(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169965
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】点検支援装置、点検支援システムおよび点検支援方法
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20241129BHJP
G06T 3/00 20240101ALI20241129BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
G06T3/00 780
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086852
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】中野 剛也
【テーマコード(参考)】
3C223
5B057
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223BA03
3C223BB02
3C223BB08
3C223EA09
3C223FF09
3C223FF42
3C223GG01
3C223HH28
3C223HH29
5B057AA01
5B057AA04
5B057BA02
5B057CA01
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5B057CE10
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5B057DA06
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5B057DA16
5B057DB02
5B057DB06
5B057DB09
(57)【要約】
【課題】作業の対象物が設置された現場で実施する点検作業の負荷を軽減させることが可能な点検支援装置を得ること。
【解決手段】盤に設置された複数の点検対象物の現場での点検作業を支援する点検支援装置1は、盤の少なくとも一部が含まれる範囲を対象として撮影を行い複数の画像を作成する撮影部11と、撮影部11で作成された複数の画像に基づいて盤の全体が含まれる1つの画像である盤画像を作成する盤画像作成部12と、盤画像を解析して複数の点検対象物の点検値を取得する点検値取得部13と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
盤に設置された複数の点検対象物の現場での点検作業を支援する点検支援装置であって、
前記盤の少なくとも一部が含まれる範囲を対象として撮影を行い複数の画像を作成する撮影部と、
前記撮影部で作成された複数の前記画像に基づいて前記盤の全体が含まれる1つの画像である盤画像を作成する盤画像作成部と、
前記盤画像を解析して複数の前記点検対象物の点検値を取得する点検値取得部と、
を備えることを特徴とする点検支援装置。
【請求項2】
前記撮影部は動画撮影により複数の前記画像を作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の点検支援装置。
【請求項3】
前記盤画像作成部は、前記撮影部で作成された複数の前記画像の中から1つ以上の画像を抽出し、抽出した画像に基づいて前記盤画像を作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の点検支援装置。
【請求項4】
前記盤画像作成部は、それぞれに前記盤の異なる一部分が含まれる複数の画像を抽出し、抽出した画像を結合して前記盤画像を作成する、
ことを特徴とする請求項3に記載の点検支援装置。
【請求項5】
前記盤画像作成部は、前記撮影部で作成された複数の前記画像の中に前記盤の全体が含まれ、かつ定められた品質を満たす画像が存在する場合、定められた品質を満たす前記画像を抽出して前記盤画像とする、
ことを特徴とする請求項3に記載の点検支援装置。
【請求項6】
前記点検値取得部は、前記点検対象物の前記盤上の位置に関する情報および前記点検対象物の種類に関する情報を含む盤情報に基づいて、前記盤画像に含まれる前記点検対象物を特定し、特定した前記点検対象物の画像を解析して前記点検値を取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載の点検支援装置。
【請求項7】
前記点検値取得部が取得した前記点検値を前記盤に対応する形式の電子帳票に挿入して点検データを作成する点検データ作成部、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の点検支援装置。
【請求項8】
前記撮影部が前記盤を撮影する際に撮影ガイドを表示部に表示させる、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の点検支援装置。
【請求項9】
請求項1に記載の点検支援装置と、
前記点検支援装置による前記点検対象物の点検結果を記憶し、利用者から要求を受けた場合、記憶している点検結果を前記利用者に提供する点検結果記憶装置と、
を備えることを特徴とする点検支援システム。
【請求項10】
盤に設置された複数の点検対象物の現場での点検作業を支援する点検支援装置が実行する点検支援方法であって、
前記盤の少なくとも一部が含まれる範囲を対象として撮影を行い複数の画像を作成する撮影ステップと、
前記撮影ステップで作成した複数の前記画像に基づいて前記盤の全体が含まれる1つの画像である盤画像を作成する盤画像作成ステップと、
前記盤画像を解析して複数の前記点検対象物の点検値を取得する点検値取得ステップと、
を含むことを特徴とする点検支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、点検対象の盤上に設けられたメータの指示値、スイッチの状態といった情報の読み取り作業を支援する点検支援装置、点検支援システムおよび点検支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メータの指示値を読み取る作業を支援する技術の一例として、メータを撮影した画像を解析して指示値を読み取る技術が存在する(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、読み取り対象の計器である温度計、圧力計、流量計などの指示針をカメラで撮影した画像に対して画像処理を行い、得られた画像データを解析して各計器の指示値を取得する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は、遠隔により計器の指示値を読み取ることを想定しており、指示値を読み取る対象の計器の数および位置は変化しない。すなわち、各被写体である計器とカメラとの関係(例えば、位置関係)が固定であるものとして指示値の取得処理が行われる。このため、特許文献1に記載の技術は、計器が設置されている現場に作業員が出向いて指示値の読み取り作業を行うなど、作業対象の計器の数、種類および位置、計器とカメラとの関係が変化し得る条件下で使用することができない、という問題があった。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、作業の対象物が設置された現場で実施する点検作業の負荷を軽減させることが可能な点検支援装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示は、盤に設置された複数の点検対象物の現場での点検作業を支援する点検支援装置であって、盤の少なくとも一部が含まれる範囲を対象として撮影を行い複数の画像を作成する撮影部と、撮影部で作成された複数の画像に基づいて盤の全体が含まれる1つの画像である盤画像を作成する盤画像作成部と、盤画像を解析して複数の点検対象物の点検値を取得する点検値取得部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、作業の対象物が設置された現場で実施する点検作業の負荷を軽減させることが可能な点検支援装置を実現できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態にかかる点検支援装置の利用形態の一例を示す図
【
図2】点検支援装置が支援する点検作業の対象物の一例を示す図
【
図3】点検支援装置による作業支援の一例を説明するための図
【
図4】点検支援システムの点検支援装置および点検結果記憶装置の構成例を示す図
【
図5】点検結果記憶装置の盤情報記憶部が保持する盤情報の一例を示す図
【
図6】点検支援装置を実現するハードウェアの一例を示す図
【
図7】点検支援装置が点検作業を支援する動作の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施の形態にかかる点検支援装置、点検支援システムおよび点検支援方法を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態.
図1は、実施の形態にかかる点検支援装置1の利用形態の一例を示す図である。
図1に示すように、本実施の形態にかかる点検支援装置1は携帯可能な機器であり、対象物を点検する作業員201の作業を支援する。具体的には、点検支援装置1は、
図1では記載を省略している現場に設置されたメータ、スイッチおよびランプといった対象物を撮影して画像を取得し、画像を解析して対象物の点検値を取得する。点検値とは、例えば、対象物がメータの場合は指示値が該当し、対象物がスイッチまたはランプであれば対象物の状態が該当する。点検支援装置1は、点検値を取得するための画像解析を行う前に、必要に応じて画像の加工処理などを行う。本実施の形態では、複数の対象物が一定範囲に集約された状態で設置されているものとする。
【0012】
図2は、点検支援装置1が支援する点検作業の対象物の一例を示す図である。点検支援装置1が支援する点検作業の対象物(以下、点検対象物と記載する場合がある)は、例えば、
図2に示すような、盤301上に設置されたメータ、ランプ、スイッチなどが該当する。
図2に示す対象物を点検する場合、点検支援装置1を使用する作業員201は、点検支援装置1が有する動画撮影機能により、盤301に配置された点検対象物を撮影する。動画撮影では、盤301の一部を撮影しながら撮影範囲を変化させることで、盤301全体の動画像を作成する。例えば、
図3に示す経路、すなわち、破線の矢印が示す経路に沿って、全ての点検対象物を撮影する。
図3は、点検支援装置1による作業支援の一例を説明するための図である。なお、作業員201は、点検支援装置1の動画撮影機能の代わりに静止画撮影機能を使用し、撮影範囲を変更しながら静止画撮影を繰り返すことで、複数回に分けて盤301の全体を撮影してもよい。このとき、1つの静止画像に複数の点検対象物が含まれていてもよい。
【0013】
図1の説明に戻り、点検支援装置1は、点検対象物の点検値を取得した後、点検値に基づき点検データを作成し、クラウドに設けられた点検結果記憶装置2に登録する。点検結果記憶装置2には、点検データの他に、点検対象物の関連情報が登録されている。詳細については後述するが、関連情報は、点検対象物の盤301上の位置などを示し、点検支援装置1が点検対象物の点検値を取得するために行う画像解析処理で使用される。点検支援装置1および点検結果記憶装置2は点検支援システムを構成する。なお、点検結果記憶装置2はクラウド以外に設けられてもよい。
【0014】
点検結果記憶装置2は、点検結果を利用者202に提供する。利用者202は、例えば、点検対象物が設置されたビル、プラントなどの管理者などである。点検結果記憶装置2は、保持している点検データを加工して利用者202が希望する形式の点検結果を生成し、提供してもよい。利用者202が希望する形式の点検結果は点検支援装置1が作成してもよい。
【0015】
点検支援装置1によれば、点検作業の対象物を撮影した画像を解析して点検値を取得するため、作業員201が必要な作業は対象物の撮影のみとなり、作業負荷を軽減することができる。また、手作業で点検値を入力する場合に問題となる入力ミスを防止できる。
【0016】
図4は、点検支援システム100の点検支援装置1および点検結果記憶装置2の構成例を示す図である。
図4に示す点検支援システム100は、
図2に例示したような、1つの盤301に設置された複数の対象物の点検を支援する。
【0017】
点検支援装置1は、撮影部11、盤画像作成部12、点検値取得部13、点検データ作成部14、表示部15および通信部16を備える。
【0018】
撮影部11は、点検対象物を撮影して動画像を作成する。盤画像作成部12は、撮影部11で作成された動画像に基づいて、点検対象物が設けられた盤の画像である盤画像を作成する。点検値取得部13は、盤画像作成部12で作成された盤画像から点検対象物の点検値を取得する。点検値の例は、メータの指示値、スイッチの状態、ランプの状態などである。点検データ作成部14は、点検値取得部13で取得された点検値に基づいて、予め定められた形式の点検データを作成する。点検データ作成部14は、例えば、点検対象物が設けられた盤に対応するフォーマットの電子帳票に点検値を挿入して帳票データを作成する。
【0019】
点検結果記憶装置2は、盤情報記憶部21、点検結果記憶部22および通信部23を備える。
【0020】
盤情報記憶部21は、点検対象物が設けられた盤の情報を記憶する。盤の情報には、盤に設けられた複数の点検対象物それぞれに関する情報が含まれる。以下、盤情報記憶部21が保持する盤の情報を盤情報と称する。盤情報は、
図1に記載した関連情報に相当し、点検支援装置1が盤画像を解析して点検対象物を特定する際に使用される。盤情報は、例えば
図5に示す構成の情報である。
図5は、点検結果記憶装置2の盤情報記憶部21が保持する盤情報の一例を示す図である。
図5に示すように盤情報は、盤名称、位置および機器名称を含む。「位置」は点検対象物の盤上の位置を示す情報、「機器名称」は点検対象物の名称であり、点検対象物の種類を示す情報を兼ねている。盤情報は、点検対象物それぞれの種類および盤における位置を表す情報である。なお、盤情報の構成は
図5に示すものに限定されない。盤情報は、盤画像に含まれる点検対象物を特定可能な情報が含まれる構成であればよい。例えば、盤全体を撮影した画像と、点検対象物の並び順および種類と、を組み合わせて盤情報としてもよい。盤情報記憶部21は、複数種類の盤情報を保持し、点検支援装置1が点検作業の支援を行う場合、点検対象の盤に対応する盤情報を点検支援装置1に提供する。点検支援装置1に提供する盤情報は通信部23から点検支援装置1へ送信される。
【0021】
点検結果記憶部22は、点検支援装置1で作成された点検データを記憶し、記憶している点検データを利用者202からの要求に応じて利用者202に提供する。
【0022】
つづいて、点検支援装置1のハードウェア構成について説明する。
図6は、点検支援装置1を実現するハードウェアの一例を示す図である。点検支援装置1は、
図6に示すプロセッサ101、記憶装置102、表示装置103、通信装置104および撮像装置105により実現することができる。
【0023】
プロセッサ101は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)、システムLSI(Large Scale Integration)などである。記憶装置102は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ハードディスクドライブなどである。表示装置103は、液晶モニタ、ディスプレイ等である。通信装置104は、無線通信モジュール、無線LAN(Local Area Network)アダプタなどである。撮像装置105は、CCD(Charge Coupled Device)カメラ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラなどである。
【0024】
点検支援装置1の撮影部11は撮像装置105により実現される。点検支援装置1の表示部15は表示装置103により実現される。点検支援装置1の通信部16は通信装置104により実現される。
【0025】
また、点検支援装置1の盤画像作成部12、点検値取得部13および点検データ作成部14は、これらの各部として動作するためのプログラムをプロセッサ101が実行することにより実現される。盤画像作成部12、点検値取得部13および点検データ作成部14として動作するためのプログラムは記憶装置102に予め格納されている。プロセッサ101は、上記プログラムを記憶装置102から読み出して実行することにより、盤画像作成部12、点検値取得部13および点検データ作成部14として動作する。
【0026】
なお、記憶装置102に格納される、盤画像作成部12、点検値取得部13および点検データ作成部14として動作するためのプログラムは、例えば、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROMなどの記憶媒体に書き込まれた状態でユーザ等に提供される形態であってもよいし、ネットワークを介してユーザ等に提供される形態であってもよい。
【0027】
図6に示すプロセッサ101、記憶装置102、表示装置103、通信装置104および撮像装置105は、タブレット端末を構成するハードウェアであってもよい。すなわち、点検支援装置1は、タブレット端末と、タブレット端末で実行されるプログラムとで実現される形態であってもよい。
【0028】
つづいて、点検支援装置1が点検作業を支援する動作について説明する。
図7は、点検支援装置1が点検作業を支援する動作の一例を示すフローチャートである。
【0029】
点検支援装置1による点検作業の支援動作では、まず、撮影部11が、点検対象物が設置された盤の動画撮影を行い、盤動画データを取得する(ステップS11)。このとき、点検作業の作業員201は、
図3に示した例のように、撮影部11が撮影を行う範囲を変更しながら動画撮影を行い、点検対象物が設置された盤の全範囲を撮影する。撮影部11は、点検対象物が設置された盤の全範囲が含まれる動画データである盤動画データを取得する。
【0030】
次に、盤画像作成部12が、盤動画データに基づいて、盤全体の画像である盤画像を作成する(ステップS12)。具体的には、盤画像作成部12は、盤動画データに含まれるフレーム画像の中から必要なフレーム画像を抽出し、抽出したフレーム画像を合成して盤の全体が含まれる1つの画像を作成し、これを盤画像とする。例えば、盤画像作成部12は、盤動画データから数秒ごとのフレーム画像を抜き出し、特徴抽出して画像を結合して盤画像を作成する。盤画像作成部12は、結合した画像から盤全体が含まれる範囲を切り出す処理、換言すると、盤が写っていない不要な範囲を削除する処理をさらに実行し、得られた画像を盤画像としてもよい。このステップS12の盤画像作成処理は、点検支援装置1を使用する作業員201が定められた操作を行った場合に開始となる。例えば、ステップS11の盤動画データ取得処理を終了する操作が行われた場合に盤画像作成部12が盤画像の作成を開始する。盤画像作成部12は、ステップS11の盤動画データ取得処理を終了する操作が行われ、さらに、盤動画の作成開始を指示する操作が行われた場合に、盤画像の作成を開始してもよい。
【0031】
なお、上記のステップS11において、作業員201の操作ミスなどが原因で、盤の一部が撮影できていない、点検対象物の一部が撮影できていないなど、盤画像の作成に必要なフレーム画像が盤動画データに含まれていないケースが発生し得る。このため、盤画像作成部12が盤画像を作成できない場合、点検支援装置1は、例えば、盤の動画撮影をやり直すように指示する表示を表示部15に行った後、ステップS11に戻り、盤の動画撮影を再度行う。
【0032】
盤画像作成部12による盤画像の作成が終了すると、次に、点検値取得部13が、盤画像を解析して点検値を取得する(ステップS13)。具体的には、点検値取得部13は、点検結果記憶装置2の盤情報記憶部21で保持されている盤情報を参照して盤画像に含まれる点検対象物を特定し、特定した点検対象物の画像を解析することで点検値を取得する。点検値取得部13は、使用する盤情報を点検結果記憶装置2の盤情報記憶部21から予め取得しておく。盤情報記憶部21が保持している盤情報のうちどの盤情報を取得するかは、例えば作業員201が決定する。盤の識別情報(例えば、盤の名称、識別番号、記号など)が盤に記載されている場合、点検値取得部13は、盤の識別情報を盤画像から抽出し、抽出した識別情報を盤情報記憶部21に通知して対応する盤情報を取得してもよい。盤上の各点検対象物の形状および配置から1つの盤を特定可能である場合、点検値取得部13は、取得する盤情報を各点検対象物の形状および配置に基づいて決定してもよい。
【0033】
次に、点検データ作成部14が、点検値取得部13で取得された点検値に基づいて点検データを作成する(ステップS14)。点検データ作成部14は、例えば、点検値のリストを点検データとして作成する。点検データは、少なくとも、点検対象物の識別情報(例えば、識別番号)と対応する点検値とを含む。点検データ作成部14は、帳票形式の点検データを作成してもよい。また、点検データ作成部14は、ステップS12で盤画像作成部12が作成した盤画像をエビデンス画像とし、このエビデンス画像をさらに含む点検データを作成してもよい。点検データがエビデンス画像を含むことにより、点検データに含まれる点検値が正しいか否かを作業員201などのユーザがエビデンス画像を確認して判別することが可能となる。点検データ作成部14が作成する点検データの形式は複数の候補の中から作業員201が選択できるようにしてもよい。
【0034】
点検データ作成部14は、点検データの作成が終了すると、点検結果記憶装置2の点検結果記憶部22に点検データを登録する(ステップS15)。
【0035】
上記のステップS13~S15の各動作は、ステップS12で盤画像を作成する動作に続いて自動で実行してもよいし、作業員201からの指示に従って実行するようにしてもよい。
【0036】
ステップS13~S15の各動作を作業員201からの指示に従って実行する場合の例について、
図8を用いて説明する。
図8は、点検支援装置1の動作の一例を示す図である。
【0037】
点検支援装置1は、盤画像作成部12による盤画像の作成が完了すると、
図8(a)に示すように、作成した盤画像の表示画面51を表示部15に表示する。この状態で作業員201により結果表示ボタン61が押下されると、点検値取得部13が盤画像から点検値を取得し、
図8(b)に示すように、点検値の表示画面52を表示部15に表示する。さらに、作業員201により登録ボタン62が押下されると、点検データ作成部14が点検データを作成する。点検データ作成部14は、通信部16を介して、点検データを点検結果記憶装置2へ送信する。
【0038】
なお、盤画像の品質が不十分であるなどの理由から、点検値取得部13が点検値を取得できなかったり、取得した点検値が正しくなかったりする場合が考えられる。このため、点検支援装置1は、
図8(b)に示す点検値の表示画面52において、表示している点検値の修正操作を受け付け可能としてもよい。これにより、誤った点検値に基づいて点検データが作成されることを防止可能となる。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態にかかる点検支援システム100の点検支援装置1は、点検対象物が設置された盤を撮影して動画データを作成し、さらに、盤の動画データに基づいて盤全体が含まれる盤画像を作成し、盤画像を解析して点検対象物の点検値を取得する。また、点検支援装置1は、各点検対象物の点検値に基づき、定められた形式の点検データを作成して点検結果記憶装置2の点検結果記憶部22に登録する。点検支援システム100によれば、点検対象物が設置された現場での点検作業の負荷を軽減できる。
【0040】
なお、本実施の形態では、点検対象物が設置された盤の一部を点検支援装置1の撮影部11が撮影している状態で、点検支援装置1を移動させ、盤の全体が含まれる盤画像を作成可能な盤動画データを取得することとしたが、最初に、盤の全体が含まれる範囲を撮影してもよい。点検支援装置1は、盤の全体を撮影して取得した動画像を解析し、動画像を構成するフレーム画像の中に定められた品質を満たすものが無い場合、すなわち、点検値の取得が可能な品質の、盤全体が含まれるフレーム画像が存在しない場合、表示部15に再度の撮影が必要である旨を表示し、
図3に示したような撮影を実施するようにしてもよい。このとき、撮影ガイドを表示部15に表示するようにしてもよい。例えば、撮影を行う経路を示す矢印線を表示部15に表示してもよい。撮影方法、撮影時の注意点などを文字や音声で作業員201に伝えるようにしてもよい。撮影部11が盤の全体を撮影して取得した動画像を構成するフレーム画像の中に点検値の取得が可能な品質のものが存在する場合、盤画像作成部12は、点検値の取得が可能な品質のフレーム画像の中の1つを選択して盤画像として出力する。
【0041】
また、点検支援装置1は、上記ステップS11の盤動画データ取得処理を開始する前に、点検対象物が設置された盤の選択を作業員201から受け付け、選択された盤の撮影ガイドを表示部15に表示するようにしてもよい。
【0042】
また、点検支援装置1は、盤画像を解析して点検値を取得する処理で使用する盤情報を各点検対象物の形状および配置に基づいて決定する場合、位置情報を利用して候補を絞り込むようにしてもよい。点検支援装置1は、例えば、現場に存在する各盤の位置情報を予め保持しておき、使用する盤情報を決定する際の自装置の位置および各盤の位置情報に基づいて、盤情報の候補を絞り込む。すなわち、点検支援装置1は、自装置を中心とする一定範囲に存在する盤の盤情報を候補とし、候補の中の1つの盤情報を点検対象物の形状および配置に基づいて選択する。この場合、点検支援装置1は、例えば、上記ステップS11の盤動画データ取得処理を開始する前に、位置情報に基づいて絞り込んだ盤情報を点検結果記憶装置2から取得しておく。
【0043】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【0044】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0045】
(付記1)
盤に設置された複数の点検対象物の現場での点検作業を支援する点検支援装置であって、
前記盤の少なくとも一部が含まれる範囲を対象として撮影を行い複数の画像を作成する撮影部と、
前記撮影部で作成された複数の前記画像に基づいて前記盤の全体が含まれる1つの画像である盤画像を作成する盤画像作成部と、
前記盤画像を解析して複数の前記点検対象物の点検値を取得する点検値取得部と、
を備えることを特徴とする点検支援装置。
(付記2)
前記撮影部は動画撮影により複数の前記画像を作成する、
ことを特徴とする付記1に記載の点検支援装置。
(付記3)
前記盤画像作成部は、前記撮影部で作成された複数の前記画像の中から1つ以上の画像を抽出し、抽出した画像に基づいて前記盤画像を作成する、
ことを特徴とする付記1または2に記載の点検支援装置。
(付記4)
前記盤画像作成部は、それぞれに前記盤の異なる一部分が含まれる複数の画像を抽出し、抽出した画像を結合して前記盤画像を作成する、
ことを特徴とする付記3に記載の点検支援装置。
(付記5)
前記盤画像作成部は、前記撮影部で作成された複数の前記画像の中に前記盤の全体が含まれ、かつ定められた品質を満たす画像が存在する場合、定められた品質を満たす前記画像を抽出して前記盤画像とする、
ことを特徴とする付記3に記載の点検支援装置。
(付記6)
前記点検値取得部は、前記点検対象物の前記盤上の位置に関する情報および前記点検対象物の種類に関する情報を含む盤情報に基づいて、前記盤画像に含まれる前記点検対象物を特定し、特定した前記点検対象物の画像を解析して前記点検値を取得する、
ことを特徴とする付記1から5のいずれか一つに記載の点検支援装置。
(付記7)
前記点検値取得部が取得した前記点検値を前記盤に対応する形式の電子帳票に挿入して点検データを作成する点検データ作成部、
を備えることを特徴とする付記1から6のいずれか一つに記載の点検支援装置。
(付記8)
前記撮影部が前記盤を撮影する際に撮影ガイドを表示部に表示させる、
ことを特徴とする付記1から7のいずれか一つに記載の点検支援装置。
(付記9)
付記1から8のいずれか一つに記載の点検支援装置と、
前記点検支援装置による前記点検対象物の点検結果を記憶し、利用者から要求を受けた場合、記憶している点検結果を前記利用者に提供する点検結果記憶装置と、
を備えることを特徴とする点検支援システム。
(付記10)
盤に設置された複数の点検対象物の現場での点検作業を支援する点検支援装置が実行する点検支援方法であって、
前記盤の少なくとも一部が含まれる範囲を対象として撮影を行い複数の画像を作成する撮影ステップと、
前記撮影ステップで作成した複数の前記画像に基づいて前記盤の全体が含まれる1つの画像である盤画像を作成する盤画像作成ステップと、
前記盤画像を解析して複数の前記点検対象物の点検値を取得する点検値取得ステップと、
を含むことを特徴とする点検支援方法。
【符号の説明】
【0046】
1 点検支援装置、2 点検結果記憶装置、11 撮影部、12 盤画像作成部、13 点検値取得部、14 点検データ作成部、15 表示部、16,23 通信部、21 盤情報記憶部、22 点検結果記憶部、51 盤画像の表示画面、52 点検値の表示画面、61 結果表示ボタン、62 登録ボタン、100 点検支援システム、201 作業員、202 利用者、301 盤。