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特開2024-169945接合部材、足場板の設置構造及びスラブの打設方法
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  • 特開-接合部材、足場板の設置構造及びスラブの打設方法 図1
  • 特開-接合部材、足場板の設置構造及びスラブの打設方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169945
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】接合部材、足場板の設置構造及びスラブの打設方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 7/20 20060101AFI20241129BHJP
   E04G 1/06 20060101ALI20241129BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
E04G7/20 E
E04G1/06
E04G21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086820
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】永田 正道
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172CA17
2E172DA00
2E172DB07
(57)【要約】
【課題】安全に作業を行うための足場を設置することができるとともに、部材を効率的に利用することができる接合部材、足場板の設置構造及びスラブの打設方法を提供する。
【解決手段】接合部材36は、足場板に接続される棒状部材31の一端部31dに接合される第一接合部37と、硬化前のコンクリートに挿入される棒状材50の一端部56uが接合される第二接合部47と、を備え、第一接合部37及び第二接合部47は、棒状部材31及び棒状材50が配置される同一直線上に配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足場板に接続される棒状部材の一端部に接合される第一接合部と、
硬化前のコンクリートに挿入される棒状材の一端部が接合される第二接合部と、を備え、
前記第一接合部及び前記第二接合部は、前記棒状部材及び前記棒状材が配置される同一直線上に配置される接合部材。
【請求項2】
前記第二接合部の内周面には、雌ねじが形成されている請求項1に記載の接合部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の接合部材と、前記第一接合部に接合される棒状部材と、前記第二接合部に接合される棒状材と、を有する支持部材と、
前記支持部材に支持された足場板と、を備える足場板の設置構造。
【請求項4】
前記棒状材の外周面には、剥離可能なテープが巻回される請求項3に記載の足場板の設置構造。
【請求項5】
請求項3に記載の足場板の設置構造を使用したスラブの打設方法であって、
前記足場板を複数の前記支持部材で支持するように足場ユニットを設置し、
前記足場板からポンプ車のホースを下方に下げて、コンクリートを打設し、
前記コンクリートが硬化する前に、前記支持部材を前記コンクリートから引き抜いて、前記足場ユニットを運搬するスラブの打設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合部材、足場板の設置構造及びスラブの打設方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物の基礎として、コンクリートで平板状に形成されたマットスラブが知られている(下記の特許文献1参照)。地盤面の上側に鉄筋が格子状等に敷き詰められていて、鉄筋を埋設するようにコンクリートを打設してマットスラブを形成する場合がある。鉄筋等の上側に足場板を設置して、作業者が足場板に立って、コンクリートの打設作業を行うことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-184328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、鉄筋等の上側に設置される足場板は平板状のものであり、足を平板状の足場板から踏み外す可能性がある。足場を組み立てて設置しても、コンクリートの打設作業が完了すると、解体して、次のコンクリートの打設作業箇所で新たに足場を組み立てる必要があり、手間と時間がかかるという問題点がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、安全に作業を行うための足場を設置することができるとともに、部材を効率的に利用することができる接合部材、足場板の設置構造及びスラブの打設方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る接合部材は、足場板に接続される棒状部材の一端部に接合される第一接合部と、硬化前のコンクリートに挿入される棒状材の一端部が接合される第二接合部と、を備え、前記第一接合部及び前記第二接合部は、前記棒状部材及び前記棒状材が配置される同一直線上に配置される。
【0007】
このように構成された接合部材では、接合部材の第一接合部に、足場板に接続される棒状部材の一端部が接合される。接合部材の第二接合部に、硬化前のコンクリートに挿入される棒状材の一端部が接合される。よって、次のコンクリート打設箇所で接合部材を含む各部材を再利用することができ、足場を構成する部材を効率的に利用することができる。
また、作業者は足場を利用して作業することができ、安全に作業することができる。
【0008】
第2の態様に係る接合部材では、前記第二接合部の内周面には、雌ねじが形成されていてもよい。
【0009】
このように構成された接合部材では、内周面に雌ねじが形成された第二接合部に、雄ねじが形成された棒状材の一端部が螺合される。よって、棒状材を第二接合部に容易に接合させることができる。
【0010】
第3の態様に係る足場板の設置構造は、上記の接合部材と、前記第一接合部に接合される棒状部材と、前記第二接合部に接合される棒状材と、を有する支持部材と、前記支持部材に支持された足場板と、を備える。
【0011】
このように構成された足場板の設置構造では、接合部材の第一接合部に、足場板に接続される棒状部材の一端部が接合される。接合部材の第二接合部に、硬化前のコンクリートに挿入される棒状材の一端部が接合される。これによって構築された支持部材に足場板を支持させて足場を構築することができる。足場の使用後には、支持部材を足場板から取り外して、接合部材から棒状部材及び棒状材を取り外して、各部材を再利用することができ、足場を構成する部材を効率的に利用することができる。
また、作業者は足場を利用して作業することができ、安全に作業することができる。
【0012】
第4の態様に係る接合部材は、棒状材の外周面には、剥離可能なテープが巻回されていてもよい。
【0013】
このように構成された接合部材では、棒状材の外周面には、剥離可能なテープが巻回される。よって、棒状材がコンクリートに直接触れるよりも、テープがコンクリートに触れるようにすることによって、打設されたコンクリートから棒状材を引き抜きやすくすることができる。
【0014】
第5の態様に係るスラブの打設方法は、上記の足場板の設置構造を使用したスラブの打設方法であって、前記足場板を複数の前記支持部材で支持するように足場ユニットを設置し、前記足場板からポンプ車のホースを下方に下げて、コンクリートを打設し、前記コンクリートが硬化する前に前記支持部材を前記コンクリートから引き抜いて、前記足場ユニットを運搬する。
【0015】
このように構成されたスラブの打設方法では、コンクリートが硬化する前には、支持部材をコンクリートから引き抜いて、足場ユニットを運搬する。次のコンクリートの打設箇所において、足場板及び支持部材をそれぞれ再利用することができ、足場板の設置構造を構成する部材を効率的に利用することができる。
また、作業者は足場板の設置構造を利用してコンククートの打設作業することができ、安全に作業することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る接合部材、足場板の設置構造及びスラブの打設方法によれば、安全に作業を行うための足場を設置することができるとともに、部材を効率的に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る足場板の設置構造を示す概略斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る支持部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る接合部材、足場板の設置構造及びスラブの打設方法について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る足場板の設置構造を示す概略斜視図である。
図1に示す本実施形態に係る足場板の設置構造1は、例えば大面積のスラブを打設する際に使用する。足場板の設置構造1は、足場ユニット(足場)2を備えている。足場ユニット2は、下部構造部21と、上部構造部26と、支持部材3と、を有している。
【0019】
下部構造部21は、例えば枠状等に形成された下部支持部材22と、下部支持部材に支持された複数の足場板23と、を有している。隣り合う足場板23の間には、上下方向に貫通するホース孔24が形成されている。
【0020】
上部構造部26は、複数の上下部材27と、手摺部28と、を有している。上下部材27の下端部は、下部支持部材22に支持されるように連結されている。手摺部28は、複数の上下部材27どうしを連結して、水平方向に延びている。なお、下部構造部21及び上部構造部26の構成は適宜設定可能である。
【0021】
支持部材3の上部は、下部支持部材22に連結されている。支持部材3は、下部支持部材22を介して足場板23を支持するように接続されている。なお、支持部材3は、足場板23に直接連結されていてもよい。
【0022】
図2は、支持部材3の正面図である。
支持部材3は、棒状部材31と、接合部材36と、ボルト部材(棒状材)50と、を有している。
【0023】
支持部材3の説明において、支持部材3が設置された状態での方向に基づいて説明する。
図3に示すように、棒状部材31は、上下方向(一方向)を軸方向として円筒状に形成されている。棒状部材31は、金属部材で形成されている。棒状部材31は、例えば単管パイプである。
【0024】
接合部材36は、第一接合部37と、中間部41と、ナット(第二接合部)47と、を有している。
【0025】
第一接合部37は、接合部材36の上端部(第一端部)に位置している。第一接合部37は、上下方向を軸方向として円筒状に形成されている。第一接合部37の内周面の内径は、棒状部材31の外周面の外径よりもわずかに大きい。棒状部材31の下端部(一端部)31dは、第一接合部37に上方から挿入されている。
【0026】
第一接合部37には、径方向に貫通する取付孔37hが形成されている。取付孔37hは、周方向に間隔を空けて3箇所に形成されている。なお、取付孔37hは、複数箇所に形成されていることが好ましいが、1箇所に以上に形成されていればよい。
【0027】
螺子38が、取付孔37hに挿通されて、棒状部材31の下端部31dに形成された螺子孔に螺合されている。螺子38を取り外せば、棒状部材31の下端部31dが第一接合部37から取り外される。このように、棒状部材31は、接合部材36に着脱可能に接合されている。
【0028】
中間部41は、平板状に形成されている。中間部41の板面は、上下方向を向いている。上下方向から見て、中間部41の外形は、第一接合部37の径よりも大きな径の円形状である。中間部41には、上下方向に貫通する貫通孔(不図示)が形成されている。なお、中間部41の形状は適宜設定可能である。
【0029】
ナット47は、接合部材36の下端部(第二端部)に位置している。ナット47は、中間部41の上部に接合されている。ナット47の内周面には、雌ねじが形成されている。
【0030】
ボルト部材50は、棒状部51と、螺合部56と、を有している。本実施形態では、ボルト部材50は、全ねじボルトである。
【0031】
棒状部51は、上下方向に延びている。棒状部51は、上下方向を軸方向とする円柱状をしている。螺合部56は、棒状部51の外周面に形成された雄ねじである。螺合部56は、棒状部51の上下方向の全長にわたって形成されている。なお、螺合部56は、棒状部51の少なくとも上端部(一方向の一端部)56uにのみ形成されていればよい。
【0032】
螺合部56の上端部56uは、中間部41の貫通孔に挿通されて、接合部材36のナット47に螺合されている。螺合部56には、中間部41の下側の位置で、2個のナット57が螺合されている。これによって、螺合部56とナット47との緩みを抑制することができる。なお、ナット57は設けられていなくてもよい。
【0033】
ナット57をボルト部材50から緩めて、ボルト部材50とナット47との螺合を緩めれば、ボルト部材50がナット47から取り外される。このように、ボルト部材50は、接合部材36に着脱可能に接合されている。
【0034】
接合部材36の第一接合部37に棒状部材31が接合され、ナット47にボルト部材50が接合された状態で、棒状部材31及びボルト部材50は同一直線上に配置されている。第一接合部37及びナット47も、棒状部材及31及びボルト部材50が配置される直線と同一直線上に配置されている。
【0035】
棒状部51の外周面には、ナット57の下側の位置の略全長にわたって剥離可能なテープ59が巻回されている。
【0036】
次に、スラブの打設方法について説明する。
事前に、支持部材3を組み立てておく。
接合部材36の第一接合部37に棒状部材31の下端部31dを挿入して、螺子38で螺子止めする。ボルト部材50の螺合部56の上端部56uを、接合部材36の中間部41の貫通孔に挿通して、ナット47に螺合させる。さらに、ボルト部材50の螺合部56に、中間部41の下側の位置で、ナット57を螺合させる。棒状部51の外周面に、テープ59を巻回する。
【0037】
次に、足場板の設置構造(足場)1を設置する。
設置面に複数の支持部材3を設置して、支持部材3を足場ユニット2の下部支持部材22に連結する。これによって、足場板23は支持部材3に支持されて、足場ユニット2が設置される。なお、支持部材3を設置する際には、設置面の上方に複数の鉄筋Sが格子状に配置されている場合には、鉄筋Sに干渉しないように支持部材3を設置する。
【0038】
次に、コンクリートを打設する。
ポンプ車に接続されたホースを足場ユニット2まで延ばして、隣り合う足場板23の間のホース孔24からホースを下方に下げて、コンクリートを打設する。作業者は、足場板23に立った状態で、コンクリートの打設作業を行うことができる。
【0039】
次に、コンクリートが硬化する前に、支持部材3を含む足場ユニット2を一体としてクレーンにて吊り上げる。
【0040】
打設したコンクリートの箇所の隣に、上記と同様に足場ユニット2を設置して、コンクリートを打設する。これを繰り返して、打設したコンクリート箇所の隣に次々と足場ユニット2を移動していき、コンクリートを打設していく。全てのコンクリートの打設が完了したら、クレーンにて足場ユニット2を地上に仮置きして、支持部材3のコンクリートがついた部材を水洗いして、次回のコンクリート打設に備える。
【0041】
このように構成された支持部材3及びスラブの打設方法によって、足場ユニット2を効率的に利用することができる。
【0042】
また、作業者は足場板の設置構造1を利用してコンククートの打設作業することができ、安全に作業することができる。
【0043】
また、内周面に雌ねじが形成されたナット47に、雄ねじが形成されたボルト部材50の上端部56uが螺合される。よって、ボルト部材50を接合部材36のナット47に容易に接合させることができる。
【0044】
また、支持部材3の棒状部51の外周面には、剥離可能なテープ59が巻回される。よって、棒状部51がコンクリートに直接触れるよりも、テープ59がコンクリートに触れるようにすることによって、打設されたコンクリートから棒状部51を引き抜きやすくすることができる。
【0045】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成要素の組み合わせを変えたり、各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。以下にいくつか変更を例示するが、これらはすべてではなく、それ以外の変更も可能である。また、これらの変更が2以上適宜組み合わされてもよい。
【0046】
例えば、上記に示す実施形態では、ボルト部材50の棒状部51にはテープ59が巻回されているが、本発明はこれに限られない。棒状部51にテープ59を巻回しなくてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 足場板の設置構造
3 支持部材
23 足場板
31 棒状部材
36 接合部材
37 第一接合部
47 ナット(第二接合部)
50 ボルト部材(棒状材)
51 棒状部
56 螺合部
59 テープ
図1
図2