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  • 特開-端子金具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016973
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】端子金具
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
H01R4/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119295
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄之
(72)【発明者】
【氏名】平野 藍
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB02
5E085BB12
5E085CC03
5E085DD14
5E085FF01
5E085HH06
5E085JJ03
5E085JJ06
(57)【要約】
【課題】導体との接触部分におけるサーマル後の接触抵抗の上昇を抑えることが可能な端子金具を提供する。
【解決手段】端子金具10は、基部15と、基部15から突出する一対の圧着部16と、を備える。各圧着部16および基部15は、電線60の導体61の外周を包囲する形状をなしている。各圧着部16は、導体61の外周上において互いに突き合わされた状態で導体61に電気的に接触している。各圧着部16および基部15の各々の内周面において各圧着部16の突出方向先端間の周長L1は、各圧着部16および基部15で包囲される導体61の外周長L2より長く設定されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、前記基部から突出する一対の圧着部と、を備え、
一対の前記圧着部および前記基部は、電線の導体の外周を包囲する形状をなし、
一対の前記圧着部は、前記導体の外周上において互いに突き合わされた状態で前記導体に電気的に接触しており、
一対の前記圧着部および前記基部の各々の内周面において一対の前記圧着部の突出方向先端間の周長は、一対の前記圧着部および前記基部で包囲される前記導体の外周長より長く設定されている、端子金具。
【請求項2】
一対の前記圧着部の各々は、前記基部から延びて前記突き合わされた面としての接触面を含む外周部と、前記外周部から連続する余長部と、前記外周部と前記導体の外周との間に形成され前記余長部を逃がす空間部と、を有している、請求項1に記載の端子金具。
【請求項3】
前記外周部は、前記接触面から連続して前記導体の外周に沿って延びる圧着面を有している、請求項2に記載の端子金具。
【請求項4】
前記余長部は、前記外周部の前記接触面側の端部から前記空間部側に折り返された形状である、請求項2または請求項3に記載の端子金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子金具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された端子金具(圧着端子)は、底部と、底部から互いに反対側に突出する一対の圧着部と、を備えている。各圧着部は、圧着加工で折り曲げられ、底部との間に電線の導体を圧着する。各圧着部は、突出方向の先端に、互いに突き合われる突き合わせ端を有している。電線の導体は、各圧着部と底部との間の空間全体を埋める断面形状を呈している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6-80263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の場合に、各圧着部の突き合わせ端同士の接続が十分でないと、各圧着部の突き合わせ端間に隙間が生じ、サーマル後(サーマルショック試験後)、各圧着部と導体との接触部分において接触抵抗が上昇する懸念があった。
【0005】
そこで、本開示は、導体との接触部分におけるサーマル後の接触抵抗の上昇を抑えることが可能な端子金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の端子金具は、基部と、前記基部から突出する一対の圧着部と、を備え、一対の前記圧着部および前記基部は、電線の導体の外周を包囲する形状をなし、一対の前記圧着部は、前記導体の外周上において互いに突き合わされた状態で前記導体に電気的に接触しており、一対の前記圧着部および前記基部の各々の内周面において一対の前記圧着部の突出方向先端間の周長は、一対の前記圧着部の内側に位置する前記導体の外周長より長く設定されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、導体との接触部分におけるサーマル後の接触抵抗の上昇を抑えることが可能な端子金具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の実施形態1に係る端子金具と電線とを示す斜視図である。
図2図2は、各圧着部および基部が電線の導体の外周を包囲して導体に圧着される第1構造を示す断面図である。
図3図3は、各圧着部および基部が電線の導体の外周を包囲して導体に圧着される第2構造を示す断面図である。
図4図4は、各圧着部および基部が電線の導体の外周を包囲して導体に圧着される第3構造を示す断面図である。
図5図5は、圧着加工前の各圧着部および基部の断面図である。
図6図6は、圧着機で圧着加工された各圧着部および基部の図2対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の端子金具は、
(1)基部と、前記基部から突出する一対の圧着部と、を備え、一対の前記圧着部および前記基部は、電線の導体の外周を包囲する形状をなし、一対の前記圧着部は、前記導体の外周上において互いに突き合わされた状態で前記導体に電気的に接触しており、一対の前記圧着部および前記基部の各々の内周面において一対の前記圧着部の突出方向先端間の周長は、一対の前記圧着部および前記基部で包囲される前記導体の外周長より長く設定されている。
上記構成によれば、各圧着部の突出方向先端間の周長が導体の外周長より長く設定されているため、各圧着部の突き合わせ部分を大きく確保することができ、各圧着部の緩みを抑えることができる。その結果、各圧着部と導体との接触部分における接触抵抗の上昇を抑えることができる。
【0010】
(2)一対の前記圧着部の各々は、前記基部から延びて前記突き合わされた面としての接触面を含む外周部と、前記外周部から連続する余長部と、前記外周部と前記導体の外周との間に形成され前記余長部を逃がす空間部と、を有していることが好ましい。
上記構成によれば、外周部が接触面を含み、余長部が外周部から連続するため、各圧着部が互いに突き合わされる状態を担保することができる。また、余長部が外周部と導体の外周との間に形成された空間部に逃がされるため、各圧着部の外観を維持することができる。
【0011】
(3)前記外周部は、前記接触面から連続して前記導体の外周に沿って延びる圧着面を有していると良い。
上記構成によれば、外周部の圧着面が導体の外周に沿って接触することにより、外周部と基部との間に導体を安定して保持することができる。
【0012】
(4)前記余長部は、前記外周部の前記接触面側の端部から前記空間部側に折り返された形状であると良い。
上記構成によれば、余長部が長くなっても空間部にコンパクトに収めることができる。
【0013】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0014】
<実施形態1>
本開示の実施形態1に係る端子金具10は、導電性の金属板を曲げ加工等して一体に成形されている。端子金具10は、電線60の端末部に圧着されている。なお、以下の説明において、前後方向は、図1の左側を前側とする。左右方向は、図1を除く各図の左右方向を基準とし、上下方向は、各図の上下方向を基準とする。前後方向は、軸方向と同義であって、符号Xで示される。左右方向は、幅方向と同義であって、符号Yで示される。上下方向は、高さ方向と同義であって、符号Zで示される。また、特に断りのない限り、周方向は電線60の周方向に相当する。これらの方向の基準は、便宜的なものであり、端子金具10を組み付けた図示しないコネクタが車両等に搭載された状態における方向とは必ずしも一致しない。
【0015】
(電線)
電線60は、被覆電線であって、図1に示すように、導電性の導体61と導体61の外周を包囲する絶縁性の被覆62とを有している。導体61は、単線または撚り線である。本実施形態1の場合、導体61は、単線であって、スズや銀等のメッキを施していない銅被鋼線が用いられる。導体61は、圧着加工前、真円または真円に近い円形の断面形状を呈し(図1を参照)、圧着加工後、上下方向からの圧縮力を受けて、後述する電線接続部12と対応する部位において、左右方向に長い楕円形の断面形状を呈する(図2を参照)。
【0016】
(端子金具)
図1に示すように、端子金具10は、全体として前後方向に延びる形状になっている。端子金具10は、前部に相手側接続部11を有し、後部に電線接続部12を有している。相手側接続部11は、筒状の連結部13と、連結部13から前方に延びて左右方向で対向する一対の接続片14と、を有している。各接続片14は、連結部13を支点として左右方向に弾性変形可能とされている。各接続片14は、図示しない相手端子金具のタブを間に挟み込み、相手端子金具に電気的に接続される。
【0017】
電線接続部12は、基部15と、基部15の左右両側から突出する一対の圧着部16と、を有している。基部15は、連結部13の底面から連続する底板部分であって、図5に示すように、圧着加工前、下向きに湾曲した形状を呈している。各圧着部16は、図1に示すように、前後方向に一定幅を有する帯板状をなし、圧着加工前、基部15の左右両側から上方に突出し、互いに対向して配置される。
【0018】
各圧着部16は、突出方向先端側の部分を除いて、基部15の厚みと同じ一定の厚みを有している。各圧着部16の突出方向先端側の部分は、図5に示すように、圧着加工前、外周側の角部に、テーパ状に面取りされた斜面部17を有している。
【0019】
電線接続部12の内周面は、圧着加工前、断面U字形を呈している。一方の圧着部16の突出方向先端から基部15を経て他方の圧着部16の突出方向先端に至るまでの内周側の周長、つまり、電線接続部12の内周面の周長L1(図5を参照)は、導体61の外周を一周する長さ、つまり導体61の外周長L2(図2を参照)より長く設定されている。本実施形態1の場合、電線接続部12の内周面の周長L1は、導体61の外周長L2の2倍以上4倍以下である。
【0020】
(電線接続部の具体的構造)
電線接続部12は、圧着加工の条件等に応じて、以下の第1構造、第2構造および第3構造で示す具体的構造をとり得る。なお、第1構造、第2構造および第3構造は、いずれも正常な圧着構造であるが、あくまで例示であり、本開示を限定解釈する構造ではない。
【0021】
・第1構造
図6に示すように、電線接続部12は、下型であるアンビル81と、上型であるクリンパ82とを備えた圧着機80によって、導体61に圧着される。具体的には、基部15がアンビル81の設置面83に支持された状態で、各圧着部16が下降するクリンパ82に接触して内側に円弧状に変形させられる。
【0022】
各圧着部16は、それぞれ、円弧状の変形部分において、基部15に載置された導体61の外周を包囲する外周部21を形成する。図2に示すように、各圧着部16の外周部21は、基部15からの突出方向先端側の部分で互いに突き合わされて背面合わせの接触面22を形成する。各圧着部16の外周部21の接触面22は、上下方向に沿って互いに接触し、左右方向に関して導体61の外周の左右中央部(導体61の最上部63)と対応する位置に配置される。
【0023】
各圧着部16の外周部21は、導体61の最上部63と対応する位置において接触面22に連続し、導体61の外周に沿って密着状態で接触する湾曲状の圧着面23を有している。各圧着部16の外周部21の圧着面23は、導体61の外周の上半部に接触しており、導体61の外周の下半部に接触する基部15との間に導体61を保持する。導体61の外周の上半部に対する圧着面23の接触面積は、導体61の外周の下半部に対する基部15の接触面積より大きい。
【0024】
また、各圧着部16は、それぞれ、圧着状態で外周部21の突出方向先端側の部分から連続して延びる余長部24を有している。各圧着部16の余長部24は、クリンパ82による上方からの圧縮力を受けて、クリンパ82と導体61との間に圧縮変形させられる。導体61は、クリンパ82の圧縮力に対し、余長部24を発生させる硬さを有している。第1構造の場合、各圧着部16の余長部24は、外周部21の突出方向先端側の部分から互いに反対側に屈曲させられ、外周部21に内側から重なるように配置される。
各圧着部16の余長部24は、それぞれ、電線接続部12の内側の左右両側に形成された空間部25に逃がされる。各圧着部16の余長部24は、空間部25において、圧着面23に連続する内周面26と、外周部21に沿って接触または近接する外周面27と、の間に規定される厚みを、左右両側に向けて増加させている。
第1構造の場合、各圧着部16は、導体61の左右中央部を通る上下軸(接触面22に沿う軸)に対して線対称な形状になっている。
【0025】
・第2構造
図3に示すように、第2構造も、第1構造と同様、基部15、外周部21、余長部24および空間部25を有している。他方、第2構造は、第1構造より高さ寸法が小さく、且つ第1構造より幅寸法が大きくされている。第2構造の場合、各圧着部16は、導体61の左右中央部を通る上下軸に対して非対称な形状になっており、図3の左側余長部24Aが右側余長部24Bに対し下側にシフトしている。左側外周部21Aおよび右側外周部21Bの各圧着面23は、導体61の外周に対して同外周の半周を超える範囲に接触している。
【0026】
・第3構造
図4に示すように、第3構造も、第1構造と同様、基部15、外周部21、余長部24および空間部25を有している。他方、第3構造は、第1構造より高さ寸法が小さく、且つ第1構造より幅寸法が大きくされている。第3構造の場合、各圧着部16は、導体61の左右中央部を通る上下軸に対して非対称な形状になっており、図4の左側余長部24Aが右側余長部24Bより小さくされている。左側余長部24Aは、第1構造の余長部24と異なり、外周部21から折り返された形状をとらず、外周部21の内周に一体化されている。
【0027】
(作用)
上記した第1構造、第2構造および第3構造は、いずれも電線接続部12の内周面の周長L1が導体61の外周長L2より長く設定されている。そして、各圧着部16は、外周部21の突出方向先端側の部分に接触面22を有し、さらに接触面22から連続して外周部21の内側に形成された空間部25に突出する余長部24を有している。このため、各圧着部16の外周部21の接触面22は、上下方向に沿って互いに長く接触することができ、且つその接触状態を維持することができる。したがって、各圧着部16が導体61を圧着する形態も維持され、結果として、各圧着部16と導体61との接触部分における接触抵抗の上昇を抑えることができる。
【0028】
また、余長部24が外周部21と導体61の外周との間に形成された空間部25に逃がされるため、圧着部16の外観不良を防止することができる。
【0029】
また、外周部21が接触面22から連続して導体61の外周に沿って延びる圧着面23を有しているため、外周部21と基部15との間に導体61を安定して保持することができる。
【0030】
さらに、第1構造および第2構造の場合においては、余長部24が外周部21の接触面22側の端部から空間部25側に折り返された形状になっているため、長い余長部24を空間部25にコンパクトに収めることができる。
【0031】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された上記実施形態1はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
上記実施形態1の場合、相手側接続部は、外側に露出する弾性変形可能な一対の接続片を有していた。これに対し、他の実施形態によれば、相手側接続部は、筒状の箱部の内側に弾性変形可能な一つの接触片を有している構造であっても良い。あるいは、相手側接続部は、平板に接続孔を貫通させた構造であっても良い(LA端子)。また、相手側接続部は、前方にタブを突出させた構造であっても良い(雄端子)。
上記実施形態1の場合、被覆電線の導体が電線接続部に電気的および機械的に接続されていた。これに対し、他の実施形態によれば、被覆電線の導体が電線接続部としてのワイヤバレルに電気的に接続され、被覆電線の被覆がインシュレーションバレルに機械的に接続される構造であっても良い。
上記実施形態1の場合、電線接続部の内側に空間部の隙間が形成されていた。これに対し、他の実施形態によれば、余長部が空間部の全体を埋めることで、電線接続部の内側に隙間が形成されない構造であっても良い。
上記実施形態1の場合、電線接続部の内周面は、凹凸無く平坦に形成されていた。これに対し、他の実施形態によれば、電線接続部の内周面には、セレーションが形成されていても良い。
上記実施形態1の場合、電線の導体は、断面円形(楕円形を含む)に形成されていた。これに対し、他の実施形態によれば、電線の導体は、多角形、不定形の断面形状に形成されていても良い。例えば、導体が撚り線等であって、導体の外周が周方向に凹凸を繰り返す形状になる場合、導体の外周長は前記凹凸を繰り返す形状に沿った沿面長さによって規定される。
【符号の説明】
【0032】
10…端子金具
11…相手側接続部
12…電線接続部
13…連結部
14…接続片
15…基部
16…圧着部
17…斜面部
21…外周部
21A…左側外周部
21B…右側外周部
22…接触面
23…圧着面
24…余長部
24A…左側余長部
24B…右側余長部
25…空間部
26…(余長部の)内周面
27…(余長部の)外周面
60…電線
61…導体
62…被覆
63…最上部
80…圧着機
81…アンビル
82…クリンパ
83…設置面
L1…電線接続部の内周面の周長
L2…導体の外周長
図1
図2
図3
図4
図5
図6