(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169844
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】おむつ、およびおむつの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 13/514 20060101AFI20241129BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
A61F13/514 221
A61F13/514 100
A61F13/15 210
A61F13/15 354
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086642
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森岡 英樹
(72)【発明者】
【氏名】出原 優一
(72)【発明者】
【氏名】梶原 健太郎
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA08
3B200BA11
3B200BB01
3B200BB03
3B200CA06
3B200CA09
3B200DD01
3B200DD02
3B200EA08
3B200EA22
3B200EA27
(57)【要約】
【課題】 表面タッチとフィット性に優れ、かつ、動作追従性に優れるおむつを提供すること。
【解決手段】 トップシート、吸収体、およびバックシートを有してなるおむつであり、前記バックシートが胴周り部および脚周り部のパーツから構成されてなり、前記胴周り部および前記脚周り部は、その少なくとも一方が
(1)面積率で30%以上が、捲縮繊維から構成されエラストマーを有する不織布から構成されていること、および
(2)無荷重時の厚みに対して、30%伸長時の厚み変化率が20.0%以下であること
を満足し、一方のパーツをパーツAと呼び、他方をパーツBと呼ぶとき、前記パーツAを前記おむつにおける上下方向へ50%伸長したときの伸長荷重が、前記パーツBを前記おむつにおける上下方向へ50%伸長したときの伸長荷重の0.90倍以下である、おむつ。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップシート、吸収体、およびバックシートを有してなるおむつであり、前記バックシートが胴周り部および脚周り部から構成されてなり、前記胴周り部および前記脚周り部は、その少なくとも一方が
(1)面積率で30%以上が、捲縮繊維から構成されエラストマーを有する不織布から構成されていること、および
(2)無荷重時の厚みに対して、30%伸長時の厚み変化率が20.0%以下であること
を満足し、前記胴周り部および前記脚周り部のうち、一方のパーツのみが上記(1)および(2)を満足する場合には当該パーツをパーツA、他方をパーツBと呼び、また前記胴周り部および前記脚周り部のいずれもが上記(1)および(2)を満足する場合にはおむつにおける上下方向へ50%伸長したときの伸長荷重が低い方のパーツをパーツA、他方をパーツBと呼ぶとき、前記パーツAを前記おむつにおける上下方向へ50%伸長したときの伸長荷重が、前記パーツBを前記おむつにおける上下方向へ50%伸長したときの伸長荷重の0.90倍以下である、おむつ。
【請求項2】
前記パーツBが、
面積率で30%以上が捲縮繊維から構成されエラストマーを有る不織布から構成されていること、および
無荷重時の厚みに対して、30%伸長時の厚み変化率が20.0%以下であること
を満足する、請求項1に記載のおむつ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のおむつを製造する方法であって、
前記おむつの製造方法は、
バックシートを製造する、バックシート製造工程と、
前記バックシートに吸収体およびトップシートを積層させる、積層工程と、
を含み、
前記バックシート製造工程は、
捲縮発現型複合繊維を捕集ベルト上に捕集してスパンボンド不織布層を形成し、その上に少なくとも1層のエラストマー層を積層させた後に一体化させて積層不織布を得る、製布工程と、
前記製布工程で得た積層不織布の少なくとも一部を、ギア付きのローラーで少なくとも1方向に延伸加工する、延伸工程と、
延伸加工した前記積層不織布を前記パーツAのシートとして、前記パーツAのシートの一部と前記パーツBのシートの一部とが重なるようにして貼り合わせる、貼り合わせ工程と、
を含む、
おむつの製造方法。
【請求項4】
前記延伸工程における延伸方向が前記おむつの左右方向となるように、延伸加工した前記積層不織布を前記胴周り部のシートとする、請求項3に記載のおむつの製造方法。
【請求項5】
前記延伸工程における延伸方向が前記おむつの上下方向となるように、延伸加工した前記積層不織布を前記脚周り部のシートとする、請求項3に記載のおむつの製造方法。
【請求項6】
前記延伸工程における延伸方向が前記おむつの左右方向となるように、延伸加工した前記積層不織布を前記胴周り部のシートとする、請求項5に記載のおむつの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おむつ、およびおむつの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつにおいて、胴周り部および脚周り部は伸縮できるような構造を有しており、排泄物のもれやおむつのずれを防止する役割を担っている。一般的にこれらの伸縮部位には、引き延ばした弾性糸を不織布素材に貼り付け、弾性糸の長さが戻ることで不織布素材がひだ状のいわゆるギャザーを形成した素材が用いられてきた。しかしながら、排泄物のもれ防止のために着用時にギャザー状の不織布を押しつぶす必要があるため、弾性糸で体を強く締め付けざるを得ないことに加え、ギャザーによる高い厚みのために柔軟性が低いものであった。
【0003】
近年、紙おむつ等の衛生材料においては着用快適性向上への要求が高まっており、上記課題を鑑み、伸縮部位の素材改良が盛んに検討されている。伸縮部位には、伸縮性および好適な通気性といった基本的な特性に加え、凹凸のある体の形状に素材がフィットできるように、厚みが薄く、柔軟性に優れる素材が求められている。また、触感も快適性に影響するため、伸縮部位の肌に触れる素材には、表面タッチに優れることが求められる。
【0004】
さらに、着用者の動作時におむつが突っ張らないことも重要な設計の一つである。特にかがむ・立ち上がるといった動作では、着用者の皮膚は体の前後に大きく変形することが知られていることから、おむつの各部位で体の前後方向に対する伸長特性を制御することで着用快適性を好適にすることができる。
【0005】
これに対し特許文献1には、脚周りおよび胴周りにおいて弾性部材と伸縮性アウターシートを、弾性部材との伸長を解除した後のそれらの脚周り方向における収縮寸法が略同一になるように調整して貼り合わせることで、伸長可能ながらも、厚み方向へ起伏することなく実質的に平坦である素材とした、パンツ型の使い捨て着用物品が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術では、脚周りおよび胴周りの一部がギャザーなしで伸縮可能であるため、該当箇所のフィット性には優れるものの、弾性部材がない領域では伸長応力が高いため、体の凹凸にフィットすることが難しい。さらに、かがむ・立ち上がるなどの大きな動作をした際には動作追従性に劣り、素材が突っ張る等、着用快適性を損ねるものであった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、おむつにおけるバックシートが良好な伸縮性と柔軟性を有し、表面のタッチに優れかつ、動作追従性を有している、着用快適性に優れるおむつおよび、その製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討を重ねた。その結果、おむつのバックシートにおいて、特定の構造からなる薄地で伸縮可能な不織布を用い、さらに、バックシートの部位ごとに伸縮特性が異なる設計とすることで、フィット性、表面のタッチと動作追従性を両立でき、着用快適性に優れるおむつが得られるという知見を得た。本発明は、これらの知見に基づいて完成に至ったものである。
【0010】
本発明およびその好ましい態様は、以下の構成からなる。
[1] トップシート、吸収体、およびバックシートを有してなるおむつであり、前記バックシートが胴周り部および脚周り部のパーツから構成されてなり、前記胴周り部および前記脚周り部は、その少なくとも一方が
(1)面積率で30%以上が、捲縮繊維から構成されエラストマーを有する不織布から構成されていること、および
(2)無荷重時の厚みに対して、30%伸長時の厚み変化率が20.0%以下であること
を満足し、前記胴周り部および前記脚周り部のうち一方のパーツのみが上記(1)および(2)を満足する場合には当該パーツをパーツA、他方をパーツBと呼び、また前記胴周り部および前記脚周り部のいずれもが上記(1)および(2)を満足する場合にはおむつにおける上下方向へ50%伸長したときの伸長荷重が低い方のパーツをパーツA、他方をパーツBと呼ぶとき、前記パーツAを前記おむつにおける上下方向へ50%伸長したときの伸長荷重が、前記パーツBを前記おむつにおける上下方向へ50%伸長したときの伸長荷重の0.90倍以下である、おむつ。
[2] 前記パーツBが、
面積率で30%以上が捲縮繊維から構成されエラストマーを有する不織布から構成されていること、および
無荷重時の厚みに対して、30%伸長時の厚み変化率が20.0%以下であること
を満足する、上記[1]に記載のおむつ。
[3] 上記[1]または[2]に記載のおむつを製造する方法であって、
前記おむつの製造方法は、
バックシートを製造する、バックシート製造工程と、
前記バックシートに吸収体およびトップシートを積層させる、積層工程と、
を含み、
前記バックシート製造工程は、
捲縮発現型複合繊維を捕集ベルト上に捕集してスパンボンド不織布層を形成し、その上に少なくとも1層のエラストマー層を積層させた後に一体化させて積層不織布を得る、製布工程と、
前記製布工程で得た積層不織布の少なくとも一部を、ギア付きのローラーで少なくとも1方向に延伸加工する、延伸工程と、
延伸加工した前記積層不織布を前記パーツAのシートとして、前記パーツAのシートの一部と前記パーツBのシートの一部とが重なるようにして貼り合わせる、貼り合わせ工程と、
を含む、
おむつの製造方法。
[4] 前記延伸工程における延伸方向が前記おむつの左右方向となるように、延伸加工した前記積層不織布を前記胴周り部のシートとする、上記[3]に記載のおむつの製造方法。
[5] 前記延伸工程における延伸方向が前記おむつの上下方向となるように、延伸加工した前記積層不織布を前記脚周り部のシートとする、上記[3]に記載のおむつの製造方法。
[6] 前記延伸工程における延伸方向が前記おむつの上下方向となるように、延伸加工した前記積層不織布を前記脚周り部のシートとする、上記[5]に記載のおむつの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、表面のタッチに優れ、フィット性と動作追従性に優れるおむつを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明のおむつの一例であるパンツタイプのおむつの斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の股下部(X-X’部分)における断面図である。
【
図3】
図3は、本発明のおむつのバックシートを展開した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のおむつは、トップシート、吸収体、およびバックシートを有してなる。以下に、その構成要素について詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する態様のみに限定されるものではない。
【0014】
[トップシート]
前記トップシートは、通液性と表面タッチの観点から、不織布であることが好ましい。不織布の形態としては、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、短繊維不織布などの公知の不織布から選択できる。中でも通液性と柔軟性の観点からスパンボンド不織布であることが好ましい。また、クッションの観点からは、短繊維不織布とすることが好ましい。
【0015】
[吸収体]
前記吸収体は、吸収速度と吸収容量の観点から、パルプおよび/または吸収性ポリマーがシートに包まれている構造を有することが好ましい。当該シートは、親水化された不織布または紙であることが好ましい。
【0016】
[バックシート]
前記バックシートは、胴周り部および脚周り部のパーツから構成されてなる。
図1において、前記脚周り部とは、脚周りの開口部1-2Aおよび1-2Bの上端の点をそれぞれY、Y’とし、バックシートを、着用者の前側でY-Y’間を結んだ線分、および着用者の後ろ側でY-Y’間を結んだ線分のそれぞれで2つ以上のパーツに区切ったとき、前記2本の線分Y-Y’とバックシートの輪郭に囲まれ、線分X-X’を含むパーツのことである。
【0017】
また、前記胴周り部とは、前記バックシートの内、前記脚周り部以外の部位全体のことである。
【0018】
さらに前記胴周り部は、着用者の腹側のパーツである腹側胴周り部、および背中側のパーツである背側胴周り部に分けられる。
【0019】
前記胴周り部および前記脚周り部は、その少なくとも一方が
(1)面積率で30%以上が捲縮繊維から構成されエラストマーを有する不織布から構成されていること、および
(2)無荷重時の厚みに対して、30%伸長時の厚み変化率が20.0%以下であること
を満足する。
【0020】
前記胴周り部については、前記腹側胴周り部または前記背側胴周り部の少なくとも一方が上記条件を満足していれば、前記胴周り部が上記条件を満足することとする。前記腹側胴周り部または前記背側胴周り部の一方のパーツが条件を満足する場合、前記面積率は条件を満たすパーツの面積に対する面積率であるとする。
【0021】
前記胴周り部および前記脚周り部のうち一方のパーツのみが上記条件を満足する場合には当該パーツをパーツA、他方をパーツBと呼び、また前記胴周り部および前記脚周り部のいずれもが上記(1)および(2)を満足する場合にはおむつにおける上下方向へ50%伸長したときの伸長荷重(以下、「上下方向伸長荷重」とも呼ぶ。)が低い方のパーツをパーツA、他方をパーツBと呼ぶ。
【0022】
前記腹側胴周り部または前記背側胴周り部の一方のパーツが上記条件を満足し、前記脚周り部が前記条件を満たさない場合には、前記胴周り部のうち条件を満たす方のパーツをパーツAとし、前記脚周り部をパーツBとする。
【0023】
また、前記腹側胴周り部または前記背側胴周り部の一方のパーツが上記条件を満足し、前記脚周り部も前記条件を満たす場合には、前記胴周り部のうち条件を満たす方のパーツと、前記脚周り部との間で上下方向伸長荷重を比較し、パーツAおよびパーツBを決定する。
【0024】
また、前記腹側胴周り部、前記背側胴周り部および前記脚周り部のすべてが上記条件を満足する場合には、これら3つのパーツの間で上下方向伸長荷重を比較する。前記脚周り部のパーツの上下方向伸長荷重が最も低ければ前記脚周り部をパーツAとし、前記腹側胴周り部または前記背側胴周り部のうち、伸長荷重が高い方のパーツをパーツBとする。また、前記腹側胴周り部および前記背側胴周り部のいずれか一方の上下方向伸長荷重が最も低ければ当該パーツをパーツAとし、前記脚周り部をパーツBとする。
【0025】
また、前記腹側胴周り部および前記背側胴周り部のいずれもが上記条件を満足しないが異なる上下方向伸長荷重を示し、前記脚周り部が前記条件を満たす場合には、伸長荷重が高い方の胴周り部のパーツをパーツBとする。
【0026】
捲縮繊維とは、一定の捲縮を有するような繊維である。前記捲縮繊維を用いることで、前記不織布内で繊維が織りなす空隙サイズを大きくできるため、前記不織布の表面のタッチを捲縮数に応じて触感を向上させることができる。
【0027】
前記捲縮繊維は、生産性の観点から、熱可塑性樹脂からなる繊維であることが好ましい。
【0028】
前記熱可塑性樹脂の例としては、
ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル系ポリマーおよびその共重合体、
ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシブチレート-ポリヒドロキシバリレート共重合体、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステル系ポリマーおよびその共重合体、
ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド10、ポリアミド12、ポリアミド6-12等の脂肪族ポリアミド系ポリマーおよびその共重合体、
ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系ポリマーおよびその共重合体、
エチレン単位を25モル%から70モル%含有する水不溶性のエチレン-ビニルアルコール共重合体系ポリマー、ポリスチレン系、ポリジエン系、塩素系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、フッ素系のエラストマー系ポリマー等であり、これらの中から選んで用いることができる。
【0029】
特に、最後に挙げたエラストマー系ポリマーではない群の熱可塑性樹脂、つまり、前記の芳香族ポリエステル系ポリマーおよびその共重合体、脂肪族ポリエステル系ポリマーおよびその共重合体、脂肪族ポリアミド系ポリマーおよびその共重合体、ポリオレフィン系ポリマーおよびその共重合体、ならびに、エチレン-ビニルアルコール共重合体系ポリマーは、触感がゴムのようで(ラバータッチ)簡単に変形して回復力を有するものになりにくいため、好ましい。中でも、おむつのバックシート以外の素材にはオレフィン系の不織布が用いられることが多いため、接着性の観点から、捲縮繊維にはオレフィン系の熱可塑性樹脂を採用することがより好ましい。
【0030】
前記熱可塑性樹脂は1種類を単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
前記バックシートの表面触感を向上する目的で、前記捲縮繊維の少なくとも一部が、脂肪酸アミド化合物を含有していることが好ましい。
【0032】
前記脂肪酸アミド化合物としては例えば、飽和脂肪酸モノアミド化合物、飽和脂肪酸ジアミド化合物、不飽和脂肪酸モノアミド化合物、および不飽和脂肪酸ジアミド化合物などが挙げられる。本発明における炭素数とは、分子中に含まれる炭素数を意味する。脂肪酸アミド化合物は、具体的には、パルミチン酸アミド、パルミトレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エライジン酸アミド、バクセン酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、ピノレン酸アミド、エレオステアリン酸アミド、ステアリドン酸アミド、ボセオペンタエン酸アミド、アラキジン酸アミド、ガドレイン酸アミド、エイコセン酸アミド、エイコサジエン酸アミド、ミード酸アミド、エイコサトリエン酸アミド、アラキドン酸アミド、エイコサテトラエン酸アミド、エイコサペンタエン酸アミド、ヘンイコシル酸アミド、ベヘン酸アミド、エルカ酸アミド、ドコサジエン酸アミド、アドレン酸アミド、オズボンド酸アミド、イワシ酸アミド、ドコサヘキサエン酸アミド、リグノセリン酸アミド、ネルボン酸アミド、テトラコサペンタエン酸アミド、ニシン酸アミド、セロチン酸アミド、モンタン酸アミド、メリシン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、ジステアリルセバシン酸アミド、およびヘキサメチレンビスオレイン酸アミドなどが挙げられる。また、これらを複数組み合わせて用いることができる。
【0033】
前記脂肪酸アミド化合物の炭素数を好ましくは15以上、より好ましくは23以上、さらに好ましくは30以上とすることにより、脂肪酸アミド化合物が過度に繊維表面に析出することを抑制し、紡糸性と加工安定性に優れ、高い生産性を保持することができる。また、脂肪酸アミド化合物の炭素数を好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは42以下とすることにより、脂肪酸アミド化合物が適度に繊維表面に析出するため、触感に優れた積層不織布となる。
【0034】
前記捲縮繊維に対する前記脂肪酸アミド化合物の含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.7質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上とすることにより、脂肪酸アミド化合物が繊維表面において滑剤として作用するため、前記バックシートを触感に優れたものとすることができる。また、コストや生産性の観点からは、前記脂肪酸アミド化合物の含有量は5.0質量%以下が好ましい。
【0035】
また、前記捲縮繊維においては、酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機質、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、あるいは紫外線吸収剤などの各種添加剤が含まれていてもよい。
【0036】
前記捲縮繊維としては、サイドバイサイド型複合繊維、偏心芯鞘型複合繊維などの複合繊維や、異形断面からなる単成分の捲縮繊維が挙げられる。中でも、捲縮数を容易に制御可能な複合繊維が好ましい。
【0037】
前記捲縮繊維の捲縮数に応じて、前記バックシートの触感を設計することができる。この捲縮数は値が大きいほど、捲縮繊維の捲縮が細かいことを示している。
【0038】
例えば、前記バックシートを曲げ柔軟性に優れたものとする場合には、前記捲縮繊維の捲縮数を50個/25mm以上1000個/25mm以下とすることが好ましい。前記捲縮繊維の捲縮数を50個/25mm以上、より好ましくは85個/25mm以上、さらに好ましくは100個/25mm以上とすることで、前記捲縮繊維の伸長性が向上し、不織布を曲げた際に繊維が緊張しないため、前記バックシートの曲げ柔軟性を良好にすることができる。また、前記捲縮繊維の捲縮数を1000個/25mm以下、より好ましくは500個/25mm以下とすることで、繊維同士の空隙のサイズが小さくなりすぎず、好適な表面タッチを得ることができる。
【0039】
一方、前記バックシートをクッション性に優れたものとする場合には、前記捲縮繊維の捲縮数を10個/25mm以上、50個/25mm以下とすることが好ましい。前記捲縮数を10個/25mm以上50個/25mm以下、より好ましくは20個/25mm以上45個/25mm以下であることで、繊維同士の空隙を大きくすることができ、クッション性を良好にすることができる。
【0040】
捲縮数は、以下のようにして求めるもことができる。バックシートの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で捲縮繊維が10本以上観察できる倍率として画像を撮影する。撮影された画像を用いて、測定範囲における捲縮繊維の見かけの長さを測定する。見かけの長さの中に存在する捲縮繊維の山と谷の数を全て数え、その山と谷の合計数を2で割る。その合計数を25mm当たりの数に変換する。これと同様の動作を、異なる20本の繊維に対して行った結果の単純な数平均を求め、小数点第1位を四捨五入した値が本発明でいう捲縮数である。
【0041】
本発明においてエラストマーとは、常温においてハードセグメントとソフトセグメントとを有する高分子化合物をいう。前記エラストマーの特性として、弱い力で変形することが挙げられる。
【0042】
前記バックシートの前記不織布に前記エラストマーを使用することで、前記バックシートに伸縮性が発現し、着用者の体の凹凸に好適にフィットすることができる。そして、前記バックシートが、前記捲縮繊維および前記エラストマーを含んでなる前記不織布から構成されることで、フィット性と表面タッチとを両立できる。
【0043】
前記エラストマーとしては、生産性の観点から、熱可塑性樹脂であることが好ましい。前記エラストマーが熱可塑性樹脂であることによって、表面の形態が制御しやすくなる。前記エラストマーである前記熱可塑性樹脂は、融点以上に加熱すると熱可塑性の性質を示す一方、常温では弱い力で変形することができる。
【0044】
前記エラストマーである前記熱可塑性樹脂としては例えば、ポリウレタン系エラストマー、ポリプロピレン系エラストマー、ポリエチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリブタジエン系エラストマーなどを挙げることができる。前記エラストマーである前記熱可塑性樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いもよい。本発明のおむつのバックシートに係る不織布には、これらの中から、捲縮繊維との接着性を考慮して、適宜、選んで用いることができる。
【0045】
前記エラストマーは、100%引張時の応力が50MPa以下であることが好ましい。100%引張時の応力は、JIS K7311:1995「ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの試験方法」に基づき測定される。
【0046】
前記エラストマーの形態としては、繊維状、フィルム状が挙げられる。中でも、おむつのバックシートとして好適な通気性と柔軟性を有する観点から、繊維の形態が好ましい。
【0047】
前記バックシートにおいて、前記捲縮繊維および前記エラストマーの質量比率(捲縮繊維:エラストマー)を、10:90~90:10とすることが好ましい。捲縮繊維とエラストマーの質量比率を係る範囲にすることで、表面タッチと伸縮性を両立することができる。
【0048】
前記バックシートでは、前記捲縮繊維からなるスパンボンド不織布層と前記エラストマー層とが一体化している複合不織布であることが好ましい。ここでいう一体化とは、これらの層が繊維同士の交絡、接着剤等の成分による固定、それぞれの層を構成する熱可塑性樹脂同士の融着によって接合していることをいう。
【0049】
前記バックシートは、少なくとも一方の表面において、前記エラストマーよりも前記捲縮繊維の質量割合が高いことが好ましい。そうすることで、ラバータッチの前記エラストマーの表面露出を抑制し、表面タッチをより良好なものとすることができる。このような様態も、前記捲縮繊維からなる不織布層と前記エラストマーからなる層とを積層し一体化した複合不織布により得ることができる。
【0050】
前記複合不織布の形態としては例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、短繊維不織布などの公知の不織布から選択できる。生産性の観点から、前記捲縮繊維からなるスパンボンド不織布と前記エラストマーの繊維からなるスパンボンド不織布とを一体化したもの、前記捲縮繊維からなるスパンボンド不織布と前記エラストマーの繊維からなるメルトブロー不織布とを一体化したものが好ましい様態として挙げられる。
【0051】
前記積層不織布の積層構成としては、捲縮繊維からなるスパンボンド不織布層を(S)、エラストマー層を(E)として示すならば、例えば、2層であれば(S)/(E)であり、3層であれば(S)/(E)/(S)等であり、4層であれば(S)/(E)/(E)/(S)等であり、5層であれば(S)/(E)/(S)/(E)/(S)等である。中でも、エラストマー層の表裏両面にスパンボンド不織布層が積層されてなる形態、すなわち、(S)/(E)/(S)や(S)/(E)/(S)/(E)/(S)といった形態がより好ましい。この積層構成は、使用される目的等に応じて選択することができる。
【0052】
積層された不織布等を一体化する手段としては例えば、熱接着、超音波接着が好ましい。
【0053】
前記胴周り部および前記脚周り部は、その少なくとも一方が、面積率で30%以上が前記不織布で構成されていること(「条件(1)」とも呼ぶ。)を満足する。前記不織布においては捲縮繊維が構造的に伸長でき、前記不織布を伸長した際の伸長が阻害されにくいため、エラストマー特有の低伸長荷重と表面タッチとを両立させることができる。当該面積率が30%以上、好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上であることで、前記不織布が有する表面タッチとフィット性によりおむつの着用快適性を好適にすることができる。
【0054】
前記パーツBもまた、面積率で30%以上が前記捲縮繊維から構成されエラストマーを有する不織布から構成されていることが好ましい。前記バックシートにおいて相対的におむつ上下方向伸長荷重が高く、身体にフィットする部位である前記パーツBも、当該面積率を30%以上、好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上とすることで、前記捲縮繊維による良好な表面タッチと前記エラストマーの柔軟性により、着用快適性を良好にすることができる。
【0055】
前記胴周り部および前記脚周り部は、その少なくとも一方が、無荷重時の厚みに対して、30%伸長時の厚み変化率が20.0%以下であること(「条件(2)」とも呼ぶ。)を満足する。着用者が動作した際におむつの前記胴周り部と前記脚周り部は伸縮するため、当該厚み変化率が20.0%以下、好ましくは18.0%以下、より好ましくは15.0%以下であることで、着用者が動作しても体とおむつがずれることなく、優れたフィット性とすることができる。一方、当該厚み変化率は1.0%以上であることが、着用者が動作時におむつが突っ張るのを防ぐことができ好ましい。
【0056】
ここでいう無荷重時の厚みに対する30%伸長時の厚み変化率とは、以下のようにして求めるものである。
(1) おむつからバックシートを分離する。
(2) バックシートの任意の箇所からおむつの上下方向、左右方向それぞれ50mmとした正方形の試験片を採取する。
(3) 採取した試験片について、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の6.1「厚さ(ISO法)」のA法に基づき、単位をmmとして小数点第2位まで測定し、未伸長時の厚み(T0)を求める。
(4) 試験片を30%伸長させた状態で試験片を固定する。試験片を伸長させる方向は、おむつ上下方向およびおむつの左右方向の内、30%伸長時の応力が低い方とする。ここでいう30%伸長時の応力は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の6.3に基づき、試験片を伸長して、引張強さ-伸び率のグラフを取得し、30%伸長したときの伸長荷重を、単位をN/25mmとして、小数点第2位まで算出した値である。バックシートから、厚み測定とは別に採取した試験片を用い、おむつの上下方向、左右方向それぞれについて、前記30%伸長時を測定し、値が低くなった方向を伸長と定める。
(5) 30%伸長させた状態固定した試験片について、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の6.1「厚さ(ISO法)」のA法に基づき、単位をmmとして小数点第2位まで測定し、30%伸長時の厚み(T30)を求める。
(6) これらの値を用いて、式1から未伸長時の厚みに対し、30%伸長時の厚みの変化率(ΔT)を算出する。
ΔT=100×(T0-T30)/T0 ・・・式1
(7) (1)~(6)と同様の動作を、異なる10枚の試験片に対して行った結果の単純な数平均を求め、小数点第2位を四捨五入する。この値が30%伸長時の厚み変化率である。
【0057】
本発明のおむつでは、前記バックシートの前記胴周り部および前記脚周り部について、おむつの上下方向における伸長荷重が好適に制御されている。具体的には、前述の条件(1)および条件(2)を満足することを条件に前記胴周り部および前記脚周り部の一方をパーツAと呼び、他方をパーツBと呼ぶとき、前記パーツAの上下方向伸長荷重F50Aが、前記パーツBの上下方向伸長荷重F50Bの0.90倍以下である。すなわち、両者の比F50A/F50Bが0.90以下である。
【0058】
F50A/F50Bが小さい程、パーツAがおむつ上下方向に伸びやすい素材であることを示す。おむつ着用部である下腹部/尻部は、かがむ等の大きな動作をした場合、身体の上下方向に大きく皮膚が伸びることが知られている。前記おむつの前記バックシートにおいて上下方向伸長荷重が相対的に低いバーツAを配し、F50A/F50Bを0.90以下、好ましくは0.85以下、より好ましくは0.80以下とすることで、おむつが突っ張ることなく動作に追従できるのである。また、パーツBの上下方向伸長荷重が相対的に高いことで、動作によるおむつのずれを防ぐことができる。一方、F50A/F50Bを好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上とすることで強度低下を抑えることができる。
【0059】
上下方向伸長荷重およびF50A/F50Bは、以下のようにして求める。
(1) おむつからバックシートを分離する。
(2) バックシートの胴周り部の任意の箇所からおむつの上下方向に40mm、左右方向に25mmとした長方形の試験片を採取する。
(3) 採取した試験片について、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の6.3に基づき、試験片をおむつの上下方向に伸長し、引張強さ-伸び率のグラフを取得する。
(4) (3)で作成したグラフを用い、50%伸長したときの伸長荷重を、単位をN/25mmとして、小数点第2位まで算出する。
(5) (1)~(4)と同様の動作を、異なる10枚の試験片に対して行った結果の単純な数平均を求め、小数点第2位を四捨五入する。この値が上下方向伸長荷重である。
(6) バックシートの脚周り部に対しても、(1)~(5)の手順で上下方向伸長荷重を算出する。
(7) 上下方向伸長荷重が相対的に低いパーツをパーツA、上下方向伸長荷重が相対的に高いパーツをパーツBとしたとき、それぞれの上下方向伸長荷重(F50A、F50B)の比F50A/F50Bを算出し、小数点第3位を四捨五入する。
【0060】
また、前記パーツAを構成する前記不織布は、少なくとも一方向において100%伸長時の伸長回復率が80%以上であることが好ましい。
【0061】
当該伸長回復率を80%以上、より好ましくは90%以上とすることで、前記パーツAの素材が好適に収縮力を有し、前記おむつにおいて前記パーツAがカバーする部分でフィット性を好適に制御することができる。
【0062】
ここでいう100%伸長時の伸長回復率は以下のようにして求める。
(1) パーツの任意の箇所からおむつの上下方向および左右方向にサンプルを切り出し、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の6.3に基づき、試験片を伸長して、50%伸長荷重が低い方向を引張方向として決定する。
(2) パーツの任意の箇所から(1)で決定した前記引張方向に試験片を切り出す。
(3) JIS L1096:2010「織物及び編み物の生地試験方法」の8.16.2 A法で測定される伸長回復率を測定する。
【0063】
前記パーツAおよび前記パーツBには、本発明のおむつの効果を損ねない限り、補助的に弾性素材を貼り付けてもよい。そうすることにより伸縮性をさらに向上させることができる。
【0064】
[おむつの構成]
本発明のおむつについて、
図1および
図2を用いて説明する。
図1は本発明のおむつの一例であるパンツタイプのおむつの斜視図であり、
図2は
図1の股下部(X-X’部分)における断面図である。
【0065】
図1において、本発明のおむつは、胴周りの開口部1-1および、脚周りの開口部1-2Aおよび1-2Bを有する。また、本発明のおむつにおける胴周り開口部の縁をおむつの上端部と呼ぶ。
【0066】
また、本発明では、おむつにおいて、脚周りの開口部1-2Aおよび1-2Bの下端の点をそれぞれX、X’としたとき、X-X’間を結んだ線分の方向をおむつの左右方向、その垂直の方向をおむつの上下方向と呼ぶ。
【0067】
図2は、本発明のおむつの前記X-X’断面における断面図であり、図の上側が着用者側である。
【0068】
トップシート2-1は、前記おむつを着用した際に、最も着用者側に配置される。トップシート2-1は、前記おむつにおける着用者の肌に触れる全領域を覆っていてもよいし、一部のみを覆っていてもよい。
【0069】
吸収体2-2は、前記おむつを着用した際に股下部に配置され、吸収素材がシートで包まれている構造を有する。吸収体は好ましくは、トップシート2-1と次述のバックシート2-4との間に配置される。
【0070】
バックシート2-4は、前記おむつを着用した際に、着用者からみて最も離れた外側に配置される。バックシート2-4は、加熱することで単独に分離可能である。バックシート2-4において、弾性素材が接着されている場合には、接着した状態のシートをバックシートとして定義する。
【0071】
ここでいう弾性素材とは、伸縮性を有する素材のことを意味している。シート状素材の場合、少なくとも1方向に対して、JIS L1096:2010「織物及び編み物の生地試験方法」の8.16.2 A法で測定される伸長回復率が80%以上であることを意味する。また、繊維状素材の場合、JIS L1013:2021「化学繊維フィラメント糸試験方法」の8.9 B法で測定される伸長弾性率が80%以上であることを意味する。
【0072】
弾性素材が接着される構造では、後述するが、前記バックシート2-4における30%伸長時の厚み変化率が高くなる。このため、フィット性の観点から弾性素材を貼り付けない構成とすることが好ましい。
【0073】
また、本発明のおむつでは、吸収体2-2で吸収した液体の外部への流出を防ぐ観点から、液不透過性シート2-3を有してもよい。この場合、液不透過性シート2-3は吸収体2-2とバックシート2-4の間に配置されることが好ましい。
【0074】
さらに、本発明のおむつでは、着用者の尿や便の漏洩を防止する目的で、サイドギャザー2-5を有していてもよい。本発明のおむつに係るサイドギャザー2-5とは、前記トップシート2-1と一部重なって配置されており、前記おむつを着用した際に、トップシートに対して立体的に起き上がることができるシートである。
【0075】
本発明のおむつがテープタイプの場合、おむつにおける着用者の腰側の部位と腹側の部位をつなぐ必要があるため、おむつの上端部に耳部を取り付けることが好ましい。本発明のおむつにおいて、耳部とは、腰側の部位と腹側の部位をつなぐための係合部も含むものとする。
【0076】
また、着用時に前記係合部と係合するためのシートを含むことが好ましい。
【0077】
[おむつの製造方法]
本発明のおむつの製造方法は、バックシートを製造する、バックシート製造工程と、バックシートに吸収体およびトップシートを積層させる、積層工程と、を含み、前記バックシート製造工程は、捲縮発現型複合繊維を捕集ベルト上に捕集してスパンボンド不織布層を形成し、その上に少なくとも1層のエラストマー層を積層させた後に一体化させて積層不織布を得る、製布工程と、前記製布工程で得た積層不織布の少なくとも一部を、ギア付きのローラーで少なくとも1方向に延伸加工する、延伸工程と、延伸加工した前記積層不織布を前記パーツAのシートとして、前記パーツAのシートの一部と前記パーツBのシートの一部とが重なるようにして貼り合わせる、貼り合わせ工程と、を含む。
【0078】
[バックシート製造工程]
(製布工程)
前記製布工程においては、捲縮発現型複合繊維を捕集ベルト上に捕集してスパンボンド不織布層を形成し、その上に少なくとも1層のエラストマー層を積層させた後に一体化させて積層不織布を得る。
【0079】
前記捲縮発現型複合繊維を得るためには、溶融粘度または/およびポリマー種が異なる複数のポリマー原料を別々に溶融し、前記紡糸口金から、複合ポリマー流として吐出することが好ましい。前記捲縮発現型複合繊維のポリマー原料間で溶融粘度または/およびポリマー種を異なるものとすることで、各ポリマー原料の弾性率差により繊維が捲縮を発現することができる。
【0080】
前記捲縮発現型複合繊維の捲縮数は前記おむつの表面タッチに影響するものであるため、所望の表面タッチ得るための捲縮数となるように、適宜ポリマー原料と溶融粘度を選定することが好ましい。
【0081】
前記捲縮発現型複合繊維の捲縮数を高くし、曲げ柔軟性を良好にするためには、ポリマー原料間に溶融粘度の差を設けることが好ましい。この場合、前記捲縮発現型複合繊維を構成するポリマー原料の内、最も溶融粘度が低いポリマー原料の溶融粘度に対する、最も溶融粘度が高いポリマー原料の溶融粘度の比を、1.20以上とすることが好ましい。
【0082】
前記溶融粘度の比を1.20以上、より好ましくは1.30以上とすることで、各ポリマー原料の弾性率差を大きくでき、捲縮数を向上できる。一方、前記溶融粘度の比を好ましくは8.00以下とすることで、口金から吐出した複合ポリマー流が大きく曲がってしまい製糸ができなくなるのを抑えることができる。
【0083】
本発明で言う溶融粘度とは、紡糸温度におけるせん断速度31.4s-1での溶融粘度を意味しており、以下に説明する手法にて測定されるものである。
(1) 回転式レオメーター(例えば、UBM社製「Rheosol-G3000」)を用い、紡糸温度に相当する温度まで昇温する。
(2) φ20mmのパラレルプレートの間にポリマーを挟み、溶融した後に、プレート間のギャップを0.5mmに設定する。
(3) 31.4rad/s-1となるような速度でひずみを与える。
(4) 上記のような条件にて、単位をPa・sとして溶融粘度を計測する。
【0084】
前記捲縮発現型複合繊維を好適に得るための紡糸口金としては、サイドバイサイド型複合断面または、偏心芯鞘複合断面を形成できる機構を具備していることが好ましい。この場合、口金の吐出孔形状は本発明の効果を損ねない限り、自由に選択すれば良いが、紡糸安定性の観点からは、丸孔とすることが好ましい。
【0085】
スパンボンド法とは、原料である熱可塑性樹脂を溶融し、紡糸口金から紡糸した後、冷却固化して得られた糸条に対し、エジェクター等のエア牽引ユニットで牽引し延伸して、移動する捕集ベルト上に捕集して不織繊維ウェブ化した後、熱接着する不織布の製造方法である。前記捲縮発現型複合繊維からなる不織布層を、スパンボンド法で製造することにより、エア牽引により分子配向が促進されるとともに、熱接着により繊維同士が強固に固定されるため、十分な強度を得ることができる。
【0086】
また、前記捲縮発現型複合繊維の捲縮数を高くする目的で、前記捲縮発現型複合繊維を捕集ベルト上に捕集した後に熱処理を施してもよい。前記熱処理は、前記エラストマー層と積層し、一体化させる前に施すことが好ましい。前記熱処理の処理温度としては、捲縮発現型複合繊維を構成するポリマー原料の内、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」の示差走査熱量測定(DSC)にて測定される融点が最も低い融点をTmとしたときに、Tm-100℃以上の温度とすることが好ましい。
【0087】
前記エラストマー層を積層させる工程としては例えば、上記のとおり捕集ベルト上に形成したスパンボンド不織布層の上に、公知の方法を含む通常の方法によってエラストマー層をインラインで連続的に捕集することで積層し、加熱・加圧して一体化する方法や、別々に得たスパンボンド不織布層とエラストマー層とをオフラインで積層し、加熱・加圧などして一体化する方法などを採用することができる。中でも生産性に優れているということから、捕集ベルト上に形成したスパンボンド不織布層の上に、エラストマー層をインラインで連続的に捕集することで積層し、加熱・加圧して一体化する方法が好ましい。なお、一体化させる方法としては、繊維同士をニードルパンチなどの方法によって交絡させる方法、接着剤などを用いて接着させる方法も挙げられる。
【0088】
本発明のおむつに係るエラストマー層の製造方法における好ましい態様の一つとして、前記のエラストマー層をスパンボンド法にて形成することが挙げられる。スパンボンド法を採用することにより、強度が高い積層不織布が得られるため、好ましい。
【0089】
また、本発明のおむつに係るエラストマー層の製造方法におけるもう一つの好ましい態様として、前記のエラストマー層をメルトブロー法にて形成することが挙げられる。メルトブロー法を採用することにより、スパンボンド法と比べて、安定的にシート形成できるためである。また、スパンボンド法よりも繊維径を小さくできるため、さらに曲げ柔軟性を向上させることができるという利点もある。
【0090】
なお、本発明のおむつに係るエラストマー層の製造方法は、前記のスパンボンド不織布層と少なくとも1層のエラストマー層が積層されていれば良く、その層の数や組合せについては、目的に応じて任意の構成を採用することができる。
【0091】
(延伸工程)
前記延伸工程においては、前記製布工程で得た積層不織布の少なくとも一部を、ギア付きのローラーで少なくとも1方向に延伸加工する。
【0092】
前記積層不織布に延伸加工を施すことで、延伸方向への伸縮性が向上することが可能となり、前記積層不織布の30%伸長時の厚み変化率を好適に制御することができる。さらに、延伸加工により、不織布内で緊張している繊維をほぐすことができるため、延伸方向と直交する方向への伸長性も向上できる。
【0093】
本発明でいうギア付きのローラーとは、ローラー表面の少なくとも一部が凹凸形状となっているローラーである。前記ギア付きのローラーの態様としては、一対のローラーにおいて、一方のローラーの凹部と、もう一方のローラーの凸部がかみ合う構成であることが好ましい。このような構成のローラーで不織布を加工すると、不織布は一方のローラーの隣り合う凹部間の小区間で伸長されることとなり、前記積層不織布を均一に延伸することができる。
【0094】
前記延伸工程での延伸倍率は、所望の物性に応じて適宜調整することが好ましい。延伸倍率は凹部および凸部の高さで調節してもよいし、ロール間の距離により調整してもよい。
【0095】
前記延伸工程では、前記積層不織布の機械方向(MD)または機幅方向(CD)のいずれの方向に延伸してもよく、作製するおむつの特性に応じて決定すればよい。さらに、機械方向(MD)および機幅方向(CD)の2方向に延伸してもよい。
【0096】
本発明のバックシートの製造方法は、延伸による破れの抑制や寸法安定性を調整する目的で、延伸された積層不織布を熱処理する工程を含んでいてもよい。
【0097】
(貼り合わせ工程)
前記貼り合わせ工程においては、延伸加工した前記積層不織布を前記パーツAとして、前記パーツAの一部と前記パーツBの一部とが重なるようにして貼り合わせる。
【0098】
前記貼り合わせ工程における貼り合わせ手段としては、おむつとしたときの強度の観点から、ホットメルト接着剤を用いて貼り合わる手法、熱プレスにより貼り合わせる手法、超音波により貼り合わせる手法が好ましい。
【0099】
前記貼り合わせ工程においては、前記パーツAのシートおよび前記パーツBのシートを事前に好適な形状に切断してから貼り合わせてもよいし、連続したパーツAのシートおよびパーツBを貼り合わせてもよい。
【0100】
前記パーツAを前記胴周り部のシートと設定する場合、前記延伸工程における延伸方向が前記おむつの左右方向となるように、延伸加工した前記積層不織布を前記パーツAとして、前記パーツBと貼り合わせることが好ましい。前記パーツAをこのように貼り合わせることで、パーツBよりもおむつの上下方向への伸長荷重を低くしつつも、着用者の胴周り方向で必要なおむつ左右方向への伸縮性を高くできるため、好適なフィット性を得ることができる。
【0101】
一方、前記パーツAを前記脚周り部のシートと設定する場合、前記延伸工程における延伸方向が前記おむつの上下方向となるように、延伸加工した前記積層不織布を前記パーツAとして、前記パーツBと貼り合わせることが好ましい。前記脚周り部は、着用者の動作により上下方向に大きく伸長する部位であるため、前記パーツAを上述の方向で貼り合わせることで、着用者の動作に対して好適に追従できる設計にすることができる。
【0102】
さらに、前記パーツAを前記脚周り部のシートと設定する場合、前記延伸工程における延伸方向が前記おむつの左右方向となるように、延伸加工した前記積層不織布を前記バックシートのパーツBすることが好ましい。前記パーツBを上述の方向で貼り合わせることで、前述のとおり、脚回り部に必要なおむつ左右方向への伸縮性を高くできるため、好適なフィット性を得ることができる。
【0103】
[積層工程]
積層工程では、前記バックシートに吸収体およびトップシートを積層させる。また、液不透過性シートやサイドギャザー等を載置してもよい。
【0104】
前記積層工程においては、各構成素材同士を接着することが好ましい。接着方法としては、接着強度の観点から、ホットメルト接着剤を用いて貼り合わる手法、熱プレスにより貼り合わせる手法、超音波により貼り合わせる手法が好ましい。
【0105】
各構成素材同士を接着した後に、製品の形状にカットすることで、本発明のおむつとすることができる。
【実施例0106】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0107】
[測定方法]
実施例中の各特性値は、次の方法で求めた。なお、特段の記載がない事項については、前記の方法に従って測定を実施したものである。
【0108】
(1)30%伸長時の厚み変化率
バックシートの胴周り部または脚周り部の任意の箇所からおむつの上下方向、左右方向それぞれ50mmとした正方形の試験片を採取し、前述の「無荷重時の厚みに対する30%伸長時の厚み変化率」の測定手順により、30%伸長時の厚み変化率を測定した。
【0109】
(2)上下方向伸長荷重およびF50A/F50B
バックシートの胴周り部および脚周り部の任意の箇所からおむつの上下方向に40mm、左右方向に25mmとした長方形の試験片を採取し、前述の「パーツAをおむつにおける上下方向へ50%伸長したときの伸長荷重に対する、パーツBをおむつにおける上下方向へ50%伸長したときの伸長荷重の比」の測定手順により、バックシートを構成するパーツAおよびパーツBの上下方向伸長荷重を測定し、またそれらの比F50A/F50Bを算出した。
【0110】
(3)おむつの着用試験
作製したおむつを、健康な一般成人(男女15名ずつ計30名)が着用し、高さ30cmのステップを30回昇降する着用テストを実施した。この際、以下の項目について、各項目3段階で点数評価し、合計点を着用性として評価した。
(a)表面タッチ
作製したおむつを着用した際の、肌に触れる箇所について、表面タッチを評価した。
5:表面が滑らかでクッション性がある。
3:表面は滑らかだが、クッション性がない。
1:表面がラバータッチである。
(b)おむつのフィット性
動作をしていない無動作時と、ステップ昇降している際の動作時について、おむつが体にフィットしているかどうかを評価した。
5:動作時でもおむつが好適に体にフィットする。
3:無動作はおむつが体にフィットしているが、動作時にはおむつと体の間に空間が開く。
1:無動作時でもおむつと体の間に空間があり、体にフィットしない。
(c)動作追従性
ステップ昇降している際の動作時に、おむつの素材が突っ張って感じるかを評価した。
5:おむつが体に追従し、おむつの突っ張りを感じない。
3:おむつの一部で突っ張りを感じる。
1:おむつの一部で突っ張りを感じる。
【0111】
[おむつの部位・素材]
(トップシート)
トップシートとして、ポリエチレンを芯成分、ポリエチレンテレフタレートを鞘成分とした、2.2dtexの短繊維からなり、目付が20g/m2のエアスルー不織布を用いた。
【0112】
(吸収体)
吸収体として、ポリアクリル酸からなる高吸水性ポリマーの粒子とフラッフパルプを混練した吸収材料を、目付20g/m2の紙で包んだものを用いた。
【0113】
(弾性糸)
弾性糸として、単繊維繊度が7.0dtexのポリウレタン樹脂からなる繊維を用いた。
【0114】
[不織布A]
(製布工程)
(第1の捲縮繊維ウェブ)
第1成分として、せん断速度31.4s-1での溶融粘度が153Pa・sのホモポリプロピレン(PP)を用い、第2成分として、せん断速度31.4s-1での溶融粘度が270Pa・sでエチレンを2.7mol%共重合したエチレン共重合ポリプロピレン(coPP)を用い、スパンボンド法にて捲縮繊維ウェブを作製した。
【0115】
第1成分および第2成分を別個の押出機で溶融し、紡糸温度230℃で、サイドバイサイド型複合断面(表1ではSbSと表記する)の繊維が得られる矩形口金から、単孔あたりの吐出量を0.55g/(min・hole)、成分1:成分2の吐出質量比率を50:50として吐出した。
【0116】
紡出した糸状を冷却固化した後、矩形エジェクターにおいてエジェクターでの圧力を0.10MPaとした圧縮空気によって、牽引・延伸し、移動する捕集ベルト上に捕集して、目付10g/m2の、第1の捲縮繊維ウェブを得た。この捲縮繊維ウェブ層内の繊維は捲縮を有しており、その捲縮数は120個/25mmであった。
【0117】
(エラストマー層)
溶融粘度423Pa・s、曲げ弾性率13MPaの、エチレン成分が15wt%共重合されたポリプロピレン系エラストマー(PP系EL)を用い、スパンボンド法にてエラストマー層を形成した。
【0118】
上記のPP系ELを押出機で溶融し、紡糸温度を230℃として矩形口金から、単孔あたりの吐出量を0.20g/(min・hole)として、紡出した。
【0119】
紡出した糸状を冷却固化した後、矩形エジェクターにおいてエジェクターでの圧力を0.10MPaとした圧縮空気によって、牽引・延伸し、第1の捲縮繊維ウェブの上に捕集して、目付30g/m2のエラストマー層を得た。
【0120】
(第2の捲縮繊維ウェブ)
上記のエラストマー層の上にさらに、上記の第1の捲縮繊維ウェブと同様にして第2の捲縮繊維ウェブを捕集した。
【0121】
(一体化)
上ロールとして正円形の凸部がMDおよびCDの両方向に同じピッチで千鳥配置された金属製エンボスロール、下ロールとして金属製フラットロールで構成される上下一対の加熱機構を有するエンボスロールを用いた。線圧300N/cm、エンボスロールの表面温度100℃で、上記の第1の捲縮繊維ウェブ/エラストマー層/第2の捲縮繊維ウェブの積層体を加熱・加圧して一体化させ、3層構造(積層構成について、表2ではC/EL/Cと表記した)の積層不織布を得た。
【0122】
(延伸工程)
延伸工程では、それぞれが溝深さ4mm、溝間のピッチ3mmのギアを有する一対のロールを、一方のロールの凸部ともう一方のロールの凹部とがかみ合うように上下に設置した延伸装置を使用した。上記の積層不織布を上記の延伸装置にて2.4倍の延伸倍率で、CD方向に延伸することで、不織布Aを得た。
【0123】
[不織布B]
(製布工程)
(第1のPP繊維ウェブ)
せん断速度31.4s-1での溶融粘度が153Pa・sのホモポリプロピレン(PP)を用い、スパンボンド法にてPP繊維ウェブを作製した。
【0124】
上記のPPを押出機で溶融し、紡糸温度230℃で矩形口金から、単孔あたりの吐出量を0.55g/(min・hole)として吐出した。
【0125】
紡出した糸状を冷却固化した後、矩形エジェクターにおいてエジェクターでの圧力を0.10MPaとした圧縮空気によって、牽引・延伸し、移動する捕集ベルト上に捕集して、目付10g/m2のPP繊維ウェブを得た。このPP繊維ウェブ層内の繊維は捲縮を有していなかった。
【0126】
(エラストマー層)
第1のPP繊維ウェブの上に、不織布Aと同様にしてエラストマー層を形成した。
【0127】
(第2のPP繊維ウェブ)
上記のエラストマー層の上にさらに、上記の第1のPP繊維ウェブと同様にして第2のPP繊維ウェブを捕集した。
【0128】
(一体化)
上記の第1のPP繊維ウェブ/エラストマー層/第2のPP繊維ウェブの積層体を、不織布Aと同様にして加熱・加圧して一体化させ、3層構造(積層構成について、表2ではS/EL/Sと表記した)の積層不織布を得た。
【0129】
(延伸工程)
上記の積層不織布を不織布Aで使用したのと同じ延伸設備にて、1.8倍の延伸倍率で、CD方向に延伸することで、不織布Bを得た。
【0130】
[不織布C]
(製布工程)
(PP繊維ウェブ)
せん断速度31.4s-1での溶融粘度が153Pa・sのホモポリプロピレン(PP)を用い、スパンボンド法にてPP繊維ウェブを作製した。
【0131】
上記のPPを押出機で溶融し、紡糸温度230℃で矩形口金から、単孔あたりの吐出量を0.55g/(min・hole)として吐出した。
【0132】
紡出した糸状を冷却固化した後、矩形エジェクターにおいてエジェクターでの圧力を0.10MPaとした圧縮空気によって、牽引・延伸し、移動する捕集ベルト上に捕集して、目付30g/m2のPP繊維ウェブを得た。
【0133】
(加熱・加圧)
上記のPP繊維ウェブを、エンボスロールの表面温度を130℃とした以外は不織布Aと同様にして加熱・加圧して、不織布Cを得た。
【0134】
不織布Cについては、延伸工程は経なかった。
【0135】
[不織布D]
(製布工程)
(エラストマー層)
不織布Aに用いたのと同じポリプロピレン系エラストマー(PP系EL)を用い、スパンボンド法にてエラストマー層を形成した。
【0136】
上記のPP系ELを押出機で溶融し、紡糸温度を230℃として矩形口金から、単孔あたりの吐出量を0.55g/(min・hole)として吐出した。
【0137】
紡出した糸状を冷却固化した後、矩形エジェクターにおいてエジェクターでの圧力を0.10MPaとした圧縮空気によって、牽引・延伸し、移動する捕集ベルト上に捕集して、目付30g/m2のエラストマーの繊維ウェブを得た。
【0138】
(加熱・加圧)
上記のエラストマーの繊維ウェブを、エンボスロールの表面温度を80℃とした以外は不織布Aと同様にして加熱・加圧して、不織布Dを得た。
【0139】
不織布Dについては、延伸工程は経なかった。
【0140】
[不織布E]
(製布工程)
(捲縮繊維ウェブ)
第1成分および第2成分として、不織布Aで用いたのと同じホモポリプロピレン(PP)およびエチレン共重合ポリプロピレン(coPP)を用い、捕集ベルトの移動速度を変更した以外は不織布Aの第1の捲縮繊維ウェブと同様にして、目付30g/m2の捲縮繊維ウェブを得た。
【0141】
(加熱・加圧)
上記の捲縮繊維を、エンボスロールの表面温度を120℃とした以外は不織布Aと同様にして加熱・加圧して、不織布を得た。
【0142】
(延伸工程)
上記の不織布を不織布Aと同様にして延伸し、不織布Eを得た。
【0143】
【0144】
各不織布について、50%伸長荷重および100%伸長時の回復率を測定した結果を表1に示す。
【0145】
不織布A、不織布Bおよび不織布Dは、好適な伸長回復率を有していた一方、不織布Cおよび不織布Eは伸長回復率が著しく低いものであった。これは、不織布A、不織布Bおよび不織布Dにおいて、エラストマー繊維を有することで、発揮される性能であることを示している。
【0146】
[実施例1]
(貼り合わせ工程)
バックシートの胴周り部(腹側胴周り部、背側胴周り部)および脚周り部にそれぞれ不織布Aを用いた。胴周り部ではいずれも延伸方向がおむつの左右方向に、脚周り部では延伸方向がおむつの上下方向となるようにシートを配置した。
【0147】
バックシートを、以下の手順により貼り合わせた。なお、用語に併記した記号は
図3中の記号に対応する。
【0148】
まず、胴周り部のパーツ3-1として不織布Aを、その延伸方向がおむつの左右方向となるように、六角形の形状に切断した。
図3においては胴周り部のパーツ3-1において、辺がおむつの上端側である。また前記パーツ3-1では、着用者の股下部側の辺3-1bの長さが、辺3-1aの長さに比べて小さくなっている。
【0149】
次に、脚周り部のパーツ3-2として、長方形の形状にシートを切断した。前記パーツ3-2は長辺の方向がおむつの上下方向となる。
【0150】
前述のとおりに切断したパーツ3-1およびパーツ3-2を、パーツ3-2の一方の短辺がパーツ3-1内に配置されるように重ね、スチレン系ホットメルト接着剤で接着した。この際、パーツ3-1とパーツ3-2が重なっている箇所3-3の面積は、パーツ3-2の総面積の10%となるようにした。
【0151】
次に、前述のとおりに接着したシートに、もう一枚のパーツ3-1を、パーツ3-2のもう一方の短辺に対して同様に積層し、スチレン系ホットメルト接着剤で接着し、バックシートを得た。
【0152】
(積層工程)
前記工程で作製したバックシートの上に、吸収体、トップシートをこの順に積層し、各々をスチレン系のホットメルト接着剤で接着した。
【0153】
そして接着した後に、
図3におけるバックシートの横端部である3-4a同士および、3-4b同士を熱融着することで、パンツタイプのおむつを得た。
【0154】
[実施例2]
(貼り合わせ工程)
バックシートの脚周り部に不織布Aを、バックシート胴周り部(腹側胴周り部、背側胴周り部)に不織布Cを用いた。脚周り部では延伸方向がおむつの上下方向となるようにシートを配置した。
【0155】
それ以外は実施例1と同様にして、2枚のパーツ3-1およびパーツ3-2を接着し、バックシートの素体とした。
【0156】
上記のバックシートの素体の胴周り部に、おむつの上端から40mm下の位置から3mm間隔で弾性糸5本をおむつ左右方向に、100%伸長させた状態でホットメルト剤で貼り付け、おむつの上端から20mmまでのシートを弾性糸が貼り付けられた面に折り返し、ホットメルト剤で貼り付け、バックシートとした。
【0157】
(積層工程)
上記のバックシートを用い、実施例1と同様にしておむつを得た。作製したおむつの胴回り部では弾性糸によるギャザーを有していた。
【0158】
[実施例3]
(貼り合わせ工程)
バックシートの脚周り部に不織布Cを、バックシート胴周り部(腹側胴周り部、背側胴周り部)に不織布Aを用いた。胴周り部では延伸方向がおむつの左右方向となるようにシートを配置した。
【0159】
それ以外は実施例1と同様にして、2枚のパーツ3-1およびパーツ3-2を接着し、バックシートの素体とした。
【0160】
上記のバックシートの素体の、脚周り部の脚周りの開口部に、おむつの脚周りの開口部端から20mmの位置から3mm間隔で弾性糸2本を開口部端に沿うように100%伸長させた状態でホットメルト剤で貼り付け、開口部端から10mmまでのシートを弾性糸が貼り付けられた面に折り返し、ホットメルト剤で貼り付け、バックシートとした。
【0161】
(積層工程)
上記のバックシートを用い、実施例1と同様にしておむつを得た。作製したおむつの脚回り部では弾性糸によるギャザーを有していた。
【0162】
[比較例1]
(貼り合わせ工程)
バックシートの腹側胴周り部および背側胴周り部には、1枚のシートにおいて左右方向の両端の各10%ずつを不織布Aが占め、そのほかを不織布Cがしめたシートを2枚用い、バックシート脚周り部に不織布Cを用いておむつを作製した。胴周り部(腹側胴周り部、背側胴周り部)に使用した不織布Aは延伸方向がおむつの左右方向となるようにシートを配置した。
【0163】
それ以外は実施例1と同様にして、2枚のパーツ3-1およびパーツ3-2を接着し、バックシートの素体とした。
【0164】
上記のバックシートの素体の、脚周りの開口部に、おむつの脚周りの開口部端から20mmの位置から3mm間隔で弾性糸2本を開口部端に沿うように100%伸長させた状態でホットメルト剤で貼り付け、開口部端から10mmまでのシートを弾性糸が貼り付けられた面に折り返し、ホットメルト剤で貼り付け、バックシートとした。
【0165】
(積層工程)
上記のバックシートを用い、実施例1と同様にしておむつを得た。作製したおむつの脚回り部では弾性糸によるギャザーを有していた。
【0166】
[比較例2]
不織布Aの代わりに不織布Bを用いた以外は実施例1と同様にして、おむつを作製した。
【0167】
[比較例3]
(貼り合わせ工程)
バックシートの脚周り部に不織布Cを、バックシート胴周り部に不織布Aを用いた。胴周り部では延伸方向がおむつの左右方向となるようにシートを配置した。
【0168】
それ以外は実施例1と同様にして、2枚のパーツ3-1およびパーツ3-2を接着し、バックシートの素体とした。
【0169】
上記のバックシートの素体の胴周り部に、おむつの上端から40mm下の位置から3mm間隔で弾性糸5本をおむつ左右方向に150%伸長させた状態でホットメルト剤で貼り付け、おむつの上端から20mmまでのシートを弾性糸が貼り付けられた面に折り返し、ホットメルト剤で貼り付け、バックシートとした。
【0170】
(積層工程)
上記のバックシートを用い、実施例1と同様にして、おむつを作製した。
【0171】
[比較例4]
不織布Aの代わりに不織布Dを用いた以外は実施例1と同様にして、おむつを作製した。
【0172】
[比較例5]
不織布Aの代わりに不織布Eを用いた以外は実施例1と同様にして、おむつを作製した。
【0173】
[比較例6]
貼り合わせ工程において、脚周り部では不織布Aの延伸方向がおむつの左右方向となるようにシートを配置した。それ以外は実施例1と同様にして、おむつを作製した。
【0174】
実施例1~3で得られたおむつについて、着用試験を行った結果を表2に示す。
【0175】
【0176】
表2に示すとおり、実施例1~3のおむつについては、表面タッチ、フィット性、動作追従性のいずれも優れていた。
【0177】
比較例1~6で得られたおむつについて、着用試験を行った結果を表3に示す。比較例において、胴周り部、脚周り部のいずれもパーツAである条件を満足しない場合には、上下伸長荷重の比が1.00未満となる、脚周り部/胴周り部、または胴周り部/脚周り部のうちのいずれかを選び、F50A/F50Bの欄に記載した。
【0178】
【0179】
表3に示すとおり、比較例1の不織布は捲縮繊維とエラストマーからなる不織布Aの面積率が低いため、フィット性と動作追従性に劣るものであった。また比較例2のおむつは、バックシートに捲縮繊維を含んでいないため、表面タッチに劣るものであった。また、捲縮繊維を含んでいないため伸長性に劣り、フィット性と動作追従性も低いものであった。比較例3のおむつは、表面タッチには優れているが、バックシートの厚み変化率が高いため、動作時に体とおむつの間に空間が生まれやすく、フィット性に劣っていた。比較例4のおむつは、フィット性、動作追従性にはすぐれるものの、エラストマー特有のラバータッチにより、表面触感に著しく劣っていた。比較例5のおむつは、表面タッチはよいものの、バックシートの伸縮性がないため、フィット性と動作追従性に著しく劣るものであった。比較例6のおむつは、表面タッチとフィット性はよいものの、脚周り部と胴周り部のパーツの上下伸長荷重に差がなく、F50A/F50Bが0.90以下とはならないため、動作時にバックシートの一部に突っ張りやすい箇所ができてしまい、動作追従性に劣るものであった。