(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016990
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】冷凍食品の乳化剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 29/10 20160101AFI20240201BHJP
【FI】
A23L29/10
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119323
(22)【出願日】2022-07-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-26
(71)【出願人】
【識別番号】507124209
【氏名又は名称】株式会社カネカタカハシ
(74)【代理人】
【識別番号】100104330
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 誠二
(72)【発明者】
【氏名】新谷 賢司
【テーマコード(参考)】
4B035
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LE16
4B035LG12
4B035LG32
4B035LG33
4B035LG38
4B035LG42
4B035LK13
4B035LP03
4B035LP59
(57)【要約】
【課題】解凍時に水分と油脂分の分離を回避することができる乳化剤の製造方法を提供する。
【解決手段】ホタテ、エビ、サケ、タコ、イカ、昆布、コーン、大豆、小豆、ゴマ、ニンニク、タマネギ、しょうが及び落花生から構成される素材群から選定した少なくとも1種類の素材と菜種油からなる原材料を容器に入れる段階と、容器をラップで密閉して蒸す段階と、蒸された原材料の粗熱をとる段階と、粗熱をとった原材料を粗砕きする段階と、粗砕きされた原材料を微細粒子化する段階とを含むことを特徴とする製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍食品の乳化剤の製造方法であって、
ホタテ、エビ、サケ、タコ、イカ、昆布、コーン、大豆、小豆、ゴマ、ニンニク、タマネギ、しょうが及び落花生から構成される素材群から選定した少なくとも1種類の素材と菜種油からなる原材料を容器に入れる段階と、
前記容器をラップで密閉して蒸す段階と、
蒸された前記原材料の粗熱をとる段階と、
粗熱をとった前記原材料を粗砕きする段階と、
粗砕きされた前記原材料を微細粒子化する段階と、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記素材と前記菜種油の割合が、60~70重量%対40~30重量%であることを特徴とする請求項1に記載された製造方法。
【請求項3】
前記粗熱をとる段階において、原材料を20℃以下にすることを特徴とする請求項1又は2に記載された製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、冷凍食品の乳化剤の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、牛乳を含む冷凍食品の解凍時に水分と油脂分の分離を回避することができる乳化剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
牛乳の消費拡大を目的として、牛乳を用いた種々の商品が開発されている。本発明者は、スープに牛乳を用いた牛乳ラーメンを開発し、好評を博している。この牛乳ラーメンを家庭でも食することができるように、本発明者は、牛乳ラーメンを冷凍食品化する試みを進めてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、冷凍食品化した牛乳ラーメンを解凍する際に、水分と油脂分が分離するため、満足のいく品質を得ることが難しいという課題に直面した。本発明者は、このような課題を解決すべく、鋭意研究を進めた結果、解凍時に水分と油脂分の分離を回避することができる乳化剤の製造方法の開発に成功した。
【0004】
したがって、本発明は、解凍時に水分と油脂分の分離を回避することができる乳化剤の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に記載された冷凍食品の乳化剤の製造方法は、ホタテ、エビ、サケ、タコ、イカ、昆布、コーン、大豆、小豆、ゴマ、ニンニク、タマネギ、しょうが及び落花生から構成される素材群から選定した少なくとも1種類の素材と菜種油からなる原材料を容器に入れる段階と、前記容器をラップで密閉して蒸す段階と、蒸された前記原材料の粗熱をとる段階と、粗熱をとった前記原材料を粗砕きする段階と、粗砕きされた前記原材料を微細粒子化する段階とを含むことを特徴とするものである。
【0006】
本願請求項2に記載された冷凍食品の乳化剤の製造方法は、前記請求項1の製造方法において、前記素材と前記菜種油の割合が、60~70重量%対40~30重量%であることを特徴とするものである。
【0007】
本願請求項3に記載された冷凍食品の乳化剤の製造方法は、前記請求項1又は2の製造方法において、前記粗熱をとる段階において、原材料を20℃以下にすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、解凍時に水分と油脂分の分離を回避することができる冷凍食品の乳化剤を得ることができる。また、本発明の製造方法によって得られる乳化剤は、旨味を増強する効果も得られる。さらに、本発明の製造方法によって得られる乳化剤は、香味油としても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の製造方法を模式的に示した一連の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係る冷凍食品の乳化剤の製造方法について詳細に説明する。
図1は、本発明の製造方法を模式的に示した一連の図である。
【0011】
乳化剤の材料となる素材は、海産物(ホタテ、エビ、サケ、タコ、イカ、昆布など)と農作物(コーン、大豆、小豆、ゴマ、ニンニク、タマネギ、しょうが、落花生など)に大別される。これらの素材に共通する性質として、加熱した際に、香りが増加し、色が濃くなる点があげられる。
【0012】
まず、上記素材群から選定した少なくとも1種類の素材と菜種油(以下、素材と菜種油を混合したものを「原材料」という)を容器に入れる(
図1(a)参照)。素材と菜種油の割合は、60~70重量%対40~30重量%とするのが好ましいが、67重量%対33重量%とするのが最も好ましい。
【0013】
原材料を入れた容器をラップで密閉し、蒸し器で蒸す(
図1(b)参照)。容器をラップで密閉するのは、蒸し器内で発生する水分が容器内に混入するのを防止し、かつ、素材から発生する香りや旨味が容器外に放出されるのを阻止するためである。蒸す時間は2時間~3時間(好ましくは、2時間半程度)、蒸す温度は、100℃である。
【0014】
次いで、急速冷凍機を用いて、蒸された原材料の粗熱をとる(
図1(c)参照)。粗熱をとることにより、原材料を20℃以下にするのが好ましい。
【0015】
次いで、粗熱をとった原材料を粗砕きする(
図1(d)参照)。粗砕きには、公知の粉砕機(例えば、ロボクープ)を使用してよい。粗砕きするのは、後述する微細粒子化を容易にするためである。
【0016】
最後に、粗砕きされた原材料を微細粒子化して(
図1(e)参照)、乳化剤が完成する。微細粒子化には、公知の高速すりこぎ機(例えば、マスコロイダー)を使用してよい。微細粒子化するのは、食品(牛乳ラーメンのスープ)に加える際に、スープに混ぜ易くするためである。
【0017】
上記方法によって製造された乳化剤をスープに混入して冷凍食品化された牛乳ラーメンは、解凍時に水分と油脂分の分離が回避されるが、これは、菜種油に含まれる菜種レシチンの乳化作用によるものと推測される。水分と油脂分の分離が回避されるので、冷凍食品化しない牛乳ラーメンと遜色ない味を提供することができる。
【0018】
また、上記方法によって製造された乳化剤をスープに混入することにより、スープの旨味が増強されるという副次的な効果も得られることが分かった。さらに、この乳化剤は、良好な香りが強いので、香味油としても使用することができる。
【0019】
本発明の製造方法によって製造された乳化剤は、牛乳ラーメンの冷凍食品化の他、クリームシチューやホワイトソースなどの牛乳を用いた食品の冷凍化に使用することができる。
【0020】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。