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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169931
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】画像形成装置とそのプログラム
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/02 20060101AFI20241129BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20241129BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
G03G15/02 102
G03G15/16 103
G03G21/00 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086801
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弘二
【テーマコード(参考)】
2H200
2H270
【Fターム(参考)】
2H200FA03
2H200FA18
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA28
2H200GA30
2H200HA02
2H200HA29
2H200HA30
2H200HB12
2H200HB22
2H200HB46
2H200HB48
2H200JA02
2H200JA28
2H200JA29
2H200JA30
2H200NA02
2H200NA06
2H200NA08
2H200NA09
2H200PA02
2H200PA19
2H200PA20
2H200PA21
2H200PA22
2H200PB04
2H200PB08
2H270KA04
2H270KA09
2H270KA28
2H270KA47
2H270LA02
2H270LA03
2H270LA04
2H270LA07
2H270LA63
2H270LA64
2H270LA65
2H270LD05
2H270LD14
2H270MA02
2H270MA24
2H270MH02
2H270MH11
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】交流電圧ピーク値を像担持体表面電位の飽和開始付近に正しく設定可能とする。
【解決手段】実施形態に係る画像形成装置は、像担持体と、帯電手段と、トナー像形成手段と、転写手段と、検知手段と、制御手段と、を備える。像担持体は、静電潜像が形成される。帯電手段は、像担持体表面に近接される帯電部材を備え、帯電部材へ直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加することで、像担持体表面を一様に帯電させる。トナー像形成手段は、像担持体に形成するべき画像の潜像を形成して現像することで、像担持体上にトナー像を形成する。転写手段は、像担持体上のトナー像を転写体上に転写する。検知手段は、転写手段の抵抗値を検知する。制御手段は、検知手段が検知した転写手段の抵抗値に基づいて像担持体の表面電位の飽和値を推定し、帯電手段が帯電部材に印加する交流電圧のピーク値を、この推定した飽和値に従って設定する。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体表面に近接される帯電部材を備え、前記帯電部材へ直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加することで、前記像担持体表面を一様に帯電させる帯電手段と、
前記像担持体に形成するべき画像の潜像を形成して現像することで、前記像担持体上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記像担持体上の前記トナー像を転写体上に転写する転写手段と、
前記転写手段の抵抗値を検知する検知手段と、
前記検知手段が検知した前記転写手段の抵抗値に基づいて前記像担持体の表面電位の飽和値を推定し、前記帯電手段が前記帯電部材に印加する前記交流電圧のピーク値を、前記推定した飽和値に従って設定する制御手段と、
を備える、画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記帯電手段に前記交流電圧のピーク値を変えさせながら前記検知手段に前記転写手段の抵抗値を検知させ、前記検知手段が検知した前記転写手段の抵抗値の変化状態に基づいて前記像担持体の表面電位の飽和値を推定する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記検知手段は、前記転写手段の抵抗値を電圧値として検知する、
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記検知手段が検知した前記電圧値の飽和値に基づいて、前記像担持体の表面電位の飽和値を推定する、
請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記転写手段は、前記転写体と、前記転写体を挟んで前記像担持体と対向する付勢部材と、を備え、前記付勢部材により前記転写体を前記像担持体方向に付勢して前記転写体を前記像担持体に接触させることで、前記像担持体上の前記トナー像を前記転写体上に転写し、
前記検知手段は、前記転写体と前記付勢部材とを含む抵抗体の抵抗値を検知する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
静電潜像が形成される像担持体と、前記像担持体表面に近接される帯電部材へ直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加することで、前記像担持体表面を一様に帯電させる帯電手段と、前記像担持体に形成するべき画像の潜像を形成して現像することで、前記像担持体上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記像担持体上の前記トナー像を転写体上に転写する転写手段と、前記転写手段の抵抗値を検知する検知手段と、を備える、画像形成装置のプロセッサに、
前記検知手段が検知した前記転写手段の抵抗値に基づいて前記像担持体の表面電位の飽和値を推定する機能と、
前記帯電手段が前記帯電部材に印加する前記交流電圧のピーク値を、前記推定した飽和値に従って設定する機能と、
を実現させるためのプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像形成装置とそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワークプレイスに置かれる画像形成装置として、電子写真方式を用いた画像形成装置が広く使用されている。この電子写真方式を用いた画像形成装置は、静電潜像が形成される像担持体と、像担持体表面に近接される帯電部材へ電圧印加することで、像担持体表面を一様に帯電させる帯電器と、該像担持体に潜像形成を行う露光器と、像担持体に近接して現像を行う現像器と、現像された像担持体上のトナー像を転写体上に転写する一次転写部と、転写体上に転写されたトナー像を用紙に転写する二次転写部と、像担持体上に当接して転写後の残留トナーを除去する像担持体クリーナと、転写体に当接して転写後の残留トナーを除去する転写体クリーナと、を備える。
【0003】
このような電子写真方式を用いた画像形成装置の帯電器においては、放電時に発生するオゾン量が、スコロトロン帯電方式よりも少ないという理由から、帯電ローラ方式が採用されている。
【0004】
この帯電ローラ方式では、放電量が多く、帯電性能が安定しているという点から、DC電源にAC重畳する入力電圧方式が多く選択されている。像担持体の表面の帯電電位(以下、表面電位と略記する。)をDC電圧付近に収束させるために、帯電ローラに印加するAC電圧のピーク値であるACピーク電圧(Vp-p)を、DC放電開始電圧の2倍以上に設定することが一般的に知られている。一方で、ACピーク電圧を増加させると放電量が増加し、この放電量の増加に伴って像担持体近傍のオゾン濃度が上昇して、像担持体の劣化が促進されてしまうため、耐刷枚数が極端に減少することが知られている。この問題を解消するため、ACピーク電圧は、像担持体表面電位の飽和開始付近に設定することが望ましい。
【0005】
ACピーク電圧をこのような像担持体表面電位の飽和開始付近に設定する制御方式としては、様々な方式が提案されている。例えば、高圧電源から帯電ローラに流れるDC或いはAC電流を計測し、これを、像担持体表面電位の飽和開始付近と推定されるDC或いはAC電流基準値と比較し、入力電圧を電流基準値に合うように可変する方式が知られている。ここで、電流基準値は、高圧電源から帯電ローラに流れる電流の計測時の温度及び湿度、帯電ローラ抵抗と関連付けられた動作カウント、及び、像担持体膜厚情報から推定される値である。
【0006】
しかしながら、このような制御方式では、計測場所と帯電ローラ近傍との間での温度及び湿度の誤差、印刷枚数が進んだ場合の帯電ローラ抵抗値の個体差による誤差、所定回転数での像担持体膜摩耗の個体差による誤差、等の多分の誤差を含む。そのため、適切な精度で電流基準値を得られない場合があり、結果として、ACピーク電圧も正しく設定できない場合が生じる。
【0007】
ACピーク電圧が高め又は低めに設定されて、像担持体表面電位も高め又は低めになってしまうと、現像器による現像の際に、白地かぶり又はキャリア引き等の不具合が発生する場合があり、著しく印字品質の低下を招いてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006-171282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、交流電圧ピーク値を像担持体表面電位の飽和開始付近に正しく設定可能とする画像形成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態において、画像形成装置は、像担持体と、帯電手段と、トナー像形成手段と、転写手段と、検知手段と、制御手段と、を備える。像担持体は、静電潜像が形成される。帯電手段は、像担持体表面に近接される帯電部材を備え、帯電部材へ直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加することで、像担持体表面を一様に帯電させる。トナー像形成手段は、像担持体に形成するべき画像の潜像を形成して現像することで、像担持体上にトナー像を形成する。転写手段は、像担持体上のトナー像を転写体上に転写する。検知手段は、転写手段の抵抗値を検知する。制御手段は、検知手段が検知した転写手段の抵抗値に基づいて像担持体の表面電位の飽和値を推定し、帯電手段が帯電部材に印加する交流電圧のピーク値を、この推定した飽和値に従って設定する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る画像形成装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、一実施形態に係るプリンタの構成の一例を示す図である。
図3図3は、ACピーク電圧と像担持体表面電位との関係を示すグラフである。
図4図4は、帯電ローラの抵抗変化が及ぼす影響を説明するための、ACピーク電圧と像担持体表面電位との関係を示すグラフである。
図5図5は、像担持体の感光層の膜厚変化が及ぼす影響を説明するための、ACピーク電圧と像担持体表面電位との関係を示すグラフである。
図6図6は、像担持体表面電位と抵抗検知電圧との関係を示すグラフである。
図7図7は、ACピーク電圧と像担持体表面電位及び抵抗検知電圧との関係を示すグラフである。
図8図8は、一実施形態に係る画像形成装置が備える抵抗検知電圧記憶部の記憶内容の一例を示す図である。
図9図9は、一実施形態に係る画像形成装置が備えるACピーク電圧記憶部の記憶内容の一例を示す図である。
図10図10は、一実施形態に係る画像形成装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、図10中のACピーク電圧制御処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態に係る画像形成装置について図面を用いて説明する。なお、以下の一実施形態の説明に用いる各図面は、各部の縮尺を適宜変更している。また、以下の一実施形態の説明に用いる各図面は、説明のため、構成を適宜省略している。
【0013】
図1は、一実施形態に係る画像形成装置10の構成例を示すブロック図である。
画像形成装置10は、ワークプレイスに置かれる、少なくともスキャン機能及びプリント機能を備えた複合装置(multi-function peripherals。以下、MFPと略記する。)である。図1に示されるように、画像形成装置10は、プロセッサ11、メインメモリ12、記憶装置13、通信インタフェース14、操作パネル15、スキャナ16、入力画像処理部17、ページメモリ18、出力画像処理部19、プリンタ20などを備える。これらの各部は、データバスなどを介して互いに接続される。
【0014】
なお、画像形成装置10は、図1に示されるような構成の他に、必要に応じた構成を具備しても良いし、図1に示されるような構成から特定の構成が除外されたりしても良い。
【0015】
プロセッサ11は、例えば、CPU(central processing unit)であるが、これに限定されない。プロセッサ11は、マルチコア/マルチスレッドのものであって良く、複数の処理を並行して実行することができる。また、プロセッサ11は、MPU(micro processing unit)であっても良い。プロセッサ11は、画像形成装置10全体の動作を制御する機能を有する。プロセッサ11は、内部メモリ及び各種のインタフェースなどを備えても良い。プロセッサ11は、内部メモリ又は記憶装置13などが予め記憶するプログラムを実行することにより種々の処理を実現する。
【0016】
なお、プロセッサ11がプログラムを実行することにより実現する各種の機能のうちの一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(field-programmable gate array)、GPU(Graphics Processing Unit)、SoC(system on a chip)、PLD(programmable logic device)、等の集積回路を含む、多様な形式のハードウエア回路により実現されるものであっても良い。この場合、プロセッサ11は、ハードウエア回路により実行される機能を制御する。
【0017】
メインメモリ12は、揮発性のメモリである。メインメモリ12は、ワーキングメモリ、或いはバッファメモリである。メインメモリ12は、プロセッサ11からの命令に基づき種々のアプリケーションプログラムを格納することができる。また、メインメモリ12は、記憶装置13に格納されている制御プログラムやアプリケーションプログラムの実行に必要なデータ及びそれらプログラムの実行結果などを格納しても良い。例えば、メインメモリ12は、ACピーク電圧記憶部121などを格納する。ACピーク電圧記憶部121は、プリンタ20の後述する帯電ローラに印加するAC電圧のピーク値であるACピーク電圧を格納する。このACピーク電圧記憶部121の詳細については、後述する。
【0018】
記憶装置13は、データの書き込み及び書き換えが可能な不揮発性のメモリである。記憶装置13は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)又はフラッシュメモリなどから構成される。記憶装置13は、画像形成装置10の運用用途に応じて制御プログラム、アプリケーションプログラム及び種々のデータなどを格納する。例えば、記憶装置13は、後述するユーザ端末から送信されてくる印刷ジョブ、抵抗検知電圧記憶部131、などを格納する。印刷ジョブは、用紙に形成する画像の元となる文字データや画像データなどの印刷対象データを含む。印刷対象データは、1枚の用紙に画像を形成するためのデータであっても良いし、複数枚の用紙に画像を形成するためのデータであっても良い。さらに、印刷ジョブは、制御データとして、カラー印刷かモノクロ印刷かを示す情報、印刷部数(ページセット数)、1部当たりの印刷枚数(ページ数)、などの情報を含むことができる。また、抵抗検知電圧記憶部131は、ACピーク電圧を変えたときに検知された、プリンタ20の後述する一次転写部の抵抗検知電圧を格納する。この抵抗検知電圧記憶部131の詳細については、後述する。
【0019】
通信インタフェース14は、ネットワークNW上の外部装置と通信するためのインタフェースである。通信インタフェース14は、例えば社内LAN(Local Area Network)などのネットワークNWを介して、ワークプレイスに置かれたユーザ端末UT、サーバ装置SVなどとの通信に用いられる。通信インタフェース14は、例えば、LANコネクタ等として構成される。また、通信インタフェース14は、Bluetooth(登録商標)又はWi-fi(登録商標)等の規格に従って他の機器と無線通信を行うものであっても良い。なお、図1では、ユーザ端末UTは2台のみ示しているが、台数はこれに限定されないことは言うまでもない。
【0020】
操作パネル15は、画像形成装置10の操作者によって、種々の指示が入力される。操作パネル15は、操作者によって入力された指示を示す信号をプロセッサ11へ送信する。操作パネル15は、操作部として、例えば、キーボード、テンキー、及び、タッチパネルなどを備える。
【0021】
また、操作パネル15は、画像形成装置10の操作者に対して、種々の情報を表示する。即ち、操作パネル15は、プロセッサ11からの信号に基づいて、種々の情報を示す画面を表示する。操作パネル15は、表示部として、例えば、液晶ディスプレイなどのモニタを備える。
【0022】
スキャナ16は、原稿を光学的に走査し、原稿の画像を画像データとして読み取る。スキャナ16は、原稿をカラー画像として読み取る。スキャナ16は、主走査方向に形成されるセンサ列などから構成される。スキャナ16は、副走査方向にセンサ列を移動し、原稿全体を読み取る。
【0023】
入力画像処理部17は、スキャナ16が読み取った画像データを処理する。また、図1には示していないが、画像形成装置10がUSBメモリなどの記憶媒体のリーダを備える場合には、入力画像処理部17は、その記憶媒体から読み出した画像データを処理しても良い。更に、入力画像処理部17は、記憶装置13に格納された印刷ジョブに含まれる文字データや画像データなどの印刷対象データを、形成する画像を示す画像データに変換する。
【0024】
ページメモリ18は、入力画像処理部17が処理した画像データを格納する。
【0025】
出力画像処理部19は、プリンタ20が画像データを用紙に印刷できるように、ページメモリ18が格納する画像データを処理する。
【0026】
プリンタ20は、プロセッサ11の制御に基づいて、出力画像処理部19が処理した画像データを用紙に印刷する。プリンタ20は、例えば、電子写真方式により画像データを用紙に印刷する。また、プリンタ20は、転写体、転写体を駆動するためのローラ、感光体ドラム、抵抗検知部21などから構成される。プリンタ20の詳細については、後述する。
【0027】
抵抗検知部21は、一次転写部の抵抗値を電圧値として検知する。抵抗検知部21は、検知した電圧値を示す抵抗検知電圧をプロセッサ11に出力する。プロセッサ11は、後述するように、この抵抗検知電圧を抵抗検知電圧記憶部131に格納する。
【0028】
次に、プリンタ20について説明する。
図2は、プリンタ20の構成例を示す図である。図2に示されるように、プリンタ20は、抵抗検知部21K,21C,21M,21Y、感光体ドラム30K,30C,30M,30Y、転写体31、ローラ32a,32b,32c,32d、帯電ローラ33K,33C,33M,33Y、除電器34K,34C,34M,34Y、感光体クリーナ35K,35C,35M,35Y、一次転写ローラ36K,36C,36M,36Y、二次転写ローラ37、定着器38、転写体クリーナ39、現像器40K,40C,40M,40Y、撹拌器41K,41C,41M,41Y、現像ローラ42K,42C,42M,42Y、電圧印加部43K,43C,43M,43Y、露光ユニット44、給紙カセット51及び搬送路52などを備える。
【0029】
転写体31は、中間転写体である。転写体31は、無端ベルト状に形成される。即ち、転写体31は、所定の幅で環状に形成される。
【0030】
ローラ32a乃至32dは、転写体31を駆動するためのローラである。各ローラ32a乃至32dは、転写体31の内側に形成される。各ローラ32a乃至32dは、転写体31を内側から所定の張力で引っ張り平面状に形成する。各ローラ32a乃至32dは、駆動部からの駆動力によって回転する。各ローラ32a乃至32dは、回転することで転写体31を駆動する。なお、ローラ32a乃至32dのいくつかは、受動的に回転するものであっても良い。
【0031】
プリンタ20は、抵抗検知部、感光体ドラム、帯電ローラ、除電器、感光体クリーナ、一次転写ローラ、現像器、撹拌器、現像ローラ、電圧印加部、及び、露光ユニット44内のレーザユニットを、トナーの色毎に備える。ここでは、プリンタ20は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)のトナーについて、それぞれ抵抗検知部、感光体ドラム、帯電ローラ、除電器、感光体クリーナ、一次転写ローラ、現像器、撹拌器、現像ローラ、電圧印加部及びレーザユニットを備える。なお、トナーの色は、CMYKの各色に限らず、その他の色であっても良い。また、トナーは、特殊なトナーであっても良い。例えば、トナーは、所定の温度よりも高い温度で消色して不可視の状態となる、消色可能なトナーであっても良い。
【0032】
本実施形態では、プリンタ20は、抵抗検知部として、抵抗検知部21K,21C,21M,21Yを備える。感光体ドラムとして、感光体ドラム30Y、30M、30C及び30Kを備える。また、プリンタ20は、帯電ローラとして、帯電ローラ33Y、33M、33C及び33Kを備える。また、プリンタ20は、除電器として、除電器34Y、34M、34C及び34Kを備える。また、プリンタ20は、感光体クリーナとして、感光体クリーナ35Y、35M、35C及び35Kを備える。
【0033】
また、プリンタ20は、一次転写ローラとして、一次転写ローラ36Y、36M、36C及び36Kを備える。また、プリンタ20は、現像器として、現像器40Y、40M、40C及び40Kを備える。また、プリンタ20は、撹拌器として、撹拌器41Y、41M、41C及び41Kを備える。また、プリンタ20は、現像ローラとして、現像ローラ42Y、42M、42C及び42Kを備える。また、プリンタ20は、電圧印加部として、電圧印加部43Y、43M、43C及び43Kを備える。
【0034】
ここでは、代表して、抵抗検知部21K、感光体ドラム30K、帯電ローラ33K、除電器34K、感光体クリーナ35K、一次転写ローラ36K、現像器40K、撹拌器41K、現像ローラ42K及び電圧印加部43Kについて説明する。
【0035】
現像器40Kは、トナーと磁性を有するキャリアとを含む現像剤を収容する容器である。現像器40Kは、トナーカートリッジから送り出されたトナーを受け取る。現像剤は、製造時又は使用開始時などにおいて現像器40K内に収容される。
【0036】
現像器40K内には、撹拌器41Kが形成されている。撹拌器41Kは、現像器40K内の現像剤を撹拌する。撹拌器41Kは、現像剤を撹拌するためのスクリュー及びスクリューを回転させるモータなどから構成される。
【0037】
また、現像器40K内には、現像ローラ42Kが形成されている。現像ローラ42Kは、内蔵されている磁石によって現像剤を引き寄せ、現像器40K内で回転することにより、表面に現像剤を付着させる。現像ローラ42Kは、モータなどによって回転する。現像ローラ42Kは、転写体31にトナー像を形成するための回転部材の1つである。
【0038】
電圧印加部43Kは、プロセッサ11の制御に従って、現像ローラ42Kに現像バイアスを印加する。例えば、電圧印加部43Kは、現像ローラ42Kに現像バイアスを印加する。現像ローラ42Kに付着した現像剤のトナーは、現像バイアスとドラム電位により生じる電界によって像担持体である感光体ドラム30Kに付着し、トナー像を形成する。
【0039】
帯電部材である帯電ローラ33Kは、感光体ドラム30Kの表面に近接され、感光体ドラム30Kの表面を一定の電位で帯電させる。電圧印加部43Kは、プロセッサ11の制御に従って、帯電ローラ33Kに、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加する。帯電ローラ33Kは、この電圧の印加により帯電することで感光体ドラム30Kを帯電させる。感光体ドラム30Kの表面を一様に帯電させる帯電器は、帯電ローラ33K及び電圧印加部43Kを含む。
【0040】
感光体ドラム30Kは、円筒状のドラムとドラムの外周面に形成された感光層とを備える感光体である。感光体ドラム30Kは、モータから伝達される動力によって一定の速度で回転する。感光体ドラム30Kは、転写体31にトナー像を形成するための回転部材の1つである。
【0041】
感光体ドラム30Kは、帯電ローラ33Kにより帯電される。感光体ドラム30Kは、回転しながら、帯電した状態で露光ユニット44内のレーザユニットからのレーザが照射される。その結果、感光体ドラム30Kには、レーザによって明部静電潜像が形成される。
【0042】
一次転写ローラ36Kは、転写体31を挟んで感光体ドラム30Kと対向する位置に形成される。一次転写部は、これら転写体31と一次転写ローラ36Kを含む。一次転写ローラ36Kは、感光体ドラム30Kに転写体31を接触させると共に、感光体ドラム30Kの表面とは逆電位である正極性に設定されることで、感光体ドラム30Kの表面のトナーを引き寄せる。これにより、一次転写ローラ36Kは、感光体ドラム30Kに形成されたトナー像を転写体31に転写させる。感光体ドラム30Kは、トナー像を形成するための回転部材の1つである。一次転写ローラ36Kは、転写体31にトナー像を形成するための回転部材の1つである。像担持体である感光体ドラム30K上のトナー像を転写体31上に転写する1次転写部は、転写体31と一次転写ローラ36Kを含む。
【0043】
抵抗検知部21Kは、1次転写部の転写体31と一次転写ローラ36Kとを含む抵抗体の抵抗値を電圧値として検知する。例えば、抵抗検知部21Kは、定電流制御された一次転写ローラ36Kへの印加電圧を検知する。抵抗検知部21Kは、検知した印加電圧の電圧値を、抵抗検知電圧としてプロセッサ11に出力する。画像形成装置10においては、画像ノイズ防止のため、一次転写ローラ36Kに対して適切な一次転写電圧値を設定する必要がある。そのため、一次転写ローラ36Kへの所定の正極性定電流出力時の印加電圧を抵抗検知部21Kにより検知し、プロセッサ11は、抵抗検知部21Kからの抵抗検知電圧に基づいて、一次転写ローラ36Kへの画像形成時の一次転写電圧値を設定する。このような画像ノイズ防止のための抵抗検知部21を用いた制御処理を、以下、抵抗検知制御処理と称する。
【0044】
感光体クリーナ35Kは、感光体ドラム30Kの表面と接触するブレードなどから構成される。感光体クリーナ35Kは、ブレードを用いて感光体ドラム30Kの表面に残留したトナーを除去する。
【0045】
除電器34Kは、感光体ドラム30Kの残留した帯電電位を除去する。
【0046】
給紙カセット51は、媒体としての用紙を収容するカセットである。給紙カセット51は、画像形成装置10の筐体の外部から用紙を供給可能な構造を有する。例えば、給紙カセット51は、筐体から引き出し可能な構造を有する。
【0047】
搬送路52は、用紙を搬送する。例えば、搬送路52は、給紙カセット51から用紙を1枚ずつ取り出して搬送する。例えば、搬送路52は、ローラ及び搬送ベルトなどから構成される。
【0048】
二次転写ローラ37は、転写体31上に形成されたトナー像を用紙に転写(二次転写)する。図2に示されるように、二次転写ローラ37は、転写体31を挟んでローラ32aに対向する位置に形成される。二次転写ローラ37は、搬送路52が搬送する用紙に対して転写体31上のトナー像を転写する。
【0049】
定着器38は、用紙の搬送方向において二次転写ローラ37よりも下流に形成される。定着器38は、用紙に転写されたトナー像を定着させる。定着器38は、トナー像を定着温度に加熱することでトナー像を用紙に定着させる。例えば、定着器38は、ヒータなどから構成される。
【0050】
転写体クリーナ39は、転写体31の表面と接触するブレードなどから構成される。転写体クリーナ39は、ブレードを用いて転写体31の表面に残留したトナーを除去する。
【0051】
露光ユニット44は、LSU(laser scanning unit)などとも呼ばれ、プロセッサ11からの制御に従って各感光体ドラム30K,30C,30M,30Yにレーザを照射する。露光ユニット44は、感光体ドラム30K,30C,30M,30Yにレーザを照射することで、各感光体ドラム30K,30C,30M,30Y上に静電潜像を形成する。例えば、露光ユニット44は、レーザを照射する照射装置であるレーザユニット及びレーザを反射するポリゴンミラーなどから構成される。
【0052】
以上のような構成により、プリンタ20は、転写体31上にトナー像を形成する。プリンタ20は、二次転写ローラ37を用いて、転写体31上に形成されたトナー像を用紙上に転写する。プリンタ20は、定着器38を用いてトナー像を転写された用紙を加熱しトナー像を用紙に定着させる。プリンタ20は、搬送路52を用いてトナー像を定着させた用紙を外部に排出する。
【0053】
図3は、帯電ローラに印加されるAC電圧のピーク値であるACピーク電圧(Vp-p)と、像担持体である感光体ドラムの表面の帯電電位である表面電位Voと、の関係を示すグラフである。前述したように、帯電ローラ33K,33C,33M,33Yには、電圧印加部43K,43C,43M,43YによりDC電源にAC電圧が重畳された電圧が印加される。感光体ドラム30K,30C,30M,30Yの表面電位VoをDC電圧付近に収束させるためには、重畳するAC電圧のピーク値であるACピーク電圧(Vp-p)を、DC放電開始電圧の2倍以上に設定することが一般的に知られている。図3に示すACピーク電圧(Vp-p)と表面電位Voの関係において、飽和値A付近を超えた値に設定が一般的である。ここで、飽和値Aの定義とは、ACピーク電圧(Vp-p)と表面電位Voの関係式の傾きBが減少する変曲点を示す。
【0054】
一方で、ACピーク電圧を増加させると放電量が増加し、この放電量の増加に伴って感光体ドラム30K,30C,30M,30Y近傍のオゾン濃度が上昇して、感光体ドラム30K,30C,30M,30Yの劣化が促進されてしまうため、耐刷枚数が極端に減少することが知られている。この問題を解消するため、飽和値A付近にACピーク電圧(Vp-p)を設定する必要がある。
【0055】
図4は、帯電ローラの抵抗変化が及ぼす影響を示すグラフである。帯電ローラの抵抗値は、温度及び湿度に依存して変化する。帯電ローラの温度及び湿度は、環境温度の変化及び、連続的な駆動回数または時間による機体内湿度変動に依存する。温度及び湿度の変化に伴って帯電ローラの抵抗値が変化すると、図4に示すように、帯電ローラに同じACピーク電圧(Vp-p)を印加しても、感光体ドラムの表面電位は同じにならず、飽和値A点は、約0.6kV変化することとなる。なお、感光体ドラムの抵抗値に関しては、温度及び湿度についての依存性はほとんど無い。
【0056】
図5は、像担持体である感光体ドラムの感光層の膜厚変化が及ぼす影響を示すグラフである。感光体ドラムの感光層の膜厚は、印刷枚数が進むにつれて徐々に薄くなる。感光層の膜厚が変化すると、図5に示すように、帯電ローラに同じACピーク電圧(Vp-p)を印加しても、感光体ドラムの表面電位は同じにならず、飽和値A点は変化することとなる。例えば33μm有った感光体の膜厚が20μmまで薄くなると、飽和値A点は、約0.2Kv変化する。
【0057】
ここで、ACピーク電圧(Vp-p)を固定値として設定してしまうと、感光体ドラムの表面電位Voが図4及び図5に示すように帯電ローラの抵抗値及び感光体ドラムの感光層の膜厚によって変化してしまうことで、そのACピーク電圧(Vp-p)では、表面電位Voが飽和値Aに到達できない場合があり得る。表面電位Voが飽和値Aに到達できないと、現像器による現像の際に、白地かぶり又はキャリア引き等の不具合が発生してしまう場合がある。
【0058】
図6は、像担持体である感光体ドラムの表面電位Voと抵抗検知部21により検知した抵抗検知電圧Toとの関係を示すグラフである。前述したように、画像形成装置10においては、画像形成時に、画像ノイズ防止のための抵抗検知部21を用いた抵抗検知制御により、一次転写ローラに対する適切な一次転写出力を設定している。この抵抗検知制御実施時、対向電極となる感光体ドラムの表面電位(負極性)は一定値ではなく任意値を取るが、周囲環境の温度及び湿度が安定していれば抵抗検知制御を実施する期間中は、表面電位Voと抵抗検知電圧Toの電位差は一定になる。このため、図6に示すように、表面電位Voの変動に応じて抵抗検知電圧Toは同量変動することが判っている。
【0059】
図7は、ACピーク電圧(Vp-p)と像担持体である感光体ドラムの表面電位Vo及び抵抗検知部21により検知した抵抗検知電圧Toとの関係を示すグラフである。図6を参照して説明した通り、表面電位Voが変化すると、抵抗検知電圧Toも同量変化する。そのため、抵抗検知電圧Toにより表面電位Voを推定することが可能である。そこで、本実施形態では、表面電位飽和値Aを通過するように複数点の電圧設定を設定したACピーク電圧(Vp-p)の走査を実施し、ACピーク電圧(Vp-p)の各設定電圧に対応した表面電位Voの変化量を、抵抗検知電圧Toの変化量として検知する。これにより、抵抗検知電圧Toの飽和値から表面電位飽和値AとなるACピーク電圧(Vp-p)の検知が可能となる。
【0060】
図8は、画像形成装置10が備える抵抗検知電圧記憶部131の記憶内容の一例を示す図である。本実施形態においては、抵抗検知電圧記憶部131は、図8に示されるように、YMCKの各色について、前述の表面電位飽和値Aを通過するように設定した複数の複数点の電圧設定についての値を格納するテーブルとしている。このテーブルに格納される値は、各電圧設定点のACピーク電圧(Vp-p)において、各色の抵抗検知部21K,21C,21M,21Yによって検知した抵抗検知電圧Toである。
【0061】
図9は、画像形成装置10が備えるACピーク電圧記憶部121の記憶内容の一例を示す図である。本実施形態においては、ACピーク電圧記憶部121は、図9に示されるように、YMCKの各色について、帯電ローラ33K,33C,33M,33Yに印加するACピーク電圧(Vp-p)として設定された値を格納する。
【0062】
次に、一実施形態に係る画像形成装置10の動作例について説明する。
図10は、画像形成装置10の処理動作の一例を示すフローチャートである。なお、図10に示したフローチャートは、スキャンした原稿の印刷つまりコピー処理については、印刷対象が異なるだけであるので、省略するものとし、印刷処理についてのみ示している。また、図10に示すと共に以下に説明する処理の内容は一例であって、同様な結果を得ることが可能な様々な処理を適宜に利用することができる。
【0063】
プロセッサ11は、図示しない電源スイッチのON操作により電源が投入されると、記憶装置13に記憶された制御プログラムが起動し、このフローチャートに示す処理動作を実行する。なお、特に説明が無い限り、プロセッサ11の処理は、ACTn(nは、自然数。)の後、ACT(n+1)へと遷移するものとする。
【0064】
プロセッサ11は、先ず、ACT1において、ACピーク電圧制御処理を実行する。このACピーク電圧制御処理は、画像形成時に、YMCKの各色の帯電ローラ33K,33C,33M,33Yに印加するべきACピーク電圧(Vp-p)を設定する処理である。
【0065】
図11は、このACT1のACピーク電圧制御処理の一例を示すフローチャートである。
プロセッサ11は、ACT11において、抵抗検知電圧の取得対象である対象ACピーク電圧(Vp-p)に、初期値を設定する。この初期値は、例えば、記憶装置13の抵抗検知電圧記憶部131における複数の電圧設定点のACピーク電圧(Vp-p)の内の最も小さい電圧値である。よって、プロセッサ11は、図8の例であれば、対象ACピーク電圧(Vp-p)の初期値として0.5Vを設定する。
【0066】
プロセッサ11は、ACT12において、設定された対象ACピーク電圧(Vp-p)を重畳したDC電圧を、YMCKの各色の帯電ローラ33K,33C,33M,33Yに印加する。
【0067】
プロセッサ11は、ACT13において、各色の抵抗検知部21K,21C,21M,21Yにより、抵抗検知電圧Toを取得する。
【0068】
プロセッサ11は、ACT14において、取得した各色についての抵抗検知電圧Toを、抵抗検知電圧記憶部131に記憶させる。
【0069】
プロセッサ11は、ACT15において、ACピーク電圧(Vp-p)の走査範囲を終了したか否か判定する。例えば、プロセッサ11は、抵抗検知電圧記憶部131における複数の電圧設定点のACピーク電圧(Vp-p)の内の最も大きい電圧値を、対象ACピーク電圧(Vp-p)として設定済みであれば、走査範囲を終了したと判定する。
【0070】
プロセッサ11は、走査範囲を終了していないという判定に基づき(ACT15、NO)、ACT16において、対象ACピーク電圧(Vp-p)を更新する。例えば、プロセッサ11は、抵抗検知電圧記憶部131における複数の電圧設定点のACピーク電圧(Vp-p)において、未だ設定していない電圧値を、対象ACピーク電圧(Vp-p)として設定する。その後、プロセッサ11は、上記ACT12の処理動作に移行する。
【0071】
プロセッサ11は、走査範囲を終了してたという判定に基づき(ACT15、NO)、ACT17において、YMCKの各色の帯電ローラ33K,33C,33M,33Yに印加するべきACピーク電圧(Vp-p)を決定する。例えば、プロセッサ11は、各色について、抵抗検知電圧記憶部131に記憶されたACピーク電圧(Vp-p)と抵抗検知電圧Toとの関係式を算出し、この関係式の傾きが減少する変曲点を求める。プロセッサ11は、この変曲点を表面電位Voの飽和点Aとして、この飽和点AのACピーク電圧(Vp-p)を、印加するべきACピーク電圧(Vp-p)と決定する。
【0072】
プロセッサ11は、ACT18において、各色について決定した印加するべきACピーク電圧(Vp-p)を、メインメモリ12のACピーク電圧記憶部121に記憶させる。その後、プロセッサ11は、このACピーク電圧制御処理を終了して、ACT2の処理動作に移行する。
【0073】
図10の説明に戻る。
プロセッサ11は、ACT2において、通信インタフェース14を介してユーザ端末UTから印刷ジョブを受信したか否か判定する。プロセッサ11は、印刷ジョブを受信していないという判定に基づき(ACT2、NO)、後述するACT4の処理動作に移行する。
【0074】
プロセッサ11は、印刷ジョブを受信したという判定に基づき(ACT2、YES)、ACT3において、その受信した印刷ジョブを記憶装置13に格納する。メインメモリ12が十分な記憶容量を有し且つ不揮発性に格納する必要が無い場合には、印刷ジョブは、メインメモリ12に格納するものとしても良い。
【0075】
プロセッサ11は、ACT4において、印刷を開始するか否か判定する。例えば、プロセッサ11は、操作パネル15からのユーザによる、印刷対象の印刷ジョブの選択操作とそれに続けた開始操作の操作情報が入力されたことに応じて、印刷開始と判定する。なお、選択される印刷対象の印刷ジョブの個数は、複数の場合も有る得る。プロセッサ11は、印刷を開始しないという判定に基づき(ACT4、NO)、上記ACT2の処理動作に移行する。
【0076】
プロセッサ11は、印刷を開始するという判定に基づき(ACT4、YES)、ACT5において、抵抗検知制御処理を実行する。この抵抗検知制御処理は、既知の処理であるので、特に図示しない。簡単に説明すると、この抵抗検知制御処理においては、プロセッサ11は、各色について、感光体ドラムを任意値の表面電位(負極性)とすると共に、一次転写ローラへ所定の正極性定電流で印加電圧を印加し、抵抗検知部21Kにより抵抗検知電圧を取得する。そして、プロセッサ11は、その取得した各色の抵抗検知部21からの抵抗検知電圧に基づいて、画像形成時における各色の一次転写ローラへ印加する電圧値を設定する。
【0077】
プロセッサ11は、ACT6において、印刷対象の1つの印刷ジョブを実行する印刷制御処理を実行する。この印刷制御処理についても、既知の処理であるため、特に図示はしない。簡単に説明すると、印刷制御処理においては、プロセッサ11は、記憶装置13に記憶されている印刷ジョブの内のユーザによって選択された1以上の印刷対象の印刷ジョブの中から1つを読み出し、入力画像処理部17を制御して、その読み出した印刷ジョブに含まれる印刷対象データを画像データに変換させて、ページメモリ18に格納させる。そして、プロセッサ11は、当該印刷ジョブに含まれる制御データに従って、出力画像処理部19を制御して、プリンタ20が画像データを用紙に印刷できるようにページメモリ18に格納された画像データを処理させると共に、プリンタ20を制御して、出力画像処理部19が処理した画像データを用紙に印刷させる。プロセッサ11は、印刷ジョブに対応する印刷終了により、当該印刷ジョブを記憶装置13から消去する。
【0078】
プロセッサ11は、ACT7において、ユーザが印刷対象として選択した全ての印刷ジョブの実行が終了したか否か判定する。プロセッサ11は、印刷対象の全印刷ジョブの実行が終了していないという判定に基づき(ACT7、NO)、上記ACT6の処理動作に移行して、未実行の印刷ジョブについての印刷を実施する。
【0079】
プロセッサ11は、印刷対象の全印刷ジョブの実行が終了したという判定に基づき(ACT7、YES)、ACT8において、処理動作を終了するか否か判定する。例えば、プロセッサ11は、図示しない電源スイッチがOFF操作されたとき、処理動作を終了すると判定する。プロセッサ11は、処理動作を終了するという判定に基づき(ACT8、YES)、図10のフローチャートに示す処理動作を終了する。
【0080】
これに対して、プロセッサ11は、処理動作を終了しないという判定に基づき(ACT8、NO)、上記ACT1の処理動作に移行して、再びACピーク電圧制御処理を実行する。このようにして、ユーザによって選択された1以上の印刷ジョブに対応する画像形成動作が終了する毎に、ACピーク電圧制御処理が繰り返される。
【0081】
以上のように、本実施形態に係る画像形成装置10は、静電潜像が形成される像担持体である感光体ドラム30K,30C,30M,30Yと、感光体ドラム30K,30C,30M,30Y表面に近接される帯電部材である帯電ローラ33K,33C,33M,33Yを備え、前記帯電ローラ33K,33C,33M,33YへDC電圧にAC電圧を重畳した電圧を印加することで、感光体ドラム30K,30C,30M,30Y表面を一様に帯電させる帯電器と、
感光体ドラム30K,30C,30M,30Yに形成するべき画像の潜像を形成して現像することで、感光体ドラム30K,30C,30M,30Y上にトナー像を形成する露光ユニット44及び現像ローラ42K,42C,42M,42Yと、一次転写ローラ36K,36C,36M,36Yにより感光体ドラム30K,30C,30M,30Y上のトナー像を転写体31上に転写する一次転写部と、一次転写部の抵抗値を検知する抵抗検知部21K,21C,21M,21Yと、抵抗検知部21K,21C,21M,21Yが検知した一次転写部の抵抗値に基づいて感光体ドラム30K,30C,30M,30Yの表面電位の飽和値を推定し、帯電器が帯電ローラ33K,33C,33M,33Yに印加するAC電圧のピーク値であるACピーク電圧(Vp-p)を、推定した飽和値に従って設定するプロセッサ11と、を備える。このように、帯電器は帯電手段として機能し、露光ユニット44及び現像ローラ42K,42C,42M,42Yはトナー像形成手段として機能し、一次転写部は一次転写部として機能し、抵抗検知部21K,21C,21M,21Yは検知手段として機能し、プロセッサ11は制御手段として機能する。
このように、感光体ドラム30K,30C,30M,30Y表面に近接される帯電ローラ33K,33C,33M,33YでDC電源にAC重畳する入力電圧方式を持つ、本実施形態に係る画像形成装置10においては、一次転写部の抵抗値の変化量を用いて、ACピーク電圧(Vp-p)と帯電ローラ33K,33C,33M,33Y表面電位の飽和値Aを検出することができるので、精度の高いACピーク電圧(Vp-p)設定を実施することができる。即ち、本実施形態によれば、交流電圧ピーク値を像担持体表面電位の飽和開始付近に正しく設定可能とする画像形成装置10を提供することができる。よって、感光体ドラム30K,30C,30M,30Yの劣化を抑制しつつ、高寿命で、安定した画質が得られる画像形成装置10を提供することが可能となる。
【0082】
ここで、プロセッサ11は、帯電器にACピーク電圧(Vp-p)を変えさせながら抵抗検知部21K,21C,21M,21Yに一次転写部の抵抗値を検知させ、抵抗検知部21K,21C,21M,21Yが検知した一次転写部の抵抗値の変化状態に基づいて感光体ドラム30K,30C,30M,30Yの表面電位の飽和値を推定する。
このように、本実施形態に係る画像形成装置10は、帯電ローラ33K,33C,33M,33Yに印加するACピーク電圧(Vp-p)を走査して得られた抵抗値の変化状態を利用して、容易に感光体ドラム30K,30C,30M,30Yの表面電位の飽和値を推定することができる。
【0083】
また、抵抗検知部21K,21C,21M,21Yは、一次転写部の抵抗値を電圧値である抵抗検知電圧Toとして検知する。
よって、本実施形態に係る画像形成装置10は、画像ノイズ防止のための抵抗検知制御に使用する抵抗検知電圧Toを検知する抵抗検知部21K,21C,21M,21Yを利用することができるので、新規の部材を追加すること無く、既存の画像形成装置10の構成をそのままに、帯電ローラ33K,33C,33M,33Yに印加するACピーク電圧(Vp-p)を設定することが可能になる。しかも、本実施形態に係る画像形成装置10は、画像ノイズの抑制と感光体劣化の抑制とを両立することができる。
【0084】
また、プロセッサ11は、抵抗検知部21K,21C,21M,21Yが検知した抵抗検知電圧Toの飽和値に基づいて、感光体ドラム30K,30C,30M,30Yの表面電位の飽和値を推定する。
このように、本実施形態に係る画像形成装置10は、抵抗検知電圧Toと感光体ドラム30K,30C,30M,30Yの表面電位とが、ACピーク電圧(Vp-p)の変化に対して同様の変化状態を取ることに着目し、抵抗検知電圧Toの飽和値を検知することで、感光体ドラム30K,30C,30M,30Yの表面電位の飽和値を容易に推定することができる。
【0085】
また、一次転写部は、転写体31と、転写体31を挟んで感光体ドラム30K,30C,30M,30Yと対向する付勢部材である一次転写ローラ36K,36C,36M,36Yと、を備え、一次転写ローラ36K,36C,36M,36Yにより転写体31を感光体ドラム30K,30C,30M,30Y方向に付勢して転写体31を感光体ドラム30K,30C,30M,30Yに接触させることで、感光体ドラム30K,30C,30M,30Y上のトナー像を転写体31上に転写し、抵抗検知部21K,21C,21M,21Yのそれぞれは、転写体31と対応する一次転写ローラ36K,36C,36M又は36Yとを含む抵抗体の抵抗値を検知する。
このように、本実施形態に係る画像形成装置10においては、抵抗検知部21K,21C,21M,21Yは、一次転写部の抵抗値として、転写体31と対応する一次転写ローラ36K,36C,36M又は36Yとを含む抵抗体の抵抗値を検知することができる。
【0086】
以上、上記一実施形態について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。
例えば、一実施形態では、YMCKの4色カラーで画像形成する画像形成装置10を例に説明したが、画像形成装置は、ブラックなどの単色画像形成装置であっても良い。
【0087】
また、抵抗検知電圧記憶部131及びACピーク電圧記憶部121は、図8及び図9に示したようなテーブル形式でデータを記憶するものに限定されない。
【0088】
また、図10のフローチャートを参照して印刷動作について説明したが、スキャナ16を使用したコピー動作においても、1枚以上の原稿のコピー動作が終了する毎に、ACピーク電圧制御処理を実行することができる。
【0089】
更に、ACピーク電圧制御処理は、使用電力化のためのスリープ機能を有する画像形成装置においては、そのスリープ状態からの復帰時に実行したり、一定の稼働時間の経過時や一定枚数の画像形成時といった画像形成装置の使用状況に応じて実行したりするようにしても良い。
【0090】
また、図11に詳細を示したACピーク電圧制御処理において、決定したACピーク電圧(Vp-p)をACピーク電圧記憶部121に記憶させるだけでなく、それを通信インタフェース14を介してサーバ装置SVに送信するようにしても良い。これにより、例えば、サーバ装置SVは、送信されてきたACピーク電圧(Vp-p)が規定範囲内であるか判定することで、画像形成装置10の故障可能性を検知することが可能となる。サーバ装置SVは、画像形成装置10に故障可能性が有る場合、そのACピーク電圧(Vp-p)を使用しないように画像形成装置10にフィードバックしたり、画像形成装置10の保守担当者又は保守サービス会社のサービスマンに通知したりすることができる。
【0091】
また、上記実施形態では、画像形成装置10の記憶装置13に制御プログラムが事前に記憶されているものとした。この点に関しては、画像形成装置10が備える書き込み可能な記憶デバイスに、画像形成装置10とは個別に譲渡された制御プログラムが管理者などの操作に応じて書き込まれても良い。これら制御プログラム等の譲渡は、リムーバブルなコンピュータ可読記憶媒体に記憶して、或いはネットワークを介した通信により行うことができる。コンピュータ可読記憶媒体は、CD-ROM,メモリカード等のようにプログラムを記憶でき、かつ装置が読み取り可能であれば、その形態は問わない。
【0092】
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態は、発明の範囲に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
10…画像形成装置、 11…プロセッサ、 12…メインメモリ、 13…記憶装置、 14…通信インタフェース、 15…操作パネル、 16…スキャナ、 17…入力画像処理部、 18…ページメモリ、 19…出力画像処理部、 20…プリンタ、 21,21K,21C,21M,21Y…抵抗検知部、 30K,30C,30M,30Y…感光体ドラム、 31…転写体、 32a,32b,32c,32d…ローラ、 33K,33C,33M,33Y…帯電ローラ、 34K,34C,34M,34Y…除電器、 35K,35C,35M,35Y…感光体クリーナ、 36K,36C,36M,36Y…一次転写ローラ、 37…二次転写ローラ、 38…定着器、 39…転写体クリーナ、 40K,40C,40M,40Y…現像器、 43K,43C,43M,43Y…電圧印加部、 44…露光ユニット、 51…給紙カセット、 52…搬送路、 121…ACピーク電圧記憶部、 131…抵抗検知電圧記憶部、 NW…ネットワーク、 SV…サーバ装置、 To…抵抗検知電圧、 UT…ユーザ端末、 Vo…表面電位。

図1
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