(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170004
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】光学部材
(51)【国際特許分類】
G02B 6/00 20060101AFI20241129BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20241129BHJP
G02B 5/04 20060101ALI20241129BHJP
G02B 27/02 20060101ALN20241129BHJP
【FI】
G02B6/00 301
G02B5/00 Z
G02B5/04 A
G02B27/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086909
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】石原 和幸
【テーマコード(参考)】
2H038
2H042
2H199
【Fターム(参考)】
2H038BA06
2H042AA02
2H042AA07
2H042AA21
2H199CA45
2H199CA48
2H199CA53
2H199CA54
2H199CA67
2H199CA86
(57)【要約】
【課題】ハーフミラーレス構造の光学部材にて、入射光の射出部分と反射部分との周期構造に起因するモアレを低減しつつ、射出部の外観性を向上する。
【解決手段】光学部材は、外景光が入射する入射面2aと、複数のプリズム部3を有する射出部2bと、射出部と対向する平滑面2cと、入射面2aとは反対側に位置する終端面2eとを有する導光体2を備える。平滑面2cは、入射面2aからの入射光の一部を全反射により射出部2b側に反射する。射出部2bは、プリズム部3同士の間隔が入射面2aから終端面2eに向かうにつれて連続的に減少する。ピッチ間隔P1のプリズム部3で挟まれた反射面で反射した光が平滑面2cで反射され、一往復して到達したピッチ間隔P2のプリズム部3に入射した時の光のピッチ間隔の変化量をΔPとして、導光体2は、P2+ΔP=P1を満たす。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外景光(L1)を内部で反射させて導光する光学部材であって、
前記外景光が入射する入射面(2a)と、複数の突起状のプリズム部(3)を有し、前記入射面に交差する方向に延設される射出部(2b)と、前記射出部と対向する平滑面(2c)と、前記平滑面と対向する複数の反射面(4、5a)と、前記入射面とは反対側に位置し、前記射出部と前記平滑面とを繋ぐ終端面(2e)とを有してなり、光透過性材料により構成される導光体(2)を備え、
前記平滑面は、前記入射面からの入射光(L2)の一部を全反射により前記射出部の側に反射し、
前記射出部は、前記プリズム部が繰り返し配列されてなり、
前記プリズム部のピッチ間隔は、前記入射面から前記終端面に向けて連続的に小さくなっており、
複数の前記反射面は、前記入射面から前記終端面に向って互いに離れて配置されるとともに、配置の間隔が連続的に小さくなっており、
前記平滑面のなす1つの平面に沿った方向であって、前記入射面から前記終端面に向かう方向を導光方向(D2)とし、隣接する2つの前記プリズム部のピッチ間隔をP1とし、前記反射面のうちピッチ間隔P1の2つの前記プリズム部の間に位置する部位で反射した前記入射光を特定反射光とし、前記特定反射光が次に入射する位置にある2つの隣接する前記プリズム部のピッチ間隔をP2とし、前記特定反射光が前記部位からピッチ間隔P2の2つの前記プリズム部に到達したときの光の前記導光方向におけるピッチの変化量をΔPとして、前記導光体は、P2+ΔP=P1を満たす、光学部材。
【請求項2】
前記平滑面に対する法線方向に沿った方向を厚み方向(D1)とし、
前記射出部と前記平滑面との前記厚み方向における距離をTとし、
前記入射面に入射する前記外景光の進む方向と前記厚み方向とのなす角度である入射角をθとし、
前記入射面の前記厚み方向に対する傾斜角度をψとし、
前記射出部の前記導光方向における中心に位置する1つの前記プリズム部から外部に射出された射出光(L3)であって、前記射出部の側に位置する視認者の目に入射する光を基準光線とし、
前記基準光線を射出する1つの前記プリズム部を基準プリズム部とし、前記基準プリズム部に対して前記導光方向とは反対方向において隣接する前記プリズム部を隣接プリズム部とし、
前記隣接プリズム部から外部に射出される射出光のうち前記視認者の目に入射する光と前記基準光線との角度差をΔθとし、
前記光透過性材料の屈折率をnとし、
前記基準プリズム部と前記視認者の目との前記基準光線の射出方向における距離をLとして、前記導光体は、以下の(1)式、(2)式を満たす、請求項1に記載の光学部材。
ΔP=2T(1/tan(sin-1(sin(π/2-θ-ψ-Δθ)/n)+ψ)-1/tan(sin-1(sin(π/2-θ-ψ)/n)+ψ))・・・(1)
Δθ=tan-1(P2・cosθ/(L+P2・sinθ))・・・(2)
【請求項3】
前記反射面は、複数の前記プリズム部の一部と交互に繰り返し配列されてなる複数の平坦部(4)であって、前記入射光の一部を全反射により前記平滑面の側に反射する、請求項1に記載の光学部材。
【請求項4】
前記反射面は、前記導光体の内部のうち前記射出部と前記平滑面との間に配置され、前記導光方向に沿って、互いに離れて繰り返し配列されてなる複数の反射層(5)のうち前記平滑面と向き合う面である、請求項1に記載の光学部材。
【請求項5】
複数の前記プリズム部のうち前記入射光の一部を外部に射出する射出面(3a)は、前記入射面と平行である、請求項1に記載の光学部材。
【請求項6】
前記光透過性材料の屈折率をnとし、前記反射面および前記平滑面に対する前記入射光の入射角度をφとして、前記導光体は、sinφ>1/nを満たす、請求項1に記載の光学部材。
【請求項7】
前記平滑面に対する法線方向に沿った方向を厚み方向(D1)とし、前記入射面の前記厚み方向に対する傾斜角度をψとし、前記入射面からの前記入射光の前記反射面および前記平滑面に対する入射角度をφとして、前記導光体は、ψ<φを満たす、請求項1に記載の光学部材。
【請求項8】
前記導光体は、前記入射面と前記平滑面とを繋ぐ傾斜面(2d)を有し、
前記平滑面に対する法線方向に沿った方向を厚み方向(D1)とし、前記入射面の前記厚み方向における高さをTdとし、前記射出部と前記平滑面との前記厚み方向における距離をTsとして、前記導光体は、Td>Tsを満たし、
前記入射面からの前記入射光の前記反射面および前記平滑面に対する入射角度をφとし、前記傾斜面の前記厚み方向に対する傾斜角度をξとして、前記傾斜面は、ξ<φを満たす、請求項1に記載の光学部材。
【請求項9】
複数の前記反射層は、空気層、金属反射膜、誘電体多層膜のいずれか1つである、請求項4に記載の光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、入射面から入射した光の一部を内部で反射させ、入射した光およびその反射光を入射面とは異なる面から外部に射出する光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の光学部材としては、例えば特許文献1に記載のものが挙げられる。特許文献1に記載の光学部材は、透光性の導光体で構成され、導光体の入射面から入射した外光の一部が内部で全反射により導光されるとともに、入射面とは異なる射出面から外部に射出されることで、射出面側にいるユーザに死角の外景を視認させる。これにより、射出面側に導光体とは異なる反射性材料で構成されたハーフミラーが不要なハーフミラーレス構造となり、導光体内部における導光での外光の吸収による損失が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らの鋭意検討の結果、特許文献1に記載の光学部材は、入射光の一部を射出するプリズム部と、入射光の一部を全反射により反射する平坦部とが交互に繰り返し配列されてなる周期構造に起因してモアレが生じ得ることが判明した。
【0005】
また、特許文献1では、射出面における射出光の光量を均一化するため、射出面をプリズム部と平坦部との比率を変えた複数の領域で構成された光学部材が示されている。しかしながら、このような構成とされた場合、光学部材は、射出面を構成する複数の領域の境界が目立ってしまい、外観性が損なわれてしまう。
【0006】
本開示は、上記の点に鑑み、ハーフミラーレス構造であって、入射光を射出する面における射出部分と反射部分との周期構造に起因するモアレを低減しつつ、射出面における境界のない光学部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの観点によれば、光学部材は、外景光(L1)を内部で反射させて導光する光学部材であって、外景光が入射する入射面(2a)と、複数の突起状のプリズム部(3)を有し、入射面に交差する方向に延設される射出部(2b)と、射出部と対向する平滑面(2c)と、平滑面と対向する複数の反射面(4、5a)と、入射面とは反対側に位置し、射出部と平滑面とを繋ぐ終端面(2e)とを有してなり、光透過性材料により構成される導光体(2)を備え、平滑面は、入射面からの入射光(L2)の一部を全反射により射出部の側に反射し、射出部は、プリズム部が繰り返し配列されてなり、プリズム部のピッチ間隔は、入射面から終端面に向けて連続的に小さくなっており、複数の反射面は、入射面から終端面に向って互いに離れて配置されるとともに、配置の間隔が連続的に小さくなっており、平滑面のなす1つの平面に沿った方向であって、入射面から終端面に向かう方向を導光方向(D2)とし、隣接する2つのプリズム部のピッチ間隔をP1とし、反射面のうちピッチ間隔P1の2つのプリズム部の間に位置する部位で反射した入射光を特定反射光とし、特定反射光が次に入射する位置にある2つの隣接するプリズム部のピッチ間隔をP2とし、特定反射光が部位からピッチ間隔P2の2つのプリズム部に到達したときの光の導光方向におけるピッチの変化量をΔPとして、導光体は、P2+ΔP=P1を満たす。
【0008】
この光学部材は、入射面と、射出部と、互いに対向する平滑面および反射面と、射出部と平滑面とを繋ぐ終端面とを有する導光体を備え、平滑面が入射面からの入射光の一部を全反射により反射するため、ハーフミラーレス構造となっている。この光学部材は、射出部が繰り返し配列される複数のプリズム部を備え、プリズム部のピッチ間隔が入射面から終端面に向けて連続的に小さくなっているため、外観上、射出面における境界がない構成となる。複数の反射面は、入射面から終端面に向って互いに離れて配置され、かつ配置の間隔が連続的に小さくなっている。また、平滑面のなす1つの平面に沿った方向であって、入射面から終端面に向かう方向を導光方向とし、隣接する2つのプリズム部のピッチ間隔をP1とし、反射面のうちピッチ間隔P1の2つのプリズム部の間に位置する部位で反射した入射光を特定反射光とする。そして、特定反射光が次に入射する位置にある2つの隣接するプリズム部のピッチ間隔をP2とし、特定反射光が部位からピッチ間隔P2の2つのプリズム部に到達したときの光の導光方向におけるピッチの変化量をΔPとする。このとき、導光体は、P2+ΔP=P1を満たすことで、モアレが低減される。よって、この光学部材は、ハーフミラーレス構造とされつつ、射出面における入射光の射出部分と反射部分との周期構造に起因するモアレが低減されるとともに、射出面における境界のない構成となる。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の光学部材を示す断面図である。
【
図2】
図1の光学部材における導光の説明図である。
【
図3】比較例の光学部材の内部における光線パターンの変化および構造パターンに起因するモアレ発生についての説明図である。
【
図4】光学部材の射出部側に位置する視認者の目に入射する射出光および射出部から当該視認者の目までの距離についての説明図である。
【
図5】
図4に示す2つの射出光の角度差および第1実施形態の光学部材におけるプリズム部のピッチ間隔の設計についての説明図である。
【
図6】射出部における境界レスについての説明図であって、(a)が比較例、(b)が実施例を示す図である。
【
図7】第2実施形態の光学部材を示す断面図である。
【
図8】
図7の光学部材における導光の説明図である。
【
図9】第2実施形態の光学部材の第1変形例を示す断面図である。
【
図10】第2実施形態の光学部材の第2変形例を示す図であって、反射層およびプリズム部の近傍を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態の光学部材1について、図面を参照して説明する。本実施形態の光学部材1は、例えば、ユーザの視界を遮り、死角を生じさせる部材や障害物等に取り付けられ、当該死角の領域の光景を当該ユーザに視認させる死角補助装置として用いられうる。光学部材1は、例えば、車載用途の場合には、搭載される車両のピラーなどに取り付けられ、当該ピラーにより死角になる領域からの外景光をユーザの側に導光し、死角領域の光景をユーザに視認させる。
【0013】
本実施形態の光学部材1は、例えば
図1に示すように、透光性材料によりなる導光体2で構成され、入射面2aと、射出部2bと、平滑面2cと、傾斜面2dと、終端面2eとを備える。光学部材1は、例えば
図2に示すように、平滑面2cが他の部材200と対向するように取り付けられ、入射面2aから外光を内部に入射させる。光学部材1は、入射面2aから内部に入射した光の一部が射出部2bで反射され、射出部2bで反射した光が平滑面2cで反射され、射出部2b側に再度向かう構成となっている。光学部材1は、例えば、入射面2aから外光を導光体2の内部で導光させ、射出部2bから外部に射出することで、射出部2b側にいるユーザに他の部材200による死角領域の外景を視認させる。なお、他の部材200は、例えば、車載用途の場合、自動車のAピラーなどの死角領域を生じさせるものとされるが、これに限定されるものではなく、適宜変更されうる。
【0014】
以下、説明の便宜上、
図2に示すように、入射面2aに入射する外光を「外景光L1」と称し、入射面2aから導光体2の内部に入射した光を「入射光L2」と称し、導光体2の内部から外部に射出される光を「射出光L3」と称する。また、光学部材1のうち平滑面2cに対する法線方向に沿った方向であって、射出部2bと平滑面2cとを繋ぐ方向を「厚み方向D1」と称し、厚み方向D1に対して直交する方向であって、入射面2aから終端面2eに向かう方向を「導光方向D2」と称する。
【0015】
導光体2は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、アクリル等の樹脂材料やガラスなどの光透過性材料からなる略板状の単一部材である。導光体2は、例えば、図示しない金型等を用いた公知の樹脂成型方法により形成される。導光体2は、例えば
図2に示すように、入射面2aからの入射光L2の一部が射出部2bの後述するプリズム部3に入射するとともに、入射光L2の残部が後述する平坦部4で反射し、この反射光が平滑面2cに向かう構成となっている。そして、導光体2は平坦部4で反射された入射光L2が平滑面2cや平坦部4で全反射し、内部で導光されるように設計されている。具体的には、導光体2は、その構成材料の屈折率をnとし、入射光L2の平滑面2cおよび平坦部4に対する入射角度、すなわち導光角をφとして、導光体2の外部媒質が屈折率1の空気層である場合、以下の(1)式を満たす設計となっている。
【0016】
sinφ>1/n・・・(1)
これにより、導光体2は、ハーフミラーを有さずとも、入射光L2の一部が平坦部4と平滑面2cとの間で繰り返し反射され、入射光L2がプリズム部3の後述する射出面3aから外部に射出される。なお、導光角φとは、入射光L2の進む方向と厚み方向D1とのなす角度に相当する。
【0017】
入射面2aは、
図2に示すように、外景光L1を内部に入射させる面である。入射面2aは、射出部2bに隣接するとともに、射出部2bおよび平滑面2cに交差する方向に沿った面となっている。入射面2aは、例えば、平滑面2c側に向かうにつれて終端面2eに近づくように傾斜するとともに、厚み方向D1とのなす角度である傾斜角度がψで傾斜した平坦面となっている。入射面2aは、傾斜角度ψが導光角φよりも小さくなっている。このとき、外景光L1の厚み方向D1に対する角度をθとして、屈折の条件よりψ<π/2-φであれば、入射光L2は、導光角φが外景光L1の角度θよりも大きくなる方向に屈折し、射出部2bのより広い範囲に導光されることとなる。角度θは、外景光L1の導光体2に対する入射角に相当する。導光体2は、例えば、φが全反射角になるため、通常の透光性樹脂材料の屈折率が1.4以上であることから、n・sinφ>1よりφ>45.3となり、φ>ψを満たす構造となっている。
【0018】
射出部2bは、入射面2aと隣接し、かつ交差する位置に形成されるとともに、例えば、断面視にて、三角形状の突起である複数のプリズム部3と複数の平坦部4を有してなる。
【0019】
以下、説明の便宜上、導光方向D2において隣接するプリズム部3同士の同方向における間隔を「ピッチ間隔」と称し、平坦部4を挟んで隣接する2つのプリズム部3を「隣接プリズム部」と称する。
【0020】
射出部2bは、ピッチ間隔が入射面2aから終端面2eに向かうにつれて連続的に小さくなる構成となっている。射出部2bは、入射面2a側の所定の領域がプリズム部3と平坦部4とが交互に繰り返し配列されているが、隣接プリズム部のうち最も入射面2a側に位置するプリズム部3およびこれに隣接するプリズム部3のピッチ間隔が最大となっている。射出部2bは、隣接プリズム部のピッチ間隔が終端面2e側に近いほど小さくなっており、終端面2e側の端部を含む一部の領域が複数のプリズム部3のみが連続して配列された構成となっている。
【0021】
ここで、
図2に示すように、射出部2bのうち入射面2aからの入射光L2が直接入射する領域における1つの隣接プリズム部のピッチ間隔をP1とする。また、ピッチ間隔がP1の隣接プリズム部に挟まれた平坦部4で反射した入射光L2が入射する隣接プリズム部のピッチ間隔をP2とする。このとき、射出部2bは、ピッチ間隔のP1とP2とが所定の関係を満たすように設計されている。この詳細については、後述する。
【0022】
複数のプリズム部3は、平坦部4から突出する突起物であって、例えば厚み方向D1における高さが略同一となっている。本明細書における「略同一」とは、完全に同一である場合に加えて、加工誤差などの不可避の要因によりわずかに差があるが、ほぼ同一である場合を含む。複数のプリズム部3は、例えば、断面視にて、入射面2aと平行な面であって、入射光L2の一部を外部に射出する射出面3aと、射出面3aに隣接する隣接面3bとを有してなる。複数のプリズム部3は、例えば、射出面3aが入射面2aと平行、すなわち厚み方向D1に対する傾斜角度がψとされている。これにより、入射光L2のうち射出面3aに到達したものが、外景光L1と同じ角度θの射出光L3として外部に射出されることとなる。このため、射出部2b側に位置するユーザから見て、光学部材1を介しない外景と光学部材1により視認可能となった死角領域の外景との連続性が確保される。
【0023】
複数の平坦部4は、例えば、平滑面2cと対向し、かつ平行に配置された平坦面である。複数の平坦部4は、例えば、同一平面上に配置され、1つの平面を構成する。複数の平坦部4は、入射面2aからの入射光L2が臨界角以上の角度で入射するため、全反射により入射光L2を平滑面2c側に反射する反射面として機能する。なお、複数の平坦部4は、導光方向D2における幅を横幅として、入射面2aに近いほど横幅が大きく、終端面2eに近づくにつれて横幅が連続的に小さくなっている。
【0024】
平滑面2cは、射出部2bと対向配置された面であって、1つの平坦な面である。平滑面2cは、入射光L2のうち平坦部4で反射した光を全反射により射出部2b側に反射する。平滑面2cは、平坦部4と対をなす面であり、入射光L2の一部を平滑面2cと平坦部4との間で繰り返し反射させ、入射光L2を射出部2bの全域に入射させる。つまり、平滑面2cは、平坦部4を第1の反射面として、第2の反射面となる部位であり、入射光L2の一部を導光方向D2に沿って導光する役割を果たす。
【0025】
傾斜面2dは、入射面2aと平滑面2cとを繋ぐ面であって、例えば、平滑面2cに近づくほど終端面2eに近くなるように傾斜するとともに、平滑面2cよりも突出した面となっている。言い換えると、入射面2aおよび傾斜面2dは、断面視にて、1つの大きな突起状のプリズム部を構成している。つまり、導光体2は、射出部2bの平坦部4から平滑面2cまでの厚み方向D1における高さをTとして、入射面2aと傾斜面2dとのなす1つのプリズム部の厚み方向D1における高さがTよりも大きい構成となっている。これにより、導光体2は、入射面2aからの入射光L2が最初に到達する射出部2bにおける領域を広くできる。傾斜面2dは、例えば、厚み方向D1に対して角度ξで傾斜した1つの平坦面となっている。入射面2aからの入射光L2のうち平滑面2cと傾斜面2dとの境界近傍を通る光と、平滑面2cのうち当該境界近傍で反射する光との間で隙間が生じないようにする観点から、導光体2は、ξ<φを満たす設計とされる。これにより、射出部2bにおいてユーザに視認させる外景に隙間が生じることが抑制され、表示の連続性を確保することができる。
【0026】
なお、傾斜面2dは、入射面2aのうち射出部2bとは反対側の端部と平滑面2cのうち入射面2a側の端部とを繋ぐ仮想直線の厚み方向D1に対する角度であるξが、ξ<φを満たす構成であればよく、1つの平坦面でなくてもよい。例えば、傾斜面2dは、2つ以上の平面を有する多角面であってもよいし、湾曲した1つの湾曲面であってもよく、その形状については任意である。
【0027】
終端面2eは、射出部2bと平滑面2cとを繋ぐ面である。終端面2eは、例えば、1つの平坦面とされる。終端面2eは、その傾斜については任意であるが、例えば、射出部2bのうち最も終端面2eに近いプリズム部3の射出面3aとともに1つの平坦面をなし、導光方向D2における最後の射出面として機能する構成であってもよい。
【0028】
なお、導光体2のうち
図1の紙面平面に対する垂直方向における両端に位置する外表面、すなわち入射面2a、射出部2b、平滑面2c、傾斜面2dおよび終端面2eを繋ぐ側面は、光学的に寄与しない面であるため、その構成については任意である。例えば、導光体2の側面は、他の材料で覆われずに外部に露出していてもよいし、図示しない光吸収膜等で覆うなどの任意の方法により外部からの光を導光体2の内部に侵入させない構成であってもよい。
【0029】
以上が、光学部材1の基本的な構成である。
【0030】
〔プリズム部のピッチ間隔およびモアレの低減〕
次に、射出部2bにおけるプリズム部3のピッチ間隔に起因するモアレの発生およびこれを低減するための設計について説明する。
【0031】
射出部2bにおけるプリズム部3のピッチ間隔がすべて一定である構造を比較例として、本発明者らの鋭意検討の結果、比較例の構造ではプリズム部3の周期構造に起因してモアレが発生することが判明した。
【0032】
具体的には、比較例の構造は、射出部のうち入射面2aからの入射光L2が直接入射する領域を第1領域とし、第1領域で反射した光が平滑面で反射して2回目に入射する領域を第2領域として、第1領域および第2領域のプリズム部3のピッチ間隔が同一である。そして、第1領域に入射する入射光L2の外部への射出と内部での反射とのパターンを光線の明暗パターンとして、第1領域における明暗パターンは、例えば
図3に示すように、明暗が交互に一定間隔で繰り返されるものとなる。第1領域の光線の明暗パターンは、外部に射出される部分が明、内部で反射される部分が暗となるため、第1領域のプリズム部3と平坦部4との構造パターンと同一となる。
【0033】
なお、
図3では、射出部2bから見て明るく見える部分を明とし、暗く見える部分を暗として、明を白、暗を黒で示している。光線の明暗パターンは、明が導光体2の外部に射出される射出光L3となる部分、暗が導光体2の内部で反射する入射光L2となる部分、にそれぞれ相当する。構造パターンは、明がプリズム部3の射出面3a、暗が平坦部4、にそれぞれ相当する。
【0034】
ここで、射出部で反射した光が平滑面で反射し、射出部に再度到達して一往復するまでに所定の距離があるため、第2領域に到達したときの光線の明暗パターンは、第1領域における光線の明暗パターンに対して変化してしまう。第2領域の光線の明暗パターンは、第2領域のうち第1領域で反射された光が到達する部分が明、それ以外の部分が暗となる。一方、比較例の構造は、射出部におけるプリズム部3のピッチ間隔がすべて同一、すなわちプリズム部3および平坦部4の構造パターンが第1領域と第2領域とで同一である。しかしながら、第2領域の光線の明暗パターンは、第1領域の光線の明暗パターンから変化してしまうため、第2領域のプリズム部3と平坦部4との構造パターンに対してわずかにずれてしまう。このため、比較例の構造は、
図3に示すように、第2領域の光線の明暗パターンと、プリズム部3および平坦部4の構造パターンとのわずかなズレにより、モアレが発生してしまう。つまり、比較例の構造は、プリズム部3および平坦部4の周期構造が一定であるのに対し、入射光の明暗パターンが導光体内部の導光に伴って変化することで、モアレが発生する。
【0035】
これに対し、本実施形態の光学部材1は、プリズム部3のピッチ間隔Ppが入射面2a側から終端面2eに向かうにつれて連続的に小さくなるとともに、入射光L2の明暗パターンの変化を考慮した設計とされることで、モアレを低減可能となっている。
【0036】
以下、説明の便宜上、入射面2aからの入射光L2が最初に入射する位置にあるプリズム部3を「第1プリズム部」と称し、第1プリズム部と終端面2e側で隣接するプリズム部3を「第1隣接プリズム部」と称する。また、第1プリズム部と第1隣接プリズム部に挟まれた平坦部4で反射した光が平滑面2cで反射して射出部2bに再度到達した位置にあるプリズム部3を「第2プリズム部」と称する。また、第2プリズム部と終端面2e側で隣接するプリズム部3を「第2隣接プリズム部」と称する。さらに、第1プリズム部と第1隣接プリズム部とのピッチ間隔を「第1ピッチ間隔」と称し、第2プリズム部と第2隣接プリズム部とのピッチ間隔を「第2ピッチ間隔」と称する。
【0037】
このとき、光学部材1は、第2ピッチ間隔の2つのプリズム部3に到達した入射光L2の明暗パターンと、第2ピッチ間隔の2つのプリズム部3の構造パターンとが一致するように設計されることで、モアレ発生が抑制されている。
【0038】
具体的には、第1ピッチ間隔をP1とし、第2ピッチ間隔をP2とし、入射光L2のうち第1ピッチ間隔の2つのプリズム部3に挟まれた平坦部4で反射した光を便宜上「特定反射光」とする。そして、特定反射光が第2ピッチ間隔の2つのプリズム部3に到達したときの導光方向D2における光同士のピッチ間隔の変化量をΔPとする。つまり、ΔPとは、特定反射光が第1ピッチ間隔の2つのプリズム部3に挟まれた平坦部4で反射した時の光同士のピッチ間隔と、第2ピッチ間隔の2つのプリズム部3に到達したときの光同士のピッチ間隔との差である。言い換えると、ΔPは、射出部2bと平滑面2cとの間の一往復による特定反射光のピッチの変化量である。このとき、光学部材1は、以下の(2)式を満たすことで、モアレを低減する。
【0039】
P2+ΔP=P1・・・(2)
ここで、例えば、
図4および
図5に示すように、導光方向D2の中心に位置するピッチ間隔P2の2つのプリズム部3からの射出光L3を終端面2e側から射出光L3A、L3Bとし、射出光L3A、L3Bが入射するユーザの目の位置を視点P
Eとする。そして、視点P
Eと射出光L3Aを射出するプリズム部3との射出光L3Aの射出方向に沿った距離をLとする。射出光L3Aとは、射出部2bの導光方向D2における中心に位置するプリズム部3から射出される射出光L3である。射出光L3Bとは、射出光L3Aを基準光線とし、基準光線を射出するプリズム部3を基準プリズム部として、基準プリズム部に対して導光方向D2の反対方向において隣接するプリズム部3から射出される射出光L3である。なお、
図4、
図5では、見易くするため、射出光L3Aおよび射出光L3Aとして射出される入射光L2Aを実線で示し、射出光L3Bおよび射出光L3Bとして射出される入射光L2Bを破線で示している。また、
図5では、後述する入射光L2Cを一点鎖線で示している。
【0040】
例えば
図5に示すように、射出光L3Aの射出角度をθとすると、同じ視点P
Eに入射する射出光L3Bは、射出光L3Aとは異なる射出角度となっている。射出光L3Bは、射出光L3Aの射出角度との差をΔθとすると、その射出角度がθ+Δθとなる。この角度差Δθは、以下の(3)式で表される。そして、(3)式は、(4)式に近似できる。
【0041】
Δθ=tan-1(P2・cosθ/(L+P2・sinθ))・・・(3)
Δθ≒P2・cosθ/(L+P2・sinθ)・・・(4)
射出光L3A、L3Bを隣接射出光とし、隣接射出光の導光体2内における導光角の差、すなわち入射光L2Aと入射光L2Bとの角度差をΔφとすると、Δφは、(5)式で表される。
【0042】
Δφ=sin
-1(sin(π/2-θ-ψ)/n)-sin
-1(sin(π/2-θ-ψ-Δθ)/n)・・・(5)
このとき、ΔPは、
図5に示すように、入射光L2A、L2Bを射出する領域における入射光L2A、L2Bのピッチ間隔P2からの射出部2bにおいて入射光L2A、L2Bを反射する領域におけるピッチの変化量であり、以下の(6)式で表される。
【0043】
ΔP=2T(1/tan(sin
-1(sin(π/2-θ-ψ-Δθ)/n)+ψ)-1/tan(sin
-1(sin(π/2-θ-ψ)/n)+ψ))・・・(6)
ここで、射出光L3Bと同じプリズム部3に入射し、かつ入射光L2Aと同じ導光角φである入射光を入射光L2Cとする。このとき、入射光L2A、L2Cが平行となるため、射出部2bのうち入射光L2A、L2Cが反射する領域における入射光L2A、L2Cのピッチは、P2となる。また、
図5に示すように、射出部2bのうち入射光L2A、L2CのピッチがP2となる反射領域において、入射光L2Aと入射光L2Bとの導光方向D2における間隔をXとする。このとき、入射光L2A、L2Bの反射領域における間隔Xは、同領域における入射光L2A、L2Cのピッチ間隔P2に、ピッチの変化量ΔPが加わったものとなる。そして、Xが(7)式を満たすことで、視点P
Eから見たときの第2ピッチ間隔P2の2つのプリズム部3における光線の明暗パターンとプリズム部3および平坦部4の構造パターンとが一致し、これら2つのパターンが完全に重なる状態となる。このため、光学部材1は、モアレの強度が最小となる。
【0044】
X=P2+ΔP=P1・・・(7)
光学部材1は、射出部2bのうち少なくともプリズム部3間に平坦部4が存在する領域の全域が(7)式の関係が成立するように設計されることで、モアレが抑制されている。
【0045】
このように、光学部材1は、第1プリズム部と第1隣接プリズム部とのピッチ間隔P1に対して、第2プリズム部と第2プリズム部とのピッチ間隔P2が入射光L2の明暗パターンの変化分だけ小さくなるように設計されている。これにより、視点PEから見たときの光線の明暗パターンと射出部2bの構造パターンとが一致し、わずかに周期が異なる周期パターン同士が重なることで生じるモアレの発生が抑制される。
【0046】
ここで、モアレの低減の観点から、
図6(a)に示すように、射出部を所定の幅でピッチ間隔の異なる複数の領域を有する構成とし、隣接するこれらの領域間で(7)式を満たす構成の比較例の光学部材100とすることが考えられる。光学部材100は、例えば、射出部101が第1領域101a、第2領域101bおよび第3領域101cを有し、各領域においてプリズム部102のピッチ間隔が一定であるが、領域ごとにピッチ間隔が異なっている。なお、第1領域101a、第2領域101bは、プリズム部3に相当するプリズム部102と、平坦部4に相当する平坦部103とが交互に所定間隔で繰り返し配列されてなる。第3領域101cは、プリズム部102のみが繰り返し配列されてなる。光学部材100は、例えば、領域101a、101b、101cにおけるプリズム部102のピッチ間隔がそれぞれPp1、Pp2、Pp3であるとともに、Pp1とPp2の間、およびPp2とPp3の間で(7)式を満たすことでモアレが低減される。
【0047】
なお、
図6(a)、(b)では、比較例および実施例の光学部材の射出部を平坦部に対する法線方向から見た様子を示しており、見易くするため、射出部以外の部分については省略している。また、
図6(a)、(b)では、射出部のうち入射面側および終端面側の方向を矢印で示すとともに、見易くするため、断面を示すものではないが、プリズム部3、102の射出面3a、102aにハッチングを施している。
【0048】
しかしながら、プリズム部102のピッチ間隔が領域ごとに異なると、視認者の目にはプリズム部3のピッチ間隔が異なる領域の境界が目立って映るため、光学部材100は、
図6(a)に示すように、射出部101における境界が視認されてしまう。このため、比較例の光学部材100は、モアレを低減できるものの、射出部101における外観性が十分でない。
【0049】
一方、本実施形態の光学部材1は、例えば
図6(b)に示すように、入射面2aから終端面2eに向かうにつれてピッチ間隔Ppが徐々に小さくなるとともに、(7)式を満たすことで、ピッチ間隔Ppの変化が連続的となっている。つまり、光学部材1は、射出部2bにおいて平坦部4を挟んだプリズム部3のピッチ間隔Ppが同じになる部位がなく、入射面2aから終端面2eに向かうほどピッチ間隔Ppが小さくなっている。このため、光学部材1は、射出部2bが複数の領域に分かれて見えることがなく、境界が視認されない構造、いわば境界レスの構造となり、射出部2bにおける外観性が向上する。
【0050】
本実施形態によれば、導光体2が射出部2bの平坦部4および平滑面2cにおいて、全反射により入射光L2を反射する設計とされることで、ハーフミラーレス構造の光学部材1となる。また、導光体2は、第2ピッチ間隔p2が射出部2b-平滑面2c間の一往復における入射光L2の明暗パターンの変化分だけ第1ピッチ間隔P1よりも小さくなっている。これにより、視点PEから見たときの光線の明暗パターンと射出部2bの構造パターンとのズレがなくなり、モアレの発生を抑制することが可能となる。さらに、また、導光体2は、射出部2bを入射面2aから終端面2eに向かうにつれてプリズム部3のピッチ間隔Ppが連続的に小さくなる構成となっており、射出部2bが特定の領域の境界を視認させない構成となっている。このため、本実施形態の光学部材1は、ハーフミラーレス構造であって、モアレが低減されるとともに、射出部2bの外観性が向上する。
【0051】
(第2実施形態)
第2実施形態の光学部材1について、図面を参照して説明する。
【0052】
本実施形態の光学部材1は、例えば
図7に示すように、導光体2の内部に複数の反射層5が形成されている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0053】
導光体2は、本実施形態では、導光方向D2に沿って複数の反射層5が形成されており、例えば
図8に示すように、入射光L2が平坦部4に代わって複数の反射層5で反射される構成となっている。
【0054】
複数の反射層5は、導光体2の内部において、導光方向D2に沿って互いに離れて形成されている。複数の反射層5は、例えば、入射面2aおよび平滑面2cと、射出部2bとの間であって、すくなくとも入射面2a側の端部からプリズム部3同士が隣接する領域の直前の領域に配置されている。複数の反射層5は、例えば、平滑面2c側の面が入射光L2の一部を反射する反射面5aとされ、反射面5aが平滑面2cと略平行になっている。略平行とは、完全に平行な場合に加えて、加工誤差などにより不可避のわずかな差があるものの、ほぼ平行である場合を含む。複数の反射層5は、例えば
図7に示すように、それぞれの反射面5aが同一平面上に位置しつつ、射出部2bのうちプリズム部3同士が隣接する領域に入射する入射光L2を妨げないように、当該領域およびこの近傍には配置されていない。複数の反射層5は、例えば、導光角φの入射光L2がプリズム部3の射出面3aに入射するのを妨げないように、射出面3aを通り、厚み方向D1に対する角度がφの仮想直線上を避けるように配置されている。
【0055】
複数の反射層5は、導光方向D2における反射層5同士のピッチ間隔をPrとして、Prが入射面2aから終端面2eに向かうにつれて連続的に小さくなっている。複数の反射層5は、反射層5同士の隙間を通る入射光L2が入射するプリズム部3とこれに導光方向D2の反対側において隣接するプリズム部3とのピッチ間隔をPpとして、Prがppと略同一となっている。複数の反射層5は、射出部2bの近傍に配置されている。具体的には、反射面5aと平滑面2cとの厚み方向D1における距離をTrとして、複数の反射層5は、平滑面2cと平坦部4との厚み方向D1における距離、すなわち導光体厚みTとTrとの差がTよりも十分小さくなる位置に形成される。言い換えると、複数の反射層5は、T≫(T-Tr)が成立する位置に形成されている。
【0056】
複数の反射層5は、例えば、空気が充填された空洞層、もしくは導光体2の構成材料とは異なる反射性材料、あるいは誘電体多層膜により構成される。導光体2の構成材料の屈折率n1が1よりも大きい場合、反射層5は、屈折率1の空気が充填される空洞層とされてもよい。この場合、反射層5に入射する導光角φの入射光L2は、sinφ>1/n1を満たすため、全反射により平滑面2c側に反射されることとなる。反射性材料としては、例えば、銀、アルミニウム、クロムなどの可視光反射率が所定以上の金属材料などが挙げられるが、これらに限定されない。また、反射層5は、可視光線を反射する構成であればよく、例えば、TiO2とSiO2などの相対的に高屈折率材料と低屈折率材料とが交互に繰り返し積層されてなる公知の誘電体多層膜で構成されてもよい。
【0057】
ここで、入射面2aからの入射光L2が最初に直接入射する反射層5と導光方向D2において隣接する他の反射層5とのピッチ間隔をPr1とする。また、ピッチ間隔をPr1の2つの反射層5で反射した入射光が平滑面2cで反射され、次に入射する位置にある2つの反射層5のピッチ間隔をPr2とする。このとき、本実施形態の光学部材1は、以下の(8)式を満たす。
【0058】
Pr2+ΔPr=Pr1・・・(8)
ΔPrとは、入射面2aからの入射光L2が最初に直接入射する反射層5で反射した光を特定反射光として、特定反射光が導光体2の内部反射により一往復し、次に射出部2bに到達したときの導光方向D2における光同士のピッチ間隔の変化量である。Pr1=P1、Pr2=P2であるとき、ΔPrは、上記第1実施形態におけるΔPに相当する。また、このとき、(8)式がそれぞれ上記第1実施形態における(2)式に相当し、本実施形態の光学部材1は、上記した(3)式、(6)式を満たすように設計されている。これにより、射出部2bに位置するユーザの視点PEから見て、第2領域2bbにおける光線の明暗パターンと構造パターンとが一致することとなり、モアレの発生が低減される。
【0059】
なお、導光体2は、例えば、厚み方向D1において複数の反射層5よりも平滑面2c側の上半分を図示しない金型を用いた公知の樹脂成型法により形成した後、図示しない金型を変えて残りの下半分を公知の樹脂成型法により形成することにより得ることができる。導光体2は、例えば、反射層5を空洞層で構成する場合には前述の二段階の樹脂成型工程の一方において凹部を形成し、他方の工程において当該凹部を残して空気で充填された空洞を形成することにより得られる。導光体2は、例えば、反射層5を金属材料などの反射性材料で構成される金属反射膜、または誘電体多層膜で構成する場合には、前述の二段階の樹脂成型工程の間にスパッタリングやCVDなどの反射層5の成膜工程を挟むことにより得られる。
【0060】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる光学部材1となる。
【0061】
(第2実施形態の変形例)
光学部材1は、例えば
図9に示すように、導光体2が単一部材でなく、複数の部材で構成されていてもよい。例えば、導光体2は、複数の反射層5を有し、平滑面2cおよび傾斜面2dを構成する導光部21と、射出部2bを構成し、複数のプリズム部3を有してなるプリズムシート23と、導光部21とプリズムシート23とを繋ぐ透明層22とにより構成されてもよい。この場合、導光部21、透明層22およびプリズムシート23は、いずれも光透過性材料で構成され、互いの界面で全反射が生じないように屈折率が調整される。これにより、導光体2は、単一部材で構成する場合よりも製造が容易となる。
【0062】
上記した第1変形例によれば、上記第2実施形態と同様の効果に加えて、製造が容易になる効果も得られる光学部材1となる。
【0063】
また、光学部材1は、例えば
図10に示すように、射出部2bが平坦部4を有さず、プリズム部3のみで構成されていてもよい。この場合、プリズム部3は、隣接面3bの導光方向D2における幅が射出面3aよりも大きくされ、ピッチ間隔をPpとし、反射層5のピッチ間隔をPrとして、PpがPrと略同一とされる。また、射出部2bは、プリズム部3のみで構成される場合には、隣接面3bに図示しない遮光膜が形成されてもよい。これにより、射出部2b側からの外光が導光体2に侵入することを防ぐことができ、意図しない射出部2b側からの外光が射出光L3に重畳しなくなり、ノイズを抑制する効果も得られる。なお、遮光膜としては、例えば、可視光を吸収する光吸収膜や可視光を散乱させる光散乱膜とされ、塗布あるいは粗面処理などにより形成されうる。
【0064】
上記した第2変形例によっても、上記第2実施形態と同様の効果が得られる光学部材1となる。また、プリズム部3の隣接面3bに図示しない遮光膜を形成した場合には、ノイズを抑制する効果も得られる。
【0065】
(他の実施形態)
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらの一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0066】
なお、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0067】
2…導光体、2a…入射面、2b…射出部、2c…平滑面、2d…傾斜面、2e…終端面
3…プリズム部、3a…射出面、4…平坦部、5…反射層、5a…反射面
D1…厚み方向、D2…導光方向、L1…外景光、L2…入射光、L3…射出光