(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169842
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】箔転写装置
(51)【国際特許分類】
B65C 9/40 20060101AFI20241129BHJP
B65C 5/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B65C9/40
B65C5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086638
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】市川 智也
【テーマコード(参考)】
3E095
【Fターム(参考)】
3E095AA12
3E095BA10
3E095CA10
3E095DA02
3E095DA59
3E095EA13
3E095EA24
3E095EA26
3E095EA34
3E095FA25
(57)【要約】
【課題】初期動作処理の実行により箔転写装置内の部品に過大な負荷がかかるのを抑制することを目的とする。
【解決手段】箔転写装置は、圧接離間機構と、制御部を備える。圧接離間機構は、第1定着部材を、第2定着部材に圧接する圧接位置と、第2定着部材から離間した所定の離間位置との間で移動させる。制御部は、初期動作処理を実行可能である。初期動作処理は、第1定着部材を離間位置に位置させるための処理である。初期動作処理は、位置修正処理(S3)と、装着判定処理(S1)を有する。位置修正処理は、第2センサでの検知結果に基づいて第1定着部材を離間位置に移動させる処理である。装着判定処理は、第1センサでの検知結果に基づいてカートリッジが筐体に装着されているか否かを判定する処理である。制御部は、装着判定処理においてカートリッジが筐体に装着されていないと判定した場合(S1,No)、位置修正処理を実行しない。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に着脱可能なカートリッジであって、箔を含む箔フィルムを備えたカートリッジと、
シートと箔フィルムを挟む第1定着部材および第2定着部材と、
前記第1定着部材を、前記第2定着部材に圧接する圧接位置と、前記第2定着部材から離間した所定の離間位置との間で移動させる圧接離間機構と、
前記カートリッジの装着を検知する第1センサと、
前記第1定着部材が前記離間位置に位置することを検知する第2センサと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1定着部材を前記離間位置に位置させるための初期動作処理であって、
前記第1定着部材を前記離間位置に向けて移動させ、前記第2センサでの検知結果に基づいて前記第1定着部材を前記離間位置に停止させる位置修正処理と、
前記第1センサでの検知結果に基づいて前記カートリッジが前記筐体に装着されているか否かを判定する装着判定処理と、を有する初期動作処理を実行可能であり、
前記装着判定処理において前記カートリッジが前記筐体に装着されていないと判定した場合、前記位置修正処理を実行しないことを特徴とする箔転写装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記カートリッジが前記筐体に装着され、かつ、前記第1定着部材が前記離間位置に位置していないと判定した場合には、前記位置修正処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の箔転写装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記カートリッジが前記筐体に装着され、かつ、前記第1定着部材が前記離間位置に位置すると判定した場合には、前記位置修正処理を実行せずに、箔転写を実行可能であることをユーザに報知することを特徴とする請求項1に記載の箔転写装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記カートリッジが前記筐体に装着されていないと判定した場合には、前記位置修正処理を実行せずに、前記カートリッジが前記筐体に装着されていないことをユーザに報知することを特徴とする請求項1に記載の箔転写装置。
【請求項5】
前記制御部は、箔転写装置の電源がOFFからONにされた場合に、前記初期動作処理を実行することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の箔転写装置。
【請求項6】
前記筐体は、
前記カートリッジが通過可能な開口を有する筐体本体と、
前記開口を開閉するカバーと、
前記カバーが閉まっていることを検知する第3センサと、を備え、
前記制御部は、
前記第3センサでの検知結果に基づいて、前記カバーが開いた状態から閉められたと判定した場合に、前記初期動作処理を実行することを特徴とする請求項5に記載の箔転写装置。
【請求項7】
前記制御部は、
箔転写指令を受けたか否かを判定し、
箔転写指令を受けたと判定した場合に、前記初期動作処理を実行することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の箔転写装置。
【請求項8】
前記位置修正処理が実行された場合、
前記圧接離間機構は、
前記第1定着部材を現在位置から前記圧接位置を経由して前記離間位置に移動させる第1動作と、
現在位置から前記圧接位置を経由せずに前記離間位置に移動させる第2動作とのうちいずれかの動作を行うように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の箔転写装置。
【請求項9】
前記圧接離間機構は、
前記第1定着部材を前記離間位置と前記圧接位置との間で移動させるカムと、
正回転することで前記カムを一方向に回転させるモータと、を備え、
前記制御部は、前記モータを正回転させることで前記位置修正処理を実行することを特徴とする請求項3に記載の箔転写装置。
【請求項10】
前記第1定着部材を覆う保護位置と、前記保護位置から退避した退避位置との間で移動可能なシャッタであって、前記圧接離間機構の動きに連動するシャッタをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の箔転写装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シートに箔を転写する箔転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、箔転写装置として、箔フィルムおよびシートを加熱する加熱ローラと、加熱ローラとの間で箔フィルムおよびシートを挟む加圧ローラと、圧接離間機構と、制御部とを備えたものが知られている(特許文献1参照)。圧接離間機構は、加熱ローラが加圧ローラに圧接される圧接位置と、加熱ローラが加圧ローラから離間する離間位置との間で加熱ローラを移動させる。
【0003】
制御部は、箔転写を実行していないときには、加熱ローラを離間位置に位置させている。制御部は、箔転写指令を受けた後、シートが加熱ローラと加圧ローラの間に供給されるタイミングに合わせて、加熱ローラを離間位置から圧接位置に移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、圧接離間機構を備えた箔転写装置では、輸送時における振動などにより加熱ローラが初期位置である離間位置からずれてしまうことがある。このため、箔転写装置の電源がONされた場合に、加熱ローラを離間位置に位置させるための初期動作処理を行っている。初期動作処理では、制御部は、加熱ローラが離間位置に位置しているかを判定し、位置していないと判定した場合に、加熱ローラを離間位置に移動させる。
【0006】
また、圧接離間機構を備えた箔転写装置では、輸送時において加熱ローラが移動して他の部材と干渉するのを抑制すべく、箔転写装置内に梱包材を入れて加熱ローラの移動を抑えることもある。
【0007】
しかしながら、ユーザが箔転写装置内から梱包材を取り外すのを忘れて電源をONにしたときに、初期動作処理が実行されてしまうと、梱包材で移動が規制された加熱ローラが動こうとすることにより、箔転写装置内の部品に過大な負荷がかかるおそれがある。
【0008】
そこで、本開示は、初期動作処理の実行により箔転写装置内の部品に過大な負荷がかかるのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本開示の箔転写装置は、筐体と、カートリッジと、第1定着部材および第2定着部材と、圧接離間機構と、第1センサと、第2センサと、制御部と、を備える。
カートリッジは、筐体に着脱可能である。カートリッジは、箔フィルムを備える。箔フィルムは、箔を含む。
第1定着部材および第2定着部材は、シートと箔フィルムを挟む。
圧接離間機構は、第1定着部材を、圧接位置と、所定の離間位置との間で移動させる。
圧接位置は、第1定着部材が第2定着部材に圧接する位置である。離間位置は、第1定着部材が第2定着部材から離間した位置である。
第1センサは、カートリッジの装着を検知する。
第2センサは、第1定着部材が離間位置に位置することを検知する。
制御部は、初期動作処理を実行可能である。
初期動作処理は、第1定着部材を離間位置に位置させるための処理である。初期動作処理は、位置修正処理と、装着判定処理と、を有する。
位置修正処理は、第1定着部材を離間位置に向けて移動させ、第2センサでの検知結果に基づいて第1定着部材を離間位置に停止させる処理である。
装着判定処理は、第1センサでの検知結果に基づいてカートリッジが筐体に装着されているか否かを判定する処理である。
制御部は、装着判定処理においてカートリッジが筐体に装着されていないと判定した場合、位置修正処理を実行しない。
【0010】
カートリッジが筐体に装着されていない場合には、筐体内に梱包材などの異物が存在する可能性がある。制御部が、カートリッジが筐体に装着されていない場合に位置修正処理を実行しないことで、筐体内に梱包材などの異物がある場合に第1定着部材の移動を禁止することができるので、箔転写装置内の部品に過大な負荷がかかるのを抑制することができる。
【0011】
また、制御部は、カートリッジが筐体に装着され、かつ、第1定着部材が離間位置に位置していないと判定した場合には、位置修正処理を実行してもよい。
【0012】
また、制御部は、カートリッジが筐体に装着され、かつ、第1定着部材が離間位置に位置すると判定した場合には、位置修正処理を実行せずに、箔転写を実行可能であることをユーザに報知してもよい。
【0013】
また、制御部は、カートリッジが筐体に装着されていないと判定した場合には、位置修正処理を実行せずに、カートリッジが筐体に装着されていないことをユーザに報知してもよい。
【0014】
また、制御部は、箔転写装置の電源がOFFからONにされた場合に、初期動作処理を実行してもよい。
【0015】
また、筐体は、筐体本体と、カバーと、第3センサと、を備えていてもよい。
筐体本体は、開口を有する。開口は、カートリッジが通過可能な開口である。
カバーは、開口を開閉する。
第3センサは、カバーが閉まっていることを検知する。
制御部は、第3センサでの検知結果に基づいて、カバーが開いた状態から閉められたと判定した場合に、初期動作処理を実行する。
【0016】
また、制御部は、箔転写指令を受けたか否かを判定し、箔転写指令を受けたと判定した場合に、初期動作処理を実行してもよい。
【0017】
また、圧接離間機構は、位置修正処理が実行された場合、第1動作と第2動作とのうちいずれかの動作を行うように構成されていてもよい。
第1動作は、第1定着部材を現在位置から圧接位置を経由して離間位置に移動させる動作である。
第2動作は、第1定着部材を現在位置から圧接位置を経由せずに離間位置に移動させる動作である。
【0018】
また、圧接離間機構は、カムと、モータと、を備えていてもよい。
カムは、第1定着部材を離間位置と圧接位置との間で移動させる。
モータは、正回転することでカムを一方向に回転させる。
制御部は、モータを正回転させることで位置修正処理を実行する。
【0019】
また、箔転写装置は、シャッタをさらに備えていてもよい。
シャッタは、保護位置と、退避位置との間で移動可能である。保護位置は、シャッタが第1定着部材を覆う位置である。退避位置は、シャッタが保護位置から退避した位置である。シャッタは、圧接離間機構の動きに連動する。
【0020】
梱包材などの異物によって第1定着部材またはシャッタの移動が規制されている場合であっても、制御部が、カートリッジが筐体に装着されていない場合に位置修正処理を実行しないことで、箔転写装置内の部品に過大な負荷がかかるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、初期動作処理の実行により箔転写装置内の部品に過大な負荷がかかるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】箔転写装置のカバーを開けた状態を示す図である。
【
図3】加熱ローラが圧接位置に位置するときの加熱ユニットを示す斜視図である。
【
図4】加熱ローラが離間位置に位置するときの加熱ユニットを示す斜視図である。
【
図5】加熱ローラが圧接位置に位置するときの圧接離間機構、シャッタおよび連動機構を示す図である。
【
図6】加熱ローラが離間位置に位置するときの圧接離間機構、シャッタおよび連動機構を示す図である。
【
図7】カートリッジが装着されていないホルダが筐体本体に装着された状態を上から見た図であり、梱包材が取り付けられていない状態を示す図(a)と、梱包材が取り付けられた状態を示す図(b)である。
【
図8】加熱ベアリング周りの構造を拡大して示す図(a)と、加熱ベアリング上に梱包材の第1部分が配置された状態を示す図(b)である。
【
図9】梱包材の第1部分が正規位置に配置された状態を示す図(a)と、梱包材の第1部分が正規位置からずれて配置された状態を示す図(b)である。
【
図10】初期動作処理を示すフローチャートである。
【
図11】第1変形例に係る初期動作処理を示すフローチャートである。
【
図12】第2変形例に係る初期動作処理を示すフローチャートである。
【
図13】第3変形例に係る初期動作処理を示すフローチャートである。
【
図14】第4変形例に係る初期動作処理を示すフローチャートである。
【
図15】位置修正処理を実行すべきか否かを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本開示の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、方向は、
図1に示す方向で説明する。すなわち、
図1の右側を「前」とし、
図1の左側を「後」とし、
図1の紙面手前側を「左」とし、
図1の紙面奥側を「右」とする。また、
図1の上下を「上下」とする。
【0024】
図1に示すように、箔転写装置1は、箔を含む箔フィルムFにシートSを重ねて、シートSに箔を転写するための装置である。
図1に示すように、箔転写装置1は、例えばレーザプリンタ等の画像形成装置によってシートS上に形成されたトナー像の上にアルミニウム等の箔を転写するための装置である。箔転写装置1は、筐体2と、シートトレイ3と、シート搬送部10と、フィルム供給部30と、転写部50と、制御部100と、を備えている。
【0025】
筐体2は、樹脂などからなり、筐体本体21と、カバー22とを備えている。筐体本体21は、上部に開口21A(
図2参照)を有している。開口21Aは、後述するフィルムユニットFUが通過可能な開口である。開口21Aは、上向きとなっている。カバー22は、開口21Aを開閉するための部材である。カバー22の後端部は、筐体本体21に回動可能に支持されている。カバー22は、開口21Aを塞ぐ閉位置と、開口21Aを開放する開位置との間で移動可能である。
【0026】
シートトレイ3は、用紙、OHPフィルム等のシートSが載置されるトレイである。シートトレイ3は、筐体2の後部に設けられている。なお、シートSは、トナー像が形成された面を下向きにしてシートトレイ3上に載置される。
【0027】
シート搬送部10は、シート供給機構11と、シート排出機構12とを備えている。シート供給機構11は、シートトレイ3上のシートSを一枚ずつ転写部50に向けて搬送する機構である。シート供給機構11は、ピックアップローラ11A、リタードローラ11Bおよび上流側搬送ローラ11Cを備えている。
【0028】
ピックアップローラ11Aは、シートトレイ3上のシートSを転写部50に向けて供給するためのローラである。リタードローラ11Bは、ピックアップローラ11Aによって搬送されるシートSを1枚に分離するためのローラである。
【0029】
上流側搬送ローラ11Cは、ピックアップローラ11Aと転写部50との間に配置されている。上流側搬送ローラ11Cは、ピックアップローラ11Aで送り出されるシートSを転写部50に搬送する。
【0030】
シート排出機構12は、転写部50を通過したシートSを筐体2の外部に排出する機構である。シート排出機構12は、下流側搬送ローラ12Aと、排出ローラ12Bを備えている。
【0031】
下流側搬送ローラ12Aは、シートSの搬送方向において、転写部50の下流に位置している。なお、以下の説明では、シートSの搬送方向を、単に「搬送方向」とも称する。下流側搬送ローラ12Aは、転写部50から送り出されるシートSを排出ローラ12Bに向けて搬送する。
【0032】
排出ローラ12Bは、搬送方向において、下流側搬送ローラ12Aの下流に位置する。排出ローラ12Bは、下流側搬送ローラ12Aで送り出されるシートSを筐体2の外に排出する。
【0033】
フィルム供給部30は、シート供給機構11から搬送されたシートSに重ねるように箔フィルムFを供給する部分である。フィルム供給部30は、フィルムユニットFUと、図示せぬ駆動源を備えている。
【0034】
フィルムユニットFUは、
図2に示すように、筐体本体21に上から着脱可能となっている。フィルムユニットFUは、カートリッジCと、ホルダHとを備えている。
【0035】
カートリッジCは、ホルダHに着脱可能である。ホルダHは、筐体本体21に着脱可能である。カートリッジCは、ホルダHを介して筐体本体21に着脱可能である。
【0036】
カートリッジCは、供給リール31と、巻取リール35と、箔フィルムFとを備えている。箔フィルムFは、高分子材料からなるテープ状の透明な基材と、基材の表面に形成される箔を含む層とを有している。
【0037】
供給リール31は、樹脂などからなり、箔フィルムFが巻回される供給軸部31Aを有している。巻取リール35は、樹脂などからなり、箔フィルムFを巻き取るための巻取軸部35Aを有している。供給リール31は、図示せぬ供給ケースに収容されている。
【0038】
なお、
図1等においては、便宜上、供給リール31および巻取リール35の両方に箔フィルムFが最大に巻回された状態を図示することとする。実際には、例えばフィルムユニットFUが新品の状態においては、供給リール31に巻回されたロール状の箔フィルムFの径は最大となっており、巻取リール35には箔フィルムFが巻回されていない、もしくは、巻取リール35に巻回されたロール状の箔フィルムFの径は最小となっている。
【0039】
ホルダHは、ホルダフレームHFと、第1案内軸41と、第2案内軸42と、第3案内軸43とを備えている。
ホルダフレームHFは、第1案内軸41、第2案内軸42および第3案内軸43を支持する。供給リール31を収容する供給ケースと巻取リール35は、ホルダフレームHFに着脱可能である。
【0040】
第1案内軸41、第2案内軸42および第3案内軸43は、箔フィルムFの進行方向を変更するためのローラ状の軸である。第1案内軸41、第2案内軸42および第3案内軸43は、SUS(ステンレス鋼)などからなっている。
【0041】
第1案内軸41は、シートSの搬送方向において、転写部50の上流に位置する。第1案内軸41は、供給リール31から引き出される箔フィルムFの進行方向を、シートSの搬送方向と略平行となるように変更する。
【0042】
第2案内軸42は、シートSの搬送方向において、転写部50の下流に位置する。第2案内軸42は、転写部50を通過した箔フィルムFの進行方向をシートSの搬送方向とは異なる方向に変更することで、箔フィルムFをシートSから剥離させている。
【0043】
第3案内軸43は、第2案内軸42によって変更される箔フィルムFの進行方向を規定する部材である。詳しくは、第3案内軸43は、シートSから箔フィルムFを剥離させるときの箔フィルムFの角度(以下、「剥離角度」ともいう。)を規定している。ここで、剥離角度は、箔フィルムFのうち、第1案内軸41と第2案内軸42の間で張架される部分と、第2案内軸42と第3案内軸43の間で張架される部分とのなす角である。第3案内軸43は、第2案内軸42で案内された箔フィルムFの進行方向を変更して巻取リール35に案内している。
【0044】
フィルムユニットFUを箔転写装置1に装着した状態において、巻取リール35は、駆動源によって図示反時計回りに回転駆動される。巻取リール35が回転すると、供給リール31に巻回された箔フィルムFが引き出され、引き出された箔フィルムFが各案内軸41~43で案内されて巻取リール35に巻き取られていく。詳しくは、箔転写中において、後述する加圧ローラ51と加熱ローラ61によって箔フィルムFが送り出されることで、供給リール31から箔フィルムFが引き出される。そして、加圧ローラ51と加熱ローラ61から送り出された箔フィルムFが、巻取リール35に巻き取られていく。
【0045】
転写部50は、シートSと箔フィルムFを重ねた状態で加熱および加圧することで、シートSに形成されたトナー像の上に箔を転写するための部分である。転写部50は、第2定着部材の一例としての加圧ローラ51と、加熱ユニット6とを備えている。加熱ユニット6は、第1定着部材の一例としての加熱ローラ61と、圧接離間機構7とを備えている。転写部50は、加圧ローラ51と加熱ローラ61のニップ部において、シートSと箔フィルムFを重ねて加熱および加圧する。
【0046】
加圧ローラ51は、円筒状の芯金の周囲をシリコンゴムからなるゴム層で被覆したローラである。加圧ローラ51は、箔フィルムFの上側に配置され、シートSの裏面(トナー像が形成された面である表面と反対側の面)と接触可能となっている。
【0047】
加圧ローラ51は、両端部がカバー22に回転可能に支持されている。加圧ローラ51は、加熱ローラ61との間でシートSおよび箔フィルムFを挟み、駆動源によって回転駆動されることで加熱ローラ61を従動回転させる。
【0048】
加熱ローラ61は、円筒状に形成された金属管の内部にヒータを配置したローラであり、箔フィルムFおよびシートSを加熱している。加熱ローラ61は、箔フィルムFの下側に配置され、箔フィルムFと接触している。加熱ローラ61は、箔フィルムFおよびシートSを加熱する。以下の説明では、加熱ローラ61の回転軸に沿った方向を単に「軸方向」とも言う。
【0049】
圧接離間機構7は、加熱ローラ61を、圧接位置と、所定の離間位置との間で移動させる機構である。圧接位置は、加熱ローラ61が加圧ローラ51に圧接する位置である。離間位置は、加熱ローラ61が加圧ローラ51から離間した位置である。離間位置は、例えば加熱ローラ61が加圧ローラ51から最大に離間した位置など、所定の位置に設定される。
【0050】
制御部100は、CPU、RAM、ROMおよび入出力回路を備えており、ROM等に記憶されたプログラムやデータに基づいて各種演算処理を行うことによって、制御を実行する。制御部100は、箔転写指令を受けると、圧接離間機構7を作動させて、加熱ローラ61を圧接位置に移動させる。制御部100は、箔転写が終了すると、加熱ローラ61を離間位置に移動させる。
【0051】
このように構成された箔転写装置1では、シートSの表面を下向きにしてシートトレイ3に載置されたシートSが、シート供給機構11により転写部50に向けて搬送される。シートSは、転写部50の搬送方向における上流側で、供給リール31から供給された箔フィルムFと重ねられ、シートSのトナー像と箔フィルムFが接触した状態で転写部50に搬送される。
【0052】
転写部50においては、シートSと箔フィルムFが加圧ローラ51と加熱ローラ61の間のニップ部を通過する際に、加熱ローラ61と加圧ローラ51により加熱および加圧され、トナー像の上に箔が転写される。
【0053】
箔が転写された後、シートSと箔フィルムFは貼り付いた状態で第2案内軸42まで搬送される。シートSと箔フィルムFが第2案内軸42を通過すると、箔フィルムFの搬送方向がシートSの搬送方向と異なる方向に変わるため、シートSから箔フィルムFが剥離される。
【0054】
シートSから剥離された箔フィルムFは、巻取リール35に巻き取られていく。一方、箔フィルムFが剥離されたシートSは、シート排出機構12によって、箔が転写された表面を下に向けた状態で、筐体2の外部に排出される。
【0055】
箔転写装置1は、第1センサSAと、第2センサSBと、第3センサSCとをさらに備えている。第1センサSA、第2センサSBおよび第3センサSCは、制御部100に接続されている。
【0056】
第1センサSAは、カートリッジCの装着を検知するセンサである。第1センサSAは、例えば、第1レバー位置と第2レバー位置の間で回動可能なレバーと、レバーが第2レバー位置に位置することを検知する光センサとを備える。カートリッジCは、レバーと接触する突起を有する。突起は、例えば、カートリッジCの供給ケースに設けられる。カートリッジCがホルダHを介して筐体本体21に装着される過程において、突起は、レバーを第1レバー位置から第2レバー位置に押す。
【0057】
カートリッジCが筐体本体21に装着されていない場合、レバーは第1レバー位置に位置する。カートリッジCが筐体本体21に装着されている場合、レバーは第2レバー位置に位置する。レバーが第2位置に位置するとき、例えば、光センサの発光部からの光が受光部で受光され、光センサがONになる。
【0058】
本実施形態では、
図7(a)に示すように、箔転写装置1は、2つの第1センサSAを備えている。カートリッジCは、前述した突起を、仕様に応じて、少なくとも1つ有している。これにより、制御部100は、カートリッジCの仕様を判別可能となっている。
【0059】
具体的には、2つのうち一方の第1センサSAのみがONの場合、制御部100は、カートリッジCの仕様を第1仕様と判定する。2つのうち他方の第1センサSAのみがONの場合、制御部100は、カートリッジCの仕様を第2仕様と判定する。2つの第1センサSAの両方がONの場合、制御部100は、カートリッジCの仕様を第3仕様と判定する。また、制御部100は、2つのうち少なくとも1つの第1センサSAがONの場合、カートリッジCが装着されていると判定する。
【0060】
図1に戻って、第2センサSBは、加熱ローラ61が離間位置に位置することを検知する光センサである。第2センサSBの構造については、後で詳述する。
【0061】
第3センサSCは、カバー22が閉まっていることを検知するセンサである。第3センサSCは、例えば第1センサSAと略同様の構造とすることができる。
【0062】
図3、
図4に示すように、加熱ユニット6は、前述した加熱ローラ61および圧接離間機構7の他、固定フレーム60を有している。固定フレーム60は、加熱ユニット6の外枠を構成し、圧接離間機構7を支持する。固定フレーム60は、筐体本体21に固定されている。
【0063】
図5に示すように、圧接離間機構7は、可動フレーム70と、カム73と、モータ80とを備える。可動フレーム70は、加熱ローラ61を支持する部材である。可動フレーム70は、固定フレーム60の図示しないガイド部によってスライド可能にガイドされ、
図5に示す第1位置と、
図6に示す第2位置との間で移動可能である。
【0064】
第1位置は、加熱ローラ61が圧接位置に位置するときの可動フレーム70の位置である。第2位置は、加熱ローラ61が離間位置に位置するときの可動フレーム70の位置である。
【0065】
カム73は、加熱ローラ61を離間位置と圧接位置との間で移動させる部材である。カム73は、可動フレーム70を下から支えている。モータ80は、正回転することでカム73を一方向に回転させる。カム73は、軸方向に延びるシャフト73Sの両端部に設けられている。シャフト73Sは、モータ80によって回転する。カム73は、シャフト73Sの回転に伴って、可動フレーム70を押圧する押圧位置(
図5参照)と、可動フレーム70を押圧しないリリース位置(
図6参照)とに変位可能である。
【0066】
カム73がリリース位置から押圧位置に回転すると、可動フレーム70は、カム73に押圧され、第2位置から第1位置に移動する。これにより、加熱ローラ61は、離間位置から圧接位置に移動する。
【0067】
カム73が押圧位置からリリース位置に回転すると、可動フレーム70は、カム73に押圧されず、自重により第1位置から第2位置に移動する。これにより、加熱ローラ61は、圧接位置から離間位置に移動する。
【0068】
可動フレーム70は、上下に並んで位置する2つのフレームから構成されている。具体的に、可動フレーム70は、第1フレーム71と、第2フレーム72とを有している。また、圧接離間機構7は、連結シャフト74と、ローラ75と、バネ76とをさらに有している。
【0069】
連結シャフト74は、軸方向に延びるシャフトである。連結シャフト74は、第1フレーム71と第2フレーム72とを連結する。
【0070】
ローラ75は、連結シャフト74の軸方向の両端部にそれぞれ配置され、連結シャフト74に対して回転可能である。ローラ75は、カム73に押圧される部材であり、ローラ75がカム73に押圧されると、ローラ75とともに連結シャフト74が移動するようになっている。
【0071】
第1フレーム71は、第2フレーム72の上側に位置する。第1フレーム71は、支持部71Aと、接続部71Bと、バネ係合部71Cと、突起71Dと、を有している。
【0072】
支持部71Aは、加熱ローラ61を支持する部分である。
接続部71Bは、連結シャフト74を介して第1フレーム71を第2フレーム72に接続するための部分である。接続部71Bは、支持部71Aから下に向けて延びている。接続部71Bは、連結シャフト74が入り込む長穴71Hを有している。長穴71Hは、加熱ローラ61の移動方向に長い長穴である。このため、第1フレーム71は、連結シャフト74に対して、加熱ローラ61の移動方向にスライド移動可能である。以下、加熱ローラ61の移動方向を、単に「移動方向」ともいう。
【0073】
バネ係合部71Cは、支持部71Aから第2フレーム72に向けて突出しており、バネ76の一端と係合する部分である。突起71Dは、支持部71Aから軸方向の一方側に向けて突出しており、第1フレーム71が第1位置から第2位置に移動するときに、後述するリンク64を押圧する部分である。
【0074】
第2フレーム72は、接続部72Aと、バネ係合部72Bと、リブ72Cと、を有している。
【0075】
接続部72Aは、連結シャフト74と係合して、連結シャフト74を介して第1フレーム71と接続するための部分である。接続部72Aには、連結シャフト74が下側から入り込む切欠き72Kが形成されている。このため、第2フレーム72は、連結シャフト74に対して、移動方向にスライド移動可能である。
【0076】
バネ係合部72Bは、第1フレーム71に向けて突出しており、バネ76の他端と係合する部分である。リブ72Cは、下方に向かって延びている。リブ72Cは、後述する第2センサSBによって検知される部分である。
【0077】
バネ76は、第1フレーム71と、第2フレーム72の間に配置されている。本実施形態では、バネ76は、圧縮バネであり、複数配置されている。第1フレーム71および第2フレーム72は、連結シャフト74に対してそれぞれ移動方向にスライド可能であるとともに、バネ76によって、互いに離れる方向に付勢されている。
【0078】
図5に示すように、カム73がリリース位置から押圧位置に回転した場合、カム73がローラ75を上方に押圧する。すると、連結シャフト74が上方に押圧され、連結シャフト74が第2フレーム72の接続部72Aを押圧する。これにより、連結シャフト74は、第2フレーム72を上方に移動させる。第2フレーム72が上方へ移動すると、バネ76を介して第1フレーム71が上方に押圧される。これにより、第1フレーム71および第2フレーム72は、第2位置から第1位置に移動される。
【0079】
図6に示すように、カム73が押圧位置からリリース位置に回転する場合、第2フレーム72が、ローラ75および連結シャフト74を介してカム73で支持されながら、バネ76の付勢力によって第1フレーム71から離れるように下に移動する。下に移動する連結シャフト74が第1フレーム71の長穴71Hの下端に接触すると、第1フレーム71と第2フレーム72は、それ以上離れなくなる。その後、第1フレーム71と第2フレーム72からなる可動フレーム70は、ローラ75および連結シャフト74を介してカム73で支持されながら、自重により第2位置に移動する。
【0080】
加熱ユニット6は、前述した第2センサSBと、シャッタ62と、連動機構63とをさらに備えている。
【0081】
第2センサSBは、固定フレーム60に固定されている。第2センサSBは、リブ72Cを検知することで、加熱ローラ61が離間位置に位置することを検知する。
【0082】
具体的に、第2センサSBは、発光部SB1と、発光部SB1と向かい合う受光部SB2と、を有する。
【0083】
図5に示すように、加熱ローラ61が離間位置に位置する場合、リブ72Cは、発光部SB1と受光部SB2の間に位置する。この場合には、受光部SB2は、発光部SB1から発せられた光を検知しないので、第2センサSBはOFFとなる。第2センサSBがOFFの場合、制御部100は、加熱ローラ61が離間位置に位置すると判定する。
【0084】
加熱ローラ61が離間位置に位置しない場合、リブ72Cは、発光部SB1と受光部SB2の間に位置しない。この場合には、受光部SB2は、発光部SB1から発せられた光を検知するので、第2センサSBはONとなる。第2センサSBがONの場合、制御部100は、加熱ローラ61が離間位置に位置しないと判定する。
【0085】
シャッタ62は、加熱ユニット6の上端部に設けられ、保護位置と退避位置との間でスライド移動可能である。保護位置は、シャッタ62が加熱ローラ61を覆う位置である。退避位置は、シャッタ62が保護位置から退避した位置である。
【0086】
シャッタ62の移動時の姿勢は、固定フレーム60によってガイドされる。シャッタ62は、軸方向に延びるシャフト62Sを有する。シャフト62Sは、連動機構63と係合している。これにより、シャッタ62は、圧接離間機構7の動きに連動するようになっている。
【0087】
連動機構63は、可動フレーム70の移動に連動してシャッタ62を移動させる機構である。具体的に、連動機構63は、可動フレーム70が第1位置から第2位置に移動する場合に、シャッタ62を退避位置から保護位置に移動させる。また、連動機構63は、可動フレーム70が第2位置から第1位置に移動する場合に、シャッタ62を保護位置から退避位置に移動させる。
【0088】
連動機構63は、リンク64と、シャッタガイド65と、を有する。
リンク64は、固定フレーム60に揺動可能に支持されている。リンク64は、
図5に示す第3位置と、
図6に示す第4位置とに揺動可能である。リンク64は、揺動軸64Aと、アーム64Bと、長穴64Hとを有している。リンク64は、図示せぬトーションバネによって、常に第4位置に向けて、つまり、シャッタ62が閉まる方向に付勢されている。
【0089】
揺動軸64Aは、固定フレーム60に回動可能に支持されている。アーム64Bは、第1フレーム71の突起71Dと接触する部分である。長穴64Hは、シャッタ62のシャフト62Sが入り込む。
【0090】
シャッタガイド65は、固定フレーム60に固定されており、長穴65Hを有している。長穴65Hは、シャッタ62のシャフト62Sの移動をガイドする。
【0091】
図6、
図5の順に示すように、可動フレーム70が第2位置から第1位置へ移動すると、突起71Dがアーム64Bを押し上げて、リンク64がトーションバネの付勢力に抗して第4位置から第3位置に揺動する。これにより、リンク64がシャフト62Sを退避位置に向けて押すので、シャッタ62が保護位置から退避位置に移動する。
【0092】
図5、
図6の順に示すように、可動フレーム70が第1位置から第2位置へ移動すると、突起71Dが下に移動することで、リンク64がトーションバネの付勢力によって第3位置から第4位置に揺動する。これにより、リンク64がシャフト62Sを保護位置に向けて押すので、シャッタ62が退避位置から保護位置に移動する。
【0093】
図7(a)に示すように、箔転写装置1の製品出荷時においては、筐体本体21にホルダHのみが装着されており、カートリッジCは装着されていない。このような状態では、カム73の上に載せられているだけの可動フレーム70は上に移動可能であるため、箔転写装置1の姿勢が上下逆さまにされた場合、可動フレーム70がカバー22側に移動して加熱ローラ61などがカバー22側の部品と干渉するおそれがある。
【0094】
この問題に対処すべく、
図7(b)に示すように、箔転写装置1の製品出荷時においては、梱包材90が筐体本体21内にセットされている。梱包材90は、例えば発泡スチロールなどからなる。梱包材90は、2つの第1部分91と、2つの第1部分91を連結する第2部分92とを有する。
【0095】
図9(a)に示すように、第1部分91は、加熱ベアリング110と、加圧シャッタ120との間で挟まれている。加熱ベアリング110は、加熱ローラ61を回転可能に支持する部材である。加熱ベアリング110は、加熱ローラ61の一端と他端に1つずつ設けられている。加熱ベアリング110は、可動フレーム70の第1フレーム71に固定されている。
【0096】
加圧シャッタ120は、加圧ローラ51を覆う位置と覆わない位置との間で回動可能な部材である。加圧シャッタ120は、カバー22に設けられている。
【0097】
箔転写装置1の製品出荷時において、シャッタ62は保護位置に位置する。
図8(a)に示すように、シャッタ62が保護位置に位置するとき、シャッタ62のシャフト62Sは、移動方向から見て、加熱ベアリング110と重なる。
図8(b)および
図9(a)に示すように、梱包材90が正規の位置にセットされた場合、第1部分91は、シャフト62Sに対して、シャッタ62が閉まる方向における下流に位置する。
【0098】
図7(b)に示すように、第2部分92は、ホルダHの一部である第1案内軸41の上に位置する。これにより、ホルダHを筐体本体21から外すと、ホルダHと一緒に梱包材90を筐体本体21から外すことが可能となっている。
【0099】
また、第2部分92は、供給リール31が配置される空間に位置する部分を有する。これにより、梱包材90が取り付けられたままのホルダHに対して、カートリッジCが誤装着されるのを抑制することが可能となっている。
【0100】
制御部100は、初期動作処理を実行可能である。初期動作処理は、加熱ローラ61を離間位置に位置させるための処理である。なお、制御部100は、箔転写指令を受けた後、所定のタイミングで加熱ローラ61の離間位置から圧接位置への移動を開始することで、シートSが加熱ローラ61と加圧ローラ51の間に到達する直前などの適切なタイミングで加熱ローラ61を加圧ローラ51に圧接させる。そのため、箔転写指令を受けたときの加熱ローラ61の位置が、初期位置である離間位置に位置しない場合には、適切なタイミングで加熱ローラ61の圧接を行えなくなる。このような問題を解消すべく、制御部100は、初期動作処理を実行して、加熱ローラ61を離間位置に移動させる。
【0101】
ここで、従来の初期動作処理では、加熱ローラ61が離間位置に位置するかを判定し、離間位置に位置しないと判定した場合に、加熱ローラ61を離間位置に移動させている。しかしながら、
図9(b)に示すように、筐体2内の梱包材90が正規でない位置に位置する場合に、従来の初期動作処理を実行すると以下の問題が生じる。
【0102】
図9(b)に示す位置に梱包材90が位置する場合、梱包材90がシャッタ62のシャフト62Sに圧接される。このような状態で、従来の初期動作処理によって加熱ローラ61を移動させようとしても、加熱ローラ61の動きに連動するシャッタ62のシャフト62Sの動きが梱包材90で止められるので、例えばリンク64のアーム64Bなどに過大な負荷がかかる場合がある。
【0103】
ここで、
図6に示すように、圧接離間機構7は、従来の初期動作処理において加熱ローラ61を移動させる場合、第1動作と第2動作とのうちいずれかの動作を行うように構成されている。第1動作は、加熱ローラ61を現在位置から圧接位置を経由して離間位置に移動させる動作である。第2動作は、加熱ローラ61を現在位置から圧接位置を経由せずに離間位置に移動させる動作である。
【0104】
例えば、モータ80が正回転するときにカム73が図示時計回りに回転する構成において、カム73が離間位置から図示時計回りに少し回動した位置にずれている場合にモータ80を駆動させると、カム73が押圧位置を経由してリリース位置に向かうように回動する。この場合、圧接離間機構7が第1動作を行うことになる。
【0105】
また、モータ80が正回転するときにカム73が図示時計回りに回転する構成において、カム73が離間位置から図示反時計回りに少し回動した位置にずれている場合にモータ80を駆動させると、カム73が押圧位置を経由せずにリリース位置に向かうように回動する。この場合、圧接離間機構7が第2動作を行うことになる。
【0106】
圧接離間機構7が第1動作を行う場合には、前述したような、リンク64のアーム64Bなどに過大な負荷がかかるといった問題が生じるおそれがある。
【0107】
このような問題を解消すべく、本実施形態に係る制御部100は、筐体2内に梱包材90が存在する可能性がある場合には、初期動作処理における加熱ローラ61の移動を実行しないように構成されている。具体的には、本実施形態に係る初期動作処理は、離間位置判定処理と、装着判定処理と、位置修正処理とを有する。
【0108】
離間位置判定処理は、第2センサSBでの検知結果に基づいて加熱ローラ61が離間位置に位置するか否かを判定する処理である。本実施形態では、制御部100は、第2センサSBがOFFの場合に、加熱ローラ61が離間位置に位置すると判定する。
【0109】
装着判定処理は、第1センサSAでの検知結果に基づいてカートリッジCが筐体2に装着されているか否かを判定する処理である。ここで、カートリッジCが筐体2に装着されていない場合には、箔転写装置1が製品出荷時の状態である可能性があり、
図8に示すように筐体2内に梱包材90が存在する可能性がある。制御部100は、装着判定処理において、カートリッジCの装着の有無を判定することで、実質的に梱包材90の有無を判定している。
【0110】
位置修正処理は、圧接離間機構7を作動させることで加熱ローラ61を離間位置に向けて移動させ、第2センサSBでの検知結果に基づいて加熱ローラ61を離間位置に停止させる処理である。制御部100は、位置修正処理の開始条件が揃ったときに圧接離間機構7の作動を開始し、その後、第2センサSBがONからOFFに切り替わったときに圧接離間機構7を停止することで、加熱ローラ61を現在位置から離間位置に移動させる。なお、圧接離間機構7の作動・停止は、モータ80への電流の供給・停止により行ってもよいし、モータ80からカム73への駆動力の伝達状態を切り替えるクラッチを備える場合には、クラッチのON・OFFを制御することで行ってもよい。制御部100は、モータ80を正回転させることで位置修正処理を実行する。
【0111】
次に、制御部100の動作について詳細に説明する。
制御部100は、箔転写装置1の電源がOFFからONにされた場合に、
図10に示す初期動作処理を実行する。また、制御部100は、第3センサSCでの検知結果に基づいて、カバー22が開いた状態から閉められたと判定した場合にも、
図10に示す初期動作処理を実行する。
【0112】
初期動作処理において、制御部100は、まず、装着判定処理を実行して、カートリッジCが筐体2に装着されているか否かを判定する(S1)。ステップS1においてカートリッジCが筐体2に装着されていると判定した場合には(Yes)、制御部100は、離間位置判定処理を実行して、加熱ローラ61が離間位置に位置するか否かを判定する(S2)。
【0113】
ステップS2において加熱ローラ61が離間位置に位置していないと判定した場合には(No)、制御部100は、位置修正処理を実行して、加熱ローラ61を離間位置に移動させる(S3)。つまり、制御部100は、カートリッジCが筐体2に装着され、かつ、加熱ローラ61が離間位置に位置していないと判定した場合には、位置修正処理を実行する。
【0114】
ステップS3の後、制御部100は、箔転写装置1がREADY状態であることを箔転写装置1の操作パネルなどに表示することで、箔転写を実行可能であることをユーザに報知して(S4)、本処理を終了する。ステップS2において加熱ローラ61が離間位置に位置すると判定した場合には(Yes)、制御部100は、ステップS3の処理を飛ばして、ステップS4の処理を実行する。つまり、制御部100は、カートリッジCが筐体2に装着され、かつ、加熱ローラ61が離間位置に位置すると判定した場合には、位置修正処理を実行せずに、箔転写を実行可能であることをユーザに報知する。
【0115】
制御部100は、ステップS1の装着判定処理においてカートリッジCが筐体2に装着されていないと判定した場合には(No)、位置修正処理を実行せずに、カートリッジCが筐体2に装着されていないことをユーザに報知して(S5)、本処理を終了する。なお、ユーザへの報知は、音声または操作パネルでの文字表示などで行えばよい。
【0116】
次に、制御部100の動作の一例について説明する。
図7(b)に示すような梱包材90が入った状態の箔転写装置1の電源をユーザがONにすると、制御部100は、初期動作処理のステップS1でNoと判定し、位置修正処理(S3)を実行しない。そのため、箔転写装置1内に梱包材90がある場合には、制御部100によって加熱ローラ61が動かされないので、リンク64のアーム64Bなどに過大な負荷がかかるのを抑制できる。
【0117】
また、制御部100は、ステップS1でNoと判定すると、カートリッジCが装着されていないことをユーザに報知する(S5)。カートリッジCの非装着が報知されたユーザは、カバー22を開けて、ホルダHを筐体2から取り外す。この際、梱包材90はホルダHとともに筐体2から外される。
【0118】
梱包材90が付いたままのホルダHに、ユーザがカートリッジCを装着しようとすると、梱包材90の第2部分92によってカートリッジCの供給ケースのホルダHへの装着が邪魔されるので、梱包材90のホルダHからの取り外し忘れを抑制できる。ユーザは、梱包材90をホルダHから外した後、ホルダHにカートリッジCを装着する。
【0119】
その後、ユーザは、カートリッジC付きのホルダHを筐体本体21に装着し、カバー22を示す。これにより、制御部100は、再び初期動作処理を実行する。制御部100は、初期動作処理のステップS1でYesと判定し、その後は、加熱ローラ61の位置に応じてステップS3,S4の処理を適宜実行する。
【0120】
以上、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
制御部100が、カートリッジCが筐体2に装着されていない場合に位置修正処理を実行しないことで、筐体2内に梱包材90がある場合に加熱ローラ61の移動を禁止することができるので、箔転写装置1内の部品に過大な負荷がかかるのを抑制することができる。
【0121】
なお、本開示は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。以下の説明においては、前記実施形態と略同様の構造や処理には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0122】
以下に、初期動作処理の変形例について説明する。
図11に示すように、第1変形例に係る初期動作処理は、
図10の初期動作処理を一部変更したものである。具体的には、第1変形例に係る初期動作処理は、前述したステップS1~S5の処理を有する他、
図10の初期動作処理の開始条件の一つであった「カバー22が開いた状態から閉められた」という条件の判定を、初期動作処理内の新たな処理(S11)として追加したものである。
【0123】
詳しくは、第1変形例において、制御部100は、箔転写装置1の電源がOFFからONにされた場合のみに、初期動作処理を実行する。制御部100は、ステップS5の後、カバー22が開いた状態から閉められたか否かを判定する(S11)。
【0124】
制御部100は、カバー22が閉められたと判定するまで、ステップS11の処理を繰り返す(S11,No)。ステップS11においてカバー22が閉められたと判定した場合には(Yes)、制御部100は、ステップS1の処理に戻る。
【0125】
第1変形例では、箔転写装置1の電源がOFFからONにされた場合のみに初期動作処理が実行されるので、READY状態になった後であってもカバー22が開閉されるたびに初期動作処理を実行する前記実施形態よりも無駄な処理を省くことができる。
【0126】
図12に示すように、第2変形例に係る初期動作処理は、
図10の初期動作処理を一部変更したものである。具体的には、第2変形例に係る初期動作処理は、前述したステップS1~S3,S5の処理を有する他、初期動作処理の開始条件が前記実施形態とは異なるとともに、前述したステップS4の代わりに新たなステップS21の処理が設けられている。
【0127】
第2変形例では、制御部100は、例えば箔転写を実行するためのスタートボタンがONになったか否かを判定することで、箔転写指令を受けたか否かを判定する。制御部100は、箔転写指令を受けたと判定した場合に、初期動作処理を実行する。
【0128】
ステップS3の後、または、ステップS2でYesと判定した場合、制御部100は、箔転写処理を実行する(S21)。箔転写処理では、例えば、制御部100は、加熱ローラ61のヒータをONにして加熱ローラ61の温度を箔転写に適した温度まで上げた後、シート搬送部10を作動させてシートSの供給を開始する。制御部100は、シートSの供給を開始してから所定時間後に、圧接離間機構7を作動させて、加熱ローラ61を離間位置から圧接位置に移動させる。
【0129】
第2変形例では、制御部100が箔転写指令を受けた場合に初期動作処理を実行するので、箔転写指令を受ける前の箔転写装置1に外力が働いて加熱ローラ61が離間位置からずれたとしても、箔転写処理の実行開始時において加熱ローラ61を離間位置に確実に位置させることができる。
【0130】
図13に示すように、第3変形例に係る初期動作処理は、第2変形例に係る初期動作処理を一部変更したものである。具体的には、第3変形例に係る初期動作処理は、前述したステップS1~S3,S5,S21の処理を有する他、第2変形例に係る初期動作処理の開始条件であった「スタートボタンがONになった」という条件の判定を、初期動作処理内の新たな処理(S31)として追加したものである。
【0131】
第3変形例では、制御部100は、常時初期動作処理を実行する。なお、第3変形例において、箔転写装置1の電源がONになったことを、初期動作処理の開始条件としてもよい。
【0132】
制御部100は、ステップS1でYesと判定した場合、スタートボタンがONになったか否かを判定する(S31)。制御部100は、スタートボタンがONになるまで、ステップS31の処理を繰り返す(S31,No)。ステップS31においてスタートボタンがONになったと判定した場合には(Yes)、制御部100は、ステップS2の処理を実行する。
【0133】
図14に示すように、第4変形例に係る初期動作処理は、第2変形例に係る初期動作処理を一部変更したものである。具体的には、第4変形例に係る初期動作処理は、前述したステップS1~S3,S5,S21の処理を有し、ステップS1~S3の処理の順序を変更している。さらに、第4変形例に係る初期動作処理は、新たなステップS41の処理を有する。
【0134】
第4変形例では、制御部100は、初期動作処理を開始すると、まず、離間位置判定処理を実行する(S2)。ステップS2において加熱ローラ61が離間位置に位置していないと判定した場合には(No)、制御部100は、装着判定処理を実行する(S1)。
【0135】
ステップS1においてカートリッジCが装着されていると判定した場合には(Yes)、制御部100は、位置修正処理を実行する(S3)。
【0136】
ステップS3の後、または、ステップS2でYesと判定した場合、制御部100は、カートリッジCが装着されているか否かを判定する(S41)。ここで、ステップS41の処理は、箔転写を実行するための実際にカートリッジCが筐体2に装着されているかを判定する処理であり、ステップS1のように実質梱包材90の有無を判定する処理とは意味合いが異なる。
【0137】
ステップS41においてカートリッジCが装着されていると判定した場合には(Yes)、制御部100は、箔転写処理を実行する(S51)。ステップS1またはステップS41でNoと判定した場合、制御部100は、カートリッジCが装着されていないことをユーザに報知する(S5)。
【0138】
初期動作処理は、前記実施形態や第1変形例から第4変形例に限らず、適宜変更可能である。なお、初期動作処理は、少なくとも位置修正処理と装着判定処理を有していればよく、離間位置判定処理は必ずしも必要ではない。その理由について、
図15に示す表を参照して説明する。
【0139】
図15に示す表は、条件に応じて位置修正処理を実行すべきか否かを示す表である。表に示すように、装着判定処理でNoと判定する場合、つまり、カートリッジCが装着されていないという条件が満たされている場合には、加熱ローラ61が離間位置に位置するか否かに関わらず、制御部100は、位置修正処理を実行しない。また、装着判定処理でYes、離間位置判定処理でNoと判定する場合、つまり、カートリッジCが装着されており、かつ、加熱ローラ61が離間位置に位置しないという条件が満たされている場合には、制御部100は、位置修正処理を必ず実行する。
【0140】
また、装着判定処理でYes、離間位置判定処理でYesと判定する場合、つまり、カートリッジCが装着されており、かつ、加熱ローラ61が離間位置に位置するという条件が満たされている場合には、制御部100は、位置修正処理を実行してもよいし、実行しなくてもよい。加熱ローラ61が離間位置に位置する場合に位置修正処理を実行することは、既に離間位置に位置している加熱ローラ61を移動させて再度離間位置に移動させるといった無駄な処理にはなるが、装着判定処理でYesと判定されていることにより梱包材90が筐体2内にない状況であるので、加熱ローラ61を無駄に動かしても問題はない。したがって、初期動作処理においては、離間位置判定処理は必ずしも必要ではない。
【0141】
第1定着部材は、加熱ローラに限らない。第1定着部材は、例えば、例えば、無端状のベルトと、ベルトの内側に位置するニップ板と、ベルトを加熱するヒータとを備える構成であってもよい。
第2定着部材は、加圧ローラに限らない。第2定着部材は、例えば、無端状のベルトと、ベルトの内側に位置するゴムパッドとを備える構成であってもよい。
【0142】
第2定着部材は、加熱ローラなどの、シートおよび箔フィルムを加熱する加熱部材であってもよい。この場合、第1定着部材は、加圧ローラなどの、シートおよび箔フィルムを加圧する加圧部材であってもよい。
【0143】
箔転写部は、サーマルヘッドを備える構成であってもよい。
【0144】
第1センサ、第2センサおよび第3センサは、光センサに限らず、例えば、機械的なスイッチであってもよい。
【0145】
圧接離間機構は、カムを備える機構に限らない。圧接離間機構は、例えば、ギヤとラックギヤを備えた機構や、リンクを備えた機構や、ピストンを進退させるシリンダを備えた機構などであってもよい。
【0146】
カートリッジは、筐体本体に直接着脱可能であってもよい。
【0147】
第2変形例、第3変形例および第4変形例の場合には、第3センサはなくてもよい。
【0148】
制御部は、加熱ローラを圧接位置に向けて移動する場合にはカムを一方向に回転させ、加熱ローラを離間位置に向けて移動する場合にはカムを他方向に回転させるように構成されていてもよい。この構成では、位置修正処理が実行された場合、圧接離間機構は、第2動作のみを行う。
【0149】
シャッタは、なくてもよい。この場合であっても、筐体内のカートリッジが設置されるスペースに、梱包材などの異物が加熱ローラの移動を阻害するように存在するときには、本開示の制御部による効果を発揮できる。
【0150】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0151】
1 箔転写装置
2 筐体
7 圧接離間機構
51 加圧ローラ
61 加熱ローラ
100 制御部
C カートリッジ
F 箔フィルム
S シート
SA 第1センサ
SB 第2センサ