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特開2024-169841積層フィルム及び積層フィルムをシールしてなる加工物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169841
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】積層フィルム及び積層フィルムをシールしてなる加工物
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20241129BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20241129BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241129BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B32B27/32 C
B32B27/36
B32B27/00 D
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086637
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山谷 幸平
(72)【発明者】
【氏名】則包 猛
(72)【発明者】
【氏名】山花 直美
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB15
3E086BB51
3E086CA01
3E086CA40
3E086DA08
4F100AK01D
4F100AK01E
4F100AK03D
4F100AK03E
4F100AK04A
4F100AK04C
4F100AK25D
4F100AK25E
4F100AK42B
4F100AK48B
4F100AK63A
4F100AK63C
4F100AK63D
4F100AK63E
4F100AL06D
4F100AL06E
4F100AL07D
4F100AL07E
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10C
4F100CA16E
4F100CB00D
4F100CB00E
4F100CB03
4F100CB03E
4F100EH17
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4F100EJ17
4F100EJ42
4F100EJ50
4F100GB15
4F100JA04
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4F100JA06D
4F100JA06E
4F100JA13
4F100JA13A
4F100JA13B
4F100JA13C
4F100JA13D
4F100JA13E
4F100JD02
4F100JK01
4F100JK01A
4F100JK01C
4F100JK02
4F100JK03
4F100JK06
4F100JK06E
4F100JK08
4F100JK08E
4F100JL01
4F100JL11D
4F100JL11E
4F100JL13E
(57)【要約】      (修正有)
【課題】積層フィルムをシールして製袋した際にシール部が破れ難い積層フィルムを提供することを課題とする。さらに、積層フィルムを溶断シールによりシールした場合であっても、溶断シール部が破れ難い加工物を提供することを課題とする。
【解決手段】内層(A)、中間層(B)、外層(C)を備える積層フィルムであって、前記内層(A)および前記外層(C)は、ポリエチレン系樹脂を主成分とし、前記中間層(B)は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂を主成分とし、前記内層(A)と前記中間層(B)の層間、及び前記中間層(B)と前記外層(C)の層間は、ビカット軟化点が40℃以上53℃以下の変性樹脂を主成分とする接着性樹脂層(D)を介して積層されていることを特徴とする積層フィルム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層(A)、中間層(B)、外層(C)を備える積層フィルムであって、
前記内層(A)および前記外層(C)は、ポリエチレン系樹脂を主成分とし、
前記中間層(B)は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂を主成分とし、
前記内層(A)と前記中間層(B)の層間、及び前記中間層(B)と前記外層(C)の層間は、接着性樹脂層(D)を介して積層され、
前記接着性樹脂層(D)は、ビカット軟化点が40℃以上53℃以下の変性樹脂を主成分とすることを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
前記内層(A)および前記外層(C)の前記ポリエチレン系樹脂は、190℃におけるメルトテンションが5.0g以上20.0g以下であることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記積層フィルムは、総厚みが50μm以下であることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記積層フィルムは、共押出しインフレーションフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の積層フィルムをシールしてなるシール部を備えることを特徴とする加工物。
【請求項6】
前記シール部の伸びは、100%以上であることを特徴とする請求項5に記載の加工物。
【請求項7】
前記シール部の強度は、2N/15mm以上であることを特徴とする請求項5に記載の加工物。
【請求項8】
前記シール部は、溶断シールによるものであることを特徴とする請求項5に記載の加工物。
【請求項9】
請求項5に記載の加工物は、製袋されてなる袋。
【請求項10】
請求項5に記載の加工物は、製袋されてなる防臭袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルム及び積層フィルムをシールしてなる加工物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、食品や雑貨等を充填する包装材に対して、保管時に外部からの揮発性成分等の侵食によって内容物の変質を防止するための加工が容易である臭気バリア性共押出多層フィルムと、これを用いた包装材及び包装容器に関する発明が記載されている(特許文献1[0001])。
【0003】
特許文献1の実施例には、LLDPE/接着性樹脂/PBT共重合体/接着性樹脂/LLDPEの構成の共押出多層フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-11741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、積層フィルムを製袋して袋にする際には、袋のサイドやボトムをシールすることにより製袋することが多いが、このようにして製袋された袋は、シール部が破れやすく、破袋してしまうことがあった。
【0006】
そこで、積層フィルムをシールして製袋した際にシール部が破れ難いフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、破れ難いシール部とする為には、シール部に伸びが必要であることを見出した。具体的には、シール部が伸びる性質(以下、伸び性と表記することがある。)を備えることで、シール部に応力が与えられたとしても、与えられた応力を分散することができ、シール部が破れ難い袋と出来ることを見出した。
【0008】
さらに、本発明者らは、積層フィルムをシールして製袋する際の生産効率向上を目的とし、溶断シールを用いて製袋する方法を検討した。しかしながら、溶断シールを用いて積層フィルムをシールした場合、熱板シールによるシールと比較して、シール部が破れやすかった。これは、溶断シールによりシールすることで、シールの高速化が可能となる一方、溶断シールは、熱板シールよりもシール時間が短く、シールによる圧力も小さいものとなるため、積層フィルム同士が十分に融着していない場合があるためである。さらには、積層フィルムを溶断シールした溶断シール部は、熱板シールによる熱板シール部よりも融着面積が少なくなり、積層フィルム同士が十分に融着していない場合があるためである。
【0009】
そこで、本発明の上記課題を解決する為の手段として、
(1)内層(A)、中間層(B)、外層(C)を備える積層フィルムであって、
前記内層(A)および前記外層(C)は、ポリエチレン系樹脂を主成分とし、
前記中間層(B)は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂を主成分とし、
前記内層(A)と前記中間層(B)の層間、及び前記中間層(B)と前記外層(C)の層間は、接着性樹脂層(D)を介して積層され、
前記接着性樹脂層(D)は、ビカット軟化点が40℃以上53℃以下の変性樹脂を主成分とすることを特徴とする積層フィルム;
(2)前記ポリエチレン系樹脂は、190℃におけるメルトテンションが5.0g以上20.0g以下であることを特徴とする(1)に記載の積層フィルム;
(3)前記積層フィルムは、総厚みが50μm以下であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の積層フィルム;
(4)前記積層フィルムは、共押出し空冷インフレーションフィルムであることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の積層フィルム。
(5)(1)乃至(4)のいずれかに記載の積層フィルムをシールしてなるシール部を備えることを特徴とする加工物;
(6)前記シール部の伸びは、100%以上であることを特徴とする(5)に記載の加工物;
(7)前記シール部の強度は、2N/15mm以上であることを特徴とする(5)又は(6)に記載の加工物;
(8)前記シール部は、溶断シールによるものであることを特徴とする(5)乃至(7)のいずれかに記載の加工物;
(9)(5)乃至(8)のいずれかに記載の加工物は、製袋されてなる袋;
(10)(5)乃至(8)のいずれかに記載の加工物は、製袋されてなる防臭袋;
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によれば、ポリブチレンテレフタレート系樹脂を主成分とする層を備えるため防臭性に優れる。また、ポリブチレンテレフタレート系樹脂を主成分とする中間層(B)とポリエチレン系樹脂を主成分とする内層(A)および外層(C)の層間に、ビカット軟化点が40℃以上53℃以下の変性樹脂を主成分として用いることで、層間を十分に接着することができ、かつ、得られた積層フィルムを溶断シールによりシールして加工物とした際に、シール部が伸び性を備えるため、シール部が破れ難い加工物とすることが出来る。
第2発明によれば、内層(A)および外層(C)に、190℃におけるメルトテンションが5.0g以上20.0g以下と、一般的なポリエチレン系樹脂と比べてメルトテンションが高いポリエチレン系樹脂を用いることによって、製膜安定性および溶断シール適性が良好な積層フィルムを得ることができる。溶断シール適性を詳説すると、メルトテンションが高いことで溶断シール時にヒゲが発生しにくく、シール強度およびシール伸びのバラツキを低減することが出来る。
第3発明によれば、積層フィルムをシールして加工物とする際に、積層フィルムが溶融するための熱量が少量であってもシールが可能となるため、シール速度の高速化が可能となり、生産効率向上させることができる。さらには、溶断シール適性に優れる積層フィルムとすることが出来る。また、層厚みが50μm以下と薄いことにより、積層フィルムを製袋して袋(好ましくは防臭袋)とした場合に、袋の開口部を結び易くすることが出来る。
第4発明によれば、チューブ状のフィルムが得られることからシール箇所が少なく製袋することが出来る。また、任意の幅に変更し易いことから寸法の異なる袋を製袋し易い。更にフィルムの長さ方向と幅方向において強度のバランスに優れることから、積層フィルム1を用いて袋とした場合に破れにくい袋を得ることが出来る。
第5発明によれば、防臭性に優れる加工物とすることが出来る。また、シール部が破れ難い加工物とすることが出来る。
第6発明によれば、シール部が十分な伸び性を備えることにより、シール部が破れ難い加工物とすることが出来る。
第7発明によれば、シール部が十分な強度を備えることにより、シール部が破れ難い加工物とすることが出来る。
第8発明によれば、熱板シールによるシールよりもシール速度を高速化することができ、生産効率を向上させることが出来る。また、熱板シールによるシールよりも加工物の規格変更に対応しやすい。
第9発明によれば、シール部が十分な伸び性を備えることにより、シール部が破れ難い袋とすることが出来る。
第10発明によれば、シール部が十分な伸び性を備えることにより、シール部が破れ難い防臭袋とすることが出来る。また、ポリブチレンテレフタレート系樹脂を主成分とする中間層(B)を備える積層フィルムにより製袋されるため、防臭性に優れる防臭袋とすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る積層フィルムの一実施形態を表す模式的断面図である。
図2】本発明に係る積層フィルムをシールしたシール部の伸びおよび強度の測定方法を詳説するための模式図である。
図3】本発明に係る積層フィルムを用いて、溶断シールにより製袋されてなる袋を表す模式的斜視図(A)、模式的側面図(B)、及びシール部を拡大して示す模式的部分断面図(C)である。
図4】本発明に係る積層フィルムを用いて、熱板シールにより製袋されてなる袋を表す模式的斜視図(A)、模式的側面図(B)、及びシール部を拡大して示す模式的部分断面図(C)である。
図5】本発明に係る積層フィルムを溶断シールして袋を製造する製造方法を表す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳説するが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を超えない限り、同様の効果を奏する範囲において種々の形態をとることができる。
【0013】
本明細書において、「主成分」の用語は、層を構成する成分のうち、構成比率が50重量%以上であるものを意味するものであり、好ましくは60重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%以上であり、特に好ましくは95重量%以上である。
【0014】
本明細書の「シール部」の用語について、溶断シールによりシールされたシール部を「溶断シール部」、熱板シールによりシールされたシール部を「熱板シール部」と表記することがある。
【0015】
本発明における積層フィルムの代表的な構成は、ポリエチレン系樹脂を主成分とする内層(A)/接着性樹脂層(D)/ポリブチレンテレフタレート系樹脂を主成分とする中間層(B)/接着性樹脂層(D)/ポリエチレン系樹脂を主成分とする外層(C)である。
【0016】
図1は、上述する代表的な構成の模式的断面図を表すものである。
【0017】
〈内層(A)〉
内層(A)は、ポリエチレン系樹脂を主成分とする。これにより、シール性に優れる積層フィルム1とすることが出来る。
【0018】
内層(A)として使用するポリエチレン系樹脂の密度は、特に制限されるものではないが、0.880~0.930g/cmが好ましく、より好ましくは0.915~0.925g/cmである。
【0019】
密度を0.915g/cm以上とすることで、ポリエチレン系樹脂の結晶度を高めることができ、耐ブロッキング性に優れる積層フィルム1とすることが出来る。また、強度に優れる積層フィルム1とすることができ、積層フィルム1をシールして加工物とした際に、シール部が破れ難い。
【0020】
密度を0.925g/cm以下とすることで、柔軟性に優れる伸びやすい積層フィルム1とすることが出来る。これにより、積層フィルム1をシールして加工物とした際に、シール部が破れ難い加工物とすることが出来る。また、積層フィルム1が柔軟性に優れることで、積層フィルム1をシールして加工物とした際に扱い易い加工物とすることができ、さらには、積層フィルム1を製袋して袋(好ましくは防臭袋)とした場合に、袋の開口部を結び易くすることが出来る。
【0021】
内層(A)として使用するポリエチレン系樹脂の190℃におけるメルトテンションは、特に限定されるものではないが、5.0g以上20.0g以下であることが好ましく、より好ましくは6.0g以上15.0g以下、更には7.0g以上10.0g以下である。
尚、190℃におけるメルトテンションは、(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1Cを用い下記測定条件により行う。
<測定条件>使用ノズル:L=8.000mm、D=2.095mm、バレル径:9.55mm、測定温度:190℃、樹脂押出速度:15mm/分、樹脂引取速度:10m/分。
【0022】
内層及び後述する外層に、190℃におけるメルトテンションが5.0g以上20.0g以下のポリエチレン系樹脂を用いることで、製膜安定性および溶断シール適性が良好な積層フィルムを得ることができる。溶断シール適性を詳説すると、メルトテンションが高いことで溶断シール時にヒゲが発生しにくく、シール強度およびシール伸びのバラツキを低減することが出来る。
【0023】
具体的なポリエチレン系樹脂としては、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が例示されるが、中でも、直鎖状低密度ポリエチレンを使用することが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンは、適度に融点が低いため、シール性に優れる積層フィルム1とすることが出来る。
【0024】
また、機械強度や加工性の観点から、ポリエチレン系樹脂の190℃におけるメルトフローレート(MFR)値は、1.0~10.0g/10minであることが好ましく、さらには1.0~5.0g/10minとすることが好ましく、特には、1.0~3.0g/10minとすることが好ましい。
【0025】
なお、ポリエチレン系樹脂は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良く、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は目的に応じて任意に選択できる。例えば、直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとのブレンドを例示することが出来るが、当業者が適宜好ましい形態を選択することができ、特に制限されるものではない。
【0026】
内層(A)として使用するポリエチレン系樹脂の融点は、特に制限されるものではないが80~135℃であることが好ましく、さらには90~130℃とすることが好ましく、特には100~120℃とすることが好ましい。上記範囲とすることで、シール性に優れる積層フィルム1とすることが出来る。
【0027】
また、内層(A)は、必要に応じて添加剤を添加することもでき、当業者が適宜好ましい添加剤を添加することが出来る。
【0028】
さらに、内層(A)は、ポリエチレン系樹脂を主成分としていれば、他の樹脂を備えていても良く、特に制限されるものではない。
【0029】
内層(A)の厚みは、特に制限されるものではないが、1~20μmであることが好ましく、さらには3~10μmであることが好ましい。内層(A)が上記範囲であれば、積層フィルム1をシールして加工物とする場合であっても、高速シールが可能となり、且つ、積層フィルム1をシールしてなるシール部の強度を十分なものとすることが出来る。
【0030】
〈中間層(B)〉
中間層(B)は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂を主成分とする。これにより、防臭性に優れる積層フィルム1とすることが出来る。また、積層フィルム1をシールして加工した際に、防臭性に優れる加工物とすることが出来る。
【0031】
なお、中間層(B)は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂を主成分とする。なお、ポリブチレンテレフタレート系樹脂は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良く、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は目的に応じて任意に選択できる。
【0032】
具体的なポリブチレンテレフタレート系樹脂としては、単独重合体や共重合体が例示される。共重合体の酸成分としては、例えばテレフタル酸やイソフタル酸、アジピン酸などが例示され、特に制限されるものではない。
【0033】
中間層(B)の厚みは、積層フィルム1に対して防臭性を与えることができれば、特に制限されるものではないが、1μm~10μmであることが好ましい。また、中間層(B)の厚みは、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上で、9μm以下、8μm以下、7μm以下、6μm以下であれば十分な防臭性を示す。
【0034】
また、中間層(B)は、必要に応じて添加剤を添加することもでき、当業者が適宜好ましい添加剤を添加することが出来る。
【0035】
さらに、中間層(B)は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂を主成分としていれば、他の樹脂を備えていても良く、特に制限されるものではない。
【0036】
〈外層(C)〉
外層(C)は、〈内層(A)〉にて記載したものを使用することが出来る。内層(A)と外層(C)とを同じ樹脂とすることで、表裏を気にすることなく積層フィルムを使用することが出来る。また、カールし難い積層フィルムとすることが出来る。
【0037】
〈接着性樹脂層(D)〉
接着性樹脂層(D)は、上述した代表的な構成に示すように、内層(A)と中間層(B)の層間、及び中間層(B)と外層(C)の層間に位置する。
【0038】
積層フィルムを共押出し法により製膜する場合、中間層(B)に使用されるポリブチレンテレフタレート系樹脂などのポリエステル系樹脂は、内層(A)や外層(C)に用いられるポリエチレン系樹脂との接着性が良くないことから、接着性樹脂層(D)が必要である。
この接着性樹脂層(D)に用いられる樹脂としては、変性樹脂が多く用いられる。
ただ、ポリエステル系樹脂と接着性が良好な変性樹脂は数少なく、多くの変性樹脂は中間層(B)と接着性樹脂層(D)の層間で剥離しやすい状況で積層されており、これにより、積層フィルムを溶断シールしてシール強度を測定する際、中間層(B)と接着性樹脂層(D)の層間で剥離してしまい、高いシール強度やシール伸びとならない場合があった。
そこで、本発明においては、多くの接着性樹脂を試した結果、ビカット軟化点が40℃以上53℃以下の変性樹脂を用いることを見出したものである。
尚、ビカット軟化点は、ASTM D 1525に基づいて測定を行う。
【0039】
変性樹脂のビカット軟化点が40℃以上、且つ、53℃以下であることで、中間層(B)と接着性樹脂層(D)の層間を強固に接着することが出来ると共に、溶断シールを施した際にシール部の伸び特性がある積層フィルムとすることが出来る。製膜時において変性樹脂がポリブチレンテレフタレート系樹脂へのアンカー効果によって接着強度やシール伸び、シール強度に影響しているものと推察される。
ビカット軟化点が40℃未満の変性樹脂は、ビカット軟化点が常温に近い温度であることから樹脂の取り扱いが困難であり、またビカット軟化点が53℃を超えると溶断シールを施した際に所望するシール部の伸び特性が得られない。
尚、変性樹脂のビカット軟化点は、41℃以上、42℃以上、43℃以上が好ましく、また、52℃以下、50℃以下、48℃以下、46℃以下であることが好ましい。
【0040】
本発明に係る変性樹脂は、樹脂の基本構造を変えることなく、一部の分子鎖の種類または配置を変えたものであり、不飽和カルボン酸やその無水物または誘導体等により変性された樹脂である。不飽和カルボン酸の例としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸が挙げられ、その誘導体の例としては、例えば、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、無水マレイン酸、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、無水イタコン酸、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル、無水フマル酸等のエステルおよび無水物が挙げられる。上記樹脂としては、直鎖状ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル(VA)共重合体、エチレン-エチルアクリレート(EA)共重合体、エチレン-メタクリレート共重合体などのエチレン系重合体、プロピレン系重合体、スチレン系エラストマーが挙げられる。この中でもエチレン系重合体とプロピレン系重合体を包含するポリオレフィン系樹脂が好ましく、特にエチレン系重合体が好ましい。
【0041】
また、接着性樹脂層(D)は、必要に応じて添加剤を添加することもでき、当業者が適宜好ましい添加剤を添加することが出来る。
【0042】
さらに、接着性樹脂層(D)は、接着性樹脂以外の樹脂を備えていても良く、特に制限されるものではない。例えば、接着性樹脂とポリブチレンテレフタレート系樹脂とをブレンドしたものを接着性樹脂層(D)とすることが出来る。
【0043】
〈積層フィルム1〉
積層フィルム1の総厚みは、1~50μmであることが好ましく、さらには5~30μmであることが好ましく、特には、10~25μmであることが好ましい。
上記範囲とすることで、適度に積層フィルム1にコシや強度を持たせつつ、厚みを薄くすることで柔らかく扱い易い積層フィルム1とすることが出来る。また、上記範囲であると、積層フィルム1をシールして加工物とする際、積層フィルム1が溶融するための熱量が少量であってもシールすることができる。これにより、シール速度の高速化が可能となり、生産効率を向上させることができる。さらに、積層フィルム1を製袋して防臭袋とした場合に、防臭袋の開口部を結び易くすることが出来る。
【0044】
そして、本発明の積層フィルム1は、共押出し空冷インフレーションフィルムであることが好ましい。共押出し空冷インフレーションフィルムであることで、チューブ状のフィルムが得られることからシール箇所が少なく製袋することが出来る。また、任意の幅に変更し易いことから寸法の異なる袋を製袋し易い。更にフィルムの長さ方向と幅方向において強度のバランスに優れることから、積層フィルム1を用いて袋とした場合に破れにくい袋を得ることが出来る。
【0045】
なお、本発明の積層フィルム1は、上記代表的な構成に限定されるものではなく、必要に応じて、内層(A)、中間層(B)、外層(C)、接着性樹脂層(D)以外の層を設けることができる。
【0046】
なお、上記代表的な構成に示すように、厚さ方向に対して対称の層構成とすることで、カールし難い積層フィルム1とすることが出来る。
【0047】
〈加工物〉
本発明の積層フィルムをシールすることにより、シール部を備える加工物とすることが出来る。
【0048】
本発明の積層フィルムは伸び性に優れる。よって、積層フィルムをシールしてシール部を備える場合であっても、伸び性に優れ、破れ難い加工物とすることが出来る。なお、伸び性に優れることにより、積層フィルムをシールして製袋した際に、シール部が破れ難い加工物とすることが出来る。具体的には、シール部に応力が与えられたとしても、与えられた応力を分散することができ、シール部が破れ難い袋とすることが出来る。
【0049】
本発明により得られる加工物は、シール部を備えるが、シール部が、十分な伸び性と強度を備えることでシール部が破れ難い加工物とすることが出来る。
【0050】
具体的には、シール部の伸びが、100%以上、120%以上、140%以上、160%以上、180%以上、200%以上、250%以上、300%以上であることが好ましい。シール部が伸びることにより、シール部が破れ難い加工物とすることが出来る。さらには、積層フィルムをシールして製袋した場合、シール部が破れ難い袋とすることが出来る。なお、シール部の伸びの上限は特に制限されるものではない。
【0051】
図2は、本発明に係る積層フィルムをシールしたシール部の伸びおよび強度の測定方法を詳説するための模式図である。
【0052】
シール部の伸びの測定方法を図2を用いて以下に詳説する。
(1)積層フィルム1をシールして、シール部を備える加工物を製作する。
(2)シール部を備える加工物から短冊状の試験片4(幅15mm)を製作する。この時、図2に示すように、試験片の長さ方向における中央にシール部3が位置するようにして試験片を製作する。
(3)引張試験機に上記試験片4を取り付ける。チャック間距離は40mmとする。
(4)引張試験速度を500mm/minとし、シール部3が破断するまで図2に示す引張方向へ引張試験を行う。
(5)シール部の伸び(%)を算出する。算出方法は、
伸び(%)=([破断時のチャック間距離]―[引張試験前のチャック間距離(40mm)])/[引張試験前のチャック間距離(40mm)]×100とする。
【0053】
また、シール部の強度は、2N/15mm以上、3N/15mm以上、5N/15mm以上、6N/15mm以上、7N/15mm以上、9N/15mm以上、11N/15mm以上であることが好ましい。シール部の強度が上記範囲であると、シール部が破れ難い加工物とすることが出来る。さらには、積層フィルムをシールして製袋した場合、シール部が破れ難い袋とすることが出来る。なお、シール部の強度の上限は特に制限されるものではない。また、シール部の伸びと強度は相関関係があり、シール部が伸び性を有していると、シール部の強度は増加する傾向がある。
【0054】
シール部の強度の測定方法を図2を用いて以下に詳説する。
(1)積層フィルム1をシールして、シール部を備える加工物を製作する。
(2)シール部を備える加工物から短冊状の試験片4(幅15mm)を製作する。この時、図2に示すように、試験片の長さ方向の中央にシール3部が位置するようにして試験片を製作する。
(3)引張試験機に上記試験片4を取り付ける。チャック間距離は40mmとする。
(4)引張試験速度は500mm/minとし、シール部3が破断するまで図2に示す引張方向へ引張試験を行う。
(5)シール部の強度(N/15mm)は、シール部が破断した時の最大荷重の値である。
【0055】
また、本発明の積層フィルムは、ポリブチレンテレフタレート系樹脂を主成分とする中間層(B)を備えるため、防臭性に優れる。よって、本発明の積層フィルムをシールすることにより加工物とした場合、防臭性に優れる加工物を得ることが出来る。
【0056】
加工物としては、例えば積層フィルムをシールすることにより製袋して袋とすることができる。また、本発明により製袋された袋は、防臭性を備えるため、防臭袋として使用することが出来る。
【0057】
本発明により得られた防臭袋は、臭気物を収容することができ、臭気物の臭気を防臭袋の中に封じ込めることが出来る。臭気物としては、人や動物が排泄した排泄物、使用済みおむつ、生ゴミ等を例示することが出来る。また、キムチや納豆などの臭いの強い食べ物等を例示することもできる。
さらに、臭いの移りやすい内容物を防臭袋の中に収容することもでき、防臭袋外部の臭気から内容物を保護することも出来る。例えば、防虫剤・消臭剤・芳香剤といった揮発薬剤成分を有するものと近い場所で保管される場合などに、防臭袋の中に内容物を収容して揮発薬剤成分から保護することができる。
このように、防臭袋に収容する内容物や防臭袋の使用方法は、特に制限されるものではなく、当業者が適宜好ましい形態を選択することが出来る。
【0058】
また、積層フィルムをシールすることにより手袋として加工することも出来る。このように、加工物の形態は、当業者が適宜好ましい形態とすることでき、特に制限されるものではない。
【0059】
具体的なシール方法としては、溶断シール、熱板シール、超音波シール、高周波シール等を例示することができ、中でも溶断シールや熱板シールを採用することが好ましい。
【0060】
本発明の積層フィルムは、高速でシールする場合であっても、積層フィルム同士を十分に融着することが出来るため、溶断シール適性に非常に優れる。さらに、溶断シールは、他のシール方法と比べて加工物の規格変更に対応しやすいため、本発明の積層フィルムを使用して溶断シールすることにより、生産効率を向上することが出来る。
【0061】
図3は、本発明に係る積層フィルムを用いて、溶断シールにより製袋されてなる袋を表す模式的斜視図(A)、模式的断面図(B)、及びシール部を拡大して示す模式的部分側面図(C)である。
【0062】
図3の模式的斜視図(A)に示すように、袋のサイドおよびボトムを溶断シールして溶断シール部31を形成することにより、積層フィルム1を製袋することが出来る。また、1枚の積層フィルム1を折りたたんだ折り目を袋のボトムとし、袋のサイドとなる部分を溶断シールすることにより袋を製袋することも出来る。
【0063】
溶断シールにより製袋する方法は従来公知の方法を採用することができ、特に制限されるものではない。
【0064】
図4は、本発明に係る積層フィルムを用いて、熱板シールにより製袋されてなる袋を表す模式的斜視図(A)、模式的側面図(B)、及びシール部を拡大して示す模式的部分断面図(C)である。
【0065】
図4の模式的斜視図(A)に示すように、袋のサイドおよびボトムを熱板シールして熱板シール部32を形成することにより、積層フィルムを製袋することが出来る。また、1枚の積層フィルムを折りたたんだ折り目を袋のボトムとして、袋のサイドとなる部分を熱板シールすることにより製袋することもできる。
【0066】
熱板シールにより製袋する方法は従来公知の方法を採用することができ、特に制限されるものではない。
【0067】
なお、溶断シールまたは熱板シールにより積層フィルムを製袋する方法を上述したが、製袋方法は、従来公知の方法を採用することができ、当業者が適宜好ましい形態を選択することが出来る。例えば、袋のボトムとなる部分と熱板シール、袋のサイドとなる部分を溶断シールして、溶断シールと熱板シールとを用いて製袋することも出来る。
【実施例0068】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0069】
<実施例1~2、比較例1~3>
下記する樹脂を使用し、内層(A)/接着性樹脂層(D)/中間層(B)/接着性樹脂層(D)/外層(C)の構成の積層フィルムを共押出法により得た。各層の厚みについては、表1に示す。
<内層(A)および外層(C)>
・直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)
密度:0.923g/cm、融点:118℃、MFR:1.5g/10min(190℃)、メルトテンション(190℃):8.1g
<中間層(B)>
・ポリブチレンテレフタレート(PBT)
単独重合体、密度:1.310g/cm、融点:223℃、MFR=5g/10min
・6-6,6共重合ナイロン(6-66共重合Ny)
共重合体、密度:1.14g/cm
<接着性樹脂層(D)>
・変性樹脂1:無水マレイン酸変性ポリオレフィン
密度:0.88g/cm、MFR:2.6/10min.、ビカット軟化点:43℃
・変性樹脂2:無水マレイン酸変性エチレンメチルアクリレート
密度:0.93g/cm、MFR:1.6g/10min.、ビカット軟化点:52℃
・変性樹脂3:無水マレイン酸変性ポリオレフィン
密度:0.90g/cm、MFR:3.5g/10min.、ビカット軟化点:55℃
・変性樹脂4:酸変性LLDPE
密度:0.90g/cm、MFR:1.0g/10min.、ビカット軟化点:74℃
・変性樹脂5:酸変性LLDPE
密度:0.914g/cm、MFR:6.5g/10min.、ビカット軟化点:46℃
【0070】
《積層フィルムの伸び及び強度》
得られた積層フィルムの伸び及び強度を評価した。具体的には、積層フィルムのMD方向及びTD方向の伸び及び強度を測定した。測定方法は、JIS K 7127(1989)を参考にして実施するものとし、測定値は、試料7つを測定したもののうち最大値および最小値を除いた5つの試料の平均とする。また、チャック間距離は80mm、引張試験速度は500mm/minとする。測定結果は表1に示す。
【0071】
得られた積層フィルムを溶断シールして溶断シール部を備える加工物を製作した。溶断シール方法を下記する。
【0072】
[溶断シール]
得られた積層フィルムを下記する方法により、溶断シールして袋を製作した。具体的な製作方法は図5を用いて以下に詳説する。なお、図5は、本発明に係る積層フィルムを溶断シールして袋を製造する製造方法を表す模式的平面図である。
(i)積層フィルム1を用意する。
(ii)積層フィルム1の幅方向中央に対して、積層フィルム1を折りたたみ、折り目5を備える積層フィルム1’を製作する。
(iii)折り目5を備える積層フィルム1’を溶断シール装置6を用いて溶断シールして袋7を製作する。この時、図5に示す搬送方向と直角に交差する方向に折り目5を備える積層フィルム1’を溶断シールすることにより袋7を製作する。これにより、袋7のボトムは折り目5により構成され、袋7のサイドは溶断シール部31により構成される袋7を製作することが出来る。
なお、溶断シール機における溶断シール装置6のシール温度は300℃、溶断溶断シール装置6と折り目5を備える積層フィルム1’との接触時間は0.1秒とし、1分間に45個の袋を製作できる条件とした。
【0073】
[シール部の伸び]
溶断シールにて製作した袋の溶断シール部の伸びを測定した。なお、製作した袋は、溶断シール部が2か所あるため(図5(iii)参照)、2か所の溶断シール部(P部、Q部)の伸びを測定した。測定結果は表1に示す。
なお、シール部の伸びの測定方法を図2を用いて以下に詳説する。
(1)シール部を備える加工物または袋から短冊状の試験片4(幅15mm)を製作する。この時、図2に示すように、試験片の長さ方向の中央にシール部が位置するようにして試験片を製作する。
(2)引張試験機に上記試験片4を取り付ける。また、チャック間距離は40mmとする。
(3)引張試験速度は500mm/minとし、シール部3が破断するまで図2に示す引張方向へ引張試験を行う。
(4)破断時のシール部の伸び(%)を算出する。算出方法は、
伸び(%)=([破断時のチャック間距離]―[引張試験前のチャック間距離(40mm)])/[引張試験前のチャック間距離(40mm)]×100とする。
【0074】
[シール部の強度]
溶断シールにて製作した袋の溶断シール部の強度を測定した。なお、製作した袋は、溶断シール部が2か所あるため、2か所の溶断シール部(P部、Q部)の強度を測定した。評価結果は表1に示す。シール部の強度の測定方法を図2を用いて以下に詳説する
(1)シール部を備える加工物または袋から短冊状の試験片4(幅15mm)を製作する。この時、図2に示すように、試験片の長さ方向の中央にシール部が位置するようにして試験片を製作する。
(2)引張試験機に上記試験片4を取り付ける。また、チャック間距離は40mmとする。
(3)引張試験速度は500mm/minとし、シール部3が破断するまで図2に示す引張方向へ引張試験を行う。
(4)シール部の強度(N/15mm)は、シール部が破断するまでの最大荷重の値である。
【0075】
《シール部の破れ評価》
溶断シールにて製作した袋の溶断シール部の破れ評価を行った。図3(B)に示すように、溶断シール部を中央にし、溶断シール部から1cm離れた箇所(図3(B))におけるd)を手で掴み、図示する引張方向へ引っ張ることによって、溶断シール部の破れ難さを評価した。なお、図3(B)にて、引張方向は2方向あるが、いずれの引張方向に対しても同時に引っ張るものとする。評価基準は以下の通りである。
〇:引張方向に引っ張った場合、すぐには破けず、溶断シール部が引張方向へ伸びる。
×:引張方向に引っ張った場合、溶断シール部がすぐに破れる。
なお、評価結果は表1に示す。
【0076】
《防臭評価》
まず、得られた積層フィルムをシールして製袋することにより袋を製作した。具体的な製袋方法は、まず、得られた積層フィルムを半分に折りたたみ折りたたんだ折り目を袋のボトムとなるようにした。そして、袋のサイドとなる部分を下記するシール機にて、シールすることにより袋を製作した。
シール機:富士インパルス株式会社製のP-300(製番:H6196259/01301D)、接着部温度:180℃
次に、製作した袋の防臭性能を確認するために下記する防臭評価を行った。まず、製作した袋にキムチを10g収容し、袋の開口部を結んだ。そして、キムチを収容した袋をチャック付きのアルミパウチに24時間収容した。24時間経過後、アルミパウチを開封して臭いを確認した。評価基準は以下の通りである。
〇:臭いを感じなかった。
×:強い臭いを感じた。
なお、評価結果は表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1より、実施例1~2および比較例3は、シール部の伸びが100%以上となっており、比較例1~2と比べて、十分に伸び性を備えていることが分かる。さらに、実施例1~2および比較例3は、「シール部の破れ評価」がいずれも「〇」となっており、シール部の伸びが100%以上であると、シール部が破れ難いことが分かる。
【0079】
また、実施例1と比較例1を比べると、シール強度は、実施例1が平均6.2N/15mm、比較例1が平均5.65N/15mmと大きく差が無いにもかかわらず、破れ評価では実施例1は「〇」、比較例1は「×」であった。これは、シール伸びの差が影響していると考えられる。
【0080】
中間層(B)をPBTとした実施例1~2および比較例1~2は、防臭評価がいずれも「〇」となっており、中間層(B)を6-66共重合Nyとした比較例3よりも、防臭性に優れることが分かる。
【符号の説明】
【0081】
1 積層フィルム
(A) 内層(A)
(B) 中間層(B)
(C) 外層(C)
(D) 接着性樹脂層(D)
1′ 折り目を備える積層フィルム
2 加工物
3 シール部
31 溶断シール部
32 熱板シール部
4 試験片
5 折り目
6 溶断シール装置
7 袋

図1
図2
図3
図4
図5