(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169857
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】移動体制御システム、指令装置、及び移動体制御方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20241129BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20241129BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
G08G1/09 V
G05D1/02 P
H04Q9/00 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086672
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 智一
(72)【発明者】
【氏名】和田 佑太
【テーマコード(参考)】
5H181
5H301
5K048
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA06
5H181AA07
5H181AA14
5H181BB04
5H181FF13
5H181FF27
5H181LL09
5H301AA01
5H301AA10
5H301BB05
5H301BB07
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD06
5H301DD07
5H301DD17
5H301KK02
5H301KK04
5H301KK07
5H301KK19
5K048BA48
5K048DC01
5K048EB02
(57)【要約】
【課題】 移動体を動作させる動作指令が操作者の操作する複数の指令装置から出される場合において、複数の動作指令を調整しながら移動体を制御できる移動体制御システムを提供する。
【解決手段】 複数の指令装置から対象となる移動体の動作指令を受け付ける指令受付部と、複数の動作指令を受け付けた場合に、受け付けた複数の各動作指令の情報に基づいて複数の各動作指令から1つの動作指令を選択する判断部と、選択された動作指令の選択結果を各指令装置に通知する通知部と、選択された動作指令に基づき、対象となる移動体の動作を制御する制御部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の指令装置から対象となる移動体の動作指令を受け付ける指令受付部と、
複数の前記動作指令を受け付けた場合に、受け付けた複数の各前記動作指令の情報に基づいて複数の各前記動作指令から1つの前記動作指令を選択する判断部と、
選択された前記動作指令の選択結果を各前記指令装置に通知する通知部と、
選択された前記動作指令に基づき、前記対象となる移動体の動作を制御する制御部と、
を備える移動体制御システム。
【請求項2】
前記判断部は、受け付けた複数の各前記動作指令の情報に基づいて複数の各前記動作指令の優先度を決定し、前記優先度に基づいて1つの前記動作指令を選択する請求項1に記載の移動体制御システム。
【請求項3】
前記判断部は、前記動作指令の内容毎に予め設定された既定優先度、前記指令装置の識別番号の順位、前記動作指令を受け付けた時刻、及び前記動作指令を受け付けた回数の少なくともいずれか1つに基づいて複数の各前記動作指令から1つの前記動作指令を選択する請求項1に記載の移動体制御システム。
【請求項4】
前記判断部は、複数の前記動作指令を受け付けた場合であって実行中の前記動作指令がある場合に、実行中の前記動作指令の進行状態を取得して中断が可能であるか否かを判定し、中断が可能である場合には、受け付けた複数の各前記動作指令の情報に基づき1つの前記動作指令を選択し、中断が不可能である場合には、実行中の前記動作指令を継続する請求項1に記載の移動体制御システム。
【請求項5】
前記判断部は、選択されなかった前記動作指令を発信した前記指令装置から前記優先度の増大要求を受け付けた場合、前記増大要求のあった前記動作指令の前記優先度を変更し、変更後の各前記動作指令の前記優先度に基づいて1つの前記動作指令を再選択する請求項2に記載の移動体制御システム。
【請求項6】
前記指令受付部は、複数の前記指令装置から前記動作指令に付された要求優先度を受け付け、
前記判断部は、各前記動作指令の前記要求優先度に基づき、各前記動作指令の前記優先度を決定する請求項2に記載の移動体制御システム。
【請求項7】
移動体を制御する移動体制御システムに動作指令を送信する指令送信部と、
前記移動体制御システム又は他の指令装置から取得する情報に基づき、自己の前記動作指令の要求優先度を設定する要求優先度設定部とを備え、
設定した前記要求優先度を付して自己の前記動作指令を前記移動体制御システムに送信する指令装置。
【請求項8】
他の指令装置から対象となる移動体の動作指令を受け付けるとともに、前記他の指令装置と情報をやりとりする通信部と、
自己の前記動作指令を含め、複数の前記動作指令を受け付けた場合に、複数の各前記動作指令の情報に基づいて複数の各前記動作指令から1つの前記動作指令を選択する判断部と、
選択された前記動作指令を、前記対象となる移動体に送信する指令送信部と、
を備える指令装置。
【請求項9】
自己の前記動作指令を送信する指令送信部、及び
前記通知部から前記選択された動作指令の選択結果を受信する通知受信部を有する指令装置を、さらに備える
請求項1に記載の移動体制御システム。
【請求項10】
複数の指令装置から対象となる移動体の動作指令を受け付けるステップと、
複数の前記動作指令を受け付けた場合に、受け付けた複数の各前記動作指令の情報に基づいて複数の各前記動作指令から1つの前記動作指令を選択するステップと、
選択された前記動作指令の選択結果を各前記指令装置に通知するステップと、
選択された前記動作指令に基づき、前記対象となる移動体の動作を制御するステップとを備える移動体制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体を制御する移動体制御システム、移動体制御システムに指令を出す指令装置、及び移動体制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動運転、遠隔操作等の技術の進展に伴い、無人運転可能な電動台車、フォークリフト等の移動体の開発が進められ、これらに動作指令を出す制御システムが検討されている。
例えば特許文献1には、荷役に係る作業を予め規定したシーケンスに従って、自動運転動作を制御し、シーケンスに規定された作業が所定の状態まで進行した場合に、自動運転動作を一時的に停止させて、外部電子端末を用いた操作者の指示を受け付け、人手による作業と自動運転による作業とを安全に協調させることができるフォークリフトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、複数の外部電子端末から複数の動作指令を受け付けた場合は、移動体の動作の調整が難しいという課題があった。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであり、移動体を動作させる動作指令が複数の指令装置から出される場合において、複数の動作指令を調整しながら移動体を制御できる移動体制御システム、指令装置、移動体制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る移動体制御システムは、複数の指令装置から対象となる移動体の動作指令を受け付ける指令受付部と、複数の動作指令を受け付けた場合に、受け付けた複数の各動作指令の情報に基づいて複数の各動作指令から1つの動作指令を選択する判断部と、選択された動作指令の選択結果を各指令装置に通知する通知部と、選択された動作指令に基づき、対象となる移動体の動作を制御する制御部とを備える。
【0007】
また、本開示に係る指令装置は、移動体を制御する移動体制御システムに動作指令を送信する指令送信部と、移動体制御システム又は他の指令装置から取得する情報に基づき、自己の動作指令の要求優先度を設定する要求優先度設定部とを備え、設定した要求優先度を付して自己の動作指令を移動体制御システムに送信する。
【0008】
また、本開示に係る指令装置は、他の指令装置から対象となる移動体の動作指令を受け付けるとともに、他の指令装置と情報をやりとりする通信部と、自己の動作指令を含め、複数の動作指令を受け付けた場合に、複数の各動作指令の情報に基づいて複数の各動作指令から1つの動作指令を選択する判断部と、選択された動作指令を、対象となる移動体に送信する指令送信部とを備える。
【0009】
本開示に係る移動体制御方法は、複数の指令装置から対象となる移動体の動作指令を受け付けるステップと、複数の動作指令を受け付けた場合に、受け付けた複数の各動作指令の情報に基づいて複数の各動作指令から1つの動作指令を選択するステップと、選択された動作指令の選択結果を各指令装置に通知するステップと、選択された動作指令に基づき、対象となる移動体の動作を制御するステップとを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、移動体に複数の指令装置から動作指令が出される場合において、複数の動作指令を調整しながら移動体を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1に係る移動体制御システム及び周辺機器の構成を示す概略ブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る移動体の概略構成図である。
【
図3】実施の形態1に係る移動体制御システムの処理フローの一例を示すフローチャートである。
【
図4】実施の形態1に係るデータテーブルの一例である。
【
図5】実施の形態1に係るデータテーブルの一例である。
【
図6】実施の形態1に係る移動体制御システムの処理フローの一例を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態1に係る移動体制御システムの各機能を実現する処理回路の一例を示す概略構成図である。
【
図8】実施の形態1に係る移動体制御システムの処理フローの一例を示すフローチャートである。
【
図9】実施の形態1に係る移動体制御システムの処理フローの一例を示すフローチャートである。
【
図10】実施の形態2に係る指令装置及び周辺機器の構成を示す概略ブロック図である。
【
図11】実施の形態2に係る移動体制御システムの処理フローの一例を示すフローチャートである。
【
図12】実施の形態3に係る指令装置及び周辺機器の構成を示す概略ブロック図である。
【
図13】実施の形態3に係る指令装置の処理フローの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
実施の形態1に係る移動体制御システム10について、図を用いて説明する。
図1は、実施の形態1に係る移動体制御システム10及び周辺機器の構成を示す概略ブロック図である。
図1において、移動体制御システム10は、指令受付部101、判断部102、通知部103、制御部104、記憶部105を備える。移動体制御システム10は、図示される指令装置21、22を含む複数の指令装置2から移動体Mの動作について動作指令を受け付ける。移動体制御システム10と指令装置2とは例えば無線の通信路31を介して通信する。通信路31は有線であってもよい。移動体制御システム10は、複数の指令装置2から受けた動作指令の1つを移動体Mに送信する。移動体Mが複数あれば、例えば
図1に示す移動体M1、M2、M3から対象となる移動体Mを選定し、選定した移動体Mに動作指令を送る。
【0013】
移動体制御システム10は、例えば移動体Mの動作を監視する監視室に設置され、通信路31を介して、複数の指令装置2から動作指令を受け、対象となる移動体Mに動作指令を出す。通信ネットワーク、クラウド等を利用して遠隔操作してもよい。
移動体Mが特定されている場合は、移動体M内に移動体制御システム10を搭載して、移動体M内で制御してもよい。
【0014】
指令装置2は、例えば操作者が個別に携帯する電子端末、作業管理部門毎に設置された電子装置等である。指令装置21、22は、それぞれ指令送信部211、221、通知受信部212、222、通信部213、223を有する。指令装置2は、2台に限らずさらに多数あってもよい。
【0015】
移動体Mは、例えば
図2に示す自動運転が可能な牽引台車である。移動体Mは、例えばヘッド部1000及び台車部1001で構成され、ヘッド部1000には移動体制御システム10からの制御指令を受ける制御指令受信部1002、指令に従い移動体Mを駆動する駆動機構1003等が搭載される。駆動機構1003の制御は、移動体制御システム10の制御部104がすべてを担ってもよく、移動体M内で行うようにしてもよい。移動体Mは、牽引台車の他、フォークリフトでもよく、人、物等を輸送するための搬送車でもよい。
【0016】
移動体制御システム10では、
図3に示す処理フローで処理が進められる。移動体制御システム10の指令受付部101は、複数の指令装置2から対象となる移動体Mの動作指令を受け付ける(ステップS01)。判断部102は、複数の動作指令を受け付けた場合に、受け付けた複数の各動作指令の情報に基づいて複数の各動作指令から1つの動作指令を選択する(ステップS02)。通知部103は、選択された動作指令の選択結果を各指令装置2に通知する(ステップS03)。制御部104は、選択された動作指令に基づき、対象となる移動体Mの動作を制御する(ステップS04)。
【0017】
判断部102は、例えば
図4に示す動作指令の内容毎に予め設定された既定優先度を用いて複数の各動作指令から1つの動作指令を選択することができる。例えば既定優先度が最も高い1つの動作指令を選択する。
また
図5に示す指令装置2の識別番号の順位を用いてもよい。例えば管理者が所持する携帯端末の識別番号(ID)の順位を上げると作業管理がしやすい場合は、この順位が高い動作指令を選択する。先に進める必要がある作業を担当する作業者が所持する携帯端末のIDの順位を高くしてもよい。
【0018】
また、動作指令を受け付けた時刻を用いて、先に受け付けた動作指令を選択するようにしてもよい。同じ指令装置2から何度も指令が送信される場合には、自己の動作指令を選択してほしい要望があるとみなし、例えば動作指令を受け付けた回数をカウントしておき、そのカウント数に基づき選択してもよい。さらに、上述した動作指令の情報を複合させて選択してもよい。
【0019】
判断部102は、受け付けた複数の各動作指令の情報に基づいて複数の各動作指令の優先度を決定し、優先度に基づいて1つの動作指令を選択することができる。例えば既定優先度が高いほど優先度を高くして各動作指令の優先度を決定する。そして優先度が最も高い1つの動作指令を選択する。
また例えば指令装置2の識別番号の順位が高いほど優先度を高くしてもよい。
また、動作指令を受け付けた時刻を用いて、先に受け付けた動作指令の優先度が高くなるように優先度を決定してもよい。さらに、このようにして決定した優先度で優劣がつかない場合には、複合して優先度を決定してもよい。
各動作指令の情報、優先度を決定するためのデータテーブル等は、移動体制御システム10の記憶部105に記憶させておいてもよく、図示しないデータ入力部から入力してもよい。
このように、複数の各動作指令の情報に基づいて複数の各動作指令から1つの動作指令を選択すればよい。
【0020】
また、判断部102は、複数の動作指令を受け付けた場合に、既に実行中の動作指令がある場合は、移動体Mから実行中の動作指令の進行状態を取得して中断が可能であるか否かを判定し、中断が可能である場合には、選択した動作指令を実行する判断をし、中断が不可能である場合には、実行中の動作指令を継続する判断をする。
【0021】
また判断部102は、例えば当初の作業計画になかった作業を行う必要が生じた等の計画変更に対応できるよう、優先度の変更を行う。
例えば
図6の処理フローに示すように、移動体制御システム10は、指令受付部101で複数の指令装置2から動作指令を受け付け(ステップS11)、判断部102で受け付けた複数の各動作指令の情報に基づき各動作指令の優先度を決定し(ステップS12)、決定した優先度に基づいて選択した動作指令を各指令装置2に通知する。そしてこの場合に選択されなかった動作指令を送信した指令装置2から、優先度の増大要求を受け付ける。優先度の増大要求を受け付け(ステップS13のYes)、競合する他の指令装置2の要求がなく調整不要(ステップS14のNo)の場合、当該動作指令の優先度を高く変更する(ステップS15)。そして変更した優先度を含め、各動作指令の優先度を決定する(ステップS17)。そして決定した優先度に基づき1つの動作指令を再選択する(ステップS18)。
【0022】
選択されなかった動作指令を送信した指令装置2から、優先度の増大要求を受け付ける例について述べたが、指令装置2は、移動体制御システム10から通知を受ける前に、優先度の増大要求を行ってもよい。
また複数の指令装置2から優先度の増大要求が有り、調整が必要な場合(ステップS14のYes)には、さらに指令装置2のIDの順位、受付時刻、受付回数等を用いて優先度を調整して変更してもよい(ステップS16)。
【0023】
制御部104は、判断部102から動作指令を受けると、記憶部105から動作内容を呼び出し、呼び出した動作内容に関する作業を開始させる。そして作業が完了すると、通知部103に作業が完了したことを通知する。
制御部104は、例えば「移動体MをP地点まで移動させる」という指令Xを受信した場合、記憶部105から指令Xに相当する動作シーケンスSXを呼び出し、動作シーケンスSXの内容に基づいて移動体Mの動作を実行する。判断部102により選択判断された動作指令に基づく動作シーケンスSのすべての実行が完了したとき、通知部103に指令Xの作業が完了したことを通知する。
【0024】
通知部103は、指令装置2に選択された動作指令の選択結果を通知する。選択結果とは、例えば受け付けた指令装置2及びその動作指令である。どの指令装置2の動作指令を待機させ、どの指令装置2の動作指令を拒否した等の結果を含んでもよい。選択した動作指令が完了したことを通知してもよい。選択に用いた優先度、優先度決定の根拠等を含んでもよい。
通知部103が通知するのはメッセージでもよく、データでもよい。また、指令装置21、22の通信部213、223は、判断部102における動作指令の選択判断に必要な情報のやりとりを行うが、指令受付部101、通知部103を用いて信号の送受信を行ってもよい。やりとりする信号は、メッセージでもよく、データでもよい。液晶パネル等の表示部にメッセージ等を表示させ、画面上に表示させた選択肢をタッチして回答するようにしてもよい。
【0025】
ここで、移動体制御システム10の各機能は、処理回路によって実現される。
図7は、移動体制御システム10の各機能を実現する処理回路の一例を示す構成図である。移動体制御システム10は、演算処理装置40と、複数の記憶装置41と、通信装置42を有している。
【0026】
演算処理装置40には、例えば、CPU(Central Processing Unit)が用いられる。複数の記憶装置41は、演算処理装置40との間においてデータを送受信し、データを記憶する。通信装置42は、通信路31を介して指令装置2、移動体Mと通信を行う。
【0027】
また、演算処理装置40には、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、IC(Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いた論理回路、及び各種の信号処理回路が備えられていてもよい。また、演算処理装置40として、同じ種類のもの又は異なる種類のものが複数備えられ、各処理が複数の演算処理装置によって実行されてもよい。
【0028】
記憶装置41として、例えば、演算処理装置40からのデータの読み出し及び書き込みが可能に構成されたRAM(Random Access Memory)、演算処理装置40からデータを読み出し可能に構成されたROM(Read Only Memory)が備えられる。
【0029】
移動体制御システム10の各機能は、演算処理装置40が、記憶装置41に記憶されたソフトウェア又はプログラムを実行し、ハードウェアと協働することにより実現される。移動体制御システム10に設定される設定データは、ソフトウェア又はプログラムの一部として、記憶装置41に記憶されていてもよく、ユーザにより入力されるようにしてもよい。
【0030】
図8を用いて移動体制御システム10の具体的な処理の例について説明する。この例において、n台の指令装置
1~n(nは正数)が設けられており、指令受付部101は、指令装置
1~nからの指令を待つ(ステップS21)。例えば、動作act
iを指令する指令装置
i(iは1~nの正数)から指令があった場合、判断部102は、実行中の動作Actが存在するか確認する(ステップS22)。以後、動作actのうち移動体Mが実行中の動作をActと表記する。実行中のActが存在しない場合(ステップS22のNo)は、複数の指令装置2から動作指令があるか確認する(ステップS23)。複数の指令装置2から動作指令がない場合(ステップS23のNo)、Actを指令装置
iから受けたact
iとし(ステップS24)、通知部103から指令装置
1~nに指令装置
iからの指令を受けたこと、動作指令の優先度等の動作指令情報を通知する(ステップS25)。そして、act
iに基づくActを実行し(ステップS26)、Actが完了すれば(ステップS27のYes)、通知部103から指令装置
1~nに指令装置
iの指令した動作が完了した通知を行う(ステップS28)。
【0031】
実行中のActが存在する場合(ステップS22のYes)は、動作指令に基づき実行中のAct及び新たに指令されたactiの優先度を決定する(ステップS29)。そして、Actとactiの優先度を比較する(ステップS30)。
actiの優先度がActの優先度以下であれば(ステップS30のYes)、通知部103は新たな指令を行った指令装置iに、例えば指令装置hから指令されたActを実行中で、受け付けた指令装置iの動作指令actiの優先度が実行中のAct以下である情報を通知する(ステップS31)。
【0032】
指令装置iから優先度を増大する要求を受け付けた場合(ステップS32のYes)、例えばactiの優先度を1ランクアップする等優先度を変更する(ステップS33)。そして、再度Actとactiの優先度を比較する(ステップS34)。
actiの優先度がActの優先度以下であれば(ステップS34のYes)、通知部103は再度指令装置iに選択結果を通知する。
【0033】
actiの優先度がActの優先度を超える場合(ステップS30のNo又はステップS34のNo)、判断部102は、実行中のActの進行状況を取得し(ステップS35)、中断が可能な場合、実行中のActを中断してよいか、指令装置hにメッセージを送信する(ステップS36)。指令装置hから中断を許可する通知がきた場合(ステップS37のYes)、通知部103は、指令装置1~nに指令装置hのActを中断し、指令装置iの動作指令を受け付ける通知を行う(ステップS38)。そして、Actをactiに変更して(ステップS39)、Act実行(ステップS26)に進む。指令装置hがAct中断を許可しない場合は、そのままAct実行を継続する(ステップS26)。
【0034】
実行中のActがなく、複数の指令装置2からの動作指令を受け付けた場合(ステップS23のYes)も、上述したように複数の動作指令に基づき各動作指令の優先度を決定し、複数の動作指令の調整を行うことができる。
移動体制御システム10は、優先度の低い指令装置2からの優先度増大要求がなければ、例えば優先度の低い指令装置2が指令の待機を了承したとみなす。指令装置2から待機了承、取消の通知を受け取るようにしてもよい。一部の通知を省略してもよい。
【0035】
図9は、動作指令を受け付けた回数に基づき優先度を決定する処理フローの一例である。指令受付部101は、指令装置
1~nからの指令を待つ(ステップS41)。例えば、動作act
jを指令する指令装置
j及び動作act
kを指令する指令装置
k(j、kは1~nの正数)から指令があった場合、判断部102は、指令装置
jからの動作act
j及び指令装置
kからの動作act
kの指令を受けた受付回数を記憶部105から呼び出し、それぞれ1追加してカウントする(ステップS43)。そして受付回数に基づき、受付回数が多いほど操作者の要求が強いものとして優先度を決定する(ステップS44)。受付回数は、例えば当日の受付回数としてもよく、1週間以内の受付回数としてもよい。設定期間内の受付回数とすればよい。
【0036】
そして、actjとactkの優先度を比較する(ステップS45)。actjの優先度がactkの優先度を超えていれば(ステップS45のYes)、通知部103は指令装置1~nに、指令装置iの指令を受付けたことを通知する(ステップS46)。実行するActをactjとして(ステップS47)、Act実行に進み(ステップS48)、引き続き指令装置1~nからの指令を待つ(ステップS41)。
【0037】
actjの優先度=actkの優先度であれば(ステップS49のYes)、例えば指令装置の識別番号の順位に基づき優先度を決定して(ステップS50)、優先度の比較(ステップS45)に戻る。actjの優先度<actkの優先度であれば(ステップS49のNo)、通知部103は指令装置1~nに、指令装置kの指令を受付けたことを通知し(ステップS51)、実行するActをactkとして(ステップS52)、Act実行に進む(ステップS48)。
【0038】
複数の指令がない場合は(ステップS42のNo)、指令されたactをActとしてAct実行に進む(ステップS48)。
ステップS50で行う優先度の決定は、動作指令を受けた時刻として早く受付けた指令の優先度を高くしてもよい。
【0039】
このように、複数の指令装置2から対象となる移動体Mの動作指令を受け付け、受け付けた複数の各動作指令の情報に基づいて複数の各動作指令から1つの動作指令を選択し、選択された動作指令に基づき、対象となる移動体Mの動作を制御することにより、複数の指令装置2から出された動作指令を調整しながら移動体Mを制御できる。
また、受け付けた複数の各動作指令の情報に基づいて複数の各動作指令の優先度を決定し、優先度に基づいて1つの動作指令を選択することにより、どの指令装置2の動作指令の優先度が高いか予め周知できるため、調整しやすくなる。
また、実行中の動作指令がある場合に、実行中の動作指令の進行状態を取得して中断が可能であるか否かを判定し、中断が可能である場合には、受け付けた複数の各動作指令の情報に基づき1つの動作指令を選択し、中断が不可能である場合には、実行中の動作指令を継続するため、動作指令の調整、移動体Mの制御がスムーズとなる。中断が可能である場合には、動作指令を出した指令装置2の中断許可を求めることができるため、各指令装置2の要望を反映できる。
また、指令装置2は優先度の増大要求をすることができ、優先度の増大要求があった場合に優先度を高くして他の動作指令の優先度と比較するので、指令装置2を所持する操作者の要望を反映して、複数の指令装置2から出された動作指令を調整しながら移動体Mを制御できる。
【0040】
なお、通知部103が選択された動作指令の選択結果を各指令装置2に通知するのは、すべての指令装置2に通知してもよいし、例えば作業計画のある指令装置2を特定して、特定された各指令装置2に通知してもよい。
【0041】
また、指令装置2の動作指令を受付けて制御部104により移動体Mを制御する動作は、自動運転の動作シーケンスSの実行でもよく、手動運転への切り替え指令であってもよい。移動体Mを操縦する操縦者の動作と、制御部104による動作を交互に実行することも可能である。制御部104は、例えば操縦者がブレーキを操作した場合にブレーキ信号を受信する等して移動体Mの状態を知ることができる。
【0042】
実施の形態2.
実施の形態2に係る移動体制御システム10について、図を用いて説明する。
実施の形態1では、移動体制御システム10の判断部102が受け付けた複数の各動作指令の情報に基づいて複数の各動作指令から1つの動作指令を選択する例について説明したが、実施の形態2では、指令装置2側で、移動体制御システム10又は他の指令装置から取得する情報に基づき、自己の動作指令の要求優先度を設定し、この要求優先度を付して自己の動作指令を移動体制御システム10に送信する。その他は実施の形態1と同様である。
【0043】
例えば
図10に示すように、指令装置21は、移動体制御システム10の情報を通知受信部212で受信し、要求優先度設定部214により、他の指令装置2の情報に基づいた自己の動作指令の要求優先度を設定する。設定した要求優先度は、指令送信部211から移動体制御システム10の指令受付部101に自己の動作指令に付して送信される。要求優先度の設定方法は、実施の形態1において判断部102が行う優先度の決定と同様にすればよい。
【0044】
移動体制御システム10の情報とは、例えば、受け付けた動作指令の内容、指令した指令装置2、優先度決定に用いるデータテーブル等である。作業計画に基づく作業スケジュール等必要な情報を通信部213を介して要求してもよい。
また、通信部213により、図示する指令装置22等、他の指令装置2と通信して、動作指令情報を取得し、要求優先度設定部214により、他の指令装置2の情報に基づいた自己の動作指令の要求優先度を設定してもよい。
【0045】
また、移動体制御システム10から選択された動作指令の情報が通知され、自己の送信した動作指令が選択されなかったことがわかり、選択されなかった自己の動作指令の優先度の増大要求をしたい場合は、要求優先度を増大させて設定してもよい。
【0046】
図11は、指令装置2で要求優先度を設定する処理フローの一例である。
まず、指令装置2は、例えば動作指令の内容毎に予め設定された既定優先度を参照して、自己の優先度を算出する(ステップS61)。また他の指令装置2がどのような動作指令を指令しようとしているのかを取得し、同様に予め設定された既定優先度を参照して、他の指令装置の優先度を算出する(ステップS62)。ここで、他の指令装置2が指令した動作の実行中であったり、他の指令の実行完了を待っている状態であったり、他の指令装置2との待機順を割り当てられている状態であったりする等の情報を含んでもよい。
そして、算出した自己の指令装置2の優先度と他の指令装置2の優先度を比較する(ステップS63)。自己の指令装置2の優先度が他の指令装置2の優先度以上である場合(ステップS63のYes)は、要求優先度を自己の動作指令の優先度とし(ステップS64)、要求優先度を動作指令に付して移動体制御システム10に送信する(ステップS65)。送信後の処理は移動体制御システム10が担う。
【0047】
他の指令装置2の優先度が自己の指令装置2の優先度を超える場合(ステップS63のNo)は、自己の指令装置2の優先度を変更するか判定し(ステップS66)、変更する場合(ステップS66のYes)は、自己の指令装置2の優先度を例えば高く変更する(ステップS67)。そして変更した優先度で再度比較に進む(ステップS63)。変更しない場合(ステップS66のNo)は、そのまま要求優先度を自己の動作指令の優先度とし(ステップS64)、要求優先度を動作指令に付して移動体制御システム10に送信する(ステップS65)。
ステップS66で行う判定は、指令装置2を所持する操作者が選択入力してもよいし、過去に優先度を決定した統計データ等を用いて、自動的に判定するようにしてもよい。
自己の指令装置2の動作指令が急を要さない状況であれば、他の指令装置2の優先度を上げるため、優先度を低く変更することも可能である。
【0048】
このように、指令装置2側で設定した要求優先度を動作指令に付して、移動体制御システム10に送信することにより、移動体制御システム10は、複数の指令装置2の状況を考慮した要求優先度を取得して、優先度の決定と1つの操作指令の選択を行うことができ、複数の指令装置2から出された動作指令を調整しながら移動体を制御できる。
また、指令装置2から他の指令装置2の情報を考慮するとともに操作者の要望を反映した要求優先度を取得できるので、移動体制御システム10側で、スムーズに移動体Mを制御できる。
【0049】
なお、指令装置21に要求優先度設定部214を備えた例を示したが、他の指令装置2に備えてもよく、複数の指令装置2に備えてもよい。複数の要求優先度の調整は、移動体制御システム10で行うことが可能である。
【0050】
実施の形態3.
実施の形態3に係る指令装置2について、図を用いて説明する。
実施の形態1では、移動体制御システム10の判断部102が受け付けた複数の各動作指令の情報に基づいて1つの動作指令を選択する例について説明したが、実施の形態3では、指令装置2の判断部215が受け付けた動作指令及び自己の動作指令の情報に基づいて1つの動作指令を選択する。その他は実施の形態1と同様である。
【0051】
図12に示すように、例えば指令装置21が移動体M1に動作指令を出したい場合に、他の指令装置22、23、24が動作指令を出そうとしているのか否か知りたい場合がある。そこで指令装置21は、通信部213において、他の指令装置22、23、24と情報のやりとりをする。そして通知受信部212において、他の指令装置22、23、24から移動体M1の動作指令を受け付ける。
【0052】
自己の動作指令を含め、移動体M1に対し複数の動作指令を受け付けた場合は、判断部215において、受け付けた複数の各動作指令の情報に基づいて複数の各動作指令から1つの動作指令を選択する。そして選択された動作指令を、指令送信部211から対象となる移動体M1に送信する。
【0053】
ここで判断部215は、実施の形態1で述べた移動体制御システム10の判断部102と同様に、例えば動作指令の内容毎に予め設定された既定優先度、指令装置2の識別番号の順位、動作指令を受け付けた時刻、動作指令を受け付けた回数等の情報に基づき、1つの動作指令を選択する。各動作指令の優先度を決定し、優先度に基づいて1つの動作指令を選択してもよい。これらの動作指令の情報を複合させて選択してもよい。
各動作指令の情報、優先度を決定するためのデータテーブル等は、指令装置21の記憶部216に記憶させておいてもよく、図示しないデータ入力部から入力してもよい。
【0054】
そして、選択された動作指令は、例えば移動体M1内の制御部で実行される。指令装置21又は移動体制御システム10に制御部を設けて、移動体M1を制御してもよい。
図13に示すように、指令装置21は、他の指令装置2から対象となる移動体Mの動作指令を受け付けるとともに、他の指令装置2と情報をやりとりし(ステップS71)、自己の動作指令を含め、複数の動作指令を受け付けた場合に、複数の各動作指令の情報に基づいて複数の各動作指令から1つの動作指令を選択する(ステップS72)。そして選択された動作指令を、対象となる移動体Mに送信する(ステップS73)。
このように、指令装置2間で複数の動作指令の情報をやりとりして、移動体Mへの動作指令を選択するので、複数の動作指令を調整しながら移動体Mを制御できる。指令装置2は互いの情報を理解できるのでスムーズな調整が可能となる。
【0055】
なお、指令装置21内に判断部215を設けた例について述べたが、判断部215は、他の指令装置22、23、24のいずれかにあってもよく、すべてにあってもよい。他の指令装置2は3台に限らず、1台でもよく多数あってもよい。
選択された動作指令の選択結果を各指令装置2に通信部213を介して通知したり、実行中の動作指令がある場合に中断の許可を得たり、選択されなかった動作指令を発信した指令装置2から優先度の増大要求を受け付け、増大要求のあった動作指令の優先度を変更するようにしてもよい。
各指令装置2内で設定された要求優先度を用いて動作指令の選択判断を行ってもよい。
つまり実施の形態1で述べた移動体制御システム10の判断部102と同様の機能を持たせることができる。実施の形態2で述べた指令装置2の機能を用いてもよい。
【0056】
本開示は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、又は複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、又は様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合又は省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0057】
10 移動体制御システム、2、21、22、23、24 指令装置、31 通信路、101 指令受付部、102、215 判断部、103 通知部、104 制御部、105、216 記憶部、211、221 指令送信部、212、222 通知受信部、213、223 通信部、214 要求優先度設定部、1000 ヘッド部、1001 台車部、1002 制御指令受信部、1003 駆動機構、M、M1、M2、M3 移動体