(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170002
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】照明システム、制御装置、および制御方法
(51)【国際特許分類】
H05B 47/105 20200101AFI20241129BHJP
H05B 47/175 20200101ALI20241129BHJP
H05B 45/10 20200101ALI20241129BHJP
H05B 45/345 20200101ALI20241129BHJP
【FI】
H05B47/105
H05B47/175
H05B45/10
H05B45/345
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086907
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津ノ井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】菅野 孝一
(72)【発明者】
【氏名】照井 敏生
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 幸士
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273PA06
3K273QA07
3K273QA21
3K273QA24
3K273TA03
3K273TA15
3K273TA22
3K273TA62
3K273TA66
3K273UA17
3K273UA22
3K273UA27
(57)【要約】
【課題】複数の電源線による段階的な調光制御ではなく調光率を細かく制御できるため、ケーブル芯数の削減、すなわち、ケーブルコストの削減、および適切な調光制御による電力費の削減が可能な照明システム、制御装置、および制御方法を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係る照明システムは、灯具と、上記灯具の調光に関する調光制御を行う制御装置を具備する。上記灯具は、上記調光制御に基づいて、上記灯具の調光を行う灯具制御部を有する。上記制御装置は、交流電源に同期して、上記調光制御を含む電文を上記灯具へと出力する出力部を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
灯具と、前記灯具の調光に関する調光制御を行う制御装置とを具備する照明システムであって、
前記灯具は、前記調光制御に基づいて、前記灯具の調光を行う灯具制御部を有し、
前記制御装置は、交流電源に同期して、前記調光制御を含む電文を前記灯具へと出力する出力部を有する
照明システム。
【請求項2】
請求項1に記載の照明システムであって、
前記灯具は、さらに、前記電文が前記調光制御の開始を示す開始条件を含むか否かを判定する判定部を有する
照明システム。
【請求項3】
請求項2に記載の照明システムであって、
前記開始条件は、前記電文の開始を示す所定の符号、および前記電文に基づく所定の期間を含む
照明システム。
【請求項4】
請求項2に記載の照明システムであって、
前記灯具は、さらに、前記制御装置との通信を可能とする通信部を有し、
前記通信部は、前記判定部の判定結果に基づいて、前記電文を受信するか否かを決定する
照明システム。
【請求項5】
請求項1に記載の照明システムであって、
前記電文は、アドレス、前記アドレスの反転、データ、前記データの反転を含み、
前記判定部は、前記アドレスと前記アドレスの反転との照合、および、前記データと前記データの反転との照合を行う
照明システム。
【請求項6】
請求項1に記載の照明システムであって、
前記出力部は、前記交流電源の負の半波に同期して、前記電文における1ビットの情報を出力する
照明システム。
【請求項7】
請求項1に記載の照明システムであって、
前記出力部は、前記調光制御を保留するための保留信号を出力する
照明システム。
【請求項8】
請求項7に記載の照明システムであって、
前記灯具制御部は、前記保留信号を受信した場合、現在の前記灯具の調光率を維持する
照明システム。
【請求項9】
請求項8に記載の照明システムであって、
前記出力部は、前記保留信号による現在の前記灯具の調光率を維持する状態である保留状態を解除する保留解除信号を出力する
照明システム。
【請求項10】
請求項1に記載の照明システムであって、さらに、
周囲の明るさに関するパラメータを計測可能な計測部を有し、
前記出力部は、前記計測部により計測された前記パラメータに基づいて、前記調光制御を行う
照明システム。
【請求項11】
交流電源に同期して、灯具の調光に関する調光制御を含む電文を前記灯具へと出力する出力部
を具備する制御装置。
【請求項12】
交流電源に同期して、灯具の調光に関する調光制御を含む電文を前記灯具へと出力する
ことをコンピュータシステムが実行する制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトンネル等に配置される複数の灯具を制御する照明システム、制御装置、および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル等に配置される複数の灯具の調光率の制御を行う際、調光線のケーブル芯数に応じた段調光によりトンネル内の照明制御が行われた。
【0003】
例えば、特許文献1には、トンネルの入口付近に配置される入口照明と、トンネル内部に一定の間隔で配置される基本照明とを備えるトンネルにおけるトンネル照明システムが記載される。このトンネル照明システムでは、調光指令、および複数の電源線の給電状況の組み合わせによって、段階的に調光を切り替える段調光を行うことについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、段階ごとに調光が行われる為、必要以上に明るい領域が発生し、その分の電力費が無駄となっていた。またこの照明制御は、各トンネルによって個別に現地で制御が行われるため、遠隔からの制御ができず、また各灯具を個別に制御することができず、系統制御しか行えなかった。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、複数の電源線による段階的な調光制御ではなく調光率を細かく制御できるため、ケーブル芯数の削減、すなわち、ケーブルコストの削減、および適切な調光制御による電力費の削減が可能な照明システム、制御装置、および制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る照明システムは、灯具と、上記灯具の調光に関する調光制御を行う制御装置を具備する。
上記灯具は、上記調光制御に基づいて、上記灯具の調光を行う灯具制御部を有する。
上記制御装置は、交流電源に同期して、上記調光制御を含む電文を上記灯具へと出力する出力部を有する。
【0008】
上記照明システムにおいて、調光制御に基づいて、灯具の調光を行う灯具制御部を有する灯具と、交流電源に同期して、調光制御を含む電文を灯具へと出力する出力部を有する制御装置と、を有している。これにより、ケーブルコストの削減、および電力費の削減ができる。
【0009】
上記灯具は、さらに、上記電文が上記調光制御の開始を示す開始条件を含むか否かを判定する判定部を有してもよい。
【0010】
上記開始条件は、上記電文の開始を示す所定の符号、および上記電文に基づく所定の期間を含んでもよい。
【0011】
上記灯具は、さらに、上記制御装置との通信を可能とする通信部を有し、
その場合、上記通信部は、上記判定部の判定結果に基づいて、上記電文を受信するか否かを決定してもよい。
【0012】
上記電文は、アドレス、上記アドレスの反転、データ、上記データの反転を含み、
その場合、上記判定部は、上記アドレスと上記アドレスの反転との照合、および、上記データと上記データの反転との照合を行ってもよい。
【0013】
上記出力部は、上記交流電源の負の半波に同期して、上記電文における1ビットの情報を出力してもよい。
【0014】
上記出力部は、上記調光制御を保留するための保留信号を出力してもよい。
【0015】
上記灯具制御部は、上記保留信号を受信した場合、現在の上記灯具の調光率を維持してもよい。
【0016】
上記出力部は、前記保留信号による現在の前記灯具の調光率を維持する状態である保留状態を解除する保留解除信号を出力してもよい。
【0017】
上記周囲の明るさに関するパラメータを計測可能な計測部を有し、
その場合、上記出力部は、上記計測部により計測された上記パラメータに基づいて、上記調光制御を行ってもよい。
【0018】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る制御装置は、出力部を具備する。
上記出力部は、交流電源に同期して、灯具の調光に関する調光制御を含む電文を上記灯具へと出力する。
【0019】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る制御方法は、コンピュータシステムが実行する制御方法であって、交流電源に同期して、灯具の調光に関する調光制御を含む電文を上記灯具へと出力することを含む。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、ケーブルコストの削減、および電力費の削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】制御装置と灯具群との通信方式を模式的に示す図である。
【
図3】伝送フォーマットの構成を模式的に示す図である。
【
図4】伝送フォーマットの構成を模式的に示す図である。
【
図9】灯具の応答出力を示すフローチャートである。
【
図10】各灯具の調光率の制御を示すシーケンス図である。
【
図11】各灯具の調光率の制御を示すシーケンス図である。
【
図12】各灯具の調光率の制御を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る照明システムを模式的に示す図である。
図1Aは、照明システムの機能的な構成を示すブロック図である。
図1Bは、制御装置と灯具群との構成例を示す図である。
【0024】
図1に示すように、照明システム100は、商用電源10、制御装置20、及び灯具群30を有する。
【0025】
商用電源10は、制御装置20へと交流電圧を出力する。例えば、商用電源10は、電圧が200V、周波数が50または60Hzの電源である。本実施形態では、商用電源10からの電圧が通信変換部23へと供給される。
【0026】
制御装置20は、操作部21、制御部22、及び通信変換部23を有する。本実施形態では、制御装置20は、後述する灯具群30の調光に関する調光制御を行う。調光制御とは、灯具の発する照明に関する制御を含む。例えば、制御装置20は、灯具の0%から100%までの調光率を制御することができる。
【0027】
操作部21は、ユーザ等の操作が入力されることで、各灯具への調光率等の制御を行うことができる。本実施形態では、操作部21は、ユーザのPC等による遠隔操作により入力された、調光率の制御等を制御部22に出力する。これに限定されず、例えば、操作部21は、晴天や曇天等の周囲の環境の明るさ(輝度や照度)における各灯具の所定の明るさを選択可能なスイッチ等を有してもよい。また例えば、操作部21は、タッチパネル等であり、ユーザは該タッチパネルを介して、各灯具の調光率を制御してもよい。これ以外にも、操作部21は、各灯具の現在の調光率や特定の灯具が不点であるか等の灯具の現在状況が表示されるディスプレイでもよい。
【0028】
制御部22は、灯具の調光に関する調光制御を行う。例えば、調光制御とは、各灯具の調光率の変更、調光率の変更の保留、該保留の解除等を含む。すなわち、制御部22は、上記の調光制御を行う旨の制御信号を各灯具へと出力する。本実施形態では、制御信号は、通信変換部23により、以下に記載の通信方式に基づき変換される。
【0029】
通信変換部23は、制御部22から出力された制御信号を電文に変換する。本実施形態では、通信変換部23は、商用電源10に同期して、電文を灯具群30へと出力する。本実施形態では、電文は、「1」と「0」で構成される。また電文は、灯具の最大接続台数100台を想定した8bitのアドレスと、電文に要求する機能の数や固有データサイズに基づく12bitのデータで構成される。具体的な電文の例は
図2~
図4を用いて説明する。
【0030】
灯具群30は、複数の灯具から構成され、信号変換部から出力される電文に基づいて、全てまたは一部の灯具の調光が行われる。
【0031】
例えば、灯具群30は、一般道や高速道路のトンネル等の複数の灯具が配置される箇所に設けられる。灯具群30がトンネルに設けられる場合、
図1Bに示すように、トンネル入口付近に設けられる灯具を入口照明5、トンネル内部に設けられる基本照明6と分類することができる。この際、暗順応や明順応等の問題から入口照明5のみの調光制御を行う等の、入口照明5と基本照明6とで異なる調光率で調光制御が行われることが望ましい。
【0032】
照明システム100では、ケーブルの芯数が、調光線1が1本、電源線2が2本(Live、Neutral)、接地線(図示せず)が1本である。各灯具は、調光線1を介し、制御装置20から出力された共通の電文を取得することで灯具の調光を行う。具体的な調光制御の例については、
図10~12で説明する。
【0033】
なお灯具群30における入口照明および基本照明の分類は限定されず、任意に調光制御が行われてもよい。典型的には、明るさ等のトンネル外部の環境により影響が与えられる箇所に配置される灯具を入口照明とする。以下、灯具群30に含まれる各灯具に対して、同様の符号を付与することがある。
【0034】
このような照明システムにおける、制御装置20と灯具群30との通信方式について、以下
図2~
図4を用いて説明する。
【0035】
[通信方式]
図2は、制御装置20と灯具群30との通信方式を模式的に示す図である。
【0036】
図2に示すように、本通信方式では、商用電源10の交流電圧の周波数に同期して通信が行われる。送信側である制御装置20は、交流電圧の負の半波に同期してデータパルス25を出力する。また受信側である灯具30は、同期を行っている間のデータパルス25を有効なデータとする。
【0037】
本実施形態では、受信側が同期を行うために、灯具30に供給される電文内に開始符号(例えば「1」および「0」、以下「10」と記載)が用いられる。また、無通信状態における信号の状態は「0」とするため、受信側は、電文内の開始符号「10」が追加されることにより「0」から「1」の変化を電文の開始として検出することで、同期を開始する。
【0038】
なお本実施形態における電文の構造は、固定長であり、アドレス(正論理、8bit)、アドレス反転(負論理、8bit)、データ(正論理、12bit)、データ反転(負論理、12bit)で構成される。ここでアドレス反転とは、アドレスの各bitを反転した値である。データ反転とは、データの各bitを反転した値である。
【0039】
また本実施形態では、アドレスは、各灯具を識別するための番号(ID)を含む。例えば、灯具が100台配置される場合、100台の灯具の各々に番号が振り分けられる。またこれ以外にも、グループアドレスやブロードキャスト等がアドレスに含まれてもよい。
【0040】
また本実施形態では、データは、4bitの機能コードと、機能コードに対応する8bitの固有データで構成される。例えば、機能コードには、灯具のID割り当て、調光制御、灯具の状態の監視等が含まれる。もちろん、要求される機能の種類や固有データのサイズに応じて任意のビット数が設定され、機能の種類及び固有データのサイズを足したデータのビット数が設定されてもよい。
【0041】
また本実施形態では、電文中の「0」から「1」の変化を開始符号と誤検知する可能性を排除するために、電文と電文との間に21bit以上の無通信期間が設けられる。
【0042】
例えば、アドレスが「11111111」、アドレス反転が「00000000」、データが「000000000000」、データ反転が「111111111111」とする。このように電文に含まれる中で、最も「0」が連続する可能性がある期間(例えばアドレス反転とデータとの間)は、20bitが限度である。すなわち、20bitを超えて「0」が連続した後の「10」を開始符号とすることで、誤検知を排除することができる。
【0043】
また受信側である灯具30は、アドレスおよびアドレス反転と、データおよびデータ反転とを比較照合して、データに誤りがないかを確認する。また灯具は、負の半波に同期してアンサーバックを出力する。
【0044】
ここで上記の通信方式における伝送データのフォーマット構成を
図3および
図4を用いて説明する。
【0045】
図3は、伝送フォーマットの構成を模式的に示す図である。
図4は、伝送フォーマットの構成を模式的に示す図である。
【0046】
図3および
図4における伝送される電文のフォーマットは、開始符号、アドレス(A0~A7)、アドレス反転、データ(D0~D11)、データ反転、休止サイクル(2bit)、アンサーバック(2bit)、および休止サイクル(2bit)である。すなわち、電文の長さは、48bitであり、開始符号を除けば46bitとなる。
【0047】
図3に示すように、データ伝送の商用電源10は、AC200V、50Hzまたは60Hzの電源である。また
図3に示すように、信号26は、商用電源10と同期を取る。1bitは、電源サイクルの1サイクルの負の半波に同期して送受信される。またアドレスは、16bit固定で下位から順次出力される。またデータは、24bit固定で下位から順次出力される。また休止27は、6bit固定で、3bit目および4bit目の電源の負の半波に同期させてアンサーバック35が出力される。
【0048】
本実施形態では、灯具30がアンサーバック35を制御装置20に返すことで要求に対するYESを表す。また灯具30がアンサーバック35を制御装置20に返さないことで要求に対するNOを表す。すなわち、制御装置20による要求(例えば、現在の調光率が何%か等の電文の出力)に対して応答するか応答しないかの2値の応答を行う。
【0049】
また
図3に示すように、信号ビット構成28は、商用電源10の負の半波側に同期させてデータビットが送られる。正論理ビットアドレスを8bit送出後、正論理の補数をとった負論理ビットアドレスが8bit送出される。また正論理ビットデータを12bit送出後、正論理の補数をとった負論理ビットデータが12bit送出される。
【0050】
受信側は、送信側から送られたデータビットから、アドレスを正論理と負論理とに分け、データも正論理と負論理とに分ける。分けられた各信号は、それぞれ全ての正論理ビットに対し、反転負論理ビットで構成されているかが照合される(
図3の信号照合36を参照)。
【0051】
信号照合が取れた場合、正論理データを正規のデータとする。
図3では、アドレスA0~A7である「11010100」と、データ「111001001101」とが正規のデータ37となる。
【0052】
また
図4に示すように、電文の終了から次の電文の始まりまで最低21bitの待ち時間が設けられる。電文が始まる前は電源の負の半波に同期させて、「10」の順番で受信した場合、その後が電文の始まりとなる。
【0053】
図5は、灯具30の構成を模式的に示す図である。
図5Aは、灯具30の機能的な構成を示すブロック図である。
図5Bは、灯具30の構造を模式的に示す図である。
【0054】
図5Aに示すように、灯具30は、通信基板31、電源32、及びLED基板33を有する。
【0055】
通信基板31は、制御装置20と灯具30との通信を行う。本実施形態では、通信基板31は、信号変換部23により出力された電文を取得する。また本実施形態では、通信基板31は、電文に対する応答(アンサーバック)を信号変換部23へと出力する。
【0056】
また通信基板31は、電文が調光制御の開始を示す開始条件を含むか否かを判定する。すなわち、通信基板31は、電文内に開始符号「10」、及び電文と電文との間に21bit以上の無通信期間が含まれているかを判定する。具体的な灯具の状態遷移については
図8を用いて説明する。
【0057】
また通信基板31は、電文に基づいて、電源32のPWMのデューティ比を決定する。例えば、通信基板31は、調光率0%や調光率100%に対応するPWMのデューティ比を決定する変換テーブルを有してもよい。
【0058】
電源32は、通信基板31から出力されたデューティ比に基づいて、灯具30の調光制御を行う。例えば、電源32は、LED基板33を定電流制御にて調光する。
【0059】
LED基板33は、電源32からの電流により発光する。
【0060】
また
図5Bに示すように、灯具30には、ケーブル38、およびケーブル38と灯具30とを繋げるコネクタ39が接続される。なお
図5Bでは、
図1Bと同様に、ケーブルの芯数が、調光線1が1本、電源線2が2本である。また接地線(図示せず)も設けられる。
【0061】
なお調光線1および電源線2は、一体の配線構造、または別々の配線構造でもよい。
【0062】
また
図5Bでは、電源32(電源基板)の電源入力が通信基板31を経由して配線されるが、これに限らず、灯具30に入った電源線2を通信基板31と電源32とに分岐して配線されてもよい。
【0063】
図6は、照明システム100の構成例を示す図である。
図6Aは、照明システム100の構成の一例を示す図である。
図6Bは、照明システム100の構成の一例を示す図である。
図6Cは、照明システム100の構成の一例を示す図である。
【0064】
なお、
図6では、灯具群30は、100個の灯具で構成される。
【0065】
図6Aに示すように、電圧が200V、周波数が50または60Hzの電源である商用電源10からの電力線42は、単相2線であり、照明分電盤40を介し、制御装置20、および灯具群30の各々に電力を供給する。また制御装置20から各灯具30へと通信線41が接続されており、この通信線41から各灯具30の調光率の制御が行われる。
【0066】
もちろん
図6Aの例に限定されない。例えば、
図6Bに示すように、照明分電盤40から各灯具30へと電力線42が結ばれず、照明分電盤40からの電源が制御装置20に入力され制御装置20から灯具30へと分配されるような構成でもよい。また、
図6Cに示すように、照明分電盤40の内部に制御装置20が内蔵され、照明分電盤40の内部で電力が分配され、各灯具30へと供給されてもよい。
【0067】
図7は、灯具30の配線パターンを示す図である。
図7Aは、灯具30の配線パターンの一例を示す図である。
図7Bは、灯具30の配線パターンの一例を示す図である。
図7Cは、灯具30の配線パターンの一例を示す図である。
【0068】
図7Aでは、灯具30に、AC-L、AC-N、および信号を示す配線が接続される。AC-Lの配線50、およびAC-Nの配線51は、
図7Aに示す灯具30(N番目)と該灯具30に連なる図示しない灯具(N+1番目)へと繋がっており、各灯具において分岐している。
【0069】
信号を示す配線52は、制御装置からの調光制御に関する電文が送られ、灯具へと供給される。
図7Aでは、信号を示す配線は、灯具(N番目)を介して、灯具(N+1番目)へと接続される。例えば、N番目の灯具に調光率100%にする旨の電文が送信され、続けて(N+1)番目の灯具に調光率50%にする旨の電文が送信される。
【0070】
なお
図7Aでは、通信基板31(図示せず)は、信号に応じて、回路の開閉制御を行ってもよい。すなわち、
図7Aに示す配線パターンでは、灯具から次の灯具への信号をカット、または伝達することができてもよい。
【0071】
もちろん、
図7Aに示す例に限定されず、様々な配線パターンが設定されてもよい。例えば、
図7Bでは、灯具30から次の灯具への配線(AC-L50、AC-N51、および信号52)を分岐させないことで、灯具30と次の灯具とを繋ぐケーブルを順々に継ぎ足した配線でもよい。すなわち、
図7Bの例は、分岐したケーブルを用いる必要がなく、施工性に優れる。
【0072】
また例えば、
図7Cでは、AC-L50、AC-N51、および信号52の各々が、各灯具において分岐している例である。
図7Cの例では、各灯具に回路の開閉制御を行う必要がないため、
図7Aの例と比べて灯具30への入線が4芯から3芯になるためケーブルコストを抑えることができる。さらに、通信基板31の回路の開閉制御を行う必要がなくなるため、開閉制御の機能を削除することで基板コストを下げることができる。
【0073】
図8は、灯具30の受信処理における状態遷移図である。
【0074】
図8に示すように、ステップ101では、灯具30(通信基板31)は、データパルスの受信禁止状態である。この受信禁止状態は、電文内の「1」の受信、または「0」の受信かつ連続21bit未満の電文が灯具へと出力されている間継続される(ステップ101からステップ101)。具体的な処理としては、「1」が受信された場合、受信カウンタがクリアされ、「0」が受信された場合、受信カウンタがインクリメントされる。
【0075】
また電文内の「0」を受信、かつ、受信された「0」が上記の受信カウンタが20bitまでカウントされていた場合、すなわち、連続で21bitの「0」が受信された場合、受信可能状態へと遷移する(ステップ101からステップ102)。
【0076】
ステップ102では、「1」が受信された場合、開始符号待ち状態へと遷移する(ステップ102からステップ103)。また「0」が受信された場合、受信可能状態を継続する(ステップ102からステップ102)。
【0077】
ステップ103では、既に「1」を受信しているため「0」を受信した場合、開始符号「10」を検出したこととなり、受信中状態へと遷移する(ステップ103からステップ104)。また「1」が受信された場合、開始符号が検出されなかったため、受信禁止状態へと遷移する(ステップ103からステップ101)。
【0078】
ステップ104では、固定長40bitの電文(アドレス、アドレス反転、データ、およびデータ反転)の受信が行われる。40bit受信された場合、応答出力状態へと遷移する(ステップ104からステップ105)。40bit受信されていない場合、電文の全てを受信できていないため、受信中状態が継続される(ステップ104からステップ104)。
【0079】
ステップ105では、電文に応じた応答出力が行われる。応答出力の具体的な処理は、
図9のフローを用いて説明する。
【0080】
図9は、灯具30の応答出力を示すフローチャートである。
【0081】
通信基板31により、
図8のステップ104で受信された電文が、正常か異常かが判定される(ステップ201)。本実施形態では、通信基板31は、正論理のアドレスおよび負論理のアドレス反転の照合と、正論理のデータおよび負論理のデータ反転との照合を行う。アドレスおよびデータの両方の照合が正しい場合、正常と判定される(ステップ201のYES)。またアドレスおよびデータの両方の照合が正しくない場合、異常と判定され、応答出力が行われない(ステップ201のNO、ステップ206)。
【0082】
正常と判定された正規の電文(アドレスおよびデータ)のうち、アドレスの判定が行われる(ステップ202)。本実施形態では、アドレスの示す灯具のIDが、そのアドレスを受信した灯具のIDと一致する場合、受信されたアドレスがその灯具宛てに送信されたと判定される(ステップ202のYES)。またアドレスがブロードキャストの場合、受信されたアドレスがその灯具宛てに送信されたと判定される(ステップ202のYES)。またアドレスの示す灯具のIDが、そのアドレスを受信した灯具のIDと一致しない場合、受信されたアドレスがその灯具宛てではないため、応答出力が行われない(ステップ202のNO、ステップ206)。
【0083】
アドレス判定の結果、指定された灯具により、電文に応じた処理が実行される(ステップ203)。例えば、灯具に対して調光率を80%にする旨の調光制御が指示された場合、指示された調光率と現在の調光率とが異なるかどうかにかかわらず、応答が行われる(ステップ204のYES、ステップ205)。
【0084】
また例えば、既に100%の調光率で制御されている特定の灯具に対して、調光率を100%にする旨の調光制御が指示された場合、その電文に対する応答を行う(ステップ204のYES、ステップ205)。なお、アドレスがブロードキャストの場合、全ての灯具が同じタイミングで応答出力すると出力が衝突し、故障等の原因となる。この場合は、電文に応じた処理が実行されても(ステップ203)、応答が行われない(ステップ204のNO、ステップ206)。
【0085】
ステップ205では、灯具から制御装置へと処理を実行したことを示す応答の出力処理が行われる。本実施形態では、休止サイクルである6bitの時間のうち、3bit目および4bit目に「1」をアンサーバックとして制御装置に送信する。
【0086】
ステップ205またはステップ206により応答出力が終了した場合、灯具は受信禁止状態へと遷移する(
図8のステップ105からステップ101)。
【0087】
ここで
図10~12を用いて、調光制御の具体例を説明する。
【0088】
図10は、各灯具の調光率の制御を示すシーケンス図である。
図10では、各灯具の各々に異なる調光率の制御が行われる場合の例である。また
図10~12では、説明のため3台の灯具のみ図示しており、識別のために灯具群30の各灯具に灯具1、灯具2、灯具3と番号が振り分けられる。また各灯具の現在の調光率は0%とする。
【0089】
図10に示すように、制御装置20は、灯具1に対して調光率100%にする旨の電文を送信する(ステップ301)。具体的には、アドレスにより灯具1が指定され、データにより調光制御が指示される。
【0090】
本実施形態では、電文内のデータには、調光率を即時制御するか、または調光率の制御を保留するかの保留フラグが含まれる。
図10の例では、制御装置20と灯具30との通信速度が遅い場合、灯具30が電文を受信した際に直ちに制御が行われると各灯具の調光制御に時間差ができてしまうため、制御を保留させるための保留フラグがオンに設定される。
【0091】
灯具1は、電文に対する応答をし、現在の調光率を維持したまま保留状態となる(ステップ302)。
【0092】
同様に、制御装置20は、灯具2に対して調光率50%にする旨の電文を送信する(ステップ303)。また灯具2は、電文に対する応答をし、現在の調光率を維持したまま保留状態となる(ステップ304)。
【0093】
さらに制御装置20は、灯具3に対して調光率20%にする旨の電文を送信する(ステップ305)。また灯具3は、電文に対する応答をし、現在の調光率を維持したまま保留状態となる(ステップ306)。
【0094】
このように、制御を行いたい灯具の全てに電文を送信し、保留状態とした場合、制御装置20は、保留状態の全灯具に対して、保留状態を解除する旨の保留解除通知(保留解除信号)を送信する(ステップ307)。
【0095】
各灯具は、保留解除通知を受信した場合、保留状態を解除し、電文により指示された調光率になるように制御する。すなわち、灯具1の調光率が100%、灯具2の調光率が50%、灯具3の調光率が20%となる。
【0096】
なお、
図10では、各灯具の調光率が0%の状態から制御されていたが、これに限定されず、調光率は任意の状態でもよい。例えば、灯具2の現在の調光率が50%の場合、調光率50%にする旨の電文が送信されなくてもよい。
【0097】
図11は、各灯具の調光率の制御を示すシーケンス図である。
図11では、各灯具の調光率が同一に制御される場合の例である。また
図11の例では、火事や地震等の緊急時を想定している。
【0098】
例えば、灯具が100台ある場合に、
図10に記載した例のように調光制御を行ったとする。この場合、電文の送信間隔が3秒かかるとすると全ての灯具が調光制御を完了するまでに所要時間が約5分となる。
【0099】
すなわち、緊急時には速やかに全灯具の調光率を100%に制御することが望ましい。そのため
図11では、制御装置20は、全ての灯具に対して、灯具の調光率を100%にする旨の電文を送信する(ステップ401)。また電文の保留フラグはオフとなっており、全灯具の調光率が即時に制御される。
【0100】
なお、
図11では、灯具の累積点灯時間に応じた調光率の補正は行われない。
【0101】
図12は、各灯具の調光率の制御を示すシーケンス図である。
図12では、特定の灯具の調光率のみが制御される場合の例である。
【0102】
図12に示すように、制御装置20は、灯具1に対して調光率100%にする旨の電文を送信する(ステップ501)。この場合、指定の灯具のみを調光制御するため、時間差を考慮する必要がないため保留フラグがオフに設定されている。すなわち、灯具1は、電文に基づいて、調光率を100%にするように即時制御する。
【0103】
また灯具1に対して送信された電文は、全ての灯具に送信される。しかし、ステップ202の判定により指定されたアドレスの灯具のみが応答を行い、それ以外の灯具は応答を行わない。これにより、指定された灯具のみの調光制御が可能となる。
【0104】
以上のように、制御装置と灯具群とが上記通信方式に従い調光制御が行われるため、調光率をパーセント単位で指定することができ、適切な調光制御を行うことができる。このため、電力費の削減ができる。
【0105】
また調光に必要なケーブルの芯数(例えば、16段階の調光の場合、ケーブルの芯数は4本)を、制御装置から灯具へと電文を送るための調光線のケーブルの芯数の1本に削減することができる。これにより、ケーブル芯数の削減によるケーブルコストを削減することができる。
【0106】
また通信方式において電文の開始符号を用いることで、交流電源の正の半波に同期して出力されるパルスである同期パルス(
図2の破線参照)を用いない。すなわち、制御装置のトランスを削除することができる。これにより、コスト削減、および制御装置の小型化ができる。
【0107】
また本実施形態では、交流電圧の負の半波のみを用いてデータの出力が行われたが、これに限らない。例えば、交流電圧の正の半波をデータで使用して通信速度を倍にしてもよい。もちろん、灯具30の通信基板31のCPU性能に応じて任意に設定されてよい。
【0108】
また本実施形態では、電文の開始を検出するために開始符号が設けられたが、これに限らない。例えば、データを符号化して、無通信状態が定義されてもよい。もちろん、灯具の通信基板のCPU性能や、復号化処理の負荷等を考慮して任意に設定されてよい。
【0109】
また本実施形態では、灯具30の調光制御がユーザの操作により行われたが、これに限らない。例えば、トンネル等の照明システム100を用いる設備の近くに照度計等を備え、取得された照度または輝度に基づいて、入口照明の調光制御が行われてもよい。
【0110】
また本実施形態では、制御装置20の要求に対して、通信基板31は応答を返すか返さないかの2値の応答が行われたが、これに限らない。例えば、電文のアドレスがグループアドレスの場合、灯具30は応答を返さないように設定されてもよい。
【0111】
また本実施形態では、照明システム100は、一般道や高速道路のトンネルに配置される灯具について用いられたが、これに限らない。例えば、イルミネーション等の灯具が連なり、その各々の灯具の調光率が制御される場合に本照明システム100が用いられてもよい。また調光率に限らず、RGBの灯具の発する光の色を調整可能な灯具が用いられる場合、その光の色を調節する旨の電文が各灯具に出力されてもよい。
【0112】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論であり、各実施形態及び変形例の構成を組み合わせてもよい。例えば、本実施形態では、トンネル等の複数の灯具を一括に制御する照明システムについて説明したが、例えば、複数の照明が設けられた会場等の複数の灯具の各々の調光率の制御が行われる場所で本照明システムが用いられてもよい。
【符号の説明】
【0113】
10…商用電源
20…制御装置
22…制御部
23…通信変換部
30…灯具群
31…通信基板
100…照明システム