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  • 特開-鉄道車両の床構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169968
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】鉄道車両の床構造
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/10 20060101AFI20241129BHJP
   B61D 17/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B61D17/10
B61D17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086855
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000163372
【氏名又は名称】近畿車輌株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】広沢 賢
(72)【発明者】
【氏名】田淵 知
(72)【発明者】
【氏名】森戸 大海
(72)【発明者】
【氏名】新田 真一
(72)【発明者】
【氏名】清水 滉平
(57)【要約】
【課題】防音性と耐火性能を有する軽量な鉄道車両の床構造を簡便に形成する。
【解決手段】台枠上に配置された下板と、
前記下板上に配置された熱膨張性耐火塗料と、
前記熱膨張性耐火塗料上に配置されたパンチングメタルと、
前記パンチングメタル上に配置された断熱材と、
前記下板上の支持台で支持され前記断熱材より上に配置された耐火パネルを有する鉄道車両の床構造は、通常時は下板熱膨張性耐火塗料、パンチングメタルの構成で拘束型制振板となり、火災時は炭化した熱耐火材、耐火断熱材、断熱材の三層構造で延焼を遅らせる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台枠上に配置された下板と、
前記下板上に配置された熱膨張性耐火塗料と、
前記熱膨張性耐火塗料上に配置されたパンチングメタルと、
前記パンチングメタル上に配置された断熱材と、
前記下板上の支持台で支持され前記断熱材より上に配置された耐火パネルを有する鉄道車両の床構造。
【請求項2】
前記断熱材は、前記パンチングメタル上に配置された第一の断熱材と、前記第一の断熱材の上に配置された第二の断熱材の少なくとも2層構造であり、
前記第二の断熱材は前記第一の断熱材より密度が高い請求項1に記載された鉄道車両の床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄道車両の床構造に関するものであり、特に防音性と耐火性能を有する床構造を簡便に製造することができる構成を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の場合、床下には、車輪を駆動するモータおよびその制御回路が懸架されており、大電流が流れるため火災の可能性がある。そのため、鉄道車両は万一火災が生じた場合に一定時間延焼を遅延できるような耐火性能が求められている。
【0003】
このような耐火性能を実現する耐火構造として、特許文献1には、台枠の下方にサブフロアを形成し、そこに断熱材を配置する構成が知られている。このような構造は、耐火性能を有する上に、断熱材自体が防音材ともなり、耐火性能と防音性を兼ね備える構造と言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-130953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サブフロアを形成し、断熱材を配置する構成は、耐火性および防音性を発揮させることができるので、効果的であると言える。しかし、サブフロアを形成する分だけ車体重量は重くなり、工数の増加とそれに伴うコストアップといった課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みて想到されたものであり、耐火性能と防音性を兼ね備え、さらに軽量にできる鉄道車両の床構造を提供するものである。
【0007】
より具体的に本発明に係る鉄道車両の床構造は、
台枠上に配置された下板と、
前記下板上に配置された熱膨張性耐火塗料と、
前記熱膨張性耐火塗料上に配置されたパンチングメタルと、
前記パンチングメタル上に配置された断熱材と、
前記下板上の支持台で支持され前記断熱材より上に配置された耐火パネルを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る鉄道車両の床構造では、台枠上に、配置した下板上に粘性を有する熱膨張性耐火塗料を塗布し、その上にパンチングメタルと断熱材を配置させているので、パンチングメタルは拘束型制振板の効果を奏し、制振効果を発揮させることができる。
【0009】
また、下板の下方で火災が発生した場合は、熱膨張性耐火塗料が膨張し、パンチングメタルの孔を通して断熱材中に広がる。パンチングメタルの孔から吐出した耐火塗料が侵入した断熱材は、断熱性と耐火性能を備えた遮熱体となり、火災の延焼と客車内の温度上昇を遅延させるので、コンパクトで軽量な床構造を得ることができる。そのため、コストや工数の削減に寄与する。
【0010】
本発明に係る鉄道車両の床構造では、台枠上に、配置した下板上に粘性を有する熱膨張性耐火塗料を塗布し、その上にパンチングメタルと断熱材を配置させているので、下板と熱膨張性耐火塗料とパンチングメタルの組み合わせで拘束型制振板の効果を奏する。
【0011】
また、台枠下方からの火災に関しては、熱膨張性耐火塗料が膨張し炭化することで変化した耐火材と、熱膨張性耐火塗料が膨張しパンチングメタルの孔から断熱材中に侵入して炭化することで得られる耐火断熱材と断熱材との3層による耐火および断熱効果で客車への火災の延焼や高熱の伝導を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る鉄道車両の床構造の構成を示す図である。
図2】熱膨張性耐火塗料が膨張した状態を示す図である。
図3】本発明に係る鉄道車両の床構造の他の構成を示す図である。
図4】他の構成において熱膨張性耐火塗料が膨張した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明に係る鉄道車両の床構造について図面を示し説明を行う。なお、以下の説明は、本発明のいくつかの実施形態を例示するものであり、本発明が以下の説明に限定されるものではない。以下の説明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変することができる。なお、図および下記説明中「上」は重力上方向を言い、「下」は重力下方向をいう。
【0014】
図1に本発明に係る鉄道車両の床構造1の断面図を示す。本発明の鉄道車両の床構造1は、台枠上に配置されている。図1は、台枠を軌道進行方向に対して垂直方向に切った断面の一部を示している。つまり、台枠の側梁100から軌道幅方向に台枠中央にかけた断面である。
【0015】
本発明に係る鉄道車両の床構造1は、台枠上に配置された下板10と、下板10上の熱膨張性耐火塗料34と、パンチングメタル14と、断熱材30と、下板10上に配置された支持台12によって断熱材30より高い位置で支持された耐火パネル18を含む。なお、耐火パネル18の上には床敷物20が配置してあってもよい。
【0016】
下板10は厚さ1~3mmのステンレス板が好適に利用できる。ある程度の透磁率を有していれば、床下などに配線される高電流電線(図示せず)からの漏れ磁界を低減させることができる。
【0017】
下板10上には、支持台12が配置される。支持台12は、断面略長方形の中空角材が好適に利用できる。また支持台12は下板10上の軌道幅方向に複数設けられていてもよい。例えば、左右の側梁100を連結する横梁(図示せず)上には支持台12を配置することができる。支持台12は耐火パネル18を支持する。支持台12は、下板10と耐火パネル18の距離である隙間22が、一定の距離になるように支持する。また、支持台12の側面にはヘルムホルツレゾネータの吸音孔が設けられ、雑音吸収に寄与する。
【0018】
支持台12同士の間には、断熱材30が配置される。断熱材30の厚みは、隙間22より薄く設定されている。
【0019】
下板10上には、熱膨張性耐火塗料34が塗布される。熱膨張性耐火塗料34は、250℃付近から炭化しながら10~20倍程度に膨張し、断熱層を形成するものである。また、熱膨張性耐火塗料34は、塗布後も弾性を有する。熱膨張性耐火塗料34の具体的なものとしては、リン酸アンモニウム等の発泡剤、デキストリンといった炭化剤、アクリル系等の樹脂、顔料、溶媒といった成分で構成される発泡性耐火塗料、膨張黒鉛、変性ポリエーテル樹脂等が挙げられる。
【0020】
熱膨張性耐火塗料34は、薄すぎると耐火性能を発揮できず、厚すぎるとオーバースペックとなる。したがって、100μm以上20mm以下が好適であり、好ましくは0.5mm以上10mm以下、もっとも好ましくは1mm以上5mm以下がよい。また、熱膨張性耐火塗料34は乾燥時に弾性を有するものが望ましい。好ましくは曲率半径が100mm以上の曲げ変形で塗料に割れが生じなければよい。
【0021】
熱膨張性耐火塗料34の上にはパンチングメタル14が配置される。パンチングメタル14は拘束板としての面剛性を持つ板として厚さ1mm程度のステンレス製で直径10mm程度の貫通孔14hが10mm程度の間隔で形成されたものが好適に利用できる。なお、貫通孔14hは面剛性を確保できれば、直径や孔ピッチは上記以外の数値でもよい。
【0022】
パンチングメタル14の上には支持台12と断熱材30が載置される。断熱材30は具体的にはカーボンファイバー製で密度7kg/m程度のものが好適に利用できる。密度7kg/mは、断熱材としては比較的粗いものであるが、熱膨張性耐火塗料34が侵入する余地を確保するためである。
【0023】
次に本発明に係る鉄道車両の床構造1の作用について説明する。通常走行中の振動は、側梁100と支持台12で挟持されている下板10と熱膨張性耐火塗料34とパンチングメタル14による拘束型振動板構造によって、振動を熱膨張性耐火塗料34が吸収し、熱エネルギーに変換することで吸収する。これによって、制振効果を発揮する。
【0024】
一方、台枠の下方で火災が発生すると、下板10が加熱される。下板10を通じて熱膨張性耐火塗料34が加熱され、一定温度に達すると、熱膨張性耐火塗料34は膨張する。膨張し炭化した熱膨張性耐火塗料34は、熱耐火材34xとなる。
【0025】
図2は熱膨張性耐火塗料34が膨張し、パンチングメタル14の下で熱耐火材34xとなった状態を示している。さらに、パンチングメタル14の下の熱膨張性耐火塗料34は、パンチングメタル14の貫通孔14hから断熱材30の内部に侵入し、断熱材30と一体となる。これを耐火断熱材34mixと呼ぶ。耐火断熱材34mixは、耐火性能と断熱性の両方を兼ね備えた新たな部材である。したがって、断面を見れば硬化した熱耐火材34xと、パンチングメタル14と、耐火断熱材34mixが一体化されたものとして観察される。これらを熱遮断層22xと呼ぶ。
【0026】
熱遮断層22xは、台枠下方からの火災の延焼を妨げ、客車内の熱上昇を抑えることで、乗客の避難の時間を稼ぐことができる。
【0027】
図3には、他の実施形態を示す。図3では、断熱材30が下層断熱材30aと上層断熱材30bに分かれている。ここで上層断熱材30bは下層断熱材30aより密度が高い。つまり、上層断熱材30bは、熱膨張性耐火塗料34が侵入しにくい密度とする。このような構造とすることで、耐火断熱材34mixとなる部分と上層断熱材30bとして残る部分が明確になる。
【0028】
図4は下板10の下方で火災が発生し、温度が上がったために熱膨張性耐火塗料34が膨張し、炭化することで熱耐火材34xになった状態を示す。また、熱膨張性耐火塗料34は、パンチングメタル14の貫通孔14hから下層断熱材30a中に侵入し、耐火断熱材34mixを形成する。下層断熱材30a上に配置された上層断熱材30bは、下層断熱材30aより密度が高く、熱膨張性耐火塗料34がほぼ侵入できないので、断熱材としてその役割を果たす。
【0029】
この場合、上層断熱材30bは、密度の薄い下層断熱材30aよりも断熱効果は高い。したがって、耐火断熱材34mixの上に薄い密度の断熱材30を配置する組み合わせよりも、耐火断熱材34mixの上に上層断熱材30bを配置した組み合わせの方がより高い断熱性を発揮させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の床構造は鉄道車両の床構造として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 床構造
10 下板
12 支持台
14 パンチングメタル
14h 貫通孔
18 耐火パネル
20 床敷物
22 隙間
22x 熱遮断層
30 断熱材
30a 下層断熱材
30b 上層断熱材
34 熱膨張性耐火塗料
34x 熱耐火材
34mix 耐火断熱材
100 側梁
図1
図2
図3
図4