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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016994
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】乗用型田植機の施肥装置
(51)【国際特許分類】
   A01C 15/00 20060101AFI20240201BHJP
   A01C 11/00 20060101ALI20240201BHJP
   A01C 15/04 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
A01C15/00 J
A01C11/00 302
A01C15/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119333
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】福島 寿美
(72)【発明者】
【氏名】野村 仁志
(72)【発明者】
【氏名】山下 英希
(72)【発明者】
【氏名】豊田 浩史
(72)【発明者】
【氏名】近藤 裕志
(72)【発明者】
【氏名】浦 由香
(72)【発明者】
【氏名】山崎 仁史
(72)【発明者】
【氏名】名本 学
【テーマコード(参考)】
2B052
2B060
【Fターム(参考)】
2B052BC05
2B052BC09
2B052BC16
2B052EA02
2B052EA03
2B052EB02
2B052EC01
2B052EC11
2B060AA10
2B060AC03
2B060AD09
2B060AE10
2B060BA04
2B060BB09
(57)【要約】
【課題】本発明は水を張った圃場で苗の移植と同時に肥料の散布を行う乗用型田植機において、肥料タンクから繰り出した肥料を圃場へ確実に移送して散布出来るようにすることを課題とする。
【解決手段】エンジン20の出力をミッションケース12に伝動して走行する乗用型田植機8の後部に苗植付部4と施肥装置5を設け、苗植付部4による苗の移植作業と肥料タンク60から施肥ホース62を通して肥料散布作業を行う乗用型田植機において、肥料タンク60の繰出部61に設けるブロアー58に通じる吸気筒27の吸気口をミッションケース12の近傍に開口したことを特徴とする乗用型田植機の施肥装置とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン20の出力をミッションケース12に伝動して走行する乗用型田植機8の後部に苗植付部4と施肥装置5を設け、苗植付部4による苗の移植作業と肥料タンク60から施肥ホース62を通して肥料散布作業を行う乗用型田植機において、肥料タンク60の繰出部61に設けるブロアー58に通じる吸気筒27の吸気口をミッションケース12の近傍に開口したことを特徴とする乗用型田植機の施肥装置。
【請求項2】
走行車体2のフロアステップ35下方にミッションケース12を設け、吸気筒27の吸気口を四角筒状に開口したことを特徴とする請求項1に記載の乗用型田植機の施肥装置。
【請求項3】
吸気筒27は吸気口の四角筒状からブロアー58接続側の円筒状に成型したことを特徴とする請求項1に記載の乗用型田植機の施肥装置。
【請求項4】
エンジン20の出力で走行する乗用型田植機8の後部に苗植付部4と施肥装置5を設け、苗植付部4による苗の移植作業と施肥装置5による施肥作業を行う乗用型田植機において、肥料タンク60の繰出部61に設けるブロアー58の吸気筒27の吸気口をエンジン20の排気口に接近させた乗用型田植機の施肥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗の移植作業と同時に施肥を行う乗用型田植機の施肥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の如く、乗用型田植機は圃場を走行しながら苗を移植するが、同時に移植した苗の周囲に肥料を散布する施肥装置を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020―128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗用型田植機で散布する肥料は粒状の化成肥料で、肥料タンクに溜めた肥料を繰出し部からブロアーの送風で肥料パイプを通して移植した苗の周囲に散布するが、作業地が水を張った圃場であるために肥料が湿気を帯びて肥料パイプ内に張り付いて散布に斑が生じることがある。
【0005】
本発明は、そのような従来技術の課題を考慮し、水を張った圃場で苗の移植と同時に肥料の散布を行う乗用型田植機において、肥料タンクから繰り出した肥料を圃場へ確実に移送して散布出来るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0007】
請求項1の発明は、エンジン20の出力をミッションケース12に伝動して走行する乗用型田植機8の後部に苗植付部4と施肥装置5を設け、苗植付部4による苗の移植作業と肥料タンク60から施肥ホース62を通して肥料散布作業を行う乗用型田植機において、肥料タンク60の繰出部61に設けるブロアー58に通じる吸気筒27の吸気口をミッションケース12の近傍に開口したことを特徴とする乗用型田植機の施肥装置とする。
【0008】
請求項2の発明は、走行車体2のフロアステップ35下方にミッションケース12を設け、吸気筒27の吸気口を四角筒状に開口したことを特徴とする請求項1に記載の乗用型田植機の施肥装置とする。
【0009】
請求項3の発明は、吸気筒27は吸気口の四角筒状からブロアー58接続側の円筒状に成型したことを特徴とする請求項1に記載の乗用型田植機の施肥装置とする。
【0010】
請求項4の発明は、エンジン20の出力で走行する乗用型田植機8の後部に苗植付部4と施肥装置5を設け、苗植付部4による苗の移植作業と施肥装置5による施肥作業を行う乗用型田植機において、肥料タンク60の繰出部61に設けるブロアー58の吸気筒27の吸気口をエンジン20の排気口に接近させた乗用型田植機の施肥装置とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明で、肥料タンク60の繰出部61に設けるブロアー58がミッションケース12で暖められた空気を吸気筒27で吸引して繰出部61に吹き送るので、肥料が乾燥して施肥ホース62内で肥料が詰まることが無く、良好に圃場へ施肥される。
【0012】
請求項2の発明で、ブロアー58が四角筒状に開口した吸気筒27でフロアステップ35の下方に設けるミッションケース12の周囲で暖められた空気を吸い込み、肥料タンク60の繰出部61に効果的に吹き込む。
【0013】
請求項3の発明で、吸気筒27は四角筒状部でミッションケース12の周囲空気を集めて吸引し、ブロアー58の円筒状吸引口に吸い込んで強力な送風となる。
【0014】
請求項4の発明で、ブロアー58の吸気筒27でエンジン20の排気を吸引して送風が暖められるので、肥料タンク60の繰出部61から繰り出される肥料が乾燥されて施肥ホース62に詰まることが無い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態にかかる乗用型田植機の右側面図である。
図2】同乗用型田植機の平面図である。
図3】同実施形態のおける吸気筒の配置を示す乗用型田植機の右側面図である。
図4】同吸気筒の斜視図である。
図5】本発明の別実施例の吸気筒の配置を示す乗用型田植機の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明における施肥装置付きの乗用型田植機の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
なお、本明細書においては、前後、左右の方向基準は、運転席からみて、車体の走行方向を基準として、前後、左右の基準を規定している。
【0018】
まず、図1および図2を主として参照しながら、乗用型田植機8の構成について具体的に説明する。
【0019】
図1においては走行車体2を備える乗用型の8条植えの乗用田植機8の側面視における状態が図示されており、図2においては平面視における状態が図示されている。
【0020】
乗用田植機8は、走行車体2の後側に昇降リンク機構3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0021】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10及び左右一対の後輪11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10が各々取り付けられている。
【0022】
又、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11が取り付けられている。
【0023】
エンジン20は、メインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及びHST23を介してミッションケース12に伝達される。
【0024】
ミッションケース12に伝達された回転動力は、ミッションケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分岐して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13に伝達されて前輪10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18に伝達されて後輪11を駆動する。
【0025】
又、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構によって施肥装置5へ伝動される。
【0026】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に運転席31が設置されている。運転席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10を操向操作する操縦ハンドル34が設けられている。
【0027】
エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、フロアステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下する構成となっている。
【0028】
また、フロアステップ35の右側には、苗継ぎペダル70と駐車ペダル71が設けられ、苗継ぎペダル70を踏み込むと、エンジン20の回転をアイドリング回転に低下し左右マーカー200L,200Rの接地を切り替えると共に苗植付部4を圃場から上昇させる動作を行う。この苗継ぎペダル70は、予備苗枠38からマット苗が無くなり補給マット苗を置いた畔に戻った際に踏み込むことで、走行車体2の走行を停止して補給マット苗の補充を行ってUターン旋回して隣条への移植が行い易くなる。
【0029】
駐車ペダル71は、走行停止を確実にすることで走行車体2の停止姿勢を安定させるのであるが、苗継ぎペダル70と一体に連結させて、一度の踏み込みで苗継ぎペダル70と駐車ペダル71が踏み込まれるようにすると、苗継ぎ作業時に操作がより簡略になる。
【0030】
なお、エンジン冷却水の温度が低い場合は、エンジン20をアイドリングに低下したりアイドリングストップ機構を設けてもストップにしたりしない。アイドリングストップ機構は、ストップ時間が長くなるとバッテリー消耗を避けるためにエンジン20を起動する。
【0031】
昇降リンク機構3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41を備えている。上リンク40及び下リンク41は、それらの基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に、苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。
【0032】
メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧シリンダー46が設けられており、昇降油圧シリンダー46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4が略一定姿勢のまま昇降する。
【0033】
苗植付部4は、8条植の構成で、フレームを兼ねる植付伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口51aに供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51aに供給すると苗送りベルト51bにより苗を下方に移送する苗載せ台51、苗取出口51aに供給された苗を苗植付具54によって圃場に植え付ける苗植付装置52等を備えている。
【0034】
植付伝動ケース50の後部は、4つに分岐しており、分岐したそれぞれの後端部に植付駆動軸が回転自在に支承されており、この植付駆動軸の左右突出部にロータリーケース16の中央部が一体回転する構成で固定して取り付けられている。
【0035】
更にロータリーケース16の両端部に植付回動軸を回転自在に支承し、これらの2つの植付回動軸のそれぞれに苗植付具54が取り付けられている。
【0036】
苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にミドルフロート57とサイドフロート56がそれぞれ設けられている。これらフロート55、57、56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55、57、56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52により苗が植え付けられる。
【0037】
各フロート55、57、56は、圃場表土面の凹凸に対応して前端側が上下動する如く回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサー(図示せず)により検出され、その検出結果に対応して昇降油圧シリンダー46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0038】
施肥装置5は、肥料タンク60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62でセンターフロート55及びサイドフロート56の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず)まで導き、施肥ガイドの前側に設けた作溝体(図示せず)によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込む構成となっている。ブロアー用電動モーター53で駆動するブロアー58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバー59を経由して施肥ホース62に吹き込まれ、施肥ホース62内の肥料を風圧で強制的に搬送する構成となっている。
【0039】
ブロアー58は、エンジン20の起動と共に低速で回転させ、走行レバーを前進にしたり植付レバーを植付にしたりすると強く回転させる。
【0040】
図3は、前記ブロアー58の吸気筒27の配置を示す側面図で、この実施例ではフロントカバー32内にエンジン20を搭載して走行車体2のフロアステップ35にミッションケース12を設けている。ミッションケース12にはHST23を取り付け、このHST23の後側を囲んで吸気筒27の吸気口を設け、フロアステップ35の下側で燃料タンク70の下を通して運転席31の下からブロアー58に向けて吸気筒27を設け、HST23周辺で暖められた空気を吸い込み、ブロアー58に供給して肥料タンク60の繰出部61から繰り出される肥料を施肥ホース62を通して施肥ガイドへ送られ、移植苗に施肥される。
【0041】
吸気筒27は、図4の斜視図の如く、吸気口側が四角筒状でブロアー58に連結する部分が円筒状に成型されている。
【0042】
図5は、吸気筒27をエンジン20の近くまで伸ばして設けた配置図で、吸気口から後方へ伸ばしてさらに中央へ向かいその後後方のブロアー58に向かわせて、吸気口からマフラー22の排気ガスを吸い込み、ブロアー58に供給する。
【0043】
なお、走行車体2を構成する角パイプの一部を吸気筒27とすると、構成が簡略化できる。
【0044】
また、肥料タンク60を黒色に塗装すると、日光によって内部の肥料が良く乾燥する。
【0045】
次に、ロボット田植機における制御を説明する。
【0046】
ロボット田植機は、直進走行で苗移植作業を行うが、苗載置台への苗搭載を100%とし走行距離と苗の残量を判断して畦際手前で停止するか旋回走行するか判断させると良い。
【0047】
例えば、旋回後の残り距離と残量苗で残量苗が少ない場合は、畔で自動停止させる。
【0048】
また、旋回後の残り距離と残量苗で残量苗が多い場合は、畔で旋回し直進工程に入る制御とする。
【0049】
これらの判断は、「株間」「横送り回数」「苗取り量」で判断し苗の水分量、車輪のスリップ率で決定する。
【0050】
さらに、旋回後の残り距離と残量苗・除草剤で残量苗・除草剤が少ない場合は、畔で自動停止させる。
【0051】
また、旋回後の残り距離と残量苗・除草剤で残量苗・除草剤が多い場合は、畔で旋回し直進工程に入る。
【0052】
しかし、旋回後に除草剤の補給の為に再停止することもある。
【0053】
なお、苗の有無を検出するセンサ-(カメラ)を機体上部のGPS位置に設ける構成とし、作動時は植付部が上昇位置(旋回時)で苗載せ台51上を監視する構成とする。
【符号の説明】
【0054】
5 施肥装置
12 ミッションケース
20 エンジン
27 吸気筒
35 フロアステップ
58 ブロアー
60 肥料タンク
61 繰出部
62 施肥ホース
70 燃料タンク
図1
図2
図3
図4
図5