IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマサ醤油株式会社の特許一覧

特開2024-169733架橋型ヌクレオシド中間体の結晶及びその製造方法、並びに架橋型ヌクレオシドアミダイトの製造方法
<>
  • 特開-架橋型ヌクレオシド中間体の結晶及びその製造方法、並びに架橋型ヌクレオシドアミダイトの製造方法 図1
  • 特開-架橋型ヌクレオシド中間体の結晶及びその製造方法、並びに架橋型ヌクレオシドアミダイトの製造方法 図2
  • 特開-架橋型ヌクレオシド中間体の結晶及びその製造方法、並びに架橋型ヌクレオシドアミダイトの製造方法 図3
  • 特開-架橋型ヌクレオシド中間体の結晶及びその製造方法、並びに架橋型ヌクレオシドアミダイトの製造方法 図4
  • 特開-架橋型ヌクレオシド中間体の結晶及びその製造方法、並びに架橋型ヌクレオシドアミダイトの製造方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169733
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】架橋型ヌクレオシド中間体の結晶及びその製造方法、並びに架橋型ヌクレオシドアミダイトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 15/18 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
C07H15/18 CSP
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024169337
(22)【出願日】2024-09-27
(62)【分割の表示】P 2021526889の分割
【原出願日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】P 2019113372
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006770
【氏名又は名称】ヤマサ醤油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】向後 悟
(57)【要約】
【課題】長期間に渡って安定的に保管することができる架橋型ヌクレオシド中間体として用いることが可能な化合物の結晶を提供する。
【解決手段】式5で表される化合物の結晶である。
上記式中、R1は水酸基の保護基、R2は脱離基を示す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式5で表される化合物の結晶。
【化1】
上記式中、R1は水酸基の保護基、R2は脱離基を示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、架橋型ヌクレオシド中間体の結晶及びその製造方法、並びに架橋型ヌクレオシドアミダイトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸医薬による疾病の治療法として、アンチセンス法、アンチジーン法、アプタマー法、siRNA法などがある。
【0003】
通常、ヌクレオシド糖部のフラノース環は平面構造ではなくN型、S型と呼ばれる歪んだコンフォメーションを取っており、環上の置換基により特定の配座に偏っている。例として、2’位に水酸基を有するリボヌクレオシドの場合にはN型のコンフォメーションが優位となる。
今西らは、ヌクレオシド糖部の4’位と2’位水酸基を架橋することにより、ヌクレオシドのコンフォメーションを強制的にN型に固定することに成功した。結果として、この架橋型ヌクレオシドを含むLNA(Locked Nucleic Acids)は、相補的な配列の核酸と極めて安定な2重鎖を形成することが明らかとなった(特許文献1参照)。
上記の特性等から、近年核酸医薬品の素材として、LNAに対する期待が高まっている。
【0004】
架橋型ヌクレオシド合成法の例としては、ヌクレオシドを原料とする方法(特許文献1)、糖を出発原料とする方法(特許文献2、非特許文献1、非特許文献2)が知られている。
【0005】
既存の架橋型ヌクレオシドの合成法の中でも、特に優れた方法の一つとして、東北大学によって以下の合成法が提唱されている(非特許文献3)。
【0006】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10-304889号公報
【特許文献2】特表2002-521310号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.Org.Chem.2001,66,8504-8512
【非特許文献2】Tetrahedron 1998,54,3607-3630
【非特許文献3】東北大学博士論文(11301甲第17068号、2016年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
既存の架橋型ヌクレオシドの合成法(例えば特許文献1、2、非特許文献2に記載された方法)においては、一連の工程によって架橋型ヌクレオシドアミダイトを合成することを目的としている。そのため、反応中間体(以下、「架橋型ヌクレオシド中間体」ということがある)の安定性や保管等については、検討がなされていないことが現状である。
【0010】
しかし、発明者が検討を行ったところ、既存の架橋型ヌクレオシドの合成方法では、比較的不安定な反応中間体を経由しなければならないという課題が見出された。工業的に架橋型ヌクレオシドを製造する際には、特定の反応中間体から必要に応じて複数の架橋型ヌクレオシドを合成する必要があり、理想的には特定の反応中間体を安定に保管できることが望ましい。
すなわち、本開示の課題は、長期間に渡って安定的に保管することができる架橋型ヌクレオシド中間体として用いることが可能な化合物の結晶及びその製造方法を提供することである。また、本開示の課題は、当該化合物の結晶を用いる架橋型ヌクレオシドアミダイトの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は上記課題を解決すべく検討を行った結果、特定の置換基を有する化合物が容易に結晶化し、当該結晶の形態で架橋型ヌクレオシド中間体として安定に保管できることを発見した。
【0012】
すなわち、本開示は、以下で特定される発明に関する。
[1]以下の式5で表される化合物の結晶。
【0013】
【化2】
【0014】
上記式中、R1は水酸基の保護基、R2は脱離基を示す。
【0015】
[2]粉末X線分析において、回折角(2θ)として5.9±0.3、11.4±0.6、11.8±0.6、13.2±0.7、16.2±0.8、17.2±0.9、18.5±0.9、19.5±1.0、19.7±1.0、20.1±1.0、20.4±1.0、21.4±1.1、22.0±1.1、23.0±1.2、24.1±1.2、24.3±1.2、26.4±1.3、29.9±1.5(°)にピークを示す、[1]に記載の結晶。
【0016】
[3]熱重量測定/示差熱分析(TG/DTA)装置により測定したとき、124℃に吸熱ピークを示す、[1]または[2]に記載の結晶。
【0017】
[4]式5で表される前記化合物は架橋型ヌクレオシド中間体である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の結晶。
【0018】
[5]下記工程1から5を含む、式5で表される化合物の結晶の製造方法。
工程1:式1で表される化合物の水酸基を保護し、式2で表される化合物を得る工程、
工程2:式2で表される化合物の4位ジメチルジオキソラニル基をアルデヒド基へと変換し、式3で表される化合物を得る工程、
工程3:式3で表される化合物を還元して4位アルデヒド基を水酸基とし、式4で表される化合物を得る工程、
工程4:式4で表される化合物の4位水酸基を脱離基へと変換し、式5で表される化合物を得る工程、
工程5:式5で表される化合物を結晶化溶媒から結晶化し、式5で表される化合物の結晶を得る工程
【0019】
【化3】
【0020】
上記式中、R1は水酸基の保護基、R2は脱離基を示す。
【0021】
[6]工程2と工程3との間に、結晶化工程を更に含む、[5]に記載の結晶の製造方法。
【0022】
[7]式5で表される前記化合物は架橋型ヌクレオシド中間体である、[5]または[6]に記載の結晶の製造方法。
【0023】
[8]以下の工程を含む、架橋型ヌクレオシドアミダイトの製造方法。
工程6:[5]~[7]のいずれか1つの製造方法によって得られる式5で表される化合物の結晶を溶媒に懸濁させた後、該化合物のイソプロピリデン基をアセチル基へと変換し、式6で表される化合物を得る工程
工程7:式6で表される化合物をシリル化した塩基と縮合し、式7で表される化合物を得る工程
工程8:式7で表される化合物の保護基の除去と同時に環化反応を行い、式8で表される化合物を得る工程
工程9:式8で表される化合物の水酸基保護基を除去し、式9で表される化合物を得る工程
工程10:必要に応じて式9で表される化合物の塩基部のアミノ基に保護基を導入し、式10で表される化合物を得る工程
【0024】
【化4】
上記式中、R1は水酸基の保護基、R2は脱離基、R3は水素原子またはアミノ基保護基を示す。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、長期間に渡って安定的に保管することができる架橋型ヌクレオシド中間体として用いることが可能な化合物の結晶及びその製造方法を提供することができる。また、本開示によれば、当該化合物の結晶を用いる架橋型ヌクレオシドアミダイトの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、式5で表される化合物の結晶の写真を示す。
図2図2は、式5で表される化合物の結晶の粉末X線回折スペクトルを示す。
図3図3は、式5で表される化合物の結晶の熱重量測定/示差熱分析結果を示す。
図4図4は、式5で表される化合物の結晶の加速試験結果を示す。
図5図5(ア)は、工程2により得られた式3で表される化合物の結晶の溶解液のTLC分析結果を示す。図5(イ)は、非特許文献3に記載の条件で得られた式cで表される化合物の反応液のTLC分析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し変更、改良などが適宜加えられたものも本開示の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0028】
本開示は、上述したように、以下の式5で表される化合物の結晶に関する。
【0029】
【化5】
【0030】
上記式中、R1は水酸基の保護基、R2は脱離基を示す。
【0031】
本開示の結晶は、後述の実施例に記載の通り顕微鏡で観察すると、図1のような外観を示す。
【0032】
本開示の結晶は、粉末X線分析において特徴的なピークを有する。
本明細書における粉末X線回折は、以下の条件で行うものとする。
[X線解析装置]X’Pert PRO MPD(スペクトリス)
[ターゲット]Cu
[X線管電流]40mA
[X線管電圧]45kV
[走査範囲]2θ=4.0~40°
【0033】
本開示の結晶を、上記に記載の条件を用いて粉末X線回折装置で分析すると、後述の実施例に記載の通り、以下の表1に示すような回折角(2θ)付近に特徴的なピークを示す(図2参照)。
【0034】
【表1】
【0035】
本開示の結晶を前記条件にて粉末X線回折装置で分析した場合、相対強度10%以上のピークを、5.9、11.4、11.8、13.2、16.2、17.2、18.5、19.5、19.7、20.1、20.4、21.4、22.0、23.0、24.1、24.3、26.4、29.9(°)に示す。
【0036】
一般に、粉末X線回折における回折角(2θ)は、5%未満の誤差範囲を含む場合がある。そのため、粉末X線回折におけるピークの回折角が完全に一致する結晶のほか、ピークの回折角が5%未満の誤差で一致する結晶も、本開示の結晶に包含される。粉末X線回折において、例えば、相対強度10%以上のピークの回折角(2θ)は、5.9±0.3、11.4±0.6、11.8±0.6、13.2±0.7、16.2±0.8、17.2±0.9、18.5±0.9、19.5±1.0、19.7±1.0、20.1±1.0、20.4±1.0、21.4±1.1、22.0±1.1、23.0±1.2、24.1±1.2、24.3±1.2、26.4±1.3、29.9±1.5(°)を示す。
【0037】
本開示の式5で表される化合物の結晶は、後述の実施例に記載の通り、熱重量測定/示差熱分析(TG/DTA)装置(昇温速度5℃/分)で分析したとき、124℃に吸熱ピークを有する(図3参照)。
【0038】
本明細書における熱重量測定/示差熱分析(TG/DTA)は、以下の条件で行うものとする。
[使用機器]熱分析装置STA7200(日立ハイテクサイエンス)
[測定条件]30~190℃の範囲を1分間あたり5℃ずつ昇温し、試料の熱量変化を測定する。リファレンスとして酸化アルミニウムを用いる。
【0039】
本開示の式5で表される化合物の結晶は、室温下で長期間に渡って安定に保管することができる。化合物の長期安定性については、後述の実施例に記載の通りの条件によって、加速試験を実施することで評価することができる。
このとき、本開示の結晶は、前記加速試験後にあってもHPLC純度90%以上を示し、好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、更に好ましくは99%以上、更に好ましくは99.5%以上を示す(図4参照)。
【0040】
また、本開示は、下記工程1から5を含む、式5で表される化合物の結晶の製造方法に関する。
工程1:式1で表される化合物の水酸基を保護し、式2で表される化合物を得る工程、
工程2:式2で表される化合物の4位ジメチルジオキソラニル基をアルデヒド基へと変換し、式3で表される化合物を得る工程、
工程3:式3で表される化合物を還元して4位アルデヒド基を水酸基とし、式4で表される化合物を得る工程、
工程4:式4で表される化合物の4位水酸基を脱離基へと変換し、式5で表される化合物を得る工程、
工程5:式5で表される化合物を結晶化溶媒から結晶化し、式5で表される化合物の結晶を得る工程
【0041】
【化6】
上記式中、R1は水酸基の保護基、R2は脱離基を示す。
【0042】
式1で表される化合物を出発原料とし、前記工程1から5を含む合成法について、以下で詳細に記載する。
【0043】
式2で表される化合物は、式1で表される化合物の3位及び5位の水酸基を4-置換ベンジル基で保護することで得ることができる。4-置換ベンジル基の中でも、本開示の式5で表される化合物が良好な結晶性を示すことから、4-フルオロベンジル基、4-クロロベンジル基、4-ブロモベンジル基、4-ヨードベンジル基等の4-ハロベンジル基及び4-ニトロベンジル基が好ましい。これらの中でも、本開示の式5で表される化合物の結晶性の高さから、4-クロロベンジル基、4-ブロモベンジル基、4-ヨードベンジル基、4-ニトロベンジル基が好ましく、入手のし易さ、コストの点で4-ブロモベンジル基が好ましい。
【0044】
当該式1で表される化合物への4-置換ベンジル基の導入は公知の方法に従って行えばよい。例えば4-ブロモベンジル基を導入する場合であれば、DMF中、0℃でNaHと15分間~3時間ほど処理した後、臭化4-ブロモベンジルと室温で1時間~24時間反応させればよい。また、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液と、有機溶媒として、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒との組み合わせによるショッテン・バウマン型条件を用いることもできる。さらに、Protective Groups in ORGANIC SYNTHESISに記載されている種々の保護基導入法を用いることもできる。
【0045】
式1で表される化合物は公知であり、市販されているものを使用することもでき、公知の方法(たとえばJ.Org.Chem.2015,80,5337-5343)によって合成することもできる。
【0046】
工程2は、式2で表される化合物の4位ジメチルジオキソラニル基をアルデヒド基へと変換し、式3で表される化合物を得る工程である。
【0047】
本工程においては、4位のジメチルジオキソラニル基を脱保護してジオール体とするために、脱保護剤を添加する。使用する脱保護剤としては、酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、ヨウ素等を用いることができる。これらの中でも、その入手容易性及び取扱い性から、酢酸を用いることが好ましい。
脱保護剤の添加量は脱保護材の種類によって適宜設定可能であるが、例えば酢酸の場合であれば溶媒量を用いることが好ましい。
また、後述するように、結晶化による精製が容易であることから、水を補助溶媒として用いることが好ましい。脱保護剤と補助溶媒との比率は体積基準で10:1~1:1程度が好ましく、2:1がより好ましい。
【0048】
本工程においては、4位のジメチルジオキソラニル基を脱保護した結果生じたジオール体を酸化的に開裂させてアルデヒド基へと変換するために、酸化剤を用いる。利用できる酸化剤としては、過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウム等の過ヨウ素酸塩、四酢酸鉛等がある。これらの中でもコスト、毒性等の面から、ジオール体に対して1~10モル当量の過ヨウ素酸ナトリウムを用いるのが好ましい。また、その使用量は1~2モル当量であるのがより好ましい。
【0049】
工程2においては、酸化剤の反応性を高めるため、添加剤を用いてもよい。添加剤としてはヨウ素等がある。
【0050】
上記工程2の反応条件の組み合わせの中でも、脱保護剤として酢酸、溶媒として水、酸化剤として過ヨウ素酸ナトリウムを用いることが好ましい。
この条件を用いる場合、0~100℃で反応を行うことができる。反応温度は、特に50~80℃程度がより好ましい。上記条件にて、1~24時間反応させればよい。
当該組み合わせを用いることにより、過剰なヨウ素等が反応系に存在せず、反応後の溶媒の廃棄が容易である等、工業的な生産に適している。また、式1で表される化合物を用いることにより、クロマトグラフィー等の精製手段を用いることなく、結晶化により70~90%以上という高い収率で目的の式3で表される化合物を得ることができる。
【0051】
工程3は、式3で表される化合物を還元して4位アルデヒド基を水酸基とし、式4で表される化合物を得る工程である。
【0052】
本工程においては、還元剤を添加することが必要となる。還元剤の種類としては特に制限はないが、例えば水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム、ボラン誘導体等、接触還元等を利用することができる。これらの中でも、コスト、安全性の点から、水素化ホウ素ナトリウムを用いることが好ましい。還元剤の添加量は、還元剤の種類により適宜調整可能である。例えば水素化ホウ素ナトリウムの場合、式3で表される化合物に対して0.25~10モル当量を用いるのが好ましく、0.25~2モル当量を用いるのがより好ましい。上記条件にて、-30~50℃、より好ましくは-10~25℃にて10~120分間反応を行うことができる。
【0053】
本工程における溶媒は、還元剤等の種類に合わせて適宜利用することができる。例えば水系溶媒として水、有機溶媒としてメタノール、エタノール等のアルコール溶媒やテトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン、およびこれらと水の組み合わせを利用することができる。
【0054】
工程4は、式4で表される化合物の4位の水酸基を脱離基に変換し、式5で表される化合物を得る工程である。
【0055】
本工程において導入される脱離基としては、特に制限はないが、架橋化反応を効率よく行うため、求核置換反応における反応性が高い置換基であることが好ましい。そのような置換基の例としては、4-トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、クロロメタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ハロゲノ基等が挙げられる。これらの中でも脱離基導入試薬が入手しやすく安価な点から4-トルエンスルホニルオキシ基が好ましい。
【0056】
本工程において用いる溶媒は、導入する脱離基の種類に応じて適宜、有機溶媒や水と有機溶媒の組み合わせが選択可能である。具体的には、有機溶媒として、ピリジン、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒とトリエチルアミン等の有機塩基との組み合わせや、水系溶媒として水-トリエチルアミン等の有機塩基、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液と、有機溶媒として、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒との組み合わせによるショッテン・バウマン型条件も利用可能である。これらの中でも毒性、コストの面から、ピリジン、水酸化ナトリウム水溶液-テトラヒドロフラン、水酸化ナトリウム水溶液-2-メチルテトラヒドロフランのうちのいずれかを用いることが好ましい。脱離基の導入試薬の使用量は、置換脱離基及び溶媒の種類に応じて適宜選択可能である。例えば脱離基として塩化4-トルエンスルホニル、溶媒としてピリジンを用いる場合には、式3で表される化合物に対して1~10モル当量を用いるのが好ましいが、1~2モル当量を用いるのがより好ましい。上記条件にて、-10~100℃、より好ましくは0~60℃にて1~24時間反応させればよい。
【0057】
工程5は、式5で表される化合物の合成反応液に対して後処理操作を行い、式5で表される化合物の結晶を得る工程である。式5で表される化合物の結晶化溶媒としては、エタノール等のアルコール溶媒や種々の良溶媒と貧溶媒との組み合わせを例示することができる。良溶媒としては、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ピリジン、クロロホルム、アセトニトリル、アセトン、およびこれらの誘導体が例示される。また、貧溶媒としては、ヘキサン、アルコール、水、およびこれらの誘導体が例示される。
【0058】
上記の各工程では、必要がある場合には工程終了後に単離・精製操作を行ってもよいが、行わなくてもよい。単離・精製の方法としては、イオン交換、吸着などの各種クロマトグラフィーや結晶化が挙げられるが、本開示の合成法で得られる化合物は結晶性が高いため、結晶化を行うことが好ましい。
【0059】
特に、式3で表される化合物は、結晶化により精製を行うことが好ましい。すなわち、工程2と工程3との間に結晶化工程を更に含むことが好ましい。結晶化による精製を行う場合には、反応の溶媒は酢酸-水であることが好ましい。このとき、反応の進行に伴い、式3で表される化合物の結晶が析出する。
このとき、反応の進行に伴って目的化合物が結晶として析出するので、過剰反応による分解で副生成物が生成するのを防ぐことができ、精製効果も高い。そのため、工程2においては、クロマトグラフィーによる煩雑な精製操作を行わずとも不純物の副生及び混入を抑制することができる(図5(ア)参照)。
一方で、非特許文献3に記載された方法によって、上記の式bで表される化合物から式cで表される化合物を合成した場合には、不純物がより多く副生してしまう(図5(イ)参照)。さらに、式cで表される化合物は非結晶性であるため、精製を行う場合にはクロマトグラフィーによる煩雑な精製操作が必要となる。
【0060】
本開示の式5で表される化合物の結晶は、長期間に渡って安定的に保管することができるため、架橋型ヌクレオシド中間体として用いることができる。また、この結晶は、クロマトグラフィーによる精製工程が不要であるため、工業的製造に適している。
【0061】
本開示の式5で表される化合物の結晶は、非特許文献2等の公知の記載に従い、以下に示す工程6~10によって、架橋型ヌクレオシドを合成することができる。
工程6:式5で表される化合物の結晶を溶媒に懸濁させた後、該化合物のイソプロピリデン基をアセチル基へと変換し、式6で表される化合物を得る工程
工程7:式6で表される化合物をシリル化した塩基と縮合し、式7で表される化合物を得る工程
工程8:式7で表される化合物の保護基の除去と同時に環化反応を行い、式8で表される化合物を得る工程
工程9:式8で表される化合物の水酸基保護基を除去し、式9で表される化合物を得る工程
工程10:必要に応じて式9で表される化合物の塩基部のアミノ基に保護基を導入し、式10で表される化合物を得る工程
【0062】
【化7】
上記式中、R1は水酸基の保護基、R2は脱離基、R3は水素原子またはアミノ基保護基を示す。
【0063】
上記式中のBaseは、チミン、ウラシル、アデニン、シトシン、5-メチルシトシン、グアニン以外に2-チオウラシル、5-プロピニルウラシル、5-プロピニルシトシン、2,6-ジアミノプリンといった塩基であり得る。さらに、工程中においてこれらの塩基はさらに化学反応を受け別の塩基に変換され得る。
これら塩基上のアミノ基はアセチル基、フェノキシアセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、といったアシル基やジメチルホルムアミジノ基といった保護基で保護されていても良い。
【0064】
さらに、上記架橋型ヌクレオシドが、対応する架橋型ヌクレオシドアミダイトへと変換され得ることは、非特許文献2等の公知の記載により、当業者であれば容易に理解することができる。
【0065】
本開示の架橋型ヌクレオシドの製造方法は、安定的に保管することができる式5で表される化合物の結晶を架橋型ヌクレオシド中間体として用いているため、必要に応じて様々な架橋型ヌクレオシドを製造することができる。
【0066】
以下、実施例を記載するが、本発明は実施例の内容によって限定されない。
【実施例0067】
(実施例1)
<化合物5Aの結晶の製造>
化合物1Aを出発原料として、以下の工程によって化合物5Aの結晶を製造した。なお、式中、「BPMO」及び「OMPB」はともにBPM基が結合したO基を表す。また、「BPM」はブロモ(フェニル)メチル(4-ブロモベンジルとも称される)を表す。
【0068】
【化8】
【0069】
化合物1Aから化合物2A(式2で表される化合物、R 1 =4-ブロモベンジル基)を得る工程
化合物1A(20.43g、70.37mmol)をジメチルアセトアミド(脱水、352mL)に溶解し、0℃に冷却した。水素化ナトリウム(60質量%油性、7.04g、0.176mol)を加え、1時間撹拌後、臭化4-ブロモベンジル(44.0g、0.176mol)を加え、室温で17時間撹拌した。反応液にメタノール(10mL)を加え撹拌後、濃縮した。残渣に酢酸エチルを加え水洗後、有機層を無水硫酸マグネシウム上乾燥、濃縮し、化合物2Aを得た。
【0070】
化合物2Aから化合物3A(式3で表される化合物、R 1 =4-ブロモベンジル基)を得る工程
化合物2Aを酢酸(507mL)に60℃で加熱溶解後、過ヨウ素酸ナトリウム(30.1g、0.141mol)水溶液(253mL、60℃で加熱溶解)のうち50mLを添加した。5分後に30mL、さらに残りを5分間かけて添加し、同温度で3時間撹拌した。反応液を0℃に冷却して45分間撹拌後、析出した固体(結晶)をろ取した。酢酸:脱イオン水(体積比で2:1)、次いで脱イオン水で洗浄後、真空乾燥し、化合物3Aの結晶(33.10g、59.51mmol、84.57%)を得た。
1H-NMR(CDCl3,400MHz);δ9.89(1H,s),7.48-7.44(4H,m),7.20-7.09(4H,m),5.86(1H,d),4.66(1H,d),4.63(1H,t),4.52(1H,s),4.47(1H,d),4.41(1H,d),4.31(1H,d),3.66(1H,d),3.60(1H,d),1.60(3H,s),1.36(3H,s).
【0071】
化合物3Aから化合物4A(式4で表される化合物、R 1 =4-ブロモベンジル基)を得る工程
化合物3Aの結晶(33.10g、59.51mmol)をメタノール(298mL)、テトラヒドロフラン(298mL)に懸濁し、0℃に冷却した。水素化ホウ素ナトリウム(563mg、14.9mmol)を少量ずつ添加し、5分間撹拌後、さらに同量の水素化ホウ素ナトリウム(563mg、14.9mmol)を添加し、2時間撹拌した。反応液を少量にまで濃縮後、残渣に酢酸エチルを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウム上乾燥、濃縮し、化合物4Aを得た。
【0072】
化合物4Aから化合物5A(式5で表される化合物、R 1 =4-ブロモベンジル基、R 2 =4-トルエンスルホニルオキシ基)の結晶を得る工程
化合物4Aをピリジンで3回共沸後、残渣をピリジン(脱水、119mL)に溶解し、塩化4-トルエンスルホニル(22.7g、0.119mol)を加え、30℃で17時間撹拌した。脱イオン水(10mL)を加え撹拌後、反応液を濃縮した。残渣に酢酸エチルを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウム上乾燥、濃縮後、残渣をトルエンで3回共沸した。固化した残渣を酢酸エチル(50mL)に溶解し、ヘキサン(100mL)を少量ずつ添加した(結晶析出)。さらにヘキサンを(100mL)添加し、終夜静置した。析出した固体をろ取、ヘキサンで洗浄後、真空乾燥し、化合物5Aの結晶(32.22g、45.20mmol、75.95%)を得た。
1H-NMR(CDCl3,400MHz);δ7.77(2H,d),7.45(2H,d),7.44(2H,d),7.29(2H,d),7.13(2H,d),7.08(2H,d),5.68(1H,d),4.63(1H,d),4.54(1H,dd),4.44(1H,d),4.43(1H,d),4.38(1H,d),4.32(1H,d),4.14(1H,d),3.51(1H,d),3.48(1H,d),2.42(3H,s),1.29(3H,s),1.27(3H,s).
【0073】
<化合物5Aの結晶の物性測定>
上記で得られた化合物5Aの結晶について下記(1)~(4)の物性を測定した。
【0074】
(1)結晶形の顕微鏡観察
化合物5Aの結晶の結晶形をデジタルマイクロスコープで観察した。使用したデジタルマイクロスコープはDino-Lite AD-4113ZT(AnMo Electronics Corporation社製)、観察倍率は230倍を用いた。
【0075】
(2)粉末X線分析
化合物5Aの結晶を、粉末X線分析に供した。使用した粉末X線分析機はスペクトリス株式会社製、分析条件は以下の通りであった。
[X線解析装置]X’Pert PRO MPD(スペクトリス株式会社)
[ターゲット]Cu
[X線管電流]40mA
[X線管電圧]45kV
[走査範囲]2θ=4.0~40°
【0076】
測定の結果を図2に示す。
化合物5Aは、図2に示す回折角(2θ)付近に特徴的なピークを示した。
【0077】
(3)熱重量測定/示差熱分析(TG/DTA)
化合物5Aの結晶を、熱重量測定/示差熱分析(TG/DTA)に供した。使用した熱重量測定/示差熱分析(TG/DTA)機は、熱分析装置STA7200(日立ハイテクサイエンス社製)、分析条件は以下の通りであった。
分析条件:30~190℃の範囲を1分間あたり5℃ずつ昇温し、試料の熱量変化を測定した。リファレンスとして酸化アルミニウムを用いた。
【0078】
測定の結果を図3に示す。
化合物5Aの結晶は、124℃に吸熱ピークを示した。
【0079】
(4)安定性の加速試験
化合物5Aの結晶を、安定性の加速試験に供した。当該加速試験の条件は、以下の通りである。
化合物5Aの結晶50mgをガラス製サンプル瓶に取り、80℃で7日間加熱した。試料1mgを5mMトリエチルアンモニウムアセテート-70体積%アセトニトリル1mLに溶解し、高速液体クロマトグラフィーにより純度を測定した。
また、比較対象として、化合物5Aのアセトニトリル溶液を同条件にて加速試験に供した。化合物5Aの結晶10mgをアセトニトリル1mLに溶解し、80℃で7日間加熱した。試料溶液を5mMトリエチルアンモニウムアセテート-70体積%アセトニトリルで10倍に希釈し、高速液体クロマトグラフィーにより純度を測定した。
結果を図4に示す。
【0080】
化合物5Aは、80℃、7日間加熱条件下、溶液状態では35%にまで純度が減少したのに対し、結晶状態ではほとんど分解が起こらなかった。
このことから、化合物5Aは、結晶状態で保管する限り、特別な管理を行わない場合であっても、安定的に長期間保管できることが分かった。一方で、化合物5Aであっても、既存の架橋型ヌクレオシド中間体の合成法と同じく、溶液状態では中間体を長期間安定的に保管することができないことがわかった。
【0081】
<本開示の工程2と非特許文献3に記載の工程との比較>
上記の方法で得た化合物3Aの結晶と、非特許文献3に記載された条件で合成された式cで表される化合物の溶液の性状とを比較した。
【0082】
式b化合物から式c化合物を得る工程
非特許文献3に記載の方法に従い、式bで表される化合物から式cで表される化合物を製造した。
【0083】
TLCを用いて、不純物の生成量を確認した。TLCの条件は、以下の通りであった。
TLCプレート:Merck社製TLC Silica gel 60 F254
展開溶媒:ヘキサン:酢酸エチル=2:1(体積比)
【0084】
化合物3Aの結晶のTLCの結果を図5(ア)、非特許文献3に記載の式cで表される化合物の溶液のTLC結果を図5(イ)に記載した。
上記の方法で化合物3Aを合成すると、反応の進行に伴い目的物結晶が析出し、これをろ過するのみで、クロマトグラフィー操作を行うことなく、純度の高い化合物3Aが得られることが確認された。
これに対し、非特許文献3に記載の条件にて合成された式cで表される化合物の反応混合液では、式cで表される化合物の他に副生成物の生成が見られた。式cで表される化合物は非結晶性のため、この副生成物を除去するため更なる精製を行う場合、クロマトグラフィー操作が必要であることが明らかとなった。
【0085】
(実施例2)
実施例1にて製造した化合物5Aを原料として用い、チミン、アデニン、5-メチルシトシン、グアニンの各種架橋型ヌクレオシドアミダイトを製造した。
【0086】
(実施例2-1)チミン架橋型ヌクレオシドアミダイトの製造
化合物5Aからチミン架橋型ヌクレオシドアミダイト11Tを合成した。
【0087】
【化9】
【0088】
化合物5Aから化合物6A(式6で表される化合物、R 1 =4-ブロモベンジル基、R 2 =4-トルエンスルホニルオキシ基)を得る工程
化合物5A(33.10g、59.51mmol)を酢酸(366mL)、無水酢酸(45.0mL)に懸濁し、硫酸(0.393mL)の酢酸溶液(30.0mL)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液に酢酸ナトリウム(1.50g)を添加、撹拌後、濃縮し、残渣をトルエンで5回共沸した。残渣に酢酸エチルを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウム上乾燥、濃縮し、化合物6Aを得た。
【0089】
化合物6Aから化合物7T(式7で表される化合物、R 1 =4-ブロモベンジル基、R 2 =4-トルエンスルホニルオキシ基、Base=チミン)を得る工程
化合物6A、チミン(7.96g、63.1mmol)、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(33.9mL、0.139mol)にアセトニトリル(105mL)を加え、85℃で1時間撹拌した。反応液を0℃に冷却後、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(9.89mL、54.7mmol)を加え、85℃で4時間撹拌した。反応液を0℃に冷却後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え撹拌した。析出した固体をセライトろ過により除去後、酢酸エチルで抽出した(酢酸エチル層を1M水酸化ナトリウム水溶液、次いで飽和塩化アンモニウム水溶液で洗浄すると、残存するチミンを除去できる)。有機層を無水硫酸マグネシウム上乾燥、濃縮し、化合物7Tを得た。
【0090】
化合物7Tから化合物8T(式8で表される化合物、R 1 =4-ブロモベンジル基、Base=チミン)を得る工程
化合物7Tにメタノール(211mL)を加え、水酸化ナトリウム(8.42g、0.211mol)を加え、40℃で3時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウム上乾燥、濃縮後、残渣にエタノール(150mL)を加え、溶解するまで酢酸エチルを添加した。減圧下、酢酸エチルを留去し、析出した固体をろ取、エタノールで洗浄した。得られた固体を真空乾燥し、化合物8T(20.00g、32.88mmol、78.1%)を得た。
1H-NMR(CDCl3,400MHz);δ8.39(1H,s),7.49(2H,d),7.46(2H,d),7.46(1H,d),7.18(2H,d),7.14(2H,d),5.64(1H,s),4.62-4.45(5H,m),4.02-3.78(5H,m),1.70(3H,d).
【0091】
化合物8Tから化合物9T(式9で表される化合物、Base=チミン)を得る工程
化合物8T(7.13g、11.7mmol)、ギ酸アンモニウム(7.56g、0.12mol)をメタノール(120mL)、酢酸エチル(120mL)に溶解し、20質量%水酸化パラジウム-活性炭素(20質量%Pd、50質量%含水)(3.57g)を加え、60℃で4時間撹拌した。触媒をセライトろ過により除去後、ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル150mL、クロロホルム:メタノール=10:1(体積比))により精製し、化合物9T(3.22g、11.9mmol、102%)を得た。
1H-NMR(D2O,400MHz);δ7.66(1H,s),5.67(1H,s),4.49(1H,s),4.22(1H,s),4.05-4.03(3H,m),3.96(1H,d),1.91(3H,s).
【0092】
化合物9Tから化合物10Tを得る工程
化合物9T(4.23g、15.7mmol)をピリジン(脱水、52.3mL)に溶解し、塩化ジメトキシトリチル(7.45g、22.0mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。反応液にメタノール(5mL)を加え撹拌後、濃縮した。残渣に酢酸エチルを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、有機層を無水硫酸マグネシウム上乾燥、濃縮した。残渣をトルエンで3回共沸後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル250mL、ヘキサン:酢酸エチル=1:1~1:2(体積比)~酢酸エチル)により精製し、化合物10T(8.99g、15.7mmol、100%)を得た。
1H-NMR(CDCl3,400MHz);δ8.54(1H,s),7.65-6.84(14H,m),5.63(1H,s),4.43(1H,s),4.28(1H,d),3.88(2H,d),3.81(2H,d),3.80(6H,s),3.58(2H,d),3.47(2H,d),2.31(1H,d),1.70(3H,s).
【0093】
化合物10Tから化合物11Tを得る工程
化合物10T(4.50g、7.86mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(3.86mL、17.3mmol)をジクロロメタン(脱水、39.3mL)に溶解し、0℃に冷却した。2-シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジド(3.86mL、17.3mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、有機層を無水硫酸マグネシウム上乾燥、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル200mL、ヘキサン:酢酸エチル=1:1(体積比))により精製し、化合物11T(6.00g、7.76mmol、98.7%)を得た。
31P-NMR(CDCl3,160MHz);δ149.94,149.80.
【0094】
(実施例2-2)アデニン架橋型ヌクレオシドアミダイトの製造
【0095】
【化10】
【0096】
化合物5Aから化合物6A(式6で表される化合物、R 1 =4-ブロモベンジル基、R 2 =4-トルエンスルホニルオキシ基)を得る工程
化合物5A(24.0g、33.7mmol)を酢酸(340mL、0.1mol/L)に懸濁し、室温で撹拌しながら無水酢酸(35mL、262mmol)、硫酸(0.32mL、6.07mmol)の酢酸溶液(371mL)を順次加え、同温で3時間撹拌した。反応終了後、同温で 酢酸ナトリウム(1.2g、14.5mmol)を加えた後、同温で5分撹拌後、濃縮した。残渣を、トルエン(340mL)で3回共沸した。得られた残渣を酢酸エチル(400mL)に溶解させた後、飽和重曹水(100mL)による洗浄を3回実施した。水層に対し、酢酸エチル(400mL)による抽出を1回行った後、得られたすべての有機層を合わせ、硫酸マグネシウムによる乾燥と溶媒の減圧留去を順次行い、化合物6Aを得た。
【0097】
化合物6Aから化合物7A(式7で表される化合物、R 1 =4-ブロモベンジル基、R 2 =4-トルエンスルホニルオキシ基、Base=N 6 -ベンゾイルアデニン)を得る工程
化合物6A、N6-ベンゾイルアデニン(12.1g、50.6mmol)にトルエン(85mL、0.4mol/L)を加えた後、室温で撹拌しながらN,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(25mL、101mmol)を加え、加熱還流下で1時間撹拌した。続いて、0℃に降温した後、同温でトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(7.9mL、43.8mmol)を添加し、加熱還流下で2時間撹拌した。反応終了後、0℃で酢酸エチル(300mL)と1mol/L水酸化ナトリウム水溶液(100mL)を加え、同温で5分撹拌した。続いて、析出した固体をろ過により除去した後、有機層と水層の分離を行った。得られた有機層を、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液(50mL)で3回洗浄後、硫酸マグネシウムによる乾燥と溶媒の減圧留去を順次行い、化合物7Aを得た。
【0098】
化合物7Aから化合物8A(式8で表される化合物、R 1 =4-ブロモベンジル基、Base=アデニン)を得る工程
化合物7Aに対し、メタノール:テトラヒドロフラン(9:1(体積比)、170mL)を加えた後、水酸化ナトリウム(6.7g、169mmol)を加え、40℃で1時間撹拌した。反応終了後、同温で飽和塩化アンモニウム水溶液(170mL)を加えた後、同温で5分撹拌した。続いて、酢酸エチル(200mL)を加え、撹拌した後、析出している固体をろ過により除去した。ろ液の濃縮後、残渣を酢酸エチル(400mL)に溶解させた後、有機層と水層の分離を行った。得られた有機層に対して脱イオン水(100mL)による洗浄を1回行った後、硫酸マグネシウムによる乾燥と溶媒の減圧留去を順次行った。得られた残渣に対し、メタノール(67mL、0.5mol/L)を加え、加熱還流下で撹拌することで残渣を完全に溶解させた。その後、室温に降温し、終夜撹拌することで析出した結晶を回収した。得られた結晶をメタノール(20mL)で2回洗浄し、化合物8A(14.3g、23.2mmol、68.7%)を得た。
1H-NMR(CDCl3, 400MHz); δ8.33(1H,s),7.99(1H,s), 7.47(2H,d),7.41(2H,d),7.18(2H,d),7.10(2H,d), 6.03(1H,s), 5.63(2H,brs), 4.87(1H,s),4.58(1H,d), 4.57(2H,dd), 4.48(1H,d), 4.26(1H,s), 4.11(1H,d),3.99(1H,d),3.81(2H,dd).
【0099】
化合物8Aから化合物9A(式9で表される化合物、Base=アデニン)を得る工程
化合物8A(14.3g、23.2mmol)に対し、酢酸エチル:メタノール(1:3(体積比)、600mL)を加えた後、ギ酸アンモニウム(21.9g、348mmol)と脱イオン水(37mL)を加え、60℃で溶解するまで撹拌した。その後、室温にて水酸化パラジウム-活性炭素(2.9g)を加え、60℃で17時間撹拌した。続いて、ギ酸アンモニウム(7.3g、116mmol)と水酸化パラジウム-活性炭素(0.7g)を追加し、60℃で24時間撹拌した。反応終了後、セライトろ過により触媒を除去後、溶媒の減圧留去を行い、化合物9Aを得た。
【0100】
化合物9Aから化合物10A(式10で表される化合物、Base(R 3 )=N 6 -ベンゾイルアデニン)を得る工程
共沸脱水(ピリジン 100mL、3回)を行った化合物9Aに対し、ピリジン(116mL、0.2mol/L)を加えた後、0℃でクロロトリメチルシラン(20.6mL、162mmol)を加え、同温で30分撹拌した。次に、塩化ベンゾイル(13.5mL、116mmol)を同温で添加し、21時間撹拌した。続いてメタノール(116mL)を添加した後、室温で5分撹拌し、その後、アンモニア水(34mL)を加え、同温で2.5時間撹拌した。反応終了後、析出していた固体をろ過により除去した後、溶媒を減圧留去した。その後、ピリジン(100mL)を添加し、5分撹拌した後、溶解しなかった固体をろ過により除去した。溶媒を減圧留去し、化合物10Aを得た。
【0101】
化合物10Aから化合物11Aを得る工程
共沸脱水(ピリジン70mL、3回)を行った化合物10Aに対し、ピリジン(77mL、0.3mol/L)を加えた後、室温で撹拌しながら塩化ジメトキシトリチル(9.6g、28.2mmol)を加え、同温で1時間撹拌した。続いて、塩化ジメトキシトリチル(11.8g、34.8mmol)を加え、12時間撹拌した。反応終了後、メタノール(80mL)を加え、同温で5分撹拌した後、溶媒の減圧留去を行った。得られた残渣を酢酸エチル(320mL)に溶解させた後、脱イオン水(80mL)による洗浄を1回実施した。硫酸マグネシウムによる乾燥と溶媒の減圧留去を順次行った後、中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO2100g、酢酸エチル:ヘキサン=66:34(体積比)~酢酸エチル)により精製し、化合物11A(9.41g、13.7mmol、59.1%)を得た。
1H-NMR(CDCl3, 400MHz); δ9.10(1H,s),8.77(1H,s),8.28(1H,s),8.02(2H,d),7.63-7.21(12H,m),6.85(4H,d),6.13(1H,s),4.44(1H,d),4.04(2H,s),3.61(1H,d),3.56(1H,d),2.65(1H,d).
【0102】
化合物11Aから化合物12Aを得る工程
共沸脱水(トルエン70mL、3回)を行った化合物11A(9.41g、13.7mmol)に対しジクロロメタン(70mL)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン(6.0mL、34.3mmol)を順次加えた後、0℃で撹拌しながら(2-シアノエチル)(N,N-ジイソプロピル)クロロホスホロアミダイト(6.7mL、30.1mmol)を加え、室温で2.5時間撹拌した。反応終了後、0℃で飽和重曹水(50mL)を加え、同温で5分撹拌した後、有機層と水層の分離を行った。水層に対して酢酸エチル(70mL)による抽出を1回行った後、得られたすべての有機層を合わせ、硫酸マグネシウムによる乾燥と溶媒の減圧留去を順次行った。その後、中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO2100g、酢酸エチル:ヘキサン=69:31~90:10(体積比))により精製し、化合物12A(9.4g、10.6mmol、77.0%)を得た。
31P-NMR(MeCN-d3,160MHz);δ149.54,149.04.
【0103】
(実施例2-3)5-メチルシトシン架橋型ヌクレオシドアミダイトの製造
化合物5Aから5-メチルシトシン架橋型ヌクレオシドアミダイト12Cを合成した。
【0104】
【化11】
【0105】
化合物5Aから化合物6A(式6で表される化合物、R 1 =4-ブロモベンジル基、R 2 =4-トルエンスルホニルオキシ基)を得る工程
化合物5A(30.0g、42.1mmol)を酢酸(366mL)、無水酢酸(45.0mL)に懸濁し、濃硫酸(396μL)の酢酸溶液(30.0mL)をゆっくりと滴下後、室温で2時間撹拌した。反応液に酢酸ナトリウム(1.50g、18.3mmol)を加え、完全に溶解するまで撹拌後、濃縮した。残渣をトルエン-酢酸エチル(体積比で2:1)で共沸(40mL×5)後、残渣に酢酸エチル(300mL)を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(150mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウム上乾燥後、濃縮した。残渣をトルエンで共沸(20mL×3)し、化合物6Aを得た。
【0106】
化合物6Aから化合物7C(式7で表される化合物、R 1 =4-ブロモベンジル基、R 2 =4-トルエンスルホニルオキシ基、Base=N 4 -ベンゾイル-5-メチルシトシン)を得る工程
化合物6Aをアセトニトリル(超脱水)(105mL)に溶解し、N4-ベンゾイル-5-メチルシトシン(12.7g、55.4mmol)、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(29.8mL、0.122mol)を加え、85℃で1時間加熱撹拌した。反応液を氷冷後、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(11.4mL、63.1mmol)を加え、85℃で8時間加熱撹拌した。反応液を氷冷後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(150mL)を加え、発泡が収まるまで撹拌した。酢酸エチル(150mL)で抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウム上乾燥後、濃縮し、化合物7Cを得た。
【0107】
化合物7Cから化合物8C(式8で表される化合物、R 1 =4-ブロモベンジル基、Base=5-メチルシトシン)を得る工程
化合物7Cをテトラヒドロフラン(21mL)に溶解し、メタノール(211mL)、水酸化ナトリウム(8.42g、0.211mol)を加え、40℃で14時間加熱撹拌した。反応液を少量にまで濃縮した後、酢酸エチル(200mL)で希釈し、1mol/L塩酸(100mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウム上乾燥後、濃縮した。残渣をアセトン(30mL)に溶解し、脱イオン水(15mL)を添加した。溶液が透明になるまでアセトンを加えた後、析出した固体をろ取した。固体を50体積%エタノールで洗浄後、真空乾燥し、化合物8C(18.71g、30.81mmol、73.17%)を得た。
1H-NMR(CDCl3,400MHz);δ8.54(1H,s),7.50-7.42(5H,m),7,19-7.11(4H,m),5.71(1H,s),4.71(1H,s),4.60-4.52(3H,m),4.38(1H,d),4.00(1H,d),3.87-3.79(4H,m),3.71(2H,s),1.67(3H,d).
【0108】
化合物8Cから化合物9C(式9で表される化合物、Base=5-メチルシトシン)を得る工程
化合物8C(16.07g、26.46mmol)をテトラヒドロフラン(142mL)、メタノール(142mL)に溶解し、ギ酸アンモニウム(16.8g、0.266mol)を加え、溶解した。1mol/L塩酸(26.4mL、26.4mmol)、水酸化パラジウム-活性炭素(8.04g)を加え、60℃で23時間加熱撹拌した。脱イオン水(27mL)を加え、析出物を溶解した後、セライトろ過により水酸化パラジウム-活性炭素を除去し、50体積%メタノール(100mL×5)で洗浄した。ろ液、洗浄液を濃縮し、残渣を脱イオン水(100mL)に溶解し、Dowex50W×8(H+型)カラム(60mL)に吸着させた。カラムを水洗後、0.2-0.5mol/Lアンモニア水で溶出した。目的物を含むフラクションを濃縮後、真空乾燥し、化合物9C(6.83g、25.4mmol、96.0%)を得た。
1H-NMR(D2O,400MHz);δ7.62(1H,s),5.66(1H,s),4.46(1H,s),4.19(1H,s),4.04(1H,d),4.04(2H,s),3.96(1H,d),1.98(3H,s).
【0109】
化合物9Cから化合物10C(式10で表される化合物、Base(R 3 )=N 4 -ベンゾイル-5-メチルシトシン)を得る工程
化合物9C(9.15g、34.0mmol)をピリジン(脱水)(118mL)に溶解し、無水安息香酸(15.4g、68.1mmol)を加え、室温で3日間撹拌した。反応液にエタノール(116 mL)、2mol/L水酸化ナトリウム水溶液(174mL、0.348mol)を加え、1時間撹拌後、酢酸(23mL)を添加した。反応液を濃縮後、残渣を脱イオン水で2回共沸した。残渣を脱イオン水(25mL)に溶解し、析出した固体をろ取、水洗した。得られた固体を脱イオン水から再結晶化し、化合物10C(10.19g、27.29mmol、80.3%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6,400MHz);δ8.15-7.45(6H,m),5.67(1H,d),5.46(1H,s),5.22(1H,t),4.17(1H,s),3.90(1H,d),3.83-3.63(4H,m),2.00(3H,s).
【0110】
化合物10Cから化合物11Cを得る工程
化合物10C(7.00g、18.7mmol)をピリジンで3回共沸後、ピリジン(脱水)(62.3mL)に溶解した。塩化ジメトキシトリチル(8.24g、24.3mmol)を加え、室温で2時間撹拌後、反応液にメタノール(5mL)を加え濃縮した。残渣に酢酸エチル(200mL)を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウム上乾燥後、濃縮し、残渣をトルエン(20mL×3)で共沸した。残渣を以下の条件で中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO2100g、ヘキサン:酢酸エチル=2:1~1:1~1:3(体積比))により精製し、化合物11C(12.14g、18.00mmol、96.26%)を得た。
1H-NMR(CDCl3,400MHz);δ8.32(2H,d),7.83(1H,s),7.55-7.25(12H,m),6.89-6.85(4H,m),5.70(1H,s),4.47(1H,s),4.29(1H,d),3.85(2H,dd),3.81(6H,s),3.62(1H,d),3.48(1H,d),1.90(3H,s),1.86(1H,d).
【0111】
化合物11Cから化合物12Cを得る工程
化合物11C(11.50g、17.02mmol)をジクロロメタン(超脱水)(85.1mL)に溶解し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(6.02mmol、35.2mmol)、(2-シアノエチル)(N,N-ジイソプロピル)クロロホスホロアミダイト(6.83mL、30.6mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液をクロロホルム(100 mL)で希釈後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液-飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL+50mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウム上乾燥後、濃縮した。残渣を以下の条件で中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO2100g、ヘキサン:酢酸エチル=3:1~2:1~1:1(体積比))により精製し、化合物12C(10.70g、12.22mmol、71.80%)を得た。
31P-NMR(CDCl3,160MHz);δ150.10,150.04.
【0112】
(実施例2-4)グアニン架橋型ヌクレオシドアミダイトの製造
化合物5Aからグアニン架橋型ヌクレオシドアミダイト13Gを合成した。
【0113】
【化12】
【0114】
化合物5Aから化合物6A(式6で表される化合物、R 1 =4-ブロモベンジル基、R 2 =4-トルエンスルホニルオキシ基)を得る工程
化合物5A(30.0g、42.1mmol)を酢酸(366mL)、無水酢酸(45.0mL)に懸濁し、濃硫酸(396μL)の酢酸溶液(30.0mL)をゆっくりと滴下後、室温で2時間撹拌した。反応液に酢酸ナトリウム(1.50g、18.3mmol)を加え、完全に溶解するまで撹拌後、濃縮した。残渣をトルエン-酢酸エチル(体積比で2:1)で共沸(40mL×5)後、残渣に酢酸エチル(300mL)を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(150mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウム上乾燥後、濃縮した。残渣をトルエンで共沸(20mL×3)し、化合物6Aを得た。
【0115】
化合物6Aから化合物7G(式7で表される化合物、R 1 =4-ブロモベンジル基、R 2 =4-トルエンスルホニルオキシ基、Base=2-アミノ-クロロプリン)を得る工程
化合物6Aをアセトニトリル(超脱水)(105mL)に溶解し、2-アミノ-6-クロロプリン(10.7g、63.1mmol)、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(33.9mL、0.137mol)を加え、85℃で1時間加熱撹拌した。反応液を氷冷後、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(15.2mL、84.1mmol)を加え、85℃で7時間加熱撹拌した。反応液を氷冷後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、発泡が収まるまで撹拌した。酢酸エチル(150mL)で抽出し、有機層を1M水酸化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸マグネシウム上乾燥、濃縮し、化合物7Gを得た。
【0116】
化合物7Gから化合物8G(式8で表される化合物、R 1 =4-ブロモベンジル基、Base=2-アミノ-6-メトキシプリン)を得る工程
化合物7Gをテトラヒドロフラン(105mL)に溶解し、メタノール(421mL)、25体積%ナトリウムメトキシドメタノール溶液(80.9mL)を加え、室温で24時間加熱撹拌した。反応液を2M塩酸で中和後、濃縮した。残渣に酢酸エチルを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウム上乾燥後、濃縮した。残渣を酢酸エチルに溶解し、活性炭(1.0g)を加え、60℃で1時間加熱撹拌した。活性炭をセライトろ過により除去後、ろ液を濃縮し、化合物8Gを得た。
【0117】
化合物8Gから化合物9G(式9で表される化合物、Base=2-アミノ―6-メトキシプリン)を得る工程
化合物8Gをテトラヒドロフラン(213mL)、メタノール(213mL)に溶解し、ギ酸アンモニウム(26.9g、0.427mol)を加え、溶解した。水酸化パラジウム-活性炭素(13.5g)を加え、60℃で30時間加熱撹拌した。セライトろ過により水酸化パラジウム-活性炭素を除去し、メタノール(100mL×5)で洗浄した。ろ液、洗浄液を濃縮後、残渣を脱イオン水(300mL)に溶解し、トルエンで洗浄した。溶液をIRA93(OH-型)カラム(150mL)に通過、水洗し後、濃縮し、化合物9Gを得た。
【0118】
化合物9Gから化合物10G(式9で表される化合物、Base=グアニン)を得る工程
化合物9Gを100mM Tris-HCl(pH7.5)(420mL)に溶解し、アデノシンデアミナーゼ(37μL、42units)を加え、40℃で24時間撹拌した。アデノシンデアミナーゼ(37μL、42units)を追加し、同温度でさらに24時間撹拌した。析出した固体をろ取、水洗後、真空乾燥し、化合物10G(8.50g、28.8mmol、68.4%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6,400MHz);δ10.63(1H,s),7.79(1H,s),6.56(2H,s),5.68-5.67(2H,m),5.03(1H,t),4.28(1H,s),4.14(1H,d),3.88(1H,d),3.77(2H,m),3.71(1H,d).
【0119】
化合物10Gから化合物11G(式(10)で表される化合物、Base(R 3 )=N 2 -イソブチリルグアニン)を得る工程
化合物10G(600mg、2.03mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(脱水)(4.1mL)に溶解し、tert-ブチルクロロジメチルシラン(1.22g、8.09mmol)を加え、室温で20時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで希釈、水洗後、有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO2100mL、クロロホルム:メタノール=20:1(体積比))により精製した。
残渣をピリジン(8.0mL)に溶解し、氷冷化塩化イソブチリル(336μL、3.18mmol)を加え、室温で20時間撹拌した。脱イオン水を加え撹拌後、反応液を濃縮した。残渣に酢酸エチルを加え、飽和重曹水で洗浄後、有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥、濃縮した。残渣をトルエンで3回共沸後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO2 100mL、クロロホルム:メタノール=50:1(体積比))により精製した。
残渣をメタノール(10.0mL)に溶解し、酸性フッ化水素アンモニウム(860mg、15.0mmol)を加え、60℃で17時間加熱撹拌した。反応液にシリカゲルを加え溶媒を留去したのち、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO2100mL、クロロホルム:メタノール=10:1~5:1(体積比))により精製し、化合物11G(0.53g、1.5mmol、74%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6,400MHz);δ12.11(1H,s),11.77(1H,s),8.09(1H,s),5.80(1H,s),5.73(1H,d),5.06(1H,t),4.37(1H,s),4.15(1H,d),3.92-3.72(4H,m),2.77(1H,m),1.12(6H,d).
【0120】
化合物11Gから化合物12Gを得る工程
化合物11G(1.87g、5.12mmol)をピリジンで3回共沸後、ピリジン(脱水)(17.1mL)に溶解した。塩化ジメトキシトリチル(2.43g、7.17mmol)を加え、室温で2時間撹拌後、反応液にメタノール(1mL)を加え濃縮した。残渣に酢酸エチル(200mL)を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウム上乾燥後、濃縮し、残渣をトルエン(20mL×3)で共沸した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO2150g、ヘキサン:酢酸エチル=1:1~1:3(体積比)~酢酸エチル)により精製し、化合物12G(3.27g、4.90mmol、95.7%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6,400MHz);δ12.05(1H,s),8.93(1H,s),7.88(1H,s),7.44-7.13(9H,m),6.79(4H,m),5.78(1H,s),4.60(1H,s),4.44(1H,s),4.05(1H,d),3.99(1H,d),3.74(3H,s),3.74(3H,s),3.61(1H,d),3.55(1H,d),2.64(1H,m),1.24(3H,d),1.23(3H,d).
【0121】
化合物12Gから化合物13Gを得る工程
化合物12G(3.20g、4.79mmol)をジクロロメタン(超脱水)(24.0mL)に溶解し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.03mL、11.9mmol)、(2-シアノエチル)(N,N-ジイソプロピル)クロロホスホロアミダイト(2.35mL、10.5mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウム上乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO2200g、ヘキサン:酢酸エチル=1:1~1:2(体積比))により精製し、化合物13G(3.36g、3.87mmol、80.8%)を得た。
31P-NMR(MeCN-d3,160MHz);δ149.09,148.74.
図1
図2
図3
図4
図5