(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169853
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/023 20060101AFI20241129BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20241129BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20241129BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20241129BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
F01N3/023 A
F01N3/035 E ZAB
F01N3/20 R
F01N3/24 E
F01N3/24 R
B01D53/94 245
B01D53/94 280
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086665
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】110003937
【氏名又は名称】弁理士法人前川知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】成田 祐介
【テーマコード(参考)】
3G091
3G190
4D148
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AB02
3G091AB05
3G091AB13
3G091BA02
3G091CA17
3G091EA01
3G091EA17
3G091EA21
3G091EA32
3G091HA09
3G091HA15
3G190AA02
3G190BA11
3G190CB18
3G190CB23
3G190CB26
3G190DA08
3G190DB32
3G190EA01
3G190EA23
3G190EA43
4D148AA06
4D148AA08
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4D148AA18
4D148AB01
4D148AB02
4D148AC02
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4D148CA01
4D148CC32
4D148CC47
4D148CC51
4D148CC61
4D148CD05
4D148DA01
4D148DA02
4D148DA05
4D148DA06
4D148DA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】DOCの活性化を適切に行うことができる排ガス浄化装置を提供すること。
【解決手段】排ガス浄化装置は、排ガスの粒子状物質を除去するためのディーゼルパティキュレートフィルターと、酸化触媒と、排ガスの流量を算出する流量取得部と、酸化触媒の入口の温度を検出する温度取得部と、エンジンの回転数を検出する回転数取得部と、エンジンの回転数を制御する回転数制御部と、3つの各取得部にて算出または検出された全ての結果から酸化触媒の活性化状態を判断する状態判断部と、を備える。状態判断部は、酸化触媒が非活性と判断した場合は固定のエンジン回転数である第一目標回転数を設定し、酸化触媒が活性と判断した場合は流量と温度に応じた可変のエンジン回転数である第二目標回転数を設定する。回転数制御部は、車両の停車時または車両の走行動力断時において、第一目標回転数又は第二目標回転数に応じた回転数となるようにエンジンを制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを備える車両の排ガスを浄化するための排ガス浄化装置であって、
前記排ガスの粒子状物質を除去するためのディーゼルパティキュレートフィルターと、
前記エンジンと前記ディーゼルパティキュレートフィルターの間に配置される酸化触媒と、
前記エンジンと前記ディーゼルパティキュレートフィルターの間において通過する排ガスの流量を算出する流量算出部と、
前記酸化触媒の入口の温度を検出する温度取得部と、
前記エンジンの回転数を検出する回転数取得部と、
前記エンジンの回転数を制御する回転数制御部と、
前記3つの各取得部にて算出または取得された全ての結果から前記酸化触媒の活性化状態を判断する状態判断部と、を備え、
前記状態判断部は、前記酸化触媒が非活性と判断した場合は固定のエンジン回転数である第一目標回転数を設定し、前記酸化触媒が活性状態と判断した場合は前記流量と前記温度に応じた可変のエンジン回転数である第二目標回転数を設定し、
前記回転数制御部は、前記車両の停車時または車両の走行動力断時においてにおいて、前記第一目標回転数又は前記第二目標回転数に応じた回転数となるように前記エンジンを制御する
ことを特徴とした排ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンを搭載する車両には、排ガスの浄化のため排ガス浄化装置が備えられている。例えば、特許文献1には、排ガス浄化装置としてDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)の前方にDOC(酸化触媒)を備えたDPF再生装置が開示されている。この、DPF再生装置は、排ガス内の粒子状物質(Particulate Matter;”PM”)をDPFで捕集し、この捕集したPMをDOCにおいて燃料である炭化水素と酸化触媒による酸化熱により高温となった排ガスを用いて燃焼除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、排ガス浄化装置に設けられるDOCは、例えば、外気温が低い場合において、排ガス温度や流量によっては、十分な酸化熱を得られないために十分に活性化することができない場合がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、DOCの活性化を適切に行うことができる排ガス浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0007】
本適用例に係る排ガス浄化装置は、エンジンを備える車両の排ガスを浄化するための排ガス浄化装置であって、前記排ガスの粒子状物質を除去するためのディーゼルパティキュレートフィルターと、前記エンジンと前記ディーゼルパティキュレートフィルターの間に配置される酸化触媒と、前記エンジンと前記ディーゼルパティキュレートフィルターの間において通過する排ガスの流量を算出する流量算出部と、前記酸化触媒の入口の温度を検出する温度取得部と、前記エンジンの回転数を検出する回転数取得部と、前記エンジンの回転数を制御する回転数制御部と、前記3つの各取得部にて算出又は取得された全ての検出結果から前記酸化触媒の活性化状態を判断する状態判断部と、を備え、前記状態判断部は、前記酸化触媒が非活性と判断した場合は固定のエンジン回転数である第一目標回転数を設定し、前記酸化触媒が活性と判断した場合は前記流量と前記温度に応じた可変のエンジン回転数である第二目標回転数を設定し、前記回転数制御部は、前記車両の停車時または前記車両の走行動力断時において、前記第一目標回転数又は前記第二目標回転数に応じた回転数となるように前記エンジンを制御することを特徴とする。
【0008】
このように構成された排ガス浄化装置は、排ガス状態などの検出結果を元にエンジンの回転数を制御することで、DOCに流入する排ガスの温度や流量を適正化させることができる。そのため、排ガス浄化装置は、DOCの活性化を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】停車時の手動再生による(a)エンジン回転数と(b)DOC入口温度の関係を示す図である。
【
図7】走行時の自動再生による(a)エンジン回転数と(b)DOC入口温度の関係を示す図である。
【
図8】走行時の自動再生による(a)エンジン回転数と(b)DOC入口温度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、車両1の排ガス機構の概略構成図である。車両1は、エンジン2(内燃機関)と、車両の排ガスを浄化するための排ガス浄化装置3とを備える。排ガス浄化装置3は、ディーゼルエンジン等のエンジン2を駆動源とする車両1の排ガス通路51,52に設けられる。具体的には排ガス浄化装置3は、エンジン2の排ガスマニホールドと接続された排ガス管に設けられる。排ガス浄化装置3は、排ガスに含まれる大気汚染物質である窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)等を除去する機能を有する。また、排ガス浄化装置3は、エンジン2とDPF312の間において通過する排ガスの圧力を検出する圧力検出センサ34と、エンジン2とDPF312の間において通過する排ガスの流量を算出する流量算出部として機能する制御部4と、DOC311の入口の温度を検出する温度検出センサ35(温度取得部)と、エンジン2の回転数を検出する回転数検出センサ21(回転数取得部)と、を有する。なお、排ガス浄化装置3は、後述する回転数検出センサ21、及びエンジン状態検出部22を含む。
【0011】
排ガス浄化装置3は、排ガスの流れの方向の上流側の前段ユニット31と、下流側の後段ユニット32を備える。前段ユニット31と後段ユニット32は、連結管33を介して接続される。前段ユニット31及び後段ユニット32は、夫々円筒形状をなし、排ガスの流れの方向に対して直列に設けられる。
【0012】
前段ユニット31は、前段のDOC311(酸化触媒)及びDPF312(ディーゼルパティキュレートフィルター)を内蔵する。DOC311は、エンジン2とDPF312の間に配置される。DOC311は、排ガス中の炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)を酸化することに加え、排ガスの粒子状物質を除去するDPF312を活性化させるために一酸化窒素(NO)を酸化させ二酸化窒素(NO2)にする機能を有している。また、DOC311は、DPF312の再生時にディーゼルエンジンの燃焼行程後に噴射される、あるいは昇温を目的とした排ガス通路51に直接噴射される燃料である炭化水素(HC)を酸化することにより排ガスを昇温させ、DPF312内の燃焼を促進する機能も有している。
【0013】
一方、後段ユニット32は、SCR321、及び、後段のDOC322(酸化触媒)を内蔵する。SCR321は、連結管33に設けられた尿素水インジェクタから供給される尿素水の加水分解により生じるアンモニア(NH3)を還元剤として、排ガス中の窒素酸化物(NOx)を窒素(N2)と水(H2O)に還元する機能を有している。後段のDOC322はSCR321で余ったアンモニア(NH3)の排出を防止するため、NH3を窒素(N2)と水(H2O)に酸化させる。
【0014】
制御部4は、エンジン2における燃料噴射を含む車両1の各部を制御するECU(Electronical Control Unit)である。制御部4は、エンジン2の回転数を制御する回転数制御部41と、3つの各取得部(圧力取得部、温度取得部、回転数取得部)にて算出または検出し取得された全ての検出結果からDOC311の活性化状態を判断する状態判断部42と、記憶部43と、を備える。活性化状態は、DOC311の活性又は非活性の状態を含む。また、制御部4は、記憶部43に記憶されるプログラムに含まれるコード又は命令によって実現する機能、及び/又は方法を実行する。制御部4は、例として、集積回路等に形成された論理回路又は専用回路によって本実施形態に開示される各処理を実現してもよい。また、これらの回路は、1又は複数の集積回路により実現されてよく、各実施形態に示す複数の処理を1つの集積回路により実現されることとしてもよい。
【0015】
記憶部43は、エンジン2の制御等の必要とされる各種プログラム及び各種データを記憶する機能を有する。また、記憶部43は、測定した信号等の取得した情報を記憶可能である。なお記憶部43は、制御部4の外部に設けられてもよい。記憶部43は、例えば、SSD、フラッシュメモリ、HDDなど各種の記憶媒体により実現することができる。記憶部43は、
図3に示すように、エンジン2の目標回転数である第一目標回転数431及び第二目標回転数432、並びに、エンジン2の回転数をいずれの目標回転数に制御するかを判断するための第一閾値433及び第二閾値434を、記憶する。第一目標回転数431は、固定値として、記憶部43に予め記憶しておくことができる。また、第二目標回転数432は、可変値として、記憶部43に予め記憶しておくことができる。さらに、記憶部43は、DOCモデル情報435と、DOC311の劣化係数436とを記憶する。
【0016】
図3は、DOCモデルであり、DOC311の活性状態を表す状態図である。DOC311の状態図において、横軸はDOC入口温度Tであり、縦軸は排ガス流量Fである。
図3の一点鎖線で示される境界P1は、DOC311の活性状態が活性と非活性との間で変化する境界を示している。DOC311は、DOC入口温度Tが境界P1よりも低温である場合に非活性となり、DOC入口温度Tが境界P1よりも高温である場合は活性となる。
【0017】
またDOC311は、排ガス流量Fが下限流量F1以下である場合、DOC入口温度Tに関わらず非活性となる。下限流量F1は、DOC311が排ガス浄化装置3毎に異なる値であってもよい。前述したDOCモデル情報435は、DOC311の状態図に示される境界(P1)を特定する情報及び下限流量F1等の情報を含む。
【0018】
DOCモデル情報435は、例えば、DOC311の温度と時間の積である累積温度又はDOC311の使用時間を変数とし、予め定められた劣化係数436を定数として含むことができる。制御部4は、
図3の状態図においてDOC311が活性(例えば、状態S1’,S2~S4)である場合は、炭化水素(HC)の噴射量を制御する。また制御部4は、
図3の状態図においてDOC311が非活性(例えば、状態S1,S5)である場合は、炭化水素(HC)の噴射を停止する。
【0019】
なお、制御部4は、予め定めた期間の経過又はその他の条件の成就等により現在の想定されるDOC311の状態図(DOCモデル)を求めてDOCモデル情報435を更新することができる。
【0020】
次に、
図4を参照して、排ガス浄化装置3の制御フローチャートについて説明する。制御部4は、
図4のフローチャートの制御を車両1の停車時において実行する。また
図5(a)及び
図5(b)は、停車時の手動再生によるエンジン2の回転数(
図5(a))とDOC入口温度T(
図5(b))の時間変化の関係を示す図である。
【0021】
図4のステップS101で、制御部4は、圧力検出センサ34の圧力やその他情報(例えば、エンジン回転数・燃料噴射量・吸入空気量あるいはブースト圧、EGR(Exhaust gas recirculation)差圧などの情報)から排ガス流量Fを算出し、温度検出センサ35からDOC入口温度Tを、回転数検出センサ21からエンジン回転数を、エンジン状態検出部22から再生モードを、それぞれ取得する。また、制御部4は、劣化係数436を記憶部43から取得する。
【0022】
ステップS102で、制御部4は、DOC入口温度T、排ガス流量F及び劣化係数436等の情報から、DOC311の酸化触媒反応の状態が活性であるか又は非活性であるかを求める。具体的に、制御部4は、DOCモデル情報435を記憶部43から取得し、各センサからそれぞれ取得した排ガス流量F及びDOC入口温度Tが、DOCモデル情報435であるDOC311の状態図(
図3参照)内のどこに位置しているかに応じて、DOC311の状態が活性であるか又は非活性であるかを判断する。例えば、制御部4(状態判断部42)は、DOC入口温度Tと排ガス流量Fとから、DOC311の状態が
図3の状態S1又は状態S5に位置するとき(つまり、DOC入口温度Tが境界P1よりも低いとき又は排ガス流量Fが下限流量F1よりも小さいとき)、DOC311は非活性であると判断する。また、制御部4(状態判断部42)は、DOC311の状態が状態S2~S4に位置するとき(換言すれば、DOC入口温度Tが境界P1よりも高く、且つ、排ガス流量Fが下限流量F1よりも大きいとき)、DOC311は活性であると判断する。
【0023】
ステップS102においてDOC311(酸化触媒)が非活性(例えば、状態S1)と判断された場合、制御部4(状態判断部42)は、ステップS108で固定のエンジン回転数である第一目標回転数431を設定する。制御部4(回転数制御部41)は、第一目標回転数431に応じた回転数となるようにエンジン2の回転数を制御する。
【0024】
ステップS109で、制御部4は、待ち時間t1の間、ステップS108の制御を継続した後、ステップS102の処理に進む。待ち時間t1は予め設定された固定値とすることができる。ステップS108の制御を継続することにより、エンジン2の回転数は増加し、DOC入口温度T及び排ガス流量Fの一方又は両方が増加するため、例えばDOC311の状態S1は状態S2に向けて遷移する。
【0025】
一方、ステップS102においてDOC311(酸化触媒)が活性と判断した場合、制御部4はステップS103の処理に進む。例えば、ステップS108及びステップS109で、エンジン2の回転数を第一目標回転数431に制御することによりDOC311の状態を状態S1から状態S2に遷移させた場合は、再度のステップS102の判断で、制御部4(状態判断部42)が、DOC311の状態を活性と判断する。
【0026】
ステップS103で、制御部4は、排ガス流量Fが第一閾値433未満又は以下であるか判断する。排ガス流量Fが第一閾値433未満又は以下である場合、制御部4は、ステップS104の処理に進む。一方、排ガス流量Fが第一閾値433未満又は以下ではない場合、制御部4は、ステップS105の処理に進む。
【0027】
例えば、制御部4は、DOC311の状態が
図3の状態S1’である場合、排ガス流量Fが第一閾値433に相当する流量F2未満又は以下であることから、ステップS104の処理に進む。なお、流量F2は、下限流量F1に所定の偏差Fdを加えた値であり、固定値であってもよいし可変値であってもよい。これにより、エンジン2の回転数は第二目標回転数432(
図5の回転数Q2)で制御される。一方、制御部4は、DOC311の状態が状態S2である場合、排ガス流量Fが第一閾値433に相当する流量F2未満又は以下ではないことから、ステップS105の処理に進む。
【0028】
ステップS104で、制御部4(状態判断部42)は、ステップS103で排ガス流量FとDOC入口温度Tに応じた可変のエンジン回転数である第二目標回転数432を設定する。つまり、制御部4は、DOC311(酸化触媒)が活性であると判断された場合であって(ステップS102,活性)、排ガス流量Fが第一閾値433未満又は以下ではない場合に(S103,No)、ステップ105の処理に進む。
【0029】
例えば、ステップS104で、制御部4は、DOC311の状態が
図3の状態S2である場合、排ガス流量Fが第一閾値433に相当する流量F2未満又は以下ではないことから、エンジン2の回転数を、第一目標回転数431よりも小さい第二目標回転数432(
図5の回転数Q2)に制御する。
【0030】
ステップS105で、制御部4は、DOC入口温度Tが第二閾値434を満たすか判断する。第二閾値434は、例えば、境界P1から所定の温度偏差Tdだけ離れた温度の範囲T1である。
図3に示すように境界P1の温度は一定では無いため、範囲T1は、排ガス流量Fの変化に対応して高温側又は低温側に移動することがある。制御部4は、DOC入口温度Tが範囲T1内である場合は第二閾値434を満たすと判断し(S105,Yes)、ステップS106の処理に進む。一方、制御部4は、DOC入口温度Tが第二閾値434を満たさないと判断した場合(S105,No)、ステップS107の処理に進む。
【0031】
ステップS106で、制御部4(回転数制御部41)は、第二目標回転数432を補正する。
【0032】
例えば、制御部4は、DOC311の状態が状態S2’である場合、DOC入口温度Tが第二閾値434に相当する温度の範囲T1内にあることから、エンジン2の回転数である現在の第二目標回転数432を小さい値(
図5の回転数Q3)に補正する(ステップS105,Yes及びステップS106)。エンジン2の第二目標回転数432を小さい値に補正することで、DOC311の状態は、
図3に示されるように、状態S2’から状態S3に変化する。
【0033】
ステップS107で、制御部4は、待ち時間t2の間、ステップS108の制御を継続した後、ステップS102の処理に進む。待ち時間t2は予め設定された固定値とすることができる。制御部4は、ステップS107の処理の後、ステップS102の処理に進む。
【0034】
第二目標回転数432の補正を行うステップS106の処理は、DOC311が活性であり(S102,活性)、且つ、DOC入口温度Tが第二閾値434(範囲T1)を満たす場合(S105,Yes)、繰り返し行われる。
【0035】
また、例えば、制御部4は、2回目以降のステップS106の処理において、DOC入口温度Tが範囲T1よりも低温側に位置した場合、エンジン2の第二目標回転数432を、回転数Q3から回転数Q4に増加するように補正する。すると、
図3のDOC311の状態は状態S3から状態S4(又はDOC入口温度Tが高温側の位置)に遷移することができる。
【0036】
以上説明したように、制御部4(回転数制御部41)は、DOC311の活性状態(活性又は非活性のいずれであるのか)、DOC入口温度T、及び、排ガス流量Fに応じて、エンジン2の回転数を第一目標回転数431又は第二目標回転数432に応じた回転数となるように制御する構成について説明した。
【0037】
なお、制御部4は、
図4のフローチャートに示す制御を、車両1の走行動力断時において実行してもよい。
【0038】
図6は、DOC311の変化後の状態図である。DOC311は、使用により、熱又は経年等により変化することがある。
図6の例では、DOC311の活性領域と非活性領域の境界P1’は、境界P1よりも高温側に移動している。従って、DOC311の活性のために必要な温度は、
図3の状態図の同じ排ガス流量Fと比較して増加する。制御部4は、境界P1’の位置情報を含む劣化後のDOCモデルを、DOCモデル情報435として更新して記憶することができる。これにより、排ガス浄化装置3は、DOC311の状態図が変化した場合であっても、DOC311の活性化を
図4の制御フローに従って適切に行うことができる。
【0039】
図7及び
図8は、車両1の走行時にDOC311の自動再生が行われた場合のエンジン回転数及びDOC入口温度Tの関係を示している。
図7は、車両1の停車時にDOC入口温度Tが比較的低めであった場合に、制御部4が
図4の制御フローチャートに従ってエンジン2の回転数を制御した様子を示している。また、
図8は、車両1の停車時にDOC入口温度Tが比較的高めであった場合に、制御部4が
図4の制御フローチャートに従ってエンジン2の回転数を制御した様子を示している。いずれの例であっても、制御部4は、DOC311を活性に維持しつつDOC入口温度Tを適度な温度(過剰に高温とならない温度)に制御することができる。
【0040】
以上、エンジン2を備える車両1の排ガスを浄化するための排ガス浄化装置3について説明した。本実施形態の排ガス浄化装置3は、排ガスの粒子状物質を除去するためのDPF312(ディーゼルパティキュレートフィルター)と、エンジン2とDPF312(ディーゼルパティキュレートフィルター)の間に配置されるDOC311(酸化触媒)と、エンジン2とDPF312(ディーゼルパティキュレートフィルター)の間において通過する排ガスの流量を算出する流量算出部(制御部4)と、DOC311(酸化触媒)の入口の温度を検出する温度検出センサ35(温度取得部)と、エンジン2の回転数を検出する回転数検出センサ21(回転数取得部)と、エンジン2の回転数を制御する回転数制御部41と、3つの各取得部(34,35,21)にて算出又は取得された全ての検出結果からDOC311(酸化触媒)の活性化状態を判断する状態判断部42と、を備える。状態判断部42は、DOC311(酸化触媒)が非活性と判断した場合は固定のエンジン回転数である第一目標回転数431を設定し、DOC311(酸化触媒)が活性と判断した場合は流量と温度に応じた可変のエンジン回転数である第二目標回転数432を設定する。回転数制御部41は、車両1の停車時または車両1の走行動力断時において、第一目標回転数431又は第二目標回転数432に応じた回転数となるようにエンジン2を制御する。
【0041】
これにより、気温又は天候等の外部環境によりDOC入口温度Tが低下した場合であっても、エンジン2の回転数を制御することにより、DOC311の活性化を適切に行うことができる。また、DOC311の再生を効率よく適時に行うことで、再生時間を短くして燃料の消費量を抑えることもできる。
【0042】
以上で本発明に係る排ガス浄化装置3の実施形態についての説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0043】
例えば、本実施形態では、記憶部43が制御部4内に設けられる構成について説明したが、目標回転数431,432、閾値433,434、DOCモデル情報435、及びその他の情報の一部又は全部を記憶する記憶部を制御部4の外部に設けてもよい。
【0044】
また、本実施形態の判断処理において、所定の値未満又は以下である状態を真(Yes)とし、所定の値より大きい状態を偽(No)として判断した処理(例えば、ステップS103、S105)は、それぞれ、当該値未満の状態を真(Yes)とし、当該値以上又は大きい状態を偽(No)として判断してもよい。
【0045】
また、待ち時間t1及び待ち時間t2は、車両1の種類(トラック、バス)、排ガス浄化装置3に接続される排ガス通路51,52の形状(長さ、流路内径)、又は、環境条件等によって、適宜設定することができる。これにより、エンジン2の回転数制御により、DOC311の活性状態を安定制御することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 車両
2 エンジン
3 排ガス浄化装置
4 制御部
21 回転数検出センサ(回転数取得部)
22 エンジン状態検出部
31 前段ユニット
32 後段ユニット
33 連結管
34 圧力検出センサ
35 温度検出センサ(温度取得部)
41 回転数制御部
42 状態判断部
43 記憶部
51 排ガス通路
52 排ガス通路
431 第一目標回転数
432 第二目標回転数
433 第一閾値
434 第二閾値
435 DOCモデル情報
436 劣化係数
F 排ガス流量
F1 下限流量
F2 流量
Fd 偏差
P1 境界
P1’ 境界
Q1~Q4 回転数
S1~S5 状態
S1’ 状態
S2’ 状態
T DOC入口温度
T1 範囲
Td 温度偏差