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特開2024-169888揮発性有機化合物を感知するガスセンサ、及び前記ガスセンサの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169888
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】揮発性有機化合物を感知するガスセンサ、及び前記ガスセンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
G01N27/12 C
G01N27/12 B
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086726
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】502032105
【氏名又は名称】エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】LG ELECTRONICS INC.
【住所又は居所原語表記】128, Yeoui-daero, Yeongdeungpo-gu, 07336 Seoul,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100109841
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 健史
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(72)【発明者】
【氏名】高田 正基
【テーマコード(参考)】
2G046
【Fターム(参考)】
2G046AA25
2G046BA01
2G046BA09
2G046BB01
2G046BC05
2G046FB02
2G046FE04
2G046FE05
2G046FE07
2G046FE15
2G046FE17
2G046FE19
2G046FE20
2G046FE23
2G046FE32
2G046FE39
2G046FE40
(57)【要約】      (修正有)
【課題】揮発性有機化合物を感知するガスセンサ、及び前記ガスセンサの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、揮発性有機化合物の中でホルムアルデヒドに特異的に反応するようにアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む感知材料を用いて感知層(300)を形成する。前記感知層(300)が電極(200)同士の間を接続してホルムアルデヒドを感知するときに物理量の変化を確認することにより、ホルムアルデヒドを検出することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機化合物を感知するガスセンサであって、
非伝導性物質で構成された基板と;
前記基板に伝導性物質で構成された電極と;
前記電極の少なくとも一部に接触するか、又は、前記電極を覆うように形成され、ガスと反応する感知層と;を備えてなり、
前記感知層は、アルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物と酸化スズの化合物を含む、揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
【請求項2】
前記アルカリ金属酸化物は、Li、Na、K、Rb、Cs、及びFrの中から選択される少なくとも1種の元素を含む、請求項1に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
【請求項3】
前記アルカリ土類金属酸化物は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、及びRaの中から選択される少なくとも1種の元素を含む、請求項1に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
【請求項4】
前記電極は酸化インジウムスズ(ITO)で構成される、請求項1に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
【請求項5】
前記電極は、
前記基板に形成された第1電極と、
前記基板上に前記第1電極と離隔して形成された第2電極と、を備え、
前記感知層は、前記第1電極と前記第2電極とを接続するように配置される、請求項1に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
【請求項6】
前記感知層は、前記第1電極の少なくとも一部と前記第2電極の少なくとも一部が空気中に曝されるように構成される、請求項5に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
【請求項7】
前記基板はヒータを更に備え、
前記ヒータは、前記電極がある基板の表面、又は、前記電極がある基板の表面の反対側の表面に位置する、請求項1に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
【請求項8】
揮発性有機化合物を感知するガスセンサであって、
非伝導性物質で構成された基板と;
前記基板に位置する感知層と;
伝導性物質で構成され、前記感知層内の電子移動及び静電容量を感知する電極と;を備えてなり、
前記電極は、伝導性物質で構成された第1電極と、
前記第1電極に電流を供給するか、又は、前記第1電極から電流の供給を受ける第2電極と、を備え、
前記感知層は、前記第1電極と前記第2電極とを接続し、前記第1電極の少なくとも一部と前記第2電極の少なくとも一部が大気中に曝されるように構成される、揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
【請求項9】
前記感知層は前記基板と前記電極との間に配置される、請求項8に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
【請求項10】
前記第1電極と前記第2電極は前記感知層の外面に備えられる、請求項9に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
【請求項11】
前記感知層は、前記第1電極の少なくとも一部と前記第2電極の少なくとも一部とを遮蔽する、請求項8に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
【請求項12】
前記基板はヒータを更に備え、
前記ヒータは、前記電極がある基板の表面、又は、前記電極がある基板の表面の反対側の表面に位置する、請求項8に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
【請求項13】
感知層を形成し、基板上に形成された電極同士を接続したガスセンサを製造する方法であって、
酸化インジウムスズ(ITO)を用いて電極を形成するステップと;
アルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物と酸化スズの化合物を用いて前記感知層を形成するステップと;を含んでなる、揮発性有機化合物を感知するガスセンサの製造方法。
【請求項14】
前記アルカリ金属酸化物は、Li、Na、K、Rb、Cs、及びFrの中から選択される少なくとも1種の元素を含み、或いは、
前記アルカリ土類金属酸化物は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、及びRaの中から選択される少なくとも1種の元素を含む、請求項13に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサの製造方法。
【請求項15】
前記感知層は、Mg-SnO2を分散させた、純水とグリセリンの混合溶液を塗布し、所定の温度で加熱して形成される、請求項14に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物を感知するガスセンサに係り、より詳細には、揮発性有機化合物の中でホルムアルデヒドを特異的に感知することができるガスセンサ、及び前記ガスセンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新築住宅又は改築後の住宅で目の痛み、頭痛、アレルギーなどの身体的障害が起こることがある。それをシークハウス症候群というが、その原因は、ホルムアルデヒド(Formaldehyde)を代表とする揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Composite)であると言われている。
【0003】
揮発性有機化合物の中でも、ホルムアルデヒドは、各種接着剤や床材、パーティクルボード又は合板などに含有されており、これらが室内空間で使用されるとき、放出されて問題を起こしている。これらを完全に使用しないことはできず、ホルムアルデヒドを含む揮発性有機化合物が発生した場合に室内の居住者に多くの悪影響を及ぼしている。
【0004】
ホルムアルデヒドが人体に及ぼす影響を見ると、空気中のホルムアルデヒド濃度が0.04ppm程度になれば神経組織の刺激が始まるが、敏感な子供たちは、アトピー性皮膚炎が生じることがある。空気中のホルムアルデヒド濃度が0.05~1.0であれば、臭いが感じられ、この濃度はカナダやカリフォルニアの室内基準値である。空気中のホルムアルデヒド濃度が0.2ppm程度であれば、目の刺激が始まり、空気中のホルムアルデヒド濃度が0.25~0.33ppmであれば、呼吸器障害が発生するおそれがある。空気中のホルムアルデヒド濃度0.5ppmは、のどの刺激が始まる最低値であり、韓国の産業衛生学会で許容する最高値である。空気中のホルムアルデヒド濃度が2.0~3.0であれば、目を刺すような痛みが生じ、空気中のホルムアルデヒド濃度が4.0であれば、涙が出ることがある。空気中のホルムアルデヒド濃度が10.0~20.0であれば、激しく涙が出たり正常な呼吸が困難であったりし、30.0ppm以上であれば、数分内に急性中毒を起こし、毒性肺気腫で死亡することもある。
【0005】
ちなみに、国際保健機関(WHO)、日本などで定めた室内環境基準は、空気中のホルムアルデヒド濃度が0.08ppmとなっている。このような基準に合わせて、空気中のホルムアルデヒド濃度をガスセンサを用いて検出するようにすることが必要である。
【0006】
ところが、ホルムアルデヒドが発生する場合、アルコールなどの他の揮発性有機化合物(VOC)ガスが存在することがある。しかし、一般な揮発性有機化合物とホルムアルデヒドは人体への影響が互いに異なるため、ホルムアルデヒドに特異的な選択的感受性が要求される。
【0007】
一般なガスセンサは、ほとんどの揮発性有機化合物に類似した感度を示すが、このような例が日本国特許第3854358号公報に開示されている。ここでは、基板上に金(Au)電極を形成し、その間に感知材料として、Ga、Y、La、Ndなどから選択された1種類以上の元素を添加した酸化スズ(SnO2)を使用する。
【0008】
しかし、この種の従来のガスセンサは、ほとんどの揮発性有機化合物に類似した感度を示す。例えば、SiO2にPdやGdを添加した感知材料を使用したとき、ホルムアルデヒド0.1ppmに対して感度Sは20%であるが、揮発性有機化合物1ppmに対しても感度Sは25%である。前記感度は、抵抗変化の百分率を換算して得たものである。このように、従来のガスセンサは、ホルムアルデヒドと揮発性有機化合物の両方を高感度で検出し、ホルムアルデヒドのみを選択的に検出することはできなかった。
【0009】
図1には、従来のガスセンサの反応性を示している。これは、論文「Study on a micro-gas sensor with SnO2-NiO sensitive film for indoor formaldehyde detection」(Sensors and Actuators B vol132,(2008)p74~80)に開示されている。ここでのガスセンサは、感知材料として酸化スズ-酸化ニッケルを用い、電極にPtを用いたMEMS構造であって、ホルムアルデヒドを検出するものである。
【0010】
しかし、この論文に開示されているガスセンサは、ホルムアルデヒドの0.06ppmの感度Sは1.6%であり、エタノール1ppmの感度Sは0.1%以下である。さらに、ホルムアルデヒドとエタノールの感度比は10以上と大きく、エタノールガスの干渉は抑制されていた。ところが、ホルムアルデヒドの感度Sは1.6%と非常に低い。
【0011】
言い換えれば、前記ガスセンサは、アルコールを含む揮発性有機化合物よりもホルムアルデヒドに対してさらに感度が高いが、ホルムアルデヒドを選択的に感知することができないという根本的な限界があった。
【0012】
したがって、従来のガスセンサは、揮発性有機化合物の存在を感知するものの、前記揮発性有機化合物にホルムアルデヒドが含まれているか、含まれていればどれだけ含まれているかに関する情報を提供することができないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、揮発性有機化合物中のホルムアルデヒドに対する感度が最も高いガスセンサを提供することにある。
【0014】
本発明の目的は、揮発性有機化合物中のホルムアルデヒドの存在又は濃度を感知することが可能なガスセンサを提供することにある。
【0015】
本発明の目的は、高感度と高選択性の両方を維持するガスセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一の態様
本発明は、その一の態様として以下のものを提案することができる。
〔1〕
揮発性有機化合物を感知するガスセンサであって、
非伝導性物質で構成された基板と;
前記基板に伝導性物質で構成された電極と;
前記電極の少なくとも一部に接触するか、又は、前記電極を覆うように形成され、ガスと反応する感知層と;を備えてなり、
前記感知層は、アルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物と酸化スズの化合物を含む、揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
〔2〕
前記アルカリ金属酸化物は、Li、Na、K、Rb、Cs、及びFrの中から選択される少なくとも1種の元素を含む、〔1〕に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
〔3〕
前記アルカリ土類金属酸化物は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、及びRaの中から選択される少なくとも1種の元素を含む、〔1〕に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
〔4〕
前記電極は酸化インジウムスズ(ITO)で構成される、〔1〕に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
〔5〕
前記電極は、
前記基板に形成された第1電極と、
前記基板上に前記第1電極と離隔して形成された第2電極と、を備え、
前記感知層は、前記第1電極と前記第2電極とを接続するように配置される、〔1〕に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
〔6〕
前記感知層は、前記第1電極の少なくとも一部と前記第2電極の少なくとも一部が空気中に曝されるように構成される、〔5〕に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
〔7〕
前記基板はヒータを更に備え、
前記ヒータは、前記電極がある基板の表面、又は、前記電極がある基板の表面の反対側の表面に位置する、〔1〕に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
〔8〕
揮発性有機化合物を感知するガスセンサであって、
非伝導性物質で構成された基板と;
前記基板に位置する感知層と;
伝導性物質で構成され、前記感知層内の電子移動及び静電容量を感知する電極と;を備えてなり、
前記電極は、伝導性物質で構成された第1電極と、
前記第1電極に電流を供給するか、又は、前記第1電極から電流の供給を受ける第2電極と、を備え、
前記感知層は、前記第1電極と前記第2電極とを接続し、前記第1電極の少なくとも一部と前記第2電極の少なくとも一部が大気中に曝されるように構成される、揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
〔9〕
前記感知層は前記基板と前記電極との間に配置される、〔8〕に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
〔10〕
前記第1電極と前記第2電極は前記感知層の外面に備えられる、〔9〕に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
〔11〕
前記感知層は、前記第1電極の少なくとも一部と前記第2電極の少なくとも一部とを遮蔽する、〔8〕に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
〔12〕
前記基板はヒータを更に備え、
前記ヒータは、前記電極がある基板の表面、又は、前記電極がある基板の表面の反対側の表面に位置する、〔8〕に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
〔13〕
感知層を形成し、基板上に形成された電極同士を接続したガスセンサを製造する方法であって、
酸化インジウムスズ(ITO)を用いて電極を形成するステップと;
アルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物と酸化スズの化合物を用いて前記感知層を形成するステップと;を含んでなる、揮発性有機化合物を感知するガスセンサの製造方法。
〔14〕
前記アルカリ金属酸化物は、Li、Na、K、Rb、Cs、及びFrの中から選択される少なくとも1種の元素を含み、或いは、
前記アルカリ土類金属酸化物は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、及びRaの中から選択される少なくとも1種の元素を含む、〔13〕に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサの製造方法。
〔15〕
前記感知層は、Mg-SnO2を分散させた、純水とグリセリンの混合溶液を塗布し、所定の温度で加熱して形成される、〔14〕に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサの製造方法。
【0017】
本発明は、アルカリ金属元素又はアルカリ土類金属元素を含有する感知材料の新規組み合わせでガスセンサを構成し、高感度と高選択性を有するセンサを提供する。
【0018】
本発明は、酸化スズをアルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物と共に用いて化合物を作って感知層を形成することにより、ホルムアルデヒドを検出することができる。
【0019】
本発明は、ガスセンサを構成する際に、酸化インジウムスズ(ITO)からなる電極を備える。
【0020】
本発明は、非伝導性物質で作られた基板と、前記基板に伝導性物質で形成される電極と、前記電極のうちの少なくとも一部に接触するか或いは前記電極を覆うように形成され、ガスと反応する感知層と、を含み、前記感知層は、アルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物と酸化スズの化合物を含むことができる。
【0021】
前記アルカリ金属酸化物は、Li、Na、K、Rb、Cs及びFrの中から選択される少なくとも1種の元素を含むことができる。
【0022】
前記アルカリ土類金属酸化物は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba及びRaの中から選択される少なくとも1種の元素を含むことができる。
【0023】
前記電極は、酸化インジウムスズ(ITO)で形成できる。
【0024】
前記電極は、前記基板に形成される第1電極と、前記基板に前記第1電極と離隔して形成される第2電極と、を含むことができ、前記感知層は、前記第1電極と前記第2電極とを接続するように配置されることができる。
【0025】
前記感知層は、前記第1電極と前記第2電極のうちの少なくとも一部を空気中にさらすように形成できる。
【0026】
前記基板にはヒータがさらに備えられるが、前記ヒータは、前記電極がある基板の表面、又は前記電極がある基板の表面の反対側の表面に位置することができる。
【0027】
本発明は、非伝導性物質で作られる基板と、前記基板に位置する感知層と、伝導性物質で作られ、前記感知層内の電子移動及び静電容量を感知する電極と、を含むことができ、前記電極は、伝導性物質で形成される第1電極と、前記第1電極に電流を供給するか或いは前記第1電極から電流の供給を受ける第2電極と、を含むことができ、前記感知層は、前記第1電極と前記第2電極とを接続するが、少なくとも前記第1電極と前記第2電極の一部が大気中にさらされるように形成されることができる。
【0028】
前記感知層は、前記基板と前記電極との間に配置されることができる。
【0029】
前記第1電極と前記第2電極は、前記感知層の外面に備えられることができる。
【0030】
前記感知層は、前記第1電極の一部と前記第2電極の一部とを遮蔽することができる。
【0031】
前記基板にはヒータがさらに備えられることができ、前記ヒータは、前記電極がある基板の表面、又は前記電極がある基板の表面の反対側の表面に位置することができる。
【0032】
本発明は、基板上に形成された電極を接続するように感知層が形成されたガスセンサを製造する方法であって、酸化インジウムスズ(ITO)を用いて前記電極を形成するステップと、アルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物と酸化スズの化合物を用いて前記感知層を形成するステップと、を含むことができる。
【0033】
前記アルカリ金属酸化物は、Li、Na、K、Rb、Cs及びFrの中から選択される少なくとも1種の元素を含むことができ、前記アルカリ土類金属酸化物は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba及びRaの中から選択される少なくとも1種の元素を含むことができる。
【0034】
前記感知層は、Mg-SnO2を純水とグリセリンの混合溶液に分散させて塗布し、所定の温度で加熱して形成することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によるガスセンサでは、次の効果の少なくとも1種を有することができる。
【0036】
本発明では、ホルムアルデヒドガスを10ppbの低濃度まで検出することができるという効果がある。
【0037】
本発明では、ホルムアルデヒドと他のガスとの干渉を回避することができるという効果がある。よって、ホルムアルデヒドのみを効果的に検出することができる。
【0038】
本発明のガスセンサでは、代表的な揮発性有機化合物であるエタノールガス1ppmは、ホルムアルデヒド10ppb以下に相当する感度を有する。よって、本発明のガスセンサは、他の揮発性有機化合物に比べてホルムアルデヒドをより良く検出することができるため、ホルムアルデヒドに高い選択性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】従来のガスセンサにおけるホルムアルデヒドの選択性がエタノールに比べて低いことを示すグラフである。
図2】本発明によるガスセンサの構造を示す概略断面図である。
図3】本発明によるガスセンサにおいてホルムアルデヒド、エタノール、トルエンに対する感度を示すグラフである。
図4】本発明によるガスセンサにおいてガスに対する感知が行われることを説明する説明図である。
図5】本発明によるガスセンサの他の実施例を示す概略断面図である。
図6】本発明によるガスセンサの別の実施例を示す概略断面図である。
図7図2に示された実施例にヒータが追加されたガスセンサを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、添付図面を参照して、本明細書に開示された実施例を詳細に説明する。本明細書は、互いに異なる実施例でも、同一・類似の構成については同一・類似の参照番号を付与し、その説明は最初の説明に代える。本明細書で使用される単数の表現は、文脈上明らかに別段の意味を有しない限り、複数の表現を含む。なお、本明細書に開示された実施例を説明する際に、関連する公知の技術についての具体的な説明が、本明細書に開示された実施例の要旨を不明瞭にするおそれがあると判断された場合、その詳細な説明は省略する。また、添付図面は、本明細書に開示された実施例を容易に理解することができるようにするためのものに過ぎず、本明細書に開示された技術的思想が添付図面によって制限されると解釈されてはならないことを留意すべきである。
【0041】
図2には、本発明の実施例のガスセンサの構造が概略的に示されている。本発明の実施例のガスセンサ10は、骨格を形成する基板100を有する。前記基板100上には電極200がある。前記電極200同士を接続するように感知層300がある。
【0042】
前記基板100は、例えば二酸化ケイ素(SiO2)などの非伝導体で作られる。前記基板100は、樹脂系を材料として前記電極200と感知層300を支持する役割を果たす。前記基板100は、所定の形状を有する板であってもよい。前記基板100としては、ガラス基板、アルミナ基板などが使用されてもよい。
【0043】
前記電極200は、第1電極210と第2電極220の少なくとも一対からなることができる。前記第1電極210と第2電極220は、外部と電気的に接続されることができる。前記第1電極210と第2電極220は、それぞれ基板100に所定の間隔をおいて形成されるが、前記第1電極210と前記第2電極220との間では、前記感知層300を介して電流が伝達できる。
【0044】
本発明のガスセンサ10は、前記第1電極210と第2電極220との間を流れる電流を感知したり、電流の変化を感知したり、前記電極200の電気抵抗又は静電容量の変化を感知したりしてホルムアルデヒドを感知することができる。
【0045】
前記感知層300は、前記第1電極210と第2電極220を覆うように形成できる。前記感知層300は、前記第1電極210と第2電極220との間を流れる電流の強さ、又は電極200の静電容量(Capacitance)又は電気抵抗を変化させることができる。すなわち、前記感知層300を形成する材料は、固有の抵抗を有するが、ホルムアルデヒドと接触又は結合すると、電気的性質が変化する可能性がある。
【0046】
例えば、前記感知層300を形成する材料は、前記ホルムアルデヒドと接触又は結合すると、前記ホルムアルデヒドと酸化還元反応を起こしながら電子を前記電極200に伝達するか、或いは前記電極200から電子の供給を受けることができる。あるいは、前記感知層300を形成する材料は、前記ホルムアルデヒドと接触又は結合すると、前記ホルムアルデヒドの浸透により前記感知層300の分子配置構造を変化させて全体電荷容量が変化する可能性がある。
【0047】
しかし、前記感知層300は、ホルムアルデヒド以外には、他の揮発性有機化合物とは何らの反応もしないか、或いはホルムアルデヒドに比べて非常に低い反応性を有することができる。
【0048】
このような特徴によって、本発明のガスセンサ10では、ホルムアルデヒドを特異的に感知することができる。これは、大気中又は室内に揮発性有機化合物と共にホルムアルデヒドが存在しても、前記感知層300がホルムアルデヒド以外に他の揮発性有機化合物と反応しないか、或いは非常に低い反応性を有するためである。
【0049】
以下では、本発明のガスセンサ10がホルムアルデヒドに特異的に反応してホルムアルデヒドを感知し、他の揮発性有機化合物には反応しないため他の揮発性有機化合物を感知しないか、或いは他の揮発性有機化合物に対する感度が低下する特徴について説明する。
【0050】
本発明のガスセンサ10では、前記電極200と感知層300の材料を特定する。すなわち、前記電極200と感知層300の材料がホルムアルデヒドに特異的に反応するか、或いは残りの揮発性有機化合物よりもホルムアルデヒドに対する感度が著しく大きい特性を持つようにするのである。
【0051】
本発明では、研究を通じて、前記感知層300の材料がアルカリ金属元素の酸化物又はアルカリ土類金属元素の酸化物と酸化スズ(SnO2)の化合物になると、ホルムアルデヒドに対する感度が残りの揮発性有機化合物に対する感度よりも著しく大きいか、或いはホルムアルデヒドのみと特異的に反応することが分かる。
【0052】
したがって、本発明のガスセンサ10の感知層300を形成する材料としては、アルカリ金属元素の酸化物又はアルカリ土類金属元素の酸化物と酸化スズ(SnO2)の化合物を選択した。
【0053】
前記アルカリ金属元素は、Li、Na、K、Rb、Cs及びFrの中から選択される少なくとも1種の元素を含むことができる。また、アルカリ土類金属元素は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba及びRaの中から選択される少なくとも1種の元素を含むことができる。
【0054】
本発明の感知層300の材料としてMg-SnO2が使用されたとき、エタノール、トルエン、及びホルムアルデヒドと感度を示すことが図3にグラフとして示されている。図3を参照すると、揮発性有機化合物の中でホルムアルデヒドAと最も競争的に反応するエタノールBとトルエンCよりもホルムアルデヒドAに対する感度が一層高いことが分かる。
【0055】
すなわち、本発明のガスセンサ10は、前記ホルムアルデヒドAに対する感度が20%~70%の間であり、エタノール(B)とトルエン(C)はほとんどの濃度で10%未満であるか或いはやっと10%を超えることが分かる。
【0056】
また、本発明のガスセンサ10は、ホルムアルデヒドAの濃度(Concentration)が100ppb未満であっても20%以上の感度を示すが、エタノールBとトルエンCの濃度が1000ppb以上であっても20%を超えない感度を示すことが分かる。
【0057】
前記感知層300がMg-SnO2で作られ且つ前記電極200が後述のITOで作られる場合、0.03ppm~0.30ppmのホルムアルデヒドA濃度でガスセンサ10が感知した感度は、20~60%であった。
【0058】
しかし、エタノールBの濃度1ppmに対して、本発明のガスセンサ10の感度は2.3%と非常に低かった。前記感度は、ホルムアルデヒドに換算すると、0.01ppm以下の感度に相当する。
【0059】
トルエンCに対しては、1.5ppmの濃度で本発明のガスセンサ10の感度は6.8%と測定されたが、前記感度は、ホルムアルデヒド濃度0.01ppm以下に相当する。
【0060】
その結果、本発明のガスセンサ10は、例えば、国際保健機関の環境基準値である濃度0.08ppm付近のホルムアルデヒドAを高感度で検出することができる。また、本発明のガスセンサ10では、エタノールBやトルエンCを含む揮発性有機化合物は、ホルムアルデヒドを基準に0.01ppm以下の感度で測定して、ホルムアルデヒドに選択性を持っていることを確認することができる。
【0061】
本発明のガスセンサ10は、前記感知層300をアルカリ金属元素の酸化物又はアルカリ土類金属元素の酸化物及び酸化スズの化合物で作って、ホルムアルデヒドAを特異的に感知することができる。
【0062】
一方、本発明のガスセンサ10は、感知層300に他の金属元素は適用しなくてもよい。従来のガスセンサは、前記感知材料として種々の他の金属元素を適用した。これらの従来のガスセンサがホルムアルデヒドに対する特異的な効果を導出せず、ほとんどの揮発性有機化合物全体の存否や濃度のみを検出するというのは周知の事実だからだ。
【0063】
また、実験的にアルカリ金属やアルカリ土類金属以外に他の金属を前記感知層300の材料として用いると、図3のようにホルムアルデヒドにのみ特異的に反応するか、或いは前記ホルムアルデヒドに対する感度がエタノール、トルエンよりもさらに高い実験結果を得ることができなかった。
【0064】
そして、本発明のガスセンサ10は、前記アルカリ金属元素からニッケル及びニッケル酸化物は除くことができる。図1に用いられた従来の感知センサは、感知層の材料として酸化ニッケルと酸化スズの化合物を使用した。具体的には、従来の感知センサでは、感知層の材料としてSnO2-NiOが、電極としては金(Au)が使用された。図1のようにホルムアルデヒドが0.03ppm~0.20ppmである場合、従来のセ感知センサの感度は26~61%であった。しかし、従来の感知センサでは、エタノールに対しては1ppmの濃度で感度は68%と、ホルムアルデヒドの感度よりもさらに大きい。
【0065】
その結果、従来の感知センサでは、感知材料にニッケル化合物が含まれているとき、エタノールの応答又は感度がさらに大きいため、大気中又は室内にホルムアルデヒドとエタンホールが一緒にある場合には、ホルムアルデヒドとエタノールを互いに区別することができないことが分かる。これは、ニッケルの場合、酸化物の分子構造や原子の直径などがホルムアルデヒドにのみ特異的に反応せず、他の官能基を有する有機化合物からなるガスにさらに大きく反応するためと理解することができる。
【0066】
すなわち、ニッケルは、ホルムアルデヒドよりもエタノールなどに対してより容易且つ強く且つ迅速に反応することが分かる。したがって、本発明のガスセンサ10は、前記感知層300にアルカリ金属元素の酸化物又はアルカリ土類金属元素の酸化物を用いる場合、ニッケル及びニッケル酸化物は除くことができる。
【0067】
図4は、本発明のガスセンサ10がホルムアルデヒドに特異的に反応するメカニズムを説明している。金属酸化物では、金属イオンと非金属イオンが結合しながら化学量論的(stoichiometric)組成から非化学量論的組成(non-stoichiometric)を成す。金属イオンと酸素イオンが化学量論的組成から非化学量論的組成を成す過程で伴われる格子欠陥がドナー(donor)又はアセプター(acceptorー)として作用する。
【0068】
本発明のガスセンサ10の感知層300をなす材料が、ニッケルを除いたアルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物と酸化スズの化合物から構成されると、前記ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド反応基が前記感知層300の格子構造に投入できる。
【0069】
図4の(a)を参照して説明する。室内又は大気中にホルムアルデヒドAを含む揮発性有機化合物が存在することができるが、例えば、室内又は大気中にホルムアルデヒドAとエタノールBが一緒に存在することができる。
【0070】
図4の(b)には、ホルムアルデヒドAが感知層300の格子構造に収容されたことが示されている。このようにホルムアルデヒドAが感知層300の格子構造に収容されると、前記感知層300全体の静電容量又は電気抵抗を変化させることができる。
【0071】
また、前記感知層300に収容されたホルムアルデヒドAは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属と酸化還元反応を強く発生させながら、多量の電子移動を発生させることができる。したがって、感知層300の内部で発生した多量の電子移動は増幅されながら前記電極部200へ伝達されることができ、前記電極200の静電容量又は電気抵抗を変化させることができる。
【0072】
これにより、本発明のガスセンサ10は、少量のホルムアルデヒドAでも高い感度で感知することができる。しかし、ホルムアルデヒドA以外に、エタノールBやトルエンCなどのように分子構造が大きい或いは他の官能基を有する揮発性有機化合物は、感知層300の格子構造に投入できない。
【0073】
言い換えれば、エタノールBは、前記感知層300に接触することはできても、前記感知層300の内部の格子構造に投入されることはできない。また、前記エタノールBは、前記感知層300と強い酸化還元反応を起こすこともできない。
【0074】
したがって、エタノールBなどの揮発性有機化合物は、前記感知層300で多量の電子移動を発生させることもできず、前記感知層300の静電容量又は電気抵抗を変化させることができない。
【0075】
その結果、本発明のガスセンサ10は、ホルムアルデヒドを除く揮発性有機化合物には反応しないか、或いは感度が非常に低いことがある。したがって、本発明のガスセンサ10は、ホルムアルデヒドAに対して高感度及び感知特異性を確保することができる。
【0076】
一方、実験結果、本発明のガスセンサ10は、前記電極200が酸化インジウムスズ(ITO)から構成されれば、上述した効果が現れるかさらに大きくなることが分かる。これは、前記電極200が一般な金(Au)や白金(Pt)の化合物から構成される場合には、感知層300で発生する特異的な静電容量の変化や電子移動の受信感度が低下するおそれがあることを意味する。
【0077】
具体的には、前記電極200は、Ti、Zn、In及びSnのうちの少なくとも1種の元素を含む金属酸化物で作られることができ、金(Au)や白金(Pt)は含まなくてもよい。
【0078】
前記感知層300は、前記電極200を完全に覆うように構成できる。これにより、前記第1電極210と第2電極220とが前記感知層300によって接続されることを保障することができる。
【0079】
そして、前記感知層300が大気中又は室内の空気中にさらされる面積を最大化してホルムアルデヒドの感知性能をさらに向上させることができる。
【0080】
図5には、本発明によるガスセンサ10’の他の実施例が示されている。本実施例のガスセンサ10’は、前記感知層300がホルムアルデヒドと特異的に反応する性質を持っているため、前記電極200全体を覆う必要がない場合がある。
【0081】
したがって、本実施例のガスセンサ10’では、前記電極200の表面領域のうち、一部領域Iがさらされるようにし、残りの領域IIは、感知層300に覆われるようにすることができる。電極200における、さらされた部分を露出領域Iといい、前記感知層300に覆われている領域を遮断領域IIという。
【0082】
本実施例は、前記感知層300が前記第1電極210と第2電極220との間を接続しながら大気中又は室内のホルムアルデヒドと接触することができれば、正常な機能を発揮することができるという点を考慮した。このようにすれば、感知層300を相対的に狭い領域に形成することができるため、感知層300を形成する材料の量を最小化することができる。
【0083】
そして、前記露出領域Iを設けると、電極200が正しく設置されているか、或いは前記電極200が正常に作動するか否かを容易に確認することができる。参考までに、本実施例のように電極200に露出領域Iを設けると、この露出領域Iを外部との接続のためのリード線が接続される部分として活用することもできるため、ガスセンサ10’の大きさを小型化することができる。
【0084】
図6には、本発明のガスセンサ10”の別の実施例が示されている。本実施例のガスセンサ10”は、感知層300がホルムアルデヒドAと特異的に反応する性質を持っているため、前記電極部200が感知層300によって接続できれば、感知層300がどの位置にあっても、正常な機能を発揮することができるという点を考慮した。
【0085】
本実施例では、基板100上に感知層300が形成され、前記感知層300上に電極200が形成されている。前記電極200は、第1電極210と第2電極220とが対をなして所定の間隔だけ離れて形成されている。ここで、前記第1電極210と第2電極220とは、それぞれ外部とは別途のリード線(図示せず)を介して接続されてもよい。
【0086】
そして、前記電極200は、それ自体がホルムアルデヒドA又は揮発性有機化合物に反応しないため、室内又は大気中にさらされても構わない。このような点を反映して、前記電極200が前記感知層300上に形成されるようにしたのである。
【0087】
本実施例では、前記基板100に感知層300が先に形成され、前記感知層300上に電極200が形成される。すなわち、前記基板100と電極200との間に感知層300が介在しており、前記第1電極210と第2電極220は前記感知層300の表面に形成されることができる。このように、感知層300上に第1電極210と第2電極220が形成されることにより、感知層300によって第1電極210と第2電極220とが接続されることを保障することができる。
【0088】
本実施例では、前記第1電極210と第2電極220が前記感知層300に装着される面を除いては、外面が全て外部にさらされる。したがって、外部との電気的接続のためのリード線接続がさらに容易であり得る。特に、製造過程において前記第1電極210と第2電極220の形成が相対的に容易になることができ、製造後のメンテナンスが相対的に容易になることができる。
【0089】
次に、図7には、図2に示された実施例にヒータ400が追加されたことが示されている。ここでは、説明の便宜上、図2に示された実施例と同様の図面符号を使用し、前記ヒータ400を追加する。
【0090】
前記ヒータ400は、熱を提供することにより、ガスセンサ10が特定の温度で動作することを可能とする。前記ヒータ400は、金又は白金で作られることができる。前記ヒータ400は、図7に示すように、基板100の表面のうち、電極200がある反対側の表面にあり得る。しかし、前記電極200がある表面に、前記電極200の周囲に電極200を囲むようにヒータ400があってもよい。
【0091】
以下では、本発明のガスセンサ10の製造方法の一実施例を説明する。説明の便宜上、図2に示されたガスセンサ10を参照して説明する。
【0092】
本発明のガスセンサ10では、電極200の材料として酸化インジウムスズ(ITO)を用いる。感知層300の材料として、Mgを含む酸化スズ(Mg-SnO2)を使用している。
【0093】
Mg-SnO2の製造について説明する。塩化スズ(SnCl2)と硫酸マグネシウムの水溶液を反応させる。ここで、SnとMgの含有量は、モル比でSn:Mg=20:1に設定することができる。この水溶液にアンモニア水を滴下させると、沈殿物を得ることができる。
【0094】
この沈殿物を蒸留水で洗浄した後に乾燥させる。乾燥は、大気中で行われることができる。乾燥した粉末を600~800℃で焼成して、Mg-SnO2を得ることができる。
【0095】
前記基板100の表面に、酸化インジウムスズ(ITO)を材料とする電極200を形成することができる。前記電極200の第1電極210と第2電極220を基板100に形成した後には、感知層300を形成する。前記感知層300は、上述したMg-SnO2を材料とする。Mg-SnO2を純水とグリセリンの混合溶液に分散させて、第1電極210と第2電極220とを接続するように塗布することにより、感知層300を形成することができる。
【0096】
前記感知層300を形成した後、500℃で加熱処理することができる。
【0097】
本発明のガスセンサ10を用いてガス応答を測定することを説明する。前記ガスセンサ10をガス導入容器内に設置し、濃度調整したガスにさらす。この状態で第1電極210と第2電極220との間の抵抗値の変化を検出して感度などを測定することができる。
【0098】
濃度調整したガスは、純水空気を希釈ガスとしてガス発生装置(Permeator)で発生させ、質量流量制御器(Mass Flow Controller)を用いて流量を調整してガス導入容器に投入することができる。湿度は、蒸留水をバブリング(Bubbling)することにより発生させることができる。図3の結果を得た相対湿度は、54%に設定されることができる。
【0099】
前記ガスセンサ10における抵抗値は、エレクトロメータセンサ素子に設置した配線を介して電圧を印加し、電流を測定することにより得た。
【0100】
本発明のガスセンサ10は、様々な家電製品に使用できる。例えば、空気調和機、空気清浄機、洗濯機、乾燥機、衣類管理機に設置して、ホルムアルデヒドが発生したか否かを感知し、それにより必要な動作を行うようにすることができる。
【0101】
本発明は、様々な形態に変形して実施できるが、上述した実施例にその権利範囲が限定されるものではない。よって、変形した実施例が本発明の特許請求の範囲の構成要素を含んでいる場合、本発明の権利範囲に属するものと理解すべきである。
【符号の説明】
【0102】
10、10’、10” ガスセンサ
100 基板
200 電極
210 第1電極
220 第2電極
300 感知層
400 ヒータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-07-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機化合物を感知するガスセンサであって、
非伝導性物質で構成された基板と;
前記基板に伝導性物質で構成された電極と;
前記電極の少なくとも一部に接触するか、又は、前記電極を覆うように形成され、ガスと反応する感知層と;を備えてなり、
前記電極は酸化インジウムスズ(ITO)で構成され、
前記感知層は、MgSnO で構成され、揮発性有機化合物を感知する、ガスセンサ。
【請求項2】
前記電極は、
前記基板に形成された第1電極と、
前記基板上に前記第1電極と離隔して形成された第2電極と、を備え、
前記感知層は、前記第1電極と前記第2電極とを接続するように配置される、請求項1に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
【請求項3】
前記感知層は、前記第1電極の少なくとも一部と前記第2電極の少なくとも一部が空気中に曝されるように構成される、請求項に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
【請求項4】
前記基板はヒータを更に備え、
前記ヒータは、前記電極がある基板の表面、又は、前記電極がある基板の表面の反対側の表面に位置する、請求項1に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
【請求項5】
揮発性有機化合物を感知するガスセンサであって、
非伝導性物質で構成された基板と;
前記基板に位置する感知層と;
伝導性物質で構成され、前記感知層内の電子移動及び静電容量を感知する電極と;を備えてなり、
前記電極は、伝導性物質で構成された第1電極と、
前記第1電極に電流を供給するか、又は、前記第1電極から電流の供給を受ける第2電極と、を備え、
前記感知層は、前記第1電極と前記第2電極とを接続し、前記第1電極の少なくとも一部と前記第2電極の少なくとも一部が大気中に曝されるように構成され、
前記電極は酸化インジウムスズ(ITO)で構成され、
前記感知層は、MgSnO で構成される、揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
【請求項6】
前記感知層は前記基板と前記電極との間に配置される、請求項に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
【請求項7】
前記第1電極と前記第2電極は前記感知層の外面に備えられる、請求項に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
【請求項8】
前記感知層は、前記第1電極の少なくとも一部と前記第2電極の少なくとも一部とを遮蔽する、請求項に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
【請求項9】
前記基板はヒータを更に備え、
前記ヒータは、前記電極がある基板の表面、又は、前記電極がある基板の表面の反対側の表面に位置する、請求項に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサ。
【請求項10】
感知層を形成し、基板上に形成された電極同士を接続したガスセンサを製造する方法であって、
酸化インジウムスズ(ITO)を用いて電極を形成するステップと;
MgSnO を用いて前記感知層を形成するステップと;を含んでなる、揮発性有機化合物を感知するガスセンサの製造方法。
【請求項11】
前記感知層は、MgSnOを分散させた、純水とグリセリンの混合溶液を塗布し、所定の温度で加熱して形成される、請求項10に記載の揮発性有機化合物を感知するガスセンサの製造方法。