(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169893
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】耐火コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/533 20060101AFI20241129BHJP
H02G 15/08 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H01R13/533 A
H02G15/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086735
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000144267
【氏名又は名称】株式会社三桂製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100175536
【弁理士】
【氏名又は名称】高井 智之
(72)【発明者】
【氏名】福本 憲太郎
(72)【発明者】
【氏名】森田 秀和
【テーマコード(参考)】
5E087
5G375
【Fターム(参考)】
5E087EE11
5E087FF03
5E087FF07
5E087KK01
5E087KK02
5E087LL03
5E087QQ03
5E087RR12
5E087RR14
5E087RR25
5G375CA02
5G375CA19
5G375DB16
(57)【要約】
【課題】ケーブル同士の導通作業を簡易に行うことができるとともに安定した性能を確保することを可能としつつ、従来に比べ簡易な構成にて絶縁性能及び耐火性能を得ることが可能な耐火コネクタを提供する。
【解決手段】耐火コネクタは、ケーブルの絶縁心線の端末部に接続された端子と、ハウジング内に端子及び端子と絶縁心線との接続部が収納されるコネクタ本体とを有し、ハウジング内にはインサート部材が配置され、インサート部材は、各端子及び各絶縁心線を絶縁可能な間隔にて配置可能且つ少なくとも端子と絶縁心線との接続部の外周を覆うことができるように形成される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルの複数の絶縁心線の端末部に接続された複数の端子と、ハウジング内に前記端子及び前記端子と前記絶縁心線との接続部が収納されるコネクタ本体とを有し、相手コネクタと嵌合可能な構造を備える耐火コネクタにおいて、
前記コネクタ本体のハウジング内には、絶縁性及び耐火性を有する素材にて形成されたインサート部材が配置され、前記インサート部材は、前記端子それぞれ及び前記絶縁心線それぞれを絶縁可能な間隔にて配置可能に形成され、且つ、少なくとも前記端子と前記絶縁心線との接続部の外周を覆うことができるように形成されることを特徴とする耐火コネクタ。
【請求項2】
前記コネクタ本体のハウジングは、耐熱性を有する金属にて筒状に形成され前記コネクタ本体の先端側を構成する第1ハウジングと、樹脂にて筒状に形成され前記第1ハウジングに締結可能であり前記コネクタ本体から前記ケーブルを導出する側を構成する第2ハウジングとを備え、
前記インサート部材は、少なくとも各前記端子と各前記絶縁心線との接続部それぞれの外周を覆うことができるように形成された第1インサート部材と、各前記絶縁心線の端末部それぞれの外周を覆うことができるように形成された第2インサート部材とから構成され、
前記第1インサート部材と前記第2インサート部材とは、互いの一端面同士を当接させて連結された状態にて前記コネクタ本体の内部に配置され、且つ、前記第1ハウジングにて前記連結された状態で保持されることを特徴とする請求項1記載の耐火コネクタ。
【請求項3】
前記インサート部材は、セラミックにて形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の耐火コネクタ。
【請求項4】
前記端子は、筒状に形成されており、前記絶縁心線の導体が接続される導体接続部と、前記導体接続部に連続して形成され且つ前記端子の先端側に向かって延在し前記相手コネクタにおける相手端子と電気的に接続可能に形成された複数のバネ片とを備え、
前記バネ片の自由端側の外周には、耐熱性を有する金属にてリング状に形成され前記バネ片の外方への開きを規制可能な開き規制部材が組み付けられることを特徴とする請求項1又は2記載の耐火コネクタ。
【請求項5】
前記開き規制部材は、耐熱温度900度以上の金属にて形成されることを特徴とする請求項4記載の耐火コネクタ。
【請求項6】
前記バネ片の自由端側の外周には、前記開き規制部材が嵌合可能な嵌合溝が設けられることを特徴とする請求項4記載の耐火コネクタ。
【請求項7】
前記第1ハウジングは、耐熱温度900度以上の金属にて形成され、前記第2ハウジングは、熱可塑性樹脂にて形成されることを特徴とする請求項2記載の耐火コネクタ。
【請求項8】
前記第1ハウジングの端部には、複数の係合爪部が形成され、前記第2インサート部材の外周には、前記係合爪部が係合可能な複数の係合凹部が形成されることを特徴とする請求項2記載の耐火コネクタ。
【請求項9】
前記第2ハウジングは、前記第2インサート部材から導出された前記絶縁心線の外周を覆うように形成されるとともに、前記第2ハウジングの内面と前記絶縁心線の外面との間には所定の間隔にて隙間が形成され、前記隙間の形成位置に対応する前記第2ハウジングの外面には、前記第2ハウジングの周方向に沿って薄肉部が複数形成され、
前記薄肉部は、この厚みが前記第2ハウジングの外面における他の部分の厚みよりも薄肉に形成され、前記第2ハウジングが燃焼した際に前記第2ハウジングの外面における他の部分よりも先に燃焼し開口可能に形成されることを特徴とする請求項2記載の耐火コネクタ。
【請求項10】
前記ケーブルは、このシースの先端部外周に熱収縮チューブが取り付けられ、
前記第2ハウジングには、前記ケーブルを外部に導出可能に形成されたケーブル導出口と、前記ケーブル導出口の基端に連続する前記第2ハウジングの内壁に前記熱収縮チューブが引っ掛かることが可能に形成される引っ掛け部とが設けられることを特徴とする請求項2記載の耐火コネクタ。
【請求項11】
前記第2インサート部材は、前記絶縁心線を導出する側に、前記第2インサート部材の軸方向に延在する延在部が設けられ、
前記延在部は、前記軸方向における延在距離が、前記導体が露出した状態において前記導体と前記第1ハウジングとの間を絶縁可能な距離となるように形成されることを特徴とする請求項2記載の耐火コネクタ。
【請求項12】
前記第1インサート部材は、前記端子を挿通可能に形成された端子挿通孔を複数有し、前記第2インサート部材は、前記絶縁心線を挿通可能に形成され且つ前記第1インサート部材と連結された状態にて前記端子挿通孔と連通可能に形成された絶縁心線挿通孔を複数有し、
前記端子挿通孔の一端側には、前記端子の基端に設けたフランジ部と嵌合可能に形成された端子固定凹部が設けられ、前記端子は、前記フランジ部が前記端子固定凹部に嵌合されるとともに前記フランジ部に前記第2インサート部材の一端面が当接することにより固定されることを特徴とする請求項2記載の耐火コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火ケーブルの端末部に設けられるものであって、相手コネクタと嵌合可能な構造を備える耐火コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
火災時の電力供給の喪失を防止し、照明の確保や消防設備の作動を確保するため、トンネル、公共施設等において耐火ケーブルが用いられている。従来、耐火ケーブル相互、及び分岐接続にあたっては、施工現場において、耐火ケーブルの導体同士を圧着部材、マイカテープ、絶縁部材等の接続部材を用い、作業者の手作業にて接続が行われていた。
【0003】
上記接続部材を用いた場合、現場での施工に手間が掛かるとともに、作業者の力量によって導通性能や絶縁性能にばらつきが生じる虞があった。一方で、その他の従来技術として、特許文献1に開示された耐火コネクタが知られている。
【0004】
特許文献1の従来技術においては、ケーブルの複数の絶縁心線の先端にそれぞれ接続された端子と、各端子と各絶縁心線との接続部を樹脂により封止したコネクタ本体とを備えており、特許文献1の従来技術に係るコネクタ同士を嵌合することにより、ケーブル同士の導通を簡易に行うことが可能となるとともに、絶縁性能及び耐火性能を得ることが可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来のような作業者も手による接続作業により生じた作業者の手間や作業者の力量による性能のばらつきなくケーブル同士の導通作業を簡易に行うことを可能としつつ、特許文献1の従来技術よりも簡易な構成にて絶縁性能及び耐火性能を得ることが可能な耐火コネクタが望まれていた。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、ケーブル同士の導通作業を簡易に行うことができるとともに安定した性能を確保することを可能としつつ、従来に比べ簡易な構成にて絶縁性能及び耐火性能を得ることが可能な耐火コネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明にあっては、ケーブルの複数の絶縁心線の端末部に接続された複数の端子と、ハウジング内に前記端子及び前記端子と前記絶縁心線との接続部が収納されるコネクタ本体とを有し、相手コネクタと嵌合可能な構造を備える耐火コネクタにおいて、前記コネクタ本体のハウジング内には、絶縁性及び耐火性を有する素材にて形成されたインサート部材が配置され、前記インサート部材は、前記端子それぞれ及び前記絶縁心線それぞれを絶縁可能な間隔にて配置可能に形成され、且つ、少なくとも前記端子と前記絶縁心線との接続部の外周を覆うことができるように形成されることを特徴とする。
【0009】
上記(1)のような特徴を有する本発明によれば、コネクタ本体のハウジング内に配置されたインサート部材にて、端子それぞれ及び絶縁心線それぞれが絶縁可能な間隔にて配置され、且つ、少なくとも端子と絶縁心線との接続部の外周が覆われることから、従来技術のように端子と絶縁心線との接続部にガラスマイカテープ等の耐火テープを巻き付けることなく、端子それぞれ及び絶縁心線それぞれが絶縁されると共に、少なくとも端子と絶縁心線との接続部が耐火性を有することになる。したがって、インサート部材にて、端子それぞれ及び絶縁心線それぞれが絶縁可能な間隔にて配置されると共に、少なくとも端子と絶縁心線との接続部の外周を覆うことにより、従来に比べ、より簡易な構成を備えつつ、ケーブル同士の導通作業を簡易に行うことができるとともに安定した性能を確保することが可能となり、例えば、トンネル内の照明に係る工事のような施工箇所の多い現場であっても施工時間を短縮することが可能となる。
【0010】
(2)また、本発明は、前記コネクタ本体のハウジングは、耐熱性を有する金属にて筒状に形成され前記コネクタ本体の先端側を構成する第1ハウジングと、樹脂にて筒状に形成され前記第1ハウジングに締結可能であり前記コネクタ本体から前記ケーブルを導出する側を構成する第2ハウジングとを備え、前記インサート部材は、少なくとも各前記端子と各前記絶縁心線との接続部それぞれの外周を覆うことができるように形成された第1インサート部材と、各前記絶縁心線の端末部それぞれの外周を覆うことができるように形成された第2インサート部材とから構成され、前記第1インサート部材と前記第2インサート部材とは、互いの一端面同士を当接させて連結された状態にて前記コネクタ本体の内部に配置され、且つ、前記第1ハウジングにて前記連結された状態で保持されることを特徴とする。
【0011】
上記(2)のような特徴を有する本発明によれば、第1インサート部材にて、少なくとも各端子と各絶縁心線との接続部それぞれの外周を覆うと共に、第2インサート部材にて各絶縁心線の端末部それぞれの外周を覆い、第1インサート部材と第2インサート部材とを、互いの一端面同士を当接させて連結された状態にてコネクタ本体の内部に配置され、第1ハウジングにて上記連結された状態で保持されることにより、従来技術のように端子と絶縁心線との接続部に耐火テープを巻き付けることなく、端子それぞれ及び絶縁心線それぞれが絶縁されると共に、少なくとも端子と絶縁心線との接続部が耐火性を有することになる。
【0012】
(3)また、本発明は、前記インサート部材は、セラミックにて形成されることを特徴とする。
【0013】
上記(3)のような特徴を有する本発明によれば、インサート部材がセラミックにて形成されることから、耐火コネクタの絶縁性能及び耐火性能が、より一層確保される。
【0014】
(4)また、本発明は、前記端子は、筒状に形成されており、前記絶縁心線の導体が接続される導体接続部と、前記導体接続部に連続して形成され且つ前記端子の先端側に向かって延在し前記相手コネクタにおける相手端子と電気的に接続可能に形成された複数のバネ片とを備え、前記バネ片の自由端側の外周には、耐熱性を有する金属にてリング状に形成され前記バネ片の外方への開きを規制可能な開き規制部材が組み付けられることを特徴とする。
【0015】
上記(4)のような特徴を有する本発明によれば、端子のバネ片の自由端側の外周に組み付けられた開き規制部材にて、バネ片の外方への開きを規制することが可能であることから、火災時の高温によりバネ片の自由端側がバネ片の外方へ開くことに起因する導通不良の発生を防止し、耐火コネクタの導電性能が確保される。
【0016】
(5)また、本発明は、前記開き規制部材は、耐熱温度900度以上の金属にて形成されることを特徴とする。
【0017】
上記(5)のような特徴を有する本発明によれば、開き規制部材が耐熱温度900度以上の金属にて形成されることから、火災時の高温によりバネ片の自由端側がバネ片の外方へ開くことに起因する導通不良の発生を、より一層防止し、耐火コネクタの導電性能が確保される。
【0018】
(6)また、本発明は、前記バネ片の自由端側の外周には、前記開き規制部材が嵌合可能な嵌合溝が設けられることを特徴とする。
【0019】
上記(6)のような特徴を有する本発明によれば、バネ片の自由端側の外周に嵌合溝が設けられることから、嵌合溝に開き規制部材を嵌合することにより、バネ片の外方への開きを、より確実に規制することが可能であることから、火災時の高温によりバネ片の自由端側がバネ片の外方へ開くことに起因する導通不良の発生を、より一層防止し、耐火コネクタの導電性能が確保される。
【0020】
(7)また、本発明は、前記第1ハウジングは、耐熱温度900度以上の金属にて形成され、前記第2ハウジングは、熱可塑性樹脂にて形成されることを特徴とする。
【0021】
上記(7)のような特徴を有する本発明によれば、第1ハウジングが耐熱温度900度以上の金属にて形成され、火災時の高温環境下でも、第1インサート部材と第2インサート部材との第1ハウジングによる連結状態を保持することが可能となることから、耐火コネクタの絶縁性能及び耐火性能が、より一層確保される。
また、第2ハウジングが熱可塑性樹脂にて形成されることから、所定の強度を確保しつつ、ハウジング本体の全体を金属にて形成した場合に比べ、軽量化を図ることが可能となる。
【0022】
(8)また、本発明は、前記第1ハウジングの端部には、複数の係合爪部が形成され、前記第2インサート部材の外周には、前記係合爪部が係合可能な複数の係合凹部が形成されることを特徴とする。
【0023】
上記(8)のような特徴を有する本発明によれば、第1ハウジングの端部に形成された複数の係合爪部が、第2インサート部材の外周に形成された複数の係合凹部に係合することにより第1インサート部材と第2インサート部材との第1ハウジングによる連結状態を、より確実に保持することが可能となることから、耐火コネクタの絶縁性能及び耐火性能が、より一層確保される。
【0024】
(9)また、本発明は、前記第2ハウジングは、前記第2インサート部材から導出された前記絶縁心線の外周を覆うように形成されるとともに、前記第2ハウジングの内面と前記絶縁心線の外面との間には所定の間隔にて隙間が形成され、前記隙間の形成位置に対応する前記第2ハウジングの外面には、前記第2ハウジングの周方向に沿って薄肉部が複数形成され、前記薄肉部は、この厚みが前記第2ハウジングの外面における他の部分の厚みよりも薄肉に形成され、前記第2ハウジングが燃焼した際に前記第2ハウジングの外面における他の部分よりも先に燃焼し開口可能に形成されることを特徴とする。
【0025】
上記(9)のような特徴を有する本発明によれば、第2ハウジングの内面と絶縁心線の外面との間に所定の間隔にて隙間が形成され、隙間の形成位置に対応する第2ハウジングの外面に第2ハウジングの周方向に沿って薄肉部が複数形成され、第2ハウジングが燃焼した際に、薄肉部が第2ハウジングの外面における他の部分よりも先に燃焼し薄肉部の形成部分が開口可能となる。
ここで、第2ハウジングが燃焼した際に、第2ハウジング内の酸素不足による不完全燃焼により、熱可塑性樹脂にて形成される第2ハウジングや、絶縁心線の絶縁体等から導電性を有する炭化物(所謂、カーボンブラック)が生成される。上記導電性炭化物がインサート部材の表面に付着すると、導電性炭化物を介して、端子と、金属にて形成される第1ハウジングとが導通し、絶縁耐力が低下する虞がある。
そこで、本発明のように、第2ハウジングの外面に、この外面における他の部分の厚みよりも薄肉に形成される薄肉部を設けることにより、第2ハウジングが燃焼した際に、第2ハウジングの外面における他の部分よりも比較的短時間で薄肉部の形成部分が開口し、第2ハウジング内に酸素が供給されることにより、不完全燃焼を防止することが可能となる。これにより、耐火コネクタの燃焼時において第2ハウジング等の有機物を迅速に燃焼させ、導電性炭化物の生成を抑え、絶縁耐力の低下を防止することが可能となる。
その結果、耐火コネクタの絶縁性能を、より一層確保することが可能となる。
【0026】
(10)また、本発明は、前記ケーブルは、このシースの先端部外周に熱収縮チューブが取り付けられ、前記第2ハウジングには、前記ケーブルを外部に導出可能に形成されたケーブル導出口と、前記ケーブル導出口の基端に連続する前記第2ハウジングの内壁に前記熱収縮チューブが引っ掛かることが可能に形成される引っ掛け部とが設けられることを特徴とする。
【0027】
上記(10)のような特徴を有する本発明によれば、ケーブルのシース先端部外周に取り付けられた熱収縮チューブが、第2ハウジングのケーブル導出口の基端に連続する内壁に設けられた引っ掛け部に引っ掛かることから、ケーブルがケーブル導出方向へ引っ張られた場合であっても、端子と絶縁心線との接続部の引張強度が高まり、接続部への負荷が軽減される。その結果、ケーブルがケーブル導出方向へ引っ張られることに起因する導通不良の発生を防止し、耐火コネクタの導電性能が確保される。
【0028】
(11)また、本発明は、前記第2インサート部材は、前記絶縁心線を導出する側に、前記第2インサート部材の軸方向に延在する延在部が設けられ、前記延在部は、前記軸方向における延在距離が、前記導体が露出した状態において前記導体と前記第1ハウジングとの間を絶縁可能な距離となるように形成されることを特徴とする。
【0029】
上記(11)のような特徴を有する本発明によれば、第2インサート部材における延在部は、第2インサート部材の軸方向における延在距離が、導体が露出した状態において導体と第1ハウジングとの間を絶縁可能な距離となるように形成されることから、耐火コネクタの燃焼時に絶縁体が消失した場合であっても絶縁耐力の低下を防止し、電気短絡を防止することが可能となる。その結果、耐火コネクタの絶縁性能が、より一層確保される。
【0030】
(12)また、本発明は、前記第1インサート部材は、前記端子を挿通可能に形成された端子挿通孔を複数有し、前記第2インサート部材は、前記絶縁心線を挿通可能に形成され且つ前記第1インサート部材と連結された状態にて前記端子挿通孔と連通可能に形成された絶縁心線挿通孔を複数有し、前記端子挿通孔の一端側には、前記端子の基端に設けたフランジ部と嵌合可能に形成された端子固定凹部が設けられ、前記端子は、前記フランジ部が前記端子固定凹部に嵌合されるとともに前記フランジ部に前記第2インサート部材の一端面が当接することにより固定されることを特徴とする。
【0031】
上記(12)のような特徴を有する本発明によれば、第1インサート部材における端子挿通孔の一端側に設けられた端子固定凹部に端子のフランジ部が嵌合され、フランジ部に第2インサート部材の一端面が当接することにより、端子が固定されることから、端子が第1インサート部材と第2インサート部材とで挟まれるように配置されることから、耐火コネクタの絶縁性能が、より一層確保される。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、ケーブル同士の導通作業を簡易に行うことができるとともに安定した性能を確保することを可能としつつ、従来に比べ簡易な構成にて絶縁性能及び耐火性能を得ることが可能な耐火コネクタを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態に係る耐火コネクタの嵌合構造を示す斜視図である。
【
図2】
図1における第1耐火コネクタを示す分解斜視図である。
【
図3】
図1における第1耐火コネクタを示す部分断面図である。
【
図4】
図2における第2ハウジングを示す斜視図である。
【
図5】
図1における第2耐火コネクタを示す分解斜視図である。
【
図6】
図1における第2耐火コネクタを示す部分断面図である。
【
図8】
図7における第2端子の開き規制部を示す斜視図である。
【
図9】
図5における第1ハウジングと第2インサート部材を示す斜視図である。
【
図10】第1耐火コネクタと第2耐火コネクタとを嵌合させた状態における第1端子と第2端子との接続箇所付近を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る耐火コネクタの嵌合構造を示す斜視図、
図2は
図1における第1耐火コネクタを示す分解斜視図、
図3は
図1における第1耐火コネクタを示す部分断面図、
図4は
図2における第2ハウジングを示す斜視図、
図5は
図1における第2耐火コネクタを示す分解斜視図、
図6は
図1における第2耐火コネクタを示す部分断面図、
図7は
図5における第2端子を示す斜視図、
図8は
図7における第2端子の開き規制部を示す斜視図、
図9は
図5における第1ハウジングと第2インサート部材を示す斜視図、
図10は第1耐火コネクタと第2耐火コネクタとを嵌合させた状態における第1端子と第2端子との接続箇所付近を示す拡大断面図である。
【0035】
本発明の一実施形態に係る耐火コネクタは、
図1に図示する第1耐火コネクタ1と第2耐火コネクタ2のいずれにも適用可能であるものとする。第1耐火コネクタ1と第2耐火コネクタ2との嵌合構造100は、第1耐火コネクタ1と第2耐火コネクタ2とを嵌合することによって構成され、この嵌合構造100によって第1耐火コネクタ1に設けられる第1ケーブル3と、第2耐火コネクタ2に設けられる第2ケーブル4とを電気的に接続するものである。
【0036】
本実施形態における第1ケーブル3と第2ケーブル4とは、特許請求の範囲に記載される「ケーブル」に相当するものである。第1ケーブル3と第2ケーブル4とは、
図2及び
図5に図示するように、導体7に絶縁体8を被覆してなる複数(本実施形態においては4本)の絶縁心線9と、各絶縁心線9間に介在される介在物(図示せず)と、各絶縁心線9を一括して覆う耐火テープ(図示せず)と、耐火テープの外側を被覆するシース10とから構成される耐火性を有するケーブル(所謂「耐火ケーブル」)である。
【0037】
以下、本実施形態における第1耐火コネクタ1と第2耐火コネクタ2それぞれの各構成について説明する。
【0038】
まず、第1耐火コネクタ1について説明する。
図2及び
図3に図示する第1耐火コネクタ1は、複数(本実施形態においては4つ)の第1端子5と、第1コネクタ本体6とを備えている。本実施形態における第1端子5と第1コネクタ本体6とは、それぞれ、特許請求の範囲に記載される「端子」と「コネクタ本体」に相当するものである。
【0039】
第1端子5は、
図2に図示するように、金属(例えば、真鍮)にて全体ピン状に形成されており、
図3に図示するように、絶縁心線9の導体7が接続される導体接続部11と、導体接続部11に連続して形成され且つ第1端子5の先端側に向かって延在する電気接触部12と、第1端子5(導体接続部11)の基端に設けられるフランジ部13とを備えている。絶縁心線9の導体7と、導体接続部11とが接続された部分は、接続部14として形成されている。
【0040】
図2及び
図3に図示するように、第1コネクタ本体6は、ハウジング15と、ハウジング15内に配置されるインサート部材16とを備えている。
【0041】
図2に図示するように、ハウジング15は、耐熱性を有する金属にて円筒状に形成され第1コネクタ本体6の先端側を構成する第1ハウジング17と、樹脂にて筒状に形成され第1ハウジング17に締結可能であり第1コネクタ本体6から第1ケーブル3を導出する側を構成する第2ハウジング18と、樹脂にて円筒状に形成され第2ハウジング18における第1ケーブル3を導出する側に締結可能に形成されるキャップ部19とを備えている。
【0042】
第1ハウジング17は、耐熱温度が900度以上の金属にて形成されている。上記「耐熱温度が900度以上の金属」として、例えば、ステンレス等が挙げられる。
図2に図示するように、第1ハウジング17は、先端側と後端側それぞれの外周面にネジ部20、21が設けられ、第1ハウジング17の後端部に複数(本実施形態においては2つ)の係合爪部22が設けられている。第1ハウジング17の内周面23には、規制突起24が突設されている。
【0043】
第2ハウジング18は、熱可塑性樹脂にて形成されている。上記「熱可塑性樹脂」として、例えば、ポリアミド、塩化プラスチック等が挙げられる。
図2に図示するように、第2ハウジング18は、先端側の内周面25にネジ部26が設けられるとともに、後端側の外周面27にネジ部28が設けられている。ネジ部26は、第1ハウジング17のネジ部21に締結可能に形成されている。ネジ部28は、キャップ部19の後述するネジ部45が締結可能に形成されている。
【0044】
図4に図示するように、第2ハウジング18の軸方向中間部の外周面27には、第2ハウジング18の周方向に沿って薄肉部29が複数(本実施形態においては6つ)形成されている。薄肉部29は、
図3に図示するように、この厚みが第2ハウジング18の外周面27における他の部分の厚みよりも薄肉に形成され、第2ハウジング18が燃焼した際に第2ハウジング18の外周面27における他の部分よりも先に燃焼し開口可能に形成されている。
【0045】
第2ハウジング18は、
図2及び
図3に図示するように、この先端側の内側に防水パッキン31が配置されている。防水パッキン31を上記の通り配置することにより、第1ハウジング17と第2ハウジング18との締結部分における防水が施されている。
【0046】
第2ハウジング18は、
図3に図示するように、この後端側に、第1ケーブル3を外部に導出可能に形成されたケーブル導出口32と、ケーブル導出口32の基端に連続する第2ハウジング18の内周面25に形成される引っ掛け部33とが設けられている。本実施形態において、第1ケーブル3のシース10先端部外周面には熱収縮チューブ34が設けられており、引っ掛け部33は、第1ケーブル3のシース10先端部外周面に設けられた熱収縮チューブ34が引っ掛かることが可能に形成されている。
【0047】
インサート部材16は、絶縁性及び耐火性を有する素材にて形成されている。上記「絶縁性及び耐火性を有する素材」として、例えば、セラミックが挙げられる。インサート部材16は、第1端子5それぞれ、及び絶縁心線9それぞれを絶縁可能な間隔にて配置可能に形成され、且つ、少なくとも第1端子5と絶縁心線9との接続部14の外周を覆うことができるように形成されている。
【0048】
図3に図示するように、インサート部材16は、少なくとも各第1端子5と各絶縁心線9との接続部14それぞれの外周を覆うことができるように形成された第1インサート部材35と、各絶縁心線9の端末部それぞれの外周を覆うことができるように形成された第2インサート部材36とから構成されている。
【0049】
図3に図示するように、第1インサート部材35と第2インサート部材36とは、互いの一端面37、38同士を当接させて連結された状態にて第1コネクタ本体6の内部に配置され、且つ、第1ハウジング17にて連結された状態で保持されている。
【0050】
図2及び
図3に図示するように、第1インサート部材35は、この軸方向に沿って貫通形成された端子挿通孔40を複数(本実施形態においては4つ)有している。端子挿通孔40は、第1端子5を挿通可能に形成されている。端子挿通孔40の一端側には、第1端子5のフランジ部13と嵌合可能に形成された端子固定凹部41が設けられている(
図3参照)。端子固定凹部41に第1端子5のフランジ部13が嵌合されるとともに、第1インサート部材35と第2インサート部材36とが連結された状態にて、フランジ部13に第2インサート部材36の一端面38が当接することにより、第1端子5が固定されている。
【0051】
図2及び
図3に図示するように、第2インサート部材36は、この軸方向に沿って貫通形成された絶縁心線挿通孔42を複数(本実施形態においては4つ)有している。絶縁心線挿通孔42は、絶縁心線9を挿通可能に形成され、且つ、第1インサート部材35と連結された状態にて端子挿通孔40と連通可能に形成されている。
【0052】
図2及び
図3に図示するように、第2インサート部材36は、絶縁心線9を導出する側に、第2インサート部材36の軸方向に延在する延在部39が設けられている。延在部39は、第2インサート部材36の軸方向における延在距離が、絶縁心線9の導体7が露出した状態において導体7と第1ハウジング17との間を絶縁可能な距離となるように形成されている。
【0053】
図2及び
図3に図示するように、第2インサート部材36は、この軸方向中間部における外周面43に複数(本実施形態においては2つ)の係合凹部44が形成されている。係合凹部44は、第1ハウジング17の係合爪部22が係合可能に形成されている。
【0054】
上記の通り、第2インサート部材36に係合凹部44が複数設けられ、各係合凹部44それぞれに、第1ハウジング17の係合爪部22が係合されることにより、第1ハウジング17と第2インサート部材36とが互いに固定され、第1ハウジング17と第2インサート部材36との間における相対的な回転を防ぐことが可能となる。
【0055】
図2及び
図3に図示するキャップ部19は、熱可塑性樹脂にて形成されている。上記「熱可塑性樹脂」として、例えば、ポリアミド、塩化プラスチック等が挙げられる。キャップ部19は、この内周面にネジ部45が設けられるとともに、キャップ部19の内側に、第1ケーブル3のシース10外周面に嵌着可能に形成される弾性シール部材46と介在リング47とが配置されている。弾性シール部材46を上記の通り配置することにより、第1コネクタ本体6の第1ケーブル3を導出する側における防水が施されている。
【0056】
ここで、第1耐火コネクタ1を組み立てた状態における第2ハウジング18内の構成について説明する。
図3に図示するように、第1耐火コネクタ1を組み立てた状態において、第2ハウジング18は、第2インサート部材36から導出された絶縁心線9の外周を覆うように配置されている。第2ハウジング18の軸方向中間部の内周面25と、絶縁心線9の外周面48との間には、所定の間隔にて隙間30が形成され、先に説明した複数の薄肉部29は、上記隙間30の形成位置に対応する第2ハウジング18の外周面27に形成されている。薄肉部29は、第2ハウジング18が燃焼した際に、第2ハウジング18の外周面27における他の部分よりも先に燃焼して開口し、隙間30と外部とが連通可能となるように形成されている。
【0057】
つぎに、第2耐火コネクタ2について説明する。
図5に図示する第2耐火コネクタ2は、複数(本実施形態においては4つ)の第2端子50と、第2コネクタ本体51とを備えている。本実施形態における第2端子50と第2コネクタ本体51とは、それぞれ、特許請求の範囲に記載される「端子」と「コネクタ本体」に相当するものである。
【0058】
図6及び
図7に図示する第2端子50は、金属(例えば、真鍮)にて全体筒状に形成されており、絶縁心線9の導体7が接続される導体接続部52と、導体接続部52に連続して形成され且つ第2端子50の先端側に向かって延在し第1耐火コネクタ1における第1端子5と電気的に接続可能に形成された複数のバネ片(電気接触部)53と、第2端子50(導体接続部52)の基端に設けられるフランジ部54と、バネ片53の自由端側の外周に組み付けられバネ片53の外方への開きを規制可能な開き規制部材55とを備えている。絶縁心線9の導体7と、導体接続部52とが接続された部分は、接続部56として形成されている。
【0059】
図8に図示する開き規制部材55は、耐熱性を有する金属にてリング状に形成され、開き規制部材55は、切り欠き部57を有している。開き規制部材55は、耐熱温度900度以上の金属にて形成されている。上記「耐熱温度が900度以上の金属」として、例えば、ステンレス等が挙げられる。
図7に図示するように、バネ片53の自由端側の外周には、開き規制部材55が嵌合可能な嵌合溝58が設けられている。
【0060】
図5及び
図6に図示するように、第2コネクタ本体51は、ハウジング59と、ハウジング59内に配置されるインサート部材60とを備えている。
【0061】
図5に図示するハウジング59は、耐熱性を有する金属にて円筒状に形成され第2コネクタ本体51の先端側を構成する第1ハウジング61と、耐熱性を有する金属にて円筒状に形成され第1ハウジング61の外周に配置され第1耐火コネクタ1と第2耐火コネクタ2との嵌合状態を保持可能に形成された嵌合保持部材62と、樹脂にて筒状に形成され第1ハウジング61に締結可能であり第2コネクタ本体51から第2ケーブル4を導出する側を構成する第2ハウジング63と、樹脂にて円筒状に形成され第2ハウジング63における第2ケーブル4を導出する側に締結可能に形成されるキャップ部64とを備えている。
【0062】
第1ハウジング61は、耐熱温度が900度以上の金属にて形成されている。上記「耐熱温度が900度以上の金属」として、例えば、ステンレス等が挙げられる。
図9に図示するように、第1ハウジング61は、この先端側に、第1ハウジング61の軸方向に沿って切り欠き形成される規制溝65が設けられている。規制溝65は、第1耐火コネクタ1における第1ハウジング17の規制突起24が挿入可能に形成されている。第1ハウジング61は、後端側の外周面にネジ部66が設けられるとともに、第1ハウジング61の後端部に複数(本実施形態においては2つ)の係合爪部67が設けられている。
【0063】
第1ハウジング61は、この外側に防水パッキン68が配置されている。防水パッキン68を上記の通り配置することにより、第1耐火コネクタ1と第2耐火コネクタ2との締結部分における防水が施されている。
【0064】
嵌合保持部材62は、耐熱温度が900度以上の金属にて形成されている。上記「耐熱温度が900度以上の金属」として、例えば、ステンレス等が挙げられる。
図5に図示するように、嵌合保持部材62は、この内周面にネジ部79が設けられている。
【0065】
図5及び
図6に図示する第2ハウジング63、キャップ部64は、それぞれ、第1耐火コネクタ1における第2ハウジング18、キャップ部19と同一の構成及び構造を備えているため、詳細な説明を省略する。
【0066】
インサート部材60は、第1耐火コネクタ1におけるインサート部材16と同様、絶縁性及び耐火性を有する素材にて形成されている。上記「絶縁性及び耐火性を有する素材」として、例えば、セラミックが挙げられる。インサート部材60は、第2端子50それぞれ、及び絶縁心線9それぞれを絶縁可能な間隔にて配置可能に形成され、且つ、少なくとも第2端子50と絶縁心線9との接続部56の外周を覆うことができるように形成されている。
【0067】
インサート部材60は、少なくとも各第2端子50と各絶縁心線9との接続部56それぞれの外周を覆うことができるように形成された第1インサート部材69と、各絶縁心線9の端末部それぞれの外周を覆うことができるように形成された第2インサート部材70とから構成されている。
【0068】
第1インサート部材69と第2インサート部材70とは、互いの一端面71、72同士を当接させて連結された状態にて第2コネクタ本体51の内部に配置され、且つ、第1ハウジング61にて連結された状態で保持されている。
【0069】
図5及び
図6に図示するように、第1インサート部材69は、この軸方向に沿って貫通形成された端子挿通孔73を複数(本実施形態においては4つ)有している。端子挿通孔73は、第2端子50を挿通可能に形成されている。端子挿通孔73の一端側には、第2端子50のフランジ部54と嵌合可能に形成された端子固定凹部74が設けられている(
図6参照)。端子固定凹部74に第2端子50のフランジ部54が嵌合されるとともに、第1インサート部材69と第2インサート部材70とが連結された状態にて、フランジ部54に第2インサート部材70の一端面72が当接することにより、第2端子50が固定されている。
【0070】
図5及び
図6に図示するように、第2インサート部材70は、この軸方向に沿って貫通形成された絶縁心線挿通孔75を複数(本実施形態においては4つ)有している。絶縁心線挿通孔75は、絶縁心線9を挿通可能に形成され、且つ、第1インサート部材69と連結された状態にて端子挿通孔73と連通可能に形成されている。
【0071】
図5及び
図6に図示するように、第2インサート部材70は、絶縁心線9を導出する側に、第2インサート部材70の軸方向に延在する延在部76が設けられている。延在部76は、第2インサート部材70の軸方向における延在距離が、絶縁心線9の導体7が露出した状態において導体7と第1ハウジング61との間を絶縁可能な距離となるように形成されている。
【0072】
図9に図示するように、第2インサート部材70は、この軸方向中間部における外周面77に複数(本実施形態においては2つ)の係合凹部78が形成されている。係合凹部78は、第1ハウジング61の係合爪部67が係合可能に形成されている。
【0073】
上記の通り、第2インサート部材70に係合凹部78が複数設けられ、各係合凹部78それぞれに、第1ハウジング61の係合爪部67が係合されることにより、第1ハウジング61と第2インサート部材70とが互いに固定され、第1ハウジング61と第2インサート部材70との間における相対的な回転を防ぐことが可能となる。
【0074】
ここで、第2耐火コネクタ2を組み立てた状態における第2ハウジング63内の構成について説明する。
図6に図示するように、第2耐火コネクタ2を組み立てた状態において、第2ハウジング63は、第2インサート部材70から導出された絶縁心線9の外周を覆うように配置されている。第2ハウジング63の軸方向中間部の内周面25と、絶縁心線9の外周面48との間には、所定の間隔にて隙間80が形成され、先に説明した複数の薄肉部29は、上記隙間80の形成位置に対応する第2ハウジング63の外周面27に形成されている。薄肉部29は、第2ハウジング63が燃焼した際に、第2ハウジング63の外周面27における他の部分よりも先に燃焼して開口し、隙間80と外部とが連通可能となるように形成されている。
【0075】
第1耐火コネクタ1と第2耐火コネクタ2との嵌合作業について説明する。
図10に図示するように、第1耐火コネクタ1と第2耐火コネクタ2とを嵌合することにより、第1端子5と第2端子50とが導通可能に接続され、第1耐火コネクタ1に設けられる第1ケーブル3と、第2耐火コネクタ2に設けられる第2ケーブル4とを電気的に接続する。しかる後、嵌合保持部材62のネジ部79を、第1耐火コネクタ1における第1ハウジングのネジ部20に螺合させることにより、第1耐火コネクタ1と第2耐火コネクタ2との嵌合状態を保持する。以上により、第1耐火コネクタ1と第2耐火コネクタ2との嵌合作業が完了する。
【0076】
以上の構成を有する本実施形態によれば、コネクタ本体6、51のハウジング15、59内に配置されたインサート部材16、60にて、端子5、50それぞれ及び絶縁心線9それぞれが絶縁可能な間隔にて配置され、且つ、少なくとも端子5、50と絶縁心線9との接続部14、56の外周が覆われることから、従来技術のように接続部14、56にガラスマイカテープ等の耐火テープを巻き付けることなく、端子5、50それぞれ及び絶縁心線9それぞれが絶縁されると共に、少なくとも接続部14、56が耐火性を有することになる。
したがって、本実施形態によれば、インサート部材16、60にて、端子5、50それぞれ及び絶縁心線9それぞれが絶縁可能な間隔にて配置されると共に、少なくとも接続部14、56の外周を覆うことにより、従来に比べ、より簡易な構成を備えつつ、ケーブル3、4同士の導通作業を簡易に行うことができるとともに安定した性能を確保することが可能となり、例えば、トンネル内の照明に係る工事のような施工箇所の多い現場であっても施工時間を短縮することが可能となる。
【0077】
また、本実施形態によれば、第1インサート部材35、69にて、少なくとも接続部14、56それぞれの外周を覆うと共に、第2インサート部材36、70にて各絶縁心線9の端末部それぞれの外周を覆い、第1インサート部材35、69と第2インサート部材36、70とを、互いの一端面37、38、71、72同士を当接させて連結された状態にてコネクタ本体6、51の内部に配置され、第1ハウジング17、61にて上記連結された状態で保持されることにより、従来技術のように接続部14、56に耐火テープを巻き付けることなく、端子5、50それぞれ及び絶縁心線9それぞれが絶縁されると共に、少なくとも接続部14、56が耐火性を有することになる。
【0078】
また、本実施形態によれば、インサート部材16、60がセラミックにて形成されることから、耐火コネクタ1、2の絶縁性能及び耐火性能が、より一層確保される。
【0079】
また、本実施形態によれば、端子50のバネ片53の自由端側の外周に組み付けられた開き規制部材55にて、バネ片53の外方への開きを規制することが可能であることから、火災時の高温によりバネ片53の自由端側がバネ片53の外方へ開くことに起因する導通不良の発生を防止し、耐火コネクタ2の導電性能が確保される。
【0080】
また、本実施形態によれば、開き規制部材55が耐熱温度900度以上の金属にて形成されることから、火災時の高温によりバネ片53の自由端側がバネ片53の外方へ開くことに起因する導通不良の発生を、より一層防止し、耐火コネクタ2の導電性能が確保される。
【0081】
また、本実施形態によれば、バネ片53の自由端側の外周に嵌合溝58が設けられることから、嵌合溝58に開き規制部材55を嵌合することにより、バネ片53の外方への開きを、より確実に規制することが可能であることから、火災時の高温によりバネ片53の自由端側がバネ片53の外方へ開くことに起因する導通不良の発生を、より一層防止し、耐火コネクタ2の導電性能が確保される。
【0082】
また、本実施形態によれば、第1ハウジング17、61が耐熱温度900度以上の金属にて形成され、火災時の高温環境下でも、第1インサート部材35、69と第2インサート部材36、70との第1ハウジング17、61による連結状態を保持することが可能となることから、耐火コネクタ1、2の絶縁性能及び耐火性能が、より一層確保される。
また、第2ハウジング18、63が熱可塑性樹脂にて形成されることから、所定の強度を確保しつつ、ハウジング15、59の全体を金属にて形成した場合に比べ、軽量化を図ることが可能となる。
【0083】
また、本実施形態によれば、第1ハウジング17、61の複数の係合爪部22、67が、第2インサート部材36、70の複数の係合凹部44に係合することにより第1インサート部材35、69と第2インサート部材36、70との第1ハウジング17、61による連結状態を、より確実に保持することが可能となることから、耐火コネクタ1、2の絶縁性能及び耐火性能が、より一層確保される。
【0084】
また、本実施形態によれば、第2ハウジング18、63の内周面25と絶縁心線9の外周面48との間に所定の間隔にて隙間30、80が形成され、隙間30、80の形成位置に対応する第2ハウジング18、63の外周面27に第2ハウジング18、63の周方向に沿って薄肉部29が複数形成され、第2ハウジング18、63が燃焼した際に、薄肉部29が第2ハウジング18、63の外周面27における他の部分よりも先に燃焼し薄肉部29の形成部分が開口可能となる。
ここで、第2ハウジング18、63が燃焼した際に、第2ハウジング18、63内の酸素不足による不完全燃焼により、熱可塑性樹脂にて形成される第2ハウジング18、63や、絶縁心線9の絶縁体8等から導電性を有する炭化物(所謂、カーボンブラック)が生成される。上記導電性炭化物がインサート部材16、60の表面に付着すると、導電性炭化物を介して、端子5、50と第1ハウジング17、61とが導通し、絶縁耐力が低下する虞がある。
そこで、本実施形態のように、第2ハウジング18、63の外周面27に薄肉部29を設けることにより、第2ハウジング18、63が燃焼した際に、第2ハウジング18、63の外周面27における他の部分よりも比較的短時間で薄肉部29の形成部分が開口し、第2ハウジング18、63内に酸素が供給されることにより、不完全燃焼を防止することが可能となる。これにより、耐火コネクタ1、2の燃焼時において第2ハウジング18、63等の有機物を迅速に燃焼させ、導電性炭化物の生成を抑え、絶縁耐力の低下を防止することが可能となる。
その結果、耐火コネクタ1、2の絶縁性能を、より一層確保することが可能となる。
【0085】
また、本実施形態によれば、ケーブル3、4のシース10先端部外周に取り付けられた熱収縮チューブ34が、第2ハウジング18、63のケーブル導出口32の基端に連続する内壁に設けられた引っ掛け部33に引っ掛かることから、ケーブル3、4がケーブル3、4導出方向へ引っ張られた場合であっても、接続部14、56の引張強度が高まり、接続部14、56への負荷が軽減される。その結果、ケーブル3、4が導出方向へ引っ張られることに起因する導通不良の発生を防止し、耐火コネクタ1、2の導電性能が確保される。
【0086】
また、本実施形態によれば、第2インサート部材36、70における延在部39、76は、第2インサート部材36、70の軸方向における延在距離が、導体7が露出した状態において導体7と第1ハウジング17、61との間を絶縁可能な距離となるように形成されることから、耐火コネクタ1、2の燃焼時に絶縁体8が消失した場合であっても絶縁耐力の低下を防止し、電気短絡を防止することが可能となる。その結果、耐火コネクタ1、2の絶縁性能が、より一層確保される。
【0087】
また、本実施形態によれば、第1インサート部材35、69に設けられた端子固定凹部41、74に端子5、50のフランジ部13、54が嵌合され、フランジ部13、54に第2インサート部材36、70の一端面38、72が当接することにより、端子5、50が固定されることから、端子5、50が第1インサート部材35、69と第2インサート部材36、70とで挟まれるように配置されることから、耐火コネクタ1、2の絶縁性能が、より一層確保される。
【0088】
つぎに、本実施形態により得られる効果について説明する。
本実施形態によれば、ケーブル3、4同士の導通作業を簡易に行うことができるとともに安定した性能を確保することを可能としつつ、従来に比べ簡易な構成にて絶縁性能及び耐火性能を得ることが可能な耐火コネクタ1、2を提供することができるという効果を奏する。
【0089】
なお、上記実施形態に記載した構成に関しては、本発明の範囲内において適宜の変更が可能であり、上記実施形態の構成には限定されない。
【0090】
上記実施形態では、嵌合保持部材62のネジ部79を、第1耐火コネクタ1における第1ハウジングのネジ部20に螺合させることにより、第1耐火コネクタ1と第2耐火コネクタ2との嵌合状態を保持する構造を採用しているが、これに限らず、例えば、バヨネット構造やレバー式のコネクタ嵌合構造を採用してもよいものとする。
【符号の説明】
【0091】
1…第1耐火コネクタ
2…第2耐火コネクタ
3…第1ケーブル
4…第2ケーブル
5…第1端子
6…第1コネクタ本体
7…導体
8…絶縁体
9…絶縁心線
10…シース
11、52…導体接続部
12…電気接触部
13、54…フランジ部
14、56…接続部
15、59…ハウジング
16、60…インサート部材
17、61…第1ハウジング
18、63…第2ハウジング
19、64…キャップ部
20、21、26、28、45、66、79…ネジ部
22、67…係合爪部
23、25…内周面
24…規制突起
27、43、48、77…外周面
29…薄肉部
30、80…隙間
31、68…防水パッキン
32…ケーブル導出口
33…引っ掛け部
34…熱収縮チューブ
35、69…第1インサート部材
36、70…第2インサート部材
37、38、71、72…端面
39、76…延在部
40、73…端子挿通孔
41、74…端子固定凹部
42、75…絶縁心線挿通孔
44、78…係合凹部
46…弾性シール部材
47…介在リング
50…第2端子
51…第2コネクタ本体
53…バネ片
55…開き規制部材
57…切り欠き部
58…嵌合溝
62…嵌合保持部材
65…規制溝
100…嵌合構造