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特開2024-169818接合装置、ノズルカートリッジ及び接合方法
<図1>
  • 特開-接合装置、ノズルカートリッジ及び接合方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169818
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】接合装置、ノズルカートリッジ及び接合方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20241129BHJP
   B23K 1/002 20060101ALI20241129BHJP
   H05B 6/40 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H05K3/34 507D
B23K1/002
H05B6/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086587
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】513141913
【氏名又は名称】株式会社ワンダーフューチャーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】福田 光樹
(72)【発明者】
【氏名】杉山 和弘
(72)【発明者】
【氏名】菅 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】田巻 雅史
【テーマコード(参考)】
3K059
5E319
【Fターム(参考)】
3K059AA08
3K059AB20
3K059AD03
3K059AD24
5E319AA03
5E319AB05
5E319BB05
5E319CC60
5E319GG03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】誘導加熱を利用して基板上に形成された金属層に部品を導電接合する接合装置において、部品の位置ズレや部品飛び現象を抑制し、均一で効率の高接合装置及び接合方法並びにノズルカートリッジを提供する。
【解決手段】基板61上に形成された金属層62と部品41を導電接合する接合装置であって、金属層と部品との間に介在させた導電接続材料51を、誘導加熱する加熱装置を備えている。加熱装置は、平面視において内側に空間部を有する誘導コイル31と、誘導コイルの空間部に配置されるノズルカートリッジと、を有する。ノズルカートリッジは、磁性体を含む1個以上のノズル11と、ノズルを収容する筺体と、を有し、ノズルの少なくとも1個は、ノズル先端部111が付勢手段12によって筺体から突出するように付勢されており、ノズル先端部は、誘導コイルに交流電圧を印加して導電接続材料を誘導加熱する際に、部品を夫々金属層に向けて押し付ける。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された金属層と部品を導電接合する接合装置であって、
前記接合装置は、前記金属層と部品との間に介在させた導電接続材料を、誘導加熱する加熱装置を備えており、
前記加熱装置は、平面視において内側に空間部を有する誘導コイルと、前記誘導コイルの前記空間部に配置されるノズルカートリッジを有し、
前記ノズルカートリッジは、磁性体を含む1個以上のノズルと、前記ノズルを収容する筺体とを有し、
前記ノズルの少なくとも1個は、ノズル先端部が前記筺体より突出するように付勢されており、
前記ノズル先端部は、前記誘導コイルに交流電圧を印加して前記導電接続材料を誘導加熱する際に、前記部品をそれぞれ前記金属層に向けて押し付ける、
前記接合装置。
【請求項2】
前記基板は、絶縁性の材料で構成されており、
前記金属層は、誘導加熱によって局所的に加熱可能な面積を有している、請求項1に記載の接合装置。
【請求項3】
前記ノズルの少なくとも1個は、磁性体からなるノズル又は磁性体からなるノズルの先端にスペーサーを有するノズルである、請求項1又は2に記載の接合装置。
【請求項4】
前記磁性体は、ソフトフェライトである、請求項1又は2に記載の接合装置。
【請求項5】
前記筺体は、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリスルホン系樹脂及びポリスルフィド系樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂を含む材料から構成される、請求項1又は2に記載の接合装置。
【請求項6】
基板上に形成された金属層と部品を導電接合する接合装置において用いられるノズルカートリッジであって、
前記ノズルカートリッジは、前記金属層と前記部品との間に介在させた導電接続材料を誘導加熱する加熱装置に含まれる、平面視において内側に空間部を有する誘導コイルの前記空間部に配置されるものであり、
前記ノズルカートリッジは、1個以上のノズルと、前記ノズルを収容する筺体とを有し、
前記ノズルの1個以上は、磁性体を含むノズルであり、
前記ノズルの少なくとも1個は、ノズル先端部が前記筺体より突出するように付勢されている、
前記ノズルカートリッジ。
【請求項7】
基板上に形成された金属層と部品を導電接合する接合方法であって、
前記接合方法は、前記金属層と部品との間に介在させた導電接続材料を、誘導加熱することで、前記金属層と前記部品を導電接合するものであり、
前記誘導加熱は、平面視において内側に空間部を有する誘導コイルと、前記誘導コイルの前記空間部に配置されるノズルカートリッジを有する加熱手段を用いて行われ、
前記ノズルカートリッジは、磁性体を含む1個以上のノズルと、前記ノズルを収容する筺体とを有し、
前記ノズルの少なくとも1個は、ノズル先端部が前記筺体より突出するように付勢されており、
前記ノズル先端部は、前記誘導コイルに交流電圧を印加して導電接続材料を誘導加熱する際に、前記部品をそれぞれ前記金属層に向けて押し付ける、
前記接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に形成された金属層と部品を導電接合する接合装置、基板上に形成された金属層と部品を導電接合する接合装置において用いられるノズルカートリッジ及び基板上に形成された金属層と部品を導電接合する接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型、軽量化に伴い、微小な電子部品を実装する基板として、フレキシブル基板が使用されている。従来は、フレキシブル基板を構成する樹脂として、ポリイミド樹脂が用いられてきた。一方で、コスト削減等のために、ポリイミド樹脂に代えて、ポリエステル系樹脂やポリオレフィン系樹脂等を用いてフレキシブル基板を構成することが行われている。
【0003】
電子部品を実装する際には、フレキシブル基板に電子部品と固形のハンダを常温で載置した後に、ハンダが溶融する温度に加熱してハンダ接合するリフロー方式が用いられてきた。しかしながら、リフロー方式によるハンダ接合は、電子部品を実装した基板全体を、リフロー炉に入れてハンダが溶融する温度以上に加熱する必要がある。リフロー方式は、ハンダ接合の対象となる領域以外にも過度な熱が加わることから、電子部品や基板等に対する熱的負荷が大きくなる。このため、(i)電子部品が初期熱劣化することで信頼性が低下するおそれがある、(ii)フレキシブル基板を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂やポリオレフィン系樹脂等を用いた場合、ポリイミド系樹脂よりも樹脂の融点が低いことから、電子部品を実装するための半田接合の際の加熱により、基板が変形してしまうおそれがある、という問題があった。このような問題を避けるために低温で溶融する特殊なハンダを用いることも検討されているが、コスト的に不利となる。
【0004】
また、リフロー方式によるハンダ接合に際し、フレキシブル基板に形成された電極(銅箔)の面積が大きく熱容量が大きい場合等には、ハンダ接合を確実に行うために、リフロー炉において長時間加熱する必要がある。このような場合、電極(銅箔)の面積が小さい熱容量の小さい部分にハンダ接合した電子部品の初期熱劣化が進行するおそれがあり、一方で、リフロー炉における加熱時間を制限すると、熱容量の小さい部分のハンダ接合は確実であっても、熱容量の大きい部分のハンダ接合が不確実になるおそれがあることから、電子部品の熱劣化、ハンダ接合の電気的・機械的機能等の点で、信頼性が低下するおそれがあった。
【0005】
このような問題に対し、誘導加熱を利用して、接合対象部を局所的に加熱してハンダ接合を行う方法が知られている。誘導加熱による方法は、接合対象部に電子部品及びハンダを載置するとともに、誘導加熱で発熱する発熱部材を接合対象部に当接させ、誘導コイルに交流電圧を印加して磁束を発生させ、前記発熱部材を誘導加熱し、発生した熱をハンダに伝達して溶融するものである。
【0006】
特許文献1には、電子部品が電磁誘導加熱によりはんだ接合される回路基板であって、非耐熱性シートと、前記非耐熱性シートの一面側に設けられる回路と、前記回路に設けられる回路側端子と、前記非耐熱性シートの他面側の前記回路側端子に対応する位置に設けられる導電性パッドと、を備えることを特徴とする回路基板が開示されている。さらに、前記回路基板に電子部品をはんだ接合する実装方法として、前記回路側端子に対し、はんだを介して、電子部品の端子を対向させ、前記非耐熱性シートの他面側にて前記電磁誘導加熱により前記導電性パッドを発熱させ、前記非耐熱性シートおよび前記回路側端子を介して、前記導電性パッドが発する熱をはんだに伝導させて、はんだを溶融させることを特徴とする実装方法が開示されている。これらにより、金属端子面積が狭小な場合でも対応可能なはんだ接合技術を提供することが可能であるとされている。
【0007】
特許文献2には、基板上に形成された電極に電子部品をIHリフロー方式で半田接合する半田接合装置であって、前記電極と前記電子部品との間に介在させた半田を溶融させて、前記電極に前記電子部品を半田接合する加熱手段を備え、前記加熱手段は、平面視において、内側に空間部を有するコイルと、前記コイルの空間部に配置された複数のフェライトと、前記各フェライトと前記基板上に形成された電極との間隔を、独立に調整する調整機構と、前記コイルに交流電圧を印加して、前記基板上に形成された前記電極を誘導加熱する電源とを有し、前記各フェライトと前記基板上に形成された電極との間隔は、前記コイルに交流電圧を印加したとき、前記コイルの内側に配置された複数の電極に対して、誘導加熱によって加熱される前記各電極の温度が一様になるよう、前記調整機構によって予め調整される、半田接合装置が開示されている。この半田接合装置は、誘導加熱を利用して、基板上に形成された電極に、複数の電子部品を同時に均一性良く半田接合することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2020/250427号
【特許文献2】特開2018-148136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された実装方法は、誘導加熱で加熱された発熱体の熱を、当接している基板の電極及びハンダに熱伝導するものであることから、加熱効率の点で満足できるものではなかった。また、誘導加熱で加熱された発熱体は、当接している基板の電極付近も加熱することになるため、基板が熱変形するおそれがあった。さらに、微小な電子部品を基板に実装する場合、ハンダ接合の対象となる部位が小さいことから、発熱体を基板上のハンダ接合部位に正確に当接させることが難しくなるおそれがあった。
【0010】
特許文献2に開示された接合装置は、誘導加熱時の基板の熱変形を抑えることが可能であり、複数の電子部品を同時に均一性良く半田接合することが可能である。しかしながら、誘導加熱時に誘導コイルに発生する磁束の影響で、接合対象部に載置した電子部品が位置ズレや離脱する「チップ飛び」現象が起こるおそれがあった。
【0011】
また、ポリエステル系樹脂やポリオレフィン系樹脂等のプラスチック成形品上に複数の金属電極(金属端子部)を設け、IHリフロー方式で複数の金属電極(金属端子部)に電子部品を実装する際、誘導加熱による加熱装置のノズルの位置(ステージ位置)と金属電極(金属端子部)の位置(ワーク位置)は、所定の条件となるように加熱対象部位ごとに位置決めする必要がある。この際、プラスチック成形品特有の高さバラツキに起因して、位置決めに時間を要することとなり、サイクルタイムが増大して作業性が低下するという問題があった。
さらに、プラスチック成形品特有の高さバラツキに起因して、「チップ飛び」の発生や、IHリフロー加熱後の実装状態にばらつきが発生するおそれがあった。特に、IHリフロー方式において、ノズル先端部と金属電極(金属端子部)との距離は、実装時の誘導加熱温度に影響を与える最大の因子であり、発熱を均一化し安定した加熱温度で部品を実装することが求められていた。
【0012】
本発明が解決しようとする課題の1つは、誘導加熱を利用して基板上に形成された金属層に部品を導電接合する接合装置において、基板の加熱を抑制することができ、部品本体の温度上昇を防止して初期熱劣化を抑制することができ、微小な部品であっても容易に導電接合が可能であり、誘導加熱時における部品の位置ズレや離脱(「チップ飛び」)現象を抑制することができ、複数の部品が基板上に高さバラツキを有する状態で載置されている場合や大きさの異なる部品が複数基板上に載置されている場合であっても、高い均一性で同時に精度よく導電接合して実装することができ、基板による実装状態のバラツキを抑制することができ、サイクルタイムを削減し作業性を向上させることができ、誘導加熱効率の高い接合装置を提供することである。
【0013】
本発明が解決しようとする課題の1つは、誘導加熱を利用して基板上に形成された金属層に部品を導電接合する接合装置に用いられるノズルカートリッジであって、前記ノズルカートリッジは、磁性体を含む1個以上のノズルと、前記ノズルを収容する筺体とを有し、前記ノズルの少なくとも1個は、ノズル先端部が前記筺体より突出するように付勢されており、前記ノズル先端部は、前記誘導コイルに交流電圧を印加して前記導電接続材料を誘導加熱する際に、前記部品をそれぞれ前記金属層に向けて押し付けるものであり、基板の加熱を抑制することができ、部品本体の温度上昇を防止して初期熱劣化を抑制することができ、微小な部品であっても容易に導電接合が可能であり、誘導加熱時における部品の位置ズレや離脱(「チップ飛び」)現象を抑制することができ、複数の部品が基板上に高さバラツキを有する状態で載置されている場合や大きさの異なる部品が複数基板上に載置されている場合であっても、高い均一性で同時に精度よく導電接合して実装することができ、基板による実装状態のバラツキを抑制することができ、サイクルタイムを削減し作業性を向上させることができ、誘導加熱効率の高い接合装置に用いられるノズルカートリッジを提供することである。
【0014】
本発明が解決しようとする課題の1つは、誘導加熱を利用して基板上に形成された金属層に部品を導電接合する接合方法において、基板の加熱を抑制することができ、部品本体の温度上昇を防止して初期熱劣化を抑制することができ、微小な部品であっても容易に導電接合が可能であり、誘導加熱時における部品の位置ズレや離脱(「チップ飛び」)現象を抑制することができ、複数の部品が基板上に高さバラツキを有する状態で載置されている場合や大きさの異なる部品が複数基板上に載置されている場合であっても、高い均一性で同時に精度よく導電接合して実装することができ、基板による実装状態のバラツキを抑制することができ、サイクルタイムを削減し作業性を向上させることができ、誘導加熱効率の高い接合方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様に係る基板上に形成された金属層と部品を導電接合する接合装置は、前記金属層と部品との間に介在させた導電接続材料を、誘導加熱により加熱する加熱装置を備えており、前記加熱装置は、平面視において内側に空間部を有する誘導コイルと、前記誘導コイルの前記空間部に配置されるノズルカートリッジを有し、前記ノズルカートリッジは、磁性体を含む1個以上のノズルと、前記ノズルを収容する筺体とを有し、前記ノズルの少なくとも1個は、ノズル先端部が前記筺体より突出するように付勢されており、前記ノズル先端部は、前記誘導コイルに交流電圧を印加して前記導電接続材料を誘導加熱する際に、前記部品をそれぞれ前記金属層に向けて押し付ける、接合装置である。
前記基板は、絶縁性の材料で構成されているのが好ましく、前記金属層は、誘導加熱によって局所的に加熱可能な面積を有しているのが好ましい。
前記ノズルの少なくとも1個は、磁性体からなるノズル又は磁性体からなるノズルの先端にスペーサーを有するノズルであることが好ましい。
前記磁性体は、ソフトフェライトであることが好ましい。
前記筺体は、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリスルホン系樹脂及びポリスルフィド系樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂を含む材料から構成されることが好ましい。
【0016】
本発明の一態様に係るノズルカートリッジは、基板上に形成された金属層と部品を導電接合する接合装置において用いられるものであって、前記金属層と前記部品との間に介在させた導電接続材料を、誘導加熱により加熱する加熱装置に含まれる、平面視において内側に空間部を有する誘導コイルの前記空間部に配置されるものであり、1個以上のノズルと、前記ノズルを収容する筺体とを有し、前記ノズルの1個以上は、磁性体を含むノズルであり、前記ノズルの少なくとも1個は、ノズル先端部が前記筺体より突出するように付勢されている、ノズルカートリッジである。
【0017】
本発明の一態様に係る接合方法は、基板上に形成された金属層と部品を導電接合する接合方法であって、前記金属層と部品との間に介在させた導電接続材料を、誘導加熱により加熱することで、前記金属層と前記部品を導電接合するものであり、前記誘導加熱は、平面視において内側に空間部を有する誘導コイルと、前記誘導コイルの前記空間部に配置されるノズルカートリッジを有する加熱手段を用いて行われ、前記ノズルカートリッジは、磁性体を含む1個以上のノズルと、前記ノズルを収容する筺体とを有し、前記ノズルの少なくとも1個は、ノズル先端部が前記筺体より突出するように付勢されており、前記ノズル先端部は、前記誘導コイルに交流電圧を印加して導電接続材料を誘導加熱する際に、前記部品をそれぞれ前記金属層に向けて押し付ける、接合方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、誘導加熱を利用して基板上に形成された金属層に部品を導電接合する接合装置において、基板の加熱を抑制することができ、部品本体の温度上昇を防止して初期熱劣化を抑制することができ、微小な部品であっても容易に導電接合が可能であり、誘導加熱時における部品の位置ズレや離脱(「チップ飛び」)現象を抑制することができ、複数の部品が基板上に高さバラツキを有する状態で載置されている場合や大きさの異なる部品が複数基板上に載置されている場合であっても、高い均一性で同時に精度よく導電接合して実装することができ、基板による実装状態のバラツキを抑制することができ、サイクルタイムを削減し作業性を向上させることができ、誘導加熱効率の高い接合装置が提供される。
【0019】
本発明により、誘導加熱を利用して基板上に形成された金属層に部品を導電接合する接合装置に用いられるノズルカートリッジであって、前記ノズルカートリッジは、磁性体を含む1個以上のノズルと、前記ノズルを収容する筺体とを有し、前記ノズルの少なくとも1個は、ノズル先端部が前記筺体より突出するように付勢されており、前記ノズル先端部は、前記誘導コイルに交流電圧を印加して前記導電接続材料を誘導加熱する際に、前記部品をそれぞれ前記金属層に向けて押し付けるものであり、基板の加熱を抑制することができ、部品本体の温度上昇を防止して初期熱劣化を抑制することができ、微小な部品であっても容易に導電接合が可能であり、誘導加熱時における部品の位置ズレや離脱(「チップ飛び」)現象を抑制することができ、複数の部品が基板上に高さバラツキを有する状態で載置されている場合や大きさの異なる部品が複数基板上に載置されている場合であっても、高い均一性で同時に精度よく導電接合して実装することができ、基板による実装状態のバラツキを抑制することができ、サイクルタイムを削減し作業性を向上させることができ、誘導加熱効率の高い接合装置に用いられるノズルカートリッジが提供される。
【0020】
本発明により、誘導加熱を利用して基板上に形成された金属層に部品を導電接合する接合方法において、基板の加熱を抑制することができ、部品本体の温度上昇を防止して初期熱劣化を抑制することができ、微小な部品であっても容易に導電接合が可能であり、誘導加熱時における部品の位置ズレや離脱(「チップ飛び」)現象を抑制することができる。さらに、複数の部品が基板上に高さバラツキを有する状態で載置されている場合や大きさの異なる部品が複数基板上に載置されている場合であっても、高い均一性で同時に精度よく導電接合して実装することができ、基板による実装状態のバラツキを抑制することができ、サイクルタイムを削減し作業性を向上させることができ、誘導加熱効率の高い接合方法が提供される。
【0021】
本発明は、IHリフロー方式で実装を行う際に、接合装置の誘導加熱装置が有するノズルカートリッジを、ノズルを2個以上、好ましくは4個以上有するノズルカートリッジとしたものであり、ノズルの数だけ作業性を改善することができる。さらに、基板による実装状態のバラツキを抑制することができることから、実装状態の繰返し再現性を向上させることができ、部品を実装した基板の品質安定化を図ることができ、OEE(Overall Equipment Effectivenes;公益社団法人日本プラントメンテナンス協会により提唱された「設備総合効率」(「総合設備効率」)で、稼働率、性能、品質により算出・決定される生産設備の効率を上げるために用いられる指標。)を向上させることができる。
また、付勢手段によりノズル先端部が基板に向けて付勢された複数のノズルを有するノズルカートリッジを実装に際して用いることで、同一面上に複数箇所に存在する部品頂部の高さ位置(Z軸値)が不均一であっても、ノズル先端部と部品頂部の間の距離のバラツキを抑制することができ、部品を基板に押し付ける押圧力のバラツキを抑制することが可能となる。これにより、安定した誘導加熱温度で安定した部品実装を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の接合装置の一実施態様を示す概略図。
図2】本発明におけるノズルカートリッジ及び導電接合する部品を実装した基板の一実施態様を示す概略図。
図3】本発明において、ノズルカートリッジを用いて基板(金属層)と部品を導電接合する際の一実施態様を示す概略図。
図4】本発明おけるノズルカートリッジ及び導電接合する部品を実装した基板の別の一実施態様を示す概略図。
図5】本発明において、ノズルカートリッジを用いて基板(金属層)と部品を導電接合する際の別の一実施態様を示す概略図。
図6】本発明におけるノズルカートリッジ及び導電接合する部品を実装した基板の別の一実施態様を示す概略図。
図7】本発明におけるノズルカートリッジが有するノズルの一実施態様を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る接合装置、ノズルカートリッジ及び接合方法を、詳細に説明する。
なお、本発明に係る接合装置、ノズルカートリッジ及び接合方法は、下記に示す実施態様に限定されることなく、本発明の範囲内において、かつ本発明の技術的思想に基づいて、各開示要素(請求の範囲、明細書及び図面に記載の要素を含む)に対し種々の変形、変更及び改良を含むことができる。また、本発明の技術的思想の範囲内において、各開示要素の多様な組み合わせ・置換ないし選択が可能である。
【0024】
また、開示した各図面は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図面において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。
明細書及び図面に記載の開示要素は、当業者が本開示を十分に理解するために提供するものであり、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0025】
[接合装置]
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の接合装置の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の接合装置の一実施態様を模式的に示す概略図である。
図1に示す接合装置1は、載置台81に載置された基板61上に形成された金属層62(部品41の下にあり図1では図示されていない)に、部品41を導電接合する接合装置である。接合装置1は、金属層62と部品41の間に介在させた導電接続材料51(部品41の下にあり図1では図示されていない)を誘導加熱する加熱装置71を備えている。加熱装置71による誘導加熱により、導電接続材料51が溶融及び/又は熱硬化し、金属層62に部品41が導電接合される。
【0026】
加熱装置71は、平面視において内側に空間部を有する誘導コイル31と、誘導コイル31の内側の空間部に配置されるノズルカートリッジ10を有している。ノズルカートリッジ10は、ノズル11及びノズル11を収容する筺体21を含むものである。
図1において、加熱装置71は、4個のノズル11と、これを収容する筺体21を有するノズルカートリッジ10が、誘導コイル31の内側空間部に配置されたものである。
ノズルカートリッジ10は、複数個のノズルを1つの筐体に収容したものとすることができる。
ノズルカートリッジ10は、1個のノズルが収容された筺体21を複数連接することで構成されたものでもよい。連接方法としては、特に限定されないが、例えば、接着剤、紐状部材、テープ状部材、ネジ等を用いた方法が挙げられる。1個のノズルが収容された筺体21をそれぞれ独立に移動可能とするように連結するとともに、カメラやセンサー等でその動きを制御し得るように構成した場合には、導電接合を形成する対象への位置決めを迅速かつ確実に行うことが可能である。
【0027】
誘導コイル31は、平面視において、基板61に平行で、内側に空間部を有するものであればよく、その形状等は特に限定されない。誘導コイル31は、電源32と接続されており、交流電圧を印加すると、誘導コイル31の内部の空間部には、磁束が発生する。誘導コイル31の形状は、図1においては略U字型とされているが、平面視において内部に空間部を有するとともに、内部の空間部に磁束を発生させることができる形状であれば、特に限定されない。誘導コイル31は、基板61(基板上に形成された金属層62)の面と直交する方向に所定の距離をもって配置されている。誘導コイル31と、基板61(基板上に形成された金属層62)の面との間の所定の距離は、磁束を集中させる位置等に応じて適宜調整することができる。
誘導コイル31は、例えば、導電性に優れた材料を用いて構成され、例えば、高純度アルミニウム、銅、銀、金、各種合金等から形成される。
誘導コイル31は、交流電圧を印加した際に発熱する場合があることから、誘導コイル31をパイプ状として、内部に冷媒を循環させて冷却可能とすることができる。
【0028】
ノズルカートリッジ10は、1個以上のノズル11と、前記ノズル11を収容する筺体21とを有し、前記ノズル11の1個以上は、磁性体を含むノズルであり、ノズル11のうちの少なくとも1個は、少なくともノズル11の先端部が筺体21より突出するように付勢手段12(図1では図示されていない)により付勢されている。図1に示されるノズルカートリッジ10は、ノズル11を4個(4個×1列)備えたものである。ノズルカートリッジ10が有するノズル11の個数は特に限定されず、例えば2個以上、好ましくは4個以上であり、例えば50個以下、好ましくは20個以下である。ノズルの個数が多い場合、1回の操作で基板に実装できる部品数は増えるが、コストやノズルカートリッジの作製等の点で問題が生じるおそれがある。
【0029】
ノズルカートリッジ10が有するノズル11は、その全てが磁性体を含むノズルであってもよく、また、その一部が磁性体を含むノズルであり残りが磁性体を含まないノズルであってもよい。
ノズル11のうちの少なくとも1個は、磁性体からなるノズルとすることができる。
ノズル11のうちの少なくとも1個は、少なくとも一部を磁性体で構成したノズルとすることができる。このようなノズルとしては、例えば、磁性体からなるノズルの先端にスペーサーを有するノズルが挙げられる。また、例えば、棒状の磁性体の側面の一部を樹脂等の非磁性体で被覆したノズルが挙げられ、棒状の磁性体の先端が基板61の面と直交する方向に可動となるように構成してもよい。
【0030】
ノズル11に含まれる磁性体は、誘導コイル31の内側に発生する磁束を、減衰することなく、金属層62に伝えることができる透磁率の高いものであればよい。特に限定されない。例えば、フェライトを用いることができ、酸化鉄を主成分とする軟質磁性材料であるソフトフェライトを用いることがより好ましい。ソフトフェライトは、鉄、ニッケル、亜鉛、マンガン、銅等の金属元素と酸素からなる酸化物を含むもので、組成を変えることで様々な磁気特性を示すことができる。
ソフトフェライトは、電気抵抗が大きく、電流をほとんど通さないことから、誘導加熱の際に、ソフトフェライトにおいて渦電流が発生しにくい。そのため、誘導加熱を行う際に、ソフトフェライト自体が発熱することを回避できるため、ノズルカートリッジの筐体を樹脂で形成することが可能であり、また、ソフトフェライトを有するノズルが金属層62や部品41に近接していても、基板61が受ける熱の影響を小さくすることができる。
【0031】
ノズル11の形状やノズルカートリッジ10におけるノズル11の配列は、特に限定されず、基板61上に実装される部品41の種類や大きさ、配列の仕方等に応じて、適宜、変更することができる。
ノズル11の長さは、特に限定されない。例えば、30~40mmの範囲にあることが好ましい。ノズル11は、誘導コイル31の内径面に可能な限り接近し得る形状とすることが好ましい。
【0032】
ノズル11を収容する筺体21は、絶縁体から構成される。例えば、筺体21は、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリスルホン系樹脂及びポリスルフィド系樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂を含む材料から構成することができる。
【0033】
ノズル11のうちの少なくとも1個は、少なくともノズル11の先端部111が筺体21より突出するように付勢手段12により付勢されている。付勢手段としては、特に限定されず、コイルばね、板バネ等のばね部材、圧縮によって付勢力を発揮する部材(例えば、発泡ウレタンやスポンジのような発泡体、ゴム、空気や水を内部に封じたダンパー等)を用いることができる。
【0034】
接合装置1において、加熱装置71は、X方向、Y方向及びZ方向に移動可能とすることができ、これにより、ノズル11(ノズル先端部111)と部品41との位置関係を調整することができる。
また、接合装置1において、載置台81は、X方向、Y方向及びZ方向に移動可能とすることができ、これにより、ノズル11(ノズル先端部111)と部品41との位置関係を調整することができる。
本発明においては、加熱装置71と載置台81のいずれか一方又は両者を移動可能とすることができる。例えば、
(i)加熱装置71をX方向及びZ方向に移動可能とし、載置台81をY方向に移動可能とする、
(ii)加熱装置71をX方向に移動可能とし、載置台81をY方向及びZ方向に移動可能とする、
(iii)加熱装置71及び載置台81の両者を、X方向、Y方向及びZ方向に移動可能とする、
等の構成とし、ノズル11(ノズル先端部111)と部品41との位置関係を調整することができる。
【0035】
加熱装置71及び/又は載置台81の移動手段は、特に限定されない。例えば、加熱装置71に設けられた又は加熱装置71と連接するアクチュエータ(例えば、ロボットシリンダ、リニアスライダー等)等の移動手段を用いることができる。同様に、例えば、載置台81に設けられた又は載置台81と連接するアクチュエータ等の移動手段を用いることができる。
【0036】
載置台81に載置される基板61は、絶縁性の材料で構成されたものであれば、特に限定されない。例えば、可撓性基材や樹脂成型品等、特に、ポリエステル系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂等の樹脂から構成される、フィルムやシート等の可撓性基材や筺体等の樹脂成型品とすることができる。
【0037】
金属層62は、貼り付け、印刷、エッチング等により基板61上に部分的に積層された導電性の金属材料層であって、例えば、回路における電極等であってもよい。金属層62を構成する金属としては、例えば、銅、銀、アルミニウム、金、ニッケル、スズ、ハンダ、ビスマス、亜鉛、これらの2種以上を含む合金等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
本発明において、基板61及び金属層62は、表面に印刷回路が形成されている回路基板、両面に電極パッドが形成されたインターポーザ等の、基板61と金属層62の両者が一体化されたものであってもよい。
本発明において、金属層62は、誘導加熱によって局所的に加熱可能な面積を有していることが好ましい。金属層62の面積は、例えば、0.25mm×0.25mm以上とすることができる。なお、金属層62の面積を大きくすることができない場合等には、金属層62に隣接して及び/又は基板61の金属層62が設けられた面の反対の面に、補助加熱用の金属パッドを設けることができる。
【0038】
部品41は、基板61上の金属層62と導電接合し得るものであれば特に限定されない。部品41は、部品本体411と部品導電部412(例えば、電極部/端子等)とを有する電子部品であることが好ましい。
部品41としては、例えば、コンデンサ、抵抗、LED素子、半導体素子、センサー素子、LSI、IC、インダクタ、トランジスタ、ダイオード、液晶表示素子、圧電素子、レジスタ、フィルター、水晶発振子、水晶振動子、コネクタ、スイッチ、ボリュウム、リレー等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0039】
導電接続材料51は、加熱することで溶融又は熱硬化し、金属層62と部品41(部品導電部412)を導電接合し得るものであれば、特に限定されない。例えば、ハンダ、熱硬化性樹脂と導電材を含む熱硬化性導電性接着剤、熱硬化性樹脂と導電材を含む熱硬化性導電ペースト等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0040】
図1に示す接合装置1を用いて導電接合を行う際、加熱装置71及び/又は基板61が移動し、ノズル11の先端部は、付勢手段12(図1では図示されていない)の付勢力に抗して部品41を押圧した状態で、電源32から交流電圧を誘導コイル31に印加する。交流電圧が印加された誘導コイル31の内部の空間部には、磁束φが発生する。磁束φは、誘導コイル31の内側の空間部に配置されたノズルカートリッジ10のノズル11(ノズル11における磁性体112)を伝わって、ノズル11の先端部111から、基板61上に形成された金属層62に対して垂直に照射される。これにより、金属層62が誘導加熱され、金属層62と部品41(部品導電部412)の間に設けられた導電接続材料51が加熱されて溶融又は加熱反応することで、金属層62と部品41(部品導電部412)とが導電接合されることとなる。
【0041】
一般に、基板上に形成された金属層と部品を導電接合する際、交流電圧が印加された誘導コイルの内部の空間部に発生した磁束φを金属層に照射し誘導加熱すると、金属層の上に載置された部品が、磁束φの影響により所定の位置からずれるおそれがある。
本発明の接合装置は、導電接合を行う際、ノズル11の先端部111が、付勢手段12の付勢力に抗して部品41を押圧した状態となっている。電源32から交流電圧を誘導コイル31に印加し、誘導コイル31の内部の空間部に磁束φを発生させた際においても、磁束φの影響で部品41が所定の位置からずれることを抑制することができる。これにより、基板61上に形成された金属層62と部品41の導電接合を、安定して行うことができる。
【0042】
図1に示す接合装置1を用いて導電接合を行う際、誘導コイル31の内部の空間部に磁性体112を含む1個以上のノズル10を配置することによって、誘導コイル31の内部の空間部に発生する磁束φを、ノズル10を介して減衰させることなく、基板61上の金属層62に集束するように照射することができる。これにより、磁束φを効率的に金属層62の誘導加熱に使用することが可能となり、導電接合を効率よく行うことができる。
【0043】
本発明においては、ノズル11の先端部111を先細りとなる形状とすることで、より局所的に磁束φを集中させることができる。
例えば、面積の小さい部品41に対峙して配置されたノズル11の先端部111の面積が、金属層62の面積よりも大きいと、ノズル11の先端部111から照射される磁束φは、金属層62以外の領域にも照射される。そのため、部品41や金属層62の近傍に、他の部品41や導電物等が載置されていると、それらも誘導加熱により加熱されることとなる。このため、ノズル11の端面の面積は、金属層62や部品41の大きさに合わせて変えることができる。
本発明においては、ノズル11の先端部111の面積は、各部品41又は各金属層62の面積と同様のものとすることができる。
【0044】
ノズル11の先端部111から、基板61上に形成された金属層62に対して磁束φが垂直に照射され、誘導加熱される金属層62の加熱熱量は、誘導コイル31への通電量や、ノズル11と基板61上の金属層62との間隔Dを調整することで、制御することができる。
誘導コイル31への通電量による制御が困難である場合には、誘導加熱により加熱される金属層62の加熱熱量が、ノズル11と基板61上の金属層62との間隔Dの2乗に比例して減衰する性質を利用し、ノズル11の先端部111にスペーサー113を取り付けることで、加熱熱量を制御することができる。特に、誘導コイル31の内側に複数のノズル11を設けた場合や、部品の大きさや金属層の面積等が異なる場合であっても、スペーサー113をノズル11の先端部111に取り付けることで、各ノズル11による誘導加熱で金属層62を加熱する際に、各金属層の温度を、それぞれ同様のものにすることができる。
【0045】
本発明の接合装置1は、基板61上に大きさの異なる複数の部品41が実装されている場合であっても、部品41の大きさに応じて、金属層62の面積を調整することで、高い均一性で同時に精度よく導電接合して実装することができ、各基板間の実装状態のバラツキを抑制することができる。
誘導コイル31の内側に発生した磁束φによって、部品41が実装された金属層62が誘導加熱される加熱熱量は、金属層62の大きさによって変化する。本発明の接合装置1は、基板61上に種類や大きさの異なる複数の部品41が基板61上に載置されている場合において、部品41が実装された金属層62の面積が異なっていても、誘導加熱された各金属層62から各導電接続材料51に伝達される熱量のバラツキが小さいことから、高い均一性で同時に精度よく導電接合して実装することができる。
【0046】
本発明の接合装置1は、ノズル11の先端部111の面積を、それぞれ各金属層62の面の面積に応じて調製することができる。
ノズル11の先端部111の面積が変わると、ノズル11の先端部111から各金属層62に照射される磁束φの密度が変わる。面積の大きい金属層62は、面積の小さい金属層62よりも抵抗値が低くなり、面積の大きい金属層62に発生する渦電流の方が、面積の小さい金属層62に発生する渦電流よりも大きくなるため、各金属層62に対するそれぞれの加熱熱量が変化する。これらの要因を踏まえて、誘導加熱される各金属層62の温度が一様になるように、各金属層62に対する加熱熱量を調整することができる。
【0047】
本発明の接合装置1は、誘導加熱を行う範囲を、誘導コイル31の内側の空間部における、部品41が実装された金属層62に限定することができる。導電接合の対象部位となる金属層62は、発熱体(はんだごて等)からの熱伝導や、リフロー炉等による全体の加熱でなく、誘導加熱による直接加熱であることから、基板61に加わる熱量を抑制することができる。その結果、基板61が耐熱性の低い材料からなるものであっても、熱変形を抑制することができる。また、発熱体を、接合の対象となる部位に直接当接させる必要がないため、微小な部品でも、容易に導電接合することが可能になる。
【0048】
部品41の種類や大きさが同じであっても、誘導コイル31の内側に発生する磁束φは、必ずしも一様でない。平面視における誘導コイル31の内側の空間部内で、発生した磁束φの分布にバラツキが生じる。また、誘導コイル31の形状によっても、平面視における誘導コイル31の内側の空間部内で、発生した磁束φの分布が変わる。
さらに、基板61がフレキシブル基板や樹脂成型品からなる場合、フレキシブル基板の反りや曲がり、樹脂成型品の反り、曲がり、凹凸等によって、金属層62に照射される磁束φにバラツキが生じる。
これらの要因を考慮し、ノズル11から金属層62に照射する磁束φを把握し調整することで、金属層62の加熱熱量を調整することができ、高い均一性で同時に精度よく導電接合して実装することができ、各基板間の実装状態のバラツキを抑制することができる。
【0049】
誘導コイル31の内側に発生する磁束φの密度は、1以上の金属層62に温度センサーを取り付けた温度測定用基板を用い、誘導加熱して温度プロファイルを得ることで、測定することができる。得られた温度プロファイルに応じて、各ノズル11と基板61上の金属層62との間隔Dを調整することや、ノズル先端部の形状を調整すること等により、誘導加熱によって加熱される各金属層62の温度の均一性を高めることができる。
【0050】
本発明の接合装置1においては、予め各ノズル11と基板61上に形成された金属層62との間隔を調整したノズルカートリッジを各種用意しておき、基板61上に搭載される部品41の種類や大きさ、配列の仕方等に応じて、ノズルカートリッジを交換可能なように構成することができる。
【0051】
図2は、本発明におけるノズルカートリッジ及び導電接合する部品を実装した基板の一実施態様を模式的に示す概略図である。
【0052】
図2において、ノズルカートリッジ10は、4個のノズル11を収容する筺体21を有している。筺体21の内部には、ノズル11と付勢手段12を格納するノズル・付勢手段格納部24が4箇所設けられ、さらに、ノズル・付勢手段格納部24と連接する筐体内空間部23が設けられ、筺体内空間部23には、第1通気口221及び第2通気口222を介して外部と連通している。
第1通気口221及び/又は第2通気口222から筐体内空間部23に送気することで、筐体21内、特に、付勢手段が金属製である場合に、誘導コイル31から発生する磁束φにより誘導加熱されて発生するノズル・付勢手段格納部24内の熱を排出することができ、ノズル内部の過熱を抑制することができる。
【0053】
図2において、導電接合する部品を実装した基板は、ノズル11の先端部111と対向する部品本体411、部品導電部412、導電接続材料51、金属層62、基板61及び磁性体部材63が、この順で積層された構成を有している。なお、部品本体411及び部品導電部412は、部品41を形成する。
【0054】
図2においては、基板61に対して、誘導コイル31が配置される側と反対側であって、少なくとも複数のノズル11と対向する位置に、基板61と平行な磁性体部材63が設けられている。これにより、誘導コイル31で発生しノズル11から照射された磁束φは、基板61を抜けて磁性体部材63に伝わることとなり、誘導コイル31で発生した磁束φを、より確実に、金属層62に照射することができる。その結果、部品41の導電接合をより確実に行うことができる。
磁性体部材63の形状は、特に限定されない。例えば、板状とすることができ、棒状とすることもできる。
【0055】
図3は、本発明において、ノズルカートリッジを用いて基板(金属層)と部品を導電接合する際の一実施態様を模式的に示す概略図である。
図3に示すノズルカートリッジ10は、4個のノズル11と、ノズル11を収容する筺体21とを有し、4個のノズル11は、ノズル先端部111が筺体21より突出するように付勢手段12により付勢されている。4個のノズル11の各ノズル先端部111は、誘導コイル31に電源32から交流電圧を印加して導電接続材料51を誘導加熱する際に、部品41をそれぞれ基板61(金属層62)に押し付けている。
これにより、電源32からの交流電圧が印加された誘導コイル31の内部の空間部に発生した磁束φが、誘導コイル31の内側の空間部に配置されたノズルカートリッジ10のノズル11を伝わって、ノズル11の先端部111から基板61上に形成された金属層62に対して垂直に照射された際に、部品41の「部品飛び」を防止することとなる。
さらに、金属層62が誘導加熱され、金属層62と部品41(部品導電部412)の間に設けられた導電接続材料51が加熱されて溶融又は加熱反応することで、金属層62と部品41(部品導電部412)とが導電接合されることとなる。
【0056】
図4は、本発明おけるノズルカートリッジ及び導電接合する部品を実装した基板の別の一実施態様を模式的に示す概略図であって、ノズル11を14個(7個×2列)備えたノズルカートリッジ10、誘導コイル31、誘導コイル31に交流電圧を印加するための電源32、及び、導電接合する部品41を実装した基板61の一実施態様を模式的に示す概略図である。
【0057】
図4において、ノズルカートリッジ10は、14個(7個×2列)のノズル11が筺体21に収容されており、各ノズル11は、ノズル11の先端部が筺体21より突出するように付勢手段12によりそれぞれ付勢されている。
付勢手段12により付勢され筺体21より突出する各ノズル11の先端部は、基板61上の金属層62(図4では図示されていない)に載置された部品41と対向するようにされている。
ノズルカートリッジ10は、平面視において内側に空間部を有する誘導コイル31の内側の空間部に配置されている。
【0058】
図5は、図4に示すノズルカートリッジ10を用いて、部品41と基板61上の金属層62(図5では図示されていない)を、誘導加熱により導電接合する際の一実施態様を模式的に示す概略図である。
【0059】
図5において、ノズルカートリッジ10は、14個(7個×2列)のノズル11と、ノズル11を収容する筺体21とを有し、ノズル11は、ノズル先端部111(図5では図示されていない)が筺体21より突出するように、付勢手段12により付勢されている。ノズル11の先端部111は、誘導コイル31に電源32から交流電圧を印加して導電接続材料51を誘導加熱する際に、付勢手段12の付勢力に抗して部品41を基板61(金属層62)に押し付けている。
これにより、交流電圧が印加された誘導コイル31の内部の空間部に発生した磁束φが、誘導コイル31の内側の空間部に配置されたノズルカートリッジ10のノズル11を伝わって、ノズル11の先端部111から基板61上に形成された金属層62に対して垂直に照射された際に、部品41の「部品飛び」を防止することとなる。
さらに、金属層62が誘導加熱され、金属層62と部品41(部品導電部412)の間に設けられた導電接続材料51が加熱されて溶融又は加熱反応することで、金属層62と部品41(部品導電部412)とが導電接合されることとなる。
【0060】
図6は、本発明おけるノズルカートリッジ及び導電接合する部品を実装した基板の別の一実施態様を模式的に示す別の概略図であって、図4に示すノズル11を14個備えたノズルカートリッジ10に代えて、ノズル11を7個(7個×1列)備えたノズルカートリッジ10とした、一実施態様を模式的に示す概略図である。
なお、ノズルカートリッジ10は、図4及び図6に示すノズルカートリッジ10以外に、任意の数のノズルを有するノズルカートリッジとすることができる。
【0061】
図7は、本発明のノズルカートリッジが有するノズルの一実施態様を模式的に示す概略図である。
図7中の7Aに示されるノズル11は、ノズル11全体を磁性体112で形成するとともに、ノズル11の先端部111を、基板61に向けて先細りとなる形状(7Aにおいては、先端部を平面とした角錐)としたものである。ノズル11の先端部111は、例えば、先端部111を円錐状や角錐状とすることもできる。先端部111の先端は、平面としてもよく、尖っていてもよく、丸められていてもよい。なお、前記のとおり、ノズル11の先端部111の面積により、ノズル11の先端部111から各金属層62に照射される磁束φの密度を変えることができる。例えば、ノズル11の先端部111の面積が増えると、ノズル11の先端部111から各金属層62に照射される磁束φの密度を増加させることができる。
【0062】
図7中の7Bに示されるノズル11は、ノズル11の本体を磁性体112で形成するとともに、ノズル11の基板61と対向する先端部111にスペーサー113を設けたものである。
図7中の7Cは、7Bに示すノズル11の分解図である。
スペーサー113の基板と対向するノズル先端部111の形状は、特に限定されない。7B及び7Cにおいては、スペーサー113の形状(ノズル先端部111の形状)は、基板61に向けて先細りとなる形状とされている。スペーサー113は、接着、嵌合等の手段で、磁性体112と一体化されている。
【0063】
図7には図示されていないが、ノズル11には、筺体からの離脱を防ぐための抜け止め形成用の凹部や溝等、抜け止めとして機能する凸部等を設けることができる。また、ノズル先端部111の反対側のノズル後端部に、付勢手段12と連接するための切欠け、凹部、凸部等を設けることもできる。
【0064】
[ノズルカートリッジ]
本発明に係るノズルカートリッジは、基板上に形成された金属層と部品を導電接合する接合装置において用いられるノズルカートリッジであって、前記ノズルカートリッジは、前記金属層と前記部品との間に介在させた導電接続材料を誘導加熱する加熱装置に含まれる、平面視において内側に空間部を有する誘導コイルの前記空間部に配置されるものであり、前記ノズルカートリッジは、1個以上のノズルと、前記ノズルを収容する筺体とを有し、前記ノズルの1個以上は、磁性体を含むノズルであり、前記ノズルの少なくとも1個は、ノズル先端部が前記筺体より突出するように付勢されている、ノズルカートリッジである。
本発明に係るノズルカートリッジは、実質的に、本発明に係る接合装置が備えている加熱装置が有するノズルカートリッジについて記載したのと同様のものとされる。
【0065】
[接合方法]
本発明に係る接合方法は、基板上に形成された金属層と部品を導電接合する接合方法であって、前記接合方法は、前記金属層と部品との間に介在させた導電接続材料を、誘導加熱することで、前記金属層と前記部品を導電接合するものであり、前記誘導加熱は、平面視において内側に空間部を有する誘導コイルと、前記誘導コイルの前記空間部に配置されるノズルカートリッジを有する加熱手段を用いて行われ、前記ノズルカートリッジは、磁性体を含む1個以上のノズルと、前記ノズルを収容する筺体とを有し、前記ノズルの少なくとも1個は、ノズル先端部が前記筺体より突出するように付勢されており、前記ノズル先端部は、前記誘導コイルに交流電圧を印加して導電接続材料を誘導加熱する際に、前記部品をそれぞれ前記金属層に向けて押し付ける、接合方法である。
本発明に係る接合方法は、実質的に、本発明に係る接合装置を用いる接合方法に相当するものであり、接合方法において用いられる部材や条件等は、実質的に、本発明に係る接合装置が備えている各部材や操作条件等と同様のものとされる。
【符号の説明】
【0066】
1 接合装置
10 ノズルカートリッジ
11 ノズル
111 ノズル先端部
112 磁性体
113 スペーサー
12 付勢手段
21 筺体
221 第1通気口
222 第2通気口
23 筺体内空間部
24 ノズル・付勢手段格納部
31 誘導コイル
32 電源
41 部品
411 部品本体
412 部品導電部
51 導電接続材料
61 基板
62 金属層
63 磁性体部材
71 加熱装置
81 載置台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7