(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000017
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】スイッチング電源用回路及びスイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
H02M3/155 B
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098520
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大下 寛人
(72)【発明者】
【氏名】和智 貴嗣
(72)【発明者】
【氏名】福本 洋祐
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS11
5H730AS13
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB57
5H730DD03
5H730DD04
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD51
5H730FF02
5H730FF05
5H730FG05
5H730XC04
(57)【要約】
【課題】スイッチング動作の再開時において出力電圧を速やかに安定化させる。
【解決手段】スイッチング回路(MM)にて入力電圧がスイッチングされる。第1アンプ(11)は出力電圧に応じた帰還電圧と基準電圧に基づく第1電圧(Verr)を第1配線に発生させる。第1コンデンサ(12b)を用いて第1電圧の位相を補償する。第2アンプ(14)はスイッチング回路に流れる電流に応じた電圧と第1電圧に基づく第2電圧(Vc)を第2配線に発生させる。第2コンデンサ(15b)を用いて第2電圧の位相を補償する。帰還電圧に応じて第1又は第2モードにて動作する。第1モードでは第2電圧に応じてスイッチング動作を実行する。第2モードでは各アンプの駆動停止を伴ってスイッチング動作を停止し、第1モードに復帰する際、出力電圧に応じた特定電圧を第2コンデンサに供給し且つ所定電圧を第1コンデンサに供給する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧のスイッチングを通じて出力電圧を生成するためのスイッチング電源装置に用いられるスイッチング電源用回路であって、
スイッチング動作により前記入力電圧をスイッチングするよう構成されたスイッチング回路と、
前記出力電圧に応じた帰還電圧と基準電圧との第1差分に応じた第1電圧を第1配線に発生させるよう構成された第1アンプと、
前記第1配線と固定電位点との間に直列に設けられた第1コンデンサを含み、前記第1電圧の位相を補償するよう構成された第1位相補償回路と、
前記スイッチング回路に流れる電流に応じた電圧と前記第1電圧との第2差分に応じた第2電圧を第2配線に発生させるよう構成された第2アンプと、
前記第2配線と前記固定電位点との間に直列に設けられた第2コンデンサを含み、前記第2電圧の位相を補償するよう構成された第2位相補償回路と、
前記第2電圧に応じて前記スイッチング動作を実行可能に構成された駆動制御回路と、を備え、
当該スイッチング電源用回路は、前記帰還電圧に応じて第1モード又は第2モードにて動作し、
前記駆動制御回路は、前記第1モードでは前記第1アンプ及び前記第2アンプを駆動させつつ前記スイッチング動作を実行し、前記第2モードでは前記第1アンプ及び前記第2アンプの駆動停止を伴って前記スイッチング動作を停止し、
前記第2モードから前記第1モードに復帰する際、前記出力電圧に応じた特定電圧が前記第2コンデンサに供給され、且つ、所定電圧が前記第1コンデンサに供給される
、スイッチング電源用回路。
【請求項2】
前記第2アンプは、前記第2配線に接続される出力スイッチを有し、前記第1モードにおいて、前記第2差分に応じ前記第2アンプの前記出力スイッチを通じて前記第2配線に電流を流すことで前記第2電圧を変化させ、前記第2モードにおいて、前記出力スイッチをオフ状態とすることで前記第2アンプと前記第2配線との間の電流を遮断する
、請求項1に記載のスイッチング電源用回路。
【請求項3】
前記第2アンプにおいて、前記第1モードでは、前記第2差分に応じ、前記出力スイッチを通じて出力電荷を前記第2配線に供給し又は前記出力スイッチを通じて入力電荷を前記第2配線から引き込み、
前記第2アンプは、前記第1モードにおいて前記出力電荷及び前記入力電荷を発生させるよう構成された電流発生回路を有し、
前記電流発生回路と前記第2配線との間に前記出力スイッチが設けられ、
前記第2モードでは前記電流発生回路の駆動は停止され、
前記第2アンプにおいて、前記第2モードから前記第1モードに復帰する際、前記電流発生回路を起動させてから前記出力スイッチをターンオンさせる
、請求項2に記載のスイッチング電源用回路。
【請求項4】
前記第2アンプにおける前記出力スイッチは、ソース用スイッチ及びシンク用スイッチを有し、
前記第2アンプにおいて、
前記第1モードでは、前記ソース用スイッチ及び前記シンク用スイッチがオン状態され、前記第2差分に応じ、前記ソース用スイッチを通じて前記出力電荷を前記第2配線に供給し又は前記シンク用スイッチを通じて前記入力電荷を前記第2配線から引き込み、
前記第2モードでは、前記ソース用スイッチ及び前記シンク用スイッチがオフ状態とされ、
前記第2モードから前記第1モードに復帰する際、前記第2アンプにおいて、前記電流発生回路を起動させてから前記ソース用スイッチ及び前記シンク用スイッチをターンオンさせる
、請求項3に記載のスイッチング電源用回路。
【請求項5】
前記第2モードから前記第1モードに復帰する際、前記第2アンプにおいて、前記電流発生回路を起動させた後、前記ソース用スイッチ及び前記シンク用スイッチの一方のターンオンを経てから他方をターンオンさせる
、請求項4に記載のスイッチング電源用回路。
【請求項6】
前記第1アンプは、前記第1配線に接続される出力スイッチを有し、前記第1モードにおいて、前記第1差分に応じ前記第1アンプの前記出力スイッチを通じて前記第1配線に電流を流すことで前記第1電圧を変化させ、前記第2モードにおいて、前記出力スイッチをオフ状態とすることで前記第1アンプと前記第1配線との間の電流を遮断する
、請求項1~5の何れかに記載のスイッチング電源用回路。
【請求項7】
前記第1アンプにおいて、前記第1モードでは、前記第1差分に応じ、前記第1アンプの前記出力スイッチを通じて出力電荷を前記第1配線に供給し又は前記第1アンプの前記出力スイッチを通じて入力電荷を前記第1配線から引き込み、
前記第1アンプは、前記第1モードにおいて前記第1配線に対する前記出力電荷及び前記入力電荷を発生させるよう構成された電流発生回路を有し、
前記第1アンプの前記電流発生回路と前記第1配線との間に前記第1アンプの前記出力スイッチが設けられ、
前記第2モードでは前記第1アンプの前記電流発生回路の駆動は停止され、
前記第1アンプにおいて、前記第2モードから前記第1モードに復帰する際、前記第1アンプの前記電流発生回路を起動させてから前記第1アンプの前記出力スイッチをターンオンさせる
、請求項6に記載のスイッチング電源用回路。
【請求項8】
前記スイッチング回路において前記入力電圧がスイッチングされることで生成される電圧が整流及び平滑化されることにより前記出力電圧が生成される
、請求項1~5の何れかに記載のスイッチング電源用回路。
【請求項9】
請求項1~5の何れかに記載のスイッチング電源用回路と、
前記スイッチング回路において前記入力電圧がスイッチングされることで生成される電圧を整流及び平滑化することで前記出力電圧を生成する整流平滑回路と、を備えた
、スイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スイッチング電源用回路及びスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置では、スイッチング動作により入力電圧をスイッチングすることを通じて所望の出力電圧を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スイッチング電源装置において、負荷の消費電力が十分に小さくなったとき、スイッチング動作を停止するモードに移行させることができる。これにより、スイッチングロスの低減を通じて効率の向上が図られる。負荷の消費電力が増大したとき、スイッチング動作を停止するモードからスイッチング動作を実行するモードに復帰させる。但し、この際、復帰直後の出力電圧が不安定となることがある。
【0005】
本開示は、スイッチング動作の再開に関わる出力電圧の安定化に寄与するスイッチング電源用回路及びスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るスイッチング電源用回路は、入力電圧のスイッチングを通じて出力電圧を生成するためのスイッチング電源装置に用いられるスイッチング電源用回路であって、スイッチング動作により前記入力電圧をスイッチングするよう構成されたスイッチング回路と、前記出力電圧に応じた帰還電圧と基準電圧との第1差分に応じた第1電圧を第1配線に発生させるよう構成された第1アンプと、前記第1配線と固定電位点との間に直列に設けられた第1コンデンサを含み、前記第1電圧の位相を補償するよう構成された第1位相補償回路と、前記スイッチング回路に流れる電流に応じた電圧と前記第1電圧との第2差分に応じた第2電圧を第2配線に発生させるよう構成された第2アンプと、前記第2配線と前記固定電位点との間に直列に設けられた第2コンデンサを含み、前記第2電圧の位相を補償するよう構成された第2位相補償回路と、前記第2電圧に応じて前記スイッチング動作を実行可能に構成された駆動制御回路と、を備え、当該スイッチング電源用回路は、前記帰還電圧に応じて第1モード又は第2モードにて動作し、前記駆動制御回路は、前記第1モードでは前記第1アンプ及び前記第2アンプを駆動させつつ前記スイッチング動作を実行し、前記第2モードでは前記第1アンプ及び前記第2アンプの駆動停止を伴って前記スイッチング動作を停止し、前記第2モードから前記第1モードに復帰する際、前記出力電圧に応じた特定電圧が前記第2コンデンサに供給され、且つ、所定電圧が前記第1コンデンサに供給される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、スイッチング動作の再開に関わる出力電圧の安定化に寄与するスイッチング電源用回路及びスイッチング電源装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係るスイッチング電源装置の全体構成図である。
【
図2】
図2は、本開示の第1実施形態に係る電源ICの外観斜視図である。
【
図3】
図3は、本開示の第1実施形態に係る電源ICの内部構成図である。
【
図4】
図4は、本開示の第1実施形態に係るランプ電圧の波形図である。
【
図5】
図5は、本開示の第1実施形態に係るPWM制御の波形図である。
【
図6】
図6は、本開示の第1実施形態に係り、軽負荷状態での動作モードの変化等を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の第1実施形態に属する実施例EX1_1に係り、対比電圧に関わるクランプ回路の構成を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の第1実施形態に属する実施例EX1_1に係り、誤差電圧に関わるクランプ回路の構成を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の第1実施形態に属する実施例EX1_2に係り、差動アンプの概略内部構成図である。
【
図10】
図10は、本開示の第1実施形態に属する実施例EX1_2に係り、差動アンプの内部回路例を示す図である。
【
図11】
図11は、本開示の第1実施形態に属する実施例EX1_2に係り、スリープモードから通常モードへの復帰時におけるシーケンス図である。
【
図12】
図12は、本開示の第1実施形態に属する実施例EX1_2に係り、スリープモードから通常モードへの復帰時に採用可能な、2つのスイッチのターンオンシーケンス図である。
【
図13】
図13は、本開示の第1実施形態に属する実施例EX1_3に係り、誤差アンプの概略内部構成図である。
【
図14】
図14は、本開示の第1実施形態に属する実施例EX1_3に係り、誤差アンプの内部回路例を示す図である。
【
図15】
図15は、本開示の第1実施形態に属する実施例EX1_3に係り、スリープモードから通常モードへの復帰時におけるシーケンス図である。
【
図16】
図16は、本開示の第1実施形態に属する実施例EX1_4に係り、差動アンプの変形内部回路例を示す図である。
【
図17】
図17は、本開示の第1実施形態に属する実施例EX1_4に係り、誤差アンプの変形内部回路例を示す図である。
【
図18】
図18は、本開示の第1実施形態に属する実施例EX1_6に係り、ランプ電圧、対比電圧及びパルス幅変調信号の関係図である。
【
図19】
図19は、本開示の第1実施形態に属する実施例EX1_6に係り、ランプ電圧、対比電圧及びパルス幅変調信号の関係図である。
【
図20】
図20は、本開示の第2実施形態に係る電源ICの内部構成図である。
【
図21】
図21は、本開示の第2実施形態に係る複数の信号の関係図である。
【
図22】
図22は、本開示の第2実施形態に係る電源ICの動作説明図である。
【
図23】
図23は、本開示の第2実施形態に係るクランプ回路の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“22”によって参照される軽負荷検出コンパレータは(
図3参照)、軽負荷検出コンパレータ22と表記されることもあるし、コンパレータ22と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0010】
まず、本開示の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。ICとは集積回路(Integrated Circuit)の略称である。グランドとは、基準となる0V(ゼロボルト)の電位を有する基準導電部を指す又は0Vの電位そのものを指す。基準導電部は金属等の導体を用いて形成されて良い。0Vの電位をグランド電位と称することもある。本開示の実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧はグランドから見た電位を表す。
【0011】
レベルとは電位のレベルを指し、任意の注目した信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。任意の注目した信号又は電圧について、信号又は電圧がハイレベルにあるとは厳密には信号又は電圧のレベルがハイレベルにあることを意味し、信号又は電圧がローレベルにあるとは厳密には信号又は電圧のレベルがローレベルにあることを意味する。信号についてのレベルは信号レベルと表現されることがあり、電圧についてのレベルは電圧レベルと表現されることがある。
【0012】
任意の注目した信号又は電圧において、ローレベルからハイレベルへの切り替わりをアップエッジと称し、ローレベルからハイレベルへの切り替わりのタイミングをアップエッジタイミングと称する。アップエッジをライジングエッジに読み替えて良い。同様に、任意の注目した信号又は電圧において、ハイレベルからローレベルへの切り替わりをダウンエッジと称し、ハイレベルからローレベルへの切り替わりのタイミングをダウンエッジタイミングと称する。ダウンエッジをフォーリングエッジに読み替えて良い。
【0013】
MOSFETを含むFET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通している状態を指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通となっている状態(遮断状態)を指す。FETに分類されないトランジスタについても同様である。MOSFETは、特に記述無き限り、エンハンスメント型のMOSFETであると解される。MOSFETは“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”の略称である。また、特に記述なき限り、任意のMOSFETにおいて、バックゲートはソースに短絡されていると考えて良い。
【0014】
任意のスイッチを1以上のFET(電界効果トランジスタ)にて構成することができ、或るスイッチがオン状態のときには当該スイッチの両端間が導通する一方で或るスイッチがオフ状態のときには当該スイッチの両端間が非導通となる。
【0015】
以下、任意のトランジスタ又はスイッチについて、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。任意のトランジスタ又はスイッチについて、オフ状態からオン状態への切り替わりをターンオンと表現し、オン状態からオフ状態への切り替わりをターンオフと表現する。また、任意のトランジスタ又はスイッチについて、トランジスタ又はスイッチがオン状態となっている期間をオン期間と称することがあり、トランジスタ又はスイッチがオフ状態となっている期間をオフ期間と称することがある。
【0016】
ハイレベル又はローレベルの信号レベルをとる任意の信号について、当該信号のレベルがハイレベルとなる期間をハイレベル期間と称し、当該信号のレベルがローレベルとなる期間をローレベル期間と称する。ハイレベル又はローレベルの電圧レベルをとる任意の電圧についても同様である。
【0017】
任意の回路素子、配線、ノードなど、回路を形成する複数の部位間についての接続とは、特に記述なき限り、電気的な接続を指すと解して良い。
【0018】
<<第1実施形態>>
本開示の第1実施形態を説明する。
図1は、本開示の第1実施形態に係るスイッチング電源装置1の全体構成図である。
図1のスイッチング電源装置1は、スイッチング電源用回路(スイッチング電源用半導体装置)である電源IC2と、電源IC2に対して外付け接続される複数のディスクリート部品と、を備え、当該複数のディスクリート部品には、出力コンデンサとしてのコンデンサC1と、帰還抵抗としての抵抗R1及びR2と、コイルL1とが含まれる。スイッチング電源装置1は、外部から供給される入力電圧Vinより所望の出力電圧Voutを生成する降圧型のスイッチング電源装置(DC/DCコンバータ)として構成されている。出力端子OUTに出力電圧Voutが生じる。即ち、出力端子OUTは出力電圧Voutの印加端(出力電圧Voutが加わる端子)である。出力電圧Voutは出力端子OUTに接続された負荷LDに供給される。
【0019】
入力電圧Vin及び出力電圧Voutは正の直流電圧であって、出力電圧Voutは入力電圧Vinよりも低い。例えば入力電圧Vinが12Vであるとき、抵抗R1及びR2の抵抗値を調整することで12V未満の所望の正の電圧値(例えば3.3Vや5V)にて出力電圧Voutを安定化させることができる。尚、出力端子OUTを介して負荷LDに流れる電流を出力電流Ioutと称する。
【0020】
図2に電源IC2の外観斜視図を示す。電源IC2は、半導体基板上に形成された半導体集積回路を有する半導体チップと、半導体チップを収容する筐体(パッケージ)と、筐体から電源IC2の外部に対して露出する複数の外部端子と、を備えた電子部品である。半導体チップを樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで電源IC2が形成される。尚、
図2に示される電源IC2の外部端子の数及び電源IC2の筐体の種類は例示に過ぎず、それらを任意に設計可能である。
図1に示されるスイッチング回路MM及び主制御ブロック3が半導体集積回路に含まれる。
【0021】
図1では、電源IC2に設けられる複数の外部端子の一部として、入力端子IN、スイッチ端子SW、帰還端子FB、出力監視端子OS及びグランド端子GNDのみが示されているが(後述の
図3等でも同様)、他の外部端子(例えばイネーブル端子、パワーグッド端子及びブート端子)も電源IC2に設けられる。
【0022】
電源IC2の外部構成について説明する。電源IC2の外部より入力電圧Vinが入力端子INに供給される。スイッチ端子SWと出力端子OUTとの間にコイルL1が直列に介在する。即ち、コイルL1の一端はスイッチ端子SWに接続され、コイルL1の他端は出力端子OUTに接続される。また、出力端子OUTはコンデンサC1を介してグランドに接続される。更に、出力端子OUTは抵抗R1の一端に接続され、抵抗R1の他端は抵抗R2を介してグランドに接続される。抵抗R1及びR2間の接続ノードが帰還端子FBに接続される。また、出力監視端子OSは出力端子OUTに接続される。故に出力監視端子OSには出力電圧Voutが加わる。グランド端子GNDはグランドに接続される。尚、コイルL1に流れる電流をコイル電流ILと称する。
【0023】
電源IC2の内部構成について説明する。電源IC2は、スイッチング回路MMと、スイッチング回路MMを制御するための主制御ブロック3と、を備える。
【0024】
スイッチング回路MMは、Nチャネル型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field effect transistor)として構成されたトランジスタM1及びM2を備える。トランジスタM1及びM2は、入力端子INとグランド端子GND(換言すればグランド)との間に直列接続された一対のスイッチング素子であり、それらがスイッチング駆動されることで入力電圧Vinがスイッチングされてスイッチ端子SWに矩形波状のスイッチ電圧Vswが現れる。トランジスタM1がハイサイド側に設けられ、トランジスタM2がローサイド側に設けられる。具体的には、トランジスタM1のドレインは入力電圧Vinの印加端である入力端子INに接続され、トランジスタM1のソース及びトランジスタM2のドレインはスイッチ端子SWに共通接続される。トランジスタM2のソースはグランドに接続される。但し、トランジスタM2のソースとグランドとの間に電流検出用の抵抗が挿入される場合もある。
【0025】
トランジスタM1は出力トランジスタとして機能し、トランジスタM2は同期整流トランジスタとして機能する。コイルL1及びコンデンサC1は、スイッチ端子SWに現れる矩形波状のスイッチ電圧Vswを整流及び平滑化して出力電圧Voutを生成する整流平滑回路を構成する。抵抗R1及びR2は出力電圧Voutを分圧する分圧回路を構成し、抵抗R1及びR2間の接続ノードに出力電圧Voutの分圧である帰還電圧Vfbが生じる。抵抗R1及びR2間の接続ノードが帰還端子FBに接続されることで帰還電圧Vfbが帰還端子FBに入力される。
【0026】
トランジスタM1、M2のゲートには、駆動信号として夫々ゲート信号G1、G2が供給され、トランジスタM1及びM2はゲート信号G1及びG2に応じてオン、オフされる。ゲート信号G1がハイレベルであるとき、トランジスタM1はオン状態となり、ゲート信号G1がローレベルであるとき、トランジスタM1はオフ状態となる。同様に、ゲート信号G2がハイレベルであるとき、トランジスタM2はオン状態となり、ゲート信号G2がローレベルであるとき、トランジスタM2はオフ状態となる。基本的には、トランジスタM1及びM2が交互にオン、オフされるが、トランジスタM1及びM2が共にオフ状態に維持されることもある。即ち、スイッチング回路MMの状態は、出力ハイ状態と、出力ロー状態と、Hi-Z状態の何れかとなる。出力ハイ状態では、トランジスタM1、M2が夫々、オン状態、オフ状態である。出力ロー状態では、トランジスタM1、M2が夫々、オフ状態、オン状態である。Hi-Z状態では、トランジスタM1及びM2が共にオフ状態である。トランジスタM1及びM2が共にオン状態とされることは無い。
【0027】
主制御ブロック3は、帰還電圧Vfbに基づきゲート信号G1及びG2のレベル制御を通じてトランジスタM1及びM2の夫々のオン/オフ状態を制御し、これによって出力端子OUTに帰還電圧Vfbに応じた出力電圧Voutを発生させる。また、
図1に示す如く、主制御ブロック3には出力電圧Voutが与えられていても良い。主制御ブロック3は出力電圧Voutに基づいて過電圧保護等を行いうる他、出力電圧Voutを利用して後述のクランプ電圧を設定することもできる(詳細は後述)。
【0028】
尚、特に図示しないが、電源IC2には入力電圧Vinに基づき内部電源電圧を生成する内部電源回路が設けられており、主制御ブロック3内の各回路は内部電源電圧を元に駆動する。また、ゲート信号G2はグランド電位を基準とする信号であるのに対し、ゲート信号G1はスイッチ端子SWの電位を基準とする信号である。ローレベルのゲート信号G1はスイッチ端子SWの電位を有し、ハイレベルのゲート信号G1はスイッチ端子SWの電位から見て所定電圧だけ高い。ここにおける所定電圧はトランジスタM1のゲート閾電圧よりも大きい。周知のブートストラップ回路(不図示)を用いて、ゲート信号G1を生成するための昇圧電源を生成できる。
【0029】
また、ここでは、同期整流方式を用いることを想定しているが、スイッチング回路MMにおいてダイオード整流方式を採用するようにして良い。ダイオード整流方式が採用される場合、スイッチング回路MMからトランジスタM2が削除され、代わりに、アノードがグランドに接続され且つカソードがスイッチ端子SWに接続された同期整流ダイオード(不図示)がスイッチング回路MMに設けられる。
【0030】
図3に、スイッチング電源装置1の例としてのスイッチング電源装置1Aの構成を示す。スイッチング電源装置1Aには、電源IC2として電源IC2Aが設けられる。電源IC2Aには、スイッチング回路MMと、主制御ブロック3として主制御ブロック3Aが設けられる。スイッチング電源装置1、電源IC2、主制御ブロック3について上述した事項は、矛盾なき限り全て、スイッチング電源装置1A、電源IC2A、主制御ブロック3Aにも適用される。
【0031】
主制御ブロック3Aは、エラーアンプ11と、位相補償回路12と、電流センサ13と、差動アンプ14と、位相補償回路15と、ランプ電圧生成回路16と、コンパレータ(PWMコンパレータ)17と、クランプ回路18と、クランプ回路19と、ロジック回路20と、ドライバ21と、軽負荷検出コンパレータ22と、を備える。
【0032】
エラーアンプ11は、電流出力型のトランスコンダクタンスアンプである。エラーアンプ11は、反転入力端子、非反転入力端子及び出力端子を備える。エラーアンプ11の出力端子を特に記号“11out”にて参照する。出力端子11outは配線WR1に接続される。エラーアンプ11の反転入力端子は帰還端子FBに接続されて帰還電圧Vfbの供給を受ける。エラーアンプ11の非反転入力端子には所定の基準電圧Vref1が供給される。基準電圧Vref1及び後述の基準電圧Vref2は、正の所定電圧値を有する直流電圧であり、電源IC2A内の図示されない基準電圧生成回路にて生成される。
【0033】
エラーアンプ11は、帰還電圧Vfb及び基準電圧Vref1間の差分に応じた電流信号I1を出力端子11outから出力することで、帰還電圧Vfb及び基準電圧Vref1間の差分に応じた誤差電圧Verrを配線WR1に発生させる。電流信号I1による電荷は配線WR1に対して入出力される。具体的には、エラーアンプ11は、帰還電圧Vfbが基準電圧Vref1よりも低いときには配線WR1の電位が上がるようエラーアンプ11から配線WR1に向けて電流信号I1による電流を出力し、帰還電圧Vfbが基準電圧Vref1よりも高いときには配線WR1の電位が下がるよう配線WR1からエラーアンプ11に向けて電流信号I1による電流を引き込む。帰還電圧Vfb及び基準電圧Vref1間の差分の絶対値が増大するにつれて、電流信号I1による電流の大きさも増大する。
【0034】
尚、電源IC2Aの起動時において、0Vから基準電圧Vref1を超える電圧に向けて緩やかに上昇するソフトスタート電圧が電源IC2A内で生成されて良い。この場合、エラーアンプ11は、基準電圧Vref1とソフトスタート電圧の内、低い方の電圧を帰還電圧Vfbと比較して比較結果に基づき電流信号I1を生成する。但し、本実施形態では、ソフトスタート電圧が基準電圧Vref1よりも高くなった後の状態を考えるものとし、以下ではソフトスタート電圧の存在を無視する(後述の他の実施形態でも同様)。
【0035】
位相補償回路12は、配線WR1とグランドとの間に設けられ、電流信号I1の入力を受けて誤差電圧Verrの位相を補償する。位相補償回路12は抵抗12a及びコンデンサ12bの直列回路を含む。具体的には抵抗12aの一端が配線WR1に接続され、抵抗12aの他端はノード12cにてコンデンサ12bの一端に接続される。コンデンサ12bの他端はグランドに接続される。抵抗12aの抵抗値及びコンデンサ12bの静電容量値を適切に設定することにより誤差電圧Verrの位相を補償して出力帰還ループの発振を防ぐことができる。
【0036】
電流センサ13は、コイルL1に流れるコイル電流ILを所定のタイミングでサンプリングし、サンプリングしたコイル電流ILの値を示す電流検出信号Isnsを出力する。電流検出信号Isnsは電圧信号であるため、電流検出信号Isnsが表す電圧を、電圧Isnsと称することがある。スイッチ端子SWから出力端子OUTに向かう向きのコイル電流ILの極性は正であり、出力端子OUTからスイッチ端子SWに向かう向きのコイル電流ILの極性は負であるとする。コイル電流ILが負側から正側に向かうにつれて電圧Isnsは上昇する。故に、コイル電流ILが正であるときにはコイル電流ILの大きさが増大するにつれて電圧Isnsは上昇し、コイル電流ILが負であるときにはコイル電流ILの大きさが増大するにつれて電圧Isnsは低下する。例えば、電流センサ13は、トランジスタM2のソースとグランドとの間に設けられたセンス抵抗を有し、トランジスタM2がオンとされている期間においてセンス抵抗の電圧降下をサンプリングすることで電圧Isnsを生成する。即ち、トランジスタM2に流れる電流を検出することを通じてコイル電流ILを検出することができる。但し、電流センサ13は、トランジスタM1に流れる電流を検出することを通じて又はコイルL1に流れる電流を直接検出することを通じて電圧Isnsを生成するようにしても良い。
【0037】
差動アンプ14も、エラーアンプ11と同様、電流出力型のトランスコンダクタンスアンプである。差動アンプ14は、反転入力端子、非反転入力端子及び出力端子を備える。差動アンプ14の出力端子を特に記号“14out”にて参照する。出力端子14outは配線WR2に接続される。差動アンプ14の非反転入力端子は配線WR1に接続されて誤差電圧Verrの供給を受け、差動アンプ14の反転入力端子には電圧Isnsが供給される。
【0038】
差動アンプ14は、誤差電圧Verr及び電圧Isns間の差分に応じた電流信号I2を出力端子14outから出力することで、誤差電圧Verr及び電圧Isns間の差分に応じた対比電圧Vcを配線WR2に発生させる。電流信号I2による電荷は、配線WR2に対して入出力される。具体的には、差動アンプ14は、誤差電圧Verrが電圧Isnsよりも高いときには配線WR2の電位が上がるよう差動アンプ14から配線WR2に向けて電流信号I2による電流を出力し、誤差電圧Verrが電圧Isnsよりも低いときには配線WR2の電位が下がるよう配線WR2から差動アンプ14に向けて電流信号I2による電流を引き込む。誤差電圧Verr及び電圧Isns間の差分の絶対値が増大するにつれて、電流信号I2による電流の大きさも増大する。
【0039】
位相補償回路15は、配線WR2とグランドとの間に設けられ、電流信号I2の入力を受けて対比電圧Vcの位相を補償する。位相補償回路15は抵抗15a及びコンデンサ15bの直列回路を含む。具体的には抵抗15aの一端が配線WR2に接続され、抵抗15aの他端はノード15cにてコンデンサ15bの一端に接続される。コンデンサ15bの他端はグランドに接続される。抵抗15aの抵抗値及びコンデンサ15bの静電容量値を適切に設定することにより対比電圧Vcの位相を補償して出力帰還ループの発振を防ぐことができる。
【0040】
ランプ電圧生成回路16は、所定のPWM周期にて周期的に電圧値が変化するランプ電圧Vrampを生成する。PWM周期は後述のPWM周波数の逆数に相当する。ランプ電圧Vrampは、例えば三角波又はのこぎり波の電圧波形を持つ。ここでは、
図4に示す如く、ランプ電圧Vrampの値は、所定の下限電圧値Vramp_MINから所定の上限電圧値Vramp_MAXまでの間で変動するものとする。即ち、下限電圧値Vramp_MINから上限電圧値Vramp_MAXまでの範囲がランプ電圧Vrampの変動範囲(可変範囲)であり、“Vramp_MAX>Vramp_MIN≧0”である。ランプ電圧Vrampの変動の周期はPWM周期(換言すればPWM制御の周期)であり、各PWM周期において、ランプ電圧Vrampは、下限電圧値Vramp_MINを起点に時間経過と共に線型的に単調増加し、上限電圧値Vramp_MAXに達すると瞬時に下限電圧値Vramp_MINに戻るものとする。
【0041】
コンパレータ17の非反転入力端子は配線WR2に接続されて対比電圧Vcの供給を受ける。コンパレータ17の反転入力端子にはランプ電圧生成回路16からのランプ電圧Vrampが供給される。コンパレータ17は、対比電圧Vcをランプ電圧Vrampと比較して比較結果を示すパルス幅変調信号である信号Spwmを出力する。信号Spwmは、対比電圧Vcがランプ電圧Vrampよりも高い期間においてハイレベルとなり、対比電圧Vcがランプ電圧Vrampよりも低い期間においてローレベルとなる。
【0042】
クランプ回路18は配線WR1に接続される。クランプ回路18は配線WR1における誤差電圧Vcmpの可変範囲に制限(上限及び下限)を設ける。誤差電圧Vcmpの可変範囲に制限が設けられることで、コイル電流ILの可変範囲が制限される。クランプ回路18はノード12cにも接続される。またクランプ回路19はノード15cに接続される。クランプ回路18及び19の動作はロジック回路20により制御される。クランプ回路18及び19によるノード12c及び15cへの作用については後述される。
【0043】
ロジック回路20は、コンパレータ17からの信号Spwmに基づきドライバ21を制御することでゲート信号G1及びG2を制御する。ドライバ21は、ロジック回路20の制御の下、信号Spwmに基づくゲート信号G1及びG2をトランジスタM1及びM2に供給し、これによってスイッチング回路MMにスイッチング動作を行わせる。スイッチング動作では、信号Spwmに基づきトランジスタM1及びM2が交互にオン、オフされる。エラーアンプ11は、帰還電圧Vfbと基準電圧Vref1とが等しくなるように電流信号I1を生成するため、スイッチング動作の実行を通じ、出力電圧Voutが、基準電圧Vref1と抵抗R1及びR2による分圧比とに応じた所定の目標電圧Vtgにて安定化される。
【0044】
図5に示す如く、各PWM周期において信号Spwmのハイレベル期間と信号Spwmのローレベル期間とが発生し、PWM周波数にてPWM制御が行われる。PWM制御では、対比電圧Vc及びランプ電圧Vramp間の高低関係の切り替わりに基づきPWM周波数でスイッチング回路MM(トランジスタM1及びM2)がスイッチング動作される。即ちPWM制御では、トランジスタM1及びM2が信号Spwmに基づきPWM周期にて交互にオン、オフされる。
【0045】
より具体的にはPWM制御において(PWM制御によるスイッチング動作において)、信号Spwmのハイレベル期間では、ハイレベルのゲート信号G1、ローレベルのゲート信号G2が、夫々、トランジスタM1、M2のゲートに供給されることで、トランジスタM1、M2が、夫々、オン状態、オフ状態となる(即ちスイッチング回路MMが出力ハイ状態となる)。出力ハイ状態では、トランジスタM1及びコイルL1を通じ出力電圧Voutの印加端(OUT)に向けて入力電圧Vinに基づく電流が流れる。逆に、PWM制御において(PWM制御によるスイッチング動作において)、信号Spwmのローレベル期間では、ローレベルのゲート信号G1、ハイレベルのゲート信号G2が、夫々、トランジスタM1、M2のゲートに供給されることで、トランジスタM1、M2が、夫々、オフ状態、オン状態となる(即ちスイッチング回路MMが出力ロー状態となる)。出力ロー状態では、トランジスタM2及びコイルL1を通じコイルL1の蓄積エネルギに基づく電流が流れる。尚、貫通電流の発生を確実に防止するべく、トランジスタM1がオン状態とされる期間とトランジスタM2がオン状態とされる期間との間に、トランジスタM1及びM2が共にオフ状態されるデッドタイムが挿入されて良い。
【0046】
上述の如く、スイッチング電源装置1Aでは、出力電圧Voutとコイル電流ILの双方に基づき出力帰還制御を行う電流モード制御方式が採用されている。コイル電流ILに応じた電圧Isnsが差動アンプ14に帰還入力されており、差動アンプ14の作用により、誤差電圧Verrが上昇するとコイル電流ILが増大し、誤差電圧Verrが低下するとコイル電流ILが減少する。
【0047】
尚、特に図示しないが、電源IC2Aには、逆流電流を検出するための逆流検出回路及び各種異常を検出するための異常検出回路が設けられており、ロジック回路20は、逆流検出回路及び異常検出回路の検出結果も考慮してゲート信号G1及びG2を制御する。逆流電流とはスイッチ端子SWからトランジスタM2を通じてグランドに向かう電流である。トランジスタM2のオン期間中においてスイッチ電圧Vswをグランド電位と比較することにより、逆流電流の有無を検出可能である。異常検出回路として、SCP回路、OVP回路、UVLO回路及びTSD回路などを設けておくことができる。SCP回路は、帰還電圧Vfbに基づき出力端子OUTのグランドへの短絡の有無を検出する。OVP回路は、帰還電圧Vfbに基づき出力電圧Voutが過電圧状態にあるかを検出する。UVLO回路は入力電圧Vinが低すぎる低電圧異常の有無を入力電圧Vinに基づいて検出する。TSD回路は電源IC2Aの温度異常の有無を検出する。
【0048】
軽負荷検出コンパレータ22は軽負荷状態を検出するための比較器である。軽負荷状態とは、出力電流Ioutが十分に小さい状態に相当する。軽負荷検出コンパレータ22は、自身の非反転入力端子に入力される帰還電圧Vfbと自身の反転入力端子に入力される基準電圧Vref2とを比較して、その比較結果を示す制御信号SLP(スリープ制御信号)を出力する。この比較においてはヒステリシスが設定されている。帰還電圧Vfbが基準電圧Vref2よりも低く制御信号SLPがローレベルである状態を起点として、コンパレータ22は、帰還電圧Vfbが基準電圧Vref2よりも高くなるとハイレベルの制御信号SLPを出力し、その後、帰還電圧Vfbが電圧(Vref2-ΔHYS2)よりも低くなると制御信号SLPのレベルをハイレベルからローレベルに切り替える。電圧(Vref2-ΔHYS2)は基準電圧Vref2よりも正のヒステリシス電圧ΔHYS2だけ低い電圧である。
【0049】
基準電圧Vref1と比べて電圧(Vref2-ΔHYS2)の方が高くて良い。そうすると、帰還電圧Vfbが基準電圧Vref1と一致しているときに出力電圧Voutが所定の目標電圧Vtgにて安定化されるのであるから、出力電圧Voutが目標電圧Vtgを相応に超えているときに限り、制御信号SLPがハイレベルとなる。但し、基準電圧Vref1と電圧(Vref2-ΔHYS2)とが一致していても良い。
【0050】
制御信号SLPはロジック回路20に与えられる。ロジック回路20は、制御信号SLPに基づき電源IC2Aの動作モード(以下単に動作モードと称する)を通常モード又はスリープモードに設定できる。
【0051】
図6に、出力電圧Vout、制御信号SLP、スイッチング動作及び動作モードの関係の例を示す。出力電圧Voutが所定電圧Vth
Hと一致するときに帰還電圧Vfbが基準電圧Vref2と一致し、且つ、出力電圧Voutが所定電圧Vth
Lと一致するときに帰還電圧Vfbが電圧(Vref2-ΔHYS2)と一致するものとする。ここで“Vth
H>Vth
L>Vtg”である。但し、“Vth
L=Vtg”であり得る。
【0052】
電源IC2の起動を経て出力電圧Voutが目標電圧Vtgに達した後、出力電流Ioutが十分に大きい状態を起点に動作モードの切り替えを説明する。出力電流Ioutが十分に大きく、出力電圧Voutが目標電圧Vtgにて安定化している安定化状態では制御信号SLPがローレベルにある。安定化状態においてローレベルの制御信号SLPに基づきロジック回路20は動作モードを通常モードに設定する。電源IC2A内の各回路について上述した各動作は、動作モードが通常モードに設定されているときの動作である。通常モードでは、信号Spwmに基づき上述のスイッチング動作が実行される。
【0053】
安定化状態から軽負荷状態に移行した後、ローレベルの制御信号SLPに基づきスイッチング動作が継続されると、出力電圧Voutが目標電圧Vtgを超えて上昇して所定電圧VthHに達し、この際、制御信号SLPにアップエッジが生じる。ロジック回路20は、制御信号SLPのアップエッジを契機に動作モードを通常モードからスリープモードに切り替える。スリープモードにおいて、ロジック回路20は、スイッチング動作を停止させるスリープ制御(スイッチング停止制御)を行う。スイッチング動作の停止とは、信号Spwmに依らず、ゲート信号G1及びG2の双方をローレベルに維持することでトランジスタM1及びM2の双方をオフ状態に維持することを指す。
【0054】
その後、出力電圧Voutが所定電圧VthL以下にまで低下すると制御信号SLPにダウンエッジが生じる。ロジック回路20は、制御信号SLPのダウンエッジを契機に動作モードをスリープモードから通常モードに切り替える。この際、軽負荷状態が維持されているならば、通常モードへの切り替えに伴ってスイッチング動作が再開されるものの、短時間で出力電圧Voutが所定電圧VthHに達することになる。結果、軽負荷状態が維持されている間は、スイッチング動作の停止及び再開が繰り返されて出力電圧Voutが概ね電圧VthH及びVthL間を往復することになる。このような制御により、軽負荷時にスイッチング動作が間欠的に実行されることになりスイッチングロスの低減を通じて効率の向上が図られる。
【0055】
ロジック回路20は、主制御ブロック3A内の各回路の駆動又は非駆動を制御できる。通常モードにおいて、ロジック回路20は、主制御ブロック3A内の全回路を駆動させて帰還電圧Vfb及びコイル電流ILに応じたスイッチング動作を実現する。スリープモードにおいて、ロジック回路20は、電流センサ13、ランプ電圧生成回路16及びコンパレータ17の駆動を停止させると良く、これにより消費電力の低減が図られる。加えて、スリープモードにおいて、ロジック回路20は、エラーアンプ11及び差動アンプ14の駆動を停止させることで、消費電力の更なる低減を図る。
【0056】
即ち、ロジック回路20は、通常モードではアンプ11及び14を駆動させつつスイッチング動作を実行し、スリープモードではアンプ11及び14の駆動停止を伴ってスイッチング動作を停止する。但し、スリープモードから通常モードに復帰させる場合、何ら工夫を施さなければ、復帰直後の出力デューティが不適正となって、出力電圧Voutの安定化(目標電圧Vtgへの安定化)に時間がかかる場合がある。例えば、復帰直後の出力デューティが低すぎると、復帰直後において出力電圧Voutが目標電圧Vtgより大きく下回るといったことが生じ得る。尚、出力デューティとは、各PWM周期において、PWM周期の長さに対する、出力ハイ状態の期間の長さ(即ち信号Spwmのハイレベル期間の長さ)の割合を指す。
【0057】
電源IC2Aでは、このような不都合の解消に寄与する技術が適用されている。第1実施形態は、以下の実施例EX1_1~EX1_6を含み、各実施例の中で上記不都合の解消に関わる技術又は変形技術等を説明する。第1実施形態にて上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の実施例EX1_1~EX1_6に適用される。但し、各実施例において、第1実施形態で上述した事項と矛盾する事項については各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、実施例EX1_1~EX1_6の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0058】
[実施例EX1_1]
実施例EX1_1を説明する。出力電圧Voutに応じて適正な出力デューティは相違する。一方で、出力デューティは対比電圧Vcに依存する。これを考慮し、実施例EX1_1では、スリープモードから通常モードへの復帰する際、クランプ回路19から出力電圧Voutに応じた電圧をコンデンサ15bに供給する。
【0059】
図7にクランプ回路19の内部構成を示す。
図7のクランプ回路19は、電圧供給回路19aとスイッチ19bとを備える。電圧供給回路19aは出力電圧Voutに応じたクランプ電圧Vclmp2を生成し、自身の出力端子からクランプ電圧Vclmp2を出力する。クランプ電圧Vclmp2は出力電圧Voutに比例する電圧であって良い。即ち、“Vclmp2=k×Vout”であって良い。kは固定された正の係数(例えば1未満の係数)である。電圧供給回路19aの出力端子とノード15cとの間にスイッチ19bが直列に挿入される。スイッチ19bがオンであるときにのみ電圧供給回路19aの出力端子とノード15cとが導通して、電圧供給回路19aから出力されるクランプ電圧Vclmp2がノード15cに加わる。スイッチ19bがオフであれば、電圧供給回路19aの出力端子とノード15cは遮断されて、電圧供給回路19aの出力端子及びノード15c間に電流は流れない。
【0060】
ロジック回路20はスイッチ19bの状態を制御する。ロジック回路20は原則としてスイッチ19bをオフ状態に維持し、スリープモードから通常モードへ復帰する際にのみ、スイッチ19bを所定のクランプ時間Tclmp2だけオン状態とする。スイッチ19bのターンオンを経てノード15cの電圧がクランプ電圧Vclmp2に達した後に、スイッチ19bがターンオフされるよう、クランプ時間Tclmp2が定められる。
【0061】
クランプ回路19の機能により、通常モードへの復帰直後の出力デューティの適正化が見込めるが、このとき、誤差電圧Verrが不定であると誤差電圧Verrによっては、出力電圧Voutの安定化(目標電圧Vtgへの安定化)に時間がかかる場合がある。これを考慮し、スリープモードから通常モードへの復帰する際、クランプ回路18から適正なクランプ電圧Vclmp1をコンデンサ12bに供給する。
【0062】
図8にクランプ回路18の内部構成を示す。
図8のクランプ回路18は、電圧源18aとスイッチ18bとを備える。尚、上述したようにクランプ回路18は配線WR1にも接続されるが、その様子は
図8では示されていない。電圧源18aは予め定められた固定電圧値を有するクランプ電圧Vclmp1を生成し、自身の出力端子からクランプ電圧Vclmp1を出力する。電圧源18aの出力端子とノード12cとの間にスイッチ18bが直列に挿入される。スイッチ18bがオンであるときにのみ電圧源18aの出力端子とノード12cとが導通して、電圧源18aから出力されるクランプ電圧Vclmp1がノード12cに加わる。スイッチ18bがオフであれば、電圧源18aの出力端子とノード12cは遮断されて、電圧源18aの出力端子及びノード12c間に電流は流れない。
【0063】
ロジック回路20はスイッチ18bの状態を制御する。ロジック回路20は原則としてスイッチ18bをオフ状態に維持し、スリープモードから通常モードへ復帰する際にのみ、スイッチ18bを所定のクランプ時間Tclmp1だけオン状態とする。スイッチ18bのターンオンを経てノード12cの電圧がクランプ電圧Vclmp1に達した後に、スイッチ18bがターンオフされるよう、クランプ時間Tclmp1が定められる。
【0064】
本実施例によれば、通常モードへの復帰後において、出力電圧Voutを速やかに目標電圧Vtgに安定化させることができる。
【0065】
[実施例EX1_2]
実施例EX1_2を説明する。
図9に差動アンプ14の内部ブロック図を示す。差動アンプ14は、電圧Verr及びIsns間の差分に応じた差分検出信号を生成する差動入力段14aと、差分検出信号に応じた電流信号I2を生成して配線WR2に出力するための出力段14bと、配線WR2に接続された出力スイッチ14cと、を備える。出力スイッチ14cは出力端子14outと出力段14bとの間に直列に挿入される。このため、電流信号I2は出力スイッチ14cがオンであるときにのみ、出力端子14outを介して配線WR2に伝達される。
【0066】
ロジック回路20は出力スイッチ14cの状態を制御する。ロジック回路20は、通常モードにおいて出力スイッチ14cをオン状態に制御する。出力スイッチ14cがオンであるとき(従って通常モードにおいて)、差動アンプ14は、電圧Verr及びIsns間の差分に応じ出力スイッチ14cを通じて電流信号I2による電流(正又は負の電荷)を配線WR2に供給し、これによって電圧Verr及びIsns間の差分に応じた対比電圧Vcを配線WR2に発生させる。
【0067】
ロジック回路20は、スリープモードにおいて出力スイッチ14cをオフ状態に制御する。出力スイッチ14cがオフであるとき(従ってスリープモードにおいて)、差動アンプ14と配線WR2との間の電流は遮断される。
【0068】
より具体的には、通常モードにおいて、出力段14bは、電圧Verr及びIsns間の差分に応じたソース電流(正の出力電荷)を、オン状態の出力スイッチ14cを通じて配線WR2に供給することで対比電圧Vcを上昇させる。或いは、通常モードにおいて、出力段14bは、電圧Verr及びIsns間の差分に応じたシンク電流(正の入力電荷)をオン状態の出力スイッチ14cを通じて配線WR2から引き込むことで対比電圧Vcを低下させる。差動アンプ14には、通常モードにおいて配線WR2に対するソース電流及びシンク電流を発生させるための電流発生回路が設けられる。当該電流発生回路は出力段14bに含まれる。そうすると、電流発生回路と配線WR2との間に出力スイッチ14cが設けられることになる。
【0069】
動作モードが通常モードからスリープモードに移行すると、ロジック回路20の制御の下、差動アンプ14の電流発生回路の駆動は停止される。スリープモードから通常モードに復帰する際、差動アンプ14の電流発生回路が起動されるが、この際、差動アンプ14では、電流発生回路を起動させてから出力スイッチ14cをターンオンさせる。
【0070】
図10に差動アンプ14の回路例を示す。
図10の差動アンプ14は、符号141~149、SW1及びSW2にて参照される各部品を備える。
図10の回路では、部品141~143にて差動入力段14aが構成され、部品144~149にて出力段14bが構成され、部品SW1及びSW2にて出力スイッチ14cが構成される。差動アンプ14における電流発生回路は部品144~149を含んで構成される。部品141、142、148及び149はNチャネル型のMOSFETであり、部品144~147はPチャネル型のMOSFETである。トランジスタ141及び142は互いに同じ特性を有するトランジスタとして構成される。トランジスタ144及び145は互いに同じ特性を有するトランジスタとして構成される。トランジスタ146及び147は互いに同じ特性を有するトランジスタとして構成される。トランジスタ148及び149は互いに同じ特性を有するトランジスタとして構成される。部品143は定電流源である。部品SW1はソース用スイッチであり、部品SW2はシンク用スイッチである。部品SW1及びSW2は、夫々、Pチャネル型のMOSFET及びNチャネル型のMOSFETにて構成される。故に、以下では、部品SW1及びSW2はトランジスタSW1及びSW2と称され得る。
【0071】
トランジスタ141及び142のゲートは、夫々、差動アンプ14の非反転入力端子、反転入力端子に接続される。トランジスタ141及び142のソース同士は共通接続される。トランジスタ141及び142により差動アンプ14の差動入力対が形成される。定電流源143は、トランジスタ141及び142のソース同士が接続されるノードからグランドに向けて定電流を流すよう構成される。
【0072】
トランジスタ144及び145の各ソースには電源電圧Vddが印加される。電源電圧Vddは電源IC2A内で生成される内部電源電圧である。電源電圧Vddは正の直流電圧値を有する。トランジスタ144及び145のゲートには共通の電圧Vb1が印加される。トランジスタ141のドレインはトランジスタ144のドレイン及びトランジスタ146のソースに接続される。トランジスタ142のドレインはトランジスタ145のドレイン及びトランジスタ147のソースに接続される。トランジスタ146及び147のゲートには共通の電圧Vb2が印加される。
【0073】
トランジスタ146のドレインは、トランジスタ148のドレイン及びゲートとトランジスタ149のゲートとに共通接続される。トランジスタ148及び149の各ソースはグランドに接続される。トランジスタ147のドレインはトランジスタSW1のソースに接続される。トランジスタ149のドレインはトランジスタSW2のソースに接続される。トランジスタSW1及びSW2の各ドレインは出力端子14outに共通接続される。
【0074】
通常モードにおいて
図10の差動アンプ14は通常動作状態となる。差動アンプ14の通常動作状態において、定電流源143が駆動して定電流が発生し、且つ、トランジスタ144~147の各ゲートに適正なバイアス電圧が加えられ、且つ、トランジスタSW1及びSW2がオン状態である。トランジスタ144~147の各ゲートに適正なバイアス電圧が加えられるとは、“Vdd>Vb1”且つ“Vdd>Vb2”が成立してトランジスタ144~147の各チャネルに電流が流れ得る状態を指す。差動アンプ14の通常動作状態において、トランジスタ148及び149から成るカレントミラー回路はトランジスタ148及び149のドレイン電流値が互いに一致するように動作する。
【0075】
差動アンプ14の通常動作状態において、非反転入力端子及び反転入力端子間に電位差が無い平衡状態では、トランジスタ141及び142のドレイン電流値は互いに一致する。このため、トランジスタ146及び147のドレイン電流値が互いに一致し、結果、トランジスタ147のドレイン電流は全てトランジスタ149を通じてグランドに流れる。故に、出力端子14outを介した電流の流れは生じず、差動アンプ14及び配線WR2間に電荷の入出力は発生しない。
【0076】
差動アンプ14の通常動作状態において、非反転入力端子の電位が反転入力端子の電位よりも高い第1非平衡状態では(即ち“Verr>Isns”の状態では)、トランジスタ146のドレイン電流よりもトランジスタ147のドレイン電流の方が大きくなる。トランジスタ146のドレイン電流値は、トランジスタ148のドレイン電流値及びトランジスタ149のドレイン電流値の夫々と等しいので、通常動作状態における第1非平衡状態ではトランジスタSW1及び出力端子14outを通じて配線WR2にソース電流(正の出力電荷)が供給される。ソース電流の大きさは、非反転入力端子及び反転入力端子間の電位差に依存する。
【0077】
差動アンプ14の通常動作状態において、反転入力端子の電位が非反転入力端子の電位よりも高い第2非平衡状態では(即ち“Verr<Isns”の状態では)、トランジスタ147のドレイン電流よりもトランジスタ146のドレイン電流の方が大きくなる。そうすると、通常動作状態における第2非平衡状態では配線WR2から出力端子14out及びトランジスタSW2を通じてシンク電流(正の入力電荷)が引き込まれる。シンク電流の大きさは、非反転入力端子及び反転入力端子間の電位差に依存する。
【0078】
図11を参照して、スリープモードから通常モードへの復帰時におけるシーケンスを説明する。今、時刻t
A1に至る前において制御信号SLPがハイレベルに維持されており、結果、時刻t
A1に至るまでは動作モードがスリープモードであるとする。そして、時刻t
A1にて制御信号SLPにダウンエッジが生じたとする。ロジック回路20は、制御信号SLPに基づき、復帰制御信号である制御信号WAK1と出力開放制御信号である制御信号WAK2と、を生成する。制御信号WAK1及びWAK2は、制御信号SLPと同様、ローレベル及びハイレベルの何れかの信号レベルをとる二値化信号である。
【0079】
ロジック回路20は制御信号SLPのハイレベル期間において制御信号WAK1をローレベルとする。従って、制御信号WAK1のローレベル期間における動作モードはスリープモードである。ロジック回路20は制御信号SLPのローレベル期間において制御信号WAK1をハイレベルとする。故に、時刻tA1にて制御信号WAK1にアップエッジが生じる。制御信号SLPのハイレベル期間において制御信号WAK2はローレベルである。ロジック回路20は、制御信号SLPのタウンエッジタイミングから所定時間Δt1が経過した時刻tA2において制御信号WAK2にアップエッジを生じさせる。
【0080】
差動アンプ14の状態は、制御信号WAK1及びWAK2に基づき、停止状態、準備状態及び通常動作状態の何れとなる。
【0081】
スリープモードでは(即ち制御信号WAK1のローレベル期間)では、差動アンプ14の状態は停止状態である。差動アンプ14の停止状態では、差動アンプ14内で電流を発生させる回路が全て停止する。
図10の回路であれば、差動アンプ14の停止状態において、定電流源143が駆動停止し、且つ、電源電圧Vddと同じ電圧が電圧Vb1及びVb2に設定されることでトランジスタ144~149に電流が流れない。即ち、差動アンプ14の停止状態において(従ってスリープモードにおいて)、差動アンプ14における電流発生回路は駆動を停止している。これにより省電力化が図られる。また、差動アンプ14の停止状態において(従ってスリープモードにおいて)、トランジスタSW1及びSW2はオフ状態に保たれる。
【0082】
制御信号WAK1のアップエッジを契機に差動アンプ14の状態は停止状態から準備状態に遷移する。差動アンプ14の準備状態では、定電流源143が駆動する(即ち定電流源143が定電流を発生させる)と共にトランジスタ144~147の各ゲートに適正なバイアス電圧が加えられる。つまり、時刻tA1を起点に差動入力段14a及び出力段14bが起動する。但し、時刻tA1の後、差動入力段14a及び出力段14bの状態が安定するには或る程度の時間が必要であり、差動入力段14a及び出力段14bの状態の安定に必要な時間として所定時間Δt1が確保される。また、差動アンプ14の準備状態ではトランジスタSW1及びSW2はオフ状態に保たれる。このため、差動入力段14a及び出力段14bが不安定な状態のまま差動アンプ14及び配線WR2間で電荷がやり取りされることが防止される。
【0083】
制御信号WAK1のアップエッジの後、制御信号WAK2にアップエッジが生じると、差動アンプ14の状態は準備状態から通常動作状態に遷移する。つまり、時刻tA1及びtA2間において差動アンプ14の状態は準備状態にあり、時刻tA2にてトランジスタSW1及びSW2がターンオンすることで差動アンプ14の状態が通常動作状態に遷移する。制御信号WAK2に基づく互いに異なる2つのゲート信号をトランジスタSW1及びSW2のゲートに供給することで、トランジスタSW1及びSW2のオン、オフを制御すれば良い。
【0084】
クランプ回路18及び19におけるスイッチ18b及び19bは(
図8及び
図7参照)、例えば、制御信号WAK1がハイレベルであって且つ制御信号WAK2がローレベルである期間においてのみオン状態とされる。この場合、時刻t
A1及びt
A2間の期間の全部においてスイッチ18b及び19bがオンされることになる。但し、時刻t
A1及びt
A2間の期間の内、一部の期間においてのみスイッチ18b及び19bをオンとするようにしても良い。例えば、ロジック回路20は、制御信号WAK1のアップエッジに基づき時刻t
A1にてスイッチ18b及び19bをターンオンし、その後、時刻t
A2に至る前にスイッチ18b及び19bをターンオフさせても良い。
【0085】
制御信号WAK1のアップエッジに続いて制御信号WAK2にアップエッジが生じると、ロジック回路20により動作モードが通常モードに設定される。従って、時刻tA2以降、スイッチング動作が行われる。時刻tA1及びtA2間における動作モードは、スリープモード及び通常モードの何れにも属さない準備モードに属すると解される。準備モードにおいてスイッチング動作は実行されずスイッチング回路MMはHi-Z状態とされていて良い。但し、準備モードから(即ち、時刻tA1及びtA2間の期間中に)スイッチング動作を再開するようにしても構わない。
【0086】
上述の如く、スリープモードから通常モードに復帰する際、差動アンプ14において、各種電流を発生させる回路部分(電流発生回路を含む)を起動させてから、出力スイッチ14c(
図10ではSW1及びSW2)をターンオンさせるというシーケンスを導入する。仮に、出力スイッチ14cを設けずに制御信号WAK1のアップエッジに同期して差動入力段14a及び出力段14bを起動させると、差動入力段14a及び出力段14bが不安定な状態のまま差動アンプ14及び配線WR2間で電荷がやり取りされる。これは、対比電圧Vcに望ましくない変動を与え得る。結果、復帰後の出力電圧Voutが不安定となり得る(目標電圧Vtgから一時的に大きく乖離することある)。上記シーケンスを設けることで、通常モードへの復帰後に出力電圧Voutが目標電圧Vtgへ速やかに収束することが期待される。
【0087】
スリープモードから通常モードに復帰する際、トランジスタSW1及びSW2を同時にターンオンさせるのではなく、トランジスタSW1及びSW2の内、一方を先にターンオンしてから他方をターンオンさせるようにしても良い。即ち例えば、
図12に示す如く、トランジスタSW1及びSW2の内、トランジスタSW1のみを上述の時刻t
A2にてターンオンさせ、その後、時刻t
A3にてトランジスタSW2をターンオンさせても良い。時刻t
A3は時刻t
A2よりも所定の微小時間Δt2だけ後の時間である。尚、制御信号SLPは時刻t
A1にてローレベルに遷移した後は、時刻t
A3を含め、ローレベルに維持されるものとする。
【0088】
図12のようなシーケンスを設けることにより、時刻t
A2及びt
A3間において、トランジスタSW1のチャネルを通じソース電流のみが差動アンプ14から配線WR2に供給されることになり、その分だけ、通常モードの復帰直後における出力デューティが大きくなる。結果、通常モードの復帰直後における出力電圧Voutのドロップを抑制することが可能である。
【0089】
尚、
図12とは異なるが、トランジスタSW2を時刻t
A2にてターンオンさせ、その後、時刻t
A3にてトランジスタSW1をターンオンさせても良い。
【0090】
[実施例EX1_3]
実施例EX1_3を説明する。実施例EX1_2で述べた差動アンプ14の構成及び動作をエラーアンプ11にも適用することができる。
図13にエラーアンプ11の内部ブロック図を示す。エラーアンプ11は、電圧Vref1及びVfb間の差分に応じた差分検出信号を生成する差動入力段11aと、差分検出信号に応じた電流信号I1を生成して配線WR1に出力するための出力段11bと、配線WR1に接続された出力スイッチ11cと、を備える。出力スイッチ11cは出力端子11outと出力段11bとの間に直列に挿入される。このため、電流信号I1は出力スイッチ11cがオンであるときにのみ、出力端子11outを介して配線WR1に伝達される。
【0091】
ロジック回路20は出力スイッチ11cの状態を制御する。ロジック回路20は、通常モードにおいて出力スイッチ11cをオン状態に制御する。出力スイッチ11cがオンであるとき(従って通常モードにおいて)、エラーアンプ11は、電圧Vref1及びVfb間の差分に応じ出力スイッチ11cを通じて電流信号I1による電流(正又は負の電荷)を配線WR1に供給し、これによって電圧Vref1及びVfb間の差分に応じた誤差電圧Verrを配線WR1に発生させる。
【0092】
ロジック回路20は、スリープモードにおいて出力スイッチ11cをオフ状態に制御する。出力スイッチ11cがオフであるとき(従ってスリープモードにおいて)、エラーアンプ11と配線WR1との間の電流は遮断される。
【0093】
より具体的には、通常モードにおいて、出力段11bは、電圧Vref1及びVfb間の差分に応じたソース電流(正の出力電荷)を、オン状態の出力スイッチ11cを通じて配線WR1に供給することで誤差電圧Verrを上昇させる。或いは、通常モードにおいて、出力段11bは、電圧Vref1及びVfb間の差分に応じたシンク電流(正の入力電荷)をオン状態の出力スイッチ11cを通じて配線WR1から引き込むことで誤差電圧Verrを低下させる。エラーアンプ11には、通常モードにおいて配線WR1に対するソース電流及びシンク電流を発生させるための電流発生回路が設けられる。当該電流発生回路は出力段11bに含まれる。そうすると、電流発生回路と配線WR1との間に出力スイッチ11cが設けられることになる。
【0094】
動作モードが通常モードからスリープモードに移行すると、ロジック回路20の制御の下、エラーアンプ11の電流発生回路の駆動は停止される。スリープモードから通常モードに復帰する際、エラーアンプ11の電流発生回路が起動されるが、この際、エラーアンプ11では、電流発生回路を起動させてから出力スイッチ11cをターンオンさせる。
【0095】
図14にエラーアンプ11の回路例を示す。
図14のエラーアンプ11は、符号111~119、SWa及びSWbにて参照される各部品を備える。
図14の回路では、部品111~113にて差動入力段11aが構成され、部品114~119にて出力段11bが構成され、部品SWa及びSWbにて出力スイッチ11cが構成される。エラーアンプ11における電流発生回路は部品114~119を含んで構成される。部品111、112、118及び119はNチャネル型のMOSFETであり、部品114~117はPチャネル型のMOSFETである。部品113は定電流源である。部品SWaはソース用スイッチであり、部品SWbはシンク用スイッチである。部品SWa及びSWbは、夫々、Pチャネル型のMOSFET及びNチャネル型のMOSFETにて構成される。故に、以下では、部品SWa及びSWbはトランジスタSWa及びSWbと称され得る。
【0096】
図14のエラーアンプ11は
図10の差動アンプ14と同様の構成を有し、エラーアンプ11における部品111~119、SWa及びSWbは、夫々、差動アンプ14における部品141~149、SW1及びSW2に相当する。実施例EX1_2の記載を実施例EX1_3に適用できる。この適用の際、実施例EX1_2における差動アンプ14を実施例EX1_3ではエラーアンプ11に読み替えると共に、実施例EX1_2における符号14a、14b、14c、14out、I2、WR2、141~149、SW1、SW1を、実施例EX1_3では夫々符号11a、11b、11c、11out、I1、WR1、111~119、SWa、SWbに読み替えれば良い。
【0097】
通常モードにおいて
図14のエラーアンプ11は通常動作状態となる。エラーアンプ11の通常動作状態において、定電流源113が駆動して定電流が発生し、且つ、トランジスタ114~117の各ゲートに適正なバイアス電圧が加えられ、且つ、トランジスタSWa及びSWbがオン状態である。エラーアンプ11の通常動作状態において、非反転入力端子及び反転入力端子間に電位差に応じ、トランジスタSWa及び出力端子11outを通じて配線WR1にソース電流(正の出力電荷)が供給される、又は、出力端子11out及びトランジスタSWbを通じて配線WR1からシンク電流(正の入力電荷)が引き込まれる。
【0098】
図15に、エラーアンプ11に関わる、スリープモードから通常モードへの復帰時におけるシーケンスを示す。
図15のシーケンスも
図11に示すシーケンスと同様であり、制御信号SLPと制御信号WAK1及びWAK2との関係も実施例EX1_2で示した通りである。
【0099】
エラーアンプ11の状態は、制御信号WAK1及びWAK2に基づき、停止状態、準備状態及び通常動作状態の何れとなる。
【0100】
スリープモードでは(即ち制御信号WAK1のローレベル期間)では、エラーアンプ11の状態は停止状態である。エラーアンプ11の停止状態では、エラーアンプ11内で電流を発生させる回路が全て停止する。
図14の回路であれば、エラーアンプ11の停止状態において、定電流源113が駆動停止し、且つ、電源電圧Vddと同じ電圧が電圧Vb1及びVb2に設定されることでトランジスタ114~119に電流が流れない。即ち、エラーアンプ11の停止状態において(従ってスリープモードにおいて)、エラーアンプ11における電流発生回路は駆動を停止している。これにより省電力化が図られる。また、エラーアンプ11の停止状態において(従ってスリープモードにおいて)、トランジスタSWa及びSWbはオフ状態に保たれる。
【0101】
制御信号WAK1のアップエッジを契機にエラーアンプ11の状態は停止状態から準備状態に遷移する。エラーアンプ11の準備状態では、定電流源113が駆動する(即ち定電流源113が定電流を発生させる)と共にトランジスタ114~117の各ゲートに適正なバイアス電圧が加えられる。つまり、時刻tA1を起点に差動入力段11a及び出力段11bが起動する。エラーアンプ11の準備状態ではトランジスタSWa及びSWbはオフ状態に保たれる。
【0102】
制御信号WAK1のアップエッジの後、制御信号WAK2にアップエッジが生じると、エラーアンプ11の状態は準備状態から通常動作状態に遷移する。つまり、時刻tA1及びtA2間においてエラーアンプ11の状態は準備状態にあり、時刻tA2にてトランジスタSWa及びSWaがターンオンすることでエラーアンプ11の状態が通常動作状態に遷移する。制御信号WAK2に基づく互いに異なる2つのゲート信号をトランジスタSWa及びSWbのゲートに供給することで、トランジスタSWa及びSWbのオン、オフを制御すれば良い。
【0103】
上述の如く、スリープモードから通常モードに復帰する際、エラーアンプ11において、各種電流を発生させる回路部分(電流発生回路を含む)を起動させてから、出力スイッチ11c(
図14ではSWa及びSWb)をターンオンさせるというシーケンスを導入する。仮に、出力スイッチ11cを設けずに制御信号WAK1のアップエッジに同期して差動入力段11a及び出力段11bを起動させると、差動入力段11a及び出力段11bが不安定な状態のままエラーアンプ11及び配線WR1間で電荷がやり取りされる。これは、誤差電圧Verrに望ましくない変動を与え得る。結果、復帰後の出力電圧Voutが不安定となり得る。上記シーケンスを設けることで、通常モードへの復帰後に出力電圧Voutが目標電圧Vtgへ速やかに収束することが期待される。
【0104】
スリープモードから通常モードに復帰する際、トランジスタSWa及びSWbを同時にターンオンさせるのではなく、トランジスタSWa及びSWbの内、一方を先にターンオンしてから他方をターンオンさせるようにしても良い。例えば、
図12に示す方法と類似して、時刻t
A2にてトランジスタSWaをターンオンさせてから時刻t
A3にてトランジスタSWbをターンオンさせても良い。或いは例えば、時刻t
A2にてトランジスタSWbをターンオンさせてから時刻t
A3にてトランジスタSWaをターンオンさせても良い。
【0105】
図10の差動アンプ14と
図14のエラーアンプ10を組み合わせて用いることも可能である。この場合、トランジスタSW1、SW2、SWa及びSWbを時刻t
A2にて同時にターンオンさせて良い。或いは、トランジスタSW1、SW2、SWa及びSWbの内、任意の1以上のトランジスタを時刻t
A2にてターンオンさせ、残りのトランジスタを時刻t
A3にてターンオンさせても良い。例えば、
図12に示す如く、時刻t
A2にてトランジスタSW1をターンオンさせ且つ時刻t
A3にてトランジスタSW2をターンオンさせる。この際、トランジスタSWa及びSWbを時刻t
A2又はt
A3にて同時にターンオンさせるか、或いは、トランジスタSWa及びSWbの内の任意の一方を時刻t
A2にターンオンさせて他方を時刻t
A3にターンオンさせる。通常モードへの復帰の際におけるトランジスタSW1、SW2、SWa及びSWbのターンオンタイミングを全て互いに異ならせることも可能である。
【0106】
[実施例EX1_4]
実施例EX1_4を説明する。
【0107】
実施例EX1_2に係る差動アンプ14において出力スイッチ14cを単一のスイッチにて構成することもできる。即ち例えば、
図10の差動アンプ14においてスイッチSW1及びSW2を、
図16に示す如くスイッチSW0に置換することができ、当該置換が適用された差動アンプ14を
図3の電源IC2Aに組みこんでも良い。当該置換が適用された差動アンプ14を、便宜上、差動アンプ14’と称する。差動アンプ14’ではスイッチSW0が
図9の出力スイッチ14cに相当する。双方向のアナログスイッチをスイッチSW0として用いることができる。
【0108】
上記置換に伴い、差動アンプ14’では、トランジスタ147及び149の各ドレインがスイッチSW0の一端に共通接続され、スイッチSW0の他端が出力端子14outに接続される(即ち出力端子14outを通じて配線WR2に接続される)。この点を除き、
図10の差動アンプ14と
図16の差動アンプ14’は同様の構成を有する。差動アンプ14’を用いる場合、スリープモード及び準備モードにてスイッチSW0をオフ状態とし、時刻t
A2にてスイッチSW0をターンオンすれば良い(
図11参照)。スイッチSW0がオン状態であるときにのみ、差動アンプ14及び配線WR2間に電流信号I2による電流が流れる。
【0109】
同様に、実施例EX1_3に係るエラーアンプ11において出力スイッチ11cを単一のスイッチにて構成することもできる。即ち例えば、
図14のエラーアンプ11においてスイッチSW1及びSW2を、
図17に示す如くスイッチSWxに置換することができ、当該置換が適用されたエラーアンプ11を
図3の電源IC2Aに組みこんでも良い。当該置換が適用されたエラーアンプ11を、便宜上、エラーアンプ11’と称する。エラーアンプ11’ではスイッチSWxが
図13の出力スイッチ11cに相当する。双方向のアナログスイッチをスイッチSWxとして用いることができる。
【0110】
上記置換に伴い、エラーアンプ11’では、トランジスタ117及び119の各ドレインがスイッチSWxの一端に共通接続され、スイッチSWxの他端が出力端子11outに接続される(即ち出力端子11outを通じて配線WR1に接続される)。この点を除き、
図14のエラーアンプ11と
図17のエラーアンプ11’は同様の構成を有する。エラーアンプ11’を用いる場合、スリープモード及び準備モードにてスイッチSWxをオフ状態とし、時刻t
A2にてスイッチSWxをターンオンすれば良い(
図15参照)。スイッチSWxがオン状態であるときにのみ、エラーアンプ11及び配線WR1間に電流信号I1による電流が流れる。
【0111】
図3の電源IC2Aにおいて、差動アンプ14に
図10の構成及び
図16の構成の何れを用いるのかは任意であり、且つ、エラーアンプ11に
図14の構成及び
図17の構成の何れを用いるのかは任意である。
【0112】
1つの好ましい組み合わせとして、差動アンプ14に
図10の構成を採用し且つエラーアンプ11に
図17の構成を採用することができる。当該組み合わせでは、
図12に示す如く、時刻t
A2にてトランジスタSW1をターンオンさせ且つ時刻t
A3にてトランジスタSW2をターンオンさせると良く、これにより、通常モードの復帰直後における出力電圧Voutのドロップを抑制することが可能となる。この際、エラーアンプ11におけるスイッチSWxを時刻t
A2又はt
A3にてターンオンさせれば良い。
【0113】
[実施例EX1_5]
実施例EX1_5を説明する。エラーアンプ11及び差動アンプ14の状態は、制御信号SLPのアップエッジが生じると直ちに通常動作状態から停止状態に移行するようにしても良いが、以下のようにしても良い。即ち、制御信号SLPにアップエッジが生じた後、ロジック回路20は、制御信号SLPが所定時間継続してハイレベルに維持されるかを監視し、制御信号SLPが所定時間継続してハイレベルに維持されたときにアクティブとなる停止制御信号を出力する。アクティブの停止制御信号を受けて、エラーアンプ11及び差動アンプ14の各状態が通常動作状態から停止状態に移行して良い。
【0114】
[実施例EX1_6]
実施例EX1_6を説明する。ランプ電圧Vrampの振幅を入力電圧Vinに比例させても良い。このとき、ランプ電圧Vrampの下限電圧値Vramp_MINを固定した上で、差分電圧値(Vramp_MAX-Vramp_MIN)を入力電圧Vinに比例させると良い(
図4参照)。
【0115】
図18及び
図19を参照し、実施例EX1_6の方法の意義を説明する。今、説明の具体化のため、下限電圧値Vramp_MINは0Vであって、且つ、目標電圧Vtgは5Vであるとする。また、入力電圧Vinが10Vであるときのランプ電圧Vrampの振幅は1.0Vであるとする。そうすると、入力電圧Vinが20Vであるときのランプ電圧Vrampの振幅は2.0Vである。
図18は、入力電圧Vinが10Vに維持されているときの対比電圧Vc及びランプ電圧Vramp並びに信号Spwmの波形を表し、
図19は、入力電圧Vinが20Vに維持されているときの対比電圧Vc及びランプ電圧Vramp並びに信号Spwmの波形を表す。
【0116】
出力電圧Voutが目標電圧Vtgである5Vにて安定化され且つ出力電流Ioutが一定であるとの仮定の下、PWM制御における出力デューティは、入力電圧Vinが10Vであれば50%となり、入力電圧Vinが20Vであれば25%となる。これは、入力電圧Vinが10Vであるときに対比電圧Vcが0.5V近辺に保たれ、入力電圧Vinが20Vであるときも対比電圧Vcが0.5V近辺に保たれることを意味する。
【0117】
目標電圧Vtgが5Vである場合を考えたが、仮に、目標電圧Vtgが5Vの1.2倍の6Vとなれば入力電圧Vinに関係なく対比電圧Vcは0.6V近辺に保たれ、目標電圧Vtgが5Vの0.8倍の4Vとなれば入力電圧Vinに関係なく対比電圧Vcは0.4V近辺に保たれる。即ち、ランプ電圧Vrampの振幅を入力電圧Vinに比例させた場合、PWM制御での対比電圧Vcは出力電圧Voutにのみ依存することとなる。
【0118】
そうすると、クランプ電圧Vclmp2を出力電圧Voutに応じて決めるようにすれば、スリープモードから通常モードに復帰する際にコンデンサ115bの充電電圧を出力電圧Voutに応じた適正電圧にて待機させておくことができ、通常モードへの復帰後にはPWM制御の出力デューティを即座に最適なものにすることが可能となる。
【0119】
尚、スイッチング電源装置1において、入力電圧Vinが固定されている又は入力電圧Vinの変動範囲が小さい場合などにおいては、入力電圧Vinに依らずランプ電圧Vrampの振幅を固定しておいて良い。
【0120】
<<第2実施形態>>
本開示の第2実施形態を説明する。第2実施形態及び後述の第3実施形態は第1実施形態を基礎とする実施形態であり、第2及び第3実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾の無い限り、第1実施形態の記載が第2及び第3実施形態にも適用される。但し、第2実施形態の記載を解釈するにあたり、第1及び第2実施形態間で矛盾する事項については第2実施形態の記載が優先されて良い(後述の第3実施形態についても同様)。矛盾の無い限り、第1~第3実施形態の内、任意の複数の実施形態を組み合わせても良い。
【0121】
軽負荷モードから通常モードに復帰する際における上述の各動作は、電源ICに設けられるトランスコンダクタンスアンプの個数が1つの場合にも適用可能である。
図20に第2実施形態に係るスイッチング電源装置1Bの構成を示す。スイッチング電源装置1Bは
図1のスイッチング電源装置1の例である。スイッチング電源装置1Bには、電源IC2として電源IC2Bが設けられる。電源IC2Bには、スイッチング回路MMと、主制御ブロック3として主制御ブロック3Bが設けられる。スイッチング電源装置1、電源IC2、主制御ブロック3について第1実施形態で述べた事項は、矛盾なき限り全て、スイッチング電源装置1B、電源IC2B、主制御ブロック3Bにも適用される。
【0122】
図3に示す電源IC2Aにおいて、符号13~21にて参照される各部品を符号41~44、20B及び21Bにて参照される各部位にて置換することで、
図20に示す電源IC2Bが形成される。当該置換を除き、電源IC2Bは電源IC2Aと同様の構成を有する。尚、上記置換に伴い、コンパレータ22からの制御信号SLPはロジック回路20Bに供給される。まず、制御信号SLPがローレベルに維持されていることを想定して(即ち動作モードが通常モードであると想定して)、電源IC2Bに設けられるスロープ電圧生成回路41、コンパレータ42、セット信号生成回路43、クランプ回路44、ロジック回路20B及びドライバ21Bの動作を説明する。
【0123】
スロープ電圧生成回路41は、トランジスタM1のオン期間においてトランジスタM1に流れる電流に応じたスロープ電圧Vslpを生成する。トランジスタM1のオン期間においてトランジスタM1に流れる電流はコイル電流ILに等しい。
図22にスロープ電圧Vslpの波形例が示される。より具体的には、回路41は、トランジスタM1のオン期間においてトランジスタM1に流れる電流を電圧に変換することにより、当該電流に比例するセンス電圧を生成する。一方で、回路41は、トランジスタM1のオン期間中において0Vを起点に徐々に増加する鋸波状のランプ電圧を生成し、センス電圧とランプ電圧との和の電圧をスロープ電圧Vslpとして生成する。トランジスタM1のオン期間以外の期間においてスロープ電圧Vslpは0Vである(但し、所定のバイアス電圧値を有していても良い)。周知の如く、ランプ電圧の加算により、カレントモード制御における出力帰還ループの発振を抑制することができる。
【0124】
コンパレータ42の非反転入力端子にスロープ電圧Vslpが供給される。コンパレータ42の反転入力端子は配線WR1に接続されて誤差電圧Verrの供給を受ける。コンパレータ42は、スロープ電圧Vslp及び誤差電圧Verrを比較して、比較結果に応じた信号RSTをロジック回路20Bに出力する。信号RST並びに後述の信号SET及びCNTは何れもハイレベル又はローレベルの信号レベルを持つ二値化信号である。信号RSTは“Vslp>Verr”の成立時にハイレベルを有し、“Vslp<Verr”の成立時にローレベルを有する。ハイレベルの信号RSTはリセット信号として機能する。ハイレベルの信号RSTの出力はリセット信号の発行に相当する。
【0125】
セット信号生成回路43は、信号SETをロジック回路20Bに対して出力する。ハセット信号生成回路43は、PWM周波数にて信号SETにアップエッジを生じさせる。イレベルの信号SETはセット信号として機能する。ハイレベルの信号SETの出力はセット信号の発行に相当する。
【0126】
ロジック回路20Bは、信号SET及びRSTに基づき制御信号CNTを生成し、制御信号CNTをドライバ21Bに供給する。ドライバ21Bは制御信号CNTに基づくゲート信号G1及びG2をトランジスタM1及びM2に供給し、これによってスイッチング回路MMにスイッチング動作を行わせる。スイッチング動作では、トランジスタM1及びM2が交互にオン、オフされる。エラーアンプ11は、帰還電圧Vfbと基準電圧Vref1とが等しくなるように電流信号I1を生成するため、スイッチング動作の実行を通じ、出力電圧Voutが、基準電圧Vref1と抵抗R1及びR2による分圧比とに応じた所定の目標電圧Vtgにて安定化される。
【0127】
図21に、信号SET、RST、CNT、G1及びG2の関係を示す。信号RSTがローレベルである状態でハイレベルの信号SETがロジック回路20Bに入力されたとき(即ちセット信号が発行されたとき)、制御信号CNTはハイレベルとなり、以後、ハイレベルの信号RSTがロジック回路20Bに入力されるまで(即ちリセット信号が発行されるまで)制御信号CNTはハイレベルに保持される。信号SETがローレベルである状態でハイレベルの信号RSTがロジック回路20Bに入力されたとき(即ちリセット信号が発行されたとき)、制御信号CNTはローレベルとなり、以後、ハイレベルの信号SETがロジック回路20Bに入力されるまで(即ちセット信号が発行されるまで)制御信号CNTはローレベルに保持される。信号SET及びRSTが共にローレベルである期間では、制御信号CNTは保持されたレベルにて維持される。信号SET及びRSTが同時にハイレベルとなることは無い。ドライバ21Bは、制御信号CNTがハイレベルである期間では、ゲート信号G1、G2を、夫々、ハイレベル、ローレベルとすることで、スイッチング回路MMを出力ハイ状態とし、制御信号CNTがローレベルである期間では、ゲート信号G1、G2を、夫々、ローレベル、ハイレベルとすることで、スイッチング回路MMを出力ロー状態とする。
【0128】
図22に電源IC2Bにおけるスイッチング動作のタイミングチャートを示す。スイッチング回路MMが出力ロー状態であって且つ信号SETがローレベルであるタイミングt
B0を起点にしてスイッチング動作を説明する。タイミングt
B0ではスロープ電圧Vslpは0Vであり、その後、タイミングt
B1を起点に信号SETが微小時間だけハイレベルとなる、即ちセット信号が発行される。セット信号の発行を受けて制御信号CNTがローレベルからハイレベルに切り替わることでスイッチング回路MMは出力ロー状態から出力ハイ状態に切り替わる。スイッチング回路MMが出力ハイ状態である期間では、コイル電流ILが徐々に増大してゆき、これに連動してスロープ電圧Vslpも徐々に上昇してゆく。そして、タイミングt
B2にて“Vslp<Verr”の成立状態から“Vslp>Verr”の成立状態に切り替わると、コンパレータ42の出力信号RSTがローレベルからハイレベルに切り替わる、即ちリセット信号が発行される。リセット信号の発行を受けて制御信号CNTがハイレベルからローレベルに切り替わることでスイッチング回路MMは出力ハイ状態から出力ロー状態に切り替わる。スイッチング回路MMが出力ロー状態となると、速やかにスロープ電圧Vslpが0Vまで低下するため、信号RSTはローレベルに戻る。以後、同様の動作が繰り返される。
【0129】
このように、電源IC2Bにおけるスイッチング動作では、PWM周波数にてセット信号が発行されることになるため、トランジスタM1及びM2はPWM周波数にてPWM制御されることになる。
【0130】
第2実施形態において、ここまでで述べた各回路の動作は電源IC2Bの動作モードが通常モードに設定されているときの動作である。電源IC2Bにおいて、コンパレータ22からの制御信号SLPはロジック回路20Bに与えられる。ロジック回路20Bは、制御信号SLPに基づき動作モードを通常モード又はスリープモードに設定できる。第2実施形態にて述べる動作モードは電源IC2Bの動作モードを指す。制御信号SLPに基づく動作モードの設定方法は、第1実施形態に示した通りである。即ち、制御信号SLPのローレベル期間において動作モードは通常モードに設定され、通常モードでは上述のスイッチング動作が実行される。ロジック回路20Bは、制御信号SLPのアップエッジを契機に動作モードを通常モードからスリープモードに切り替える。スリープモードにおいて、ロジック回路20Bは、スイッチング動作を停止させるスリープ制御(スイッチング停止制御)を行う。その後、制御信号SLPのダウンエッジを契機にロジック回路20Bは動作モードをスリープモードから通常モードに切り替える。
【0131】
ロジック回路20Bは、主制御ブロック3B内の各回路の駆動又は非駆動を制御できる。通常モードにおいて、ロジック回路20Bは、主制御ブロック3B内の全回路を駆動させて帰還電圧Vfb及びコイル電流ILに応じたスイッチング動作を実現する。スリープモードにおいて、ロジック回路20Bは、スロープ電圧生成回路41、コンパレータ42及びセット信号生成回路43の駆動を停止させると良く、これにより消費電力の低減が図られる。加えて、スリープモードにおいて、ロジック回路20Bは、エラーアンプ11の駆動を停止させることで、消費電力の更なる低減を図る。
【0132】
即ち、ロジック回路20Bは、通常モードではエラーアンプ11を駆動させつつスイッチング動作を実行し、スリープモードではエラーアンプ11の駆動停止を伴ってスイッチング動作を停止する。但し、スリープモードから通常モードに復帰させる場合、何ら工夫を施さなければ、復帰直後の出力デューティが不適正となって、出力電圧Voutの安定化(目標電圧Vtgへの安定化)に時間がかかる場合がある。例えば、復帰直後の出力デューティが低すぎると、復帰直後において出力電圧Voutが目標電圧Vtgより大きく下回るといったことが生じ得る。
【0133】
これを考慮し、第2実施形態では、上述の実施例EX1_1と同様に、スリープモードから通常モードへの復帰する際、クランプ回路44から出力電圧Voutに応じた電圧をコンデンサ12bに供給する。
【0134】
図23にクランプ回路44の内部構成を示す。
図23のクランプ回路44は、電圧供給回路44aとスイッチ44bとを備える。電圧供給回路44aは出力電圧Voutに応じたクランプ電圧Vclmpを生成し、自身の出力端子からクランプ電圧Vclmpを出力する。クランプ電圧Vclmpは出力電圧Voutに比例する電圧であって良い。即ち、“Vclmp=k×Vout”であって良い。kは固定された正の係数(例えば1未満の係数)である。電圧供給回路44aの出力端子とノード12cとの間にスイッチ44bが直列に挿入される。スイッチ44bがオンであるときにのみ電圧供給回路44aの出力端子とノード12cとが導通して、電圧供給回路44aから出力されるクランプ電圧Vclmpがノード12cに加わる。スイッチ44bがオフであれば、電圧供給回路44aの出力端子とノード12cは遮断されて、電圧供給回路44aの出力端子及びノード12c間に電流は流れない。
【0135】
ロジック回路20はスイッチ44bの状態を制御する。ロジック回路20は原則としてスイッチ44bをオフ状態に維持し、スリープモードから通常モードへ復帰する際にのみ、スイッチ44bを所定のクランプ時間Tclmpだけオン状態とする。スイッチ44bのターンオンを経てノード12cの電圧がクランプ電圧Vclmpに達した後に、スイッチ44bがターンオフされるよう、クランプ時間Tclmpが定められる。これにより、通常モードへの復帰後において、出力電圧Voutを速やかに目標電圧Vtgに安定化させることができる。
【0136】
また、実施例EX1_3~EX1_5に示した内容は第2実施形態にも適用される(但し、実施例EX1_4に記載された差動アンプ14に関わる内容を除く)。これらも、通常モードへの復帰後における出力電圧Voutの安定化に寄与する。
【0137】
第2実施形態へ実施例EX1_3~EX1_5に適用するにあたり、クランプ回路44におけるスイッチ44bは、例えば、制御信号WAK1がハイレベルであって且つ制御信号WAK2がローレベルである期間においてのみオン状態とされて良い(
図15参照)。この場合、時刻t
A1及びt
A2間の期間の全部においてスイッチ44bがオンされることになる。但し、時刻t
A1及びt
A2間の期間の内、一部の期間においてのみスイッチ44bをオンとするようにしても良い。例えば、ロジック回路20Bは、制御信号WAK1のアップエッジに基づき時刻t
A1にてスイッチ44bをターンオンし、その後、時刻t
A2に至る前にスイッチ44bをターンオフさせても良い。
【0138】
<<第3実施形態>>
本開示の第3実施形態を説明する。第3実施形態では第1又は第2実施形態に適用可能な応用技術又は変形技術等を説明する。
【0139】
スイッチング電源装置1を任意の機器に搭載することができる。例えば、スイッチング電源装置1を自動車等の車両に搭載することができる。この場合、車両に設けられたバッテリの出力電圧を入力電圧Vinとすることができる。或いは、バッテリの出力電圧に基づき、スイッチング電源装置1以外の電源装置(不図示)にて生成された電圧が、入力電圧Vinとされても良い。負荷LDは車両に設けられた任意の電気機器であって良い。例えば、負荷LDはECU(Electronic Control Unit)であって良い。或いは、空調機、ランプ、パワーウィンドウ又はエアバッグが負荷LDであっても良い。
【0140】
本開示に係るスイッチング電源装置の例として降圧型のスイッチング電源装置を説明したが、本開示に係るスイッチング電源装置は、昇圧型のスイッチング電源装置又は昇降圧型のスイッチング電源装置であっても良い。
【0141】
任意の信号又は電圧に関して、上述の主旨を損なわない形で、それらのハイレベルとローレベルの関係は上述したものの逆とされ得る。
【0142】
各実施形態に示されたFET(電界効果トランジスタ)のチャネルの種類は例示である。上述の主旨を損なわない形で、任意のFETのチャネルの種類はPチャネル型及びNチャネル型間で変更され得る。例えば、トランジスタM1をPチャネル型のMOSFETにて構成しても良い。
【0143】
不都合が生じない限り、上述の任意のトランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、MOSFETとして上述された任意のトランジスタを、不都合が生じない限り、接合型FET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。IGBTに属さないバイポーラトランジスタにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がベースである。
【0144】
図3の電源IC2Aには、対比電圧Vcに応じてスイッチング動作を実行可能に構成された駆動制御回路が設けられる。
図3の構成において駆動制御回路はロジック回路20を少なくとも含む。ランプ電圧生成回路16、コンパレータ17及びドライバ21の内、全部又は一部も、駆動制御回路の構成要素に含まれると解しても良い。
【0145】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【0146】
<<付記>>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0147】
本開示の一側面に係るスイッチング電源用回路は(
図1、
図3参照)、入力電圧(Vin)のスイッチングを通じて出力電圧(Vout)を生成するためのスイッチング電源装置(1、1A)に用いられるスイッチング電源用回路(2、2A)であって、スイッチング動作により前記入力電圧をスイッチングするよう構成されたスイッチング回路(MM)と、前記出力電圧に応じた帰還電圧(Vfb)と基準電圧(Vref1)との第1差分に応じた第1電圧(Verr)を第1配線(WR1)に発生させるよう構成された第1アンプ(11)と、前記第1配線と固定電位点との間に直列に設けられた第1コンデンサ(12b)を含み、前記第1電圧の位相を補償するよう構成された第1位相補償回路(12)と、前記スイッチング回路に流れる電流に応じた電圧(Isns)と前記第1電圧との第2差分に応じた第2電圧(Vc)を第2配線(WR2)に発生させるよう構成された第2アンプ(14)と、前記第2配線と前記固定電位点との間に直列に設けられた第2コンデンサ(15b)を含み、前記第2電圧の位相を補償するよう構成された第2位相補償回路(15)と、前記第2電圧に応じて前記スイッチング動作を実行可能に構成された駆動制御回路と、を備え、当該スイッチング電源用回路は、前記帰還電圧に応じて第1モード(通常モード)又は第2モード(スリープモード)にて動作し、前記駆動制御回路は、前記第1モードでは前記第1アンプ及び前記第2アンプを駆動させつつ前記スイッチング動作を実行し、前記第2モードでは前記第1アンプ及び前記第2アンプの駆動停止を伴って前記スイッチング動作を停止し、前記第2モードから前記第1モードに復帰する際、前記出力電圧に応じた特定電圧(Vclmp2)が前記第2コンデンサに供給され、且つ、所定電圧(Vclmp1)が前記第1コンデンサに供給される構成(第1の構成)である。
【0148】
これにより、第1モードへの復帰後において(即ちスイッチング動作の再開後において)、出力電圧を速やかに所望電圧に安定化させることが可能となる。
【0149】
上記第1の構成に係るスイッチング電源用回路において(
図9参照)、前記第2アンプは、前記第2配線に接続される出力スイッチ(14c)を有し、前記第1モードにおいて、前記第2差分に応じ前記第2アンプの前記出力スイッチを通じて前記第2配線に電流を流すことで前記第2電圧を変化させ、前記第2モードにおいて、前記出力スイッチをオフ状態とすることで前記第2アンプと前記第2配線との間の電流を遮断する構成(第2の構成)であっても良い。
【0150】
これにより、第2モードにおいて第2配線の電圧が不必要に変動するといったことが抑制される。
【0151】
上記第2の構成に係るスイッチング電源用回路において、前記第2アンプにおいて、前記第1モードでは、前記第2差分に応じ、前記出力スイッチを通じて出力電荷を前記第2配線に供給し又は前記出力スイッチを通じて入力電荷を前記第2配線から引き込み、前記第2アンプは、前記第1モードにおいて前記出力電荷及び前記入力電荷を発生させるよう構成された電流発生回路(14b)を有し、前記電流発生回路と前記第2配線との間に前記出力スイッチが設けられ、前記第2モードでは前記電流発生回路の駆動は停止され、前記第2アンプにおいて、前記第2モードから前記第1モードに復帰する際、前記電流発生回路を起動させてから前記出力スイッチをターンオンさせる構成(第3の構成)であっても良い。
【0152】
これにより、第2モードから第1モードへの復帰時において、電流発生回路が不安定な状態のまま出力スイッチを通じて第2配線に対し電荷が入出力されることが抑制される。結果、1モードへの復帰後に出力電圧を速やかに所望電圧に安定化させることが可能となる。
【0153】
上記第3の構成に係るスイッチング電源用回路において(
図10、
図11参照)、前記第2アンプにおける前記出力スイッチは、ソース用スイッチ(SW1)及びシンク用スイッチ(SW2)を有し、前記第2アンプにおいて、前記第1モードでは、前記ソース用スイッチ及び前記シンク用スイッチがオン状態され、前記第2差分に応じ、前記ソース用スイッチを通じて前記出力電荷を前記第2配線に供給し又は前記シンク用スイッチを通じて前記入力電荷を前記第2配線から引き込み、前記第2モードでは、前記ソース用スイッチ及び前記シンク用スイッチがオフ状態とされ、前記第2モードから前記第1モードに復帰する際、前記第2アンプにおいて、前記電流発生回路を起動させてから前記ソース用スイッチ及び前記シンク用スイッチをターンオンさせる構成(第4の構成)であっても良い。
【0154】
これにより、第2モードから第1モードへの復帰時において、電流発生回路が不安定な状態のままソース用スイッチ又はシンク用スイッチを通じて第2配線に対し電荷が入出力されることが抑制される。結果、1モードへの復帰後に出力電圧を速やかに所望電圧に安定化させることが可能となる。
【0155】
上記第4の構成に係るスイッチング電源用回路において(
図12参照)、前記第2モードから前記第1モードに復帰する際、前記第2アンプにおいて、前記電流発生回路を起動させた後、前記ソース用スイッチ及び前記シンク用スイッチの一方のターンオンを経てから他方をターンオンさせる構成(第5の構成)であっても良い。
【0156】
これにより、第1モードへの復帰直後における出力電圧の変動を所望のものにすることが可能となる。
【0157】
上記第1~第5の構成の何れかに係るスイッチング電源用回路において(
図13参照)、前記第1アンプは、前記第1配線に接続される出力スイッチ(11c)を有し、前記第1モードにおいて、前記第1差分に応じ前記第1アンプの前記出力スイッチを通じて前記第1配線に電流を流すことで前記第1電圧を変化させ、前記第2モードにおいて、前記出力スイッチをオフ状態とすることで前記第1アンプと前記第1配線との間の電流を遮断する構成(第6の構成)であっても良い。
【0158】
これにより、第2モードにおいて第1配線の電圧が不必要に変動するといったことが抑制される。
【0159】
上記第6の構成に係るスイッチング電源用回路において、前記第1アンプにおいて、前記第1モードでは、前記第1差分に応じ、前記第1アンプの前記出力スイッチを通じて出力電荷を前記第1配線に供給し又は前記第1アンプの前記出力スイッチを通じて入力電荷を前記第1配線から引き込み、前記第1アンプは、前記第1モードにおいて前記第1配線に対する前記出力電荷及び前記入力電荷を発生させるよう構成された電流発生回路(11b)を有し、前記第1アンプの前記電流発生回路と前記第1配線との間に前記第1アンプの前記出力スイッチが設けられ、前記第2モードでは前記第1アンプの前記電流発生回路の駆動は停止され、前記第1アンプにおいて、前記第2モードから前記第1モードに復帰する際、前記第1アンプの前記電流発生回路を起動させてから前記第1アンプの前記出力スイッチをターンオンさせる構成(第7の構成)であっても良い。
【0160】
これにより、第2モードから第1モードへの復帰時において、電流発生回路が不安定な状態のまま出力スイッチを通じて第1配線に対し電荷が入出力されることが抑制される。結果、1モードへの復帰後に出力電圧を速やかに所望電圧に安定化させることが可能となる。
【0161】
上記第1~第7の構成の何れかに係るスイッチング電源用回路において、 前記スイッチング回路において前記入力電圧がスイッチングされることで生成される電圧が整流及び平滑化されることにより前記出力電圧が生成される構成(第8の構成)であっても良い。
【0162】
本開示の一側面に係るスイッチング電源装置は、上記第1~第8の構成の何れかに係るスイッチング電源用回路と、前記スイッチング回路において前記入力電圧がスイッチングされることで生成される電圧を整流及び平滑化することで前記出力電圧を生成する整流平滑回路(L1、C1)と、を備えた構成(第9の構成)である。
【符号の説明】
【0163】
1、1A、1B スイッチング電源装置
2、2A、2C 電源IC
3、3A、3B 主制御ブロック
L1 コイル
C1 コンデンサ
LD 負荷
IN 入力端子
SW スイッチ端子
FB 帰還端子
OS 出力監視端子
GND グランド端子
Vin 入力電圧
Vout 出力電圧
Vfb 帰還電圧
Verr 誤差電圧
Vc 対比電圧
MM スイッチング回路
M1、M2 トランジスタ
11 エラーアンプ
11a 差動入力段
11b 出力段
11c 出力スイッチ
SWa トランジスタ(ソース用スイッチ)
SWb トランジスタ(シンク用スイッチ)
12 位相補償回路
12a 抵抗
12b コンデンサ
13 電流センサ
14 差動アンプ
14a 差動入力段
14b 出力段
14c 出力スイッチ
SW1 トランジスタ(ソース用スイッチ)
SW2 トランジスタ(シンク用スイッチ)
15 位相補償回路
15a 抵抗
15b コンデンサ
16 ランプ電圧生成回路
17 コンパレータ(PWMコンパレータ)
18 クランプ回路
18a 電圧源
18b スイッチ
19 クランプ回路
19a 電圧供給回路
19b スイッチ
20、20B ロジック回路
21、21B ドライバ
22 軽負荷検出コンパレータ
41 スロープ電圧生成回路
42 コンパレータ
43 セット信号生成回路
44 クランプ回路