(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169878
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】試験用継手
(51)【国際特許分類】
G01M 3/28 20060101AFI20241129BHJP
F16L 41/02 20060101ALI20241129BHJP
F16L 41/16 20060101ALI20241129BHJP
E03C 1/12 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
G01M3/28 D
F16L41/02
F16L41/16
E03C1/12 C
E03C1/12 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086704
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕史
【テーマコード(参考)】
2D061
2G067
3H019
【Fターム(参考)】
2D061AA04
2D061AB00
2D061AB05
2D061AD06
2G067AA13
2G067BB32
2G067CC02
2G067DD07
3H019BA04
3H019BB04
3H019BD05
3H019DA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】漏水試験に用いられる試験用継手について、試験に使用した流体が配管外へと漏れることなく排出可能な試験用継手の提供、又は試験終了後における試験用治具の飛び出しを防止することが可能な試験用継手を提供する。
【解決手段】試験用継手1は、内部に配管と連通する流路を有する本体部2と、本体部2に取り付けられる試験用治具3とを備えている。本体部2は、流路上に試験用治具3が収納される収納部23と、収納部23と連通する取付口24とを有し、試験用治具3は、流路を閉塞する閉塞部31と、取付口24を閉塞する蓋部とを有している。試験用継手1は閉塞部31が流路を閉塞する第一の状態と、蓋部が取付口24の閉塞を維持した状態で、閉塞部31による流路の閉塞が解除される第二の状態と、蓋部による取付口24の閉塞が解除されて、試験用治具3が取付口24から取り外し可能な第三の状態と、を切り換え可能となっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管内に流体を溜めて漏水試験を行う試験用継手であって、
前記漏水試験終了後において、
前記配管の外部に試験で使用した流体が漏れ出すことなく、試験区画外の配管へと排出可能であることを特徴とする試験用継手。
【請求項2】
前記配管に取り付け可能であって、内部に前記配管と連通する流路を有する本体部と、
前記本体部に取り付けられる試験用治具とを備え、
前記本体部は、前記流路上において前記試験用治具が収納される収納部と、前記収納部と連通する取付口とを有し、
前記試験用治具は、前記流路を閉塞する閉塞部と、前記取付口を閉塞する蓋部とを有し、
前記閉塞部が前記流路を閉塞する第一の状態と、
前記蓋部が前記取付口の閉塞を維持した状態で、前記閉塞部による前記流路の閉塞が解除される第二の状態と、
前記蓋部による前記取付口の閉塞が解除されて、前記試験用治具が前記取付口から取り外し可能な第三の状態と、を切り換え可能であることを特徴とする請求項1に記載の試験用継手。
【請求項3】
前記試験用治具を移動させる操作部を備え、
前記試験用治具は、前記操作部に加えられた操作により前記第一の状態と前記第二の状態と前記第三の状態とを切り換え可能であることを特徴とする請求項2に記載の試験用継手。
【請求項4】
前記本体部又は前記試験用治具のいずれか一方は、他方に向けて突出する突部を有し、他方は前記操作部に加えられた操作により前記突部が摺動する溝部を有し、
前記溝部は、
前記突部が配置された際に前記試験用継手が前記第一の状態となる第一の領域と、
前記突部が配置された際に前記試験用継手が前記第二の状態となる第二の領域と、
を具備することを特徴とする請求項3に記載の試験用継手。
【請求項5】
前記溝部は、
前記突部が配置された際に前記試験用継手が前記第三の状態となる第三の領域を具備することを特徴とする請求項4に記載の試験用継手。
【請求項6】
前記溝部は、
前記第二の領域と前記第三の領域との間に、所定以上の応力が加えられない限り前記突部が前記第二の領域から前記第三の領域へと移動することを防止する防止部を具備することを特徴とする請求項5に記載の試験用継手。
【請求項7】
前記第二の状態において、
前記試験用治具は前記取付口から取り出し不可能であることを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれか1つに記載の試験用継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の内部に水や空気等の流体を溜めることにより、配管の漏水の有無を確認する漏水試験に用いられる試験用継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、配管の漏水の有無を確認する漏水試験として、配管内に水を溜める満水試験と、配管内に空気を溜める満空試験が知られている。
上記満水試験を行う際には、試験用継手を用いて試験対象となる配管を堰き止めた後、試験用継手の上流側の配管内に水を溜めて試験区画内の配管の水位を確認する。そして、所定時間経過後に再び水位を確認し、水位に変動がなければ試験区画内の配管には漏水が無いと判断し、水位が下降していた場合には漏水が有ると判断する。
一方、上記満空試験を行う際には、試験用継手によって試験区間の配管を閉塞し、試験区間内の空気を加圧した上で、区間内の配管内の空気圧を測定する。そして、所定時間経過後に再び空気圧を確認し、空気圧に大きな変動がなければ漏水の恐れが無いと判断し、空気圧が所定以上下降していた場合には試験区間内の配管に漏水の恐れがあると判断する。
【0003】
特許文献1に記載の試験用継手は、配管に取り付けられる本体部と、本体部の内部に収納される試験用治具とを備えている。試験用治具は本体部の側面に形成された取付口から本体部内に挿入され、本体部内の流路を閉塞することで漏水試験を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記試験用治具は本体部と外部とを連通する排水部が形成されており、漏水試験終了後には試験用治具を取り付けたまま、排水部より試験に使用した水や空気を配管外へと排出することが可能となっている。
しかし、漏水試験が満水試験である場合、排水部から排出された水は一度バケツ等で受けた後に別の場所に運び、廃棄しなければならず、作業が煩雑であった。特に、複数階層に亘る配管の漏水を試験する場合、試験に使用する水は大量となり、何回にも分けて廃棄する必要があった。
【0006】
ここで、特許文献1に記載の試験用継手においては、試験用治具を本体部から取り外すことで、試験に使用した水を本体部の下流側に接続された配管へと排出することもできる。この場合には水をバケツ等で受ける必要はなく、作業が容易となる。
しかし、上記排出方法においては、試験用治具を本体部から取り外す際に、水が取付口から配管外へと漏れてしまうという、新たな課題が生じる。
又、配管内に溜められた状態で試験用治具を取り外すと、溜められた水の圧力によって試験用治具が外れ方向に押し出され、取付口から飛び出してしまう恐れがある。
【0007】
尚、漏水試験が満空試験である場合にも、配管内において加圧された空気の圧力によって試験用治具が外れ方向に押し出され、取付口から飛び出してしまう恐れがある。
【0008】
本発明は上記課題を解決しようとするものであり、その目的は、水や空気等の流体を配管内に溜めて漏水の有無を確認する漏水試験に用いられる試験用継手について、試験に使用した流体が配管外へと漏れることなく排出可能な試験用継手の提供、又は試験終了後における試験用治具の飛び出しを防止することが可能な試験用継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、配管内に流体を溜めて漏水試験を行う試験用継手であって、
前記漏水試験終了後において、
前記配管の外部に試験で使用した流体が漏れ出すことなく、下流側へと排出可能であることを特徴とする試験用継手を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記本発明によれば、漏水試験の終了後に流体が管体の外部に漏れ出すことがなくなり、好適に試験を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】漏水試験を行う配管の構成の一例を示す断面図である。
【
図2】第一実施形態に係る試験用継手を示す断面図である。
【
図3】第一実施形態に係る試験用継手を示す分解斜視図である。
【
図4】第一実施形態に係る試験用継手を示す断面図である。
【
図5】第一実施形態に係る本体部を示す断面図である。
【
図6】第一実施形態に係る試験用治具を示す(a)断面図、(b)側面図である。
【
図7】第一実施形態に係る溝部を示す展開図である。
【
図8】第一の状態にある試験用継手を示す(a)断面図、(b)溝部と突部の状態を示す展開図である。
【
図9】第二の状態にある試験用継手を示す(a)断面図、(b)溝部と突部の状態を示す展開図である。
【
図11】第三の状態にある試験用継手を示す(a)断面図、(b)溝部と突部の状態を示す展開図である。
【
図12】第一実施形態において、通水用部材が取り付けられた状態を示す断面図である。
【
図13】排水部にホースが取り付けられた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の態様に係る試験用継手は、配管内に流体を溜めて漏水試験を行う試験用継手であって、
前記漏水試験終了後において、
前記配管の外部に試験で使用した流体が漏れ出すことなく、試験区画外の配管へと排出可能であることを特徴とする試験用継手を特徴とする。
【0013】
本態様によれば、配管の外部に試験で使用した流体が漏れ出すことなく流体を排出可能となるため、好適に漏水試験を行うことが可能となる。
【0014】
又、本発明の第2の態様に係る試験用継手では、第1の態様の試験用継手は、前記配管に取り付け可能であって、内部に前記配管と連通する流路を有する本体部と、
前記本体部に取り付けられる試験用治具とを備え、
前記本体部は、前記流路上において前記試験用治具が収納される収納部と、前記収納部と連通する取付口とを有し、
前記試験用治具は、前記流路を閉塞する閉塞部と、前記取付口を閉塞する蓋部とを有し、
前記閉塞部が前記流路を閉塞する第一の状態と、
前記蓋部が前記取付口の閉塞を維持した状態で、前記閉塞部による前記流路の閉塞が解除される第二の状態と、
前記蓋部による前記取付口の閉塞が解除されて、前記試験用治具が前記取付口から取り外し可能な第三の状態と、を切り換え可能としても良い。
【0015】
本態様によれば、第一乃至第三の状態を切り換え可能とすることによって、第一の状態にて漏水の有無を確認した後に第二の状態に切り換え、管体から漏れることなく試験に使用した流体を排出することができる。又、流体排出後は第三の状態に切り替えることで試験用治具を取り外し、内部に流路や逆流防止弁を備えた継手に取り換えて試験を終了することができる。
【0016】
又、本発明の第3の態様に係る試験用継手では、第2の態様の試験用継手は、前記試験用治具を移動させる操作部を備え、
前記試験用治具は、前記操作部に加えられた操作により前記第一の状態と前記第二の状態と前記第三の状態とを切り換え可能としても良い。
【0017】
本態様によれば、操作部により簡単に第一乃至第三の状態を切り換えることが可能となる。
【0018】
又、本発明の第4の態様に係る試験用継手では、第3の態様の試験用継手は、前記本体部又は前記試験用治具のいずれか一方は、他方に向けて突出する突部を有し、他方は前記操作部に加えられた操作により前記突部が摺動する溝部を有し、
前記溝部は、
前記突部が配置された際に前記試験用継手が前記第一の状態となる第一の領域と、
前記突部が配置された際に前記試験用継手が前記第二の状態となる第二の領域と、
を具備しても良い。
【0019】
又、本発明の第5の態様に係る試験用継手では、第4の態様の試験用継手は、前記溝部は、
前記突部が配置された際に前記試験用継手が前記第三の状態となる第三の領域を具備しても良い。
【0020】
上記第4、第5の本態様によれば、突部が溝部内を摺動することによって、確実に第一乃至第三の状態を切り換えることが可能となる。
【0021】
又、本発明の第6の態様に係る試験用継手では、第5の態様の試験用継手は、
前記溝部は、
前記第二の領域と前記第三の領域との間に、所定以上の応力が加えられない限り前記突部が前記第二の領域から前記第三の領域へと移動することを防止する防止部を具備しても良い。
【0022】
本態様によれば、第二の領域にある突部が誤って第三の領域へと移動してしまうことを防止することができる。
【0023】
又、本発明の第7の態様に係る試験用継手では、第2乃至第6の態様の試験用継手は、
前記第二の状態において、
前記試験用治具は前記取付口から取り出し不可能としても良い。
【0024】
本態様によれば、第二の状態において流体を排出する際に試験用治具が飛び出すことを防止することができる。
【0025】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。尚、以下に記載する説明は実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって発明が制限して理解されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない均等の範囲内において種々の設計変更を加えても良い。又、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0026】
(第一実施形態)
[1.配管の概要]
図1は試験用継手1によって漏水試験として満水試験を行う配管の構成図である。縦配管100は複数階を有する建物において、上層と下層を貫通する配管であり、各階に配設された配管である横配管200が連結されている。又、縦配管100の途中には試験用継手1が接続されている。これ以降、試験用継手1よりも上流側の配管を配管300、下流側の配管を配管400とする。
【0027】
[2.試験用継手の構成]
試験用継手1は、
図2及び
図3に示すように、本体部2と、試験用治具3とを備えている。又、本体部2は操作部25を有しており、
図4に示すように、試験用治具3を挿入方向Xに向けて挿入し、操作部25を回転させることで試験用治具3が着脱可能となっている。次に、試験用継手1を構成する各部材について説明する。
【0028】
図5に示すように、本体部2は上流側端部に形成された流入口21と、下流側端部に形成された排出口22と、試験用治具3が収納可能な収納部23と、収納部23と連通する取付口24とを有する。又、本体部2は縦配管100に取り付けられており、内部に配管300、配管400と連通する流路を有する。
【0029】
流入口21は本体部2の上流側端部に形成された開口であって、内側に配管300が挿入された状態で接着されている。又、排出口22は本体部2の下流側端部に形成された開口であって、内側に下流側の配管400が挿入された状態で接着されている。
【0030】
収納部23は、上流側は流入口21と、下流側は排出口22とそれぞれ連続し、試験用治具3が収納可能な内部空間を有し、被止水部231と、ガイド部232とが形成されている。
被止水部231は収納部23の下流側端部において、収納部23の側面が内側に向けて突出することにより形成された段部であり、取付口24と対向する側面より、取付口24へ向かうに従い排出口22側へと傾斜するよう形成されている。これにより、被止水部231は試験用治具3の挿入方向Xに対して傾斜している。
ガイド部232は収納部23の上流側端部において、収納部23の側面が内側に向けて突出することにより形成された段部であり、本体部2の軸方向に対して垂直方向、即ち試験用治具3の挿入方向Xに対して平行に形成されている。
上記収納部23は
図4に示すように、断面視において取付口24側が上下方向において最も幅広となっており、取付口24と対向する側面に向かうにつれて幅狭となるよう構成されている。
【0031】
取付口24は本体部2の側面に形成された円形の開口であって、収納部23と連通する。取付口24の外側面には全周に亘り凹状の被嵌合部241が形成されており、操作部25が相対回転可能に取り付けられている。又、取付口24の内側面には、後述する試験用治具3のパッキンP2が当接する被止水部242が形成されている。
図3及び
図4に示すように、操作部25は環状であって、本体部2側の端部には被嵌合部241に嵌合する凸状の嵌合部251が内側に向けて突設されているとともに、他端側には内側に向けて突出する突部252が90°毎に4箇所形成されている。
【0032】
図6に示すように、試験用治具3は閉塞部31、蓋部32、排水部33を有する。
【0033】
閉塞部31は収納部23の内部形状と略同一の外形を有し、有底筒状の凹部311と、被止水部231と当接する流路止水部312と、ガイド部232によってガイドされる被ガイド部313とを具備している。
凹部311は上端が流入口21の流路と連続するが、下端は底部によって密閉された凹状であり、排出口22とは連続せず、流路を閉塞している。又、凹部311の底部近傍の側面において排水部33が連通されている。
流路止水部312は閉塞部31の底面に形成された傾斜面であり、被止水部231と略同一角度で傾斜する。又、流路止水部312には被止水部231と全周に亘り当接するO状のパッキンP1が取り付けられている。
被ガイド部313はガイド部232と略同一角度となっており、試験用治具3の挿入方向Xに対して平行に形成されている。
【0034】
蓋部32は閉塞部31と一体に形成され、正面視(挿入方向X矢視)において円形を成し、リング状のパッキンP2が取り付けられた取付口止水部321と、溝部4が形成された固定部322より構成されている。
取付口止水部321の外径は取付口24の内径と略同径であり、試験用治具3が本体部2に取り付けられた際に、パッキンP2が取付口24と取付口止水部321とに圧接し、取付口24から漏水が生じないよう水密状態とする。
固定部322は取付口止水部321よりも大径であって、外周に溝部4が2箇所、窪み部6が2箇所形成されている。
【0035】
排水部33は閉塞部31と蓋部32とを貫通し、外部と閉塞部31とを連通させる排出用流路であり、端部外周には雄螺子が螺刻されている。尚、
図6等において、排水部33は袋ナットによって端部が閉塞されているが、必要に応じてホース等が接続可能となっている。
【0036】
以下に、固定部322に形成された溝部4について説明する。尚、溝部4の説明においては、蓋部32が本体部2に取り付けられた状態において外部に露出する側(
図2における左方)を「一端」、閉塞部31側を「他端」として記載する。又、本実施形態において、溝部4は固定部322の外周において、180°対向する位置に2箇所形成されており、溝部4の間には突部252を収納する溝状の窪み部6が180°毎に2箇所形成されている。即ち、操作部25に形成された4つの突部252の内、2つは溝部4内に配置され、残る2つは窪み部6内に配置される。
溝部4は後述のように突部252が内部を摺動することで試験用治具3を第一乃至第三の状態に変更させるものであるのに対し、窪み部6は溝部4に配置されなかった突部252を収納し、溝部4と突部252の動作を安定させるとともに、突部252が固定部322と干渉することが無いようにするための構成である。
【0037】
図7は溝部4の構成を示し、固定部322の一部を展開している。溝部4は突部252が内部を摺動可能な幅を有し、一端側から他端側に向けて二回屈曲する階段状に形成されており、底壁部41、第一側 壁部42、第一傾斜壁部43、第二傾斜壁部44、第二側壁部45、対向壁部46、第三傾斜壁部47、第四傾斜壁部48、開放部49、防止部50から構成されている。
底壁部41は蓋部32の一端側から他端側へ向けて形成され、他端側が端部において第一側壁部42と連続する。
第一側壁部42は固定部322の周方向に向けて延設されており、底壁部41と対向する側の端部において第一傾斜壁部43と連続する。
第一傾斜壁部43は固定部322の周方向に向けて延設されるとともに、第一側壁部42と対向する側に進むにつれて溝部4の他端側に傾斜している。
第二傾斜壁部44は第一傾斜壁部43と対向する位置であって、溝部4の一端側に形成されており、第一傾斜壁部43と同一方向に向けて傾斜している。
第二側壁部45は第一傾斜壁部43から連続し、固定部322の周方向に向けて延設されている。
対向壁部46は第二傾斜壁部44から連続し、第二側壁部45と平行に、固定部322の周方向に向けて延設されている。
第三傾斜壁部47は第二側壁部45から連続し、固定部322の周方向に向けて延設されるとともに、第二側壁部45と対向する側に進むにつれて溝部4の他端側に傾斜している。
第四傾斜壁部48は第三傾斜壁部47と対向する位置であって、溝部4の一端側に形成されており、第三傾斜壁部47と同一方向に向けて傾斜している。
開放部49は溝部4の他端側端部に向けて開放されており、突部252を溝部4に導入可能となっている。
防止部50は第二側壁部45と第三傾斜壁部47との間に形成され、突部252へ向けて突出するリブであり、所定以上の応力が加えられない限り突部252が後述する第二の領域a2から第三の領域a3へと移動することを防止する。
【0038】
ここで、溝部4は内部に突部252が配置された際に、試験用継手1の状態を切り換え可能となる第一の領域a1、第二の領域a2、第三の領域a3を具備する。
第一の領域a1は底壁部41、第一側壁部42を含み、突部252が第一の領域a1に位置する時、閉塞部31が流路を閉塞して配管内の漏水の有無を確認可能な第一の状態となる。
第二の領域a2は第一傾斜壁部43、第二傾斜壁部44、第二側壁部45を含み、突部252が第二の領域a2に位置する時、蓋部32が取付口24の閉塞を維持した状態で、閉塞部31による流路の閉塞が解除されて試験に使用した水を下流側へと排出可能な第二の状態となる。又、突部252が第二の領域a2にある時、試験用治具3は突部252が第一傾斜壁部43又は第二側壁部45に当接することにより、取付口24から取り出し不可能となっている。
第三の領域a3は対向壁部46、第三傾斜壁部47、第四傾斜壁部48、開放部49を含み、突部252が第三の領域a3に位置する時、蓋部32による取付口24の閉塞が解除されて、試験用治具3が取付口24から取り外し可能となる第三の状態となる。
【0039】
[3.漏水試験の手順]
次に、試験用継手1を用いた漏水試験の手順の一例について説明する。尚、以下に説明する漏水試験においては、排水部33は袋ナットにより端部が閉塞されている。
【0040】
まず、試験対象となる縦配管100に試験用継手1の本体部2を接続し、本体部2へ試験用治具3を挿入する。又、操作部25に回転操作を加え、本体部2に試験用治具3を取り付ける(
図8)。尚、試験用治具3が挿入される際、収納部23に形成されたガイド部232と閉塞部31に形成された被ガイド部313とが当接することによって、試験用治具3は挿入方向Xへとガイドされる。
【0041】
次に、配管300の内部を水で満たし、満水状態とすることにより試験区画内の配管300の漏水の有無を確認する。
尚、本実施形態においては、上記満水状態より所定時間が経過した後、配管300の内部に満たされた水位の変化を確認し、水位に変動がなければ漏水が無いと判断し、水位が下降していた場合には漏水が有ると判断する。
【0042】
次に、漏水確認後における試験用治具3の取り外しについて説明する。尚、
図8(b)、
図9(b)、
図11(b)はそれぞれ
図8(a)、
図9(a)、
図11(a)の状態における溝部4内での突部252の位置を示しており、発明の理解を容易にするために、突部252にハッチングを加えている。
図8に示すように、上記漏水試験による漏水確認時において、突部252は第一の領域a1に配置されている。この時、上述のように本体部2の内部の流路は閉塞部31によって水密に閉塞されているとともに、取付口24は蓋部32によって水密に閉塞された第一の状態となっている。又、配管300内は試験に使用した水により満水状態となっている。
上記第一の状態より、試験用治具3を取り付けた際と逆方向に操作部25に回転操作を加えると、
図9に示すように、第一の領域a1に配置されていた突部252が底壁部41から離間し、第一傾斜壁部43及び第二傾斜壁部44側へと溝部4内を摺動し、第二の領域a2へ到達する。
【0043】
第二の領域a2へと到達した突部252は第一傾斜壁部43、第二傾斜壁部44、第二側壁部45によってガイドされ、第二の領域a2内を摺動する。
上記摺動に伴い試験用治具3は挿入方向Xに対向する方向に向けて移動し、試験用継手1は第一の状態から第二の状態に切り換えられる。即ち、突部252の摺動により流路止水部312に取り付けられたパッキンP1が被止水部231から離間するとともに、閉塞部31による本体部2内部の流路の閉塞が解除される。又、
図9(a)及び
図10に示すように、凹部311によって覆われていた流路が開放されることで通水空間Sが形成され、配管300と配管400とが連通する。一方、取付口止水部321に取り付けられたパッキンP2は取付口24の被止水部242に対して圧接したままとなっており、蓋部32による取付口24の閉塞は維持された状態となる。
【0044】
上記第二の状態においては、蓋部32が取付口24の閉塞を維持した状態で、閉塞部31による流路の閉塞が解除されている。これにより、配管300に溜められていた水が試験区画外である下流側の配管400へと漸次排出されるが、取付口24から水が漏れることはない。
又、配管300に溜められていた水により、試験用治具3に対して外れ方向に応力が加わったとしても、突部252が第一傾斜壁部43や第二側壁部45に当接することで、試験用治具3の飛び出しが防止される。
尚、第二の領域a2と第三の領域a3との間には防止部50が設けられているため、誤って突部252が第三の領域a3へと配置されることはない。
【0045】
配管300内の水が全て排出された後、操作部25に対して更に回転操作を加えると、
図11に示すように突部252が防止部50を乗り越えて第三の領域a3へと到達する。この時、パッキンP2が被止水部242から離間することにより、蓋部32による取付口24の閉塞が解除されて、試験用治具3が取付口24から取り外し可能な第三の状態へと切り換えられる。
【0046】
上記満水試験終了後は試験用治具3に替えて、
図12に示すように、配管300と配管400とを繋ぐ流路を備えた通水用部材301を取り付け、縦配管100を使用可能とする。本発明においては、試験後に本体部2を流用可能となり、部材点数を削減することが可能となる。尚、通水用部材301ではなく、内部に逆流防止弁を備えた逆止弁付き部材を取り付けても良い。
【0047】
以上のように、本発明の試験用継手1においては、閉塞部31が流路を本体部2内の流路を閉塞する第一の状態と、蓋部32が取付口24の閉塞を維持した状態で閉塞部31による流路の閉塞が解除された第二の状態と、蓋部32による取付口24の閉塞が解除されて試験用治具3が取付口24から取り外し可能な第三の状態とを切り換え可能となっている。これにより、第一の状態において満水試験を行った後、試験用継手1を第二の状態に切り換えることで試験に使用した水、即ち流体が取付口24から縦配管100の外部に漏れ出すことなく、試験区画外である下流側の配管400へと排出することができる。又、試験用継手1を第三の状態へと切り換えることにより試験用治具3を取り外し、容易に試験を終了することができる。
【0048】
又、上記第一乃至第三の状態は溝部4が具備する第一乃至第三の領域に突部252が配置されることにより切り換え可能であるとともに、第一乃至第三の状態の切り換えは、操作部25に対して回転操作を加えるのみで良く、作業性に優れている。
【0049】
又、第二の領域a2と第三の領域a3との間に形成された防止部50により、誤って突部252が第三の領域a3に配置されることを防止することができる。
【0050】
又、試験用継手1が第二の状態にある時、試験用治具3は取付口24から取り出し不可能となっていることにより、試験に使用した水の圧力によって試験用治具3が飛び出すことを防ぐ。
【0051】
(変形例等)
本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない均等の範囲内において、種々の設計変更を加えても良い。又、以下に記載する変形例同士や、上記実施の形態と変形例とを組み合わせて構築される形態も本発明の態様の均等の範囲に含まれる。
【0052】
例えば、上記実施形態において、漏水試験は満水試験であったが、試験区間内の配管を密閉し、配管内を加圧することで試験区間内の漏水の有無を確認する満空試験であっても良い。満空試験に本発明の試験用継手1を用いた場合には、取付口24から配管の外部に、試験で使用した空気、即ち流体が漏れ出すことなく、試験区画外の配管である下流側の配管400へと排出することができる。このため、空気圧による試験用治具3の飛び出しを防止することができる。
尚、満空試験を行うにあたり、試験区間内の配管を閉塞するために複数の試験用継手1を用いても良く、試験区間の一端を試験用継手1にて閉塞し、他端を他の部材を用いて閉塞しても良い。この場合においては、試験用継手1を用いて配管の上流側を閉塞しても良く、下流側を閉塞しても良い。
又、試験用継手1が配管の上流側を閉塞している場合において、試験終了後に試験用継手1を第二の状態へと切り換えると、区間内の空気は上流側の配管300へと排出される。
【0053】
又、上記実施の形態において、排水部33は袋ナットにより閉塞されていたが、
図13に示すように、ホースHを接続し、排水部33から試験に使用した水や空気等の流体を排出しても良い。この場合においては、試験用継手1が第一の状態のままホースHに形成されたコックを開くことで水や空気等の流体を排出することができる。このようにすることで、試験用継手1の下流側に配管が接続されていない場合や、試験用継手1の上流側に貯留された水の重量により試験用治具3が取り外しにくい場合であっても、流体を排出することができる。
又、所定量の水や空気等を排出した後、試験用継手1を第二の状態に切り換え、残りの水や空気等を下流側の配管400へと排出する等、第一実施形態に記載した流体の排出方法と組み合わせても良い。
一方、排水部33を無くし、操作部25による操作によってのみ、試験に使用した水や空気等の流体を排出する構成としても良い。
【0054】
又、上記実施の形態において、突部252は本体部2(操作部25)に形成されており、溝部4は試験用治具3に形成されていたが、突部が試験用治具に形成されており、溝部が本体部に形成されていても良い。
【0055】
又、上記実施の形態においては、操作部25に対して回転操作を加えることで第一乃至第三の状態を切り換えていたが、試験用治具を押し引きしたり、C字リング等の別部材を着脱したりすることで第一乃至第三の状態を切り換え可能としても良く、切り換えに係る操作については何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0056】
1 試験用継手
2 本体部
21 流入口
22 排出口
23 収納部
231 被止水部
232 ガイド部
24 取付口
241 被嵌合部
242 被止水部
25 操作部
251 嵌合部
252 突部
3 試験用治具
31 閉塞部
311 凹部
312 流路止水部
313 被ガイド部
32 蓋部
321 取付口止水部
322 固定部
33 排水部
4 溝部
41 底壁部
42 第一側壁部
43 第一傾斜壁部
44 第二傾斜壁部
45 第二側壁部
46 対向壁部
47 第三傾斜壁部
48 第四傾斜壁部
49 開放部
50 防止部
6 窪み部
100 縦配管
200 横配管
300 配管
400 配管
a1 第一の領域
a2 第二の領域
a3 第三の領域
H ホース
P1 パッキン
P2 パッキン