(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169859
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】制御装置、粉粒体供給システム、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B65G 53/66 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
B65G53/66 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086674
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】広江 隆治
(72)【発明者】
【氏名】森山 慧
【テーマコード(参考)】
3F047
【Fターム(参考)】
3F047AA13
3F047AB03
3F047AB06
3F047CA02
3F047CC11
(57)【要約】
【課題】供給先設備の指令どおりの流量で粉粒体を供給することができる制御装置を提供する。
【解決手段】粉粒体供給システムの制御装置であって、供給先設備から指示される切出し流量の指令値を粉粒体の質量濃度の設定値と、搬送ラインを流れるガス合計流量の設定値とに分解して設定する設定部と、前記質量濃度の設定値と、前記搬送ラインにおける前記粉粒体の質量濃度の計測値とに基づいて、加圧ガス、エアレーションガス、および搬送ガスのうち少なくとも1つのガスの流量を補正する補正設定値を算出する質量濃度制御部と、前記ガス合計流量の設定値および前記補正設定値に基づいて、前記加圧ガス、前記エアレーションガス、および前記搬送ガスのうち少なくとも1つのガスの流量設定値を決定する配分部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に粉粒体を貯蔵する吹込みタンクと、
前記吹込みタンクに加圧ガスを供給する加圧ガスラインと、
前記吹込みタンクにエアレーションガスを供給するエアレーションガスラインと、
前記吹込みタンクから切出された前記粉粒体に搬送ガスを供給して供給先設備へ搬送する搬送ラインと、
を備える粉粒体供給システムの制御装置であって、
前記供給先設備から指示される切出し流量の指令値を粉粒体の質量濃度の設定値と、前記搬送ラインを流れるガス合計流量の設定値とに分解して設定する設定部と、
前記質量濃度の設定値と、前記搬送ラインにおける前記粉粒体の質量濃度の計測値とに基づいて、前記加圧ガス、前記エアレーションガス、および前記搬送ガスのうち少なくとも1つのガスの流量を補正する補正設定値を算出する質量濃度制御部と、
前記ガス合計流量の設定値および前記補正設定値に基づいて、前記加圧ガス、前記エアレーションガス、および前記搬送ガスのうち少なくとも1つのガスの流量設定値を決定する配分部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記質量濃度制御部は、前記質量濃度の計測値が前記質量濃度の設定値に一致するように前記エアレーションガスの前記補正設定値を求め、
前記配分部は、
前記吹込みタンクへのガス合計流入量と前記加圧ガスおよび前記エアレーションガスの流量との関係を予め規定した配分情報に基づいて、前記ガス合計流量の設定値に対応するエアレーションガス流量基準値および加圧ガス流量基準値を定め、
前記エアレーションガス流量基準値に前記補正設定値を加算して前記エアレーションガスの流量設定値を決定し、
前記加圧ガス流量基準値から前記補正設定値を減じて前記加圧ガスの流量設定値を決定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記質量濃度制御部は、前記質量濃度の計測値が前記質量濃度の設定値に一致するように、前記搬送ガスの前記補正設定値を求め、
前記配分部は、前記ガス合計流量から前記加圧ガスの流量の計測値および前記エアレーションガスの流量の計測値を減じた搬送ガス基準流量を設定するとともに、設定した前記搬送ガス基準流量に前記補正設定値を加算して、前記搬送ガスの流量設定値を決定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記粉粒体供給システムは、前記搬送ラインに並列に接続される複数の前記吹込みタンクを備え、
前記配分部は、前記ガス合計流量の設定値を複数の前記吹込みタンクそれぞれの加圧ガス流量設定値およびエアレーションガス流量設定値に配分する、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記粉粒体供給システムは、前記吹込みタンクの高さ方向において、前記エアレーションガスラインよりも高い位置に設けられ、前記吹込みタンクに第2のエアレーションガスを供給する第2のエアレーションガスラインをさらに備え、
前記制御装置は、前記配分部が決定したエアレーションガスの流量設定値に応じたエアレーションガス流量調整弁の開度に基づいて、前記第2のエアレーションガスの流量設定値を決定する第2の配分部をさらに備える、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記吹込みタンク内における粉粒体の循環モデルに基づいて前記第2のエアレーションガスの流量設定値の変化率設定値を決定する変化率設定部をさらに備え、
前記第2の配分部は、前記変化率設定値にさらに基づいて、前記第2のエアレーションガスの流量設定値を決定する、
請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記粉粒体供給システムは、前記吹込みタンクの高さ方向において、前記エアレーションガスラインよりも高い位置に設けられ、前記吹込みタンクに第3のエアレーションガスを供給する第3のエアレーションガスラインをさらに備え、
前記第2の配分部は、前記第2のエアレーションガスの流量設定値を、所定の割合で、前記第2のエアレーションガスの流量と前記第3のエアレーションガスの流量とに按分する、
請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記粉粒体供給システムは、前記吹込みタンクの重量を計測する秤量計と、前記搬送ラインにおける粉粒体の流量を計測する流量計とをさらに備え、
前記制御装置は、前記吹込みタンクの重量および前記粉粒体の流量の計測値に基づいて、前記切出し流量の指令値を補正する切出し流量補正部をさらに備える、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項9】
前記切出し流量補正部は、前記供給先設備の状態量にさらに基づいて、前記切出し流量の指令値を補正する、
請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記供給先設備の状態量の指令値および計測値に基づいて、前記切出し流量の指令値を補正する切出し流量補正部をさらに備える、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項11】
内部に粉粒体を貯蔵する吹込みタンクと、
前記吹込みタンクに加圧ガスを供給する加圧ガスラインと、
前記吹込みタンクにエアレーションガスを供給するエアレーションガスラインと、
前記吹込みタンクから切り出された前記粉粒体に搬送ガスを供給して供給先設備へ搬送する搬送ラインと、
請求項1から10のいずれか一項に記載の制御装置と、
を備える粉粒体供給システム。
【請求項12】
内部に粉粒体を貯蔵する吹込みタンクと、
前記吹込みタンクに加圧ガスを供給する加圧ガスラインと、
前記吹込みタンクにエアレーションガスを供給するエアレーションガスラインと、
前記吹込みタンクから切出された前記粉粒体に搬送ガスを供給して供給先設備へ搬送する搬送ラインと、
を備える粉粒体供給システムの制御方法であって、
前記供給先設備から指示される切出し流量の指令値を粉粒体の質量濃度の設定値と、前記搬送ラインを流れるガス合計流量の設定値とに分解して設定するステップと、
前記質量濃度の設定値と、前記搬送ラインにおける前記粉粒体の質量濃度の計測値とに基づいて、前記加圧ガス、前記エアレーションガス、および前記搬送ガスのうち少なくとも1つのガスの流量を補正する補正設定値を算出するステップと、
前記ガス合計流量の設定値および前記補正設定値に基づいて、前記加圧ガス、前記エアレーションガス、および前記搬送ガスのうち少なくとも1つのガスの流量設定値を決定するステップと、
を有する制御方法。
【請求項13】
内部に粉粒体を貯蔵する吹込みタンクと、
前記吹込みタンクに加圧ガスを供給する加圧ガスラインと、
前記吹込みタンクにエアレーションガスを供給するエアレーションガスラインと、
前記吹込みタンクから切出された前記粉粒体に搬送ガスを供給して供給先設備へ搬送する搬送ラインと、
を備える粉粒体供給システムの制御装置に、
前記供給先設備から指示される切出し流量の指令値を粉粒体の質量濃度の設定値と、前記搬送ラインを流れるガス合計流量の設定値とに分解して設定するステップと、
前記質量濃度の設定値と、前記搬送ラインにおける前記粉粒体の質量濃度の計測値とに基づいて、前記加圧ガス、前記エアレーションガス、および前記搬送ガスのうち少なくとも1つのガスの流量を補正する補正設定値を算出するステップと、
前記ガス合計流量の設定値および前記補正設定値に基づいて、前記加圧ガス、前記エアレーションガス、および前記搬送ガスのうち少なくとも1つのガスの流量設定値を決定するステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、粉粒体供給システム、制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、冶金反応容器内の溶融金属に粉粒化された反応剤を吹き込む粉粒体供給システムについて記載されている。
【0003】
図25は、従来の粉粒体供給システム90の一例を示す図である。粉粒体供給システム90は、秤量吹込みタンク92から供給先設備910へ粉粒体を搬送および供給する。
【0004】
秤量吹込みタンク92の上部には、タンク内の圧力をフィードバック制御するための圧力制御装置94および加圧制御弁V91を備える加圧ガスライン95が接続される。秤量吹込みタンク92の下部には、タンク内の粉粒体を流動化するためのエアレータ93が取り付けられている。エアレータ93にエアレーションガスライン96を介してエアレーションガスを供給すると、粉粒体は流動化され、秤量吹込みタンク92と搬送ライン97との差圧により搬送ライン97に切出される。そして、搬送ライン97に設けた流量制御装置98によって搬送ガスを流量フィードバック制御することにより、指定された流量で粉粒体を供給先設備10へ搬送するようにしている。
【0005】
また、秤量吹込みタンク92には、ロードセル等の秤量計91が取り付けられ、粉粒体を含む秤量吹込みタンク92の重量が計測される。エアレーションガスライン96にはエアレーションガス流量制御弁V92が設けられており、エアレーションガスライン96を介して供給されるガスの流量は、エアレーションガス流量制御弁V92の開度を調整することにより制御することができる。切出しライン99には、切出し流量制御弁V93が設けられており、切出し流量制御弁V93の開度を調整することにより、切出しライン99へ供給される粉粒体の流量を制御することができる。切出しライン99における切出し流量制御弁V93の上流側には、流速センサC91と質量濃度センサC92が設けられ、切出しライン99へ切出される粉粒体の流速と質量濃度がそれぞれのセンサにより計測される。秤量吹込みタンク92から切出しライン99へと切出される粉粒体の重量は、秤量計91が計測する重量によって検出することができる。搬送ライン97には搬送気体の流量をフィードバック制御することを目的とした流量制御装置98および搬送ガス流量制御弁V94が設けられており、搬送ガスの流量は所望の流量に制御される。
【0006】
粉粒体の搬送流量(kg/s)は、秤量計91が指示する粉粒体を含む秤量吹込みタンク92の重量m(kg)の時間変化率dm/dtからわかる。
【0007】
しかし、計るべき粉粒体の重量に比べると、その容器である秤量吹込みタンク92の重量が大きいので、秤量計91で粉粒体の重量を正確に計ることは難しい。切出し流量(kg/s)は1秒毎の重量変化によってあらわすことができる。例えば、1秒毎の切出し流量が1kg/sであるならば、秤量計91の分解能は0.1kg程度が必要である。しかし、秤量吹込みタンク92の重量が数トンある場合には、安価な計器で十分な分解能を得ることは難しい。
【0008】
そこで、特許文献2では、計測した切出し流量(kg/s)が供給先設備10から指示された指令値に一致するように、制御部920が切出し流量制御弁V93の開度を、例えば比例積分制御(PI制御)で調節する技術が開示されている。
【0009】
また、特許文献2には、制御部920が秤量吹込みタンク92の圧力を、例えば比例積分制御で調節することにより、切出し流量(kg/s)と指令値とを一致させる技術も開示されている。秤量吹込みタンク92の圧力が増加すると、搬送ライン97との圧力差が拡大し、切出し流量制御弁V93の前後差圧が拡大する。これにより、切出し流量制御弁V93の開度を開かなくても切出し流量(kg/s)を増やすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭62-215424号公報
【特許文献2】特許第6812071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一般に、粉粒体の切出し流量g(kg/s)は、秤量吹込みタンク92から切出される粉粒体の粒子速度vP(m/s)および質量濃度ρ(kg/m3)を計測し、搬送ライン97の配管断面積A(m2)から次式(1)で算出する。なお、粒子速度vPは配管断面についての平均速度であり、たとえば切出しライン99に設けられた流速センサC91で計測する。質量濃度ρは、成分の質量(kg)を搬送ガスとの混合体の体積(m3)で除した値であり、たとえば切出しライン99に設けられた質量濃度センサC92で計測する。
【0012】
【0013】
しかし、配管の断面で粉粒体の流速が一様でない場合、例えば「粉粒体が配管の中心部で速く流れ配管の周辺部で遅く流れる」場合のように流速の偏りがある場合には、式(1)で利用する粒子速度vP(m/s)の値は正確でなくなる。仮に、標準的な流動状態について配管断面についての平均の粒子速度vP(m/s)を指示するように流速センサを校正できたとしても、例えば起動時や停止時の微小流量状態では誤差が発生することは避けられない。秤量吹込みタンク92は、粉粒体の切出しによっていずれ空になる。空になっても粉粒体の供給が続けられるように、粉粒体供給システム90は供用中の秤量吹込みタンク92の他に、複数の秤量吹込みタンク92を並列に設けて待機させる。粉粒体供給システム90は、供用中のタンクが空になる前に、待機する別のタンクに切替えて粉粒体の供給を継続する。これは、タンク切替えと呼ばれる運転操作であるが、タンク切替えの最中は、供用側と待機側、すくなくとも二つの秤量吹込みタンク92で搬送先への粉粒体供給を分け合う。この切替え運転を行っている期間、それぞれの秤量吹込みタンク92からの切出しは標準的な状態から外れるので、粒子速度vPを精密に計測することは困難となる。結果として、切出し流量はさらに不正確となり、供給先設備910への粉粒体の供給流量が変動する。
【0014】
粉粒体供給システム90が石炭などの可燃原料を反応炉に供給する用途に使われるなら、秤量吹込みタンク92からの切出し流量が安定しないと、反応炉内の化学種の組成が変動し、窒素酸化物などの大気汚染物質の排出が増えるなどの環境的な損失や、燃焼温度が変動し反応炉が短寿命化するなどの経済的な損失が出る可能性がある。または、粉粒体供給システム90が樹脂などの化学製品を生産する反応炉に供給する用途に使われるなら、秤量吹込みタンク92からの切出し流量が安定せず反応炉内の化学種の組成が変動すると、製品の生産性や品質が損なわれる可能性がある。タンク切替えは、例えば1時間に数回の頻度で行われる。このため、粉粒体供給システムの稼働中、常に供給先設備の指令どおりに粉粒体を供給できるように、より精度よく切出し流量を制御する技術が求められている。
【0015】
本開示の目的は、供給先設備の指令どおりの流量で粉粒体を供給することができる制御装置、粉粒体供給システム、制御方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示の一態様によれば、制御装置は、内部に粉粒体を貯蔵する吹込みタンクと、前記吹込みタンクに加圧ガスを供給する加圧ガスラインと、前記吹込みタンクにエアレーションガスを供給するエアレーションガスラインと、前記吹込みタンクから切出された前記粉粒体に搬送ガスを供給して供給先設備へ搬送する搬送ラインと、を備える粉粒体供給システムの制御装置であって、前記供給先設備から指示される切出し流量の指令値を粉粒体の質量濃度の設定値と、前記搬送ラインを流れるガス合計流量の設定値とに分解して設定する設定部と、前記質量濃度の設定値と、前記搬送ラインにおける前記粉粒体の質量濃度の計測値とに基づいて、前記加圧ガス、前記エアレーションガス、および前記搬送ガスのうち少なくとも1つのガスの流量を補正する補正設定値を算出する質量濃度制御部と、前記ガス合計流量の設定値および前記補正設定値に基づいて、前記加圧ガス、前記エアレーションガス、および前記搬送ガスのうち少なくとも1つのガスの流量設定値を決定する配分部と、を備える。
【0017】
本開示の一態様によれば、粉粒体供給システムは、内部に粉粒体を貯蔵する吹込みタンクと、前記吹込みタンクの下部に設けられるエアレータと、前記吹込みタンクに加圧ガスを供給する加圧ガスラインと、前記エアレータにエアレーションガスを供給するエアレーションガスラインと、前記吹込みタンクから切り出された前記粉粒体に搬送ガスを供給して供給先設備へ搬送する搬送ラインと、上述の制御装置と、を備える。
【0018】
本開示の一態様によれば、制御方法は、内部に粉粒体を貯蔵する吹込みタンクと、前記吹込みタンクに加圧ガスを供給する加圧ガスラインと、前記吹込みタンクにエアレーションガスを供給するエアレーションガスラインと、前記吹込みタンクから切出された前記粉粒体に搬送ガスを供給して供給先設備へ搬送する搬送ラインと、を備える粉粒体供給システムの制御方法であって、前記供給先設備から指示される切出し流量の指令値を粉粒体の質量濃度の設定値と、前記搬送ラインを流れるガス合計流量の設定値とに分解して設定するステップと、前記質量濃度の設定値と、前記搬送ラインにおける前記粉粒体の質量濃度の計測値とに基づいて、前記加圧ガス、前記エアレーションガス、および前記搬送ガスのうち少なくとも1つのガスの流量を補正する補正設定値を算出するステップと、前記ガス合計流量の設定値および前記補正設定値に基づいて、前記加圧ガス、前記エアレーションガス、および前記搬送ガスのうち少なくとも1つのガスの流量設定値を決定するステップと、を有する。
【0019】
本開示の一態様によれば、プログラムは、内部に粉粒体を貯蔵する吹込みタンクと、前記吹込みタンクに加圧ガスを供給する加圧ガスラインと、前記吹込みタンクにエアレーションガスを供給するエアレーションガスラインと、前記吹込みタンクから切出された前記粉粒体に搬送ガスを供給して供給先設備へ搬送する搬送ラインと、を備える粉粒体供給システムの制御装置に、前記供給先設備から指示される切出し流量の指令値を粉粒体の質量濃度の設定値と、前記搬送ラインを流れるガス合計流量の設定値とに分解して設定するステップと、前記質量濃度の設定値と、前記搬送ラインにおける前記粉粒体の質量濃度の計測値とに基づいて、前記加圧ガス、前記エアレーションガス、および前記搬送ガスのうち少なくとも1つのガスの流量を補正する補正設定値を算出するステップと、前記ガス合計流量の設定値および前記補正設定値に基づいて、前記加圧ガス、前記エアレーションガス、および前記搬送ガスのうち少なくとも1つのガスの流量設定値を決定するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0020】
上記態様によれば、指令どおりの流量で粉粒体を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1の実施形態に係る粉粒体供給システムの構成、および制御装置の機能構成を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係る制御装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】切出し流量の指令値に対するガス合計流量および粉粒体質量濃度の対応情報の一例を示す図である。
【
図4】吹込みタンクのガス合計流入量に対するエアレーションガス流量基準値および加圧ガス流量基準値の配分情報の一例を示す図である。
【
図5】第1の実施形態の変形例1Aに係る制御装置の機能構成を示す図である。
【
図6】第1の実施形態の変形例1Bに係る粉粒体供給システムの構成を示す図である。
【
図7】第2の実施形態に係る粉粒体供給システムの構成、および制御装置の機能構成を示す図である。
【
図8】第2の実施形態の変形例2Aに係る粉粒体供給システムの構成、および制御装置の機能構成を示す図である。
【
図9】第2の実施形態の変形例2Aに係る供給先設備の模式図である。
【
図10】微粉炭供給流量と反応炉出口温度の関係を例示する図である。
【
図11】第2の実施形態の変形例2Bに係る粉粒体供給システムの構成、および制御装置の機能構成を示す図である。
【
図12】第3の実施形態に係る粉粒体供給システムの構成、および制御装置の機能構成を示す図である。
【
図13】第3の実施形態に係る吹込みタンクの供給量分担の切替え例を示す第1の図である。
【
図14】第3の実施形態に係る吹込みタンクの供給量分担の切替え例を示す第2の図である。
【
図15】第4の実施形態に係る粉粒体供給システムの構成、および制御装置の機能構成を示す図である。
【
図16】吹込みタンク内の粉粒体の質量濃度の分布の一例を示す第1の図である。
【
図17】吹込みタンク内の粉粒体の質量濃度の分布の一例を示す第2の図である。
【
図18】第5の実施形態に係る粉粒体供給システムの構成、および制御装置の機能構成を示す図である。
【
図19】吹込みタンク内におけるエアレーションガスの流れを説明するための第1の図である。
【
図21】第5の実施形態に係る変化率設定部の機能を説明するための図である。
【
図22】第5の実施形態の変形例に係る粉粒体供給システムの構成、および制御装置の機能構成を示す図である。
【
図23】吹込みタンク内におけるエアレーションガスの流れを説明するための第2の図である。
【
図24】少なくとも1つの実施形態に係る粉粒体供給システムの制御装置のハードウェア構成を示す概略ブロック図である。
【
図25】従来の粉粒体供給システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1の実施形態>
以下、
図1~
図4を参照しながら第1の実施形態について詳しく説明する。
本実施形態に係る粉粒体供給システム100は、例えば、脱炭素の手段として注目される、褐炭や石炭を原料とする水素製造設備のガスかの反応炉において、粉粒化した原料を一定の流量で反応炉に供給するシステムに好適である。なお、粉粒体供給システム100は、この用途に限られることなく、上記した冶金設備や樹脂などの製造設備の他、粉粒体を利用する様々な設備に適用されてよい。
【0023】
(粉粒体供給システムの構成)
図1は、第1の実施形態に係る粉粒体供給システムの構成、および制御装置の機能構成を示す図である。
図1に示すように、粉粒体供給システム100は、吹込みタンク2と、吹込みタンク2の下部に設けられるエアレータ3と、吹込みタンク2の上部に接続される加圧ガスライン5と、エアレータ3に接続されるエアレーションガスライン6と、吹込みタンク2の下部に接続される切出しライン9と、搬送ライン7と、制御装置20等を含む。加圧ガスライン5には、加圧制御弁V1と、加圧ガスの流量を計測する流量センサC1が設けられる。エアレーションガスライン6には、エアレーションガス流量制御弁V2と、エアレーションガスの流量を計測する流量センサC2が設けられる。切出しライン9には、切出し流量制御弁V3が設けられる。搬送ライン7には、搬送ガス流量制御弁V4と、搬送ガスの流量を計測する流量センサC3、および搬送ライン7における粉粒体の質量濃度を計測するための質量濃度センサC4が設けられる。質量濃度センサC4は、搬送ライン7と切出しライン9との合流点P1、または合流点P1よりも下流側に設けられる。各センサC1~C4は制御装置20に接続される。
【0024】
(制御装置の機能構成)
制御装置20は、供給先設備10が指示する切出し流量(kg/s)の指令値g
SV5に従って供給先設備10へ粉粒体を供給するように、粉粒体供給システム100の各部を制御する。
図1に示すように、制御装置20は、設定部201と、質量濃度制御部202と、エアレーションガス流量配分部203(配分部)と、加圧ガス流量制御装置204と、エアレーションガス流量制御装置205とを備える。
【0025】
設定部201は、供給先設備10から指示される切出し流量の指令値gSV5を粉粒体の質量濃度の設定値ρSV5と、搬送ライン7を流れるガス合計流量の設定値gGSV5とに分解して設定する。
【0026】
質量濃度制御部202は、質量濃度の設定値ρSV5と、搬送ライン7における粉粒体の質量濃度ρ5の計測値とに基づいて、加圧ガス、エアレーションガス、および搬送ガスのうち少なくとも1つのガスの流量を補正する補正設定値を算出する。本実施形態では、質量濃度制御部202は、エアレーションガスの流量を補正するエアレーションガス流量補正設定値ΔgGSV2を補正設定値として算出する。
【0027】
配分部は、加圧ガス、エアレーションガス、および搬送ガスのうち少なくとも1つのガスの流量の配分を決定する。本実施形態では、エアレーションガス流量配分部203が配分部として機能する。エアレーションガス流量配分部203は、ガス合計流量の設定値gGSV5と、エアレーションガス流量補正設定値ΔgGSV2とに基づいて、エアレーションガスの流量設定値gGSV2および加圧ガスの流量設定値gGSV1を決定する。
【0028】
加圧ガス流量制御装置204は、加圧ガス流量設定値gGSV1と加圧ガス流量gG1の計測値との差に基づいて、加圧制御弁V1の開度指令値rVLV1を調整するフィードバック制御器である。
【0029】
エアレーションガス流量制御装置205は、エアレーションガスの流量設定値gGSV2とエアレーションガス流量gG2の計測値との差に基づいて、エアレーションガス流量制御弁V2の開度指令値rVLV2を調整するフィードバック制御器である。
【0030】
(制御装置の処理)
図2は、第1の実施形態に係る制御装置の処理の一例を示すフローチャートである。
以下、
図2を参照しながら制御装置20の処理の流れについて説明する。なお、制御装置20は、
図2に示す一連の処理を所定の制御周期で繰り返し実行しているものとする。
【0031】
(1)ステップS01:指令値・計測値の取得
まず、制御装置20は、供給先設備10から粉粒体の切出し流量指令値gSV5を取得するとともに、各センサC1~C4から計測値を取得する。
【0032】
(2)ステップS02:質量濃度・ガス流量設定
次に、設定部201は、供給先設備から指示された切出し流量指令値gSV5を、粉粒体の質量濃度指令値ρSV5およびガス合計流量gGSV5に分解して設定する。
【0033】
粉粒体供給システム100は、供給先設備10が指示する切出し流量(kg/s)の指令値gSV5に従って、粉粒体を供給先設備10に供給する。このとき、重要なものは切出し流量(kg/s)である。実際の切出し流量が指令値gSV5と同じであれば、搬送ライン7中のガス流量を減らして、搬送ライン7中の粉粒体の質量濃度ρ5(kg/m3)を濃くして供給してもよい。あるいは、搬送ライン7中のガス流量を増やして、搬送ライン7中の粉粒体の質量濃度ρ5を薄くして供給してもよい。搬送ライン7中のガス流量を減らしてガスと粉粒体の混合体の流速が過少であると、一般的に、粉粒体は流れ方向について濃い塊となる部分と希薄部分とに分離し、供給先設備10への粉粒体供給が脈動する。この場合、時間的に均一に供給することができない。一方、ガス流量を増やして搬送ライン7中の混合体の流速を上げると、一般的に、粉粒体は流れ方向について均一に混合し、供給先設備10に粉粒体を時間的に均一に供給することができる。しかし、搬送ライン7の搬送ガスを流すための送風機(不図示)の所要動力が増えることが課題である。
【0034】
図3は、切出し流量の指令値に対するガス合計流量および粉粒体質量濃度の対応情報の一例を示す図である。
実際には、設定部201は、試験運転などを行った結果に基づいて、搬送ライン7中のガス流量を流速と所要電力とのバランスがとれた適切な値に設定する。例えば、
図3に示すように、切出し流量指令値g
SV5に対するガス合計流量設定値g
GSV5(実線)と、同じく切出し流量指令値g
SV5に対する粉粒体質量濃度設定値ρ
SV5(破線)のグラフ(対応情報D1)を予め制御装置20に記憶してもよい。
図3の数値は定格値に正規化したものである。設定部201は、このように予め設定したグラフ(
図3)や、関数、テーブル等で表した対応情報D1を使って、切出し流量指令値g
SV5に対応する質量濃度設定値ρ
SV5およびガス合計流量設定値g
GSV5を定める。
【0035】
なお、切出し流量指令値gSV5をガス合計流量設定値gGSV5と質量濃度設定値ρSV5に分解する方法は、粉粒体の種類や産地によって変えてもよい。したがって、設定部201は、種類や産地ごとに複数の対応情報D1を用意し、その中から最適の対応情報D1を選定して用いてもよい。
【0036】
(3)ステップS03:質量濃度制御
次に、質量濃度制御部202は、搬送ライン7の粉粒体質量濃度ρ5を、設定部201が設定した質量濃度設定値ρSV5に一致させる処理を行う。エアレーションガスライン6は吹込みタンク2の下部の出口付近に接続されるので、吹込みタンク2から流出する粉粒体を希釈する。このため、質量濃度制御部202は、粉粒体質量濃度ρ5が過剰であれはエアレーションガスの流量を追加し、または、粉粒体質量濃度ρ5が不足するときにはエアレーションガスの流量を削減する。このようにして、質量濃度制御部202は、搬送ライン7の粉粒体質量濃度ρ5をその設定値ρSV5に一致させることができる。例えば、質量濃度制御部202は、質量濃度センサC4が計測した搬送ライン7中の粉粒体質量濃度ρ5(kg/m3)と、質量濃度設定値ρSV5(kg/m3)との偏差に基づいて、式(2)の比例積分制御(PI制御)によりエアレーションガス流量補正設定値ΔgGSV2を定めても良い。kPは比例ゲインを表す一般的な記号である。エアレーションを増やと粉粒体は希釈されるので比例ゲインの値は負である。TIは積分時定数を表す一般的な記号である。tは時間である。
【0037】
【0038】
吹込みタンク2から流出する粉粒体の質量濃度は、吹込みタンク2の粉粒体残存量や粉粒体の粘性などによって変動することが避けられない。このため、上述したように搬送ライン7の粉粒体質量濃度ρ5を計測し、エアレーション補正により変動を補償することは実用上有効である。
【0039】
(4)ステップS04:ガス流量配分
次に、エアレーションガス流量配分部203は、搬送ライン7を流れるガス合計流量設定値gGSV5を粉粒体切出しの駆動力であるエアレーションガス流量gGSV2と加圧ガス流量gGSV1に分ける。本実施形態では、簡単のため吹込みタンク2には加圧ガスとエアレーションガスの二種類が供給されるとして説明する。一つの吹込みタンク2に供給されるガス合計流量が決まると、加圧ガスとエアレーションガスの流量の配分の比率には、切出しが安定する配分比率がある。例えば、エアレーションガスへの配分を0とすれば吹込みタンク2で粉粒体を流動化させることが難しくなり、粉粒体が固く締まって詰まるおそれがある。つまり、流動化に十分な量をエアレーションガス流量に配分しなければならない。そこで、エアレーションガス流量配分部203は、吹込みタンク2へのガス供給指令値に基づいて十分に流動化するようエアレーションガス流量基準値gGSV02を定める。
【0040】
図4は、吹込みタンクのガス合計流入量に対するエアレーションガス流量基準値および加圧ガス基準値の配分情報の一例を示す図である。
図4のように、吹込みタンク2へのガス合計流入量とエアレーションガス基準値g
GSV02との関係、および吹込みタンク2へのガス合計流入量と加圧ガス流量基準値g
GSV01との関係をグラフ(配分情報D2)として予め定めておき、制御装置20に記憶してもよい。吹込みタンク2へのガス合計流入量は、搬送ライン7を流れるガス合計流量設定値g
GSV5から、流量センサC3で計測した搬送ガス流量g
G4を差し引いた値である。吹込みタンク2へのガス合計流入量が0に近いときであっても、粉粒体を流動化させるために最低限のエアレーションガスが必要である。そうすると、エアレーションガスを流入させる分、加圧ガスの流量が負になる場合がある。加圧ガス流量基準値が負の値となる場合、吹込みタンク2に減圧ライン(不図示)を設けて余剰のガスを排出してもよい。または、加圧ガスが負になるような微小流量状態のときは、吹込みタンク2の運転を取りやめてもよい。
【0041】
エアレーションガス流量配分部203は、このように予め設定したグラフ(
図4)や、関数、テーブル等で表した配分情報D2を使って、吹込みタンク2へのガス合計流入量g
GSV5-g
G4に対応するエアレーションガス流量基準値g
GSV02および加圧ガス流量基準値g
GSV01を定める。なお、配分情報D2は、粉粒体の種類や産地によって変えてもよい。したがって、エアレーションガス流量配分部203は、種類や産地ごとに複数の配分情報D2を用意し、その中から最適の配分情報D2を選定して用いてもよい。
【0042】
エアレーションガス流量配分部203は、上記のように定めたエアレーションガス流量基準値gGSV02に、ステップS03において上式(2)で算出したエアレーションガス流量補正設定値ΔgGSV2を加算した値を、最終的なエアレーションガス流量設定値gGSV2とする。
【0043】
また、エアレーションガス流量配分部203は、エアレーションガス流量補正設定値ΔgGSV2によって吹込みタンク2へのガス合計流入量に誤差が出ないように、エアレーションガス流量設定値gGSV2に加算した分を、加圧ガス流量基準値gGSV01から差し引く。
【0044】
したがって、最終的にエアレーションガス流量設定値gGSV2および加圧ガス流量設定値gGSV1は、以下の式(3)で与えられる。
【0045】
【0046】
(5)ステップS05:流量制御
エアレーションガス流量制御装置205は、エアレーションガス流量設定値gGSV2と実際のエアレーションガス流量gG2との差に基づいてエアレーションガス制御弁V2の開度指令値rVLV2を調整して、エアレーションガス流量gG2をエアレーションガス流量設定値gGSV2と一致させる。
【0047】
加圧ガス流量制御装置204は、加圧ガス流量設定値gGSV1と実際の加圧ガス流量gG1との差に基づいて加圧制御弁V1の開度指令値rVLV1を調整して、加圧ガス流量gG1を加圧ガス流量設定値gGSV1と一致させる。
【0048】
なお、上式(3)で加圧ガス流量を指定すると、圧力制御弁V1は専ら搬送ライン7のガス流量の制御に利用されることとなるので、吹込みタンク2の圧力制御の機能を果たさない。このため、吹込みタンク2の圧力制御の機能を残すのであれば、式(3)に加えて、式(4)により切出し流量制御弁V3の開度を加減することにより、圧力制御の機能を実現してもよい。pSVは吹込みタンク2の圧力指令値、pは圧力センサ(不図示)で計測した吹込みタンク2内の圧力である。この場合、圧力制御は加圧制御弁V1の代わりに切出し流量制御弁V3で行うことになる。
【0049】
【0050】
(作用、効果)
以上のように、本実施形態に係る粉粒体供給システム100の制御装置20は、供給先設備10から指示される切出し流量指令値gSV5を粉粒体の質量濃度設定値ρSV5と、搬送ライン7を流れるガス合計流量設定値gGSV5とに分解して設定する設定部201と、質量濃度設定値ρSV5と、搬送ライン7における粉粒体の質量濃度ρ5の計測値とに基づいて、エアレーションガスの流量を補正する補正設定値ΔgGSV2を算出する質量濃度制御部202と、ガス合計流量gGSV5の指令値と、補正設定値ΔgGSV2とに基づいて、エアレーションガスの流量設定値gGSV2を決定するエアレーションガス流量配分部203(配分部)と、を備える。
【0051】
従来技術は、粉粒体流量(切出し流量)が供給先設備の指示する指令値に一致するように、計測した切出し流量に基づいて切出し流量制御弁の開度や、吹込みタンク2の圧力(加圧制御弁の開度)を加減していた。しかしながら、上記したように、切出し流量は粒子速度vPおよび質量濃度ρを計測して式(1)により算出するものであるが、粉粒体の流速が一様ではない場合には粒子速度vPを正確に計測することが困難となり、結果として実際の切出し流量が指令値と一致しない可能性があった。これに対し、本実施形態に係る制御装置20は、粒子速度vPを利用せず、切出し指令値gSV5を分解した質量濃度設定値ρSV5およびガス合計流量設定値gGSV5を満たすようにエアレーションガス流量を調整する。このようにすることで、制御装置20は、切出し流量のばらつきを抑制し、供給先設備10の指令値gSV5どおりの切出し流量で粉粒体を供給することができる。
【0052】
また、制御装置20のエアレーションガス流量配分部203は、吹込みタンク2へのガス合計流入量gGSV5-gG4と、加圧ガスおよびエアレーションガスの流量との関係を予め規定した配分情報D2に基づいて、ガス合計流量指令値gGSV5に対応するエアレーションガス流量基準値gGSV02および加圧ガス流量基準値gGSV01を定め、エアレーションガス流量基準値gGSV02に補正設定値ΔgGSV2を加算して、エアレーションガス流量設定値gGSV2を決定し、加圧ガス流量基準値gGSV01から補正設定値ΔgGSV02を減じて加圧ガス流量設定値gGSV1を決定する。
【0053】
このようにすることで、制御装置20は、ガス合計流量設定値gGSV5および質量濃度設定値ρSV5の両方を満たすように、エアレーションガス流量および加圧ガス流量の配分を適切に設定することができる。また、制御装置20は、吹込みタンク2内で粉粒体を流動化させるために十分なエアレーションガス流量を確保することができる。
【0054】
第1の実施形態では、加圧制御弁V1を搬送ライン7のガス流量の制御に利用し、その代わりに切出し流量制御弁V3で吹込みタンク2の圧力制御を行う例について説明したが、これに限られることはない。もちろん、従来どおりに加圧制御弁V1は圧力制御に利用して、切り出し流量制御弁V3によって搬送ライン7のガス流量がガス合計流量設定値gGSV5と一致するように調整してもよい。また、従来どおりに加圧制御弁V1は圧力制御に利用して、搬送ガス流量制御弁V4によって搬送ライン7のガス流量がガス合計流量設定値gGSV5と一致するように調整してもよい。このように、本実施形態は多数の変形が可能であるが、いずれも、設定部201が出力するガス合計流量設定値gGSV5および質量濃度設定値ρ5に従って、搬送ライン7のガス流量と、搬送ライン7の粉粒体の質量濃度を調整することが共通である。つまり、以下で説明する変形例も本実施形態の範囲に含まれる。
【0055】
<第1の実施形態の変形例1A>
第1の実施形態では、式(2)で計算するエアレーションガス流量補正設定値ΔgGSV2に基づきエアレーションガス流量を加減して、質量濃度を調整した。その派生として、搬送ガス流量を加減して質量濃度を調整してもよい。
【0056】
図5は、第1の実施形態の変形例1Aに係る制御装置の機能構成を示す図である。
図5に示すように、変形例1Aに係る制御装置20は、搬送ガス流量配分部206(配分部)と、搬送ガス流量制御装置207とをさらに備える。
【0057】
変形例1Aでは、
図2のステップS03において、質量濃度制御部202は、式(2)と同一の計算で搬送ガス流量補正設定値Δg
GSV4を計算する。
【0058】
また、第1の実施形態では、エアレーションガス流量配分部203が各ガスの流量の配分を決定する配分部として機能した。変形例1Aでは、エアレーションガス流量配分部203に代えて、搬送ガス流量配分部206が配分部として機能する。したがって、
図2のステップS04において、搬送ガス流量配分部206は、式(5)により、搬送ライン7を流れるガス合計流量の設定値g
GSV5から吹込みタンク2のガス合計流量g
G1+g
G2を差し引いて、搬送ガス流量基準値g
GSV04を定める。
【0059】
【0060】
また、搬送ガス流量配分部206は、式(6)に示すように搬送ガス流量基準値gGSV04を補正して、搬送ガス流量設定値gGSV4とする。
【0061】
【0062】
次に、
図2のステップS05において、搬送ガス流量制御装置207は、搬送ガス流量設定値g
GSV4と実際の搬送ガス流量g
G4との差に基づいて搬送ガス流量制御弁V4の開度指令値r
VLV4を調整するフィードバック制御を行い、搬送ガス流量g
G4を搬送ガス流量設定値g
GSV1と一致させる。
【0063】
なお、変形例1Aでは、エアレーションガス流量配分部203ではエアレーション流量の補正をしないので、式(3)は式(7)に変更する。
図2のステップS05において、エアレーションガス流量制御装置205および加圧ガス流量制御装置204は、それぞれ式(7)で求めた設定値g
GSV2およびg
GSV1に基づき、開度指令値r
VLV2およびr
VLV1を調整する。
【0064】
【0065】
なお、搬送ガスの搬送ライン7への合流点P1は、質量濃度センサC4の取り付け位置の上流側であり、かつ、質量濃度センサC4の取り付け位置に近接していることが望ましい。このように配置すると、搬送ガス流量gG4を変更してから質量濃度センサC4の指示に現れるまでの時間的な遅れが小さくなる。この時間的な遅れの小ささは、変形例1Aの特徴である。実施例1Aの構成によれば、時間的な遅れが小さいので、質量濃度の変動を素早く補正することができる。つまり、質量濃度の変動を抑制することができる。
【0066】
<第1の実施形態の変形例1B>
図6は、第1の実施形態の変形例1Bに係る粉粒体供給システムの構成を示す図である。
図6に示すように、変形例1Bでは、切出し流量制御弁V3は切出しライン9ではなく、搬送ライン7に設けられてもよい。例えば、後述する第3の実施形態のように複数の吹込みタンク2を並列に用いるとき、各吹込みタンク2の切出しライン9との合流点P1よりも下流側に、1つの共通する切出し流量制御弁V3を設ける。このようにすることで、複数の吹込みタンク2からの切出し流量を、共通の切出し流量制御弁V3を1つ設けるのみで一括して制御することができる。つまり、粉粒体供給システム100の構成を削減して、コストダウンできるというメリットがある。
【0067】
なお、変形例1Bは、上記した第1の実施形態および変形例1Aのいずれにも適用可能である。したがって、
図6では省略しているが、変形例1Bに係る制御装置20は、
図1に示す第1の実施形態の構成を有していてもよいし、
図5に示す変形例1Aの構成を有していてもよい。
【0068】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について
図7~
図8を参照しながら説明する。上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0069】
図7は、第2の実施形態に係る粉粒体供給システムの構成、および制御装置の機能構成を示す図である。
図7に示すように、本実施形態の粉粒体供給システム100は、吹込みタンク2に設けられた秤量計1と、搬送ライン7に設けられた流量計C5をさらに備える。
【0070】
また、本実施形態の制御装置20は、切出し流量補正部208をさらに備える。切出し流量補正部208は、秤量計1および流量計C5の計測値に基づいて、供給先設備10の指示する切出し流量指令値gSV5を補正する。
【0071】
第1の実施形態では、粉粒体の流量を計測しない構成とした。その代わり、第1の実施形態では、粉粒体の切出し流量指令値gSV5を粉粒体の質量濃度設定値ρSV5とガス合計流量設定値gGSV5に分解し、それぞれの計測値が設定値に一致するようにエアレーションガス流量制御弁V2の開度や加圧制御弁V1の開度を加減して、間接的に切出し流量を調節していた。これは、搬送ライン7を流れる粉粒体とガスの混合体の流量から切出し流量を精度よく計測する困難を回避するためである。
【0072】
しかし、切出し流量は、搬送ライン7で流量を計測しなくても吹込みタンク2の重量mが時間的に減少する時間変化率(kg/s)から推定することは可能である。例えば、吹込みタンク2は数トンの重量があり、一方、粉粒体の流出量は毎秒数キログラムであるとする。吹込みタンク2の内部で粉粒体をエアレーションの気泡が攪拌する振動雑音を考えると、例えば1秒毎に吹込みタンク2の重量減少を計ることは困難であろう。けれども、例えば30秒のように計測の時間間隔を広げるならば、吹込みタンク2の重量から切出し流量を推定することはできる。
【0073】
同様に、搬送ライン7を流れる粉粒体の流量(すなわち切出し流量)g5は、絶対的な精度はあきらめるとしても(定常バイアスはあきらめるとしても)、現在値からの増減であれば計測することは可能であろう。
【0074】
このように考えて、本実施形態では、切出し流量補正部208において、秤量計1が計測した吹込みタンク2の重量mの一定期間(例えば、30秒間)の時間差分値を切出し流量の定常値と定め、一定期間より短い時間間隔の変動は搬送ライン7の流量計C5で計測した粉粒体流量g5を用い、両者の加重和を使うことにより切出し流量の精度を改善する。式(8)は、この方式による切出し流量推定値g^の演算式である。
【0075】
【0076】
ここに、Wmは吹込みタンク2の重量mから切出し流量の定常値を計算する伝達関数であり、1秒相当の時間遅れの演算子q-1を用いると一定期間(例えば、30秒間)の時間差分は式(9)のように表される。
【0077】
【0078】
同様に、式(8)において、Wg5は搬送ラインを流れる粉粒体の流量g5の増減を表す伝達関数であり、式(10)のように表される。kg5は、粉粒体流量の計測値の重み係数である。計測値を信頼できるならkg5の値は1に設定する。信頼できないならばその値は0である。kg5は試運転を行い予め定めておく値である。
【0079】
【0080】
そして、切出し流量指令値gsv5を式(11)で補正する。式(11)の右辺第2項において計測値に基づく切出し流量の推定値g5^が切出し流量指令値gSV5に一致するよう積分補償し、両者の定常バイアスが零になる。最終的にg5^が切出し流量指令値gSV5に一致する。
【0081】
【0082】
切出し流量補正部208が補正した切出し流量指令値gSV5^は、設定部201に入力される。以降の処理は、第1の実施形態またはその変形例と同様である。
【0083】
このように、第2の実施形態に係る制御装置20によれば、吹込みタンク2の重量mに基づいて切出し流量を定常偏差なく推定することができる。その結果、供給先設備10の指令値gSV5どおりに精度よく粉粒体を供給することができる。
【0084】
<第2の実施形態の変形例2A>
図8は、第2の実施形態に係る粉粒体供給システムの構成、および制御装置の機能構成を示す図である。
図8に示すように、変形例2Aでは、制御装置20の切出し流量補正部208は、供給先設備10の状態量をさらに用いて、切出し流量指令値g
SV5を補正する。
【0085】
第2の実施形態は、粉粒体の切出し流量g5の推定に吹込みタンク2の重量の時間差分を用いるものであり、秤量計1が取り付けられる吹込みタンク2について広く適用できる。これに対し、変形例2Aは、特に石炭ガス化の反応炉や、高炉などに、燃料である微粉炭を供給する粉粒体供給システム100に好適な技術であり、燃料である粉粒体の供給流量の計測値を供給先設備10の状態量(例えば、反応炉の温度)に基づき補正するところに特徴がある。変形例2Aでは、供給先設備10が石炭ガス化の反応炉であり、粉粒体が微粉炭である例について説明する。
【0086】
図9は、第2の実施形態の変形例2Aに係る供給先設備の模式図である。
石炭ガス化の反応炉10には、炉を加熱するための燃料となり燃やされる粉粒体(微粉炭)に加えて、ガスの原料となる粉粒体(微粉炭)がさらに供給されるので、石炭ガス化の反応炉10は全体としては酸素が不足する還元雰囲気にある。還元雰囲気では、酸素供給が燃焼とその結果である発熱を支配する。その発熱が、吸熱反応であるガスの原料となる微粉炭をガス化する駆動力として作用する。燃焼による発熱をQ
B(kJ)と記す。繰り返しになるが、石炭ガス化の反応炉は還元雰囲気にあるので、燃焼による発熱Q
B(kJ)は酸素供給が支配し微粉炭とは無関係である。石炭ガス化の反応炉10に、温度T
F1
*の微粉炭をg
5
*(kg/s)、温度T
F1
*の搬送ガスをg
G5
*(kg/s)、温度T
F1
*の酸素をg
O5
*(kg/s)供給すると、反応炉10に供給する微粉炭g
5
*(kg/s)のうち、12/32×g
O5
*(kg/s)は燃焼し、残った微粉炭g
5
*-12/32×g
O5
*は燃焼による発熱Q
B
*(kJ)の一部を消費して完全かつ丁度ガス化するものとする。このとき、反応炉10の出口温度はT
F2
*であるとする。完全にガス化するとは、反応炉10の出口においてガス化も燃焼もしない未反応の微粉炭がゼロになることを指す。丁度ガス化するとは、現在は未反応のまま反応炉10から排出される微粉炭はゼロであるが、もし反応炉10に微粉炭を追加的に供給したら追加した分は未反応のまま反応炉10の出口から排出される状態を指す。
【0087】
図10は、微粉炭供給流量と反応炉出口温度の関係を例示する図である。
図10は、反応炉10への酸素の供給量を一定値g
O5
*、反応炉10に供給する微粉炭、搬送ガスそして酸素の温度を一定値T
F1
*として、微粉炭供給流量g
5(切出し流量)を変えたときの、反応炉10の出口温度T
F2、および、微粉炭供給流量g
5と反応炉10の出口から排出される未反応の微粉炭流量g
F2を模式的に表したものである。未反応のまま反応炉10から排出される微粉炭流量g
F2は、
図10に示すように微粉炭供給流量がg
5
*以下では0であると簡単化すると、微粉炭供給流量がg
5
*を超える場合の超過分がg
F2である。
【0088】
反応炉10の出口温度は、微粉炭供給流量がg
5
*のときにT
F2
*であるとする。未反応のまま反応炉10から排出される微粉炭流量g
F2は、反応炉10に温度T
F1
*で入り、反応炉10から温度T
F2で出て行くので、その顕熱はg
F2に比例する。このため、g
F2が増えると反応炉10の出口温度T
F2は低下する。すなわち、
図10に示すように、微粉炭供給流量がg
5
*を超えると、超過分は未反応で排出される微粉炭流量g
F2となり、超過量が多くなるほど顕熱によって反応炉10の出口温度T
F2は低下する。
【0089】
一方、微粉炭供給流量がg
5
*より少なければ燃焼による発熱Q
Bの一部は微粉炭をガス化する生成熱として使われず、顕熱として反応炉10の出口温度T
F2を上げることで消費される。したがって、
図10に示すように、微粉炭供給流量をg
5
*より減らすと生成熱が顕熱となって、微粉炭供給流量g
5に対して反応炉10の出口温度T
F2は急な勾配で上昇する。微粉炭供給流量をさらに減らすと、供給した微粉炭が燃焼する発熱Q
Bは全て顕熱となり、反応炉10の出口温度T
F2のグラフの勾配は左下がりとなる。
【0090】
実際には、微粉炭の濃度の偏りのために、微粉炭供給流量をg
5
*にしても、反応炉の内部には微粉炭が過剰な場所と微粉炭が不足する場所ができる。このため、
図10に示す反応炉10の出口温度T
F2のグラフは、実線で示す折れ線ではなく、破線のように滑らかになる。排出される微粉炭流量g
F2についても同様である。なお、微粉炭供給流量と反応炉10の出口温度の実際のグラフは、試験して決定してもよい。あるいは、解析計算で予測してもよい。何らかの方法でそのグラフを取得すれば、反応炉10の出口温度T
F2から微粉炭供給流量g
5を推定することができる。微粉炭供給流量と反応炉10の出口温度のグラフを式(12)のように関数fで表す。反応炉10の出口温度T
F2のグラフは、微粉炭供給流量g
5の他に、酸素供給流量g
O5にも依存するので、反応炉10の出口温度は2変数関数となる。この二つ以外に、反応炉10の出口温度は反応炉10の入口温度にも依存する。しかし、入口温度の影響はこの二つに対して相対的に小さいので、簡単化のために反応炉10の出口温度は2変数関数として説明する。
【0091】
【0092】
式(12)によると、反応炉10の出口温度TF2と酸素供給流量gO5がわかれば微粉炭供給流量g5の推定値f(TF2,gO5)が得られる。酸素供給流量gO5および出口温度TF2は、それぞれ流量センサC6および温度センサC7で計測した値でもよいし、流量および温度の設定値であってもよい。
【0093】
微粉炭供給流量g5の推定値f(TF2,gO5)を、計測値とみなして式(13)のように、式(8)で行う複数計測値の加重和に追加してもよい。Wfをf(TF2,gO5)に対する加重関数とすると、式(8)を式(13)に変更するとf(TF2,gO5)を考慮して微粉炭供給流量を推定することができる。
【0094】
【0095】
変形例2Aに係る粉粒体供給システム100によれば、微粉炭供給流量g5(粉粒体切出し流量)の推定に用いる計測値の数が増えるので、加重平均値である微粉炭供給流量g5の分散が小さくなり、微粉炭(粉粒体)をより精度よく、指令値gSV5どおりに供給することが可能となる。
【0096】
<第2の実施形態の変形例2B>
図11は、第2の実施形態の変形例2Bに係る粉粒体供給システムの構成、および制御装置の機能構成を示す図である。
上記した第2の実施形態、および変形例2Aでは、粉粒体の流量を計測し、粉粒体流量の計測値が指令値g
SV5に一致するよう粉粒体の流量を調節することによって、指令値g
SV5どおりの粉粒体を供給先設備10に供給するものであった。粉粒体の流量計測に誤差があると、計測誤差の値がそのまま供給流量の誤差となる。このため、第2の実施形態の式(8)や、変形例2Aの式(13)のように、計測値や推定値からなる複数の流量値を加重和して誤差を低減した。これに対し、変形例2Bでは、制御装置20の切出し流量補正部208が粉粒体の流量の計測値g
5や推定値g
5^に頼らずに流量調節する技術を述べる。
【0097】
変形例2Bも、上述の各実施形態およびその変形例と同様に、切出し流量指令値g
SV5に基づいて微粉炭(粉粒体)の供給量を調節する。変形例2Bでは、切出し流量指定値g
SV5に加えて、反応炉10(供給先設備)から取得した酸素流量指令値g
SVO5を切出し流量補正部208に入力する。変形例2Bでは、酸素流量指令値g
SVO5を、変形例2Aにおけるg
O5
*とみなして、
図10のグラフを用いて反応炉10に供給する微粉炭が完全かつ丁度ガス化するときの反応炉10の出口温度T
F2
*を決定する。g
O5
*からT
F2
*を推定する関数を、式(14)のようにh
*(g
O5
*)で表す。
【0098】
【0099】
切出し流量補正部208は、反応炉10の出口温度の計測値TF2が、酸素流量指令値gSVO5のときに微粉炭が完全かつ丁度ガス化するときの反応炉10の出口温度TF2
*になるように、微粉炭供給流量の指令値gSV5を補正する。補正後の指令値をgSV5’と記すと、gSV5’は、微粉炭が完全かつ丁度ガス化するときの反応炉10の出口温度TF2
*を指令値とみなして、温度センサC7で計測した反応炉10の出口温度TF2と差に基づいて、式(15)のPI制御の演算により定めてもよい。kpは比例ゲインを表す一般的な記号である。kpの値は負である。TIは積分の時定数を表す一般的な記号である。
【0100】
【0101】
さらに変形例2B’として、反応炉10の出口温度の指令値を、
図10のグラフから、酸素流量指令値g
SVO5および切出し流量指定値g
SV5の2変数関数として定めても良い。式(16)のように、反応炉10の出口温度を
図10のグラフに基づいて酸素流量と微粉炭供給流量から定める2変数関数をh(g
O5,g
5)で表す。
【0102】
【0103】
補正後の切出し流量指令値をgSV5’と記すと、gSV5’は式(17)により定めてもよい。
【0104】
【0105】
変形例2Bでは、微粉炭が完全かつ丁度ガス化するときの反応炉10の出口温度TF2
*を定める。微粉炭の化学的組成が仕様通りであれば、実際の反応炉10の出口温度はTF2
*に一致する。しかし、微粉炭の組成はバラつくので、反応炉10の出口温度はTF2
*に対して偏差が生じる。変形例2Bは、この偏差に基づいて、微粉炭供給流量(切出し流量)を反応炉10の出口温度がTF2
*に一致するよう補正する。その結果、反応炉10の温度の変動が抑制されて、反応炉10が長寿命化するメリットがある。
【0106】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について
図12~
図14を参照しながら説明する。上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0107】
図12は、第3の実施形態に係る粉粒体供給システムの構成、および制御装置の機能構成を示す図である。
上記した各実施形態およびその変形例では、一つの吹込みタンク2から粉粒体を供給する例を説明した。本実施形態では、
図12に示すように、粉粒体供給システム100は複数の吹込みタンク2が搬送ライン7に並列に接続される構成を有している。また、制御装置20は、エアレーションガス流量配分部203に代えて、複数の吹込みタンク2それぞれの加圧ガス流量設定値g
GSV1およびエアレーションガス流量設定値g
GSV2を配分する並列運転化設定部209をさらに備える。本実施形態では、並列運転化設定部209が配分部として機能する。
【0108】
吹込みタンクの粉粒体の残量は、供給開始後は時間とともに減少し、最終的にゼロになる。粉粒体供給システムは、一つの吹込みタンクの残量がゼロになる前に、粉粒体を満たして待機している別の吹込みタンクから粉粒体を供給するよう切替えて、供給先設備への供給が途切れないようにしている。
【0109】
しかし、例えば供給能力最大で運転しているとき、供用中の吹込みタンクの供給流量を正確にゼロに、待機中の吹込みタンク2の供給量を最大流量に、という2つのタンクの流量の切替え操作を誤差なく行うことは困難である。したがって、実際には供給流量が変動することは避けられない。
【0110】
このため、第3の実施形態では、並列に配置した複数の吹込みタンク2から並行的に粉粒体を供給する制御をさらに実施する。
【0111】
例えば、
図12に示すように、4機の吹込みタンク2{A,B,C,D}のうち、3機の吹込みタンク2{A,B,C}が供給能力の1/3ずつを分担して同時並行で粉粒体を供給しているとしよう。吹込みタンク2Aが空になり、吹込みタンク2Dに切替えるケースを考える。
【0112】
図13は、第3の実施形態に係る吹込みタンクの供給量分担の切替え例を示す第1の図である。
図13は、4機の吹込みタンク2A~2Dの粉粒体供給量、すなわち同タンク出口の粉粒体流量を表している。時刻T1で、吹込みタンク2Aからの供給(g
3)
Aを停止し、同時に吹込みタンク2Dからの供給(g
3)
Dを開始する。このとき、吹込みタンク2B,2Cの供給はそれぞれ1/3で変動しない。切替えの対象となる流量は吹込みタンク2Aと2Dの切替えに係る分だけであり、全体の1/3に限定される。仮に、吹込みタンク2Aから2Dへの切替えにおいて、一時的に吹込みタンク2Aも2Dも流量が0になったとしても、2/3の流量は2機の吹込みタンク2{B,C}が不断に供給するので、供給先設備10への供給量の変動を制限することができる。本実施形態はこのような考えに基づいている。
【0113】
第3の実施形態の特徴は、吹込みタンク2へのガス合計流量設定値gGSV5およびエアレーションガス流量補正設定値ΔgGSV2を、吹込みタンク群を成す一つひとつの吹込みタンク2A~2Dに配分し、並列での供給を可能とすることである。
【0114】
具体的には、吹込みタンク数の要素を有する配分係数ベクトルdを、吹込みタンク群へのガス合計流量設定値gGSV5およびエアレーションガス流量補正設定値ΔgGSV2それぞれに配分係数ベクトルdを乗じて、一つひとつの吹込みタンク2への加圧ガス流量設定値gGSV1およびエアレーションガス流量設定値gGSV2を定めてもよい。前述の{A,B,C,D}の4機の吹込みタンク2の例では、時刻T1以前には一つひとつの吹込みタンク2へのガス供給指令値は、d=[1/3,1/3,1/3,0]である。このとき、{A,B,C,D}へのガス供給指令は式(18)で表される。
【0115】
【0116】
時刻T1において、瞬時に吹込みタンク2Aと2Dの供給量を切替えるならば、時刻T1の後の配分ベクトルdは[0,1/3,1/3,1/3]である。
【0117】
図14は、第3の実施形態に係る吹込みタンクの供給量分担の切替え例を示す第2の図である。
吹込みタンク2Aと2Dの供給量の切替えは、
図14にあるようにランプ状であってもよい。時刻T
1から時刻T
2にかけてランプ状に切替えるなら、時刻T
1の配分ベクトルdは[1/3,1/3,1/3,0]であり、時刻T
2の配分ベクトルdは[0,1/3,1/3,1/3]である。ランプ状に切替える場合に、切替え途中の濃度制御を継続する方法を説明する。一つひとつの吹込みタンクへのエアレーションガス流量補正設定値Δg
GSV2は式(19)で表される。
【0118】
【0119】
本実施形態では、エアレーション流量補正設定値ΔgGSV2を並列接続した吹込みタンク2に配分するので、タンク切替え中も途切れることなくエアレーションによる粉粒体の質量濃度の調整を継続することができる。これにより、タンク切替え中、またはタンク切替え直後に粉粒体の供給量の変動を抑制できる。特に、配分ベクトルdを切替え時刻T1の前後で補間して、切替えを段階的に進めると、タンク切替えによる変動そのものが緩やかになる。さらに、緩やかな変動であれば質量濃度調整により容易に供給流量を補償できるので、タンク切替え時の供給量の変動を軽減する効果が得られる。
【0120】
本実施形態では、{A,B,C,D}の4機の吹込みタンク2を用いる例について説明したが、吹込みタンク2の台数はこれに限られることはない。本実施形態の技術は、吹込みタンク2が2機以上あれば適用できる。例えば、吹込みタンク2が2機の場合であっても、配分ベクトルを、切替え前はd={1/2,1/2}、切替え後はd={0,2/2}とすれば、タンク切替えによってAの供給量は1/2が0になるので1/2減少し、Bは1/2が2/2になるので1/2増加する。つまり、タンク切替えによる増減を1/2に抑制する効果が得られる。
【0121】
上記したように、従来の技術では、複数のタンクを並列運転するとき、タンク切替えの際に粉粒体の供給量が変動することを抑制することが困難であった。これに対し、本実施形態に係る粉粒体供給システム100は、切出し流量指令値gSV5に基づくガス合計流量設定値gGSV5およびエアレーションガス流量補正設定値ΔgGSV2を複数の吹込みタンク2に配分することにより、タンク切替えによる粉粒体の供給流量の変動を低減することが可能である。これにより、粉粒体供給システム100は、常に安定して粉粒体を供給先設備10に供給することができる。
【0122】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態について
図15~
図17を参照しながら説明する。上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0123】
吹込みタンク内の粉粒体とガスは最終的に吹込みタンク下部から流出するので、巨視的には粉粒体は吹込みタンク内部を下向きに流れ、そして、エアレーションガスで希釈されてから搬送ラインに流出する。第1の実施形態では、吹込みタンク2に接続されるエアレーションガスライン6は一つであり、濃度制御のための希釈を一つのエアレーションガスライン6で集中的に行う例を示した。しかし、本実施形態で説明するように、エアレーションガスライン6の位置を吹込みタンク2の高さ方向に分散して配置してもよい。
【0124】
図15は、第4の実施形態に係る粉粒体供給システムの構成、および制御装置の機能構成を示す図である。
例えば、
図15に示すように、本実施形態に係る粉粒体供給システム100は、第1のエアレーションガスライン6Aよりも高い位置に第2のエアレーションガスライン6Bを有していてもよい。第1のエアレーションガスライン6Aは、第1の実施形態のエアレーションガスライン6と同じものである。第2のエアレーションガスライン6Bには、第2のエアレーションガス流量制御弁V6と、流量センサC8が設けられる。
【0125】
また、本実施形態において、制御装置20は、第2のエアレーションガス流量配分部210(第2の配分部)、および第2のエアレーションガス流量制御部211をさらに備える。
【0126】
なお、本実施形態では、二つのエアレーションガスライン6A,6Bが設けられている構成を例として説明するが、これに限られることはない。さらに他の実施形態では、粉粒体供給システム100は、3つ以上のエアレーションガスラインを有していてもよい。
【0127】
図16は、吹込みタンク内の粉粒体の質量濃度の分布の一例を示す第1の図である。
図16の(a)は第1の実施形態に係る吹込みタンク2の断面図、(b)はこの吹込みタンク2内に堆積する粉粒体の質量濃度の分布を表している。エアレーションガスライン6よりも高い位置では、粉粒体の吹込みタンク2断面についての平均的な質量濃度はρ
Aである。これに対し、エアレーションガスライン6よりも低い位置の質量密度は、エアレーションガスにより希釈されてρ
Aより小さい値ρ
Bとなる。エアレーションガスによる希釈が時間的かつ空間的に均一であるならば、エアレーションガスライン6より低い位置の粉粒体の質量密度も均一にρ
Bである。しかし、実際には希釈は不均一であるので、吹込みタンク2から流出する粉粒体の質量密度はρ
Bを中心に変動する。希釈が不均一な理由として、エアレーションガスが粉粒体を希釈する空間の体積が小さいことが挙げられる。吹込みタンク2は円錐形状であるので、エアレーションガスが粉粒体と混合する空間の体積は小さい。このため、エアレーションガス流量が変動すると直ちに吹込みタンク2の出口濃度が変動してしまう。一般に流量調節の誤差は弁の大きさに比例するので、エアレーションガス流量制御弁V2は小容量のものが望ましい。
【0128】
図17は、吹込みタンク内の粉粒体の質量濃度の分布の一例を示す第2の図である。
図17の(a)は第4の実施形態に係る吹込みタンク2の断面図、(b)はこの吹込みタンク2内に堆積する粉粒体の質量濃度の分布を表している。本実施形態では、第1のエアレーションガスライン6Aより高い位置に第2のエアレーションガスライン6Bを配置する。粉粒体は第2のエアレーションガスライン6Bから流入するエアレーションガスで希釈される。このため、第2のエアレーションガスライン6Bよりも低い位置では、粉粒体の質量濃度はρ
Aよりも小さい値ρ
Cに下がる。このとき、第2のエアレーションガスライン6Bの位置では、吹込みタンク2の断面積が大きく、かつ第2のエアレーションガスライン6Bと第1のエアレーションガスライン6Aを高さ方向に離すことにより、第2のエアレーションガスライン6Bから流入するエアレーションガスが粉粒体と混合する体積を拡大することができる。体積が大きいことにより、濃度変動が緩和され質量濃度ρ
Cは時間的に一定になることも望ましい。
【0129】
第1の実施形態では、エアレーションガスライン6により、粉粒体を質量濃度ρAから質量濃度ρBまで希釈していた。本実施形態では、第2のエアレーションガスライン6Bによって既に質量濃度ρCまで希釈しているので、第1のエアレーションガス流量制御弁V2から流入するエアレーションガス流量は少なくて済む。したがって、第1のエアレーションガス流量制御弁V2を小容量化することができるので、粉粒体の吹込みタンク出口濃度の変動が抑制される。
【0130】
第1のエアレーションガス流量制御弁V2を小容量化すると、流量を1単位変更するためには、制御弁V2の開度を今までより大きく変更しなければならない。このため、エアレーションガス流量制御弁V2を全開または全閉しやすくなる。エアレーションガス流量の最大値は第1のエアレーションガス流量制御弁V2の開度が100%ときである。一方、エアレーションガス流量の最小値は第1のエアレーションガス流量制御弁V2の開度が0%のときである。簡単のため、エアレーションガス流量は第1のエアレーションガス流量調節弁V2の開度に比例するとして説明する。例えば、定常的に第1のエアレーションガス流量制御弁V2の開度が10%開度で運転していたとしよう。このとき、エアレーションガス流量の増加余地は90%流量相当あるが、減少の余地は10%流量相当しかない。増加側の余地と減少側の余地がアンバランスであり望ましい状態ではない。理想的には、増加余地も減少余地もともに50%流量相当となるよう、定常的には50%開度で運転したい。そこで、本実施形態では、制御装置20の第2のエアレーションガス流量配分部210、および第2のエアレーションガス流量制御部211において、第1のエアレーションガス流量制御弁V2の開度または流量に基づいて、第2のエアレーションガス流量制御弁V6の開度を調節する。
【0131】
例えば、第1のエアレーションガス流量制御弁V2の開度の基準値rVLV6
*を50%開度と定める。第2のエアレーションガス流量配分部210は、第1のエアレーションガス流量制御弁V2の開度rVLV2が基準値rVLV6
*を超過すれば、第2のエアレーションガス流量設定値gGSV6を増やしてエアレーション流量制御弁の希釈の負担を軽減する。これにより、第1のエアレーションガス流量制御弁V2の開度の超過を是正し、増加余地を確保することができる。
【0132】
または、第2のエアレーションガス流量配分部210は、第1のエアレーションガス流量制御弁V2の開度rVLV2が基準値rVLV6
*に不足すれば、第2のエアレーションガス流量設定値gGSV6を減らして、第1のエアレーションガス流量制御弁V2の希釈の負担を増やす。そうすると、第1のエアレーションガス流量制御弁V2の開度の不足を補償し、減少余地を確保することができる。
【0133】
一般に、切出し流量が大きいときは第2のエアレーションガス流量も大きく、切出し流量が小さいときには第2のエアレーションガス流量も小さい。このため、例えば、切出し流量の値から第2のエアレーションガス流量の標準値gGSV6
*がわかる。本実施形態では、第2のエアレーションガス流量制御部211は、第2のエアレーションガス流量制御弁V6の開度が基準値rVLV6
*となるように、例えば式(20)のように、比例積分制御の演算値を加算して、第2のエアレーションガス流量の標準値gGSV6
*を補正した値を、第2のエアレーションガス流量設定値gGSV6とする。
【0134】
【0135】
また、加圧ガス流量制御装置204は、加圧ガス流量設定値gGSV1から第2のエアレーションガス流量gGSV6分を減じた値に基づいて、加圧制御弁V1の開度rVLV1を調節する。これにより、吹込みタンク2へのガス合計流入量を一定に保つことができる。
【0136】
<第5の実施形態>
次に、第5の実施形態について
図18~
図23を参照しながら説明する。上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0137】
図18は、第5の実施形態に係る粉粒体供給システムの構成、および制御装置の機能構成を示す図である。
図18に示すように、第5の実施形態では、制御装置20は、循環モデル212および変化率設定部213をさらに備える。
【0138】
図19は、吹込みタンク内におけるエアレーションガスの流れを説明するための第1の図である。
第4の実施形態では、第2のエアレーションガス流量設定値g
GSV6を調整することにより、第1のエアレーションガス流量制御弁V2の開度の超過または不足を是正し、開度の増加余地または減少余地を確保することができると説明した。しかし、第2のエアレーションガス流量を極端に大きくすると、
図19の破線のように、第2のエアレーションガスの気泡の浮力によって吹込みタンク2の内部では粉粒体の自然循環が起きる。自然循環が起きると、第2のエアレーションガス流量g
G6の一部βg
G6は、自然循環に同伴して吹込みタンク2上部の気相部に供給される。このため、第2のエアレーションガス流量のうち本来の役目である粉粒体の希釈に寄与するのは、自然循環に同伴しない(1-β)g
G6だけとなる。
【0139】
図20は、自然循環モデルの一例を示す図である。
βは第2のエアレーションガス流量を上部の気相部に行くものと、本来の役目である粉粒体と混合して吹込みタンク2から流出する粉粒体を希釈するために使われるものと、に配分する係数である。βの値は、事前の流動試験や数値解析により明らかにすることができる。βと第2のエアレーションガス流量g
G6の関係は
図20のようなグラフで表される。これは自然循環のモデルの一例である。第2のエアレーションガス流量g
G6のうち、自然循環に同伴して上部の気相部に供給される流量βg
G6は、加圧ガス流量g
G1を増やすことと等価であるので、わざわざ流れ難い粉粒体層に圧縮機の動力を使って過剰にエアレーションする理由がない。したがって、
図20の自然循環のモデルにおいてβの値が0に近い領域で運転することが望ましい。
【0140】
望ましい運転領域であるためのβの上限をβ
UBと記す。第5の実施形態では、自然循環のモデルで現在のβを評価し、βがβ
UBを超過したときには、第2のエアレーションガス流量を漸減して望ましい運転領域に戻す。自然循環モデルは、加圧ガス流量設定値G
GSV1と第2のエアレーションガス流量設定値g
GSV6とに基づき、第2のエアレーションガス流量を上部の気相部に行くものと、本来の役目である粉粒体と混合して吹込みタンク2から流出する粉粒体を希釈するために使われるものとに配分する係数βを、例えば
図20のグラフから定める。
【0141】
図21は、第5の実施形態に係る変化率設定部の機能を説明するための図である。
変化率設定部213は、βの値が予め定めた上限値β
UBを超過したときには、第2のエアレーションガス流量設定値の変化率設定値g^・
GSV6の値に低減の指令-aを設定して出力する。低減の指令-aはヒステリシス付きのリレーによりβの値が0.9×β
UB以下に回復したときに取り下げて0にしてもよい。第5の実施形態による第2のエアレーションガス流量配分部210では、変化率設定値g^・
GSV6を式(20)に反映して、式(21)により第2のエアレーションガス流量設定値g
GSV6を計算する。
【0142】
【0143】
第5の実施形態の構成によれば、吹込みタンク2の内部に粉粒体の自然循環が起きることを抑制することができる。これにより、第2のエアレーションガスが粉粒体の希釈に使われるので、第4の実施形態の効果を最大限に得ることができる。
【0144】
第2のエアレーションガスライン6Bは、吹込みタンク2の側面にあるので、第2のエアレーションガスによる気泡は吹込みタンク2の側面付近を粉粒体の表面まで上昇し、吹込みタンク2の中心軸に向かって粉粒体の表面を横切る。横切る間に気泡は吹込みタンク2上部の気相部に離脱する。そして、粉粒体は吹込みタンク2の中心軸に沿って下降し、第2のエアレーションガスの気泡と混合すると浮力を得て再び吹込みタンク2の側面に沿って上昇する。このように、第2のエアレーションガスは吹込みタンク2の側面付近に浮力を与えるので、自然循環の駆動力となる。第5の実施形態では、第2のエアレーションガス流量を制限して自然循環を抑制している。
【0145】
第2のエアレーションガス流量を制限したとする。第2のエアレーションガス流量gGSV6を制限すると、第1のエアレーションガス流量gGSV2をさらに増やして、搬送ライン7の粉粒体濃度を維持することになる。第1のエアレーションガスライン6Aは吹込みタンク2の中心軸に近い位置に配置されるので、第1のエアレーションガス流量を増やすと、吹込みタンク2の中心軸付近に気泡が供給され、第2のエアレーションガスによる自然循環が相殺される。
【0146】
<第5の実施形態の変形例>
図22は、第5の実施形態の変形例に係る粉粒体供給システムの構成、および制御装置の機能構成を示す図である。
図23は、吹込みタンク内におけるエアレーションガスの流れを説明するための第2の図である。
図22および
図23に示すように、さらに、第3のエアレーションガスライン6Cを配置して、気泡の偏りを解消できるならばなおよい。第3のエアレーションガスライン6Cには、第3のエアレーションガス流量制御弁V7と、流量センサC9が設けられる。また、制御装置20は、第3のエアレーションガス流量制御部214をさらに備える。
【0147】
第3のエアレーションガス流量をgG7と記す。第2のエアレーションガス流量配分部210は、第2のエアレーションガス流量設定値gGSV6を、第2のエアレーションガスと第3のエアレーションガスに所定の割合(例えば7:3)で按分して、第2のエアレーションガス流量制御部211および第3のエアレーションガス流量制御部214に出力する。第3のエアレーションガス流量制御部214は、第3のエアレーションガス流量gG7が0.3×gGSV6に一致するよう、第3のエアレーションガス流量制御弁V7の開度指令値rVLV7を調節する。同様に、第2のエアレーションガス流量制御部211は、第2のエアレーションガス流量gG6が0.7×gGSV6に一致するよう、第2のエアレーションガス流量制御弁V6の開度指令値rVLV6を調節する。
【0148】
このようにすることで、吹込みタンク2内の気泡の偏りをより効果的に解消して、自然循環を抑制することができる。
【0149】
<その他の実施形態>
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。すなわち、他の実施形態においては、上述の処理の順序が適宜変更されてもよい。また、一部の処理が並列に実行されてもよい。
【0150】
<制御装置のハードウェア構成>
図24は、少なくとも1つの実施形態に係る粉粒体供給システムの制御装置のハードウェア構成を示す概略ブロック図である。
【0151】
コンピュータ900は、プロセッサ901、主記憶装置902、補助記憶装置903、および、インタフェース904を備える。
【0152】
上述の制御装置20は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。プロセッサ901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ901は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域を主記憶装置902に確保する。
【0153】
プログラムは、コンピュータ900に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、補助記憶装置903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ900は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。この場合、プロセッサ901によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0154】
補助記憶装置903の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。補助記憶装置903は、コンピュータ900のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース904または通信回線を介してコンピュータ900に接続される外部記憶装置905であってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、補助記憶装置903は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0155】
また、プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、プログラムは、前述した機能を補助記憶装置903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0156】
<付記>
上述の実施形態に記載の制御装置、粉粒体供給システム、制御方法、およびプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0157】
(1)第1の態様によれば、制御装置20は、内部に粉粒体を貯蔵する吹込みタンク2と、吹込みタンク2に加圧ガスを供給する加圧ガスライン5と、吹込みタンク2にエアレーションガスを供給するエアレーションガスライン6と、吹込みタンク2から切出された粉粒体に搬送ガスを供給して供給先設備10へ搬送する搬送ライン7と、を備える粉粒体供給システム100の制御装置20であって、供給先設備10から指示される切出し流量の指令値gSV5を粉粒体の質量濃度の設定値ρSV5と、搬送ライン7を流れるガス合計流量の設定値gGSV5とに分解して設定する設定部201と、質量濃度の設定値ρSV5と、搬送ライン7における粉粒体の質量濃度の計測値ρ5とに基づいて、加圧ガス、エアレーションガス、および搬送ガスのうち少なくとも1つのガスの流量を補正する補正設定値を算出する質量濃度制御部202と、ガス合計流量の設定値gGSV5および補正設定値に基づいて、加圧ガス、エアレーションガス、および搬送ガスのうち少なくとも1つのガスの流量設定値を決定する配分部203,206と、を備える。
【0158】
このようにすることで、制御装置20は、切出し流量のばらつきを抑制し、供給先設備10の指令値gSV5どおりの切出し流量で粉粒体を供給することができる。
【0159】
(2)第2の態様によれば、第1の態様に係る制御装置20において、質量濃度制御部202は、質量濃度の計測値ρ5が質量濃度の設定値ρSV5に一致するようにエアレーションガスの補正設定値ΔgGSV2を求め、配分部203は、吹込みタンク2へのガス合計流入量gGSV5-gG4と加圧ガスおよびエアレーションガスの流量との関係を予め規定した配分情報D2に基づいて、ガス合計流量の設定値gGSV5に対応するエアレーションガス流量基準値gGSV02および加圧ガス流量基準値gGSV01を定め、エアレーションガス流量基準値gGSV02に補正設定値ΔgGSV2を加算してエアレーションガスの流量設定値gGSV2を決定し、加圧ガス流量基準値gGSV01から補正設定値ΔgGSV2を減じ加圧ガスの流量設定値gGSV1を決定する。
【0160】
このようにすることで、制御装置20は、ガス合計流量設定値gGSV5および質量濃度設定値ρSV5の両方を満たすように、エアレーションガス流量および加圧ガス流量の配分を適切に設定することができる。また、制御装置20は、吹込みタンク2内で粉粒体を流動化させるために十分なエアレーションガス流量を確保することができる。
【0161】
(3)第3の態様によれば、第1の態様に係る制御装置20において、質量濃度制御部202は、質量濃度の計測値ρ5が質量濃度の設定値ρSV5に一致するように、搬送ガスの補正設定値ΔgGSV4を求め、配分部206は、ガス合計流量gGSV5から加圧ガスの流量の計測値gG1およびエアレーションガスの流量の計測値gG2を減じた搬送ガス基準流量gGSV04を設定するとともに、設定した搬送ガス基準流量gGSV04に補正設定値ΔgGSV4を加算して、搬送ガスの流量設定値gGSV4を決定する。
【0162】
このようにすることで、搬送ガス流量gG4を変更してから質量濃度センサC4の指示に現れるまでの時間的な遅れを小さくすることができる。時間的な遅れが小さいことにより、質量濃度の変動を素早く補正することができる。つまり、質量濃度の変動を抑制することができる。
【0163】
(4)第4の態様によれば、第2の態様に係る制御装置20において、粉粒体供給システム100は、搬送ライン7に並列に接続される複数の吹込みタンク2を備え、配分部203は、ガス合計流量の設定値gGSV5を複数の吹込みタンク2それぞれの加圧ガス流量設定値gGSV1およびエアレーションガス流量設定値gGSV2に配分する。
【0164】
このようにすることで、制御装置20は、複数の吹込みタンク2を併用する粉粒体供給システム100において、タンク切替えによる粉粒体の供給流量の変動を低減することが可能である。これにより、常に安定して粉粒体を供給先設備10に供給することができる。
【0165】
(5)第5の態様によれば、第2の態様に係る制御装置20において、粉粒体供給システム100は、吹込みタンク2の高さ方向において、エアレーションガスライン6Aよりも高い位置に設けられ、吹込みタンク2に第2のエアレーションガスを供給する第2のエアレーションガスライン6Bをさらに備え、制御装置20は、配分部203が決定したエアレーションガスの流量設定値gGSV2に応じたエアレーションガス流量調整弁V2の開度rVLV2に基づいて、第2のエアレーションガスの流量設定値gGSV6を決定する第2の配分部210をさらに備える。
【0166】
このようにすることで、第2のエアレーションガスライン6Bによって質量濃度を希釈することができるので、第1のエアレーションガス流量制御弁V2から流入するエアレーションガス流量を少なくすることができる。したがって、第1のエアレーションガス流量制御弁V2を小容量化することができるので、粉粒体の吹込みタンク出口濃度の変動を抑制することができる。
【0167】
(6)第6の態様によれば、第5の態様に係る制御装置20は、吹込みタンク2内における粉粒体の循環モデル212に基づいて第2のエアレーションガスの流量設定値の変化率設定値g^・GSV6を決定する変化率設定部213をさらに備え、第2の配分部210は、変化率設定値にさらに基づいて、第2のエアレーションガスの流量設定値gGSV6を決定する。
【0168】
このようにすることで、制御装置20は、吹込みタンク2の内部に粉粒体の自然循環が起きることを抑制することができる。これにより、第2のエアレーションガスが粉粒体の希釈に使われるので、第2のエアレーションガスライン6Bの効果を最大限に得ることができる。
【0169】
(7)第7の態様によれば、第6の態様に係る制御装置20において、粉粒体供給システム100は、吹込みタンク2の高さ方向において、エアレーションガスライン6Aよりも高い位置に設けられ、吹込みタンク2に第3のエアレーションガスを供給する第3のエアレーションガスライン6Cをさらに備え、第2の配分部210は、第2のエアレーションガスの流量設定値gGSV6を、所定の割合で、第2のエアレーションガスの流量と第3のエアレーションガスの流量とに按分する。
【0170】
このようにすることで、制御装置20は、吹込みタンク2内の気泡の偏りをより効果的に解消して、自然循環を抑制することができる。
【0171】
(8)第8の態様によれば、第1から第7のいずれか一の態様に係る制御装置20において、粉粒体供給システム100は、吹込みタンク2の重量を計測する秤量計1と、搬送ライン7における粉粒体の流量を計測する流量計C5とをさらに備え、制御装置20は、吹込みタンク2の重量および粉粒体の流量の計測値に基づいて、切出し流量の指令値gSV5を補正する切出し流量補正部208をさらに備える。
【0172】
このようにすることで、制御装置20は、吹込みタンク2の重量mに基づいて切出し流量を定常偏差なく推定することができる。その結果、供給先設備10の指令値gSV5どおりに精度よく粉粒体を供給することができる。
【0173】
(9)第9の態様によれば、第8の態様に係る制御装置20において、切出し流量補正部208は、供給先設備10の状態量にさらに基づいて、切出し流量の指令値gSV5を補正する。
【0174】
このようにすることで、制御装置20は、粉粒体切出し流量の推定に用いる計測値の数が増えるので、切出し流量g5の分散が小さくなり、粉粒体をより精度よく、指令値gSV5どおりに供給することが可能となる。
【0175】
(10)第10の態様によれば、第1から第7のいずれか一の態様に係る制御装置20は、供給先設備10の状態量の指令値および計測値に基づいて、切出し流量の指令値gSV5を補正する切出し流量補正部208をさらに備える。
【0176】
このようにすることで、制御装置20は、供給先設備10の状態量の偏差が小さくなるように、適切に粉粒体を供給することができる。その結果、供給先設備10の状態量の変動が抑制されて、供給先設備10が長寿命化するメリットを得ることができる。
【0177】
(11)第11の態様によれば、粉粒体供給システム100は、内部に粉粒体を貯蔵する吹込みタンク2と、吹込みタンク2に加圧ガスを供給する加圧ガスライン5と、吹込みタンク2にエアレーションガスを供給するエアレーションガスライン6と、吹込みタンク2から切り出された粉粒体に搬送ガスを供給して供給先設備10へ搬送する搬送ライン7と第1から第10のいずれか一の態様に係る制御装置20と、を備える。
【0178】
(12)第12の態様によれば、制御方法は、内部に粉粒体を貯蔵する吹込みタンク2と、吹込みタンク2に加圧ガスを供給する加圧ガスライン5と、吹込みタンク2にエアレーションガスを供給するエアレーションガスライン6と、吹込みタンク2から切出された粉粒体に搬送ガスを供給して供給先設備10へ搬送する搬送ライン7と、を備える粉粒体供給システム100の制御方法であって、供給先設備10から指示される切出し流量の指令値gSV5を粉粒体の質量濃度の設定値ρSV5と、搬送ライン7を流れるガス合計流量の設定値gGSV5とに分解して設定するステップと、質量濃度の設定値ρSV5と、搬送ライン7における粉粒体の質量濃度の計測値ρ5とに基づいて、加圧ガス、エアレーションガス、および搬送ガスのうち少なくとも1つのガスの流量を補正する補正設定値を算出するステップと、ガス合計流量の設定値gGSV5および補正設定値に基づいて、加圧ガス、エアレーションガス、および搬送ガスのうち少なくとも1つのガスの流量設定値を決定するステップと、を有する。
【0179】
(13)第13の態様によれば、プログラムは、内部に粉粒体を貯蔵する吹込みタンク2と、吹込みタンク2に加圧ガスを供給する加圧ガスライン5と、吹込みタンク2にエアレーションガスを供給するエアレーションガスライン6と、吹込みタンク2から切出された粉粒体に搬送ガスを供給して供給先設備10へ搬送する搬送ライン7と、を備える粉粒体供給システム100の制御装置20に、供給先設備10から指示される切出し流量の指令値gSV5を粉粒体の質量濃度の設定値ρSV5と、搬送ライン7を流れるガス合計流量の設定値gGSV5とに分解して設定するステップと、質量濃度の設定値ρSV5と、搬送ライン7における粉粒体の質量濃度の計測値ρ5とに基づいて、加圧ガス、エアレーションガス、および搬送ガスのうち少なくとも1つのガスの流量を補正する補正設定値を算出するステップと、ガス合計流量の設定値gGSV5および補正設定値に基づいて、加圧ガス、エアレーションガス、および搬送ガスのうち少なくとも1つのガスの流量設定値を決定するステップと、を実行させる。
【符号の説明】
【0180】
100 粉粒体供給システム
1 秤量計
2 吹込みタンク
3 エアレータ
5 加圧ガスライン
6 エアレーションガスライン
6A 第1のエアレーションガスライン
6B 第2のエアレーションガスライン
6C 第3のエアレーションガスライン
7 搬送ライン
9 切出しライン
10 供給先設備
20 制御装置
201 設定部
202 質量濃度制御部
203 エアレーションガス流量配分部(配分部)
204 加圧ガス流量制御装置
205 エアレーションガス流量制御装置
206 搬送ガス流量配分部(配分部)
207 搬送ガス流量制御装置
208 流量補正部
209 並列運転化設定部
210 第2のエアレーションガス流量配分部(第2の配分部)
211 第2のエアレーションガス流量制御部
212 循環モデル
213 変化率設定部
214 第3のエアレーションガス流量制御部