(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016986
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】エビ様乾燥組成物及びエビ様乾燥組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23J 3/00 20060101AFI20240201BHJP
A23L 11/00 20210101ALI20240201BHJP
A23L 17/40 20160101ALI20240201BHJP
A23L 5/00 20160101ALN20240201BHJP
【FI】
A23J3/00 507
A23L11/00 A
A23L17/40 A
A23L5/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119316
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000204181
【氏名又は名称】太陽化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 亜衣
(72)【発明者】
【氏名】中尾 貴大
(72)【発明者】
【氏名】白藤 浩一
【テーマコード(参考)】
4B020
4B035
4B042
【Fターム(参考)】
4B020LB19
4B020LG04
4B020LK01
4B020LK05
4B020LK07
4B020LK08
4B020LK17
4B020LK19
4B020LK20
4B020LP03
4B020LP08
4B020LP12
4B020LP15
4B020LP20
4B020LP30
4B035LC16
4B035LE01
4B035LE05
4B035LG01
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4B035LG19
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4B035LG50
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4B035LK01
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4B042AC10
4B042AD36
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4B042AK09
4B042AK10
4B042AK13
4B042AK20
4B042AP02
4B042AP15
4B042AP17
4B042AP22
4B042AP27
4B042AP30
(57)【要約】
【課題】即席食品に用いられるエビ乾燥具材は、エビの近年の漁獲量の減少や、アレルゲン等の問題から、動物性原料非含有のエビ様加工品の提供が求められている。本発明は、動物性原料非含有であり、生産性に優れた乾燥組成物であり、注湯3分後にエビと同等の食感を有するエビ様乾燥組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】粉末状大豆蛋白を10~60質量%、繊維状大豆蛋白を10~30質量%、及びトランスグルタミナーゼを0.4~3.0質量%含有する組成物であって、組成物の粒度分布において3~10mmのものを50質量%以上含有し、カサ比重が0.2~0.4kg/Lであり、注湯3分復元後の吸水率が2.0~4.5倍であり、注湯3分復元後の面積倍率が1.3~1.8である、動物性原料非含有のエビ様乾燥組成物によって解決できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状大豆蛋白を10~60質量%、繊維状大豆蛋白を10~30質量%、及びトランスグルタミナーゼを0.4~3.0質量%含有する組成物であって、組成物の粒度分布において3~10mmのものを50質量%以上含有し、カサ比重が0.2~0.4kg/Lであり、注湯3分復元後の吸水率が2.0~4.5倍であり、注湯3分復元後面積倍率が1.3~1.8である、動物性原料非含有のエビ様乾燥組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のエビ様乾燥組成物の製造方法であって、(1)粉末状大豆蛋白を10~60質量%、繊維状大豆蛋白を10~30質量%、トランスグルタミナーゼを0.4~3.0質量%を含有する原料100質量部に対して70~200質量部の水を加え混合して生地を調製する生地調製工程、(2)前記生地を小分けして小分け生地とする小分け工程、(3)前記小分け生地を膨化乾燥させる膨化乾燥工程を有し、前記膨化乾燥工程でマイクロ波加熱乾燥を用いることを特徴とするエビ様乾燥組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のエビ様乾燥組成物又は請求項2に記載の製造方法によって製造されたエビ様乾燥組成物を含有する食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエビ様乾燥組成物に関する。より詳しくは、粉末状大豆蛋白を10~60質量%、繊維状大豆蛋白を10~30質量%、及びトランスグルタミナーゼを0.4~3.0質量%含有する組成物であって、組成物の粒度分布において3~10mmのものを50質量%以上含有し、カサ比重が0.2~0.4kg/Lであり、注湯3分復元後の吸水率が2.0~4.5倍であり、注湯3分復元後面積倍率が1.3~1.8である、動物性原料非含有のエビ様乾燥組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
即席食品のエビ乾燥具材は、剥きエビを加熱加工後に凍結乾燥、熱風乾燥にて製造されているのが一般的である。しかし、原料のエビは近年漁獲量が減少しており、原料の高騰が問題視されている。さらにSDGsの観点からも、海洋資源の持続可能な利用を推進させていく必要もある。
このような社会的観点から、動物性原料から植物性原料にシフトしようという全世界的流れがある。プラントベースフード市場も大きく伸びている昨今、植物性原料だけを使用した製品が求められている。
また、アレルギーの観点からもエビを用いず、エビ様加工品を提供する研究開発が行われている(例えば、特許文献1~6参照。)。
特許文献1に記載の技術は、魚肉すり身に大豆繊維などの繊維を混合して作られており、完全に動物性原料非含有には至っていないものであった。
特許文献2に記載の技術は、卵白を含浸させた組織状大豆蛋白質素材に、魚肉すり身、トランスグルタミナーゼを混合させて作られており、こちらも完全に動物性非含有には至っていない。
【0003】
特許文献3に記載の技術は、加熱 凝固性β-1,3-グルカンの繊維状ゲルを成形して得られるエビ様食品であるが、乾燥食品としての態様は示されていない。
特許文献4に記載の技術は、エビを原料としている他、練り製品に関するもので、エビ代替として使用することのできる食品を得るには至っていない。
特許文献5に記載の技術は、植物性蛋白原料、卵黄もしくはレシチンを組織化原料とし調製されており、完全な動物性非含有には至っていないものであった。
特許文献6に記載の技術は、粒状大豆蛋白にプロテアーゼを処理し、トランスグルタミナーゼを反応させて肉様食感を作っており、エビ様の食感とは大きく異なるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭48-17062号公報
【特許文献2】特許第5692477号公報
【特許文献3】特開平8-238075号公報
【特許文献4】特許第3599891号公報
【特許文献5】特許第6521258号公報
【特許文献6】国際公開第2022/097745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、動物性原料非含有であり、生産性に優れた乾燥組成物であり、注湯3分復元後にエビと同等の食感を有するエビ様乾燥組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するため、動物性原料非含有であっても、粉末状大豆蛋白を10~60質量%、繊維状大豆蛋白を10~30質量%、及びトランスグルタミナーゼを0.4~3.0質量%含有し、組成物の粒度分布において3~10mmのものを50質量%以上含有させることにより、エビ様乾燥組成物を完成するに至った。
動物性原料非含有のエビ様乾燥組成物は、カサ比重が0.2~0.4kg/Lであり、注湯3分復元後の吸水率が2.0~4.5倍であり、注湯3分復元後面積倍率が1.3~1.8であることを特徴とする。
動植物性原料非含有のエビ様乾燥組成物の製造方法は、(1)大豆蛋白、トランスグルタミナーゼ、植物由来糖質を含有する原料に対して水を加えて混合して生地を調製する生地製造工程、(2)前記生地を小分けして小分け生地とする小分け工程、(3)前記小分け生地を膨化乾燥させる膨化乾燥工程を有し、前記膨化乾燥工程でマイクロ波加熱乾燥を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明よれば、注湯3分復元後にエビと同等の食感を有する動物性原料非含有のエビ様乾燥組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態について、表を参照しつつ説明する。本発明の技術範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施できる。
本発明における粉末状大豆蛋白とは、大豆からタンパク質を分離して取り出してきたものであり、粉末形状の大豆蛋白で、変性していないものであって、溶解するものであり、分離大豆蛋白や濃縮大豆蛋白、豆乳粉末等が挙げられる。
本発明における繊維状大豆蛋白とは、分離大豆蛋白を水と共に高温・高圧で溶融状態にして、細いノズルから大気中に押し出して繊維化させた大豆蛋白である。
本発明品のエビ様乾燥組成物中の粉末状大豆蛋白の含有量は10~60質量%、繊維状大豆蛋白の含有量は10~30質量%であり、好ましくは粉末状大豆蛋白の含有量は20~50質量%、繊維状大豆蛋白の含有量は15~25質量%である。
【0009】
本発明におけるトランスグルタミナーゼとは、蛋白質やペプチド中のグルタミン残基を供与体とし、リジン残基を受容体とするアシル転移反応を触媒する活性を有する酵素である。
本発明におけるトランスグルタミナーゼの由来とは、特に限定するものではないが、例えば、哺乳動物、魚類、微生物等が挙げられ、動物性原料非由来で微生物由来のものが好ましい。
本発明品のエビ様乾燥組成物中のトランスグルタミナーゼの含有量は、0.4~3.0質量%である。
【0010】
本発明における植物由来糖質とは、植物由来の澱粉やこれらの加工澱粉、酸分解したもの、動物由来ではない分解酵素により酵素分解したものであり、とうもろこし、馬鈴薯、さつまいも、キャッサバ、タピオカ、小麦、蓮根、緑豆、さご、うるち米、モチ米、ワキシーコーン、高梁、くず、ワラビ、小豆、インゲン、ヒヨコマメ、豌豆豆等の植物性原料から得られるものであり、ブドウ糖、果糖等の単糖、麦芽糖や蔗糖、乳糖等の二糖類、オリゴ糖、デキストリン、水飴等である。更に、これらの水素添加等によって得られる糖アルコールも挙げられる。これらの植物性由来糖質は、併用して用いることも可能である。糖アルコールは、特に限定されるものではないが、例えば、ソルビトール、マルチトール、マルトトリオース等単体で構成されるものやこれらが混在する還元デキストリンや還元水飴等が挙げられる。糖アルコールは粉末でも液体でも良い。加工澱粉の加工の種類は、特に限定するものではないが、例えばヒドロキシプロピル化、アセチル化等が挙げられる。
【0011】
本発明における動物性原料とは、特に限定するものではないが、例えば、牛、羊、鳥、馬、豚等の畜肉、魚や貝類の海産物、卵、乳等、動物を起源とする食品用原料を意味する。動物性原料には、原料調製時に用いる酵素等においても動物由来のものを使用したものも含まれる。植物や藻類等を起源とする原料や、これらから得られるものは該当しない。
【0012】
本発明のエビ様乾燥組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、通常食品に用いられる成分を適宜に用途や目的に応じて含有することができ、特に限定するものではないが、例えば、エンドウ豆蛋白、緑豆蛋白、ナタ豆蛋白等の植物性蛋白(大豆蛋白を除く。)や、醗酵法で調製されるグルタミン酸ナトリウムやリボヌクレオチドナトリウム等の調味料、酵母エキス等の風味原料;エビ風味を付与するための香料、エビ様の視覚的イメージを出すためのパプリカ色素等の着色料、大豆レシチンやリン酸塩、重炭酸アンモニウム、ベーキングパウダー、乳化剤、増粘多糖類(植物由来糖質を除く。)等の添加物等が挙げられる。
【0013】
本発明のエビ様乾燥組成物の用途としては、即席食品やレトルト食品、冷凍食品、シリアル等が挙げられるが、好ましくはお湯を注いで喫食する即席食品である。
【0014】
本発明における粒度分布とは、エビ様乾燥組成物をパンチングスクリーンで篩別して得られた割合である。具体的に、エビ様乾燥組成物の粒度分布の測定方法としては、エビ様乾燥組成物中に含有する、φ10mmのパンチングスクリーンをパスし、パスさせたものをφ3mmのパンチングスクリーンで篩別した際のオンしたもの(パンチングスクリーン上に残ったもの)の割合である。
本発明における粒度分布は、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。エビ様乾燥組成物中に3mm以下のものが50質量%以上あるものでは、エビ様の食品であると視認し難く、また、食感もエビ様と認識し難くなる。
【0015】
本発明におけるカサ比重とは、1L容器(直径10cm)にエビ様乾燥組成物を10cmの高さからあふれるまで投入し、上面をすり切った時のエビ様乾燥組成物重量(kg)である。つまり、カサ比重(kg/L)は1Lのエビ様乾燥組成物重量(kg)である。本発明のエビ様乾燥組成物におけるカサ比重は、0.2~0.4kg/Lであり、好ましく0.25~0.35kg/Lである。
【0016】
本発明における注湯3分復元後の吸水率とは、(式1)で示した通り、エビ様乾燥組成物10gを500mLビーカーに入れ、90℃以上の湯300gを注ぎ、3分後に18メッシュ(目開き0.85mm)の篩で30秒静置湯切りをした時のエビ様乾燥組成物の質量を、注湯前のエビ様乾燥組成物の質量で除したものである。
(注湯3分復元後の吸水率(倍))=(注湯3分復元後のエビ様乾燥組成物の質量)/(注湯前の乾燥組成物の質量)・・・・・・・・・(式1)
本発明のエビ様乾燥組成物における注湯3分復元後の吸水率は、エビ様乾燥組成物が即席食品用の加工食品であり、注湯復元後の見栄えの観点から、2.0~4.5倍である。
【0017】
本発明における注湯3分復元後面積倍率(以後、「復元面積倍率」という。)とは、(式2)で示した通り、注湯3分復元後のエビ様乾燥組成物の面積を、復元前のエビ様乾燥組成物面積で除したものである。
(復元面積倍率)=(復元後面積)/(エビ様乾燥組成物面積)・・・・・・・・・(式2)
具体的には、エビ様乾燥組成物10gを組成物どうしが重ならないように広げ画像化する。この画像を画像処理用ソフトウェア(例えば、DIPP-IMAGEソフト(株式会社ディテクト社製))を用いて面積を算出し、エビ様乾燥組成物面積とする。このエビ様乾燥組成物10gを500mLビーカーに入れ、90℃以上の湯300mLを注ぎ3分復元し、18メッシュ(目開き0.85mm)の篩で30秒静置湯切りをし、組成物どうしが重ならないように広げ画像化する。この画像を前述の画像処理用ソフトウェアで面積を算出し、復元後面積とする。そして、復元後面積をエビ様乾燥組成物面積で除して復元面積倍率を算出する。
本発明のエビ様乾燥組成物における復元面積倍率は、エビ様乾燥組成物が即席食品用の加工食品であり、注湯復元後の見栄えの観点から、1.3~1.8である。
【0018】
本発明におけるエビ様乾燥組成物の製造方法は、特に限定するものではないが、例えば、原料に水を加え混合して生地を調製する生地製造工程、前記生地を小分けにして小分け生地とする小分け工程、前記小分け生地を膨化乾燥させる膨化乾燥工程を有し、前記膨化乾燥工程にてマイクロ波加熱乾燥を用いることを特徴とするものである。
【0019】
本発明における生地製造工程とは、粉体原料をミキサーで混合し、粉体混合物を調製後、事前に溶解させておいた液体混合物と繊維状大豆蛋白、水をミキサーに投入し、その後混合して生地を調製する工程である。混合時の粉体混合物と液体原料を含んだ原料100質量部に対する水の配合比率は、70~200質量部であり、好ましくは80~150質量部である。
【0020】
本発明における小分け工程とは、特に限定するものではないが、例えば、前記生地をパワーミルやフェザーミル等で小分けにする工程である。小分け工程での小分け生地の大きさは、好ましくはφ10mmのパンチングスクリーンをパスし、φ3mmのパンチングスクリーンをオンしたものである。この小分け工程におけるミックス粒度分布として、小分け工程での全ての生地中の、φ10mmのパンチングスクリーンをパスし、φ3mmのパンチングスクリーンをオンしたものの割合が、好ましくは50質量%以上になればよい。
【0021】
本発明における膨化乾燥工程とは、前記小分け工程で得られた小分け生地をマイクロ波により膨化乾燥する工程である。このマイクロ波による膨化乾燥時に熱風乾燥を併用しても良いし、マイクロ波で膨化させた後に熱風乾燥してもよい。膨化乾燥工程後のエビ様乾燥組成物の水分含量は、保存性、保形性等の点から、好ましくは約1~8質量%であり、より好ましくは3~5質量%である。
また、マイクロ波による膨化乾燥後のエビ様乾燥組成物の粒の大きさとして、好ましくは3~10mmになればよく、これらの粒の大きさを満たすエビ様乾燥組成物が粒度分布として50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
【0022】
本発明におけるエビ様乾燥組成物を含有する食品とは、特に限定するものではないが、例えば、ふりかけやお茶漬けの素、即席カップスープ、即席袋麺、即席カップ麺等の即席食品、レトルトスープやレトルトカレー、レトルト飯等のレトルト食品、冷凍チャーハンや冷凍パスタ、冷凍ドリア等の冷凍食品、シリアル等が挙げられ、好ましくはお湯を注いで喫食する即席食品や注湯復元後に加工に用いる冷凍食品である。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定するものではない。
【0023】
実施例1~6 エビ様乾燥組成物の製造方法
表1に記載の配合比率にて、本発明品1~6のエビ様乾燥組成物を調製した。具体的には、粉末原料である粉末状分離大豆蛋白、澱粉、砂糖、酵母エキス、をスーパーミキサーで混合し、粉体混合物を調製する。この粉体混合物に香料と酸化防止剤の混合物、食塩、砂糖、調味料を水に溶解させた混合物、繊維状大豆蛋白、アルギン酸ナトリウムを水に溶解させた溶解物をスーパーミキサーに投入し、混合した。そこへ事前に水に溶解させたトランスグルタミナーゼと膨張剤の混合物を投入して、トランスグルタミナーゼを所定時間(本発明品1~3、5~6は反応時間30分、本発明品4のみ反応時間60分)反応させた。反応後、着色料を投入し、軽く混合した。ここで得られた生地を小分け工程としてパワーミルにてφ8mmのパンチングスクリーン、周波数10Hzの条件で粉砕し、小分け生地を調製した。この小分け生地60gに対しマイクロ波出力1.7kw、80秒間加熱の条件で膨化乾燥した後、フェザーミルにてφ10mmのパンチングスクリーン、周波数20Hzの条件で解砕し整粒した。その後、80℃で、30分間熱風乾燥し水分含量を5質量%以下とした。最後に、φ3mmのパンチングスクリーンで篩別し、3~10mmの大きさの粒が50質量%以上の本発明品1~6を得た。
表1に記載の粉末状大豆蛋白は分離大豆蛋白を、繊維状大豆蛋白1は事前にパワーミルにてφ3mmのパンチングスクリーンで粉砕した顆粒タイプのものを、繊維状大豆蛋白2は製品として3mm以下の細かいサイズに粉砕されたフレークタイプのものを、澱粉は馬鈴薯由来の生澱粉を、トランスグルタミナーゼはStreptoverticillium mobaraense由来のものを用いた。
【0024】
【0025】
比較例1~5 エビ様乾燥組成物の製造方法
表2に記載の配合比率にて比較品1~5のエビ様乾燥組成物を調製した。製造方法は、比較品1に関しては、トランスグルタミナーゼ非配合のため反応時間を除いて、実施例1~6の製造方法と同様の方法で、比較品2~5に関しては実施例1~6の製造方法と同様の方法で調製した。
なお、比較品5は製造適正が著しく悪く調製できなかった。このため、比較品5において以降に示す試験例1~5の評価は不可能であった。
【0026】
【0027】
試験例1 粒度分布
(式3)に示す通り、熱風乾燥後に得られた本発明品1~6、比較品1~5のエビ様乾燥組成物の全質量に対して、φ10mのパンチングスクリーンをパスし、φ3mmのパンチングスクリーンをオンしたものの割合を粒度分布(質量%)として、粒度分布を算出した。結果を表3に示した。
(粒度分布(質量%))=(φ10mmのパンチングスクリーンをパスし、φ3mmのパンチングスクリーンをオンしたものの質量)/(熱風乾燥後に得られた本発明品1~6のエビ様乾燥組成物の全質量)×100・・・・(式3)
【0028】
試験例2 カサ比重
1L容器(直径10cm)に本発明品1~6、比較品1~5のエビ様乾燥組成物を10cmの高さからあふれるまで投入し、上面をすり切った時のエビ様乾燥組成物重量(kg)を測定し、カサ比重(kg/L)を算出した。結果を表3に示した。
【0029】
試験例3 吸水率
本発明品1~6、比較品1~5のエビ様乾燥組成物10gを500mLビーカーに入れ、98℃の湯300gを注ぎ、3分間復元し、18メッシュ(目開き0.85mm)の篩で30秒静置湯切りをし、注湯3分復元後のエビ様乾燥組成物の質量を測定し、注湯前のエビ様乾燥組成物の質量で除して、注湯3分復元後の吸水率(倍)を算出した。結果を表3に示した。
【0030】
試験例4 復元面積倍率
本発明品1~6、比較品1~5のエビ様乾燥組成物10gを組成物どうしが重ならないように広げ、デジタル写真撮影した。このデジタル画像をDIPP-IMAGEソフト(株式会社ディテクト社製)で面積を算出し、エビ様乾燥組成物面積とした。このエビ様乾燥組成物10gを500mLビーカーに入れ、98℃の湯300gを注ぎ3分間復元し、18メッシュ(目開き0.85mm)の篩で30秒静置湯切りをし、復元後のエビ様乾燥組成物同士が重ならないように広げ、デジタル写真撮影した。このデジタル画像をDIPP-IMAGEソフト(株式会社ディテクト社製)で面積を算出し、復元後面積とした。そして、復元後面積をエビ様乾燥組成物面積で除して復元面積倍率(倍)を算出した。結果を表3に示した。
【0031】
試験例5 官能評価
本発明品1~6、比較品1~5のエビ様乾燥組成物10gを500mlビーカーに入れ、98℃の湯300mLを注ぎ、3分間復元し、18メッシュ(目開き0.85mm)の篩で30秒間静置湯切りした復元物について官能評価した。パネラー10名で、ボイルエビの食感を評価基準の5点として、以下の評価基準にて5段階の官能評価を実施し、平均点3点以上をエビ様食感として認識できると判断した。結果を表3に示した。
【0032】
(評価基準)
5点:エビの食感そのものである
4点:エビの食感に近い
3点:エビの食感と感じる部分がある
2点:エビの食感とは遠い
1点:エビの食感とは全く違う
【0033】
【0034】
実施例1~6の製造方法によって、粒度分布が50%以上含有する動物性原料非含有のエビ様乾燥組成物が製造できた。本発明品1~6のエビ様乾燥組成物は吸水率が2倍以上となり、復元面積倍率は1.3倍以上となった。食感の観点からも本物のエビに変わりない物性であり、動物性原料非含有のエビ様乾燥組成物を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のエビ様乾燥組成物により、本物のエビと変わりない食感を有する動物性原料非含有のエビ様乾燥組成物を提供することが可能となり、産業上貢献大である。