(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169927
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】内燃機関用のスパークプラグ
(51)【国際特許分類】
H01T 13/39 20060101AFI20241129BHJP
H01T 13/20 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H01T13/39
H01T13/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086795
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 健一朗
(72)【発明者】
【氏名】阿部 祐也
(72)【発明者】
【氏名】船戸 一平
【テーマコード(参考)】
5G059
【Fターム(参考)】
5G059AA04
5G059CC03
5G059EE04
5G059EE06
5G059EE23
5G059JJ13
(57)【要約】
【課題】接地電極とハウジングとの接合強度を確保することができるスパークプラグを提供すること。
【解決手段】内燃機関用のスパークプラグ1は、筒状の絶縁碍子3と、中心電極4と、筒状のハウジング2と、接地電極6と、を有する。接地電極6は、中心電極4との間に放電ギャップGを形成すると共に、ハウジング2の先端部に接合されている。接地電極6は、白金を主成分とする主要部61を有する。接地電極6は、主要部61がハウジング2に直接接合されることにより、ハウジング2に固定されている。また、スパークプラグ1は、白金を実質的に含有しない金属被覆層5を有する。金属被覆層5は、少なくとも、主要部61の表面と、主要部61とハウジング2との接合部11の表面と、を覆う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側(Z1)に露出した中心電極(4)と、
前記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
前記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成すると共に、前記ハウジングの先端部に接合された接地電極(6)と、を有し、
前記接地電極は、白金を主成分とする主要部(61)を有し、
前記接地電極は、前記主要部が前記ハウジングに直接接合されることにより、前記ハウジングに固定されており、
少なくとも、前記主要部の表面と、前記主要部と前記ハウジングとの接合部(11)の表面と、を覆うと共に、白金を実質的に含有しない金属被覆層(5)を有する、内燃機関用のスパークプラグ(1)。
【請求項2】
前記金属被覆層は、ニッケル又はニッケルを主成分とする合金からなる、請求項1に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項3】
前記金属被覆層は、前記主要部の表面全体と、前記接合部の表面全体を覆っている、請求項1又は2に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項4】
前記金属被覆層は、さらに前記ハウジングの表面を覆っており、前記ハウジングの表面を覆う前記金属被覆層と、前記主要部の表面を覆う前記金属被覆層と、は、互いに同一組成であると共に、互いに連続して形成されている、請求項1又は2に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項5】
前記接地電極の基端側面(62)は、プラグ中心軸(C)に近づくほど前記先端側へ向かうように形成されており、前記基端側面は、前記中心電極との間に前記放電ギャップを形成すると共に、その全体が平坦面となっている、請求項1又は2に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項6】
前記基端側面は、前記中心電極の先端面(41)に対し傾斜するように形成されており、プラグ軸方向(Z)から見たとき、前記基端側面の一部と前記中心電極の先端面の一部とは互いに重なっており、前記プラグ中心軸は、前記接地電極を通過しない、請求項5に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項7】
2つ以上の前記接地電極を有する、請求項1又は2に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項8】
前記中心電極の先端部には、イリジウムを主成分とすると共に、白金を実質的に含有しないチップ(42)が設けられている、請求項1又は2に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用のスパークプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、ハウジングの先端部に溶接されると共に、白金を主成分とする主要部を有する接地電極、を備えたスパークプラグが知られている。特許文献1に記載のスパークプラグにおいて、接地電極の主要部は、ニッケル合金層によって覆われている。これにより、高温下におけるスパッタリング原子の拡散などを要因とする、いわゆる発汗現象の発生を抑制し、スパークプラグの長寿命化を図ろうとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のスパークプラグは、ハウジングと接地電極との接合部にニッケル合金層が介在している。それゆえ、ハウジングと接地電極との接合強度を充分に確保できないおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、接地電極とハウジングとの接合強度を確保することができるスパークプラグを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側(Z1)に露出した中心電極(4)と、
前記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
前記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成すると共に、前記ハウジングの先端部に接合された接地電極(6)と、を有し、
前記接地電極は、白金を主成分とする主要部(61)を有し、
前記接地電極は、前記主要部が前記ハウジングに直接接合されることにより、前記ハウジングに固定されており、
少なくとも、前記主要部の表面と、前記主要部と前記ハウジングとの接合部(11)の表面と、を覆うと共に、白金を実質的に含有しない金属被覆層(5)を有する、内燃機関用のスパークプラグ(1)にある。
【発明の効果】
【0007】
上記スパークプラグにおいて、白金を主成分とする接地電極の主要部は、ハウジングに直接接合されている。それゆえ、接地電極をハウジングに強固に固定することができる。その結果、接地電極とハウジングとの接合強度を確保することができる。
【0008】
以上のごとく、上記態様によれば、接地電極とハウジングとの接合強度を確保することができるスパークプラグを提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1における、スパークプラグの半断面図。
【
図2】実施形態1における、スパークプラグの先端部付近の半断面図。
【
図3】実施形態1における、スパークプラグを先端側から見た図であって、
図2のIII矢視図。
【
図5】実施形態1における、接地電極からプラグ中心軸までの最短距離等を示す半断面図。
【
図6】実施形態1における、ハウジングに主要部を当接させる様子を示す半断面図。
【
図7】実施形態1における、主要部を接合したハウジングの半断面図。
【
図8】実施形態1における、バレルメッキ工程の実施によって金属被覆層が形成されたハウジングの半断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
内燃機関用のスパークプラグに係る実施形態について、
図1~
図8を参照して説明する。
本形態の内燃機関用のスパークプラグ1は、
図1~
図3に示すごとく、筒状の絶縁碍子3と、中心電極4と、筒状のハウジング2と、接地電極6と、を有する。中心電極4は、絶縁碍子3の内周側に保持されると共に絶縁碍子3から先端側Z1に露出している。ハウジング2は、絶縁碍子3を内周側に保持する。接地電極6は、中心電極4との間に放電ギャップGを形成すると共に、ハウジング2の先端部に接合されている。
【0011】
接地電極6は、
図2に示すごとく、白金を主成分とする主要部61を有する。接地電極6は、主要部61がハウジング2に直接接合されることにより、ハウジング2に固定されている。
【0012】
また、スパークプラグ1は、白金を実質的に含有しない金属被覆層5を有する。金属被覆層5は、少なくとも、主要部61の表面と、主要部61とハウジング2との接合部11の表面と、を覆う。なお、「白金を実質的に含有しない」とは、白金を不可避的な不純物として含有する場合を含む。
【0013】
本形態のスパークプラグ1は、例えば、自動車等の内燃機関における着火手段として用いることができる。本形態のスパークプラグ1は、水素ガスを燃料とする内燃機関(図示略)に設けられる。ハウジング2のネジ部21を、シリンダヘッド(図示略)のプラグホールの雌ネジ部に螺合して、スパークプラグ1が内燃機関に取り付けられる。そして、スパークプラグ1の軸方向Zの一端が、内燃機関の主燃焼室に配置される。スパークプラグ1の軸方向Zにおいて、主燃焼室に露出する側を先端側Z1、その反対側を基端側Z2というものとする。また、スパークプラグ1の軸方向Zを、適宜、プラグ軸方向Zともいう。なお、プラグ中心軸Cは、スパークプラグ1の中心軸Cを意味するものとする。また、プラグ径方向とは、プラグ中心軸Cに直交する平面上において、プラグ中心軸Cを中心とする円の半径方向を意味する。また、プラグ周方向は、プラグ中心軸Cを中心とする円周に沿った方向である。また、プラグ中心軸Cは、本形態において、中心電極4及びハウジング2の中心軸でもある。
【0014】
中心電極4は、プラグ軸方向Zに長尺な形状を有する。中心電極4は、絶縁碍子3の内周側に、挿通保持されている。
図2に示すごとく、中心電極4の先端面41は、絶縁碍子3の先端及びハウジング2の先端よりも先端側Z1に位置している。
【0015】
本形態において、中心電極4の先端部には、イリジウムを主成分とすると共に、白金を実質的に含有しないチップ42が設けられている。チップ42は、先端面41を有すると共に、接地電極6との間に放電ギャップGを形成している。チップ42に形成された先端面41は、プラグ軸方向Zに直交するように形成されていると共に、平坦面である。また、中心電極4におけるチップ42よりも基端側Z2の部分は、例えば、ニッケルを主成分とする金属材料からなるものとすることができる。本形態においては、中心電極4におけるチップ42よりも基端側Z2の部分も、白金を実質的に含有しない。
【0016】
図1に示すごとく、絶縁碍子3の内側における中心電極4の基端側Z2には、第一ガラスシール層12、抵抗体13、第二ガラスシール層14、及び端子金具15が配されている。第一ガラスシール層12及び第二ガラスシール層14は、例えば、銅粉を含有するガラスからなるものとすることができる。抵抗体13は、例えば、ガラス材料と骨材とを含む基材に、カーボン材料等の導電性材料が分散した集合体からなるものとすることができる。端子金具15は、その基端側Z2の端部が絶縁碍子3から露出している。スパークプラグ1は、端子金具15において点火コイル(図示略)に電気的に接続される。端子金具15は、例えば、鉄合金からなるものとすることができる。
【0017】
絶縁碍子3は、ハウジング2に対してプラグ軸方向Zに係止されている。絶縁碍子3とハウジング2との係止部には、
図2に示すごとく、絶縁碍子3とハウジング2との間のシール性を確保する金属製のパッキン16が設けられている。本形態において、パッキン16は、白金を実質的に含有しない。また、絶縁碍子3は、アルミナ等のセラミックからなる。
【0018】
本形態において、ハウジング2の先端部は、プラグ径方向の内側へ向かって突出した内側突出部25を有する。内側突出部25は、プラグ中心軸Cへ向かって突出していると共に、環状に形成されている。絶縁碍子3は、パッキン16を介して、内側突出部25に対しプラグ軸方向Zに係止されている。ハウジング2は、例えば、低炭素鋼、ステンレス鋼等からなるものとすることができる。本形態において、ハウジング2は、低炭素鋼からなる。
【0019】
図4、
図6に示すごとく、ハウジング2の先端部には、凹部22が形成されている。凹部22は、ハウジング2の先端側面の一部が、基端側Z2に後退することにより形成されている。凹部22は、先端側Z1に開口している。接地電極6の主要部61の一部は、凹部22の内側に配置されると共に、凹部22を形成する凹部形成面221に固定されている。凹部形成面221は、プラグ周方向に互いに対向する2つの周方向対向面222と、主要部61とプラグ軸方向Zに対向する1つの軸方向対向面223とを有する。本形態において、主要部61は、2つの周方向対向面222と、軸方向対向面223と、のそれぞれに接合されている。
【0020】
接地電極6は、
図2、
図5に示すごとく、プラグ軸方向Zに対して傾斜するように設けられている。つまり、接地電極6の中心軸は、プラグ軸方向Zに対して傾斜している。また、接地電極6は、屈曲することなく、プラグ中心軸Cに向かって突出している。接地電極6は、プラグ中心軸Cに近づくほど先端側Z1へ向かうように形成されている。
【0021】
接地電極6の基端側面62は、プラグ中心軸Cに近づくほど先端側Z1へ向かうように形成されている。基端側面62は、中心電極4との間に放電ギャップGを形成すると共に、その全体が平坦面となっている。
【0022】
図2、
図5に示すごとく、プラグ中心軸Cを含むと共に、接地電極6の突出方向に沿った断面において、基端側面62は、直線状に形成されていると共に、内側突出部25の内周面24に対し傾斜している。
図5に示すごとく、プラグ中心軸Cを含むと共に、接地電極6の突出方向に沿った断面において、基端側面62と、内側突出部25の内周面24とのなす角度θ1は、例えば、110°以上とすることができる。
【0023】
また、基端側面62は、中心電極4の先端面41に対し傾斜するように形成されている。
図3に示すごとく、プラグ軸方向Zから見たとき、基端側面62の一部と中心電極4の先端面41の一部とは互いに重なっている。また、プラグ中心軸Cは、接地電極6を通過しない。
図5に示すごとく、基端側面62と先端面41とのなす角度θ2は、例えば、20°以上とすることができる。
【0024】
本形態において、接地電極6からプラグ中心軸Cまでの最短距離Lは、中心電極4の先端部における外径の半径Rよりも小さい。つまり、最短距離Lは、チップ42の外径の半径Rよりも小さい。
【0025】
また、スパークプラグ1は、2つ以上の接地電極6を有する。本形態においては、2つの接地電極6を有すると共に、2つの放電ギャップGを有する。一方の接地電極6から他方の接地電極6までの最短距離は、距離Lの2倍の距離である。
図3に示すごとく、プラグ軸方向Zから見たとき、2つの接地電極6の突出側の端部は、プラグ径方向に互いに対向するように設けられている。また、プラグ軸方向Zから見たとき、2つの接地電極6は、一直線状に並んで配置されていると共に、一方の接地電極6が、他方の接地電極6に向かって突出している。プラグ軸方向Zから見たとき、2つの接地電極6は、プラグ中心軸Cを通る所定の直線を基準として、互いに線対称となるように、配置されている。
【0026】
また、
図2、
図5に示すごとく、接地電極6の主要部61は、例えば、白金を50質量%以上含有することができる。また、主要部61は、白金に加え、例えば、イリジウム、ロジウム等を含有することもできる。
【0027】
主要部61は、ハウジング2の先端部に溶接によって接合されている。主要部61とハウジング2との接合部11は、溶接によって形成された溶融部111を有する。本形態において、溶融部111は、白金を含有する。
【0028】
また、接地電極6は、主要部61の表面を覆う金属被覆層5を有する。金属被覆層5に、基端側面62が形成されている。放電ギャップGは、中心電極4のチップ42と、基端側面62を備える金属被覆層5との間に形成されている。
【0029】
本形態において、金属被覆層5は、主要部61の表面全体と、接合部11の表面全体を覆っている。つまり、金属被覆層5は、主要部61及び接合部11が露出しないように、主要部61及び接合部11を覆っている。
【0030】
金属被覆層5は、例えば、ニッケル、亜鉛等を主成分とする金属からなる。本形態において、金属被覆層5は、ニッケル又はニッケルを主成分とする合金からなる。金属被覆層5は、例えば、ニッケルを50質量%以上含有することができる。
【0031】
金属被覆層5は、さらにハウジング2の表面を覆っている。ハウジング2の表面を覆う金属被覆層5と、主要部61の表面を覆う金属被覆層5と、は、互いに同一組成であると共に、互いに連続して形成されている。つまり、接合部11の表面を覆う金属被覆層5と、ハウジング2の表面を覆う金属被覆層5と、主要部61の表面を覆う金属被覆層5と、は、互いに同一組成であると共に、互いに連続して形成されている。本形態において、金属被覆層5は、ハウジング2の表面全体を覆っている。
【0032】
また、接合部11の表面を覆う金属被覆層5の厚みと、ハウジング2の表面を覆う金属被覆層5の厚みと、主要部61の表面を覆う金属被覆層5の厚みとは、互いに同等となっている。金属被覆層5の厚みは、例えば、2~40μmとすることができる。
【0033】
次に、本形態のスパークプラグ1の製造方法について説明する。
まず、
図6に示すごとく、金属被覆層5を設ける前であって、中心電極4、絶縁碍子3等を組み付ける前のハウジング2に、主要部61を溶接する。具体的には、
図6の矢印Mに示すごとく、ハウジング2の凹部形成面221に、主要部61の基端側Z2の面を、プラグ軸方向Zに当接させる。そして、凹部形成面221に主要部61を当接させた状態にて抵抗溶接を行い、ハウジング2に主要部61を接合する。これにより、
図7に示すごとく、主要部61を接合したハウジング2を製造する。また、1つの主要部61をハウジング2に接合した後、もう1つの主要部61も、同様にハウジング2に接合する。また、抵抗溶接を行うことにより、主要部61とハウジング2との接合部11には、主要部61の一部及びハウジング2の一部が溶融固化した溶融部111が形成される。また、金属被覆層5を設ける前の接合部11においては、溶融部111の一部が露出している。
【0034】
次いで、バレルメッキ工程を行うことによって、主要部61、接合部11、ハウジング2のそれぞれの表面に金属被覆層5を形成する。バレルメッキ工程では、主要部61を接合したハウジング2を、ニッケルのメッキ液が入ったバレル(図示略)に入れて、バレルを回転させながら、主要部61、接合部11、ハウジング2のそれぞれの表面にニッケルのメッキを施す。これにより、
図8に示すごとく、主要部61、接合部11、ハウジング2のそれぞれの表面に金属被覆層5を形成する。なお、主要部61等の表面に金属被覆層5を形成する工程は、このバレルメッキ工程以外にも、公知の方法を採用することができる。
【0035】
次に、金属被覆層5が形成されたハウジング2に対し、絶縁碍子3等を組み付ける。具体的には、中心電極4、第一ガラスシール層12、抵抗体13、第二ガラスシール層14、端子金具15を内側に配した絶縁碍子3を、基端側Z2からハウジング2内に挿入する。そして、ハウジング2の基端部を、内周側に向かって変形させると共に先端側Z1に押圧して絶縁碍子3にかしめる。これにより、本形態のスパークプラグ1を製造することができる。
【0036】
次に、本形態の作用効果につき説明する。
上記スパークプラグ1において、白金を主成分とする接地電極6の主要部61は、ハウジング2に直接接合されている。それゆえ、接地電極6をハウジング2に強固に固定することができる。その結果、接地電極6とハウジング2との接合強度を確保することができる。
【0037】
また、仮に、金属被覆層を備えず、白金を主成分とする主要部が露出したスパークプラグを想定する。このスパークプラグを、比較的、水が多く生成されやすい、水素を燃料とする内燃機関に設置した場合、主要部に直接、水が付着するおそれがあり、主要部における水が付着した部位に腐食が起こるおそれがある。そこで、本形態のスパークプラグ1において、金属被覆層5は、少なくとも、白金を主成分とする主要部61の表面と、接合部11の表面と、を覆う。それゆえ、内燃機関の停止時等において、水素の燃焼などによって生じた水が、主要部61及び接合部11に直接付着することを抑制できる。それゆえ、比較的、水が多く生成されやすい水素を燃料とする内燃機関にスパークプラグ1を搭載した場合であっても、主要部61及び接合部11が腐食することを抑制できる。その結果、接地電極6及び接合部11の耐腐食性を向上させることができ、長寿命化を図ることができる。
【0038】
また、金属被覆層5は、主要部61の表面全体と、接合部11の表面全体を覆っている。それゆえ、主要部61及び接合部11に水が直接付着することを確実に抑制することができる。その結果、接地電極6及び接合部11の耐腐食性を確実に向上させることができる。
【0039】
金属被覆層5は、ニッケル又はニッケルを主成分とする合金からなる。それゆえ、接地電極6及び接合部11の耐腐食性を一層向上させることができる。
【0040】
金属被覆層5は、さらにハウジング2の表面を覆っている。それゆえ、ハウジング2の耐腐食性を向上させることができる。
【0041】
また、ハウジング2の表面を覆う金属被覆層5と、主要部61の表面を覆う金属被覆層5と、は、互いに同一組成であると共に、互いに連続して形成されている。それゆえ、ハウジング2及び主要部61のそれぞれの表面に金属被覆層5を安定的に保持させることができると共に、耐腐食性を一層向上させることができる。
【0042】
接地電極6の基端側面62は、プラグ中心軸Cに近づくほど先端側Z1へ向かうように形成されている。また、基端側面62は、中心電極4との間に放電ギャップGを形成する。それゆえ、放電ギャップGに放電を発生させる際に、基端側面62における放電の起点が生じる範囲を比較的狭くすることができる。そのため、仮に、放電ギャップGに発生する放電によって、基端側面62を有する金属被覆層5の一部が消耗したとしても、金属被覆層5の消耗範囲を抑えることができる。その結果、主要部61の露出を抑制することができる。
【0043】
基端側面62は、その全体が平坦面となっている。それゆえ、接地電極6の突出側の端部から、ハウジング2に固定される接地電極6の固定端部までの距離が短くなりやすい。それゆえ、接地電極6の突出側の端部からハウジング2への放熱経路が短くなりやすく、接地電極6が放熱しやすい。その結果、接地電極6の過熱を抑制することができ、プレイグニッション等を抑制することができる。また、接地電極6を曲げることなく、放電ギャップGを形成することができるため、金属被覆層5のひび割れや剥離を確実に抑制することができる。それゆえ、主要部61の露出を一層抑制することができる。その結果、接地電極6の耐腐食性を一層向上させることができる。
【0044】
基端側面62は、中心電極4の先端面41に対し傾斜するように形成されている。それゆえ、放電ギャップGに放電を発生させる際に、基端側面62における放電の起点が生じる範囲を比較的狭くすることができる。そのため、仮に、放電ギャップGに発生する放電によって、基端側面62を有する金属被覆層5の一部が消耗したとしても、金属被覆層5の消耗範囲を抑えることができる。
【0045】
また、プラグ軸方向Zから見たとき、基端側面62の一部と中心電極4の先端面41の一部とは互いに重なっている。また、プラグ中心軸Cは、接地電極6を通過しない。それゆえ、基端側面62と中心電極4との間に放電ギャップGを形成しつつ、接地電極6を短くすることができる。その結果、接地電極6における突出側の端部のハウジング2への放熱経路を短くすることができると共に、複数の接地電極6をハウジング2に固定しやすい。
【0046】
中心電極4の先端部には、イリジウムを主成分とすると共に、白金を実質的に含有しないチップ42が設けられている。それゆえ、中心電極4の先端部の消耗を抑制することができると共に、水の付着による中心電極4の先端部の腐食を抑制することができる。その結果、中心電極4の長寿命化を図ることができる。
【0047】
スパークプラグ1は、2つ以上の接地電極6を有する。それゆえ、2つ以上の接地電極6と中心電極4との間に放電を生じさせることができる。その結果、接地電極6の消耗を抑制することができる。
【0048】
プラグ軸方向Zから見たとき、2つの接地電極6は、一直線状に並んで配置されている。それゆえ、2つの接地電極6をハウジング2に設けやすい。つまり、一方の接地電極6をハウジング2に固定した後、他方の接地電極6をハウジング2に固定する際、接地電極6の突出側の端部同士が干渉することを避けることができる。その結果、生産性を向上させることができる。
【0049】
プラグ軸方向Zから見たとき、2つの接地電極6の突出側の端部は、プラグ径方向に互いに対向するように設けられている。それゆえ、内燃機関の主燃焼室内の気流が比較的速い場合であっても、放電ギャップGに形成された放電が短絡しにくい。つまり、気流によって放電が伸長した際、接地電極6側の放電の起点は、一方の接地電極6から、他方の接地電極6に移動しやすい。それゆえ、気流によって放電が伸長しすぎることを抑制でき、放電の短絡を抑制しやすい。それゆえ、着火性を向上させることができる。その結果、水素等の燃料を安定的に燃焼させることができる。
【0050】
接地電極6は、白金を主成分とする主要部61を有する。それゆえ、接地電極6の耐熱性を向上させることができる。
【0051】
主要部61は、プラグ軸方向Zに対して傾斜するように設けられていると共に、ハウジング2の凹部22に接合されている。それゆえ、スパークプラグ1の先端からプラグ軸方向Zに離れた位置に接合部11を配置させることができる。それゆえ、燃料である水素の燃焼によって発生した水が、接合部11の近傍に付着しにくい。その結果、仮に、接合部11の一部が露出していたとしても、接合部11の腐食を抑制することができる。
【0052】
本形態においては、ハウジング2の表面にも、金属被覆層5が形成されている。それゆえ、ハウジング2の耐腐食性を向上させることができる。
【0053】
金属被覆層5は、主要部61をハウジング2に接合した後に、形成する。それゆえ、主要部61の表面全体及び接合部11の表面全体を金属被覆層5によって覆いやすい。つまり、仮に、接地電極の主要部を金属被覆層によって覆った後、接地電極をハウジングに溶接する場合、接地電極とハウジングとの接合部付近の金属被覆層が、溶接時に形成される溶融部に溶け出すことにより、主要部の一部が露出しやすい。そこで、本形態においては、主要部61をハウジング2に接合した後に、金属被覆層5を形成する。これにより、主要部61を露出させることなく、接地電極6をハウジング2に固定することができる。
【0054】
本形態においては、バレルメッキ工程によって金属被覆層5を形成する。それゆえ、多数のハウジング2に対し、同時に金属被覆層5を形成することができる。その結果、生産性を向上させることができる。
【0055】
以上のごとく、本形態によれば、接地電極6とハウジング2との接合強度を確保することができるスパークプラグ1を提供することができる。
【0056】
実施形態1において、ハウジング2は、低炭素鋼からなる。ただし、ハウジングは、例えば、ステンレス鋼からなるものとすることができる。この場合、ハウジングの耐腐食性を一層向上させることができる。
【0057】
実施形態1において、金属被覆層5は、バレルメッキ工程によって形成される。ただし、金属被覆層は、例えば、ニッケルの溶湯の中に、主要部を接合したハウジングをくぐらせることにより形成することもでき、また、蒸着によって形成することもできる。
【0058】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…スパークプラグ、2…ハウジング、3…絶縁碍子、4…中心電極、5…金属被覆層、6…接地電極、11…接合部、61…主要部、G…放電ギャップ、Z1…先端側