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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024169978
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】フィルタ基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20241129BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H05K3/46 G
H05K3/46 Q
H05K7/20 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086877
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】六浦 圭太
(72)【発明者】
【氏名】竹本 敬介
【テーマコード(参考)】
5E316
5E322
【Fターム(参考)】
5E316AA35
5E316AA41
5E316AA53
5E316AA54
5E316AA55
5E316BB06
5E316HH22
5E316JJ03
5E322AA02
5E322AA03
5E322AA11
(57)【要約】
【課題】フィルタ回路を実装する基板において、高電位側の配線パターンと低電位側の配線パターンとの間の必要な電気絶縁性を確保しつつ、基板サイズの小型化を図る。
【解決手段】積層基板本体と、フィルタ回路とを備え、フィルタ回路は、第1層に設けられるフィルタ素子と、第2層に設けられ、フィルタ回路の低電位側端子に電気的に接続される低電位の第1の配線パターンと、第3層に設けられ、フィルタ回路のグランド端子に電気的に接続されるグランド電位層と、第4層に設けられ、フィルタ回路の高電位側端子に電気的に接続される高電位の配線パターンとを有し、第1層と第4層の間に、第2層及び第3層が配置され、かつ、第2層は、第3層よりも第1層に近い側に配置される、フィルタ基板が開示される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4層以上の積層基板本体と、
前記積層基板本体に実装されるフィルタ回路とを備え、
前記フィルタ回路は、
前記積層基板本体の第1層に設けられるフィルタ素子と、
前記積層基板本体の第2層に設けられ、前記フィルタ回路の低電位側端子に電気的に接続される低電位の第1の配線パターンと、
前記積層基板本体の第3層に設けられ、前記フィルタ回路のグランド端子に電気的に接続されるグランド電位層と、
前記積層基板本体の第4層に設けられ、前記フィルタ回路の高電位側端子に電気的に接続される高電位の配線パターンとを有し、
前記第1層と前記第4層の間に、前記第2層及び前記第3層が配置され、かつ、前記第2層は、前記第3層よりも前記第1層に近い側に配置される、フィルタ基板。
【請求項2】
前記積層基板本体は、前記積層基板本体をグランド電位の筐体に固定する締結具が通る取付穴を有し、
前記グランド電位層は、前記締結具に電気的に接続され、
前記低電位の配線パターン及び前記高電位の配線パターンは、前記締結具に熱的に接続される、請求項1に記載のフィルタ基板。
【請求項3】
前記積層基板本体の第1層において、前記フィルタ回路から離れて配置される集積回路部を更に備え、
前記集積回路部は、前記低電位の配線パターンから分岐する低電位の第2の配線パターンに接続される、請求項1に記載のフィルタ基板。
【請求項4】
前記フィルタ回路は、前記フィルタ素子をコンデンサとして形成されるYコンデンサを含む、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載のフィルタ基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルタ基板に関する。
【背景技術】
【0002】
DC/DCコンバータを形成する高圧側のスイッチング素子と低圧側のスイッチング素子を基板表面に実装しつつ、これらのスイッチング素子を駆動する駆動信号を伝送する信号伝送パターンを、基板内層に形成する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-89145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィルタ回路を実装する基板においては、高電位側の配線パターンと低電位側の配線パターンとの間の必要な電気絶縁性を確保しつつ、基板サイズの小型化を図ることが有用となる。この点、上記のような従来技術を、フィルタ回路を実装する基板に適用すると、基板表面に高電圧領域と低電圧領域とが形成されることになり、電気絶縁性を確保しつつ、基板サイズの小型化を図ることが難しい。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、フィルタ回路を実装する基板において、高電位側の配線パターンと低電位側の配線パターンとの間の必要な電気絶縁性を確保しつつ、基板サイズの小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、4層以上の積層基板本体と、
前記積層基板本体に実装されるフィルタ回路とを備え、
前記フィルタ回路は、
前記積層基板本体の第1層に設けられるフィルタ素子と、
前記積層基板本体の第2層に設けられ、前記フィルタ回路の低電位側端子に電気的に接続される低電位の第1の配線パターンと、
前記積層基板本体の第3層に設けられ、前記フィルタ回路のグランド端子に電気的に接続されるグランド電位層と、
前記積層基板本体の第4層に設けられ、前記フィルタ回路の高電位側端子に電気的に接続される高電位の配線パターンとを有し、
前記第1層と前記第4層の間に、前記第2層及び前記第3層が配置され、かつ、前記第2層は、前記第3層よりも前記第1層に近い側に配置される、フィルタ基板が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本開示によれば、フィルタ回路を実装する基板において、高電位側の配線パターンと低電位側の配線パターンとの間の必要な電気絶縁性を確保しつつ、基板サイズの小型化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車載電源システムの概略構成を示す図である。
図2】フィルタ回路の回路構成の一例を示す図である。
図3】フィルタ回路を実装するフィルタ基板の一例を概略的に示す図であり、基板表面に対して垂直方向に視た平面図である。
図4】フィルタ基板の主要断面を示す概略図であり、図3のラインA-Aに沿った断面構造の説明図である。
図5】4層構造のフィルタ基板に対する各層の構成を示す表図である。
図6】変形例によるフィルタ基板を概略的に示す図であり、基板表面に対して垂直方向に視た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。また、図面では、見易さのために、複数存在する同一属性の部位には、一部のみしか参照符号が付されていない場合がある。
【0010】
図1は、車載電源システム1の概略構成を示す図である。
【0011】
車載電源システム1は、交流入力部12と、フィルタ回路13と、平滑コンデンサ14と、電圧変換部15と、車載バッテリ16とを含む。なお、車載電源システム1は、その他、放電抵抗等を備えてもよい。
【0012】
交流入力部12は、商用電源のような交流電源11に電気的に接続可能とされる。
【0013】
フィルタ回路13は、交流入力部12と平滑コンデンサ14の間に電気的に接続される。フィルタ回路13は、Yコンデンサを含む。フィルタ回路13の構成は後述する。
【0014】
平滑コンデンサ14は、フィルタ回路13と電圧変換部15の間に電気的に接続される。
【0015】
電圧変換部15は、平滑コンデンサ14の出力電圧に基づいて車載バッテリ16を充電できる。
【0016】
車載バッテリ16は、高圧バッテリにより形成されてもよいし、高圧バッテリと低圧バッテリの組み合わせであってもよい。
【0017】
本実施例では、車載電源システム1は、更に交流電圧検出回路17を含む。交流電圧検出回路17は、高電位側のライン(P又はL、以下では「P」で統一する)と低電位側のライン(N)に電気的に接続され、交流電圧の大きさを検出する。交流電圧検出回路17の回路構成は任意であり、ここでは詳説しない。なお、交流電圧検出回路17と高電位側のライン(P)との間には、抵抗が電気的に接続されてよい。なお、交流電圧検出回路17は、集積回路の形態(すなわちチップの形態)で実装されてよい。
【0018】
なお、ここでは、図1を参照して一例による車載電源システム1の構成を説明したが、車載電源システム1の構成は、図1に示した構成に限られず、多様な変更が可能である。
【0019】
図2は、フィルタ回路13の回路構成の一例を示す図である。
【0020】
フィルタ回路13は、図2に示すように、Yコンデンサを形成するコンデンサC11からコンデンサC14を含む。具体的には、コンデンサC11、C12は、高電位側のライン(P)と低電位側のライン(N)に直列接続され、コンデンサC13、C14は、高電位側のライン(P)と低電位側のライン(N)に直列接続される。そして、コンデンサC11、C12の間と、コンデンサC13、C14の間が、グランドに接続される。この場合、コンデンサC11及びコンデンサC13が高電位側のコンデンサを形成し、コンデンサC12及びコンデンサC14が低電位側のコンデンサを形成する。
【0021】
以下では、フィルタ回路13に係る配線のうちの、コンデンサC11、C12の高電位側電極に接続される配線を、「高圧側配線91」とも称し、コンデンサC12及びコンデンサC14の低電位側電極に接続される配線を、「低圧側配線92」とも称し、Yコンデンサの中間電位をグランドに接続する配線を、「グランド配線93」とも称する。なお、高圧側配線91は、高電位側のライン(P)と等電位であり、低圧側配線92は、低電位側のライン(N)と等電位である。
【0022】
次に、図3以降を参照して、フィルタ回路13を実装する基板構成の好ましい例について説明する。
【0023】
図3は、フィルタ回路13を実装するフィルタ基板8の一例を概略的に示す図であり、基板表面に対して垂直方向に視た平面図である。図3には、基板表面に対して垂直方向に視てフィルタ基板8の一の辺に沿ったX方向が定義されるとともに、X1側とX2側が定義されている。また、図3には、基板表面に対して垂直方向に視て、X方向に垂直なY方向が定義されるとともに、Y1側とY2側が定義されている。図4は、フィルタ基板8の主要断面を示す概略図であり、図3のラインA-Aに沿った断面構造の説明図である。
【0024】
フィルタ基板8は、ソリッドタイプの基板であってよく、本実施例では、フィルタ基板8の基板本体80は、4層構造である。4層構造の基板本体80は、表面と裏面と、その間に2層のパターン層を有する。以下では、4層のうちの表面の層をL1(第1層の一例)とも称し、裏面の層をL4(第4層の一例)とも称し、その間に2層のうちの、L1側の層をL2(第2層の一例)とも称し、残りをL3(第3層の一例)とも称する。
【0025】
なお、フィルタ基板8には、フィルタ回路13に加えて、交流入力部12が実装されてよい。具体的には、フィルタ基板8には、図3に概略的に示すように、ヒューズ120、コイル121、リレー122等の交流入力部12の構成要素が配置されてよい。また、フィルタ基板8には、交流電圧検出回路17が配置されてよい。
【0026】
フィルタ基板8は、取付穴81、84を通る締結具BT(図4参照)により筐体90に固定されてもよい。この場合、筐体90はグランド電位を有する部材である。
【0027】
本実施例では、フィルタ基板8には、フィルタ回路13のYコンデンサを形成するコンデンサC11からコンデンサC14が実装される。コンデンサC11からコンデンサC14は、L1に実装される。なお、これに伴い、交流入力部12からフィルタ回路13に至る高電位側のライン(P)と低電位側のライン(N)の端部(フィルタ回路13側の端部)は、L1に実装される。
【0028】
高圧側配線91は、配線パターン91Pにより形成される。具体的には、高圧側配線91のうちの、交流入力部12からの接続点P1(図2参照)に至る部分と、接続点P1及び接続点P2の間の部分とは、L1に形成される。これらの部分は、図4のパターン911Pにより実現されてよい。高圧側配線91のうちの、接続点P2よりも平滑コンデンサ14側の部分は、L4に形成されてよい。この部分は、図4のビアパターン912P及びパターン913Pにより実現されてよい。ビアパターン912Pは、L1からL4まで基板厚さ方向に延在する。パターン913Pは、L4に形成される。なお、パターン913Pは、高圧側配線91を形成しない部分として、平滑コンデンサ14から電圧変換部15へ至るパターン部分を含んでよい。
【0029】
図3には、高圧側配線91に係る電流の流れが矢印R91(矢印R910からR913)で模式的に示されている。
【0030】
矢印R910は、基板表面に対して垂直方向に視て、X方向に沿った流れであり、コイル121からフィルタ回路13を介して平滑コンデンサ14に至る流れを示す。この電流の流れは、図4に示すパターン911P、ビアパターン912P、及びL4のパターン913Pの一部9131Pにより実現される。なお、パターン913Pの一部9131Pは、図4に示す断面形状を有しつつ等断面でX方向に延在してよい。
【0031】
矢印R911は、基板表面に対して垂直方向に視て、Y方向に沿った流れであり、平滑コンデンサ14のY方向位置からコネクタ端子82のY方向位置に至る流れを示す。この電流の流れは、図4に示すL4のパターン913Pの一部9132Pにより実現される。
【0032】
矢印R912は、基板表面に対して垂直方向に視て、X方向に沿ったX2側からX1側への流れであり、コンデンサC11からコンデンサC14に対してY方向Y2側でオフセットしたY方向位置での流れを示す。この電流の流れは、図4に示すL4のパターン913Pの一部9133Pにより実現される。なお、パターン913Pの一部9133Pは、図4に示す断面形状を有しつつ等断面でX方向に延在してよい。
【0033】
矢印R913は、コネクタ端子82への電流の流れを示す。この電流の流れは、図4に示すL4のパターン913Pの一部(図示せず)により実現される。
【0034】
低圧側配線92は、配線パターン92Nにより形成される。具体的には、低圧側配線92のうちの、交流入力部12からの接続点N1(図2参照)に至る部分と、接続点N1及び接続点N2の間の部分とは、L1に形成される。これらの部分は、図4のパターン921Nにより実現されてよい。低圧側配線92のうちの、接続点N2よりも平滑コンデンサ14側の部分は、L2に形成されてよい。この部分は、図4のビアパターン922N及びパターン923Nにより実現されてよい。ビアパターン922Nは、L1からL2まで基板厚さ方向に延在する。パターン923Nは、L2に形成される。なお、パターン923Nは、低圧側配線92を形成しない部分として、平滑コンデンサ14から電圧変換部15へ至るパターン部分を含んでよい。
【0035】
図3には、低圧側配線92に係る電流の流れがR92(矢印R920からR923)で模式的に示されている。
【0036】
矢印R920は、基板表面に対して垂直方向に視て、X方向に沿った流れであり、コイル121からフィルタ回路13を介して平滑コンデンサ14に至る流れを示す。この電流の流れは、図4に示すL1のパターン921N、ビアパターン922N、及びL2のパターン923Nの一部9231Nにより実現される。なお、パターン923Nの一部9231Nは、図4に示す断面形状を有しつつ等断面でX方向に延在してよい。
【0037】
矢印R921は、基板表面に対して垂直方向に視て、Y方向に沿った流れであり、平滑コンデンサ14のY方向位置からコネクタ端子83のY方向位置に至る流れを示す。この電流の流れは、図4に示すL2のパターン923Nの一部9232Nにより実現される。
【0038】
矢印R922は、基板表面に対して垂直方向に視て、X方向に沿ったX2側からX1側への流れであり、コンデンサC11からコンデンサC14に対してY方向Y2側でオフセットしたY方向位置での流れを示す。この電流の流れは、図4に示すL2のパターン903Nの一部9233Nにより実現される。なお、パターン903Nの一部9233Nは、図4に示す断面形状を有しつつ等断面でX方向に延在してよい。
【0039】
矢印R923は、コネクタ端子83への電流の流れを示す。この電流の流れは、図4に示すL2のパターン923Nの一部(図示せず)により実現される。
【0040】
また、本実施例では、低圧側配線92から分岐して交流電圧検出回路17に至る配線パターン94Nが、フィルタ基板8のL1に形成される。図3には、配線パターン94Nに係る電流の流れがR94(矢印R940からR942)で模式的に示されている。配線パターン94Nは、交流電圧検出回路17で終端する態様で形成されてよい。
【0041】
グランド配線93は、配線パターン93Gにより形成される。配線パターン93Gは、L1に形成されるパターン931Gと、L1からL3まで基板厚さ方向に延在するビアパターン932Gと、L3に形成されるパターン933Gとを含む。なお、L3に形成されるパターン933Gは、いわゆるベタパターンのような、広範囲にわたって形成されるパターンであってもよい。
【0042】
図3には、グランド配線93に係る電流の流れがR93(矢印R930からR932)で模式的に示されている。
【0043】
矢印R930は、基板表面に対して垂直方向に視て、X方向に沿った流れであり、コンデンサC11からコンデンサC14の接続点G1、G2から平滑コンデンサ14のX方向X2側まで至る流れを示す。この電流の流れは、図4に示すパターン931G、ビアパターン932G、及びL3のパターン933Gの一部9331Gにより実現される。なお、パターン933Gの一部9331Gは、図4に示す断面形状を有しつつ等断面でX方向に延在してよい。
【0044】
矢印R931は、基板表面に対して垂直方向に視て、Y方向に沿った流れであり、接続点G1、G2のY方向位置から取付穴81のY方向位置に至る流れを示す。この電流の流れは、図4に示すL3のパターン933Gの一部9332Gにより実現される。
【0045】
矢印R932は、基板表面に対して垂直方向に視て、X方向に沿ったX2側からX1側への流れであり、コンデンサC11からコンデンサC14に対してY方向Y2側でオフセットしたY方向位置で、取付穴81(締結具BT)に至る電流の流れを示す。この電流の流れは、図4に示すL3のパターン933Gの一部9333Gにより実現される。なお、パターン903Gの一部9333Gは、図4に示す断面形状を有しつつ等断面でX方向に延在してよい。
【0046】
本実施例によれば、このようにして、4層構造のフィルタ基板8を利用して各種配線パターンを、互いに異なる層に形成することで、フィルタ基板8のサイズ(基板表面に対して垂直方向に視たサイズ)の小型化を図ることができる。また、本実施例によれば、高圧側配線91と低圧側配線92との間は、フィルタ基板8の厚み方向を利用して、必要な絶縁距離を確保できる。これにより、基板表面に対して垂直方向に視たときの、高圧側配線91と低圧側配線92との離間距離が過大とならずに済み、その結果、フィルタ基板8のサイズ(基板表面に対して垂直方向に視たサイズ)の小型化を図ることができる。
【0047】
ここで、図5を参照して比較例と対比しつつ、本実施例の更なる効果を説明する。
【0048】
図5は、4層構造のフィルタ基板に対する各層の構成を示す表図である。比較例1では、L1及びL2に、本実施例と同様に低圧側配線を形成するが、L3に高圧側配線を、L4にグランド配線を、それぞれ形成する。比較例2では、L1及びL4に、本実施例と同様に低圧側配線及び高圧側配線をそれぞれ形成するが、L2にグランド配線を、L3に高圧側配線を形成する。
【0049】
ところで、近年、車両性能より小型かつ高性能なシステムが要求されている。特に高圧系のコンポネントの1パッケージ化が進んでいる。そのコンポネントとして、インバータ、DC/DCコンバータ、オンボードチャージャ(OBC:On Board Charger)などが挙げられる。例えば、図1に示した車載電源システム1は、このようなコンポネントの1パッケージ化が可能なシステムの一例である。
【0050】
このようなシステムでは、車載電源システム1のフィルタ基板8のように、インバータやAC充電器などの電圧入力部での電圧を安定させるべく、ノイズを除去するためのYコンデンサを搭載した基板が搭載される。本基板は、高電圧及び大電流で動作させるために、絶縁距離や大電流に起因するノイズが、他の回路に与える影響を無視できない。
【0051】
この点、比較例1では、低圧側配線及び高圧側配線を4層のうちのそれぞれ別の層に形成するものの、厚み方向の隔たり(絶縁距離)が比較的小さくなる。すなわち、比較例1では、低圧側配線及び高圧側配線は厚み方向で隣接する。この場合、低圧側配線及び高圧側配線間の絶縁距離が不十分となりやすい。
【0052】
これに対して、本実施例では、低圧側配線92及び高圧側配線91の間には、グランド配線93に係る層(L3)が介在する。これにより、低圧側配線及び高圧側配線間の絶縁距離を比較的大きくすることができる。なお、低圧側配線92及びグランド配線93の間、及び、高圧側配線91及びグランド配線93の間は、低圧側配線92及び高圧側配線91の間に比べて絶縁距離を小さくできる。これは、低圧側配線92及びグランド配線93の間や、高圧側配線91及びグランド配線93の間に生じうる最大の電位差は、低圧側配線92及び高圧側配線91の間に生じうる最大の電位差に比べて有意に小さいためである。
【0053】
また、比較例2では、L1に形成される集積回路部(例えば交流電圧検出回路17)とL3の高圧側配線の間の絶縁距離が比較的小さくなる。この場合、集積回路部が高圧側配線の影響を受けるおそれがある。
【0054】
これに対して、本実施例では、L1に形成される集積回路部(例えば交流電圧検出回路17)とL4の高圧側配線91の間には、フィルタ基板8の厚みに対して最大限の絶縁距離を確保できる。これにより、集積回路部が高圧側配線の影響を受けうる可能性の最小化を図ることができる。
【0055】
このようにして、本実施例によれば、フィルタ回路13を実装するフィルタ基板8において、高電位側の配線パターンである高圧側配線91と低電位側の配線パターンである低圧側配線92との間の必要な電気絶縁性を確保しつつ、基板サイズの小型化を図ることができる。
【0056】
また、本実施例では、締結具BTが通る取付穴81は、基板表面に対して垂直方向に視て、グランド配線93と重なる。締結具BTは、筐体90に取り付けられるので、フィルタ基板8上で生じる熱は、締結具BTを介して筐体90に伝達することができる。従って、本実施例によれば、グランド配線93をグランド電位の部材に電気的に接続するための締結具BTを利用して、フィルタ基板8の放熱性を高めることができる。
【0057】
また、グランド配線93は、ほぼ通電されないので、自身が発熱することもなく、低圧側配線92及び高圧側配線91から熱を効率的に奪うことができる。この結果、低圧側配線92及び高圧側配線91から熱を、グランド配線93及び締結具BTを介して、筐体90に効率的に伝達できる。
【0058】
また、本実施例では、高圧側配線91及び低圧側配線92は、締結具BTに熱的に接続される。例えば、高圧側配線91及び低圧側配線92は、締結具BT(及びそれに伴い取付穴81)の近傍を通るように高圧側配線91及び低圧側配線92が形成される。これにより、高圧側配線91及び低圧側配線92を介して放熱性を更に高めることができる。なお、高圧側配線91が締結具BT(及びそれに伴い取付穴81)の近傍を通るとは、基板表面に対して垂直方向に視て、高圧側配線91と締結具BT(又は導体パターン94G)との離間距離が最小となる直線上で、高圧側配線91と締結具BTとの間に他の部品等が介在しない態様を指す。そして、この際、最小の離間距離が、必要最小限の絶縁距離に対応する態様を含む概念である。これは、低圧側配線92についても同様である。
【0059】
また、本実施例では、図4に示すように、締結具BTまわりのL1、L2及びL3にも導体パターン94Gが設けられるので、L1、L2及びL3で生じる熱を締結具BTを介して、筐体90に効率的に伝達できる。
【0060】
次に、図6を参照して、変形例について概説する。
【0061】
図6は、変形例によるフィルタ基板8Aを概略的に示す図であり、基板表面に対して垂直方向に視た平面図である。
【0062】
本変形例では、本実施例と同様に、L1及びL2に、低圧側配線を形成し、かつ、L3及びL4に、グランド配線及び高圧側配線をそれぞれ形成する。
【0063】
本変形例によるフィルタ基板8Aは、上述した実施例によるフィルタ基板8に対して、コネクタ端子82、83が、コネクタ端子82A、83Aで置換された点が異なる。本変形例によるコネクタ端子82A、83Aは、上述した実施例によるコネクタ端子82、83に対して、平滑コンデンサ14のX方向X2側に配置される点が異なる。これに伴い、コネクタ端子82Aに向かう電流の流れは、図6の矢印R91A(R911A、R911A)に示すように、X方向に沿った一方向の流れとなる。
【0064】
また、本変形例によるフィルタ基板8Aは、上述した実施例によるフィルタ基板8に対して、取付穴81が取付穴81Aで置換された点が異なる。本変形例による取付穴81Aは、上述した実施例による取付穴81に対して、平滑コンデンサ14のX方向X2側に配置される点が異なる。これに伴い、取付穴81Aに向かう電流の流れは、図6の矢印R93A(R930A、R931A)に示すように、X方向に沿った一方向の流れとなる。
【0065】
本変形例によっても、上述した実施例と同様の効果が得られる。このようにして、フィルタ回路13より下流側の配線パターンの配置であって、基板表面に対して垂直方向に視た配置は、多様に変更可能である。ただし、本実施例の場合、基板表面に対して垂直方向に視て、高圧側配線91、低圧側配線92、及びグランド配線93ともに、X方向で折り返すパターンを形成できるので、X方向の基板サイズの低減を図ることができる。
【0066】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0067】
例えば、上述した実施例では、4層構造の基板本体80が利用されるが、6層以上の基板本体が利用されてもよい。例えば、6層構造の基板本体の場合、L1及びL2に、低圧側配線を形成し、L6に高圧側配線を形成し、L3からL5のいずれかに、グランド配線を形成してよい。なお、この場合、L6が、特許請求の範囲の“第4層”に対応し、L3からL5のいずれかが、特許請求の範囲の“第3層”に対応し、L1及びL2が、特許請求の範囲の“第1層”及び“第2層”にそれぞれ対応する。
【0068】
また、上述した実施例では、2組のコンデンサを利用してYコンデンサを形成しているが、1組又は3組以上のコンデンサを利用してもよい。
【0069】
また、上述した実施例では、フィルタ基板8のL1に形成される集積回路部として、交流電圧検出回路17を例示しているが、これに限られない。例えば、フィルタ基板8のL1に形成される集積回路部として、基板電源生成回路等が形成されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
8・・・フィルタ基板、80・・・基板本体(積層基板本体)、81・・・取付穴、13・・・フィルタ回路、C11、C12、C13、C14・・・コンデンサ(フィルタ素子)、17・・・交流電圧検出回路(集積回路部)、91・・・高圧側配線(高電位の配線パターン)、92・・・低圧側配線(第1の配線パターン)、94N・・・配線パターン(第2の配線パターン)、93・・・グランド配線(グランド電位層)、90・・・筐体、BT・・・締結具、P1、P2・・・接続点(高電位側端子)、N1、N2・・・接続点(低電位側端子)、G1、G2・・・接続点
図1
図2
図3
図4
図5
図6