(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169869
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】接点部材
(51)【国際特許分類】
H01H 1/06 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
H01H1/06 K
H01H1/06 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086688
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】林 正志
(72)【発明者】
【氏名】平谷 光利
【テーマコード(参考)】
5G051
【Fターム(参考)】
5G051AA02
(57)【要約】
【課題】
複数枚の接点部材をスイッチ部材に成形しないようにする。
【解決手段】
本発明は、スイッチ用の板状の接点部材1であって、接点部材1における少なくとも厚さ方向の一方の面10aが接点機能を発揮可能な導電性を有しており、厚さ方向の一方の面10aの反対側に位置する他方の面10bに、外方向に突出する突出部位20を備え、突出部位20の高さHが接点部材1の厚さT以下である接点部材1に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチ用の板状の接点部材であって、
前記接点部材における少なくとも厚さ方向の一方の面が接点機能を発揮可能な導電性を有しており、
前記厚さ方向の前記一方の面の反対側に位置する他方の面に、外方向に突出する突出部位を備え、
前記突出部位の高さが前記接点部材の厚さ以下であることを特徴とする接点部材。
【請求項2】
前記突出部位の高さが0.1mm以上0.5mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の接点部材。
【請求項3】
前記突出部位の高さが0.2mm以上0.4mm以下であることを特徴とする請求項2に記載の接点部材。
【請求項4】
前記突出部位は、前記他方の面に1つ備えられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の接点部材。
【請求項5】
前記突出部位は、前記他方の面の中心に備えられていることを特徴とする請求項4に記載の接点部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチに用いる接点部材に関する。
【背景技術】
【0002】
押圧型のスイッチには、一般的に、導電性に富む接点部材が取り付けられている(特許文献1を参照。)。接点部材は、例えば、金属製のシートに貴金属のコートを施した複層シートから連続して打ち抜いて製造可能である。
【0003】
図3は、従来から公知の接点部材の平面図および側面図を示す。なお、
図3中の一点鎖線は、中心線およびそれに直交する線である。
【0004】
従来から公知の接点部材100は、
図3に示すように、その下面および上面をフラットな面とした板状部材であり、最も典型的な形状を薄厚の円柱形状とする部材である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から公知の接点部材100の形状が薄厚の板状部材であるため、例えば、接点部材100を多数打ち抜いた後に保管しておくと、接点部材100同士が複数枚密着してしまう事態が生じることがある。
【0007】
図4は、
図3の接点部材を押釦スイッチ用部材に固定するために使用する金型内に1枚の接点部材をセットした正常な状態の断面図(4A)および当該金型内に2枚重なった状態の接点部材をセットした異常な状態の断面図(4B)を示す。
【0008】
接点部材100は、例えば、ゴム製の押釦スイッチ用部材に固定する成形工程において、金型110の凹部111に1枚だけ入れられる。この際、接点部材100同士が密着していないと、(4A)に示すように、凹部111に1枚の接点部材100が投入されて正常に成形される。しかし、接点部材100の中に、2枚の接点部材100が密着していると、(4B)に示すように、凹部111内に2枚の接点部材100が投入され、その異常な状態のまま成形が行われる場合がある。接点部材100は非常に薄い板状部材であるため、このような2枚密着状態の接点部材100の投入に気づかずに不良品の発生に至る。
【0009】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであり、複数枚の接点部材をスイッチ部材に成形しないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る接点部材は、スイッチ用の板状の接点部材であって、
前記接点部材における少なくとも厚さ方向の一方の面が接点機能を発揮可能な導電性を有しており、
前記厚さ方向の前記一方の面の反対側に位置する他方の面に、外方向に突出する突出部位を備え、
前記突出部位の高さが前記接点部材の厚さ以下である。
(2)別の実施形態に係る接点部材において、好ましくは、前記突出部位の高さが0.1mm以上0.5mm以下であっても良い。
(3)別の実施形態に係る接点部材において、好ましくは、前記突出部位の高さが0.2mm以上0.4mm以下であっても良い。
(4)別の実施形態に係る接点部材において、好ましくは、前記突出部位は、前記他方の面に1つ備えられていても良い。
(5)別の実施形態に係る接点部材において、好ましくは、前記突出部位は、前記他方の面の中心に備えられていても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数枚の接点部材をスイッチ部材に成形しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る接点部材の平面図および側面図を示す。
【
図2】
図2は、
図1の接点部材を押釦スイッチ用部材に固定するために使用する金型内に2枚重なった状態の接点部材をセットした異常な状態の断面図を示す。
【
図3】
図3は、従来から公知の接点部材の平面図および側面図を示す。
【
図4】
図4は、
図3の接点部材を押釦スイッチ用部材に固定するために使用する金型内に1枚の接点部材をセットした正常な状態の断面図(4A)および当該金型内に2枚重なった状態の接点部材をセットした異常な状態の断面図(4B)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る接点部材の平面図および側面図を示す。
【0015】
この実施形態に係る接点部材1は、スイッチ用の板状の接点部材である。接点部材1は、その平面視における直径に比べて小さい厚さを有する円柱状の部材である。接点部材1は、板部材10と、板部材10の厚さ方向の片面に備えられる突出部位20と、を備える。接点部材1における少なくとも厚さ方向の一方の面10aは、接点機能を発揮可能な導電性を有している。一方の面10aは、接点機能を発揮させる面だからである。突出部位20は、接点部材1の厚さ方向の上記一方の面10aの反対側に位置する他方の面10bに、外方向に突出するように備えられている。他方の面10bは、接点機能を発揮させる面ではなく、例えばゴムまたは樹脂製のスイッチ部材のプッシャー部に固定される面である。このため、他方の面10bは、突出部位20を備えていても良い。
【0016】
ここで、「接点機能を発揮可能な導電性」は、電気伝導率が106S/m以上のいわゆる導体の電気伝導性を意味する。このような導電性は、金、銅、銀などの導体金属の他、グラファイトに代表される導電性カーボンでも発揮可能である。接点部材1における少なくとも厚さ方向の一方の面10aが上記のような導電性を有していれば良いため、接点部材1の他方の面10bおよび側面は、一方の面10aと異なり導電性を有していなくとも良い。
【0017】
接点部材1は、例えば、複数の層から構成可能である。複数の層は、例えば、非貴金属層と、貴金属層とを含む。非貴金属層は、貴金属層と異なり、貴金属を主材としない層であれば特に制約されず、好ましくは、ニッケル、銅、亜鉛、錫、タングステン、ステンレススチールの少なくともいずれか1つまたは任意の2種以上を含む層である。非貴金属層は、より好ましくは、銅、ニッケルおよび亜鉛を主とする合金(洋白)から成る。非貴金属層は、後述の貴金属層との積層面に、下地めっき層を形成することができる。下地めっき層を構成する金属としては、銅、亜鉛、錫、クロム、ニッケルおよび銀を含む合金が好ましい。非貴金属層を洋白とする場合には、下地めっき層が亜鉛、銅およびクロムを含む合金であるのが好ましく、ニッケル、銀および錫を含む合金(ただし、当該合金において銀は主材ではない。)であるのがより好ましい。また、貴金属層として金を用いる場合には、下地めっき層として、銅あるいはニッケルが好ましく、特にニッケルが好ましい。このとき、下地めっき層に、銅あるいはニッケル以外の金属がわずかに含まれていても良い。
【0018】
貴金属層は、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウムまたはオスミウムの一種若しくは複数、あるいはこれら例示の金属を主とする合金から成る。貴金属層は、好ましくは、導電性に優れ、低硬度で塑性変形しやすく、薄膜形成容易な材料から構成され、例えば、金からより好ましく構成される。また、金にコバルトあるいはニッケルを添加した硬質金めっきの他、パラジウム-ニッケル合金(パラジウムに対して少量のニッケルを添加した合金)も好適に例示できる。
【0019】
接点部材1の一方の面10aは貴金属層の面である。接点部材1の他方の面10bは非貴金属層の面である。突出部位20の高さは、接点部材1の厚さ(突出部位20を含まない厚さを意味する。)T以下である。突出部位20の高さは、好ましくは0.1mm以上0.5mm以下であり、より好ましくは0.2mm以上0.4mm以下である。厚さTは、突出部位20以上であることを条件として、好ましくは0.4mm以上0.8mm以下であり、より好ましくは0.5mm以上0.6mm以下である。突出部位20は、好ましくは、他方の面10bに1つ備えられている。また、突出部位20は、より好ましくは、他方の面10bの中心に1つ備えられている。ただし、突出部位20は、他方の面10bに複数備えられていても良く、また、他方の面10bの中心以外に備えられていても良い。突出部位20は、接点部材1を重ねたときに、上方の接点部材1が下方の接点部材1と平行に載らないように形成されている方が好ましい。
【0020】
突出部位20の形状は、円柱、多角柱、円錐、多角錐、円錐台、多角錐台など如何なる形状でも良い。突出部位20の形成は、接点部材1の打ち抜きと同時に行われても良い。また、接点部材1用のシートの成形時に突出部位20を形成しても良い。さらには、接点部材1をシートから打ち抜き後に、突出部位20を接点部材1に形成しても良い。
【0021】
図2は、
図1の接点部材を押釦スイッチ用部材に固定するために使用する金型内に2枚重なった状態の接点部材をセットした異常な状態の断面図を示す。
【0022】
接点部材1は、スイッチの一例である押釦スイッチ用部材に固定する工程において、金型30の凹部31内に入れられる。突出部位20を有する接点部材1を金型30の凹部31内に誤って2枚入れられると、凹部31内に2枚の接点部材1が密着状態で入らない。この結果、
図2に示すように、2枚の接点部材1が凹部31内の容積の大部分を占めることになる。このため、接点部材1を重ねた状態で凹部31内に入れられた状況を容易に把握できる。したがって、不良品の発生を未然に防ぐことができる。
【実施例0023】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0024】
以下の各実施例および各比較例の結果を表1に示す。
【0025】
【0026】
(実施例1)
厚さ0.5mm×幅60mm×長さ330mmのシートの片面に直径0.3mm×高さ0.1mmの円柱形状の突出部位を形成した洋白製のシートを用意し、突出部位の反対側の面に金めっきを施した複層シートを用意した。当該複層シートから、突出部位を中心とする直径3mmの大きさで接点部材を1296枚打ち抜いた。各接点部材を押釦スイッチ用部材成形用の金型の凹部に入れて、接点部材の二重投入の程度と、接点部材の凹部に入れる際の取り扱い易さを評価した。その結果、接点部材の投入工程中、二重投入は2回発生し、接点部材の取り扱いには特に問題はなかった。接点部材の二重投入の程度はGOOD「〇」であり、接点部材の凹部に入れる際の取り扱い易さはVERY GOOD「◎」であった。
【0027】
(実施例2)
突出部位の高さを0.2mmにした以外を実施例1と同様に接点部材を用意し、同様の評価を行った。その結果、接点部材の投入工程中、二重投入は0回発生し、接点部材の取り扱いには特に問題はなかった。接点部材の二重投入の程度はVERY GOOD「◎」であり、接点部材の凹部に入れる際の取り扱い易さはVERY GOOD「◎」であった。
【0028】
(実施例3)
突出部位の高さを0.3mmにした以外を実施例1と同様に接点部材を用意し、同様の評価を行った。その結果、接点部材の投入工程中、二重投入は0回発生し、接点部材の取り扱いには特に問題はなかった。接点部材の二重投入の程度はVERY GOOD「◎」であり、接点部材の凹部に入れる際の取り扱い易さはVERY GOOD「◎」であった。
【0029】
(実施例4)
突出部位の高さを0.4mmにした以外を実施例1と同様に接点部材を用意し、同様の評価を行った。その結果、接点部材の投入工程中、二重投入は0回発生し、接点部材の取り扱いには特に問題はなかった。接点部材の二重投入の程度はVERY GOOD「◎」であり、接点部材の凹部に入れる際の取り扱い易さはVERY GOOD「◎」であった。
【0030】
(実施例5)
突出部位の高さを0.5mmにした以外を実施例1と同様に接点部材を用意し、同様の評価を行った。その結果、接点部材の投入工程中、二重投入は0回発生し、接点部材の取り扱いには大きな問題はないものの、実施例4に比べると取り扱い性に劣っていた。接点部材の二重投入の程度はVERY GOOD「◎」であり、接点部材の凹部に入れる際の取り扱い易さはGOOD「〇」であった。
【0031】
(比較例1)
突出部位を設けなかったこと以外を実施例1と同様の条件として接点部材を用意し、同様の評価を行った。その結果、接点部材の投入工程中、二重投入は23回発生し、接点部材の取り扱いには特に問題はなかった。接点部材の二重投入の程度はBAD「×」であり、接点部材の凹部に入れる際の取り扱い易さはVERY GOOD「◎」であった。
【0032】
(比較例2)
突出部位の高さを0.6mmにしたこと以外を実施例1と同様の条件として接点部材を用意し、同様の評価を行った。その結果、接点部材の投入工程中、二重投入は0回発生し、接点部材の取り扱いは悪かった。接点部材の二重投入の程度はVERY GOOD「◎」であり、接点部材の凹部に入れる際の取り扱い易さはBAD「×」であった。