(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169969
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】ロック構造、脚立、及び、昇降道具
(51)【国際特許分類】
F16B 1/02 20060101AFI20241129BHJP
E06C 1/18 20060101ALI20241129BHJP
E06C 7/50 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
F16B1/02 Q
E06C1/18
E06C7/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086856
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】393018130
【氏名又は名称】長谷川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】泉 幸治
【テーマコード(参考)】
2E044
【Fターム(参考)】
2E044AA01
2E044BA04
2E044BC13
2E044BC24
2E044CB03
2E044CC01
2E044DA01
2E044DB01
2E044DC02
2E044EA01
2E044EB03
(57)【要約】
【課題】ロックを解除する際の使用者の作業を簡素化することが可能となる、ロック構造、脚立、及び、昇降道具を提供する。
【解決手段】脚立1が備えるロック構造は、ブレース部材10が所定位置に位置し、レバー24が規制位置に位置し、ピン24bが切り欠き部10aに挿入された状態でレバー24を回動させることにより、ピン24bが切り欠き部10aから離脱するとともに、傾斜面24aが当接部22bに当接してレバー24が解除位置に変位し、レバー24の被規制部24cが規制部21fに当接してレバー24の第一の方向への回動が規制されることにより、ブレース部材10の所定位置から下側への変位が許容され、ブレース部材10が下側から所定位置に変位する際にレバー24が規制位置に変位し、ねじりばね26の付勢力によってピン24bが切り欠き部10aに挿入されてブレース部材10とロック機構20との相対変位が規制される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロック機構と、前記ロック機構との相対変位が規制又は規制解除されるロックバーと、を備えるロック構造であって、
前記ロックバーは、前記ロック機構との相対変位が規制された際に所定位置に位置し、前記ロック機構との相対変位が規制解除された際に前記所定位置から一方の側に変位可能とされ、
前記ロック機構は、前記ロックバーが挿通されてスライド変位可能とされるケース部材と、前記ケース部材の内部に回動可能に収容されて一端部が前記ケース部材に形成された孔部から露出するレバーと、前記ケース部材の内部に収容されて前記一端部が前記ケース部材の外側に変位する回動方向である第一の方向に前記レバーを付勢する付勢部材と、を備え、
前記ロックバーには切り欠き部が形成され、
前記ケース部材の内部には、前記ロックバーと前記レバーの他端部との間に規制部が形成され、
前記レバーは、前記ケース部材の内部において、規制位置と解除位置との間で前記ロックバーの長手方向にスライド変位可能とされるとともに、前記一端部には傾斜面が形成され、他端側には前記切り欠き部に挿入可能なピンが形成され、
前記ロックバーが前記所定位置に位置し、前記レバーが前記規制位置に位置し、前記ピンが前記切り欠き部に挿入された状態で、前記付勢部材の付勢力に抗して前記レバーを前記第一の方向と反対の第二の方向に回動させることにより、前記ピンが前記切り欠き部から離脱するとともに、前記傾斜面が前記孔部の内面部に当接して前記レバーが前記解除位置に変位し、
前記レバーが前記解除位置に位置する状態において、前記レバーの他端部が前記規制部に当接して前記レバーの前記第一の方向への回動が規制されることにより、前記ロックバーの前記所定位置から前記一方の側への変位が許容され、
前記ロックバーが前記一方の側から前記所定位置に変位する際に前記レバーが前記規制位置に変位し、前記付勢部材の付勢力によって前記ピンが前記切り欠き部に挿入されて前記ロックバーと前記ロック機構との相対変位が規制される、ロック構造。
【請求項2】
前記レバーの前記一端部は、前記付勢部材の付勢力により前記孔部から延出され、
前記ロックバーが前記所定位置に位置し、前記レバーが前記規制位置に位置し、前記ピンが前記切り欠き部に挿入された状態で、前記付勢部材の付勢力に抗して前記一端部を前記ケース部材の側に押圧して前記レバーを前記第二の方向に回動させることにより、前記ピンが前記切り欠き部から離脱するとともに、前記傾斜面が前記孔部の縁部に当接して前記レバーが前記解除位置に変位する、請求項1に記載のロック構造。
【請求項3】
前記ロックバーが前記一方の側から前記所定位置に変位する際に、前記ケース部材の前記切り欠き部の縁が前記ピンに当接することにより前記レバーが前記規制位置に変位し、前記付勢部材の付勢力によって前記ピンが前記切り欠き部に挿入されて前記ロックバーと前記ロック機構との相対変位が規制される、請求項2に記載のロック構造。
【請求項4】
二本の支柱と、前記二本の支柱の間に架け渡される一又は複数の踏桟と、前記二本の支柱の上端部を連結する天板と、を備える一対の梯子体が、互いの上端部で相対回転可能に連結され、前記一対の梯子体が近接した閉状態と、前記一対の梯子体が所定間隔に離間した脚立状態と、に変形可能な脚立であって、
脚立状態において前記一対の梯子体の相対変位を規制する開き止め機構と、を備え、
前記開き止め機構は、請求項1から請求項3の何れか一項に記載のロック構造を備え、
前記ロック構造は、前記一対の梯子体において対向して近接離間する二本の前記支柱を連結するブレース部材を前記ロックバーとして備え、
前記ブレース部材は、近接離間する二本の前記支柱の一方に回動可能に組付けられ、
前記ロック機構は、近接離間する二本の前記支柱の他方に回動可能に組付けられる、脚立。
【請求項5】
前記ブレース部材及び前記ロック機構が四本の支柱の全てに回動可能に組付けられる、請求項4に記載の脚立。
【請求項6】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載のロック構造を少なくとも一個備える、昇降道具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロック構造、脚立、及び、昇降道具に関し、詳細には、脚立又は昇降道具に採用されるロック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脚立等の昇降道具を構成する梯子体間に設けられた開き止め機構において、構成部品の相対変位をロックすることにより昇降道具の姿勢を維持する技術が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1には、開き止め装置である止め杆に設けられたフック部を止めピンに係合するとともに、止めピンを付勢部材で付勢する技術が記載されている。この場合、開き止めにおけるロックを解除する際に、止めピンを押し込んだ姿勢でフック部を止めピンから離脱させる必要がある。即ち、ロックを解除する際に両手で作業をする必要があるため、使用者の作業が煩雑になっていた。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ロックを解除する際の使用者の作業を簡素化することを可能とする、ロック構造、脚立、及び、昇降道具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下では、上記課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
本発明は、ロック機構と、前記ロック機構との相対変位が規制又は規制解除されるロックバーと、を備えるロック構造であって、前記ロックバーは、前記ロック機構との相対変位が規制された際に所定位置に位置し、前記ロック機構との相対変位が規制解除された際に前記所定位置から一方の側に変位可能とされ、前記ロック機構は、前記ロックバーが挿通されてスライド変位可能とされるケース部材と、前記ケース部材の内部に回動可能に収容されて一端部が前記ケース部材に形成された孔部から露出するレバーと、前記ケース部材の内部に収容されて前記一端部が前記ケース部材の外側に変位する回動方向である第一の方向に前記レバーを付勢する付勢部材と、を備え、前記ロックバーには切り欠き部が形成され、前記ケース部材の内部には、前記ロックバーと前記レバーの他端部との間に規制部が形成され、前記レバーは、前記ケース部材の内部において、規制位置と解除位置との間で前記ロックバーの長手方向にスライド変位可能とされるとともに、前記一端部には傾斜面が形成され、他端側には前記切り欠き部に挿入可能なピンが形成され、前記ロックバーが前記所定位置に位置し、前記レバーが前記規制位置に位置し、前記ピンが前記切り欠き部に挿入された状態で、前記付勢部材の付勢力に抗して前記レバーを前記第一の方向と反対の第二の方向に回動させることにより、前記ピンが前記切り欠き部から離脱するとともに、前記傾斜面が前記孔部の内面部に当接して前記レバーが前記解除位置に変位し、前記レバーが前記解除位置に位置する状態において、前記レバーの他端部が前記規制部に当接して前記レバーの前記第一の方向への回動が規制されることにより、前記ロックバーの前記所定位置から前記一方の側への変位が許容され、前記ロックバーが前記一方の側から前記所定位置に変位する際に前記レバーが前記規制位置に変位し、前記付勢部材の付勢力によって前記ピンが前記切り欠き部に挿入されて前記ロックバーと前記ロック機構との相対変位が規制されるものである。
【0008】
また、本発明に係るロック構造において、前記レバーの前記一端部は、前記付勢部材の付勢力により前記孔部から延出され、前記ロックバーが前記所定位置に位置し、前記レバーが前記規制位置に位置し、前記ピンが前記切り欠き部に挿入された状態で、前記付勢部材の付勢力に抗して前記一端部を前記ケース部材の側に押圧して前記レバーを前記第二の方向に回動させることにより、前記ピンが前記切り欠き部から離脱するとともに、前記傾斜面が前記孔部の縁部に当接して前記レバーが前記解除位置に変位することが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るロック構造において、前記ロックバーが前記一方の側から前記所定位置に変位する際に、前記ケース部材の前記切り欠き部の縁が前記ピンに当接することにより前記レバーが前記規制位置に変位し、前記付勢部材の付勢力によって前記ピンが前記切り欠き部に挿入されて前記ロックバーと前記ロック機構との相対変位が規制されることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る脚立は、二本の支柱と、前記二本の支柱の間に架け渡される一又は複数の踏桟と、前記二本の支柱の上端部を連結する天板と、を備える一対の梯子体が、互いの上端部で相対回転可能に連結され、前記一対の梯子体が近接した閉状態と、前記一対の梯子体が所定間隔に離間した脚立状態と、に変形可能な脚立であって、脚立状態において前記一対の梯子体の相対変位を規制する開き止め機構と、を備え、前記開き止め機構は、上記の何れか一に記載のロック構造を備え、前記ロック構造は、前記一対の梯子体において対向して近接離間する二本の前記支柱を連結するブレース部材を前記ロックバーとして備え、前記ブレース部材は、近接離間する二本の前記支柱の一方に回動可能に組付けられ、前記ロック機構は、近接離間する二本の前記支柱の他方に回動可能に組付けられるものである。
【0011】
また、本発明に係る脚立において、前記ブレース部材及び前記ロック機構が四本の支柱の全てに回動可能に組付けられることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る昇降道具は、上記の何れか一に記載のロック構造を少なくとも一個備えるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るロック構造、脚立、及び、昇降道具によれば、ロックを解除する際の使用者の作業を簡素化することが可能となる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係るロック構造を備えた脚立の脚立状態を示す斜視図。
【
図3】(a)及び(b)はそれぞれ脚立状態及び閉状態におけるロック構造を示す側面図。
【
図7】(a)から(c)はそれぞれロック構造の挙動を示した断面図。
【
図8】(a)から(c)はそれぞれロック構造の挙動を示した断面図。
【
図9】(a)から(c)はそれぞれロック構造の挙動を示した断面図。
【
図10】第一変形例に係るロック機構を示す斜視図。
【
図11】(a)から(c)はそれぞれ第一変形例に係るロック構造の挙動を示した断面図。
【
図12】(a)から(c)はそれぞれ第二変形例に係るロック構造の挙動を示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[脚立1]
まず、
図1及び
図2を用いて、本発明の一実施形態に係るロック構造を備える昇降道具の一例である脚立1について説明する。なお、本発明に係るロック構造は、本実施形態における脚立1の他に、梯子、踏台、三脚、足場台等、使用者が昇降するために一対の支柱の間に踏桟が架け渡された梯子体を備える昇降道具、及び、昇降道具とは異なる他の装置について、全般的に適用することが可能である。
【0016】
本明細書で説明する脚立1においては、各図における梯子体2・2の回動軸方向(踏桟4の架設方向)を脚立の左右方向とし、水平方向において左右方向と直交する方向(梯子体2・2の開閉方向)を脚立の前後方向とする。本実施形態においては、
図1中の左下側を脚立1の左側方とし、
図1中の右下側を脚立1の前方とする。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る脚立1は、互いに共通の構成を有する一対の梯子体2・2を備える。梯子体2・2は側面視で略ハ字状に下端部が互いに離間して広がるように配置され、それぞれの上端部がヒンジ6・6により回動可能に連結される。具体的には、ヒンジ6が対向する支柱3・3を相対的に回動可能に連結する。即ち、梯子体2・2が互いに近接離間する方向(脚立1の前後方向)に回動可能とされる。
【0018】
それぞれの梯子体2は長尺体である一対の支柱3・3を備える。支柱3・3は互いの距離が上側より下側で大きくなるように、正面視で略ハ字状に配置されている。本実施形態に係る脚立1は4本の支柱3を備えている。各支柱3は、強度の確保等を目的として、長手方向に沿った二箇所で屈曲した形状で、長手方向と直交する断面の形状が略コ字状になるように形成されている。また、それぞれの支柱3の下端部には端具が固定される。
【0019】
梯子体2における一対の支柱3・3の間には、所定の間隔を隔てて中空の筒状部材である複数の踏桟4・4・・・が架け渡される。踏桟4は所定の横断面形状をなす直線状の押出し成形品が所定の長さに切断されて形成される。それぞれの踏桟4はリベットにより支柱3において対向する内側面の間に固定されている。本実施形態に係る脚立1において、各支柱3、踏桟4及び天板5はアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる軽金属製の部材である。なお、踏桟4をボルト・ナット等の他の締結部品を用いて支柱3に固定することも可能である。
【0020】
それぞれの梯子体2は、上端部に中空の筒状部材である天板5・5が設けられる。天板5は所定の横断面形状をなす直線状の押出し成形品が所定の長さに切断されて形成される。天板5はリベットにより支柱3・3の上端部において対向する内側面の間に固定されている。換言すれば、天板5はそれぞれの梯子体2において、二本の支柱3・3の上端部を連結するように設けられる。なお、天板5をボルト・ナット等の他の締結部品を用いて支柱3に固定することも可能である。
【0021】
脚立1は、一対の梯子体2・2のなす角度(詳細には、梯子体2・2の相対的な回動によって近接離間する支柱3・3が側面視においてなす角度、以下同じ)に応じて、主に以下の二つの形態をとることができる。
【0022】
第一の形態は、
図1に示す如く梯子体2・2のなす角度を約30度として、4本の支柱3で脚立1を支える形態(以下、この形態を「脚立状態」と記載する)である。脚立状態における脚立1は、地面や床に自立させた状態で用いられる。第二の形態は、
図2に示す如く梯子体2・2のなす角度を約0度に近接させる形態(以下、この形態を「閉状態」と記載する)である。脚立1の閉状態は、主に収納時や搬送時に採用される。
【0023】
脚立1は、脚立状態において、梯子体2・2のなす角度を規定するとともに互いの相対変位(回転)を規制する、開き止め機構7を備える。本実施形態における開き止め機構7は、梯子体2・2において対向して近接離間する二本の支柱3・3を連結するブレース部材10と、ブレース部材10との相対変位を規制又は規制解除するロック機構20とを備える。本実施形態におけるブレース部材10は、ロック構造におけるロックバーとして機能する。
【0024】
開き止め機構7において、ブレース部材10の上端部は、近接離間する二本の支柱3・3の一方における中途部の上側寄りに、前後方向に回動可能に組付けられている。また、当該開き止め機構7において、ロック機構20は、近接離間する二本の支柱3・3の他方における中途部の下側よりに回動可能に組付けられるとともに、対応するブレース部材10の下部が挿通されている。
【0025】
図1に示す如く、脚立1が脚立状態とされ、ブレース部材10の先端部がロック機構20にロックされてブレース部材10とロック機構20とが互いに相対変位が規制された状態においては、支柱3・3は相対変位不能にブレース部材10により連結される(
図3(a)を参照)。これにより、梯子体2・2は開き止め機構7により互いに近接又は離間する方向の相対回転が規制され、梯子体2・2のなす角度が約30度のまま脚立1は脚立状態を維持する。
【0026】
一方、ロック機構20によるブレース部材10の先端部のロックが解除され、互いに相対変位が許容された状態においては、支柱3・3が近接可能となる(
図3(b)を参照)。これにより、梯子体2・2は互いに近接する方向に相対回転可能となり、梯子体2・2のなす角度を約0度として、
図2に示す如く脚立1を閉状態に変形させることが可能となる。
【0027】
図1に示す如く、脚立1においては、ブレース部材10及びロック機構20が四本の支柱3の全てに回動可能に組付けられている。即ち、本実施形態に係る脚立1には、ブレース部材10及びロック機構20を備えるロック構造が四組設けられている。なお、脚立1に設けるロック構造の個数は本実施形態に限定されるものではなく、他の個数とすることも可能である。
【0028】
[ロック構造]
次に、
図3から
図9を用いて、本実施形態に係る脚立1に採用されたロック構造について説明する。上述の如く、本実施形態におけるロック構造は、ロック機構20と、ロック機構20に挿通されるとともにロック機構20との相対変位が規制又は規制解除されるロックバーであるブレース部材10と、を備える。
図3(a)及び(b)に示す如く、ブレース部材10には切り欠き部10aが形成されている。また、ブレース部材10の下端部にはエンドキャップ10bが固定されている。
【0029】
図6に示す如く、ロック機構20は、ケース本体21と上蓋22と下蓋23とで形成されるケース部材、レバー24、軸部材25、及び、付勢部材であるねじりばね26等により構成される。
【0030】
ケース本体21は上下方向に開口した中空の角筒形状の部材である。ケース本体21の側面には固定孔21a及び貫通孔21bが対向して開口されている。ケース本体21の内部空間は内壁21gによって二つに仕切られている。内壁21gの下部には挿入孔21dが開口されている。内壁21gのうち、挿入孔21dの下方は規制部21fとして構成される。
図7から
図9に示す如く、規制部21fはブレース部材10とレバー24の下端部との間に形成される。ケース本体21の内面には、内壁21gに隣接して溝部21cが形成されており、溝部21cが形成された側のケース本体21の側壁はスリット21eが形成されることにより開放されている。
【0031】
ケース本体21の上側開口部には上蓋22が設けられる。上蓋22にはブレース部材10が挿通される挿通孔22aが開口されている。上蓋22にはレバー24の傾斜面24aが当接する当接部22bが形成されている。ケース本体21の下側開口部には下蓋23が設けられる。下蓋23にはブレース部材10が挿通される挿通孔23aが開口されている。ケース本体21に上蓋22及び下蓋23を組付けた際には、スリット21eと上蓋22と下蓋23とによりケース部材に孔部が形成される。即ち、上蓋22の当接部22bは孔部の内面における縁部を形成する。
【0032】
図4に示す如く、上蓋22の挿通孔22a及び下蓋23の挿通孔23aにブレース部材10が挿通されることにより、ロック機構20におけるケース部材はブレース部材10に対してスライド変位可能とされる。
【0033】
ケース本体21にはレバー24が収容される。具体的に、レバー24に軸部材25が挿通された状態で、軸部材25がケース本体21の溝部21cに挿入される。これによりレバー24は、ケース本体21の内部で軸部材25を中心に回動可能とされる。また、レバー24は、軸部材25が溝部21cの内部で変位することにより、溝部21cに沿ってスライド変位可能とされる。レバー24がケース部材に収容された際には、レバー24の上端部はケース部材に形成された孔部(スリット21e、上蓋22、及び下蓋23により囲われた孔部)から露出する。
【0034】
レバー24とケース本体21の内壁21gとの間にはねじりばね26が介挿される。ねじりばね26はケース部材の内部に収容されて、レバー24の上端部がケース部材の外側に変位する回動方向(
図7から
図9における時計回り方向)である第一の方向にレバー24を付勢する。これにより、レバー24の上端部は、ねじりばね26の付勢力でケース部材の孔部から延出される。
【0035】
図6から
図9に示す如く、レバー24の上端部には傾斜面24aが形成されている。また、レバー24の下端側にはブレース部材10の切り欠き部10aに挿入可能なピン24bがブレース部材10の側に突出して形成されている。ピン24bの上部には緩やかな傾斜部が形成されている。ピン24bの下側には被規制部24cが形成される。レバー24の上部においてケース部材から露出する部分には押圧部24dが形成されている。
【0036】
本実施形態においては
図4及び
図5に示す如く、支柱3には支持孔3aが開口されており、ロック機構20は固定ねじ31及び支持部材32を介して支持孔3aに組付けられる。ロック機構20を支柱3に組付ける際には、支持部材32の挿入部32aをケース本体21の固定孔21aに挿入した状態で、貫通孔21bから固定ねじ31を挿入し、支柱3の内面に設けたナットに固定ねじ31を螺入する。これにより、ロック機構20は支柱3に対して回動可能に組付けられる。
【0037】
ブレース部材10は、
図3(a)に示す如くレバー24のピン24bがブレース部材10の切り欠き部10aに挿入された状態においては、ロック機構20との相対変位が規制され、脚立1は脚立状態となる。本明細書においては、ロック機構20との相対変位が規制されるブレース部材10の位置を「所定位置」と記載する。
【0038】
また、ブレース部材10は、
図3(b)に示す如くピン24bが切り欠き部10aから離脱した状態においては、ロック機構20との相対変位が許容されて所定位置から下側に変位可能とされ、脚立1は閉状態に変形可能となる。
【0039】
上述の如く、本実施形態に係るロック構造のレバー24は、ケース部材の内部で溝部21cに沿って、ブレース部材10の長手方向にスライド変位可能とされる。
図7(a)に示す如く、レバー24の被規制部24cがケース本体21の挿入孔21dに挿入される位置にある場合、レバー24のピン24bはブレース部材10の切り欠き部10aに挿入可能となる。この際のケース部材の長手方向におけるレバー24の位置を、本明細書においては「規制位置」と記載する。
【0040】
一方、
図8(a)に示す如く、レバー24の被規制部24cがケース本体21の挿入孔21dよりも下側に位置し、規制部21fに当接可能となる位置にある場合、レバー24のピン24bはブレース部材10の切り欠き部10aに挿入不能となる。この際のケース部材の長手方向におけるレバー24の位置を、本明細書においては「解除位置」と記載する。このように、レバー24はケース部材の内部で、規制位置と解除位置との間でスライド変位可能とされている。
【0041】
図7から
図9を用いて、ロック構造の挙動について説明する。まず、
図7(a)に示す如く、ロックバーであるブレース部材10が所定位置に位置し、レバー24が規制位置に位置し、ピン24bが切り欠き部10aに挿入された状態(脚立1の脚立状態)で、使用者がレバー24の押圧部24dを指でケース部材の側に押圧する。
【0042】
これにより、
図7(b)に示す如くレバー24はねじりばね26の付勢力に抗して第二の方向(反時計回り方向)に回動し、レバー24の被規制部24cがケース本体21の挿入孔21dから抜け出る。この際、レバー24の傾斜面24aはケース部材の上蓋22における当接部22bに当接する。
【0043】
さらにレバー24の押圧部24dをケース部材の側に押し込むと、傾斜面24aが当接部22bに当接することにより、
図7(c)に示す如くレバー24が下方にスライドして解除位置に変位する。また、この際、ピン24bが切り欠き部10aから離脱する。
【0044】
レバー24が解除位置に位置する状態で使用者が指をレバー24から離した場合でも、
図8(a)に示す如く、ねじりばね26の付勢力によりレバー24の被規制部24cが規制部21fに当接するため、レバー24の第一の方向への回動が規制される。これにより、ブレース部材10の所定位置から下側への変位が許容される。
【0045】
ブレース部材10を下方に変位させる際には、
図8(b)に示す如く切り欠き部10aの上側の縁がピン24bの上部の傾斜部に当接してレバー24を第二の方向に回動させる。そして、
図8(c)に示す如くピン24bがブレース部材10の側面に乗り上げ、ブレース部材10がロック機構20に対して下方にスライド変位可能となる。これにより、脚立1を閉状態とすることが可能となる。
【0046】
ブレース部材10が下側から所定位置に変位する際には、
図9(a)に示す如く切り欠き部10aの下側の縁がピン24bの下部に当接することによりレバー24が上方に持ち上げられる。これにより、
図9(b)に示す如くレバー24は規制位置に変位し、ねじりばね26の付勢力によってレバー24が第一の方向に回動して
図9(c)に示す如くピン24bが切り欠き部10aに挿入される。ピン24bが切り欠き部10aに挿入された状態においては、ブレース部材10とロック機構20との相対変位が規制される。このように、四個の開き止め機構7でブレース部材10をロック機構20でロックすることにより、脚立1を脚立状態として安定的に姿勢を維持できる。
【0047】
上記の如く、本実施形態に係るロック構造によれば、ロックを解除する際に、レバー24の押圧部24dを押圧するだけで、ロック機構20とロックバー(ブレース部材10)との相対変位の規制を解除することができる。即ち、ロック構造のロック解除操作を片手で行うことができるため、使用者の作業を簡素化することができる。
【0048】
また、本実施形態に係るロック構造によれば、押圧部24dの押圧操作によりレバー24を解除位置に変位させることができるため、その状態でレバー24から指を離しても、ピン24bが再度切り欠き部10aに挿入されることがない。即ち、押圧部24dの押圧操作のみで、ロック解除状態を維持することができる。
【0049】
また、本実施形態に係るロック構造によれば、ロックバー(ブレース部材10)を所定位置に戻す際にレバー24を規制位置に変位させることができる。このため、ロックバー(ブレース部材10)を所定位置に戻す操作のみで、ピン24bを切り欠き部10aに挿入し、ロック状態とすることができる。即ち、ロック構造におけるロック操作時における使用者の作業を簡素化することができる。
【0050】
また、本実施形態においては、ロック構造を脚立1に採用している。これにより、使用者による脚立1の開き止め機構7の操作(脚立状態と閉状態との間で変形させる際の操作)を簡素化することが可能となる。
【0051】
本実施形態に係る脚立1では、四組のロック構造が設けられている。本実施形態においてはそれぞれのロック構造において押圧部24dの押圧操作のみで、四組全てのロック構造のロック解除状態を同時に維持できる。このため、脚立1を閉状態に変形させる操作をより簡易に行うことが可能となる。
【0052】
なお、本実施形態において、レバー24の上端部は、ねじりばね26の付勢力でケース部材の孔部から延出される構成としているが、レバー24の上端部はケース部材の側に押圧できる程度に孔部から露出していれば良い。即ち、レバー24が常にケース部材の内部に収容される構成としても差し支えない。
【0053】
[第一変形例]
次に、
図10及び
図11を用いて、第一変形例に係るロック構造について説明する。本変形例におけるロック構造は
図11に示す如く、ロック機構120と、ロック機構120に挿通されるとともにロック機構120との相対変位が規制又は規制解除されるロックバーであるブレース部材10と、を備える。
【0054】
本変形例においては、前記実施形態に係るロック構造に対して、ロック機構120を構成する上蓋122の構成のみが異なる。このため、以下では上蓋122の構成を中心に説明し、他の部材については同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0055】
本変形例において、ケース本体21の上側開口部には上蓋122が設けられる。上蓋122にはブレース部材10が挿通される挿通孔122aが開口されている。
図10に示す如く、挿通孔122aに隣接する箇所には、二本の切れ込みによって上下に弾性変形可能に形成された変形部122bが形成される。変形部122bの下部には当接部122cが形成されている。即ち、上蓋122の当接部122cはケース部材に形成された孔部の内面における縁部を構成する。
【0056】
図11を用いて、本変形例に係るロック構造の挙動について説明する。
図11(a)に示す如く、ロックバーであるブレース部材10が所定位置に位置し、レバー24が規制位置に位置し、ピン24bが切り欠き部10aに挿入された状態で、使用者がレバー24の押圧部24dを指でケース部材の側に押圧する。
【0057】
これにより、
図11(b)に示す如くレバー24はねじりばね26の付勢力に抗して第二の方向(反時計回り方向)に回動し、レバー24の被規制部24cがケース本体21の挿入孔21dから抜け出る。この際、レバー24の傾斜面24aはケース部材の上蓋122における当接部122cに当接し、変形部122bを上側に弾性変形させる。
【0058】
さらにレバー24の押圧部24dをケース部材の側に押圧すると、ピン24bが切り欠き部10aから離脱する。また、傾斜面24aが当接部122cに当接した状態で変形部122bが元の形状に復帰することにより、
図11(c)に示す如くレバー24が下方にスライドして解除位置に変位する。
【0059】
このように、本変形例においては、上蓋122に変形部122bを形成し、レバー24の操作時に変形部122bを弾性変形させる構成としている。これにより、レバー24のスライド変位の際に変形部122bの弾性力を用いることが可能となる。即ち、レバー24の押圧部24dを強い力で押圧する必要がなく、簡易な構成でレバー24を解除位置に変位させることが可能となる。
【0060】
なお、本変形例のように二本の切れ込みにより変形部122bを形成せずに、第一実施形態に係るロック機構20における上蓋22の形状のままで、レバー24の操作時に上蓋22を弾性変形させる構成を採用することも可能である。この場合でも、レバー24のスライド変位の際に上蓋22の弾性力を用いることができる。
【0061】
[第二変形例]
次に、
図12を用いて、第二変形例に係るロック構造について説明する。本変形例におけるロック構造は、ロック機構220と、ロック機構220に挿通されるとともにロック機構220との相対変位が規制又は規制解除されるロックバーであるブレース部材10と、を備える。
【0062】
本変形例においては、前記実施形態に係るロック構造に対して、ロック機構220の内部で軸部材25と上蓋22との間に介挿される圧縮ばね27の構成のみが異なる。このため、以下では圧縮ばね27の構成を中心に説明し、他の部材については同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0063】
図12を用いて、本変形例に係るロック構造の挙動について説明する。
図12(a)に示す如く、ロックバーであるブレース部材10が所定位置に位置し、レバー24が規制位置に位置し、ピン24bが切り欠き部10aに挿入された状態で、使用者がレバー24の押圧部24dを指でケース部材の側に押圧する。
【0064】
これにより、
図12(b)に示す如くレバー24はねじりばね26の付勢力に抗して第二の方向(反時計回り方向)に回動し、レバー24の被規制部24cがケース本体21の挿入孔21dから抜け出る。この際、レバー24の傾斜面24aはケース部材の上蓋122における当接部122cに当接する。
【0065】
さらにレバー24の押圧部24dをケース部材の側に押圧すると、ピン24bが切り欠き部10aから離脱する。また、傾斜面24aが当接部122cに当接した状態で圧縮ばね27の付勢力が軸部材25に加わることにより、
図12(c)に示す如くレバー24が下方にスライドして解除位置に変位する。
【0066】
このように、本変形例においては、上蓋22と軸部材25との間に圧縮ばね27を介挿する構成としている。これにより、レバー24のスライド変位の際に圧縮ばね27の弾性力を用いることが可能となる。即ち、レバー24の押圧部24dを強い力で押圧する必要がなく、簡易な構成でレバー24を解除位置に変位させることが可能となる。
【符号の説明】
【0067】
1 脚立(昇降道具) 2 梯子体
3 支柱 3a 支持孔
4 踏桟 5 天板
6 ヒンジ 7 開き止め機構
10 ブレース部材(ロックバー)
10a 切り欠き部 10b エンドキャップ
20 ロック機構 21 ケース本体
21a 固定孔 21b 貫通孔
21c 溝部 21d 挿入孔
21e スリット 21f 規制部
21g 内壁 22 上蓋
22a 挿通孔 22b 当接部
23 下蓋 23a 挿通孔
24 レバー 24a 傾斜面
24b ピン 24c 被規制部
24d 押圧部 25 軸部材
26 ねじりばね(付勢部材)
27 圧縮ばね 31 固定ねじ
32 支持部材 32a 挿入部
120 ロック機構(第一変形例)
122 上蓋 122a 挿通孔
122b 変形部 122c 当接部
220 ロック機構(第二変形例)