IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サッポロビール株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-高アルコールビールテイスト飲料 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169720
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】高アルコールビールテイスト飲料
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/04 20190101AFI20241128BHJP
   C12G 3/00 20190101ALI20241128BHJP
   C12C 5/02 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C12G3/04
C12G3/00
C12C5/02
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024168426
(22)【出願日】2024-09-27
(62)【分割の表示】P 2020057627の分割
【原出願日】2020-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(72)【発明者】
【氏名】神谷 隆史
(72)【発明者】
【氏名】小栗 真帆
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悠
(57)【要約】
【課題】アルコール感が低減されると共に好ましい甘味が感じられ、飲料としての飲みやすさに優れる高アルコールビールテイスト飲料を提供すること。
【解決手段】コハク酸及びカプリル酸エチルを含有し、コハク酸濃度をX(mg/L)及びカプリル酸エチル濃度をY(mg/L)としたときに、X及びYが下記式(1)~(3)の関係を満たす、高アルコールビールテイスト飲料。
(1)60≦X≦450
(2)0.15≦Y≦7
(3)Y≧(-1/50)X+2
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コハク酸及びカプリル酸エチルを含有し、
コハク酸濃度をX(mg/L)及びカプリル酸エチル濃度をY(mg/L)としたときに、X及びYが下記式(1)~(3)の関係を満たし、
アルコール度数が9v/v%以上20v/v%以下である、高アルコールビールテイスト飲料。
(1)60≦X≦450
(2)0.15≦Y≦1.5
(3)Y≧(-1/50)X+2
【請求項2】
コハク酸及びカプリル酸エチルを含有し、
コハク酸濃度をX(mg/L)及びカプリル酸エチル濃度をY(mg/L)としたときに、X及びYが下記式(1)~(3)の関係を満たし、
アルコール度数が9v/v%以上20v/v%以下である、高アルコールビールテイスト飲料(但し、麦芽比率100重量%のビールを除く。)。
(1)60≦X≦450
(2)0.15≦Y≦7
(3)Y≧(-1/50)X+2
【請求項3】
コハク酸濃度(X:mg/L)が150mg/L以上である、請求項1又は2に記載の高アルコールビールテイスト飲料。
【請求項4】
麦芽比率が50重量%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の高アルコールビールテイスト飲料。
【請求項5】
高アルコールビールテイスト飲料の製造方法であって、
前記高アルコールビールテイスト飲料中のコハク酸濃度をX(mg/L)及びカプリル酸エチル濃度をY(mg/L)としたときに、X及びYが下記式(1)~(3)の関係を満たすようにコハク酸濃度及びカプリル酸エチル濃度を調整する工程を含み、
前記高アルコールビールテイスト飲料のアルコール度数が9v/v%以上20v/v%以下である、製造方法。
(1)60≦X≦450
(2)0.15≦Y≦1.5
(3)Y≧(-1/50)X+2
【請求項6】
高アルコールビールテイスト飲料(但し、麦芽比率100重量%のビールを除く。)の製造方法であって、
前記高アルコールビールテイスト飲料中のコハク酸濃度をX(mg/L)及びカプリル酸エチル濃度をY(mg/L)としたときに、X及びYが下記式(1)~(3)の関係を満たすようにコハク酸濃度及びカプリル酸エチル濃度を調整する工程を含み、
前記高アルコールビールテイスト飲料のアルコール度数が9v/v%以上20v/v%以下である、製造方法。
(1)60≦X≦450
(2)0.15≦Y≦7
(3)Y≧(-1/50)X+2
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高アルコールビールテイスト飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アルコール度数の高い飲料に対する消費者のニーズが高まっている。例えば、特許文献1には、アルコール度数の高いビールテイスト飲料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6458184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アルコール度数の高い飲料は、アルコール度数の高さに起因するアルコール感により飲みにくさを感じることがある。本発明者らは、高アルコールビールテイスト飲料において、アルコール感を低減させると共に甘味を付与させることで飲みやすさを向上させることができるのではないかと考え、種々の検討を行ってきた。その結果、コハク酸濃度及びカプリル酸エチル濃度が特定の関係にある高アルコールビールテイスト飲料は、アルコール度数の高さに起因するアルコール感が低減されると共に好ましい甘味が感じられ、飲料としての飲みやすさに優れていることを見出した。本発明は、この新規な知見に基づくものである。
【0005】
すなわち、本発明は、アルコール感が低減されると共に好ましい甘味が感じられ、飲料としての飲みやすさに優れる高アルコールビールテイスト飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コハク酸及びカプリル酸エチルを含有し、コハク酸濃度をX(mg/L)及びカプリル酸エチル濃度をY(mg/L)としたときに、X及びYが下記式(1)~(3)の関係を満たす、高アルコールビールテイスト飲料に関する。
(1)60≦X≦450
(2)0.15≦Y≦7
(3)Y≧(-1/50)X+2
【0007】
本発明に係る高アルコールビールテイスト飲料は、コハク酸濃度及びカプリル酸エチル濃度が特定の関係にあるため、アルコール度数の高さに起因するアルコール感が低減されると共に好ましい甘味が感じられ、飲料としての飲みやすさに優れている。
【0008】
上記高アルコールビールテイスト飲料は、X及びYが更に下記式(4)及び(5)の関係を満たすことが好ましい。
(4)X≦300
(5)Y≧(-67/2400)X+207/40
【0009】
コハク酸濃度及びカプリル酸エチル濃度が、式(1)~(3)の関係に加え、更に式(4)及び(5)の関係を満たすことで、上述の効果がより顕著に発揮される。
【0010】
上記高アルコールビールテイスト飲料は、X及びYが更に下記式(6)及び(7)の関係を満たすことがより好ましい。
(6)X≧180
(7)Y≧1
【0011】
コハク酸濃度及びカプリル酸エチル濃度が、式(1)~(5)の関係に加え、更に式(6)及び(7)の関係を満たすことで、上述の効果がより一層顕著に発揮される。
【0012】
本発明はまた、高アルコールビールテイスト飲料の製造方法であって、高アルコールビールテイスト飲料中のコハク酸濃度をX(mg/L)及びカプリル酸エチル濃度をY(mg/L)としたときに、X及びYが下記式(1)~(3)の関係を満たすようにコハク酸濃度及びカプリル酸エチル濃度を調整する工程を含む、製造方法にも関する。
(1)60≦X≦450
(2)0.15≦Y≦7
(3)Y≧(-1/50)X+2
【0013】
本発明は更に、高アルコールビールテイスト飲料のアルコール感を低減すると共に甘味を付与し、飲料としての飲みやすさを向上させる方法であって、高アルコールビールテイスト飲料中のコハク酸濃度をX(mg/L)及びカプリル酸エチル濃度をY(mg/L)としたときに、X及びYが下記式(1)~(3)の関係を満たすようにコハク酸濃度及びカプリル酸エチル濃度を調整する工程を含む、方法にも関する。
(1)60≦X≦450
(2)0.15≦Y≦7
(3)Y≧(-1/50)X+2
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アルコール感が低減されると共に好ましい甘味が感じられ、飲料としての飲みやすさに優れる高アルコールビールテイスト飲料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】試験例1~10の高アルコールビールテイスト飲料のコハク酸濃度(X)及びカプリル酸エチル濃度(Y)をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
本実施形態に係る高アルコールビールテイスト飲料は、コハク酸及びカプリル酸エチルを含有し、コハク酸濃度をX(mg/L)及びカプリル酸エチル濃度をY(mg/L)としたときに、X及びYが下記式(1)~(3)の関係を満たす。
(1)60≦X≦450
(2)0.15≦Y≦7
(3)Y≧(-1/50)X+2
【0018】
本明細書において、「高アルコールビールテイスト飲料」は、アルコール度数の高いビールテイスト飲料を意味する。高アルコールビールテイスト飲料のアルコール度数は、例えば、7v/v%以上であってよく、7.5v/v%以上であってよく、8v/v%以上であってよく、8.5v/v%以上であってよく、9v/v%以上であってよく、9.5v/v%以上であってよく、10v/v%以上であってよい。高アルコールビールテイスト飲料のアルコール度数の上限に特に制限はないが、例えば、20v/v%以下であってよく、15v/v%以下であってよく、14v/v%以下であってよく、13v/v%以下であってよく、12v/v%以下であってよく、11v/v%以下であってよい。なお、本明細書においてアルコールとは、特に言及しない限りエタノールを意味する。
【0019】
本明細書において「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の香味を有する飲料を意味する。
【0020】
高アルコールビールテイスト飲料としては、例えば、酒税法(令和元年法律第三十七号)上のビール、発泡酒、その他の醸造酒、リキュール、スピリッツに分類されるものが挙げられる。
【0021】
高アルコールビールテイスト飲料のアルコール度数は、例えば、国税庁所定分析法(訓令)「3清酒 3-4アルコール分」に記載されている振動式密度計法に基づいて測定することができる。
【0022】
高アルコールビールテイスト飲料のアルコール度数は、例えば、醸造条件を調整することにより調整してもよく、アルコールの添加により調整してもよく、これらを併用して調整してもよい。添加するアルコールに特に制限はなく、例えば、蒸留アルコール(例えば、原料用アルコール、焼酎、スピリッツ、ウォッカ)であってもよく、醸造により得られた発酵液であってもよい。
【0023】
図1は、後述する実施例1で試験した試験例1~10の高アルコールビールテイスト飲料のコハク酸濃度(X)及びカプリル酸エチル濃度(Y)をプロットしたグラフである。各プロットは、実施例1の総合評価の結果に対応した凡例で示してある。図1に示すとおり、高アルコールビールテイスト飲料のコハク酸濃度(X:mg/L)及びカプリル酸エチル濃度(Y:mg/L)が、上記式(1)~(3)の関係を全て満たすことによって、総合評価がD以上となり、「アルコール感」、「甘味」及び「飲みやすさ」がバランスよく向上する。すなわち、アルコール感が低減されると共に好ましい甘味が感じられ、飲料としての飲みやすさに優れた高アルコールビールテイスト飲料となる。
【0024】
上述のコハク酸濃度及びカプリル酸エチル濃度は、上記式(1)~(3)の関係に加え、更に下記式(4)及び(5)の関係を満たすことが好ましい。これにより、「アルコール感」、「甘味」及び「飲みやすさ」がより一層バランスよく向上する。すなわち、アルコール感が低減されると共に好ましい甘味が感じられ、飲料としての飲みやすさに優れるという効果がより顕著に奏される。
(4)X≦300
(5)Y≧(-67/2400)X+207/40
【0025】
なお、上記式(1)~(5)の関係を全て満たすことは、下記式(1’)~(3’)の関係を全て満たすことと同義である。
(1’)60≦X300
(2’)0.15≦Y≦7
(3’)Y≧(-67/2400)X+207/40
【0026】
上述のコハク酸濃度及びカプリル酸エチル濃度は、上記式(1)~(5)の関係に加え、更に下記式(6)及び(7)の関係を満たすものであることが好ましい。
(6)X≧180
(7)Y≧1
【0027】
図1に示すとおり、高アルコールビールテイスト飲料のコハク酸濃度(X:mg/L)及びカプリル酸エチル濃度(Y:mg/L)が、上記式(1)~(7)の関係を全て満たすことによって、総合評価がC以上となり、「アルコール感」、「甘味」及び「飲みやすさ」がより一層顕著にバランスよく向上する。すなわち、アルコール感が低減されると共に好ましい甘味が感じられ、飲料としての飲みやすさに優れるという効果がより一層顕著に発揮される。
【0028】
なお、上記式(1)~(7)の関係を全て満たすことは、下記式(4’)及び(5’)の関係を全て満たすことと同義である。
(4’)180≦X≦300
(5’)1≦Y≦7
【0029】
上述のコハク酸濃度及びカプリル酸エチル濃度は、上記式(1)~(7)の関係に加え、更に下記式(8)の関係を満たすものであることが好ましい。
(8)Y≦3.5
【0030】
図1に示すとおり、高アルコールビールテイスト飲料のコハク酸濃度(X:mg/L)及びカプリル酸エチル濃度(Y:mg/L)が、上記式(1)~(8)の関係を全て満たすことによって、総合評価がB以上となり、「アルコール感」、「甘味」及び「飲みやすさ」が特に顕著にバランスよく向上する。すなわち、アルコール感が低減されると共に好ましい甘味が感じられ、飲料としての飲みやすさに優れるという効果が特に顕著に発揮される。
【0031】
なお、上記式(1)~(8)の関係を全て満たすことは、下記式(6’)及び(7’)の関係を全て満たすことと同義である。
(6’)180≦X≦300
(7’)1≦Y≦3.5
【0032】
高アルコールビールテイスト飲料のコハク酸濃度(X:mg/L)は、上記関係を満たすものであればよいが、例えば、60mg/L以上、70mg/L以上、80mg/L以上、90mg/L以上、100mg/L以上、110mg/L以上、120mg/L以上、130mg/L以上、140mg/L以上、150mg/L以上、160mg/L以上、170mg/L以上、又は180mg/L以上であってよく、また450mg/L以下、440mg/L以下、430mg/L以下、420mg/L以下、410mg/L以下、400mg/L以下、390mg/L以下、380mg/L以下、370mg/L以下、360mg/L以下、350mg/L以下、340mg/L以下、330mg/L以下、320mg/L以下、310mg/L以下、又は300mg/L以下であってよい。
【0033】
高アルコールビールテイスト飲料のコハク酸濃度は、例えば、麦芽の使用量を増やすことによって麦汁の濃度を高めること、コハク酸又はその塩(塩としては、例えば、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム等が挙げられる。)を添加すること、及びこれらを併用することにより調整することができる。また、高アルコールビールテイスト飲料のコハク酸濃度は、例えば、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.24.2 キャピラリー電気泳動法」に記載の方法によって測定することができる。
【0034】
高アルコールビールテイスト飲料のカプリル酸エチル濃度(Y:mg/L)は、上記関係を満たすものであればよいが、例えば、0.15mg/L以上、0.2mg/L以上、0.3mg/L以上、0.4mg/L以上、0.5mg/L以上、0.6mg/L以上、0.7mg/L以上、0.8mg/L以上、0.9mg/L以上、又は1mg/L以上であってよく、また7mg/L以下、6.5mg/L以下、6mg/L以下、5.5mg/L以下、5mg/L以下、4.5mg/L以下、4mg/L以下、又は3.5mg/L以下であってよい。
【0035】
高アルコールビールテイスト飲料のカプリル酸エチル濃度は、例えば、麦芽の使用量を増やすことによって麦汁の濃度を高めること、カプリル酸エチル産生能の高い酵母を使用すること、カプリル酸エチルを添加すること、及びこれら2つ以上の手法を併用することにより調整することができる。また、高アルコールビールテイスト飲料のカプリル酸エチル濃度は、例えば、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.22 低沸点香気成分」に記載の方法に準じて測定することができる。
【0036】
本実施形態に係る高アルコールビールテイスト飲料は、原料として麦原料を含有していてもよく、原料として麦原料を含有していなくてもよい。本明細書において麦原料とは、麦又は麦加工物をいう。麦としては、例えば、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦が挙げられる。麦加工物としては、例えば、麦エキス、麦芽、モルトエキスが挙げられる。麦エキスは、麦から糖分及び窒素分を含む麦エキス分を抽出することにより得られる。麦芽は麦を発芽させてから焙燥させ、除根することにより得られる。モルトエキスは、麦芽から糖分及び窒素分を含むエキス分を抽出することにより得られる。
【0037】
本実施形態に係る高アルコールビールテイスト飲料は、原料としてホップを含有していてもよく、原料としてホップを含有していなくてもよい。ホップには、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスが含まれ、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品も含まれる。
【0038】
本実施形態に係る高アルコールビールテイスト飲料は、麦芽比率(水及びホップ以外の原料に占める麦芽の割合)が0重量%以上100重量%以下であってよい。麦芽比率は、10重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、66重量%以上、67重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、99重量%以上、又は100重量%であってよい。また、麦芽比率は、100重量%未満、90重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、又は50重量%以下であってよい。
【0039】
本実施形態に係る高アルコールビールテイスト飲料は、本発明の効果を損なわない範囲で、飲料に通常配合される着色料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、酸味料、香料、塩類等を含んでいてもよい。着色料としては、例えば、カラメル色素、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素を挙げることができる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲン、デンプンを挙げることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムK、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームを挙げることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールを挙げることができる。酸味料としては、例えば、リン酸、乳酸、DL-リンゴ酸、クエン酸、アジピン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸ナトリウムを挙げることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムを挙げることができる。
【0040】
本実施形態に係る高アルコールビールテイスト飲料の苦味価(BU)は、例えば、0.0以上100.0以下であってよい。本実施形態に係る高アルコールビールテイスト飲料のBUは、例えば、50.0以下、40.0以下、30.0以下、20.0以下,又は15.0以下であってよく、1.0以上、2.0以上、3.0以上、4.0以上、5.0以上、又は10.0以上であってよい。本実施形態に係る高アルコールビールテイスト飲料の苦味価は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.15 苦味価」に記載されている方法によって測定することができる。苦味価は、例えば、原料の種類及び使用量を調整することにより、上記範囲で適宜設定することができる。
【0041】
本実施形態に係る高アルコールビールテイスト飲料は、非発泡性であってもよく、発泡性であってもよい。ここで、非発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm)未満であることをいい、発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm)以上であることをいう。発泡性とする場合、ガス圧の上限は0.294MPa(3.0kg/cm)程度としてもよい。
【0042】
本実施形態に係る高アルコールビールテイスト飲料は、容器に入れて提供することができる。容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器及び樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器等を適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分及び光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【0043】
本実施形態に係る高アルコールビールテイスト飲料は、例えば、原料を混合して製造してもよく(調合による方法)、酵母等による発酵を経て製造してもよい。
【0044】
一実施形態に係る製造方法は、例えば、水と、コハク酸と、カプリル酸エチルと、アルコール(例えば、原料用アルコール、焼酎、スピリッツ及びウォッカ等の蒸留アルコール、醸造により得られた発酵液)と、必要に応じて、各種添加剤(例えば、着色料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、酸味料、香料、塩類等)と、を原料タンクに配合する配合工程を含む。配合工程は、コハク酸濃度及びカプリル酸エチル濃度を上記範囲内に調整することの他は、常法に従って実施することができる。
【0045】
本実施形態に係る製造方法は、配合工程において各成分を混合して得た混合液をろ過するろ過工程と、ろ過工程でろ過したろ過液を殺菌する第一の殺菌工程と、第一の殺菌工程で殺菌した殺菌済みのろ過液をビン、缶、ペットボトル等の容器に充填する充填工程と、充填工程で容器に充填されたろ過液を容器ごと殺菌する第二の殺菌工程と、を更に含んでいてもよい。
【0046】
配合工程は、各成分がよく混ざるよう、撹拌機等により撹拌しながら混合してもよい。また、ろ過工程は、例えば、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。第一の殺菌工程は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行ってもよく、同様の処理を行うことができるのであれば、これに限定されることなく適用可能である。充填工程は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにて充填してもよい。第二の殺菌工程は、所定の温度及び所定の時間でろ過液を容器ごと加熱することにより行うことができる。第一又は第二の殺菌工程は、非加熱の殺菌工程としてもよい。非加熱の殺菌工程としては、紫外線(UV)殺菌等が挙げられる。殺菌工程を行わない無殺菌充填を行うことも可能である。
【0047】
他の実施形態における製造方法は、例えば、仕込工程及び発酵工程を備える。
【0048】
仕込工程では、原料及び仕込水(仕込工程で使用される水)を用いて、発酵前液を得る。つまり、仕込工程は、発酵に用いられる発酵前液を調製する工程である。仕込工程は、糖含有液を煮沸する煮沸工程、原料液中の固形分を除去する除去工程、原料液を冷却する冷却工程をこの順に含んでいてよい。
【0049】
煮沸工程では、糖含有液を煮沸して煮沸後液(煮沸後の糖含有液)を得る。糖含有液とは、酵母によるアルコール発酵が可能な成分を含有するものである。糖含有液としては、例えば、麦汁、シロップが挙げられる。麦汁とは、上述の麦原料の糖化を経て得られる液であり、未発酵のものである。麦汁は、例えば、上述の麦原料等の原料と水とを混合する工程、原料と水とを含む液を常法により糖化して糖化液を得る工程、及び糖化液をろ過する工程を経て得ることができる。
【0050】
煮沸工程では、原料液にホップを添加してよい。添加するホップとしては、例えば、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスを用いることができる。ホップは、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品であってもよい。
【0051】
除去工程では、煮沸後液中の固形分を除去して精製液を得る。除去工程は、例えば、煮沸後液に含まれる不溶性の固形分を沈殿させることにより行うことができる。固形分としては、煮沸工程により生じた熱凝固物、煮沸工程でホップを添加した場合には、ホップのかす等が挙げられる。除去工程は、ワールプール中で実施してよい。冷却工程では、酵母による発酵が可能な温度まで精製液を冷却して発酵前液を得る。
【0052】
発酵工程では、発酵前液を酵母により発酵させて発酵後液を得る。発酵工程では、酵母を添加してアルコール発酵が行われる。より具体的には、発酵前液に酵母を接種して発酵させ、酵母により生成するアルコールを含む発酵後液を得る。
【0053】
本実施形態に係る製造方法では、発酵工程後の発酵後工程として、発酵後液をろ過する工程を備えていてもよい。ろ過工程を実施することにより、発酵後液から不溶性の固形分、酵母等を除去することができる。
【0054】
本実施形態に係る製造方法では、他の発酵後工程として、発酵後液(又はろ過工程後の発酵後液)に対して加熱(殺菌)、各種添加剤(例えば、着色料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、酸味料、香料、塩類)の添加等を行ってもよい。
【0055】
コハク酸濃度及びカプリル酸エチル濃度の調整は、例えば、麦芽の使用量を増やすことによって麦汁濃度を高めること、カプリル酸エチル産生能の高い酵母を使用すること、コハク酸及び/又はカプリル酸エチルを原料液に添加すること、及びこれら2以上の手法を併用することにより実施することができる。本明細書において、原料液とは、高アルコールビールテイスト飲料のもととなる液を意味する。原料液には、各工程で使用又は製造される液(例えば、糖含有液、煮沸後液、精製液、発酵前液、発酵後液)が含まれる。
【0056】
また、必要に応じて、アルコール(例えば、原料用アルコール、焼酎、スピリッツ及びウォッカ等の蒸留アルコール、醸造により得られた発酵液)を原料液に添加することにより、アルコール度数の調整を実施してもよい。
【0057】
〔高アルコールビールテイスト飲料のアルコール感を低減すると共に甘味を付与し、飲料としての飲みやすさを向上させる方法〕
本実施形態に係る高アルコールビールテイスト飲料は、コハク酸濃度及びカプリル酸エチル濃度が特定の関係にあるため、アルコール度数の高さに起因するアルコール感が低減されると共に好ましい甘味が感じられ、飲料としての飲みやすさに優れている。したがって、本発明の一実施形態として、高アルコールビールテイスト飲料中のコハク酸濃度をX(mg/L)及びカプリル酸エチル濃度をY(mg/L)としたときに、X及びYが上述した関係を満たすようにコハク酸濃度及びカプリル酸エチル濃度を調整する工程を含む、高アルコールビールテイスト飲料のアルコール感を低減すると共に甘味を付与し、飲料としての飲みやすさを向上させる方法が提供される。本実施形態に係る方法における具体的な態様等は、上述した高アルコールビールテイスト飲料における具体的な態様等を制限なく適用できる。
【実施例0058】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0059】
[実施例1]
〔高アルコールビールテイスト飲料の調製〕
市販されているビールテイスト飲料(発泡酒:アルコール度数5v/v%)をベース飲料とし、コハク酸、カプリル酸エチル、スピリッツ(アルコール度数65.5v/v%)及び水を表1に示す組成となるように添加して、試験例1~10の高アルコールビールテイスト飲料を調製した。また、比較のため、アルコール濃度が5v/v%の参考例1のビールテイスト飲料を同様に調製した。
【0060】
〔官能評価〕
調製した高アルコールビールテイスト飲料に対して、「アルコール感」、「甘味」及び「飲みやすさ」の評価項目について官能評価を実施した。官能評価は、選抜された識別能力のあるパネル4名により実施した。各評価項目は、下記基準に従って評点1~5の5段階で評価し、その平均値を評価スコアとした。
【0061】
「アルコール感」
評点5:とても弱い
評点4:弱い
評点3:ふつう
評点2:強い
評点1:とても強い
「アルコール感」は、試験例1の高アルコールビールテイスト飲料の評点を1点として固定し、これを基準として他の高アルコールビールテイスト飲料を評価した。「アルコール感」の評点が高いほど、高アルコール濃度に由来する(不快な)アルコール感が低減されていることを示す。
【0062】
「甘味」
評点5:とても強い
評点4:強い
評点3:ふつう
評点2:弱い
評点1:とても弱い
「甘味」は、試験例1の高アルコールビールテイスト飲料の評点を2点として固定し、これを基準として他の高アルコールビールテイスト飲料を評価した。「甘味」の評点が高いほど、好ましい甘味を強く感じることを示す。
【0063】
「飲みやすさ」
評点5:とても飲みやすい
評点4:飲みやすい
評点3:ふつう
評点2:飲みにくい
評点1:とても飲みにくい
「飲みやすさ」は、試験例1の高アルコールビールテイスト飲料の評点を2点として固定し、これを基準として他の高アルコールビールテイスト飲料を評価した。「飲みやすさ」の評点が高いほど、飲料としての飲みやすさに優れていることを示す。
【0064】
「総合評価」
「アルコール感」、「甘味」及び「飲みやすさ」の評価項目の評価スコアに基づき、下記基準に従って総合評価を行った。評価Sが最も優れており、以下、評価A、評価B、評価C、評価D及び評価Eの順である。また、評価D以上を合格とした。
評価E:いずれかの評価項目において評価スコアが2以下のもの
評価D:いずれの評価項目も評価スコアが2超であり、評価C以上に該当しないもの
評価C:「アルコール感」及び「甘味」の評価スコアが2.5超、かつ「飲みやすさ」の評価スコアが2超であり、評価B以上に該当しないもの
評価B:いずれの評価項目も評価スコアが2.5超であり、評価A以上に該当しないもの
評価A:いずれの評価項目も評価スコアが3以上であり、評価Sに該当しないもの
評価S:いずれの評価項目も評価スコアが3以上であり、かつ「アルコール感」及び「甘味」のいずれか一方又は両方の評価スコアが3.5以上のもの
【0065】
結果を併せて表1に示す。
【表1】
【0066】
試験例1~10の高アルコールビールテイスト飲料のコハク酸濃度(X)及びカプリル酸エチル濃度(Y)をプロットしたグラフを図1に示す。参考例1の結果より、「アルコール感」、「甘味」及び「飲みやすさ」に関する課題は、高アルコールビールテイスト飲料特有の課題であることが分かる。
【0067】
表1及び図1に示すとおり、コハク酸濃度(X)及びカプリル酸エチル濃度(Y)が、式(1)~(3)の関係を満たす高アルコールビールテイスト飲料(試験例2~9)は、いずれも総合評価がD以上であり、「アルコール感」、「甘味」及び「飲みやすさ」がバランスよく向上していた。また、式(1)~(3)に加え、更に式(4)及び(5)の関係を満たす高アルコールビールテイスト飲料(試験例2、4~9)は、いずれも総合評価がC以上であり、「アルコール感」、「甘味」及び「飲みやすさ」が、より一層バランスよく向上していた。
図1