーインクジェットヘッド」に相当する。板50は第1方向、および第2方向に延びる。第1方向の一例が前後方向であり、第2方向の一例が左右方向である。Tシャツ90は前方に引き出されてプラテン5から取り外される。取り外し方向の一例が前方向である。
シート7の上面70が本発明の「上面」の一例である。プラテン5の前端部53が本発明の「一端部」の一例である。
【0044】
本発明は上記実施形態から種々変更できる。以下説明する各種変形例は、矛盾が生じない限りそれぞれ組み合わせ可能である。例えば本発明は上記実施形態のようなインクジェットタイプとは異なるタイプのプリンタにも適用できる。
【0045】
上記実施形態において布地としてTシャツ90を例示したが、これに限定されない。布地は、例えばワイシャツ等の各種のシャツ、ズボン、スカート、ハンカチ、布地そのもの等でもよい。布地は布帛に限らずフェルト等の不織布でもよい。突出部71の先端は布地の繊維に限らず、毛羽を引っ掛けてもよい。突出部71の先端は不織布に印刷する場合にも、インクにより不織布の縮む量が低減される。従って、プラテン5は吐出されたインクが不織布に付着する位置が不織布の所望の位置からずれる可能性を低減できる。
【0046】
上記実施形態において突出部71はプラテン5の上面から上方および前方に突出するが、突出部71が突出する方向はこれに限定されない。例えば、図7(A)に示すように、突出部71は上方に向かって突出する。突出部71は、さらに前後方向、および左右方向においてプラテン5の中心から放射状に外側に向かって突出してもよい。プラテン5にセットされたTシャツ90はプラテン5上面の中心部に対応する位置に画像が印刷される場合が多く、インクにより前後方向、および左右方向においてプラテン5の内側に向かって縮みやすい。突出部71は上述した方向に突出するので、突出部71の先端が布地の毛羽又は繊維を引っ掛けやすい。故に、プラテン5は内側に向かって縮もうとするTシャツ90の縮み量を低減できる。
【0047】
また、図7(B)に示すように、突出部71はプラテン5の中心からではなく、プラテン5後端部の左右方向の中心部から放射状に突出してもよい。この場合、プラテン5は内側に向かって縮もうとするTシャツ90の縮み量を低減しつつ、前方に引き出されて取り外されるTシャツ90と突出部71の引っ掛かりを低減できる。
【0048】
突出部の形状は適宜変更されてもよい。突出部の形状は先端が布地の毛羽または繊維を引っ掛けるものであればよい。突出部の先端が布地の毛羽または繊維を引っ掛ける形状は、例えば突出部の先端が基部に対して前方、後方、左方および右方の少なくとも何れかに突出する形状等である。突出部は、基部から上方に延び、そこから前方、後方、左方および右方の少なくとも何れかの方向に突出するフック形状、先端が曲面になっておらず、角部を有する形状が望ましい。このような形状の部材は、例えば、面ファスナのフック状に起毛された側の部材に設けられる。また、突出部は、衣服用のブラシなどに見られる繊維材であってもよい。突出部としての繊維材はシート7の上面70から数ミリ程度上方に突出すればよい。突出部は、上方且つ前方、後方、左方および右方の少なくとも何れかに突出するのが望ましく、その中でもTシャツ90が取り外される方向である前方に向かって突出するのが良い。
【0049】
図8に示すように、突出部の第一変形例である突出部72は逆J状であり、右側面視で基部から先端に向かって細くなりながら上方に延びた後、湾曲しながら前方に延びる形状である。突出部72は引っ掛けた布地の毛羽又は繊維を強固に保持するので、第一変形例においてもインクにより布地の縮む量が低減される。
【0050】
また、突出部の第二変形例である突出部73は面ファスナにおけるいわゆるマッシュルーム状である。基部から上方に延びた後、上端部が図9に示すように前方および後方にそれぞれ突出し、図示はしないが左方および右方にもそれぞれ前方および後方と同様に突出した形状である。突出部73は前後方向、および左右方向において指向性がない。突出部73も突出部72と同様に引っ掛けた布地の毛羽又は繊維を強固に保持するので、第二変形例においてもインクにより布地の縮む量が低減される。突出部73は前方および後方と左方および右方とのどちらかに突出すればよい。
【0051】
また、図10に示すように、突出部の第三変形例である突出部74は右側面視で基部よりも先端が拡がる逆台形状である。突出部74は簡単な構造で布地の毛羽又は繊維を引っ掛けることができるので、第三変形例においてもインクにより布地の縮む量が低減される。
【0052】
また、図11図12に示すように、突出部の第四変形例である突出部75は上下方向に延びる針状である。プラテン5には板50の上面54から下方に凹み、前後方向および左右方向に延びる複数の溝76が設けられる。突出部75は前後方向に延びる溝76と左右方向に延びる溝76との交点に設けられる。突出部75の先端は板50の上面54よりも上方に突出する。突出部75の先端はプラテン5に載置された布地を突き刺して引っ掛ける。故に、第四変形例においてもインクにより布地の縮む量が低減される。第四変形例において、板50の上面54が本発明の「上面」の一例である。
【0053】
突出部の形状は上記変形例のように先端が布地の毛羽又は繊維を引っ掛ける形状を有すればよい。シート7には異なる形状の突出部が組み合わされて設けられてもよい。例えば、シート7には突出部71と突出部73とが左右方向に交互に並べられて設けられてもよい。
【0054】
突出部71~75はプラテン5上面の一部分のみに設けられてもよい。例えば、突出部71~75はTシャツ90において印刷される機会が多い位置(例えば、Tシャツ90の中心部)に対応するプラテン5の上面にのみ設けられてもよい。
【0055】
上記実施形態においてプラテン5および板50の形状は平面視で前後方向を長手方向、左右方向を短手方向とする長方形としたが、これに限定されない。プラテン5および板50の形状は平面視で左右方向を長手方向、前後方向を短手方向とする長方形であってもよいし、正方形であっても良い。左方向、または右方向にTシャツ90を取り外す、またはプラテン5の右端部、または左端部に位置決め部51が設けられる場合、第1方向の一例が左右方向であり、第2方向の一例が前後方向である。
【0056】
上記実施形態において貼り付け材8は両面テープを例示したが、これに限定されない。
例えば、糊等の接着剤を用いてもよい。また、板50とシート7とは貼り付け材8以外の方法で固定されてもよい。例えば、板50上面の縁部を覆う枠部が板50との間でシート7を挟み込むことでシート7を固定してもよい。また、シート7は貼り付け材8および該枠部の両方により板50の上面に固定されてもよい。
【0057】
位置決め部51の構成は適宜変更されてもよい。例えば、板50上面の前端部にTシャツ90の襟91を位置決めするマーカを設け、これを位置決め部51としてもよい。また、プラテン5に位置決め部51が設けられなくてもよい。
【0058】
例えば、プリンタ1はヘッド100、200を移動させずにプラテン5を主走査方向に移動させる構成であってもよい。すなわち、プリンタ1はヘッド100、200とプラテン5とを相対的に移動させるものであればよい。
【0059】
キャリッジ20はヘッド100、200の少なくとも一方を搭載すればよい。例えば、キャリッジ20にはヘッド200のみが搭載されてもよい。ヘッド100、200が吐出するインクは適宜変更されてもよい。
【0060】
上記実施形態においてプラテン5は前後方向において着脱位置と印刷位置とに移動するが、プラテン5が移動する位置はこれに限定されない。例えば、プラテン5は装着位置、印刷位置、および取外位置に移動してもよい。装着位置は図1に示す着脱位置と同じ位置である。取外位置は印刷位置よりも後方の位置である。プラテン5が取外位置にある場合、プラテン支持部材3およびプラテン5が一対のレール12の後端部に達する。
【0061】
ユーザは装着位置にあるプラテン5に布地をセットする。プリンタ1はプラテン5を印刷位置に移動して布地に印刷する。プリンタ1は印刷が完了すると、プラテン5を取外位置まで移動する。ユーザは布地を後方に引き出し、布地をプラテン5から取り外す。この変形例では、布地は後方に引き出されてプラテン5から取り外されるので、突出部71はプラテン5の上面から上方且つ後方に突出していることが望ましい。
【符号の説明】
【0062】
1 プリンタ
5 プラテン
7 シート
8 貼り付け材
50 板
51 位置決め部
53 前端部
54、70 上面
71~75 突出部
76 溝
100、200 ヘッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2024-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドによりインクが吐出される枚葉状の布地を支持するプラテンであって、
前記プラテンの上面から上方に突出する突出部を複数備え、
前記突出部の先端は、前記枚葉状の布地の毛羽又は繊維を引っ掛ける形状を有することを特徴とするプラテン。
【請求項2】
前記プラテンは上下方向と直交する第1方向、且つ前記上下方向及び前記第1方向と直交する第2方向に延び、
複数の前記突出部は、前記プラテンの前記上面から前記上方且つ前記第1方向及び前記第2方向において前記プラテンの外側に向かって突出することを特徴とする請求項1に記載のプラテン。
【請求項3】
複数の前記突出部は、前記外側として、前記布地が前記プラテンから取り外される取り外し方向に向かって突出することを特徴とする請求項2に記載のプラテン。
【請求項4】
前記プラテンは前記布地として衣服を支持し、
前記プラテンの前記第1方向の一端部には前記衣服の襟を位置決めする位置決め部が設けられ、
複数の前記突出部は、前記上方及び前記一端部に向かって突出することを特徴とする請求項2または3に記載のプラテン。
【請求項5】
複数の前記突出部は、前記上面の全面に設けられることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のプラテン。
【請求項6】
枚葉状の布地にインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記枚葉状の布地を支持するプラテンとを備え、
前記プラテンは、上面から上方に突出する突出部を複数備え、
前記突出部の先端は、前記枚葉状の布地の毛羽又は繊維に引っ掛ける形状を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
前記インクジェットヘッドは、下地インクを吐出する下地インクジェットヘッドと、
前記下地インクの上にカラーインクを吐出するカラーインクジェットヘッドとを有することを特徴とする請求項6に記載の印刷装置。