(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169880
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】電力変換装置、制御システム、および車両
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241129BHJP
H02P 23/14 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02P23/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086710
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】324003048
【氏名又は名称】三菱電機モビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 益崇
【テーマコード(参考)】
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505CC04
5H505DD03
5H505EE49
5H505HA05
5H505HA08
5H505HB01
5H505JJ04
5H505JJ26
5H505JJ28
5H505LL22
5H505LL24
5H505LL55
5H770AA17
5H770BA02
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA04
5H770GA19
5H770HA02W
5H770HA02Y
5H770HA03W
5H770HA05Z
5H770JA17W
5H770LB05
5H770LB08
(57)【要約】
【課題】平滑コンデンサの容量を推定可能な電力変換装置、制御システム、および車両を提供する。
【解決手段】電力変換装置は、直流電源に接続され、電動モータを駆動する電力変換装置であって、前記直流電源から供給される直流電力を交流電力に変換して前記電動モータに供給するインバータ回路と、前記インバータ回路に供給される直流電力の変動を抑制する平滑コンデンサと、前記インバータ回路に供給される供給電圧と、前記インバータ回路に供給される供給電流と、の少なくとも一方を検出するための検出手段と、前記インバータ回路の変調率を上昇させた状態で、前記検出手段の検出値に基づいて前記平滑コンデンサの容量を推定する容量推定部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源に接続され、電動モータを駆動する電力変換装置であって、
前記直流電源から供給される直流電力を交流電力に変換して前記電動モータに供給するインバータ回路と、
前記インバータ回路に供給される直流電力の変動を抑制する平滑コンデンサと、
前記インバータ回路に供給される供給電圧と、前記インバータ回路に供給される供給電流と、の少なくとも一方を検出するための検出手段と、
前記インバータ回路の変調率を上昇させた状態で、前記検出手段の検出値に基づいて前記平滑コンデンサの容量を推定する容量推定部と、を備える、
電力変換装置。
【請求項2】
前記検出値に含まれる、前記電動モータのトルクリップルに起因する変動成分が一定となるように、トルク指令に応じて前記インバータ回路の変調率を調整する、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記検出値に含まれる、前記電動モータのトルクリップルに起因する変動成分の周波数と、少なくとも前記直流電源および前記平滑コンデンサを含むように形成される共振回路の共振周波数と、が一致するような前記電動モータの回転数を共振回転数と称するとき、
前記平滑コンデンサの容量の推定は、前記共振回転数を含む回転数領域において行われる、
請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記平滑コンデンサの容量の推定を行う際に、少なくとも前記直流電源および前記平滑コンデンサを含むように形成される共振回路の共振周波数を、前回推定された前記平滑コンデンサの容量に基づいて算出する、
請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
推定された前記平滑コンデンサの容量に基づいて、最大変調率制限、指令変調率、最大・最小トルク制限、トルク指令変化率、交流電圧制限、交流電流制限、直流電流制限、および直流電圧制限のうち一つ以上を決定する、
請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項6】
推定された前記平滑コンデンサの容量が所定値以下であると判断した場合、前記平滑コンデンサに故障が発生したと判定する、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項7】
推定された前記平滑コンデンサの容量が、前回推定された前記平滑コンデンサの容量と比較して所定値以上変化していると判断した場合、前記平滑コンデンサに故障が発生したと判定する、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の電力変換装置と、
前記直流電源と前記インバータ回路との間の電気的接続の有無を切り替え可能なスイッチング手段と、を備え、
前記インバータ回路は、前記インバータ回路において上アームを構成する上側スイッチング素子群と、前記インバータ回路において下アームを構成する下側スイッチング素子群と、を含み、
前記平滑コンデンサに故障が発生したと判定した場合に、前記スイッチング手段を制御して前記直流電源と前記インバータ回路とを電気的に切断するとともに、前記上側スイッチング素子群と前記下側スイッチング素子群との少なくとも一方を短絡状態にする、
制御システム。
【請求項9】
請求項8に記載の制御システムを備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置、制御システム、および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直流電源から供給された直流電力を交流電力に変換して電動モータに供給することで電動モータを駆動する、電力変換装置が知られている。このような電力変換装置においては、直流電源から電力変換装置に供給される直流電力の変動を抑制するため、平滑コンデンサが導入される場合がある。しかしながら、この平滑コンデンサと、配線と、直流電源と、によって共振回路が形成され、特定の周波数の電流を印加すると直流電流が共振するという事象が発生する。
【0003】
この共振現象を低減するため、例えば特許文献1のような制御技術が知られている。特許文献1の技術においては、電動モータに印加するパルスパターンに基づき、直流電力部で発生する高調波成分が予め推定される。そして、推定された高調波成分を最小に抑えるようなパルスパターンが決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された制御技術では、平滑コンデンサの容量等のパラメータが、何らかの原因(平滑コンデンサの経年劣化や故障等)に起因して、想定していた値から乖離する場合がある。この場合、特許文献1の制御技術では共振現象を効果的に低減できない可能性があった。
【0006】
本開示は、このような事情を考慮してなされ、平滑コンデンサの容量を推定可能な電力変換装置、制御システム、および車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る電力変換装置は、直流電源に接続され、電動モータを駆動する電力変換装置であって、前記直流電源から供給される直流電力を交流電力に変換して前記電動モータに供給するインバータ回路と、前記インバータ回路に供給される直流電力の変動を抑制する平滑コンデンサと、前記インバータ回路に供給される供給電圧と、前記インバータ回路に供給される供給電流と、の少なくとも一方を検出するための検出手段と、前記インバータ回路の変調率を上昇させた状態で、前記検出手段の検出値に基づいて前記平滑コンデンサの容量を推定する容量推定部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の上記態様によれば、平滑コンデンサの容量を推定可能な電力変換装置、制御システム、および車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る電力変換装置、制御システム、および車両を示す図である。
【
図2】(a)実施の形態に係る電動モータの回転数と、当該電動モータで発生するトルクリップルの回転数と、の関係を示すグラフである。(b)実施の形態に係る電動モータの回転数に対する、共振回路の応答を示すグラフである。
【
図3】実施の形態に係る電力変換装置で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】実施の形態に係る制御システムで行われる処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態に係る電力変換装置、制御システム、および車両について図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る電力変換装置51、制御システム100、および車両200を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る制御システム(電動モータ駆動システム)100は、電動モータ50と、電力変換装置51と、直流電源52と、スイッチング手段9と、を備える。電力変換装置51は、直流電源52に対して電気的に接続され、電動モータ50を駆動する。本実施形態に係る電力変換装置51は、交流電流センサ群1と、インバータ回路2と、平滑コンデンサ3と、直流電流センサ4と、直流電圧センサ5と、ゲート信号制御器6と、を有する。
【0012】
制御システム100は、例えば車両200に搭載される。車両200は、電気自動車(EV)やハイブリッド自動車等の電動車両であってもよい。この場合、電動モータ50は、車両200の車輪を回転させるためのモータであってもよい。
【0013】
電動モータ50としては、例えば、多相交流により回転駆動するモータを採用することができる。本実施形態では、電動モータ50が、U相巻線、V相巻線、およびW相巻線から構成された3相巻線を有する三相ブラシレスモータである場合を例として説明する。
【0014】
インバータ回路2には、直流電源52から直流電力(直流電圧および直流電流)が供給される。インバータ回路2は、直流電源52から供給される直流電力を交流電力(交流電圧および交流電流)に変換して、電動モータ50に供給する。
【0015】
具体的に、本実施形態に係るインバータ回路2は、第1のスイッチング素子2aと、第2のスイッチング素子2bと、第3のスイッチング素子2cと、第4のスイッチング素子2dと、第5のスイッチング素子2eと、第6のスイッチング素子2fと、を有する。
【0016】
第1のスイッチング素子2aは、第4のスイッチング素子2dよりも高電位側に位置する。第1のスイッチング素子2aおよび第4のスイッチング素子2dは、電動モータ50のU相に対応して設けられる。具体的に、電動モータ50のU相巻線は、第1のスイッチング素子2aと第4のスイッチング素子2dとの間の位置に対して電気的に接続されている。第2のスイッチング素子2bは、第5のスイッチング素子2eよりも高電位側に位置する。第2のスイッチング素子2bおよび第5のスイッチング素子2eは、電動モータ50のV相に対応して設けられる。具体的に、電動モータ50のV相巻線は、第2のスイッチング素子2bと第6のスイッチング素子2fとの間の位置に対して電気的に接続されている。第3のスイッチング素子2cは、第6のスイッチング素子2fよりも高電位側に位置する。第3のスイッチング素子2cおよび第6のスイッチング素子2fは、電動モータ50のW相に対応して設けられる。具体的に、電動モータ50のW相巻線は、第3のスイッチング素子2cと第6のスイッチング素子2fとの間の位置に対して電気的に接続されている。
【0017】
各スイッチング素子2a~2fとしては、例えばFET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)等の半導体スイッチング素子を採用することができる。各スイッチング素子2a~2fには、ゲート信号制御器6からゲート信号が供給される。当該ゲート信号により、各スイッチング素子2a~2fのオン状態(導通状態)とオフ状態(非導通状態)とが切り替わる。インバータ回路2は、各スイッチング素子2a~2fのオン状態とオフ状態とがゲート信号制御器6からのゲート信号によって切り替わることにより、電動モータ50の3相巻線に電流を流す。これにより、電動モータ50が駆動され、電動モータ50がトルク(モータトルク)を発生させる。なお、ゲート信号によってオン状態とオフ状態とを切り替え可能であれば、スイッチング素子2a~2fの種類は特に限定されず、適宜変更可能である。
【0018】
以上のように構成されたインバータ回路2において、第1のスイッチング素子2a、第2のスイッチング素子2b、および第3のスイッチング素子2cは、上アームを構成する。以下、上アームを構成するスイッチング素子2a~2cをまとめて、上側スイッチング素子群(高電位側スイッチング素子群)2Uと称する場合がある。また、同様のインバータ回路2において、第4のスイッチング素子2d、第5のスイッチング素子2e、および第6のスイッチング素子2fは、下アームを構成する。以下、下アームを構成するスイッチング素子2d~2fをまとめて、下側スイッチング素子群(低電位側スイッチング素子群)2Lと称する場合がある。
【0019】
本実施形態に係る交流電流センサ群1は、第1の電流センサ1aと、第2の電流センサ1bと、第3の電流センサ1cと、を有する。第1の電流センサ1aは、電動モータ50のU相巻線と、インバータ回路2と、の間に配される。第1の電流センサ1aは、インバータ回路2から電動モータ50のU相巻線に供給される交流電流を検出する。第2の電流センサ1bは、電動モータ50のV相巻線と、インバータ回路2と、の間に配される。第2の電流センサ1bは、インバータ回路2から電動モータ50のV相巻線に供給される交流電流を検出する。第3の電流センサ1cは、電動モータ50のW相巻線と、インバータ回路2と、の間に配される。第3の電流センサ1cは、インバータ回路2から電動モータ50のW相巻線に供給される交流電流を検出する。電流センサ1a~1c(交流電流センサ群1)は、検出した交流電流を、ゲート信号制御器6に出力する。なお、交流電流センサ群1は、電流センサ1a~1cに加えて(もしくは代えて)、インバータ回路2から電動モータ50に供給される交流電圧を検出してゲート信号制御器6に出力する少なくとも一つ以上(例えば三つ)の電圧センサを有していてもよい。
【0020】
平滑コンデンサ3は、インバータ回路2と、直流電源52と、の間に配される。平滑コンデンサ3は、インバータ回路2に供給される直流電力の変動を抑制する。
【0021】
直流電流センサ4は、インバータ回路2と、直流電源52と、の間に配される。直流電流センサ4は、インバータ回路2に供給される直流電流(供給電流)を検出する。直流電流センサ4は、検出した供給電流を、ゲート信号制御器6に出力する。
【0022】
直流電圧センサ5は、インバータ回路2と、直流電源52と、の間に配される。直流電圧センサ5は、インバータ回路2に供給される直流電圧(供給電圧)を検出する。直流電圧センサ5は、検出した供給電圧を、ゲート信号制御器6に出力する。
【0023】
直流電流センサ4および直流電圧センサ5は、インバータ回路2に供給される供給電圧と、インバータ回路2に供給される供給電圧と、インバータ回路2に供給される供給電流と、の少なくとも一方を検出するための検出手段として機能する。本実施形態に係る検出手段は、直流電流センサ4および直流電圧センサ5の双方を有することで、供給電圧および供給電流の双方を検出する。
【0024】
ゲート信号制御器6は、少なくともインバータ回路2を制御する。具体的に、ゲート信号制御器6は、ゲート信号を生成し、生成したゲート信号を各スイッチング素子2a~2fに供給する。ゲート信号制御器6は、各スイッチング素子2a~2fにゲート信号を供給するためのプリドライバ回路、当該プリドライバ回路等を制御するための制御部(プロセッサ)、および、当該制御部によって使用されるデータを記憶する記憶部(記憶媒体)等を有していてもよい。
【0025】
スイッチング手段9は、インバータ回路2(電力変換装置51)と、直流電源52と、の間に配される。スイッチング手段9は、直流電源52とインバータ回路2との間の電気的接続(電力授受)の有無を切り替え可能な手段である。スイッチング手段9としては、例えばコンタクタを採用することができる。
【0026】
ここで、インバータ回路2(電力変換装置51)と直流電源52とを結ぶ配線には、配線抵抗7および配線インダクタンス8が形成される。また、インバータ回路2(電力変換装置51)と直流電源52との間には、共振回路Aが形成される。図示の例における共振回路Aは、直流電源52と、配線インダクタンス8と、配線抵抗7と、平滑コンデンサ3と、を含む。図示の例における共振回路Aは、いわゆるLC共振回路である。共振回路Aは、ある特定の共振周波数fを有する。共振周波数fを有する電流または電圧が共振回路Aに印加された場合、共振回路Aは共振する。
【0027】
電動モータ50は、磁石による磁束とステータ巻線との相互作用等に起因して、トルクリップルを発生させる。電動モータ50で発生したトルクリップルは、インバータ回路2に供給される供給電圧および供給電流にも影響する。具体的に、供給電圧および供給電流には、トルクリップルと同周期の脈動(電圧脈動および電流脈動)を引き起こす。言い換えれば、供給電圧および供給電流には、トルクリップルに起因する変動成分が加えられる。
【0028】
トルクリップルの周波数(トルクリップルに起因する変動成分の周波数)は、電動モータ50の回転数に応じて変化する。
図2(a)は、電動モータ50の回転数と、電動モータ50で発生するトルクリップルの周波数と、の関係を示すグラフである。
図2(a)に示すように、電動モータ50のトルクリップルの周波数は、電動モータ50の回転数が上昇するにつれて上昇する。
【0029】
電動モータ50の回転数が上昇して特定の値(特定の回転数)に達すると、トルクリップルの周波数(トルクリップルに起因する変動成分の周波数)が、共振回路Aの共振周波数fに一致する。以下、トルクリップルの周波数が共振周波数fに一致するような電動モータ50の回転数を、共振回転数rと称する。
図2(b)は、電動モータ50の回転数に対する、共振回路A(共振回路Aのゲイン)の応答(応答曲線)を示すグラフである。
図2(b)に示すように、共振回路Aの応答曲線は、共振回転数rの周辺でピークが立つ形状を有する。つまり、電動モータ50の回転数を上昇させて共振回転数rに達すると、共振現象により、インバータ回路2に供給される供給電圧および供給電流が大きく脈動する。
【0030】
共振回路Aの共振周波数fは、以下の式(1)によって表される。式(1)において、Cは平滑コンデンサ3の容量(静電容量)であり、Lは配線インダクタンス8の大きさである。
【0031】
【0032】
式(1)からわかるように、平滑コンデンサ3の容量が経年劣化等の影響で低下した場合、共振周波数fは高くなる。
【0033】
図3は、本実施形態に係る電力変換装置51で行われる処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、平滑コンデンサ3の容量(静電容量)の推定に関する。
【0034】
(ステップS301)ステップS301においては、予め記憶している推定平滑コンデンサ容量の値(すなわち、平滑コンデンサ3の容量の推定値)が読みだされる。例えば、ゲート信号制御器6において、前述した制御部が、記憶部に記憶された推定平滑コンデンサ容量を読み出してもよい。
図3に示される処理は、複数回繰り返されてもよい。後述するように、ステップS307においては、平滑コンデンサ3の容量の推定が行われる。ステップS301における「予め記憶している推定平滑コンデンサ容量の値」は、前回の処理におけるステップS307で得られた推定値であってもよい。言い換えれば、ステップS301においては、前回推定された平滑コンデンサ3の容量が読みだされてもよい。
【0035】
(ステップS302)ステップS301の処理が行われた後、ステップS302の処理が行われる。ステップS302においては、読みだした推定平滑コンデンサ容量の値から、共振回路Aの共振周波数fを算出する。例えば、ゲート信号制御器6において、前述した制御部が、共振周波数fの算出を行ってもよい。つまり、ゲート信号制御器6(制御部)が、前回推定された平滑コンデンサ3の容量に基づいて共振周波数fを算出する共振周波数算出部として機能してもよい。
【0036】
(ステップS303)ステップS302の処理が行われた後、ステップS303の処理が行われる。ステップS303においては、共振周波数fとトルクリップル周波数から、推定ロジックを実施する回転数領域を決定する。具体的には、まず、上述した共振回転数rが算出される。そして、当該共振回転数rを含むような所定の回転数領域(推定ロジック実施回転数領域)が決定される。共振回転数rの算出および回転数領域の決定は、例えばゲート信号制御器6(制御部)によって行われてもよい。つまり、ゲート信号制御器6(制御部)が、共振回転数rを算出する共振回転数算出部、および、回転数領域を決定する回転数領域決定部として機能してもよい。
【0037】
(ステップS304)ステップS303の処理が行われた後、ステップS304の処理が行われる。ステップS304においては、電動モータ50の実際の回転数(実回転数)が、ステップS303で決定された推定ロジック実施回転数領域内にあるか否かが判断される。この判断は、例えばゲート信号制御器6(制御部)によって行われてもよい。つまり、ゲート信号制御器6(制御部)が、電動モータ50の実回転数が推定ロジック実施回転数領域内にあるか否かを判断する第1判断部として機能してもよい。電動モータ50の実回転数が推定ロジック実施回転数領域内にないと判断された場合(ステップS304;NO)、処理が終了される。電動モータ50の実回転数が推定ロジック実施回転数領域内にあると判断された場合(ステップS304;YES)、ステップS305の処理が行われる。なお、電動モータ50の実回転数は、電動モータ50に取り付けられた回転センサ等によって検出されてもよい。
【0038】
上述したステップS301~S304の処理によれば、後述するステップS307における平滑コンデンサ3の容量の推定が、共振回転数rを含む回転数領域(推定ロジック実施回転数領域)において行われる。これにより、平滑コンデンサ3の容量の推定が、共振回転数r(共振周波数f)付近において行われる。したがって、推定の精度を高めることができる。
【0039】
(ステップS305)ステップS305においては、インバータ回路2の変調率が上げられる。具体的に、インバータ回路2の変調率が、通常運転時よりも高く設定される。インバータ回路2の変調率の設定は、例えばゲート信号制御器6(制御部およびプリドライバ回路)によって行われてもよい。つまり、ゲート信号制御器6(制御部およびプリドライバ回路)が、インバータ回路2の変調率を調整する(例えば、上昇させる)変調率調整部として機能してもよい。なお、「変調率」は、キャリア波の振幅Vcに対する電圧指令値の振幅Vsの比率として定義されてもよい(変調率M=Vs/Vc)。
【0040】
上記のようにインバータ回路2の変調率を上昇させることで、トルク指令が低い状態であっても、インバータ回路2の出力電圧に高調波成分が重畳し、電動モータ50で発生するトルクリップルを増大させることができる。したがって、インバータ回路2に供給される供給電圧および供給電流に含まれる、トルクリップルに起因する変動成分も増大させることができる。これにより、後述するステップS307における平滑コンデンサ3の容量の推定を精度よく行うことができる。
【0041】
ここで、トルクリップルは、トルク指令に比例して大きくなる。そのため、変調率を調整することで、インバータ回路2に供給される供給電圧および供給電流に含まれる、トルクリップルに起因する変動成分が一定となるようにしてもよい。これにより、トルク指令によらず一定のトルクリップル成分を入力信号として扱えるため、平滑コンデンサ3の容量の推定の精度をより向上させることができる。なお、このような変調率の調整は、上述した変調率調整部によって行われてもよい。また、「トルク指令(指令トルク)」は、電動モータ50が出力すべきトルクの値として定義されてもよい。
【0042】
(ステップS306)ステップS305の処理が行われた後、ステップS306の処理が行われる。ステップS306においては、インバータ回路2に供給される供給電圧および供給電流が検出される。ステップS305の処理が行われたことにより、供給電圧および供給電流の検出値には、トルクリップルに起因する変動成分(脈動)が含まれる。供給電圧および供給電流の検出は、直流電流センサ4および直流電圧センサ5を有する検出手段によって行われてもよい。なお、インバータ回路2の三相出力に取り付けられた電圧センサや電流センサ(すなわち、交流電流センサ群1等)の出力に基づいて、供給電圧および供給電流を間接的に検出してもよい。つまり、供給電圧および供給電流を検出するための検出手段は、インバータ回路2の三相出力に取り付けられた電圧センサや電流センサ(すなわち、交流電流センサ群1等)を有していてもよい。
【0043】
(ステップS307)ステップS306の処理が行われた後、ステップS307の処理が行われる。ステップS307においては、平滑コンデンサ容量が推定され、推定値が記憶される。具体的には、ステップS306において検出された(トルクリップルに起因する変動成分を含む)供給電圧および供給電力から、共振周波数f成分が抽出される。そして、抽出された共振周波数f成分に基づき、平滑コンデンサ3の容量が推定される。なお、平滑コンデンサ3の容量の推定はゲート信号制御器6(制御部)によって行われてもよい。つまり、ゲート信号制御器6(制御部)が、平滑コンデンサ3の容量を推定する容量推定部として機能してもよい。また、推定値はゲート信号制御器6(記憶部)に記憶されてもよい。
【0044】
(ステップS308)ところで、平滑コンデンサ3の容量が変化した場合、過電流や過電圧が生じる場合がある。本実施形態に係る電力変換装置51には、こうした過電流や過電圧を抑制するため、ステップS307の処理が行われた後、ステップS308の処理が行われる。ステップS308においては、ステップS307において推定された平滑コンデンサ3の容量に基づいて、過電流や過電圧に係る各種制御パラメータについて、制限値を決定する。より具体的に、推定された平滑コンデンサ3の容量に基づいて、最大変調率制限、指令変調率、最大・最小トルク制限、トルク指令変化率、交流電圧制限、交流電流制限、直流電流制限、および直流電圧制限のうち一つ以上の制限値が決定される。各種制限値の決定は、ゲート信号制御器6(制御部)によって行われてもよい。つまり、ゲート信号制御器6(制御部)が、各種制限値を決定する制限値決定部として機能してもよい。
【0045】
このように各種制限値を決定することで、平滑コンデンサ3の容量が変化しても、変調率を下げる、トルクを下げる、交流出力を下げる、または直流出力を下げる等をすることによって過電流や過電圧を未然に防ぐことが可能となる。
【0046】
ステップS308の処理が行われた後、当該フローチャートに係る処理が終了する。
【0047】
図4は、本実施形態に係る制御システム100で行われる処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、平滑コンデンサ3の故障の有無の判定に関する。
図4に示された処理は、
図3に示された処理の後に(例えば、
図3の処理に連続して)行われてもよい。
【0048】
(ステップS401)ステップS401においては、記憶している推定平滑コンデンサ容量の値が読みだされる。例えば、ゲート信号制御器6において、前述した制御部が、記憶部に記憶された推定平滑コンデンサ容量を読み出してもよい。
【0049】
(ステップS402)ステップS401の処理が行われた後、ステップS402の処理が行われる。ステップS402においては、読みだされた推定平滑コンデンサ容量が所定値以下であるか否かが判断される。この判断は、例えばゲート信号制御器6(制御部)によって行われてもよい。つまり、ゲート信号制御器6(制御部)が、推定平滑コンデンサ容量が所定値以下であるか否かを判断する第2判断部として機能してもよい。推定平滑コンデンサ容量が所定値以下であると判断された場合(ステップS402;YES)、ステップS403の処理が行われる。推定平滑コンデンサ容量が所定値以下でないと判断された場合(ステップS402;NO)、ステップS405の処理が行われる。
【0050】
(ステップS403)ステップS403においては、これ以上電動モータ50の駆動を続ければ過電圧または過電流が発生すると判断し、平滑コンデンサ3に故障が発生したと判定される。この判定は、上述した第2判断部によって行われてもよい。
【0051】
(ステップS404)ステップS403の処理が行われた後、ステップS404の処理が行われる。ステップS404においては、スイッチング手段9が制御され(開放され)、直流電源52とインバータ回路2とが電気的に切断される。なお、スイッチング手段9の制御はゲート信号制御器6(制御部)によって行われてもよい。つまり、ゲート信号制御器6(制御部)が、スイッチング手段9を制御するスイッチング手段制御部として機能してもよい。また、ステップS404においては、インバータ回路2が制御され、上側スイッチング素子群2Uと下側スイッチング素子群2Lとの少なくとも一方が短絡状態(全相短絡状態、三相短絡状態)とされる。この制御は、ゲート信号制御器6によって行われてもよい。なお、「上側スイッチング素子群2Uの短絡状態」とは、上側スイッチング素子群2Uに含まれる全てのスイッチング素子2a~2cがオン状態(導通状態)となっている状態である。同様に、「下側スイッチング素子群2Lの短絡状態」とは、下側スイッチング素子群2Lに含まれる全てのスイッチング素子2d~2fがオン状態(導通状態)となっている状態である。
【0052】
平滑コンデンサ3が故障している場合、平滑コンデンサ3が短絡している可能性がある。上記のようにスイッチング手段9およびインバータ回路2を制御することで、平滑コンデンサ3が、電動モータ50および直流電源52の双方から電気的に切断される。これにより、平滑コンデンサ3が短絡故障している場合であっても、平滑コンデンサ3に短絡電流が流れることを防ぐことができる。これにより、二次被害の発生を未然に防ぐことができる。
【0053】
(ステップS405)ステップS405においては、平滑コンデンサ3に故障は発生していない(すなわち、平滑コンデンサ3は正常である)と判定される。この判定は、上述した第2判断部によって行われてもよい。
【0054】
ステップS404またはステップS405の処理が行われた後、当該フローチャートに係る処理が終了する。
【0055】
なお、上述したステップS402においては、推定平滑コンデンサ容量が所定値以下であるか否かの判断に代えて(もしくは加えて)、推定された平滑コンデンサ3の容量が、前回推定された平滑コンデンサ3の容量と比較して所定値以上変化しているか否かの判断が行われてもよい。そして、推定された平滑コンデンサ3の容量が、前回推定された平滑コンデンサ3の容量と比較して所定値以上変化していると判断された場合(ステップS402;YES)、ステップS403の処理が行われてもよい。推定された平滑コンデンサ3の容量が、前回推定された平滑コンデンサ3の容量と比較して所定値以上変化していないと判断された場合(ステップS402;NO)、ステップS405の処理が行われてもよい。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係る電力変換装置51は、直流電源52に接続され、電動モータ50を駆動する電力変換装置であって、直流電源52から供給される直流電力を交流電力に変換して電動モータ50に供給するインバータ回路2と、インバータ回路2に供給される直流電力の変動を抑制する平滑コンデンサ3と、インバータ回路2に供給される供給電圧と、インバータ回路2に供給される供給電流と、の少なくとも一方を検出するための検出手段(直流電流センサ4、直流電圧センサ5、交流電流センサ群1等)と、インバータ回路2の変調率を上昇させた状態で、前記検出手段の検出値に基づいて平滑コンデンサ3の容量を推定する容量推定部(ゲート信号制御器6)と、を備える。
【0057】
この構成により、平滑コンデンサ3の容量を推定することができる。特に、追加のトルクや電流を用いることなく、平滑コンデンサ3の容量を推定することができる。
【0058】
また、本実施形態に係る電力変換装置51は、前記検出値に含まれる、電動モータ50のトルクリップルに起因する変動成分が一定となるように、トルク指令に応じてインバータ回路2の変調率を調整する。この構成により、トルク指令が変化した場合でも精度よく平滑コンデンサ3の容量を推定することができる。
【0059】
また、前記検出値に含まれる、電動モータ50のトルクリップルに起因する変動成分の周波数と、少なくとも直流電源52および平滑コンデンサ3を含むように形成される共振回路Aの共振周波数fと、が一致するような電動モータ50の回転数を共振回転数rと称するとき、平滑コンデンサ3の容量の推定は、共振回転数rを含む回転数領域において行われる。この構成により、計測が共振点付近で行われ、トルクリップルに起因する電流・電圧変動成分が大きくなる。したがって、平滑コンデンサ3の容量の推定の正確性をより高めることができる。
【0060】
また、本実施形態に係る電力変換装置51は、平滑コンデンサ3の容量の推定を行う際に、共振回路Aの共振周波数fを、前回推定された平滑コンデンサ3の容量に基づいて算出する。この構成により、平滑コンデンサ3の容量が変化した場合でも、適切な回転数で平滑コンデンサ3の容量の推定を行うことができる。
【0061】
また、本実施形態に係る電力変換装置51は、推定された平滑コンデンサ3の容量に基づいて、最大変調率制限、指令変調率、最大・最小トルク制限、トルク指令変化率、交流電圧制限、交流電流制限、直流電流制限、および直流電圧制限のうち一つ以上を決定する。この構成により、過電圧および過電流を抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態に係る電力変換装置51は、推定された平滑コンデンサ3の容量が所定以下であると判断した場合、平滑コンデンサ3に故障が発生したと判定する。この構成により、平滑コンデンサ3の異常を検出し、過電圧・過電流の誘発を防止できる。
【0063】
また、本実施形態に係る電力変換装置51は、推定された平滑コンデンサ3の容量が、前回推定された平滑コンデンサ3の容量と比較して所定値以上変化していると判断した場合、平滑コンデンサ3に故障が発生したと判定してもよい。この構成によっても、平滑コンデンサ3の異常を検出し、過電圧・過電流の誘発を防止できる。
【0064】
また、本実施形態に係る制御システム100は、上述した電力変換装置51と、直流電源52とインバータ回路2との間の電気的接続の有無を切り替え可能なスイッチング手段9と、を備え、インバータ回路2は、インバータ回路2において上アームを構成する上側スイッチング素子群2Uと、インバータ回路2において下アームを構成する下側スイッチング素子群2Lと、を含み、平滑コンデンサ3に故障が発生したと判定した場合に、スイッチング手段9を制御して直流電源52とインバータ回路2とを電気的に切断するとともに、上側スイッチング素子群2Uと下側スイッチング素子群2Lとの少なくとも一方を短絡状態にする。この構成により、平滑コンデンサ3が短絡故障した際の異常過熱を防ぐことができる。
【0065】
また、本実施形態に係る車両200は、上述した制御システム100を備える。特に電動車両に搭載される電力変換装置では、高電流化・高電圧化が進んでいる。このような電動車両においては、上述のように安全状態を維持できる制御システム100が特に有用となる。
【0066】
なお、本開示の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0067】
例えば、前記実施形態では、電動モータ50の例として、電動車両の車輪を回転させるためのモータを挙げたが、電動モータ50の種類はこれに限られない。平滑コンデンサ3とともに用いられる電動モータ50であれば、電動モータ50の種類は適宜変更可能である。例えば、電動モータ50は、電動パワーステアリング装置やエアコン等に用いられるモータ等であってもよい。この場合、電動モータ50(制御システム100)は、電動車両以外の車両(例えば、ガソリン駆動の車両等)に搭載されてもよい。あるいは、電動モータ50は、車両以外の製品で用いられるモータであってもよい。
【0068】
また、上述した各機能部(共振周波数算出部、共振回転数算出部、回転数領域決定部、第1判断部、変調率調整部、容量推定部、制限値決定部、第2判断部、およびスイッチング手段制御部。以下においても同様。)の機能は、ゲート信号制御器6を制御する上位の制御部(上位制御部)によって実現されてもよい。あるいは、他の制御主体によって各機能部の機能が実現されてもよい。
【0069】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0070】
以上、説明した各機能部の機能は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが、プログラムメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現される。これらの機能のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアが協働することで実現されてもよい。
【0071】
上述した各機能部の機能を実現するためのプログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録される。そして、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータに読み込ませ、実行することにより、上述した各機能部における処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータ」とは、OS及び周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0072】
また、「コンピュータ」は、インターネット又はWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。
【0073】
また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部又は外部に設けられた記録媒体も含まれる。尚、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に、各機能部で合体されてもよい。また、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。
【0074】
「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバ又はクライアントとなるコンピュータ内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものを含む。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記プログラムは、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。差分プログラムとは、上述した機能を、コンピュータに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現するものである。
【0075】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0076】
(付記1)
直流電源に接続され、電動モータを駆動する電力変換装置であって、
前記直流電源から供給される直流電力を交流電力に変換して前記電動モータに供給するインバータ回路と、
前記インバータ回路に供給される直流電力の変動を抑制する平滑コンデンサと、
前記インバータ回路に供給される供給電圧と、前記インバータ回路に供給される供給電流と、の少なくとも一方を検出するための検出手段と、
前記インバータ回路の変調率を上昇させた状態で、前記検出手段の検出値に基づいて前記平滑コンデンサの容量を推定する容量推定部と、を備える、
電力変換装置。
【0077】
(付記2)
前記検出値に含まれる、前記電動モータのトルクリップルに起因する変動成分が一定となるように、トルク指令に応じて前記インバータ回路の変調率を調整する、
付記1に記載の電力変換装置。
【0078】
(付記3)
前記検出値に含まれる、前記電動モータのトルクリップルに起因する変動成分の周波数と、少なくとも前記直流電源および前記平滑コンデンサを含むように形成される共振回路の共振周波数と、が一致するような前記電動モータの回転数を共振回転数と称するとき、
前記平滑コンデンサの容量の推定は、前記共振回転数を含む回転数領域において行われる、
付記1または2に記載の電力変換装置。
【0079】
(付記4)
前記平滑コンデンサの容量の推定を行う際に、少なくとも前記直流電源および前記平滑コンデンサを含むように形成される共振回路の共振周波数を、前回推定された前記平滑コンデンサの容量に基づいて算出する、
付記1から3のいずれか一つに記載の電力変換装置。
【0080】
(付記5)
推定された前記平滑コンデンサの容量に基づいて、最大変調率制限、指令変調率、最大・最小トルク制限、トルク指令変化率、交流電圧制限、交流電流制限、直流電流制限、および直流電圧制限のうち一つ以上を決定する、
付記1から4のいずれか一つに記載の電力変換装置。
【0081】
(付記6)
推定された前記平滑コンデンサの容量が所定値以下であると判断した場合、前記平滑コンデンサに故障が発生したと判定する、
付記1から5のいずれか一つに記載の電力変換装置。
【0082】
(付記7)
推定された前記平滑コンデンサの容量が、前回推定された前記平滑コンデンサの容量と比較して所定値以上変化していると判断した場合、前記平滑コンデンサに故障が発生したと判定する、
付記1から6のいずれか一つに記載の電力変換装置。
【0083】
(付記8)
付記6または7に記載の電力変換装置と、
前記直流電源と前記インバータ回路との間の電気的接続の有無を切り替え可能なスイッチング手段と、を備え、
前記インバータ回路は、前記インバータ回路において上アームを構成する上側スイッチング素子群と、前記インバータ回路において下アームを構成する下側スイッチング素子群と、を含み、
前記平滑コンデンサに故障が発生したと判定した場合に、前記スイッチング手段を制御して前記直流電源と前記インバータ回路とを電気的に切断するとともに、前記上側スイッチング素子群と前記下側スイッチング素子群との少なくとも一方を短絡状態にする、
制御システム。
【0084】
(付記9)
付記8に記載の制御システムを備える、車両。
【符号の説明】
【0085】
200…車両 100…制御システム 50…電動モータ 51…電力変換装置 52…直流電源 1…交流電流センサ群(検出手段) 2…インバータ回路 2U…上側スイッチング素子群 2L…下側スイッチング素子群 3…平滑コンデンサ 4…直流電流センサ(検出手段) 5…直流電圧センサ(検出手段) 6…ゲート信号制御器(容量推定部) 9…スイッチング手段 A…共振回路