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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169891
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 7/00 20060101AFI20241129BHJP
   B23Q 7/04 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B23Q7/00 J
B23Q7/00 F
B23Q7/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086731
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 豊
【テーマコード(参考)】
3C033
【Fターム(参考)】
3C033AA22
3C033AA23
3C033HH00
3C033JJ00
(57)【要約】
【課題】工作機械において、治具の交換を容易にする。
【解決手段】工作機械は、工具主軸装置と、ワークを保持するパレット保持するワークテーブルと、送り装置と、パレットを待機させておく第1待機位置を有し、ワークテーブルに保持されたパレットと、第1待機位置に位置する他のパレットと、を交換するパレットチェンジャと、治具本体部を待機させておく第2待機位置を有し、第1待機位置に位置するパレットが有する治具本体部と、第2待機位置に位置する他の治具本体部と、を交換する治具交換装置と、を備え、治具交換装置は、治具本体部を支持し、入力される外力に応じて、第1待機位置と第2待機位置との間において治具本体部を水平方向に移動させる水平移動装置と、第1待機位置において治具本体部を上下方向に移動させ、パレット本体部に対して治具本体部を着脱する上下移動装置と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械であって、
回転工具を保持し回転させる工具主軸装置と、
ワークを保持するパレットであってパレット本体部と前記パレット本体部に対して上下方向に着脱可能である治具本体部とからなるパレットを、保持するワークテーブルと、
前記工具主軸装置と前記ワークテーブルとを相対的に移動させる送り装置と、
前記ワークテーブルに保持させる前記パレットを待機させておく第1待機位置を有し、前記ワークテーブルに保持された前記パレットと、前記第1待機位置に位置する他の前記パレットと、を交換するパレットチェンジャと、
前記パレット本体部に取り付ける前記治具本体部を待機させておく第2待機位置を有し、前記第1待機位置に位置する前記パレットが有する前記治具本体部と、前記第2待機位置に位置する他の前記治具本体部と、を交換する治具交換装置と、
を備え、
前記治具交換装置は、
前記治具本体部を支持し、入力される外力に応じて、前記第1待機位置と前記第2待機位置との間において前記治具本体部を水平方向に移動させる水平移動装置と、
前記第1待機位置において前記治具本体部を上下方向に移動させ、前記パレット本体部に対して前記治具本体部を着脱する上下移動装置と、
を備える、
工作機械。
【請求項2】
請求項1に記載の工作機械であって、
前記治具本体部を待機させておく第3待機位置をさらに有し、
前記治具本体部を支持し、入力される外力に応じて、前記第2待機位置と前記第3待機位置との間において前記治具本体部を水平方向に移動させるローラコンベアをさらに備える、
工作機械。
【請求項3】
請求項1または2に記載の工作機械であって、
前記外力を発生させるロボットをさらに備え、
前記水平移動装置は、被把持部を備え、
前記ロボットは、前記被把持部に水平方向に係合する把持部を有する
工作機械。
【請求項4】
請求項2に記載の工作機械であって、
前記治具本体部は、幅方向の両側に突出する一対の被支持部を有し、
前記水平移動装置は、水平方向に伸縮する一対の爪部を有し、前記一対の爪部により前記一対の被支持部を下側から支持することにより、前記治具本体部を支持する、
工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの治具を搭載可能に構成されたパレットチェンジャを備える工作機械が知られている(特許文献1)。このような工作機械では、互いに異なる2種類の治具をパレットチェンジャに搭載し、ワークの形状に応じて2種類の治具を使い分けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-161455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の工作機械では、パレットチェンジャには2つの治具しか搭載できないため、ワークの形状に応じて3種類以上の治具を使い分ける必要がある場合には、パレットチェンジャに搭載された治具を交換する必要がある。また、特許文献1に記載の治具は、油圧供給機構等を有する水平ベース体と、油圧を供給されてワークを保持する垂直ベース体とが一体的に構成されているため、治具の重量および体積が大きくなり、治具の交換が容易でないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、工作機械が提供される。この工作機械は、回転工具を保持し回転させる工具主軸装置と、ワークを保持するパレットであってパレット本体部と前記パレット本体部に対して上下方向に着脱可能である治具本体部とからなるパレットを、保持するワークテーブルと、前記工具主軸装置と前記ワークテーブルとを相対的に移動させる送り装置と、前記ワークテーブルに保持させる前記パレットを待機させておく第1待機位置を有し、前記ワークテーブルに保持された前記パレットと、前記第1待機位置に位置する他の前記パレットと、を交換するパレットチェンジャと、前記パレット本体部に取り付ける前記治具本体部を待機させておく第2待機位置を有し、前記第1待機位置に位置する前記パレットが有する前記治具本体部と、前記第2待機位置に位置する他の前記治具本体部と、を交換する治具交換装置と、を備え、前記治具交換装置は、前記治具本体部を支持し、入力される外力に応じて、前記第1待機位置と前記第2待機位置との間において前記治具本体部を水平方向に移動させる水平移動装置と、前記第1待機位置において前記治具本体部を上下方向に移動させ、前記パレット本体部に対して前記治具本体部を着脱する上下移動装置と、を備える。
この形態の工作機械によれば、パレットを構成するパレット本体部と治具本体部とのうち、治具本体部のみを交換するため、交換対象物の重量および体積が増大することを抑制でき、治具の交換を容易にできる。また、入力される外力に応じて水平移動装置が操作されることにより治具本体部を水平方向に移動させることができるので、水平移動装置自体が動力を備える必要がない。そのため、治具交換装置の構成が複雑になることを抑制でき、治具交換装置の製造コストおよび維持管理コストの増大を抑制できる。
(2)上記形態の工作機械において、前記治具本体部を待機させておく第3待機位置をさらに有し、前記治具本体部を支持し、入力される外力に応じて、前記第2待機位置と前記第3待機位置との間において前記治具本体部を水平方向に移動させるローラコンベアをさらに備えてもよい。
この形態の工作機械によれば、治具本体部を待機させておく第3待機位置をさらに有し、また、治具本体部を支持し、入力される外力に応じて第2待機位置と第3待機位置との間において治具本体部を水平方向に移動させるローラコンベアをさらに備えるので、治具本体部の交換に際して、第3待機位置に予め待機させておいた他の治具本体部をローラコンベアにより第2待機位置まで搬送でき、ローラコンベアが動力を備える必要が無いため製造コストを下げることができ、治具本体部の交換に要する時間を短縮できる。
(3)上記形態の工作機械において、前記外力を発生させるロボットをさらに備え、前記水平移動装置は、被把持部を備え、前記ロボットは、前記被把持部に水平方向に係合する把持部を有してもよい。
この形態の工作機械によれば、ロボットが備える把持部により被把持部を把持し、水平移動装置に外力を入力することにより治具本体部を水平方向に移動させる。そのため、作業者によらず、ロボットにより水平移動装置を操作して治具本体部を水平方向に移動させることができる。ロボットは、把持部を交換すれば、パレットのワークを交換する作業を行うことができ、ロボットに様々な作業を行わせることができる。
(4)上記形態の工作機械において、前記治具本体部は、幅方向の両側に突出する一対の被支持部を有し、前記水平移動装置は、水平方向に伸縮する一対の爪部を有し、前記一対の爪部により前記一対の被支持部を下側から支持することにより、前記治具本体部を支持してもよい。
この形態の工作機械によれば、治具本体部は、幅方向の両側に突出する一対の被支持部を有し、水平移動装置は、水平方向に伸縮する一対の爪部を有するので、治具本体部を避けて一対の爪部により一対の被支持部を下側から支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の工作機械の概略構成を示す上面図である。
図2】本実施形態の工作機械の概略構成を示す側面図である。
図3】本実施形態のパレットの概略構成を示す説明図である。
図4】本実施形態のフォーク装置の概略構成を示す説明図である。
図5】本実施形態の爪部の概略構成を示す説明図である。
図6】伸長状態のフォーク装置を示す説明図である。
図7】本実施形態の治具交換工程の手順を示すフローチャートである。
図8】子治具の脱着の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.実施形態:
図1は、本実施形態の工作機械100の概略構成を示す上面図である。図2は、本実施形態の工作機械100の概略構成を示す側面図である。図1および図2に示すように、工作機械100は、機械本体101と、治具交換装置60と、ローラコンベア61と、搬送ロボット62とを備える。機械本体101は、ベッド10と、コラム20と、工具主軸ハウジング30と、回転工具TLと、ワークテーブル40と、パレットチェンジャ50とを備える。本実施形態では、機械本体101は、横型マシニングセンタとして構成されている。なお、機械本体101は、パレットを用いるものであれば、横型マシニングセンタに限定されず、立型マシニングセンタ、フライス盤、複合加工機等でもよい。
【0009】
図1には、互いに直交する3つの座標軸であるX,Y,Z軸を表す矢印が示されている。以下の説明において、X軸に平行である方向を「X方向」、Y軸に平行である方向を「Y方向」、Z軸に平行である方向を「Z方向」と表記する。X、Y、Z軸を表す矢印が指し示す方向は、図1以降の各図においても同様である。
【0010】
ベッド10は、床面に固定されている。ベッド10は、ベッド10の上面に、X方向に沿って延びる一対のX軸ガイドレール11と、Z方向に沿って延びる一対のZ軸ガイドレール12とを備える。一対のX軸ガイドレール11は、互いにZ方向に所定の距離だけ離れて平行に配置されている。一対のZ軸ガイドレール12は、互いにX方向に所定の距離だけ離れて平行に配置されている。
【0011】
コラム20は、X軸ガイドレール11を介してベッド10に設置され、X軸ガイドレール11が有する図示しないリニアモータやボールネジ機構により、X軸ガイドレール11に沿ってX方向に移動可能に構成されている。コラム20は、Y方向に沿って延びる一対のY軸ガイドレール21を備える。一対のY軸ガイドレール21は、互いにX方向に所定の距離だけ離れて平行に配置されている。
【0012】
工具主軸ハウジング30は、Y軸ガイドレール21を介してコラム20に設置され、Y軸ガイドレール21が有する図示しないリニアモータやボールネジ機構により、Y軸ガイドレール21に沿ってY方向に移動可能に構成されている。
【0013】
工具主軸ハウジング30は、工具主軸装置31の少なくとも一部を収容している。工具主軸装置31は、工具主軸ハウジング30に対して回転可能に保持されている。工具主軸装置31は、回転工具TLを着脱可能に保持する。
【0014】
回転工具TLは、例えば、フライスカッタ、エンドミル、ドリル等である。回転工具TLは、工具主軸装置31に取り付けられ、工具主軸装置31と一体的に回転する。回転工具TLは、回転しながらワークWと接触することにより、ワークWを加工する。
【0015】
ワークテーブル40は、移動テーブル41と回転テーブル42からなる。移動テーブル41は、Z軸ガイドレール12を介してベッド10に設置され、Z軸ガイドレール12が有する図示しないリニアモータやボールネジ機構により、Z軸ガイドレール12に沿ってZ方向に移動可能に構成されている。Z軸ガイドレール12と、上述したX軸ガイドレール11およびY軸ガイドレール21とは、図示しない制御装置により制御されて、主軸装置とワークテーブル40とを相対的に移動させる。X軸ガイドレール11と、Z軸ガイドレール12と、Y軸ガイドレール21とは、本開示における「送り装置」に相当する。
【0016】
回転テーブル42は、移動テーブル41と一体的に移動するとともに、移動テーブル41に対して回転可能に保持されている。また、回転テーブル42は、回転テーブル42の上面にパレットPを着脱可能に構成されている。
【0017】
図3は、本実施形態のパレットPの概略構成を示す説明図である。図3に示すように、パレットPは、パレット基部Pbと、親治具Jmと、子治具Jsとからなる。パレット基部Pbは、回転テーブル42の上面に対して着脱可能に構成されている。
【0018】
親治具Jmは、パレット基部Pbの上面に取り付けられる。パレット基部Pbと親治具Jmとは、本開示における「パレット本体部」に相当する。親治具Jmは、子治具保持機構と、油圧供給プラグPLとを有する。本実施形態では、親治具Jmは、子治具保持機構として凸型の連結ピンPCを有する。また、親治具Jmは、油圧供給プラグPLを介して子治具Jsに圧油を供給する。
【0019】
子治具Jsは、親治具Jmの上面に対して着脱可能に構成されている。子治具Jsは、本開示における「治具本体部」に相当する。本実施形態では、子治具Jsは、連結ピンPCと嵌合可能に構成された凹型の被連結部BLを下面に有する。子治具Jsが親治具Jmの上面に載置されると被連結部BLに連結ピンPCが挿入され、子治具Jsの自重により連結ピンPCと被連結部BLとが嵌合する。連結ピンPCと被連結部BLとが嵌合した状態で連結ピンPCに油圧が供給されることによりクランプ力が発生し、子治具Jsが親治具Jmに保持される。他方、連結ピンPCへの圧油の供給が停止されることによりクランプ力が解除され、子治具Jsの固定が解除される。連結ピンPCへの圧油供給の実行および停止は、工作機械100の図示しない制御装置により制御される。なお、連結ピンPCは、油圧に限らず、空気圧によりクランプ力を発生させるものであってもよい。
【0020】
また、本実施形態では、子治具Jsは、凸型の油圧供給プラグPLから圧油の供給を受ける凹型の油圧供給ソケットSCを有する。子治具Jsが親治具Jmの上面に載置されると油圧供給ソケットSCに油圧供給プラグPLが挿入され、子治具Jsの自重により油圧供給ソケットSCと油圧供給プラグPLとが嵌合し、圧油を供給可能となる。子治具Jsへの圧油供給の実行および停止は、工作機械100の図示しない制御装置により制御される。子治具Jsは、油圧供給プラグPLから圧油を供給されて、油圧により動作するワーク保持機構によりワークWを保持する。子治具Jsは、保持対象のワークWの形状に応じて異なるワーク保持機構を有する。パレットPは、親治具Jmに取り付ける子治具Jsを交換することにより、異なる形状のワークWを適切に保持することができる。図3に示すように、本実施形態のワークWはツバ部FLを有し、子治具Jsは、ワーク保持機構として、ツバ部FLを子治具Jsの上面に押し付けるクランプ機構CLを有する。クランプ機構CLは、旋回してツバ部FLに当接するクランプレバーCL1と、クランプレバーCL1を旋回させるクランプシリンダCL2を有する。なお、ワーク保持機構は、油圧に限らず、空気圧により動作する機構や磁力によりワークWを保持するものであってもよい。
【0021】
また、子治具Jsは、幅方向、すなわちX方向の両側に突出する一対の被支持部SPを有する。子治具Jsは、後述するフォーク装置63により被支持部SPにおいて支持される。
【0022】
図1および図2に示すように、本実施形態では、パレットチェンジャ50は、ベッド10の前面に設置されている。パレットチェンジャ50は、一対のパレット保持部51A、51Bと、一対のパレット保持部51A、51Bを連結した旋回軸部52とを有する。パレットチェンジャ50の下方には下部カバー10aが設置され、下部カバー10aはベッド10の前面に固定されている。パレット保持部51A、51Bは、それぞれパレットPを保持する。旋回軸部52は、パレット保持部51A、51Bを上昇させ、Y軸に平行な旋回軸回りにパレット保持部51A、51Bを180度旋回させ、パレット保持部51A、51Bを下降させ、パレット保持部51A、51Bにそれぞれ保持された2つのパレットPの位置を互いに入れ替える。以下の説明において、ワークテーブル40のパレットPを交換するときのパレットPの位置を交換位置P1と呼び、交換位置P1に対して旋回軸部52の旋回軸回りに180度ずれた位置であって、ワークテーブル40に保持させるパレットPを待機させておく位置を第1待機位置P2と呼ぶ。このように、パレットチェンジャ50は、パレット保持部51A、51Bにおいてそれぞれ保持した2つのパレットPを旋回軸部52により上昇、旋回、下降させて入れ替えることにより、ワークテーブル40に設置されたパレットPと、第1待機位置P2に載置されたパレットPとを交換する。
【0023】
治具交換装置60は、フォーク装置63と、上下移動装置64とを有する。治具交換装置60は、第1待機位置P2に載置されたパレットPに取り付けられた子治具Jsを取り外し、予め用意された他の子治具Jsと交換する。
【0024】
より具体的には、治具交換装置60は、第1待機位置P2に載置されたパレットPに取り付けられた子治具Jsを取り外してローラコンベア61上の第2待機位置P3に載置した後、搬送ロボット62または作業者によるX方向の外力を子治具Jsに加えられることにより、ローラコンベア61に支持された子治具Jsを第2待機位置P3から、退避位置P5に搬送する。退避位置P5に搬送された子治具Jsは、把持部622を交換した搬送ロボット62または作業者によりローラコンベア61に隣接した図示しない治具ストッカへ搬送される。その後、把持部622を交換した搬送ロボット62または作業者によるX方向の外力を子治具Jsに加えられることにより、ローラコンベア61に支持された子治具Jsを準備位置P4から第2待機位置P3まで搬送する。準備位置P4は、本開示における「第3待機位置」に相当する。第2待機位置P3に載置された子治具Jsを治具交換装置60で持ち上げ、搬送ロボット62または作業者によるZ方向の外力を子治具Jsに加えられることにより、爪部631に支持された子治具Jsを第2待機位置P3から第1待機位置P2に搬送し、子治具Jsを治具交換装置60で降ろすことにより、パレットPに載置される。
【0025】
ローラコンベア61は、複数のローラ部材61rと、フレーム部材61fとからなる。複数のローラ部材61rは、互いに所定の間隔を空けてX方向に並べて配置されている。フレーム部材61fは、複数のローラ部材61rを自由回転可能にそれぞれ保持している。ローラ部材61rは、ローラコンベア61上に載置された子治具Jsが後述する搬送ロボット62により係合されて引かれる、または、押されることにより子治具Jsの下面とローラ部材61rとの間に発生する摩擦力を受けて自由回転し、子治具Jsはローラコンベア61上を搬送されていく。また、本実施形態では、ローラコンベア61は、後述するように上下方向に移動するフォーク装置63と干渉しないように、3つに分割されて、フォーク装置63が通過可能な空間を空けるように配置されている。なお、ローラコンベア61は、分割されていなくてもよく、一体的に構成されて、下降したフォーク装置63が収納される凹部を備えてもよい。
【0026】
図4は、本実施形態のフォーク装置63の概略構成を示す説明図である。図4に示すように、フォーク装置63は、一対の爪部631と被把持部632とを有する。爪部631は、互いに入れ子状に挿入される基部631Aと、ガイド部631Bと、載置部631Cとからなる。なお、基部631Aは、基部631Aに対してガイド部631Bが抜け落ちないように図略のストッパを有し、ガイド部631Bは、ガイド部631Bに対して載置部631Cが抜け落ちないように、図略のストッパを有している。基部631Aは、根本部分、搬送ロボット62側において他方の爪部631の基部631Aと第1連結部631A1を介して連結されている。ガイド部631Bは、根本部分、搬送ロボット62側において他方の爪部631のガイド部631Bと第2連結部631B1を介して連結されている。載置部631Cは、根本部分、搬送ロボット62側において他方の爪部631の載置部631Cと第3連結部631C1を介して連結されている。丸棒状の被把持部632は、2つの載置部631Cの第3連結部631C1において形成されている。
【0027】
図5は、本実施形態の爪部631の概略構成を示す説明図である。なお、2つの爪部631の構成は互いに同じであるので、図5においては、一方の爪部631のみが図示され、他方の爪部631の図示は省略されている。図5に示すように、ガイド部631Bは、外側溝部Gr1と内側溝部Gr2とを有する。ガイド部631Bは、基部631Aに対して、基部631Aが有する複数のガイドローラT1と外側溝部Gr1とが互いに摺動するように組み合わされる。また、載置部631Cは、ガイド部631Bに対して、ガイド部631Bの内側溝部Gr2と、載置部631Cが有する複数のガイドローラT2と、が互いに摺動するように組み合わされる。このように、基部631Aと、ガイド部631Bと、載置部631Cとは、互いに摺動可能となるように組み合わされている。これにより、基部631Aが固定された状態で、載置部631Cが外力を入力されてZ方向に移動することにより、基部631Aに対してガイド部631Bおよび載置部631CがZ方向にスライドし、爪部631は伸縮する。図6は、伸長状態のフォーク装置63を示す説明図である。本実施形態では、載置部631Cは、搬送ロボット62により被把持部632を係合されてZ方向に移動する。フォーク装置63は、本開示における「水平移動装置」に相当する。
【0028】
図1および図2に示す上下移動装置64は、フォーク装置63の下面においてフォーク装置63を保持し、フォーク装置63を上下方向に移動させる。上下移動装置64による上下移動の移動量は、工作機械100の図示しない制御装置により制御される。本実施形態では、上下移動装置64は、油圧シリンダとして構成され、シリンダを伸縮することによりフォーク装置63を上下方向に移動させる。上下移動装置64が下降した状態においては、フォーク装置63の爪部631の上面はローラコンベア61の上面よりも低い位置に位置し、ローラコンベア61上を搬送される子治具Jsと干渉しない。他方、子治具Jsが第2待機位置P3に位置している状態で上下移動装置64が上昇することにより、フォーク装置63の爪部631の上面はローラコンベア61の上面よりも高い位置に位置することとなり、爪部631の上面において被支持部SPが支持された状態となる。
【0029】
搬送ロボット62は、鉛直軸線回りに旋回する肩部623と、肩部623に対して水平軸線回りに旋回する第1アーム部624と、第1アーム部624に対して水平軸線回りに旋回する第2アーム部621と、第2アーム部621の先端に取り付けられ、水平軸線回りに旋回する第1手首部625と、第1手首部625に対して第1手首部625の旋回軸線と直交する軸線回りに回転する第2手首部626と、第2手首部626に取り付けられた把持部622とを有する。把持部622は、開閉する一対の爪627、628を有する。
【0030】
一対の爪627、628のそれぞれは、開閉方向と直交する方向から見ると、V字形状を有している。搬送ロボット62は、Z方向に把持部622を移動させても、把持部622の向きを水平に保ち、把持部622の高さを一定に保つ機能を一つの機能として有している。搬送ロボット62は、把持部622の一対の爪627、628により子治具Jsの被把持部Js1を係合する。この際、一対の爪627、628と被把持部Js1とは、被把持部Js1回りの把持部622の旋回を許容できるよう水平方向に互いに係合する。また、搬送ロボット62は、把持部622の一対の爪627、628により上述のフォーク装置63の被把持部632を係合する。この際、一対の爪627、628と被把持部632とは、被把持部632回りの把持部622の旋回を許容できるよう水平方向に互いに係合する。
【0031】
搬送ロボット62は、把持部622の一対の爪627、628により子治具Jsの被把持部Js1を係合し、X方向に沿ってローラコンベア61上を移動させることにより、子治具Jsを準備位置P4から第2待機位置P3、または、第2待機位置P3から退避位置P5へ搬送する。また、搬送ロボット62は、把持部622の一対の爪627、628によりフォーク装置63の被把持部632を係合しZ方向に沿って移動させることによりフォーク装置63の爪部631を伸縮させ、爪部631に載置された子治具Jsを第1待機位置P2と第2待機位置P3との間において水平方向に移動させる。また、本実施形態では、搬送ロボット62は、把持部622を交換して第1待機位置P2に載置されたパレットPにワークWを設置する際にも用いられる。
【0032】
図7は、本実施形態の治具交換工程の手順を示すフローチャートである。治具交換工程は、搬送ロボット62により加工済みのワークWが工作機械100から搬出された後に行われる工程である。治具交換工程が行われることにより、加工済みのワークWに用いた子治具Jsとは異なる子治具Jsを必要とするワークWの加工が可能となる。
【0033】
ステップS2において、親治具Jmは、第1待機位置P2にある子治具Jsの子治具保持機構による固定を解除する。これにより、後のステップにおいて子治具Jsを上方へ移動させることにより、子治具Jsを親治具Jmから取り外せる状態となる。
【0034】
ステップS4において、上下移動装置64は、フォーク装置63を上昇させる。ステップS6において、搬送ロボット62は、把持部622の一対の爪627、628により被把持部632を係合して+Z方向に押し出して移動させることにより爪部631を伸長させ、被支持部SPの下側に爪部631を進入させる。なお、ステップS4における上下移動装置64による上昇量、および、ステップS6における搬送ロボット62によるZ方向への移動量は、ステップS6において被支持部SPの下側に爪部631が挿入されるように予め定められている。
【0035】
ステップS8において、上下移動装置64は、フォーク装置63を上昇させることにより子治具Jsを上方に移動させ、第1待機位置P2にある子治具Jsを親治具Jmから取り外す。図8は、子治具Jsの脱着の様子を示す説明図である。
【0036】
図7に示すステップS10において、搬送ロボット62は、把持部622の一対の爪627、628により被把持部632を係合して-Z方向に引張り移動させることにより爪部631を収縮させ、上下移動装置64は、フォーク装置63を下降させて子治具Jsを第2待機位置P3へ載置する。
【0037】
ステップS12において、搬送ロボット62は、第2待機位置P3に載置された子治具Jsを、把持部622の一対の爪627、628により子治具Jsの被把持部Js1を係合して+X方向に引張り移動させ退避位置P5へ搬送する。退避位置P5に搬送された子治具Jsは、把持部622を交換した搬送ロボット62または作業者により、図示しない治具ストッカ等へ収納される。
【0038】
ステップS14において、把持部622を交換した搬送ロボット62は、準備位置P4に載置された他の子治具Jsを、把持部622の一対の爪627、628により子治具Jsの被把持部Js1を把持して+X方向に引張り移動させ第2待機位置P3へ搬送する。他の子治具Jsは、搬送ロボット62または作業者により、図示しない治具ストッカ等から取り出され、予め準備位置P4に載置されている。
【0039】
ステップS16において、上下移動装置64は、フォーク装置63を上昇させて爪部631において被支持部SPを支持させ、搬送ロボット62は、把持部622の一対の爪627、628により被把持部632を係合して+Z方向に押し出して移動させることにより爪部631を伸長させて、第2待機位置P3にある子治具Jsを第1待機位置P2上部へ進入させる。
【0040】
ステップS18において、上下移動装置64は、フォーク装置63を下降させて子治具Jsを下方へ移動させ、子治具Jsを親治具Jmに設置する。設置の際も、図8に示すような様子で子治具Jsは爪部631に支持される。上述のように、親治具Jmの上面に子治具Jsが載置されると、被連結部BLに対して連結ピンPCが、油圧供給ソケットSCに対して油圧供給プラグPLが挿入され、子治具Jsの自重により互いに嵌合する。
【0041】
ステップS20において、搬送ロボット62は、把持部622の一対の爪627、628により被把持部632を係合して-Z方向に引張り移動させることにより爪部631を収縮させ、上下移動装置64は、フォーク装置63を下降させる。
【0042】
ステップS22において、親治具Jmは、第1待機位置P2にある子治具Jsを子治具保持機構により固定する。以上で、治具交換工程は終了する。
【0043】
治具交換工程の終了後、把持部622を交換した搬送ロボット62によりワークWが子治具Jsの上面に載置され、ワーク保持機構によりワークWが保持される。さらに、ワークWの載せ替えが完了し第1待機位置P2に位置するパレットPが、パレットチェンジャ50により交換位置P1に位置するパレットPと交換されてワークテーブル40に設置され、ワークWの加工を開始可能な状態となる。
【0044】
以上説明した第1実施形態の工作機械100によれば、パレットPを構成するパレット本体部と治具本体部とのうち、治具本体部である子治具Jsのみを交換するため、交換対象物の重量および体積が増大することを抑制でき、子治具Jsの交換を容易にできる。また、フォーク装置63は、入力される外力に応じて操作されることにより子治具Jsを水平方向に移動させることができるので、フォーク装置63自体が動力を備える必要がない。そのため、治具交換装置60の構成が複雑になることを抑制でき、治具交換装置60の製造コストおよび維持管理コストの増大を抑制できる。
【0045】
また、子治具Jsを待機させておく準備位置P4をさらに有し、また、子治具Jsを支持し、入力される外力に応じて第2待機位置P3と準備位置P4との間において子治具Jsを水平方向に移動させるローラコンベア61をさらに備えるので、子治具Jsの交換に際して、準備位置P4に予め待機させておいた他の子治具Jsをローラコンベア61により第2待機位置P3まで搬送でき、ローラコンベア61が動力を備える必要が無いため製造コストを下げることができ、子治具Jsの交換に要する時間を短縮できる。
【0046】
また、ロボットが備える把持部622により被把持部632を係合し、フォーク装置63に外力を入力することにより子治具Jsを水平方向に移動させる。そのため、作業者によらず、ロボットによりフォーク装置63を操作して子治具Jsを水平方向に移動させることができる。ロボットは、把持部622を交換すれば、パレットのワークを交換する作業を行うことができ、ロボットに様々な作業を行わせることができる。
【0047】
また、子治具Jsは、X方向の両側に突出する一対の被支持部SPを有し、フォーク装置63は、水平方向に伸縮する一対の爪部631を有するので、治具本体部を避けて一対の爪部631により一対の被支持部SPを下側から支持することができる。
【0048】
B.他の実施形態:
(B1)上記実施形態において、爪部631は、把持部622により被把持部632を係合されて載置部631CがZ方向に移動することにより伸縮するが、本開示はこれに限定されない。爪部631は、作業者により被把持部632を把持されて載置部631CがZ方向に移動することにより伸縮してもよい。すなわち、工作機械100は、搬送ロボット62を備えていなくてもよい。
【0049】
(B2)上記実施形態において、子治具Jsは親治具Jmを介してパレット基部Pbに設置されるが、本開示はこれに限定されない。子治具Jsとパレット基部Pbとは、パレット基部Pbに対して子治具Jsを直接設置可能に構成されていてもよい。
【0050】
(B3)上記実施形態において、爪部631は、ノックピンを上面に有し、被支持部SPは、ノックピンを挿入可能な穴を下面に有していてもよい。かかる形態のフォーク装置63を備える工作機械100によれば、爪部631の上面において被支持部SPを支持する際に、被支持部SPが有する穴にノックピンが挿入され、搬送中における爪部631に対するワークWの位置ずれを抑制できる。
【0051】
(B4)上記実施形態において、工作機械100は、ローラコンベア61を備え、ローラコンベア61により子治具Jsを支持し、子治具Jsを準備位置P4から第2待機位置P3、または、第2待機位置P3から退避位置P5へ搬送するが、本開示はこれに限定されない。工作機械100は、ローラコンベア61を備えなくてもよく、また、準備位置P4および退避位置P5を有さなくてもよい。かかる形態において、治具交換装置60による子治具Jsの交換の際、親治具Jmから取り外されて第2待機位置に載置された子治具Jsは、第2待機位置P3から直接搬送ロボット62または作業者により図示しない治具ストッカへ搬送されてよい。また、親治具Jmに新たに取り付けられる子治具Jsは、図示しない治具ストッカから搬送ロボット62または作業者により第2待機位置P3へ直接搬送されてよい。また、工作機械100は、準備位置P4と退避位置P5とのうちのいずれか一方のみを有してもよい。
【0052】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
10…ベッド、10a…下部カバー、11…X軸ガイドレール、12…Z軸ガイドレール、20…コラム、21…Y軸ガイドレール、30…工具主軸ハウジング、31…工具主軸装置、40…ワークテーブル、41…移動テーブル、42…回転テーブル、50…パレットチェンジャ、51A、51B…パレット保持部、52…旋回軸部、60…治具交換装置、61…ローラコンベア、61f…フレーム部材、61r…ローラ部材、62…搬送ロボット、63…フォーク装置、64…上下移動装置、100…工作機械、101…機械本体、621…第2アーム部、622…把持部、623…肩部、624…第1アーム部、625…第1手首部、626…第2手首部、627、628…爪、631…爪部、631A…基部、631A1…第1連結部、631B…ガイド部、631B1…第2連結部、631C…載置部、631C1…第3連結部、632…被把持部、BL…被連結部、CL…クランプ機構、CL1…クランプレバー、CL2…クランプシリンダ、FL…ツバ部、Gr1…外側溝部、Gr2…内側溝部、Jm…親治具、Js…子治具、Js1…被把持部、P…パレット、P1…交換位置、P2…第1待機位置、P3…第2待機位置、P4…準備位置、P5…退避位置、PC…連結ピン、PL…油圧供給プラグ、Pb…パレット基部、SC…油圧供給ソケット、SP…被支持部、T1…ガイドローラ、T2…ガイドローラ、TL…回転工具、W…ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8