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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169892
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】田植機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
A01C11/02 351B
A01C11/02 311V
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086734
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 寿美
(72)【発明者】
【氏名】野村 仁志
(72)【発明者】
【氏名】山下 英希
(72)【発明者】
【氏名】豊田 浩史
(72)【発明者】
【氏名】近藤 裕志
(72)【発明者】
【氏名】浦 由香
(72)【発明者】
【氏名】中西 康仁
(72)【発明者】
【氏名】堀田 直岐
(72)【発明者】
【氏名】景浦 宏一
【テーマコード(参考)】
2B064
【Fターム(参考)】
2B064AA05
2B064AA07
2B064AB01
2B064AC01
2B064EA06
2B064EA12
2B064EA20
2B064EA30
(57)【要約】
【課題】本発明は、走行車体の後部で昇降する植付フレームに設ける苗移植装置を電動モータで駆動することで駆動力伝動機構を簡略化することを目的とする。
【解決手段】走行車体2の後部に昇降リンク装置3を介して苗載せ台51と苗植付装置52を設けた植付フレーム43を装着した田植機において、植付フレーム43の左右中央に電動モータ48を取り付けたギヤケース49を設け、該ギヤケース49から苗載せ台51を左右往復移動する横移動機構と苗載せ台51の苗送りベルト51bを送り駆動する縦送り機構と苗植付装置52の移植動作機構に駆動力を伝動することを特徴する田植機とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)の後部に昇降リンク装置(3)を介して苗載せ台(51)と苗植付装置(52)を設けた植付フレーム(43)を装着した田植機において、植付フレーム(43)の左右中央に電動モータ(48)を取り付けたギヤケース(49)を設け、該ギヤケース(49)から苗載せ台(51)を左右往復移動する横移動機構と苗載せ台(51)の苗送りベルト(51b)を送り駆動する縦送り機構と苗植付装置(52)の移植動作機構に駆動力を伝動することを特徴する田植機。
【請求項2】
電動モータ(48)に電力を供給するバッテリを植付フレーム(43)に収納配置したことを特徴とする請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
ギヤケース(49)内に電動モータ(48)を組み込んだことを特徴とする請求項1に記載の田植機。
【請求項4】
走行車体(2)のリヤステップ(36)下側で左右後輪(11,11)の前に電動モータ(48)に電力を供給するバッテリ(67)を設置したことを特徴とする請求項1に記載の田植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移植苗を圃場に移植する田植機で移植装置の駆動を電動モータで行う田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
田植機は、特開2021-69329号公報や特許第6128061号公報に記載されているように、作業者が搭乗して操縦操作を行う走行車体の後部に昇降リンク装置を介して苗移植フレームを設け、この苗移植フレームに設ける苗載せ台に載せたマット状移植苗を苗移植装置が一株毎掻き取って圃場に移植するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-69329号公報
【特許文献2】特許第6128061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の田植機は、走行車体に搭載したエンジンで前後の車輪を駆動すると共に走行車体の後部に昇降する植付フレームに設けた移植装置を駆動しているために動力伝動機構が複雑になっている。
【0005】
そこで、本発明は、走行車体の後部で昇降する植付フレームに設ける苗移植装置を電動モータで駆動することで駆動力伝動機構を簡略化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0007】
請求項1の発明は、走行車体2の後部に昇降リンク装置3を介して苗載せ台51と苗植付装置52を設けた植付フレーム43を装着した田植機において、植付フレーム43の左右中央に電動モータ48を取り付けたギヤケース49を設け、該ギヤケース49から苗載せ台51を左右往復移動する横移動機構と苗載せ台51の苗送りベルト51bを送り駆動する縦送り機構と苗植付装置52の移植動作機構に駆動力を伝動することを特徴する田植機とする。
【0008】
請求項2の発明は、電動モータ48に電力を供給するバッテリを植付フレーム43に収納配置したことを特徴とする請求項1に記載の田植機とする。
【0009】
請求項3の発明は、ギヤケース49内に電動モータ48を組み込んだことを特徴とする請求項1に記載の田植機とする。
【0010】
請求項4の発明は、走行車体2のリヤステップ36下側で左右後輪11,11の前に電動モータ48に電力を供給するバッテリ67を設置したことを特徴とする請求項1に記載の田植機とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明で、田植機は、走行車体2の後部に昇降リンク装置3で装着した植付フレーム43が圃場面に沿って昇降しながら安定した姿勢で移動して苗載せ台51上の移植苗を苗植付装置52の移植爪が掻き取って圃場に植え付けていくが、重量の重いギヤケース49と電動モータ48を植付フレーム43の左右中央に設けているので、苗植付装置52が不安定になることなく、苗を移植出来て、植付フレーム43に設ける電動モータ48で苗植付装置52側の各部を駆動しているので、従来の走行車体2に搭載するエンジンから苗植付装置52に駆動力を伝動する構成よりも動力伝動機構が簡略になり、確実な苗移植が行える。
【0012】
請求項2の発明で、電動モータ48に電力を供給するバッテリを植付フレーム43に内装することで、圃場の水がバッテリに侵入して電気トラブルが生じることを防ぐことが出来る。
【0013】
請求項3の発明で、電動モータ48とギヤケース49が一体化することで駆動機構を小型化して圃場の水が電動モータ48に侵入し難く出来る。
【0014】
請求項4の発明で、バッテリ67を走行車体2のリヤステップ36下側に搭載することで、バッテリ67を大容量に出来、昇降する苗移植フレーム47側が軽く、軽快な苗移植が行える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態にかかる乗用型田植機の右側面図である。
図2】乗用型田植機の平面図である。
図3】走行車体と植付フレームのフレーム構造を示す斜視図である。
図4】植付フレームのフレーム構造を示す斜視図である。
図5】植付フレームの中央部を示す拡大前斜視図である。
図6】苗移植フレームのギヤケースを示す拡大後斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例としての乗用型田植機について説明する。
【0017】
図1及び図2は施肥装置を装着した乗用型田植機1の右側面図と平面図である。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。以下の説明で、搭乗オペレータが乗用型田植機の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向と後進方向をそれぞれ前、後という。
【0018】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,1(走行装置)を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右の前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右の前輪10,10が各々取り付けられている。
【0019】
また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0020】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及び油圧無段変速装置(HST)23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ミッションケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力として取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0021】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられており、この領域を操縦部33とする。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、該フロアステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0022】
また、走行車体2の前側を囲むようにフロントガードアーム84をメインフレーム15に取り付けている。このフロントガードアーム84の左右に下方へU字状に曲げた左右前ステップ85L、85Rを設けて前側からフロアステップ35に乗り上がることが出来るようにしている。前ステップ85L、85Rには端縁を凹凸にした踏み板86を取り付けて足が滑らないようにしている。
【0023】
昇降リンク装置3は平行リンク機構であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これら上リンク40と,下リンク41,41とは、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に植付フレーム43が連結されている。そして、植付フレーム43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。
【0024】
メインフレーム15に固着した支持部材(図示せず)と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧式シリンダ46が設けられており、該昇降油圧式シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0025】
苗植付部4は6条植の構成で、図3、4の如く、植付フレーム43が横長の下メインフレーム43Aと上フレーム43Bを複数の縦フレーム43Cで連結し、その上に6枚の苗載せ台51を前傾姿勢で載せた構成で、下メインフレーム43Aの左右中央に設けるギヤフレーム68にギヤケース49を取り付け、ギヤケース49に電動モータ48を内装する。
【0026】
なお、電動モータ48に電力を供給するバッテリは四角筒状の下メインフレーム43Aに収納するが、図3の如く走行車体2のリヤステップ36下部で後輪11の前に設置するようにしても良い。
【0027】
ギヤケース49にはマット苗を載せた苗載せ台51を左右往復動する動力とマット苗を一株分ずつ各条の苗取出口51a,・・・に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a,・・・に供給すると苗送りベルト51b,・・・により苗を下方に移送する縦送り機構の動力を設け、苗取出口51a,・・・に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52の移植爪76を駆動する動力を出力する。
【0028】
図5において、ギヤケース49には、苗載せ台51を左右往復移動する摺動軸を下メインフレーム43Aに内装し、苗植付装置52に駆動力を伝動する植付駆動軸71をギヤケース49に設けている。
【0029】
苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56,56がそれぞれ設けられている。これらセンターフロート55と,サイドフロート56,56とを圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、センターフロート55と,サイドフロート56,56とが泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52,・・・により苗が植え付けられる。センターフロート55と,サイドフロート56,56との各々は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧式シリンダ46を制御する油圧バルブ(図示せず)を切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0030】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61,・・・によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62,・・・でセンターフロート55と,サイドフロート56,56との左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず)まで導き、施肥ガイドの前側に設けた作溝体によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62,・・・に吹き込まれ、施肥ホース62,・・・内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0031】
苗植付部4には整地装置の一例であるロータ27(第1ロータ27aと第2ロータ27bの組み合わせを単にロータ27ということがある)が取り付けられている。また、苗載せ台51は苗植付部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の植付フレーム43の支持ローラ65aをレールとして左右方向にスライドする構成である。
【0032】
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく一対の予備苗枠38,38が機体の前後に張り出す位置と上下に並んだ位置とに回動可能に設けられている。
【符号の説明】
【0033】
2 走行車体
3 昇降リンク装置
11 後輪
36 リヤステップ
43 植付フレーム
48 電動モータ
49 ギヤケース
51 苗載せ台
51b 苗送りベルト
52 苗植付装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6