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  • 特開-定着装置及び画像形成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169916
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086778
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】北林 佑太
(72)【発明者】
【氏名】徳永 良平
(72)【発明者】
【氏名】川崎 広貴
(72)【発明者】
【氏名】藤井 駿策
(72)【発明者】
【氏名】菊川 里奈
(72)【発明者】
【氏名】近藤 晃洋
(72)【発明者】
【氏名】政岡 宥人
(72)【発明者】
【氏名】綿谷 友宏
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA39
2H033BA25
2H033BA26
2H033BB04
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB29
2H033BB30
2H033BE00
2H033BE03
(57)【要約】
【課題】定着ベルトとヒーターの間に潤滑剤を安定して供給可能であると共に用紙の加熱ムラを解消できる定着装置を提供するこ。
【解決手段】定着装置11は、回転可能な無端状の定着ベルト21と、前記定着ベルト21を加熱するヒーター23と、潤滑剤を保持する溝43を有し、前記ヒーター23を、表側の面が前記定着ベルト21の内周面に前記潤滑剤を介して接触するように保持する保持部材25と、前記定着ベルト21を挟んで前記ヒーター23に押圧されて、前記定着ベルト21との間に、トナー像が転写された用紙を加熱及び加圧する加圧領域Nを形成する加圧部材27と、前記加圧領域Nに用紙を案内するガイド29と、を備え、前記ガイド29は、用紙を、前記溝43よりも前記定着ベルト21の回転方向の下流側で前記定着ベルト21に接触させて前記加圧領域Nに案内する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な無端状の定着ベルトと、
前記定着ベルトを加熱するヒーターと、
潤滑剤を保持する溝を有し、前記ヒーターを、表側の面が前記定着ベルトの内周面に前記潤滑剤を介して接触するように保持する保持部材と、
前記定着ベルトを挟んで前記ヒーターに押圧されて、前記定着ベルトとの間に、トナー像が転写された用紙を加熱及び加圧する加圧領域を形成する加圧部材と、
前記加圧領域に用紙を案内するガイドと、を備え、
前記ガイドは、用紙を、前記溝よりも前記定着ベルトの回転方向の下流側で前記定着ベルトに接触させて前記加圧領域に案内することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記ガイドの用紙案内面を延長した線と前記定着ベルトとの交点が、前記溝よりも前記定着ベルトの回転方向の下流側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記ガイドは、用紙の重量が重いほど、前記ガイドの用紙案内面を延長した線と前記定着ベルトとの交点が前記溝よりも前記定着ベルトの回転方向の下流側に移動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
用紙にトナー像を形成する画像形成部と、
前記トナー像を前記用紙に定着する請求項1に記載の定着装置と、を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙にトナー像を定着する定着装置及びこの定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
摺動方式の定着装置は、ヒーターによって加熱される無端状の定着ベルトと、定着ベルトに接触して加圧領域を形成する加圧部材と、を備え、定着部材と加圧部材とが回転することで、加圧領域に搬送される用紙にトナー像を定着する。このような定着装置では、定着ベルトとヒーターとの間にグリス等の潤滑剤が供給されて、定着ベルトがヒーターに対して安定して摺動できるようになっている。潤滑剤が不足すると、トルクが上昇して用紙の通紙不良や定着装置の破損等が発生する。
【0003】
しかしながら、定着ベルトとヒーターとの間に保持できる潤滑剤の量は限られる。大量の潤滑剤を保持した場合には、潤滑剤による熱抵抗によってヒーターから定着ベルトへの熱伝達が安定でなくなる。このため、長期間にわたって、潤滑剤を一定量ずつ安定に供給できる構造が必要になる。
【0004】
そこで、特許文献1の定着装置には、ヒーターを保持する保持部材に潤滑剤を保持する溝が形成されている。溝は、定着ベルトの幅方向に沿って複数個形成されている。溝に潤滑剤を保持させて徐々に供給することで、定着ベルトのヒーターに対する摺動性を長期間にわたって維持することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-197701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記特許文献1に記載された定着装置では、溝に保持された潤滑剤と、溝以外の保持部材とは物理特性が異なっているので、定着ベルトが潤滑剤に接触している領域と保持部材に接触している領域とでは、定着ベルトの温度や圧力に差が生じる。
【0007】
一方で、用紙はガイドによって加圧領域に案内される。この際、用紙を加熱する効果を高めるために、ガイドは、用紙を定着ベルトに接触させてから加圧領域に案内するように構成されている。この際、保持部材の溝が形成された部分で定着ベルトに用紙が接触すると、該部分は前述のように定着ベルトの温度や圧力に差が生じる部分であるので、用紙に加熱ムラが起こり、画像不良が発生する。
【0008】
本発明は上記事情を考慮し、定着ベルトとヒーターの間に潤滑剤を安定して供給可能であると共に用紙の加熱ムラを解消できる定着装置及びこの定着装置を備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の定着装置は、回転可能な無端状の定着ベルトと、前記定着ベルトを加熱するヒーターと、潤滑剤を保持する溝を有し、前記ヒーターを、表側の面が前記定着ベルトの内周面に前記潤滑剤を介して接触するように保持する保持部材と、
前記定着ベルトを挟んで前記ヒーターに押圧されて、前記定着ベルトとの間に、トナー像が転写された用紙を加熱及び加圧する加圧領域を形成する加圧部材と、前記加圧領域に用紙を案内するガイドと、を備え、前記ガイドは、用紙を、前記溝よりも前記定着ベルトの回転方向の下流側で前記定着ベルトに接触させて前記加圧領域に案内することを特徴とする。
【0010】
本発明において、前記ガイドの用紙案内面を延長した線と前記定着ベルトとの交点が、前記溝よりも前記定着ベルトの回転方向の下流側に位置していることを特徴としてもよい。
【0011】
本発明において、前記ガイドは、用紙の重量が重いほど、前記ガイドの用紙案内面を延長した線と前記定着ベルトとの交点が前記溝よりも前記定着ベルトの回転方向の下流側に移動するように構成されていることを特徴としてもよい。
【0012】
本発明の画像形成装置は、用紙にトナー像を形成する画像形成部と、前記トナー像を前記用紙に定着する上記定着装置と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ガイドで案内された用紙が、溝が形成されていない部分に対向する位置で、定着ベルトに接触する。溝が形成されていない部分は、潤滑剤が全面に伝わって、温度や圧力がほぼ均一な状態であるので、用紙の加熱ムラを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の内部構成を模式的に示す正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る定着装置の内部構成を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る定着装置の保持部材を示す側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る定着装置の他の例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の画像形成装置及び定着装置について説明する。
【0016】
まず、図1を用いて、画像形成装置1の全体の構成について説明する。図1は画像形成装置1の内部構成を模式的に示す正面図である。以下、図1における紙面手前側を画像形成装置1の正面側(前側)とする。
【0017】
画像形成装置1の装置本体3には、用紙Sが収容される給紙カセット5と、給紙カセット5から用紙Sを送り出す給紙装置7と、電子写真方式によって用紙Sにトナー像を形成する画像形成部9と、トナー像を用紙Sに定着する定着装置11と、用紙Sを排紙する排紙装置13と、排紙された用紙Sが積載される排紙トレイ15と、が備えられている。さらに、装置本体3には、給紙装置7から、画像形成部9と定着装置11とを通って排紙装置13に向かう用紙Sの搬送経路17が形成されている。
【0018】
次に、定着装置11について、図2を参照して説明する。図2は定着装置11の断面図である。
【0019】
図2に示されるように、定着装置11は、定着ベルト21と、定着ベルト21を加熱するヒーター23と、ヒーター23を保持する保持部材25と、定着ベルト21との間に加圧領域Nを形成する加圧部材としての加圧ローラー27と、加圧領域Nに用紙Sを案内するガイド29と、を備えている。
【0020】
定着ベルト21は無端状のベルトであり、所定の内径と用紙Sの幅よりも長い幅とを有している。定着ベルト21は、可撓性を有する材料で作成され、基材層と、基材層の外周面に設けられる弾性層と、弾性層の外周面に設けられる離型層と、を有している。基材層は、SUSやNi等の金属で作成される。弾性層は、シリコンゴム等で作成される。離型層は、PFAチューブ等で作成される。基材層の内周面に摺動層が形成される場合もある。摺動層は、ポリイミドアミドやPTFE等で作成される。
【0021】
定着ベルト21の両端部は、端部ホルダー(図示省略)に支持されている。両端部ホルダーは、定着ハウジング(図示省略)に回転可能に支持されている。また、定着ベルト21の中空部には、ステー31が貫通している。ステー31の両端部は、定着ハウジングに支持されている。
【0022】
ヒーター23は平板状の部材であり、定着ベルト21の幅(周方向Xと交差する幅方向Yに沿った長さ)と同等の幅と、所定の長さ及び厚さとを有している。ヒーター23は、ステンレスやセラミック製の基板と、ガラス製の電気絶縁層と、電極を有する抵抗発熱体層と、保護層とが、裏側から表側に順番に積層された積層構造を有している。保護層の表面は平坦に形成されて、定着ベルト21の内周面21aに接触する摺動面23aとなっている。電極を通して抵抗発熱体層に通電することで抵抗発熱体層が発熱する。
【0023】
次に、保持部材25について、図3も参照して説明する。図3は保持部材25と加圧ローラー27とを示す側面図である。保持部材25は、略半円筒状の部材であり、定着ベルト21の幅と同等の幅と、周方向Xに沿った所定の長さとを有している。保持部材25は、例えば、液晶ポリマー等の耐熱性の樹脂で形成されている。
【0024】
図2に示されるように、保持部材25の外周面25aは、定着ベルト21の内周面21aに沿うように湾曲している。保持部材25の頂部25bの外周面は、平坦に形成されている。この頂部25bには、ヒーター23を収容するための凹部41が幅方向Yに沿って形成されている。凹部41は、周方向Xに沿った長さが長い外側凹部41aと、外側凹部41aよりも周方向Xに沿った長さが短い内側凹部41bと、を有している。内側凹部41bの周方向Xの両側には、保持部材25の頂部25bの外周面と平行な座面41cが形成されている。
【0025】
ヒーター23は、外側凹部41aに収容されている。ヒーター23の表側の面は、保持部材25の頂部25bの外周面と面一であり、ヒーター23の裏側の面は凹部41の座面41cに接触している。
【0026】
さらに、図3にも示されるように、保持部材25の外周面25aには、凹部41の周方向Xの両側に、潤滑剤(例えば、グリス)が貯留される複数個の溝43が形成されている。溝43は、周方向Xに沿った所定の長さを有し、幅方向Yに沿って所定の間隔を開けて形成されている。複数個の溝43は、周方向Xにおいて凹部41から所定の間隔を開けて形成されている。すなわち、周方向Xにおいて溝43が形成された部分(溝形成部とする)と凹部41との間に、溝43の形成されていない部分(溝非形成部45とする)が存在する。
【0027】
再度図2を参照して、加圧ローラー27は、芯金と、芯金の外周面に設けられる弾性層と、弾性層の外周面に設けられる離型層と、を有している。弾性層は、シリコンゴム等で形成される。離型層は、PFAチューブ等で形成される。
【0028】
加圧ローラー27は、定着ベルト21の下方からヒーター23に押し付けられるように支持されている。これにより、定着ベルト21と加圧ローラー27との間に加圧領域Nが形成される。加圧ローラー27はモーター(図示省略)によって駆動されて図2の反時計回り方向に回転する。加圧ローラー27がモーターで駆動されて回転すると、定着ベルト21は、加圧ローラー27とは反対の図2の時計回り方向に従動回転する。これにより、搬送経路17に沿って搬送された用紙Sが加圧領域Nを通過する。
【0029】
ガイド29は、加圧領域Nよりも用紙Sの搬送方向の上流側に配置されて、搬送経路17に沿って搬送された用紙Sを加圧領域Nに案内する。図2に示されるように、ガイド29の用紙案内面(上面)を延長した線Lと定着ベルト21との交点Pは、保持部材25の溝非形成部45に対向する。
【0030】
上記構成を有する定着装置11の定着動作について説明する。まず、加圧ローラー27がモーターによって駆動されて回転し、定着ベルト21は、加圧ローラー27に従動して、加圧ローラー27の回転方向とは反対の方向(図2の時計回り方向)に回転する。同時に、ヒーター23が駆動されて定着ベルト21を加熱する。定着ベルト21は、所定の制御温度(例えば、160℃)となるまで加熱される。
【0031】
さらに、保持部材25の溝43に貯留された潤滑剤が、溝43から溝非形成部45の全面を伝って、定着ベルト21の内周面21aとヒーター23の摺動面23aとの間に供給される。この潤滑剤によって、定着ベルト21がヒーター23に対して安定して摺動できるようになっている。
【0032】
このように定着ベルト21が加熱された後、トナー像が転写された用紙Sが、ガイド29で案内されて加圧領域Nに搬送される。この際、前述のように、用紙の先端は、保持部材25の溝非形成部45に対向する位置で定着ベルト21に接触した後、定着ベルト21の回転に伴って加圧領域Nへ移動する。溝非形成部45は、前述のように、全面に潤滑剤がほぼ均一に伝わって、定着ベルト21の温度や圧力がほぼ均一な状態であるので、溝非形成部45に用紙が接触しても、用紙の加熱ムラが生じない。
【0033】
用紙Sは加圧領域Nを通過時に、定着ベルト21によって加熱されると共に加圧ローラー27と定着ベルト21とによって加圧されて、トナー像が用紙Sに定着される。トナー像が定着された用紙Sは、加圧領域Nから搬送経路17に沿って搬送される。
【0034】
上記説明したように、本発明の定着装置11によれば、ガイドで案内された用紙が、溝非形成部45に対向する位置で、定着ベルト21に接触する。溝非形成部45は、潤滑剤が全面に伝わっているので、定着ベルト21の温度や圧力は均一である。このような溝非形成部45に用紙が接触するので、用紙の加熱ムラを抑制できる。
【0035】
次に、図4を参照して、本発明の他の例に係る定着装置11について説明する。図4は定着装置11を示す側面図である。
【0036】
この例では、ガイド29が、2個のコイルバネ51によって姿勢(傾斜角度)を維持したまま上下方向に移動可能に支持されている。ガイド29と定着ベルト21との間には隙間が空いているので、用紙の重量が軽い場合、ガイド29から定着ベルト21に向かって案内された用紙の先端部は下方に撓みやすい。図2に示されるように、ガイド29の用紙案内面(上面)を延長した線Lと定着ベルト21との交点Pは、保持部材25の溝非形成部45に対向している。このため、用紙の先端部が下方に撓んでも、用紙の先端は、溝非形成部45に対向する位置で、定着ベルト21に接触することができる。
【0037】
しかし、厚紙等用紙の重量が重い場合は、ガイド29から定着ベルト21に向かって案内された用紙の先端部は下方に撓みにくい。このため、重量が軽い用紙に対応させてガイド29を配置していた場合、重量の重い用紙の先端が、溝非形成部45よりも上流側の溝形成部で、定着ベルト21に接触する場合がある。
【0038】
そこで、ガイド29を上下方向に移動可能に支持することにより、重量の重い用紙の場合は、ガイド29か下降する(図4の二点鎖線参照)ので、重量の重い用紙も、溝非形成部45に確実に対向する位置で定着ベルト21に接触させることができる。
【0039】
なお、本実施形態のように保持部材25に溝43を形成する場合、従来のように、溝43を凹部41の近傍まで形成する場合に比べて、溝43に貯留される潤滑剤の量が少なくなる。このため、従来と比較して、溝43の数を増やしたり溝43の深さを深くしたりして、貯留可能な潤滑剤の量を増やしてもよい。あるいは、少量でも長持ちする潤滑剤を選択してもよい。また、加圧領域Nよりも下流側では、溝非形成部45を設ける必要はない。
【0040】
さらに、上記した本発明の実施形態の説明は、本発明の好適な実施の形態を説明しているため、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0041】
1 画像形成装置
9 画像形成部
11 定着装置
21 定着ベルト
23 ヒーター
25 保持部材
27 加圧ローラー(加圧部材)
29 ガイド
43 溝
図1
図2
図3
図4