(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169939
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系樹脂発泡粒子およびポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
C08J9/04 103
C08J9/04 CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086812
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】千葉 琢也
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA16
4F074AC02
4F074AD13
4F074BA32
4F074BC03
4F074CB53
4F074CC32Y
4F074CC34Y
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA08
4F074DA18
4F074DA35
4F074DA58
4F074DA59
(57)【要約】
【課題】
良好な型内成形性を示し、優れた難燃性を示す発泡粒子成形体を提供可能なポリオレフィン系樹脂発泡粒子、及び難燃性に優れたポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体を提供する。
【解決手段】
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、嵩密度が10kg/m3以上100kg/m3以下であり、特定の構造式で示されるNOR型ヒンダードアミン系化合物を含有し、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子中のNOR型ヒンダードアミン系化合物の含有量が0.01質量%以上3質量%以下となるよう構成される。またポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体は、密度が10kg/m3以上100kg/m3以下であり、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体中の特定の構造式で示されるNOR型ヒンダードアミン系化合物の含有量が0.01質量%以上3質量%以下となるよう構成される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵩密度が10kg/m
3以上100kg/m
3以下であり、NOR型ヒンダードアミン系化合物を含有するポリオレフィン系樹脂発泡粒子であって、
前記NOR型ヒンダードアミン系化合物は下記一般式(I)で表され、
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子中の前記NOR型ヒンダードアミン系化合物の含有量が0.01質量%以上3質量%以下である、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
【化1】
(一般式(I)中、R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立に炭化水素基を表し、Xはアルカノールアミン基を表す。)
【請求項2】
前記NOR型ヒンダードアミン系化合物の融点が60℃以上100℃以下である、請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
【請求項3】
前記NOR型ヒンダードアミン系化合物の分子量が1000以下である、請求項1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
【請求項4】
前記一般式(I)におけるXがエタノールアミン基である、請求項1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子が、さらに炭素材料を含有する、請求項1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
【請求項6】
密度が10kg/m
3以上100kg/m
3以下であり、NOR型ヒンダードアミン系化合物を含有するポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体であって、
前記NOR型ヒンダードアミン系化合物は下記一般式(I)で表され、
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体中の前記NOR型ヒンダードアミン系化合物の含有量が0.01質量%以上3質量%以下である、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体。
【化2】
(一般式(I)中、R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立に炭化水素基を表し、Xはアルカノールアミン基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃剤を含有するポリオレフィン系樹脂発泡粒子及び前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子を型内成形してなる難燃性に優れたポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子を型内成形してなるポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体は、例えば、梱包材や車両用部材、建築材料などの種々の用途に使用されている。この種の発泡粒子成形体は、カーボンブラック等により着色されることがある。また、発泡粒子成形体を燃焼し難くするために、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子には、難燃剤としてNOR型ヒンダードアミン系化合物が添加されていることがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
成形体の密度を低くし軽量化された発泡粒子成形体や、カーボンブラック等の炭素材料を多く含有する発泡粒子成形体は、燃焼し易い傾向がある。そのため、所望の難燃性を発現させるために、発泡粒子におけるNOR型ヒンダードアミン系化合物の添加量を増やす必要が生じる場合がある。しかし、例えば、特許文献1に記載されるNOR型ヒンダードアミン系化合物の添加量を増やした場合、発泡粒子の型内成形性が低下する虞があった。即ち、発泡粒子の型内成形性を良好に維持するためには、NOR型ヒンダードアミン系化合物の添加量は少ないことが好ましい。しかしながら、型内成形性等への影響を配慮し、発泡粒子におけるNOR型ヒンダードアミン系化合物の添加量が少量に抑えられた場合、当該発泡粒子を用いて製造された発泡粒子成形体は、所望の難燃性を安定して発現し難かった。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、型内成形性に優れると共に、優れた難燃性を安定して発現する発泡粒子成形体を得ることができるポリオレフィン系樹脂発泡粒子、及びそのポリオレフィン系樹脂発泡粒子を型内成形してなるポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、嵩密度が10kg/m
3以上100kg/m
3以下であり、NOR型ヒンダードアミン系化合物を含有するポリオレフィン系樹脂発泡粒子であって、前記NOR型ヒンダードアミン系化合物は下記一般式(I)で表され、前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子中の前記NOR型ヒンダードアミン系化合物の含有量が0.01質量%以上3質量%以下であることを特徴とする。
【化1】
(一般式(I)中、R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立に炭化水素基を表し、Xはアルカノールアミン基を表す。)
【0007】
また本発明のポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体は、密度が10kg/m
3以上100kg/m
3以下であり、NOR型ヒンダードアミン系化合物を含有するポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体であって、前記NOR型ヒンダードアミン系化合物は下記一般式(I)で表され、前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体中の前記NOR型ヒンダードアミン系化合物の含有量が0.01質量%以上3質量%以下であることを特徴とする。
【化2】
(一般式(I)中、R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立に炭化水素基を表し、Xはアルカノールアミン基を表す。)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、型内成形性に優れると共に、優れた難燃性を安定して発現する発泡粒子成形体を得ることができるポリオレフィン系樹脂発泡粒子、及びそのポリオレフィン系樹脂発泡粒子を型内成形してなるポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態であるポリオレフィン系樹脂発泡粒子の全融解熱量及び高温ピークの融解熱量を得るための、JIS K7122:1987年に記載されたプラスチックの転移熱測定方法に従って得たDSC曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明のポリオレフィン系樹脂発泡粒子(以下、単に本発明の発泡粒子という場合がある。)及び本発明のポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体(以下、単に本発明の発泡粒子成形体という場合がある。)について説明する。
【0011】
本発明の発泡粒子は、嵩密度が10kg/m
3以上100kg/m
3以下であり、下記一般式(I)で表されるNOR型ヒンダードアミン系化合物を含有する。尚、以下の説明において、下記一般式(I)で表されるNOR型ヒンダードアミン系化合物を、特定のヒンダードアミン系化合物と呼ぶ場合がある。本発明の発泡粒子中の特定のヒンダードアミン系化合物の含有量は、0.01質量%以上3質量%以下に調整される。
【化3】
(一般式(I)中、R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立に炭化水素基を表し、Xはアルカノールアミン基を表す。)
【0012】
上述する構成を備える本発明の発泡粒子は、軽量性および型内成形性に優れると共に、難燃性にも優れる。したがって、本発明の発泡粒子は、密度が小さく、発泡粒子同士の融着性に優れ、かつ優れた難燃性を安定して発現する発泡粒子成形体を提供可能である。換言すると本発明は、難燃剤として特定のヒンダードアミン系化合物を用いることにより、比較的多い量の難燃剤を含有させた場合でも、発泡粒子の型内成形性を低下させにくい。そのため、本発明は、所望の難燃性が発現する発泡粒子成形体を得ることができるポリオレフィン系樹脂発泡粒子を良好に提供可能である。また、本発明は、比較的少ない量の難燃剤を含有させた場合でも、所望の難燃性が発現する発泡粒子成形体を得ることができる。そのため、本発明は、難燃剤に起因する発泡粒子の型内成形性の低下がより抑制されたポリオレフィン系樹脂発泡粒子を提供可能である。
以下に本発明の発泡粒子について更に詳細に説明する。
【0013】
[ポリオレフィン系樹脂]
本発明の発泡粒子は基材樹脂としてポリオレフィン系樹脂を含む。本発明に関し、ポリオレフィン系樹脂とは、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のオレフィン系モノマーの単独重合体及びオレフィン系モノマーに由来する成分を50モル%以上含有する共重合体をいう。
基材樹脂は、1種のポリオレフィン系樹脂であってもよいし、2種以上のポリオレフィン系樹脂の混合樹脂であってもよい。
【0014】
ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。
ポリエチレン系樹脂としては、エチレン成分単位を50モル%以上含有する樹脂が挙げられ、具体的には、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体等が例示される。これらの中でも、型内成形性に優れる発泡粒子を安定して製造できる観点からは、ポリエチレン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分とすることが好ましい。より具体的には、ポリエチレン系樹脂中の直鎖状低密度ポリエチレンの割合が50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。
【0015】
また、ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン成分単位を50モル%以上含有する樹脂が挙げられ、具体的には、プロピレン単独重合体、ブロックポリプロピレンとして市販されている、ポリプロピレン中にエチレン-プロピレンラバー等のゴム成分が分散している耐衝撃性ポリプロピレン、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン-ブテンブロック共重合体、プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体等が例示される。これらの中でも、型内成形性に優れる発泡粒子を安定して製造できる観点からは、ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン-エチレンランダム共重合体及び/又はプロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体を主成分とすることが好ましい。より具体的には、ポリプロピレン系樹脂中のプロピレン-エチレンランダム共重合体及び/又はプロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体の割合が50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。
【0016】
圧縮強度等の機械的物性と軽量性とのバランスに優れ、梱包材や車両用部材、建築材料などの用途に特に好適に使用することができる発泡粒子成形体を得ることができる観点からは、本発明における発泡粒子は、ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とすることが好ましい。
この場合、発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂の融点は、125℃以上160℃以下であることが好ましく、130℃以上155℃以下であることがより好ましく、135℃以上150℃以下であることが更に好ましい。前記範囲の融点を示すポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とすることによって、前記発泡粒子の良好な型内成形性と、前記発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体の良好な圧縮物性とをバランスよく発現させることができる。
【0017】
発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂の融点は、JIS K 7121:2012に基づいて測定される。具体的には、発泡粒子を試験片とし、JIS K 7121:2012における「3.試験片の状態調節」の「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」に基づいて状態調節を行う。状態調節においては、試験片を10℃/分の加熱速度で23℃から200℃まで加熱し、200℃の温度を10分間保った後、10℃/分の冷却速度で23℃まで冷却する。このようにして試験片の状態調節を行った後、試験片を再び加熱速度10℃/分で200℃まで加熱して、DSC曲線を取得する。なお、測定環境下における窒素ガスの流量は、毎分30mLとする。以上により得られたDSC曲線に現れた融解ピークの頂点温度を、発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂の融点とする。なお、DSC曲線に複数の融解ピークが現れる場合は、ベースラインを基準とした融解ピークの高さが最も高い融解ピークの頂点温度を、発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂の融点とする。
【0018】
本発明の発泡粒子は、前記基材樹脂の他に、本発明の目的及び作用効果を損なわない範囲において、ポリオレフィン系樹脂以外の他の樹脂やエラストマー等が含まれてもよい。
ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、酢酸ビニル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ポリアリーレンスルフィド系樹脂等の熱可塑性樹脂が例示される。
また、前記エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー等が例示される。オレフィン系樹脂以外の樹脂及びエラストマーは、ポリオレフィン系樹脂(基材樹脂)100質量部に対して20質量部以下の範囲で含まれることが好ましく、10質量部以下の範囲で含まれることがより好ましい。本発明の発泡粒子は、実質的にポリオレフィン系樹脂以外の他の樹脂やエラストマーが含まれていないことが特に好ましい。
【0019】
[NOR型ヒンダードアミン系化合物]
本発明の発泡粒子は、下記一般式(I)で表されるNOR型ヒンダードアミン系化合物を、0.01質量%以上3質量%以下の範囲で含有する。高い基準を満たす難燃性を発現可能であるという観点からは、本発明の発泡粒子は、特定のヒンダードアミン系化合物を0.02質量%以上の範囲で含有することが好ましく、0.03質量%以上の範囲で含有することがより好ましい。また、高い難燃性を発現可能であるとともに十分に優れた型内成形性を示すという観点から、本発明の発泡粒子は、特定のヒンダードアミン系化合物を2質量%以下の範囲で含有することが好ましく、1.5質量%以下の範囲で含有することがより好ましい。なお、発泡粒子に特定のNOR型ヒンダードアミン系化合物が2種以上含まれる場合、これらの含有量の合計を、発泡粒子中の特定のNOR型ヒンダードアミン系化合物の含有量とする。
下記一般式(I)で表される構造のように、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン構造における窒素原子が、酸素原子を介して炭素水素基と結合するヒンダードアミン系化合物は、NOR型ヒンダードアミンと呼ばれる。
【化4】
(一般式(I)中、R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立に炭化水素基を表し、Xはアルカノールアミン基を表す。)
【0020】
発泡粒子中のNOR型ヒンダードアミン系化合物の含有量は、例えば発泡粒子を、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)等に供することにより求めることができる。プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)により、NOR型ヒンダードアミン系化合物の含有量を求める場合、例えば以下の方法を採用することができる。
まず、冷凍粉砕した発泡粒子に対して、溶媒としてクロロホルムを用いてソックスレー抽出を行い、クロロホルム不溶部である重合体成分などを除去する。次いで、ソックスレー抽出で得られたクロロホルム可溶部をアセトンと混合し、アセトン不溶部を除去する。アセトン可溶部から溶媒を除去して得られた固体を測定試料として用い、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)による測定を行う。この測定結果と、濃度既知の標準品(内部標準試料)の測定結果との関係から、発泡粒子中のNOR型ヒンダードアミン系化合物の含有量を求めることができる。プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)による測定を行うための装置としては、例えば、日本電子株式会社製AL-400型を使用することができる。また前記測定において、溶媒:CDCl3、内部標準試料:テトラクロロエタン(TCE)という測定条件を採用することができる。
【0021】
本発明に用いられる特定のヒンダードアミン系化合物は、従来、難燃剤として用いられている他のNOR型ヒンダードアミン系化合物と異なり、一般式(I)におけるXがアルカノールアミン基である。特定のヒンダードアミン系化合物を難燃剤として用いることによって、発泡粒子の難燃性が向上するとともに、当該発泡粒子の型内成形性が良好に維持される理由は明らかではない。但し本発明のかかる優れた効果が発現する理由は、以下の通り推察される。即ち、一般式(I)におけるXがアルカノールアミン基であり、このXにおける-OH基が発泡粒子(発泡粒子成形体)の燃焼時における不燃性ガスの合成中間体を形成する触媒として作用すると推察される。そのため、特定のヒンダードアミン系化合物の配合量が抑制されても高い難燃性が発現するとともに、型内成形性が良好に維持されると推察される。
前記Xにおいて、-OH基を-NH基に近接させて上述する触媒作用を生じやすくさせることにより、優れた難燃性が安定して発現する発泡粒子を得やすくなる観点からは、前記一般式(I)におけるXの炭素数は、1~8であることが好ましく、1~6であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましい。
【0022】
型内成形性が良好であり、かつ高い基準を満たす難燃性を示す発泡粒子をより安定して得ることができるという観点から、前記一般式(I)におけるR1及びR2の炭化水素基の炭素数は、1~20であることが好ましく、2~16であることが好ましく、3~10であることが更に好ましい。また、R1及びR2の炭化水素基は、アルキル基又はシクロアルキル基であることが好ましい。
また、同様の観点から、前記一般式(I)におけるR3及びR4の炭化水素基の炭素数は、1~20であることが好ましく、2~10であることが好ましく、3~8であることが更に好ましい。また、R3及びR4の炭化水素基は、アルキル基又はシクロアルキル基であることが好ましい。
また、下記態様1又は態様2のいずれかを満たすことが更に好ましく、両方を満たすことが特に好ましい。
態様1:一般式(I)におけるR1及びR2がシクロヘキシル基である。
態様2:一般式(I)におけるR3及びR4がブチル基である。
【0023】
なお、一般式(I)におけるXは、アルカン骨格にヒドロキシ基とアミノ基を持った置換基であるアルカノールアミン基である。本発明に用いられる特定のヒンダードアミン系化合物は、前記Xのアルカン骨格の炭素が2であるエタノールアミン基であることが好ましく、前記Xのアルカン骨格の炭素が2であるエタノールアミン基であるとともに前記態様1、2を満たすことがより好ましい。
【0024】
特定のヒンダードアミン系化合物の融点は、60℃以上100℃以下であることが好ましく、70℃以上95℃以下であることがより好ましく、75℃以上90℃以下であることが更に好ましい。特定のヒンダードアミン系化合物の融点が前記範囲であることで、当該ヒンダードアミン系化合物を基材樹脂中に良好に分散させやすく、型内成形性に優れる発泡粒子を安定して得ることができる。またそのように得られた発泡粒子を用いて成形された発泡粒子成形体において、ヒンダードアミン系化合物は成形体表面に移行しにくくなる傾向にある。その結果、長期間にわたって優れた難燃性能を発現する発泡粒子成形体を安定して得ることができる。
ここでNOR型ヒンダードアミン系化合物の融点は、JIS K 0064:1992の「3.融点測定方法」の「(1)目視による方法」によって測定することができる。
なお、発泡粒子をプロトン核磁気共鳴(1H-NMR)等に供することにより、発泡粒子に含まれるNOR型ヒンダードアミン系化合物の構造を特定し、かかる構造を有するNOR型ヒンダードアミン系化合物の融点を測定することで、発泡粒子に含まれるNOR型ヒンダードアミン系化合物の融点を求めてもよい。
【0025】
特定のヒンダードアミン系化合物の分子量は、1000以下であることが好ましく、900以下であることがより好ましい。特定のヒンダードアミン系化合物の分子量が前記範囲であることで、ヒンダードアミン系化合物が基材樹脂中に良好に分散して存在しやすくなり、型内成形性に優れる発泡粒子を安定して得ることができる。なお、分子量の下限は、概ね550であり、600であることが好ましい。
ここでNOR型ヒンダードアミン系化合物の分子量は、NOR型ヒンダードアミン系化合物を構成する原子の原子量の合計として求めることができる。なお、発泡粒子をプロトン核磁気共鳴(1H-NMR)等に供することにより、発泡粒子に含まれるNOR型ヒンダードアミン系化合物の構造を特定し、かかる構造から、NOR型ヒンダードアミン系化合物の分子量を求めてもよい。
【0026】
本発明の発泡粒子は、難燃剤として前記一般式(I)で表される特定のヒンダードアミン系化合物から選択される1種又は2種以上の化合物を含有する。また、本発明の目的及び作用効果を阻害しない範囲で、本発明の発泡粒子は、一般式(I)で表される特定のヒンダードアミン系化合物に加えて、特定のヒンダードアミン系化合物以外の他の難燃剤を含有してもよい。他の難燃剤としては、前記特定のヒンダードアミン系化合物以外のNOR型ヒンダードアミン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、金属水酸化物等が例示される。
一般式(I)で表される特定のヒンダードアミン系化合物以外の難燃剤は、発泡粒子中の特定のヒンダードアミン系化合物100質量部に対して、40質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることが更に好ましく、10質量部以下であることが特に好ましい。本発明の発泡粒子は、実質的に特定のヒンダードアミン系化合物以外の難燃剤が含まれていないことが特に好ましい。
【0027】
[炭素材料]
本発明の発泡粒子は、更に炭素材料を含有してもよい。一般的に炭素材料を含む発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体は燃え易くなる傾向がある。しかしながら特定のヒンダードアミン系化合物を含む本発明の発泡粒子は、炭素材料を含む場合であっても優れた難燃性を示し得る。本発明の発泡粒子中の炭素材料の配合量は特に限定されないが、優れた難燃性を発現し易いという観点から、発泡粒子中の炭素材料の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上7%質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上5%質量%以下であることが更に好ましい。
【0028】
前記炭素材料としては、たとえばカーボンブラック、カーボンナノチューブ、黒鉛、グラフェン、カーボンナノファイバー、カーボンマイクロファイバー、カーボンマイクロコイル及びカーボンナノコイルから選択される、少なくとも一種の炭素粉体等が挙げられる。中でも、カーボンブラックを1質量%以上10質量%以下の範囲、より好ましくは1質量%以上5質量%以下で含有する本発明の発泡粒子は、難燃性に優れるとともに、融着性、表面外観、回復性にも優れる黒色の発泡粒子成形体を提供可能であるため好ましい。本発明の発泡粒子に含有される炭素材料は1種でもよく、また2種以上であってもよい。
【0029】
前記カーボンブラックには、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ローラーブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック等が含まれる。
【0030】
なお、発泡粒子中の炭素材料の含有量は、例えば、熱重量示差熱分析装置(つまり、TG-DTA)により求めることができる。この場合、まず発泡粒子に対してJIS K7120-1987に基づいた測定を行う。そして前記測定によって得られたTG曲線の所定温度範囲(例えば、400℃から1000℃まで)における質量減少率に基づいて、発泡粒子中の炭素材料の含有量を求めることができる。
【0031】
[その他の添加剤]
本発明の発泡粒子は、目的及び作用効果を阻害しない範囲で、任意の添加剤を含有することができる。任意の添加剤としては、たとえば難燃助剤、気泡調整剤、触媒中和剤、滑剤、結晶核剤、帯電防止剤、導電性付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等から選択される1種の添加剤又は2種以上の添加剤が挙げられる。
【0032】
[融着層]
本発明の発泡粒子は、その表面に、型内成形時において、より低い成形圧力でも発泡粒子同士を融着させやすくするための融着層を有していてもよい。融着層は、発泡粒子の表面全体に存在していてもよく、表面の一部に存在していてもよい。融着層を構成する樹脂としては、発泡粒子本体(芯層)を構成する基材樹脂の融点よりも低い融点を有する結晶性ポリオレフィン系樹脂、発泡粒子本体(芯層)を構成する基材樹脂の融点よりも低い軟化点を有する非晶性ポリオレフィン系樹脂などが例示される。なお、融着層を有する発泡粒子に関し、表面に融着層が設けられる発泡粒子本体を芯層と称する場合がある。発泡粒子が融着層を備える場合、発泡粒子中の融着層の割合は、概ね0.5重量%以上20重量%以下であり、1重量%以上10重量%以下であることが好ましい。また、発泡粒子が結晶性ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とする融着層を備える場合、発泡粒子本体を構成する基材樹脂の融点と、融着層を構成する基材樹脂の融点との差は、概ね1℃以上30℃以下であり、2℃以上25℃以下であることが好ましく、5℃以上20℃以下であることがより好ましい。
発泡粒子本体の表面に融着層を形成する方法は特に限定されず、例えば、表面に融着層を有する樹脂粒子を発泡させる方法や、発泡粒子を得てから当該発泡粒子の表面に融着層を付着させる方法等を例示できる。表面に融着層を有する樹脂粒子を発泡させて発泡粒子を得る場合には、樹脂粒子を製造する際に、共押出が可能な押出装置を用いて、芯層を形成するための溶融混合物と、融着層を形成するための樹脂溶融物とを共押出することで、樹脂粒子の表面に融着層を積層する方法を採用することが好ましい。
【0033】
[発泡粒子の嵩密度]
本発明の発泡粒子の嵩密度は、10kg/m3以上100kg/m3以下である。一般的には、発泡粒子の嵩密度が低くなると発泡粒子を構成する基材樹脂の量が少なくなるため、嵩密度の低い発泡粒子を用いて成形された発泡粒子成形体の燃焼速度は上昇する傾向にある。しかしながら本発明の発泡粒子は、特定のヒンダードアミン系化合物を難燃剤として含有する。これにより本発明は、発泡粒子の嵩密度は上述する低い範囲に調整されるが、当該発泡粒子を用いて成形された発泡粒子成形体の燃焼速度の上昇を抑制し得る。つまり本発明の発泡粒子は、軽量化が図られるとともに優れた難燃性を示す発泡粒子成形体を提供することができる。
【0034】
本発明の発泡粒子を型内成形して製造される発泡粒子成形体の軽量性をより向上させる観点からは、発泡粒子の嵩密度は、80kg/m3以下であることが好ましく、60kg/m3以下であることがより好ましく、50kg/m3以下であることが更に好ましい。
また、本発明の発泡粒子を型内成形して製造される発泡粒子成形体の圧縮強度等の機械的物性を高める観点からは、発泡粒子の嵩密度は、12kg/m3以上であることが好ましく、15kg/m3以上であることがより好ましく、18kg/m3以上であることが更に好ましい。
【0035】
上述する発泡粒子の嵩密度は、以下の方法により算出される。まず、測定に用いるための発泡粒子を気温23℃、相対湿度50%、1atmの環境中で24時間以上放置する。このようにして得られる発泡粒子群を容積1L以上のメスシリンダー内に嵩容積で1L以上充填し、充填された発泡粒子の高さを安定させた後、メスシリンダーの目盛から発泡粒子群の嵩体積(単位:L)を読み取る。そして、メスシリンダー内の発泡粒子群の質量(単位:g)を前述した嵩体積で除した値を単位換算することにより、発泡粒子の嵩密度(単位:kg/m3)を得ることができる。
【0036】
[発泡粒子の平均気泡径]
発泡粒子の平均気泡径は、50μm以上250μm以下であることが好ましく、55μm以上200μm以下であることがより好ましく、60μm以上150μm以下であることが更に好ましく、60μm以上120μm以下であることがより更に好ましい。発泡粒子の平均気泡径が前記範囲であることで、型内成形性が良好であると共に、優れた難燃性を示す発泡粒子成形体を製造可能な発泡粒子を安定して得ることができる。
発泡粒子の平均気泡径は、2分割した発泡粒子の断面の拡大写真において、発泡粒子の最表面から中心部を通って反対側の最表面まで線分を複数本引き、各線分と交差する気泡数を、線分の合計長さで除することで測定することができる。具体的には、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0037】
[発泡粒子の高温ピーク]
前記発泡粒子は、熱流束示差走査熱量測定により得られるDSC曲線において、ポリオレフィン系樹脂固有の融解ピーク(以下、「固有ピーク」という。)の頂点よりも高温側に、1つ以上の融解ピーク(以下、「高温ピーク」という。)が現れる結晶構造を有していることが好ましい。高温ピークを示す発泡粒子を型内成形に用いることによって、発泡粒子成形体を成形する際の成形条件を広い範囲から選択し得るとともに、得られる発泡粒子成形体の圧縮強度等の機械的物性をより高め得る。かかる観点からは、高温ピークの融解熱量(以下、「高温ピーク熱量」ともいう。)は、5J/g以上であることが好ましく、8J/g以上であることがより好ましい。また、高温ピーク熱量は、50J/g以下であることが好ましく、40J/g以下であることがより好ましい。
【0038】
発泡粒子の高温ピーク熱量は、以下の方法により算出することができる。まず、約3mgの発泡粒子を試験片とし、JIS K7122-1987に規定されたプラスチックの転移熱測定方法に従って試験片を加熱溶融させる際のDSC曲線を取得する。DSC曲線の温度範囲は23℃から融解ピーク終了時の温度よりも30℃高い温度までとし、加熱中の昇温速度は10℃/分とする。また、測定環境下における窒素ガスの流量は、毎分30mLとする。発泡粒子が高温ピークを有する場合、DSC曲線には、
図1に示すように、固有ピークaと、固有ピークaの頂点よりも高温側に頂点を有する高温ピークbとが現れる。尚、
図1は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の熱流束示差走査熱量測定法に基づき測定されたDSC曲線の一例である。
図1では1つの高温ピークbが示されているが、高温ピークbは2以上であってもよい。
【0039】
次に、DSC曲線上における80℃に相当する点Iと、発泡粒子の融解終了温度に相当する点IIとを結ぶ直線を引く。尚、融解終了温度は、高温ピークbにおける高温側の端点、つまり、DSC曲線における、高温ピークbが高温側のベースラインに戻る点である。
【0040】
次いで、
図1に示すとおり、固有ピークaと高温ピークbとの間に存在する極大点IIIを通りグラフの縦軸に平行な直線と、点Iと点IIとを結んだ直線との交点をIVとする。そして、点Iと点IVを結ぶ直線、点IIIと点IVとを結ぶ直線、及び点Iと点IIIとを結ぶDSC曲線で囲まれる面積を固有ピークaの面積とする。また点IVと点IIとを結ぶ直線、点IIIと点IVとを結ぶ直線、及び点IIIと点IIとを結ぶDSC曲線によって囲まれる部分(斜線部分)の面積を高温ピークbの面積とする。上述のとおり求めた固有ピークaの面積と高温ピークbの面積との合計から発泡粒子の全融解熱量の値を算出し、高温ピークbの面積から高温ピークbの融解熱量の値を算出する。
【0041】
尚、前述の方法によってDSC曲線を取得した後、発泡粒子を10℃/分の冷却速度で23℃まで冷却し、再度10℃/分の加熱速度で加熱してDSC曲線を取得した場合、DSC曲線には固有ピークaのみが現れ、高温ピークbはDSC曲線から消失する。
【0042】
[ポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体]
次に本発明の発泡粒子成形体について説明する。
本発明の発泡粒子成形体は、成形体の密度が10kg/m
3以上100kg/m
3以下であり、下記一般式(I)で表されるNOR型ヒンダードアミン系化合物(特定のヒンダードアミン系化合物)を含有する。発泡粒子成形体中の特定のヒンダードアミン系化合物の含有量は、0.01質量%以上3質量%以下である。
【化5】
(一般式(I)中、R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立に炭化水素基を表し、Xはアルカノールアミン基を表す。)
【0043】
特定のヒンダードアミン系化合物が所定範囲の量で含まれる本発明の発泡粒子成形体は、軽量性と圧縮強度等の機械的物性とのバランスに優れる上、難燃性にも優れる。また本発明の発泡粒子を型内成形して製造された本発明の発泡粒子成形体は、融着性、表面外観、及び回復性にも優れる。したがって本発明の発泡粒子成形体は、車両用部材、建築材料などの種々の用途に好適に使用可能である。
なお、発泡粒子成形体中のNOR型ヒンダードアミン系化合物の含有量は、発泡粒子中のNOR型ヒンダードアミン系化合物の含有量を求める方法と同様に、例えば発泡粒子成形体をプロトン核磁気共鳴(1H-NMR)等に供することにより求めることができる。
【0044】
上述するとおり、本発明の発泡粒子成形体の密度は、10kg/m3以上100kg/m3以下である。軽量性と剛性等の機械的物性とのバランスを図り、かつ難燃性を確実に発現させる観点から、前記密度は、12kg/m3以上80kg/m3以下であることが好ましく、15kg/m3以上60kg/m3以下であることがより好ましい。
【0045】
発泡粒子成形体の密度は、発泡粒子成形体の質量を外形寸法に基づいて算出される体積で除することにより算出される。
【0046】
<難燃性>
発泡粒子成形体の難燃性は、FMVSS(Federal Motor Vehicle Safety Standard) No.302に規定された燃焼性試験を実施した場合の燃焼終了位置、燃焼継続時間及び燃焼距離に基づいて評価することができる。FMVSS No.302に規定された燃焼性試験方法は、具体的には以下の通りである。
【0047】
まず、前記発泡粒子を型内成形した後、得られた発泡粒子成形体を切削することにより板状の試験片を作製する。次に、試験片を温度21℃、相対湿度50%の環境下で24時間放置し、試験片の状態を調整する。状態を調整した後の試験片における、長さ方向の基端から38mm離れた位置に開始線を引くとともに、基端から292mm離れた位置に終了線を引く。次いで、試験片をFMVSS No.302専用チャンバーのU字型フレームに取り付ける。
【0048】
次に、バーナーに着火し、炎の高さが38mmとなるようにガス量及び空気量等を調節する。この状態でバーナーの先端中央が試験片の基端における幅方向の中央となるようにバーナーを移動させ、バーナーの炎を試験片に15秒間接触させる。その後、バーナーの炎を試験片から離し、試験片の燃焼位置が開始線に到達してから燃焼が終了するまでの燃焼継続時間を計測する。
【0049】
本発明に関し、発泡粒子成形体の難燃性は、自己消火性及び平均燃焼速度について評価される。
具体的には、試験片に着火しない場合、試験片の燃焼が開始線に到達する前に終了した場合、又は、試験片の燃焼終了位置が開始線から51mm以内であり、かつ、燃焼継続時間が60秒以内である場合には、発泡粒子成形体が自己消火性を有していると判定する。また、前述した自己消火性に該当しない場合、開始線からの燃焼距離を燃焼継続時間で除することにより燃焼速度が求められる。10個以上の試験片を準備し、それぞれの燃焼速度を求め、これを算術平均したものを平均燃焼速度とする。
【0050】
前記FMVSS(Federal Motor Vehicle Safety Standard) No.302に規定された燃焼性試験を行った結果、燃焼速度が102mm/分以下であることが好ましく、燃焼速度が80mm/分未満であることがより好ましく、自己消火性を示すことが更に好ましい。燃焼性がより好ましいと評価され、又は更に好ましいと評価される発泡粒子成形体は、特に高い難燃性を求められる用途に好適に使用することができる。中でも自己消火性を有する発泡粒子成形体は、例えば自動車のバンパーや座席芯材等の車両用部材用途に好適である。
【0051】
本発明の発泡粒子成形体は、たとえば本発明の発泡粒子を型内成形することにより好適に製造される。本発明の発泡粒子を型内成形して製造された本発明の発泡粒子成形体は、上述する本発明の発泡粒子における優れた効果を享受する。
たとえば本発明の発泡粒子成形体は、黒色を呈する本発明の発泡粒子を型内成形することによって製造されてもよい。この場合、当該発泡粒子成形体は、黒色を呈する上、良好な難燃性を発現し得る。かかる観点から、発泡粒子成形体が炭素材料を含有する場合、発泡粒子成形体中の炭素材料の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上7%質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上5%質量%以下であることが更に好ましい。
また、発泡粒子成形体がカーボンブラックを含有する場合、発泡粒子成形体中のカーボンブラックの含有量は、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上5質量%以下であることが更に好ましい。
【0052】
[ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造方法]
本発明の発泡粒子の製造方法としては、発泡粒子中に含まれる特定のNOR型ヒンダードアミン系化合物の含有量が特定範囲である発泡粒子を得ることができる方法であれば、特に限定されるものではないが、例えば特定のNOR型ヒンダードアミン系化合物を含む樹脂粒子を発泡させる方法や、発泡粒子に特定のNOR型ヒンダードアミン系化合物を含浸させる方法等が挙げられる。
次に本発明の発泡粒子を製造する方法の好ましい一態様について説明する。
本発明の発泡粒子は、発泡剤を含むポリオレフィン系樹脂粒子を発泡させることで得ることできる。例えば、発泡剤を含むポリオレフィン系樹脂粒子を水性媒体とともに圧力容器から該圧力容器内よりも低い圧力下に放出して発泡させる発泡工程を有する製造方法により発泡粒子を作製することができる。なお、前記ポリオレフィン系樹脂粒子は、少なくとも、ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とする。また、樹脂粒子は特定のNOR型ヒンダードアミン系化合物を含むことが好ましい。
【0053】
前記製造方法においては、発泡工程により得られた発泡状態の粒子をそのまま発泡粒子としてもよい。また、後述するように、発泡工程により得られた発泡状態の粒子を一段発泡粒子とし、一段発泡粒子を用いて二段発泡工程を行うことにより、発泡粒子を作製することもできる。より嵩密度が低い発泡粒子を得る観点からは、発泡工程を行った後に二段発泡工程を行うことが好ましい。
【0054】
<造粒工程>
発泡粒子の製造方法は、発泡工程に先立って、ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とし、特定のNOR型ヒンダードアミン系化合物を少なくとも含むポリオレフィン系樹脂粒子(以下、「樹脂粒子」という。)を作製する造粒工程を有することが好ましい。造粒工程における樹脂粒子の作製方法は、特に限定されることはない。例えば、押出成形によってポリオレフィン系樹脂、及び特定のNOR型ヒンダードアミン系化合物等を混練しつつ押し出すことによりストランドを作製し、次いで、ペレタイザー等によりストランドを所望の寸法に切断することにより、前記樹脂粒子を得ることができる。
【0055】
<発泡工程>
発泡工程では、まず、樹脂粒子を圧力容器内に供給し、水などの水性の分散媒中に分散させる。この際、必要に応じて、圧力容器内の分散媒に樹脂粒子を分散させるための分散剤や分散助剤、界面活性剤等を添加してもよい。
【0056】
分散剤としては、例えば、酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、カオリン、マイカ等の無機微粒子を使用することができる。これらの無機微粒子は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。分散助剤としては、例えば、硫酸アルミニウム等を使用することができる。また、界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤を使用することができる。これらの界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
圧力容器を密封した後、容器内に発泡剤を加える。これにより、発泡剤を樹脂粒子に含浸させることができる。この際、圧力容器内を加温することにより、樹脂粒子への発泡剤の含浸を促進することができる。なお、予め発泡剤が含浸された樹脂粒子を圧力容器内に供給してもよい。
【0058】
所定量の発泡剤を樹脂粒子に含浸させた後に、圧力容器の内容物を容器の内圧よりも低い圧力下に放出することにより、樹脂粒子を発泡させて発泡粒子(一段発泡粒子)を得ることができる。
【0059】
尚、カーボンブラック等の任意の添加剤は、例えば、造粒工程において基材樹脂と混練する方法等により樹脂粒子中に配合することができる。
【0060】
発泡工程において使用される発泡剤としては、例えば、炭化水素及びハロゲン化炭化水素などの有機物理発泡剤や、二酸化炭素、窒素、空気及び水等の無機物理発泡剤を使用することができる。有機物理発泡剤として使用し得る炭化水素には、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン等が挙げられる。有機物理発泡剤として使用し得るハロゲン化炭化水素には、例えば、トリクロロフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、テトラクロロジフルオロエタン等が挙げられる。有機物理発泡剤としては、前述した物質を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。同様に、無機物理発泡剤としては、前述した物質を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
本発明の発泡粒子の製造において、発泡剤は、無機物理発泡剤であることが好ましく、二酸化炭素であることがより好ましい。かかる発泡剤を用いて樹脂粒子を発泡させることにより、最終的に、発泡倍率が高く、かつ難燃性の良好な発泡粒子成形体を製造できる発泡粒子を容易に得ることができる。また、二酸化炭素は不燃性であるため、発泡剤として二酸化炭素を用いることにより、発泡剤に起因する発泡粒子成形体の難燃性の悪化を回避することができる。
【0062】
発泡剤の添加量は、基材樹脂の種類や発泡剤の種類、目的とする発泡粒子の嵩密度等に応じて適宜設定することができる。例えば、発泡剤として二酸化炭素を用いる場合には、その添加量は樹脂粒子100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上15質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上10質量部以下であることが更に好ましい。
【0063】
前記発泡工程は、樹脂粒子を発泡させる前に、前述した高温ピークを生成させる工程を含んでいてもよい。高温ピークを生成させる方法としては、例えば、圧力容器内で樹脂粒子を分散媒内で特定温度範囲内に保持して熱処理を行う方法を採用することができる。熱処理を行うタイミングは特に限定されることはなく、発泡剤の含浸前、含浸中及び含浸後のいずれかの時点で熱処理を行ってもよいし、前述した時点のうち2以上の時点にまたがって行われてもよい。この熱処理により、ポリオレフィン系樹脂固有の結晶に由来する融解ピーク(固有ピーク)と、該固有ピークよりも高温側に位置する融解ピーク(高温ピーク)を示す結晶構造を有する発泡粒子を得ることができる。ここで熱処理として、たとえば、樹脂粒子を圧力容器内に投入後、当該圧力容器内の温度を昇温する昇温工程途中において、所定時間、所定の温度を保持する温度保持工程を実施するとよい。
【0064】
<二段発泡工程>
前記製造方法は、二段発泡工程を更に有してもよい。前記二段発泡工程は、例えば、前記発泡工程により得られた一段発泡粒子が充填された耐圧容器内を、空気等により加圧し、前記一段発泡粒子に空気等を含浸させて気泡内の圧力を上昇させ、次いで、加圧処理された一段発泡粒子を加熱して発泡させることにより実施される。二段発泡工程における発泡粒子の加熱は、圧力の調整された耐圧容器内で行ってもよいし、前記耐圧容器から取り出し前記気泡内の圧力よりも低圧下で行ってもよい。二段発泡工程に用いる一段発泡粒子としては、発泡工程が完了した後、大気圧下での養生を行った後の一段発泡粒子を用いることが好ましい。
【0065】
前記製造方法において、樹脂粒子を前記発泡工程と前記二段発泡工程との二段階で発泡させることにより、低密度の発泡粒子をより容易に得ることができる。またここでは二段発泡工程について説明したが、当該二段発泡工程により得られた発泡粒子を用い、更に三段発泡工程以上の発泡工程を行ってもよい。
【0066】
尚、本明細書において、発泡工程において使用する容器を「圧力容器」、二段発泡工程において使用する容器を「耐圧容器」と称したが、いずれも密閉可能であり、圧力を付与できる容器であればよい。
【0067】
[ポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体の製造方法]
本発明の発泡粒子成形体の製造方法は、上述する構成を備える発泡粒子成形体が得られ範囲において特に制限されない。たとえば本発明の発泡粒子成形体の製造方法の好ましい一態様として、上述する本発明の発泡粒子を用いる型内成形が挙げられる。
前記型内成形は、発泡粒子を用いた公知の型内成形方法を広く含む。たとえば、本発明の発泡粒子成形体の型内成形は、以下のとおり実施することができる。
【0068】
まず所望する発泡粒子成形体の形状に対応したキャビティを有する成形型内に本発明の発泡粒子を充填し、スチーム等の加熱媒体により成形型内に充填された発泡粒子に所定の成形圧力をかけて加熱する。このようにキャビティ内の発泡粒子を加熱することによって更に発泡させると共に、発泡粒子を相互に融着させる。次いでスチーム等による加熱終了後、放圧するとともに、速やかに成形型及び成形型内の成形体の冷却を開始し、成形型の内面に生じる圧力(面圧)が所定値以下になったことが確認されたら冷却を終了して型開きし、当該成形型から発泡粒子成形体を取り出す。ここでの冷却方法は特に限定されないが、たとえば水冷等が挙げられる。かかる一連の成形工程によって、キャビティの形状に応じた発泡粒子成形体が得られる。
【実施例0069】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
表1、表2において、使用したNOR型ヒンダードアミン系化合物と、発泡粒子100質量%におけるNOR型ヒンダードアミン系化合物の含有量(質量%)を示す。
【0070】
(実施例1)
<造粒工程>
押出機に、ポリプロピレン系樹脂と、カーボンブラックと、NOR型ヒンダードアミン系化合物と、気泡調整剤とを供給し、押出機内でこれらを混練しつつ押し出すことにより、これらを含むストランドを作製した。その後、得られたストランドを、ペレタイザーを用いて切断することにより、長さ/直径比が2.0、平均質量が1.0mgの樹脂粒子を得た。
なお、ポリプロピレン系樹脂として、融点143℃、230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイト7g/10分であるプロピレン-エチレンランダム共重合体を用いた。カーボンブラックとしては、ファーネスブラックを使用し、発泡粒子中のカーボンブラックの含有量が3質量%となるように添加した。NOR型ヒンダードアミン系化合物として、上述する一般式(I)の構造を有し、下記化学式(II)の構造を示す化合物(製品名;Tinuvin152、BASF社製、融点83℃、分子量757)を用いた。NOR型ヒンダードアミン系化合物は、発泡粒子中の含有量が表1に示す値となるよう添加した。気泡調整剤としては、ホウ酸亜鉛粉末を使用し、発泡粒子中の含有量が0.05質量%となるように添加した。
【化6】
【0071】
<発泡工程>
内容量5Lのオートクレーブ(圧力容器)に、樹脂粒子100質量部に対して0.3質量部の分散剤と、0.01質量部の分散助剤と、0.004質量部の界面活性剤と、300質量部の分散媒とを封入した。尚、分散剤はカオリンであり、分散助剤は硫酸アルミニウムであり、界面活性剤はドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムであり、分散媒は水である。
次いで、オートクレーブ内に発泡剤として二酸化炭素を供給し、ゲージ圧で1.0MPa(G)となるまでオートクレーブ内を加圧した。その後、オートクレーブ内を攪拌しながら2℃/分の昇温速度で144℃に達するまでオートクレーブ内を昇温させた。オートクレーブ内の温度が144℃に達した後、攪拌を継続しつつこの温度を15分間保持した。
次いで、オートクレーブ内を攪拌しながら2℃/分の昇温速度で149℃に達するまでオートクレーブ内を昇温させた。オートクレーブ内の温度が149℃に達した後、オートクレーブ内に二酸化炭素を供給してオートクレーブ内の圧力を2.7MPa(G)に調整しつつ、149℃の温度を15分間保持した。その後、オートクレーブを開放し、内容物を大気圧下に放出させた。以上により、樹脂粒子を発泡させて、嵩密度45kg/m3の一段発泡粒子を得た。尚、本明細書において(G)を付した圧力の単位は、ゲージ圧、つまり、大気圧を基準とした圧力の値であることを意味する。
【0072】
<二段発泡工程>
発泡工程において得られた一段発泡粒子を気温23℃、相対湿度50%、1atmの環境中で24時間放置して養生を行った後、耐圧容器内に養生後の一段発泡粒子を充填した。次いで、耐圧容器内に空気を注入し、24時間かけて耐圧容器内の圧力を常圧から0.60MPa(G)まで上昇させた。この圧力を24時間維持して空気を気泡内に含浸させた。
次に、耐圧容器から取り出した一段発泡粒子を二段発泡機に充填し、圧力0.15MPa(G)のスチームを供給することにより、一段発泡粒子を更に発泡させ、二段発泡粒子を得た。表1に、得られた二段発泡粒子の嵩密度、平均気泡径、高温ピークの融解熱量を示す。
【0073】
尚、二段発泡粒子の嵩密度は上述する発泡粒子の嵩密度の測定方法に従って測定した。具体的には、まず、発泡粒子を気温23℃、相対湿度50%、1atmの環境中で24時間以上放置した。このようにして得られた発泡粒子群を1L目盛りのついたメスシリンダー内に充填すると共に、メスシリンダーの底面で床面を数度、軽く叩くことにより、メスシリンダー内に充填された発泡粒子群の高さ位置が1Lの目盛りとなるように安定させた。このようにして得られたメスシリンダー内の嵩体積1Lの発泡粒子群の質量(単位:g)を測定すると共に、単位換算することにより、発泡粒子の嵩密度(単位:kg/m3)を算出した。
また二段発泡粒子の高温ピークの融解熱量は上述する高温ピークbの融解熱量の測定方法に従って測定した。
また、二段発泡粒子の平均気泡径は次のように測定した。まず、無作為に30個の発泡粒子を選択した。発泡粒子をその中心部を通るように切断して2分割し、一方の断面の拡大写真をそれぞれ撮影した。各断面写真において、発泡粒子の最表面から中心部を通って反対側の最表面まで、隣接する2線分の成す角が等角度となるように4本の線分を引いた。各線分と交差する気泡数をそれぞれ計測し、4本の線分の合計長さを、線分と交差する全気泡数で除することで、各発泡粒子の平均気泡径を求めた。そして各発泡粒子の平均気泡径の値を算術平均することにより、発泡粒子の平均気泡径を求めた。
【0074】
<型内成形>
前述の方法により得られた二段発泡粒子を、長さ350mm、幅250mm、厚み50mmの平板を成形可能な金型に充填して以下の加熱方法で加熱を行い、発泡粒子成形体を作製した。
まず、金型の両面に設けられたドレン弁を開放した状態で当該金型にスチームを供給して予備加熱(排気工程)を行った。その後、金型の一方側からスチームを供給して加熱し、更に金型の他方側からスチームを供給して加熱を行った。続いて、所定の成形圧(成形スチーム圧)で、金型の両側からスチームを供給して加熱した(本加熱)。本加熱終了後、放圧し、金型の成形面に生じる圧力が0.04MPa(G)になるまで水冷した後、金型を開放し発泡粒子成形体を取り出した。得られた成形体を80℃のオーブン中で12時間養生し、発泡粒子成形体を得た。
発泡粒子の成形圧範囲を、以下の方法により評価した。
【0075】
(成形圧範囲(良品を成形可能な成形スチーム圧の範囲))
前述する型内成形で、型内成形時の成形圧を0.01MPaずつ変化させて発泡粒子成形体を成形し、得られた発泡粒子成形体の融着性、表面外観、回復性の項目について、下記のとおり評価した。下記で示した3つの項目全てが合格となる発泡粒子成形体を成形可能であった型内成形時の成形圧(成形スチーム圧)を確認すると共に、成形スチーム圧の下限値から上限値までの幅を成形圧範囲とした。これによって用いた発泡粒子の型内成形性を確認した。
なお、合格基準に達する発泡粒子成形体を成形可能な成形スチーム圧の下限値から上限値までの幅が広いほど、良品を成形可能な成形スチーム圧の範囲が広く、好適である。また、良品を成形可能な成形スチーム圧の下限値が低いほど、低い成形スチーム圧でも良好な発泡粒子成形体を得ることができるため、生産性に優れる。
合格基準に達する発泡粒子成形体を成形可能な成形スチーム圧の下限値から上限値までの幅(成形圧範囲)は、0.02MPa以上であることが好ましく、0.03MPa以上であることがより好ましく、0.04MPa以上であることが更に好ましい。
【0076】
融着性:
得られた発泡粒子成形体を折り曲げて破断させ、その破断面に存在する発泡粒子の数(C1)と、破壊した発泡粒子の数(C2)とを求めた。前記発泡粒子の数に対する破壊した発泡粒子の数の比率(C2/C1×100)を材料破壊率として算出した。異なる試験片を用いて前記測定を5回行い、それぞれの材料破壊率を求め、それらを算術平均した材料破壊率が80%以上であるときを合格とし、80%未満であるときを不合格とした。
【0077】
表面外観:
得られた発泡粒子成形体の中央部に100mm×100mmの正方形を描き、該正方形の一の角から対角線上に線を引き、その線上の1mm×1mmの大きさ以上のボイド(間隙)の数を数えた。ボイドの数が5個未満であり、かつ表面に凹凸がないときを合格とし、それ以外を不合格とした。
【0078】
回復性:
型内成形により得られた長さ350mm、幅250mm、厚み50mmの平板形状の発泡粒子成形体における、四隅部付近の厚みと、中心部の厚みとをそれぞれ計測した。尚、前記四隅部付近とは、発泡粒子成形体の角より板面の中心方向に10mm内側の領域を指す。また前記中心部とは、発泡粒子成形体を、縦方向において2等分する線と、横方向において2等分する線との交点部分を指す。次いで、四隅部付近のうち最も厚みの厚い箇所の厚みに対する中心部の厚みの比(%)を算出した。比が95%以上であるときを合格とし、95%未満を不合格とした。
【0079】
(密度)
前述した成形可能範囲のうち、最も低い成形圧で型内成形を行い、発泡粒子成形体を得た。この発泡粒子成形体を80℃の環境下で24時間乾燥させた後、発泡粒子成形体の質量(単位:g)を測定した。その後、発泡粒子成形体の質量を、発泡粒子成形体の外形寸法から算出した体積(単位:L)で除した後、単位を換算することにより成形体の密度(単位:kg/m3)を算出した。
【0080】
(50%圧縮強度)
前述した成形可能範囲のうち、最も低い成形圧で型内成形を行い、発泡粒子成形体を得た。この発泡粒子成形体を80℃の環境下で24時間乾燥させた後、発泡粒子成形体の中心部から、縦50mm、横50mm、厚み25mmの直方体状の試験片を採取した。JIS K7220:2006に規定された方法に基づいて10mm/minの圧縮速度で試験片の圧縮試験を行い、応力-ひずみ曲線を取得した。なお、圧縮試験は23℃の実験室において行った。この応力-ひずみ曲線に基づいて試験片の50%変形圧縮応力を算出し、この値を成形体の50%圧縮強度とした。
【0081】
(FMVSS試験)
FMVSS(Federal Motor Vehicle Safety Standard) No.302に規定された燃焼性試験方法に準じた方法により難燃性の評価を行った。具体的には、まず、発泡粒子成形体を切断することにより、長さ350mm、幅102mm、厚み12.7mmの板状を呈し、長さ350mmの辺と幅102mmの辺とに囲まれた面の一方がスキン面である試験片を作製した。この試験片における、長さ方向の基端から38mm離れた位置に開始線を引くとともに、基端から292mm離れた位置に終了線を引いた。この試験片を用い、スキン面がバーナーの炎に触れるようにしてFMVSS No.302と同様の方法により燃焼性試験を行った。
【0082】
平均燃焼速度、及び自己消火率:
FMVSS試験を10回行い、これらの試験結果に基づいて、平均燃焼速度及び自己消火率を算出した。
平均燃焼速度は、各試験片において測定された燃焼速度を算術平均することにより求めた。試験片の燃焼速度は、下記式(1)により算出した。
[数1]
B=60×D/T ・・・・・(1)
【0083】
但し、前記式(1)における記号Bは燃焼速度(単位:mm/分)であり、記号Dは炎が進行した距離(単位:mm)であり、記号Tは炎がDmm進行するために要した時間(単位:秒)を意味する。
尚、試験片が自己消火した場合には、燃焼速度は0mm/分として取り扱った。ここで、「試験片が発火しなかった」場合、「燃焼時間の計測開始位置(つまり、上記開始線)に到達する前に試験片の燃焼が終了した」場合及び「燃焼時間の計測開始位置に到達してから60秒以内に試験片の燃焼が終了し、かつ、計測開始位置から燃焼終了位置までの距離が51mm以内であった」場合を、試験片が自己消火したものと判断した。
【0084】
自己消火率は、「自己消火」したと評価された試験の回数を、試験数(10回)で除し、百分率で表すことにより求めた。
【0085】
(実施例2~4)
発泡粒子中のNOR型ヒンダードアミン系化合物の含有量を表1に示す値に変更したこと以外は実施例1と同様に一段発泡粒子及び二段発泡粒子を製造した。この二段発泡粒子を用いて、実施例1と同様に型内成形を行い、発泡粒子成形体を得た。これらをそれぞれ、実施例2~4とした。
【0086】
(実施例5)
以下の方法で製造された樹脂粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様に一段発泡粒子及び二段発泡粒子を製造した。この二段発泡粒子を用いて、実施例1と同様に型内成形を行い、発泡粒子成形体を得た。
尚、実施例5に用いた芯層を形成するためのポリプロピレン系樹脂と、カーボンブラックと、NOR型ヒンダードアミン系化合物と、気泡調整剤は、実施例1において用いた材料と同じものを用いた。
【0087】
まず、芯層形成用押出機、該芯層形成用押出機の下流側に付設された多層ストランド形成用ダイ及び融着層形成用押出機を備える製造装置を準備した。尚、製造装置は、融着層形成用押出機の下流側と、多層ストランド形成用ダイとが接続されており、ダイ内で各層を形成するための樹脂溶融物の積層が可能であると共に、共押出が可能な構成とした。
【0088】
芯層形成用材料として、ポリプロピレン系樹脂、カーボンブラック、特定のNOR型ヒンダードアミン系化合物、気泡調整剤を芯層形成用押出機に供給し、溶融混練してポリプロピレン系樹脂溶融物とした。この際、得られる発泡粒子の芯層において、カーボンブラックの含有量が3質量%、特定のNOR型ヒンダードアミン系化合物の含有量が0.1質量%、気泡調整剤の含有量が0.05質量%となるように、各材料の配合量を調整した。
また、融着層形成用材料として、ポリプロピレン系樹脂、カーボンブラック、特定のNOR型ヒンダードアミン系化合物を融着層形成用押出機に供給し、溶融混練してポリプロピレン系樹脂溶融物とした。この際、得られる発泡粒子の融着層において、カーボンブラックの含有量が3質量%、特定のNOR型ヒンダードアミン系化合物の含有量が0.1質量%となるように、各材料の配合量を調整した。
尚、融着層を形成するためのポリプロピレン系樹脂として、融点133℃、230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイト6g/10分であるプロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体を用いた。
【0089】
上述のとおり形成された各層形成用の樹脂溶融物を、多層ストランド形成用ダイに導入してダイ内で合流させ、ダイの下流側に取り付けた口金の細孔から、2層構造(融着層/芯層の構造)を有する多層ストランドを押出した。押出されたストランドを水冷し、ペレタイザーにて切断することにより、長さ/直径比が2.0、平均質量が1.0mgのポリプロピレン系樹脂粒子(芯層/融着層=95/5)を得た。
【0090】
(実施例6)
カーボンブラックを用いなかったこと以外は実施例1と同様に一段発泡粒子及び二段発泡粒子を製造した。この二段発泡粒子を用いて、実施例1と同様に型内成形を行い、発泡粒子成形体を得た。これを実施例6とした。
【0091】
(実施例7)
実施例1の製造工程において作成された一段発泡粒子を用いて、実施例1と同様に型内成形を行い、発泡粒子成形体を得た。これを、実施例7とした。
【0092】
(比較例1~4)
使用するNOR型ヒンダードアミン系化合物に関し、表2に示す内容に変更したこと以外は、実施例1と同様に一段発泡粒子及び二段発泡粒子を製造した。この二段発泡粒子を用いて、実施例1と同様に型内成形を行い、発泡粒子成形体を得た。これらを比較例1~4とした。
尚、比較例1~4では、上述する一般式(I)の構造を有しないNOR型ヒンダードアミン系化合物を用いた。具体的には、比較例1、2で用いたNOR型ヒンダードアミン系化合物は、「商品名;NOR116FF、BASF社製、融点108℃、分子量2261」であり、比較例3で用いたNOR型ヒンダードアミン系化合物は、「商品名;EVERSORB95、Everlight Chemical社製、常温で液体、分子量737」であり、比較例4で用いたNOR型ヒンダードアミン系化合物は、ポリマー型のヒンダードアミン系化合物であり、「商品名;NOR371FF、BASF社製、融点91℃、分子量2800~4000」である。
【0093】
実施例2~実施例7および比較例1~比較例4について、実施例1と同様に、発泡粒子の高温ピーク、嵩密度、平均気泡径および発泡粒子性成形体の密度、成形圧範囲、50%圧縮強度、FMVSS試験を行った。尚、実施例7は、二段発泡工程を実施しなかったため、上述する各測定には一段発泡粒子を用いた。
【0094】
【0095】
【0096】
上述する本発明は、以下の技術思想を包含する。
(1)嵩密度が10kg/m
3以上100kg/m
3以下であり、NOR型ヒンダードアミン系化合物を含有するポリオレフィン系樹脂発泡粒子であって、
前記NOR型ヒンダードアミン系化合物は下記一般式(I)で表され、
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子中の前記NOR型ヒンダードアミン系化合物の含有量が0.01質量%以上3質量%以下である、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
【化7】
(一般式(I)中、R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立に炭化水素基を表し、Xはアルカノールアミン基を表す。)
(2)前記NOR型ヒンダードアミン系化合物の融点が60℃以上100℃以下である、前記(1)に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
(3)前記NOR型ヒンダードアミン系化合物の分子量が1000以下である、前記(1)又は(2)に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
(4)前記一般式(I)におけるXがエタノールアミン基である、前記(1)から(3)のいずれか一項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
(5)前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子が、さらに炭素材料を含有する、前記(1)から(4)のいずれか一項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
(6)密度が10kg/m
3以上100kg/m
3以下であり、NOR型ヒンダードアミン系化合物を含有するポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体であって、
前記NOR型ヒンダードアミン系化合物は下記一般式(I)で表され、
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体中の前記NOR型ヒンダードアミン系化合物の含有量が0.01質量%以上3質量%以下である、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体。
【化8】
(一般式(I)中、R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立に炭化水素基を表し、Xはアルカノールアミン基を表す。)