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特開2024-169834モータ制御装置およびモータ制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169834
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】モータ制御装置およびモータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/16 20160101AFI20241129BHJP
【FI】
H02P6/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086615
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 奈保
【テーマコード(参考)】
5H560
【Fターム(参考)】
5H560BB04
5H560DA13
5H560TT02
(57)【要約】
【課題】 ロータの回転位置を高精度に検出できるとともに、その検出結果をブラシレスモータの制御に利用できるモータ制御装置等を提供する。
【解決手段】 ブラシレスモータを制御するモータ制御装置であって、時間をカウントするカウンタと、カウンタを制御するカウンタ制御部と、を備え、カウンタ制御部は、相電圧値の絶対値の最大値を更新する第1の処理と、第1の処理で最大値が最後に更新されたときの相電圧値と現在の相電圧値との差分の絶対値の最大値を更新する第2の処理と、第2の処理により差分の絶対値の最大値が更新されるたびに、カウンタをリスタートさせる第3の処理と、カウンタのカウント値が所定値を超えたときのタイミングを取得する第4の処理と、を実行する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシレスモータを制御するモータ制御装置であって、
時間をカウントするカウンタと、
前記カウンタを制御するカウンタ制御部と、
を備え、
前記カウンタ制御部は、
相電圧値の絶対値の最大値を更新する第1の処理と、
前記第1の処理で前記最大値が最後に更新されたときの前記相電圧値と現在の前記相電圧値との差分の絶対値の最大値を更新する第2の処理と、
前記第2の処理により前記差分の絶対値の最大値が更新されるたびに、前記カウンタをリスタートさせる第3の処理と、
前記カウンタのカウント値が所定値を超えたときのタイミングを取得する第4の処理と、
を実行する、モータ制御装置。
【請求項2】
前記カウンタ制御部は、前記相電圧値がゼロ点を経由したときに、前記カウンタをリスタートさせる第5の処理をさらに実行する、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記カウンタ制御部は、前記第4の処理で取得されたタイミングで通電切り替えを実行する、請求項1または請求項2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記所定値は、前記ブラシレスモータの回転速度に応じて変更される、請求項3に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記相電圧値の絶対値の最大値が電源電圧の1/2以上である場合に限り、前記第3の処理が実行される、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
ブラシレスモータを制御するモータ制御方法であって、
相電圧値の絶対値の最大値を更新する第1の処理と、
前記第1の処理で前記最大値が最後に更新されたときの前記相電圧値と現在の前記相電圧値との差分の絶対値を更新する第2の処理と、
前記第2の処理により前記差分の絶対値の最大値が更新されるたびに、時間をカウントするカウンタをリスタートさせる第3の処理と、
前記カウンタのカウント値が所定値を超えたときに所定の処理を実行する第4の処理と、
を実行する、モータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置およびモータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、誘起電圧の検出結果に基づいてロータの回転位置を検出するロータ位置検出回路が開示されている。このロータ位置検出回路では、誘起電圧の検出信号をフィルタリングするローパスフィルタを用い、ローパスフィルタの出力信号を参照電圧と比較してロータの回転位置を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-17575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されたロータ位置検出回路では、ローパスフィルタの相ごとのフィルタ時定数の誤差等に起因して、ロータの回転位置の検出誤差が発生する。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、ロータの回転位置を高精度に検出できるとともに、その検出結果をブラシレスモータの制御に利用できるモータ制御装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、
ブラシレスモータを制御するモータ制御装置であって、
時間をカウントするカウンタと、
前記カウンタを制御するカウンタ制御部と、
を備え、
前記カウンタ制御部は、
前記相電圧値の絶対値の最大値を更新する第1の処理と、
前記第1の処理で前記最大値が最後に更新されたときの前記相電圧値と現在の前記相電圧値との差分の絶対値の最大値を更新する第2の処理と、
前記第2の処理により前記差分の絶対値の最大値が更新されるたびに、前記カウンタをリスタートさせる第3の処理と、
前記カウンタのカウント値が所定値を超えたときのタイミングを取得する第4の処理と、
を実行する、モータ制御装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、ロータの回転位置を高精度に検出できるとともに、その検出結果をブラシレスモータの制御に利用できるモータ制御装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例のモータ制御装置を含むモータ装置の構成を示す図である。
図2】メイン処理を示すフローチャートである。
図3】上昇方向カウンタ制御処理を示すフローチャートである。
図4】下降方向カウンタ制御処理を示すフローチャートである。
図5】矩形波駆動したときの相電圧波形の一例を示す図である。
図6】上昇方向カウンタ制御処理を示すタイミングチャートである。
図7】矩形波駆動したときの相電圧波形の一例を示す図である。
図8】上昇方向カウンタ制御処理を示すタイミングチャートである。
図9】矩形波駆動したときの相電圧波形の一例を示す図である。
図10】下降方向カウンタ制御処理を示すタイミングチャートである。
図11】矩形波駆動したときの相電圧波形の一例を示す図である。
図12】下降方向カウンタ制御処理を示すタイミングチャートである。
図13】本実施例における誘起電圧ゼロクロス位置の検出精度を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本実施例のモータ制御装置を含むモータ装置の構成を示す図である。
【0011】
図1に示すように、モータ装置は、本実施例のモータ制御装置10と、モータ制御装置10からの駆動信号を受ける駆動回路20と、駆動回路20に接続された3相(U相、V相、W相)のブラシレスモータMとを備える。本実施例において、駆動回路20に供給される電源の電圧(電源電圧)は、3Vである。
【0012】
図1に示すように、モータ制御装置10は、時間をカウントするカウンタ11と、カウンタ11をリスタートさせるカウンタ制御部12と、を備える。カウンタ制御部12には、ブラシレスモータMの3相の相電圧値(後述の相電圧値V0に相当)が入力される。
【0013】
また、カウンタ制御部12には、ブラシレスモータMの現在の回転速度が与えられる。この回転速度は、モータ制御装置10において把握される回転速度であってもよく、モータ制御装置10に与えられる回転速度の指令値であってもよい。あるいは、この回転速度は、センサを介して取得される値であってもよい。
【0014】
次に、カウンタ制御部12の動作について説明する。
【0015】
カウンタ制御部12は、第1~第5の処理を実行する。
【0016】
第1の処理では、カウンタ制御部12は、入力される相電圧値の絶対値の最大値を更新する。
【0017】
第2の処理では、カウンタ制御部12は、第1の処理で上記最大値が最後に更新されたときの相電圧値と現在の相電圧値との差分の絶対値の最大値を更新する。
【0018】
第3の処理では、カウンタ制御部12は、第2の処理により差分の絶対値の最大値が更新されるたびに、カウンタ11をリスタートさせる。
【0019】
第4の処理では、カウンタ制御部12は、カウンタ11のカウント値が所定値を超えたときのタイミングを取得する。
【0020】
第5の処理では、カウンタ制御部12は、相電圧値がゼロ点を経由したときに、カウンタ11をリスタートさせる。
【0021】
図2は、メイン処理を示すフローチャートである。
【0022】
図2に示すように、カウンタ制御部12は、メイン処理において、上昇方向カウンタ制御処理(ステップS100)および下降方向カウンタ制御処理(ステップS200)を交互に繰り返す。メイン処理は、U、V、Wの各相の相電圧の値(相電圧値V0)に基づいて、各相ごとに実行される。
【0023】
なお、カウンタ制御部12は、上昇方向カウンタ制御処理(ステップS100)および下降方向カウンタ制御処理(ステップS200)を並行して実行してもよい。あるいは、カウンタ制御部12は、現在の疑似ホールセンサ信号(後述)の値に応じて、上昇方向カウンタ制御処理(ステップS100)または下降方向カウンタ制御処理(ステップS200)を実行してもよい。
【0024】
図3は、上昇方向カウンタ制御処理を示すフローチャートである。
【0025】
図3のステップS102では、カウンタ制御部12は、最大値MAXをゼロに設定し、最大差分値Δmaxを1.5Vに設定する。また、カウンタ制御部12は、カウンタ11をリセットする。
【0026】
ステップS104では、カウンタ制御部12は、現在の相電圧値V0を取得する。
【0027】
ステップS106では、カウンタ制御部12は、相電圧値V0がゼロ点を経由したか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS118へ進め、判断が否定されれば処理をステップS108へ進める。ここでは、例えば、カウンタ制御部12は、前回取得された相電圧値V0と現在の相電圧値V0とを比較することで、上記の判断を行う。
【0028】
ステップS108では、カウンタ制御部12は、ステップS106で取得された相電圧値V0が最大値MAXを超えたか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS112へ進め、判断が否定されれば処理をステップS110へ進める。
【0029】
ステップS110では、カウンタ制御部12は、最大値MAXから相電圧値V0を減算した差分値Δを算出する。
【0030】
ステップS112では、カウンタ制御部12は、最大値MAXを相電圧値V0に更新する。
【0031】
ステップS114では、カウンタ制御部12は、差分値Δが最大差分値Δmaxを超えているか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS116へ進め、判断が否定されれば処理をステップS120へ進める。
【0032】
ステップS116では、カウンタ制御部12は、最大差分値Δmaxを差分値Δに更新する。
【0033】
ステップS118では、カウンタ制御部12は、カウンタ11をリセットして、カウンタ11による計時を開始し、処理をステップS104へ進める。
【0034】
ステップS120では、カウンタ制御部12は、カウンタ11の計時が所定時間Tを越えたか否か判断し、判断が肯定されれば、処理をステップS122へ進め、判断が否定されれば処理をステップS104へ進める。この所定時間Tは、カウンタ制御部12に与えられている現在のブラシレスモータMの回転速度に応じた時間とされる。本実施例では、所定時間Tは、ブラシレスモータMにおける電気角として30°に相当する時間に設定されている。
【0035】
ステップS122では、カウンタ制御部12は、疑似ホールセンサ信号の値を切り替え、リターンする。また、疑似ホールセンサ信号の値の切り替えに応じて、モータ制御装置10は、通電切り替えを実行する。
【0036】
上昇方向カウンタ制御処理(ステップS100)において、第1の処理は、ステップS112に、第2の処理は、ステップS116に、第3の処理は、ステップS114およびステップS118に、第4の処理は、ステップS120に、第5の処理は、ステップS106およびステップS118に、それぞれ対応する。
【0037】
また、上昇方向カウンタ制御処理(ステップS100)では、ステップS102において、最大差分値Δmaxの初期値を1.5Vに設定している。このため、最大差分値Δmaxが1.5V、すなわち、駆動回路20に供給される電源電圧(3V)の1/2を超えた場合にのみ、第2の処理および第3の処理が実行されうる。これにより、誘起電圧ゼロクロス位置の誤検出を防止できる。
【0038】
図4は、下降方向カウンタ制御処理を示すフローチャートである。
【0039】
図4のステップS202では、カウンタ制御部12は、最小値MINをゼロに設定し、最大差分値Δmaxを1.5Vに設定する。また、カウンタ制御部12は、カウンタ11をリセットする。
【0040】
ステップS204では、カウンタ制御部12は、現在の相電圧値V0を取得する。
【0041】
ステップS206では、カウンタ制御部12は、相電圧値V0がゼロ点を経由したか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS218へ進め、判断が否定されれば処理をステップS208へ進める。ここでは、例えば、カウンタ制御部12は、前回取得された相電圧値V0と現在の相電圧値V0とを比較することで、上記の判断を行う。
【0042】
ステップS208では、カウンタ制御部12は、ステップS206で取得された相電圧値V0が最小値MINよりも小さいか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS212へ進め、判断が否定されれば処理をステップS210へ進める。
【0043】
ステップS210では、カウンタ制御部12は、相電圧値V0から最小値MINを減算した差分値Δを算出する。
【0044】
ステップS212では、カウンタ制御部12は、最小値MINを相電圧値V0に更新する。
【0045】
ステップS214では、カウンタ制御部12は、差分値Δが最大差分値Δmaxを超えているか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS216へ進め、判断が否定されれば処理をステップS220へ進める。
【0046】
ステップS216では、カウンタ制御部12は、最大差分値Δmaxを差分値Δに更新する。
【0047】
ステップS218では、カウンタ制御部12は、カウンタ11をリセットして、カウンタ11による計時を開始し、処理をステップS204へ進める。
【0048】
ステップS220では、カウンタ制御部12は、カウンタ11の計時が所定時間Tを越えたか否か判断し、判断が肯定されれば、処理をステップS222へ進め、判断が否定されれば処理をステップS204へ進める。
【0049】
ステップS222では、カウンタ制御部12は、疑似ホールセンサ信号の値を切り替え、リターンする。また、疑似ホールセンサ信号の値の切り替えに応じて、モータ制御装置10は、通電切り替えを実行する。
【0050】
下降方向カウンタ制御処理(ステップS200)において、第1の処理は、ステップS212に、第2の処理は、ステップS216に、第3の処理は、ステップS214およびステップS218に、第4の処理は、ステップS220に、第5の処理は、ステップS206およびステップS218に、それぞれ対応する。
【0051】
また、下降方向カウンタ制御処理(ステップS200)では、ステップS202において、最大差分値Δmaxの初期値を1.5Vに設定している。このため、最大差分値Δmaxが1.5V、すなわち、駆動回路20に供給される電源電圧(3V)の1/2を超えた場合にのみ、第2の処理および第3の処理が実行されうる。これにより、誘起電圧ゼロクロス位置の誤検出を防止できる。
【0052】
次に、相電圧波形の例を参照しつつ上昇方向カウンタ制御処理および下降方向カウンタ制御処理について説明する。
【0053】
図5は、矩形波駆動したときの相電圧波形の一例を示す図、図6は、上昇方向カウンタ制御処理のタイミングを示すタイミングチャートである。なお、図6では、説明の便宜のため、上昇方向カウンタ制御処理(ステップS100)の実行周期(例えば、時刻t1~t2の期間)を実際よりも長いものとして表示している。図8(上昇方向カウンタ制御処理(ステップS100))および図10および図12(下降方向カウンタ制御処理(ステップS200))においても同様である。
【0054】
図5に示すように、ブラシレスモータMの矩形波駆動時における相電圧波形51は、外部駆動時(外力による駆動時)における誘起電圧のような正弦波波形ではなく、電圧印加および還流の影響から歪んだ波形となる。
【0055】
図6は、図5に示す相電圧波形51の領域51Aにおける誘起電圧ゼロクロス位置を検出する場合を例示している。
【0056】
図6に示す例では、時刻t1、時刻t2でステップS114の判断が肯定され、カウンタ11がリセットされるとともに、カウントが再開される(ステップS118)。また、時刻t3および時刻t4でステップS106の判断が肯定され、カウンタ11がリセットされるとともに、カウントが再開される(ステップS118)。
【0057】
この結果、時刻t4、すなわち、最後に相電圧値がゼロ点を経由した時点から所定時間Tが経過したときに疑似ホールセンサ信号の値が切り替えられる(ステップS122)。すなわち、時刻t4を誘起電圧ゼロクロス位置として正しく検出できる。また、誘起電圧ゼロクロス位置から電気角として30°進んだ正しい位置において通電切り替えを実行できる。
【0058】
図7は、矩形波駆動したときの相電圧波形の一例を示す図、図8は、上昇方向カウンタ制御処理のタイミングを示すタイミングチャートである。
【0059】
図8は、図7に示す相電圧波形52の領域52Aにおける誘起電圧ゼロクロス位置を検出する場合を例示している。
【0060】
図8に示す例では、時刻t11、時刻t12、時刻t13、時刻t14でステップS114の判断が肯定され、カウンタ11がリセットされるとともに、カウントが再開される(ステップS118)。
【0061】
この結果、時刻t14、すなわち、最後に最大差分値Δmaxが更新された時点から所定時間Tが経過したときに疑似ホールセンサ信号の値が切り替えられる(ステップS122)。図8の例では、図6の例と異なり相電圧値V0がゼロ点を経由しないが、このような場合でも、時刻t14を誘起電圧ゼロクロス位置として正しく検出できる。また、誘起電圧ゼロクロス位置から電気角として30°進んだ正しい位置において通電切り替えを実行できる。
【0062】
図9は、矩形波駆動したときの相電圧波形の一例を示す図、図10は、下降方向カウンタ制御処理のタイミングを示すタイミングチャートである。
【0063】
図10は、図9に示す相電圧波形51の領域51Bにおける誘起電圧ゼロクロス位置を検出する場合を例示している。
【0064】
図10に示す例では、時刻t21、時刻t22でステップS214の判断が肯定され、カウンタ11がリセットされるとともに、カウントが再開される(ステップS218)。また、時刻t23および時刻t24でステップS206の判断が肯定され、カウンタ11がリセットされるとともに、カウントが再開される(ステップS218)。
【0065】
この結果、時刻t24、すなわち、最後に相電圧値がゼロ点を経由した時点から所定時間Tが経過したときに疑似ホールセンサ信号の値が切り替えられる(ステップS222)。すなわち、時刻t24を誘起電圧ゼロクロス位置として正しく検出できる。また、誘起電圧ゼロクロス位置から電気角として30°進んだ正しい位置において通電切り替えを実行できる。
【0066】
図11は、矩形波駆動したときの相電圧波形の一例を示す図、図12は、下降方向カウンタ制御処理のタイミングを示すタイミングチャートである。
【0067】
図12は、図11に示す相電圧波形52の領域52Bにおける誘起電圧ゼロクロス位置を検出する場合を例示している。
【0068】
図12に示す例では、時刻t31、時刻t32、時刻t33、時刻t34でステップS214の判断が肯定され、カウンタ11がリセットされるとともに、カウントが再開される(ステップS218)。
【0069】
この結果、時刻t34、すなわち、最後に最大差分値Δmaxが更新された時点から所定時間Tが経過したときに疑似ホールセンサ信号の値が切り替えられる(ステップS222)。図12の例では、図10の例と異なり相電圧値V0がゼロ点を経由しないが、このような場合でも、時刻t34を誘起電圧ゼロクロス位置として正しく検出できる。また、誘起電圧ゼロクロス位置から電気角として30°進んだ正しい位置において通電切り替えを実行できる。
【0070】
図13は、本実施例における誘起電圧ゼロクロス位置の検出精度を例示する図である。
【0071】
図13において、円形のドットは相電圧値V0がゼロ点を経由した位置を示し、矩形のドットは本実施例における誘起電圧ゼロクロス位置を示す。また、検出角度は、検出された誘起電圧ゼロクロス位置に対応する電気角を示している。
【0072】
図13に示すように、本実施例によれば、相電圧値V0がゼロ点を経由した位置と比較して正確かつ安定して誘起電圧ゼロクロス位置を検出することができる。すなわち、相電圧値V0がゼロ点を経由した位置が、電気角56°~71°程度の範囲で大きくばらついているのに対し、本実施例では、誘起電圧ゼロクロスの検出位置が電気角57°~61°程度の範囲に収束している。
【0073】
以上のように、本実施例によれば、ブラシレスモータMのロータの回転位置を高精度に検出できるとともに、その検出結果をブラシレスモータMの制御に利用できる。
【0074】
また、本実施例によれば、ロータの角度を検出するためのセンサが不要となる。このため、センサの取付精度等に起因するロータの回転位置の検出精度の低下を防止できる。
【0075】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0076】
なお、以上の本発明の実施例に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0077】
[付記1]
ブラシレスモータ(M)を制御するモータ制御装置(10)であって、
時間をカウントするカウンタ(11)と、
前記カウンタを制御するカウンタ制御部(12)と、
を備え、
前記カウンタ制御部は、
前記相電圧値の絶対値の最大値を更新する第1の処理と、
前記第1の処理で前記最大値が最後に更新されたときの前記相電圧値と現在の前記相電圧値との差分の絶対値の最大値を更新する第2の処理と、
前記第2の処理により前記差分の絶対値の最大値が更新されるたびに、前記カウンタをリスタートさせる第3の処理と、
前記カウンタのカウント値が所定値を超えたときのタイミングを取得する第4の処理と、
を実行する、モータ制御装置。
【0078】
付記1に記載の構成によれば、第1~第4の処理に基づいて、カウンタの動作を制御し、カウンタのカウント値に基づいてブラシレスモータMのロータの回転位置を検出している。このため、ブラシレスモータMのロータの回転位置を高精度に検出できるとともに、その検出結果をブラシレスモータMの制御に利用できる。
【0079】
[付記2]
前記カウンタ制御部は、前記相電圧値がゼロ点を経由したときに、前記カウンタをリスタートさせる第5の処理をさらに実行する、付記1に記載のモータ制御装置。
【0080】
付記2に記載の構成によれば、相電圧値がゼロ点を経由したときのタイミングをブラシレスモータMのロータの回転位置の検出に使用することができる。
【0081】
[付記3]
前記カウンタ制御部は、前記第4の処理で取得されたタイミングで通電切り替えを実行する、付記1または付記2に記載のモータ制御装置。
【0082】
付記3に記載の構成によれば、正確なタイミングで通電切り替えを実行できる。
【0083】
[付記4]
前記所定値は、前記ブラシレスモータの回転速度に応じて変更される、付記3に記載のモータ制御装置。
【0084】
付記4に記載の構成によれば、ブラシレスモータの回転速度に関わりなく、正確なタイミングで通電切り替えを実行できる。
【0085】
[付記5]
前記相電圧値の絶対値の最大値が電源電圧の1/2以上である場合に限り、前記第3の処理が実行される、付記1に記載のモータ制御装置。
【0086】
付記5に記載の構成によれば、相電圧値の絶対値の最大値が電源電圧の1/2未満の場合に、第3の処理が実行されないので、誘起電圧ゼロクロス位置の誤検出を防止できる。
【0087】
[付記6]
ブラシレスモータを制御するモータ制御方法であって、
相電圧値の絶対値の最大値を更新する第1の処理と、
前記第1の処理で前記最大値が最後に更新されたときの前記相電圧値と現在の前記相電圧値との差分の絶対値を更新する第2の処理と、
前記第2の処理により前記差分の絶対値の最大値が更新されるたびに、時間をカウントするカウンタをリスタートさせる第3の処理と、
前記カウンタのカウント値が所定値を超えたときに所定の処理を実行する第4の処理と、
を実行する、モータ制御方法。
【0088】
付記6に記載の構成によれば、第1~第4の処理に基づいて、カウンタの動作を制御し、カウンタのカウント値に基づいてブラシレスモータMのロータの回転位置を検出している。このため、ブラシレスモータMのロータの回転位置を高精度に検出できるとともに、その検出結果をブラシレスモータMの制御に利用できる。
【符号の説明】
【0089】
10 モータ制御装置
11 カウンタ
12 カウンタ制御部
20 駆動回路
M ブラシレスモータ
図1
図2
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図5
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図10
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図13