(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170009
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、それを用いた積層シート、プリプレグおよび硬化物付基板、ならびに該硬化物基板を搭載した電子機器
(51)【国際特許分類】
C08F 299/02 20060101AFI20241129BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20241129BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20241129BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
C08F299/02
C08G73/10
C08J5/24 CFG
H05K1/03 610N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086915
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宇佐 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】曽根田 裕士
【テーマコード(参考)】
4F072
4J043
4J127
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA07
4F072AB09
4F072AB28
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4J127DA12
4J127DA52
4J127EA05
4J127FA38
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、接着力が高く、かつ誘電特性が良好な組成物を提供することにある。
【解決手段】
上記課題は、テトラカルボン酸二無水物(C)とダイマージアミンとの反応物である末端にアミノ基を有するプレポリマーと、炭素-炭素不飽和結合を有する酸無水物(a)とのイミド化反応による反応生成物であるポリイミド樹脂(A)および硬化助剤(B)を含む硬化性樹脂組成物であって、ポリイミド樹脂(A)が、無水マレイン酸(a1)に由来する残基および無水マレイン酸以外の炭素-炭素不飽和結合を有する酸無水物(a2)に由来する残基を含み、(a2)の分子量が112~351であり、ポリイミド樹脂(A)中の、(a1)に由来する残基と(a2)に由来する残基のモル比率が、100:10~100:500であることを特徴とする、硬化性樹脂組成物硬化性樹脂組成物によって解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂(A)および硬化助剤(B)を含み、
ポリイミド樹脂(A)が、テトラカルボン酸二無水物(C)とダイマージアミンとの反応物である末端にアミノ基を有するプレポリマーと、炭素-炭素不飽和結合を有する酸無水物(a)とのイミド化反応による反応生成物であって、
ポリイミド樹脂(A)が、無水マレイン酸(a1)に由来する残基および無水マレイン酸以外の炭素-炭素不飽和結合を有する酸無水物(a2)に由来する残基を含み、
(a2)の分子量が112~351であり、
ポリイミド樹脂(A)中の、(a1)に由来する残基と(a2)に由来する残基のモル比率が、100:10~100:500であることを特徴とする、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(a2)がシトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アリルこはく酸無水物および5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
テトラカルボン酸二無水物(C)が、フッ素又は、脂環構造を有する請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリイミド樹脂(A)の重量平均分子量が、5,000~150,000である請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに架橋剤、硬化促進剤および酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
さらにフィラーを含有する請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
基材と樹脂組成物層を有する積層シートであって、樹脂組成物層が請求項1~6いずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物から形成される、積層シート。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を含浸させたプリプレグ。
【請求項9】
基板上に、請求項1~6のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物を有する、硬化物付基板。
【請求項10】
請求項9に記載の硬化物付基板を搭載した電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、それを用いた積層シート、プリプレグおよび硬化物付基板、ならびに該硬化物基板を搭載した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス分野の発展が目覚ましく、特に電子機器の小型化、軽量化、高密度化が進み、プリント配線板をはじめとする電子材料には、薄型化、多層化、高精細化がますます要求されるようになっている。このような電子材料周辺に用いられる接着剤やコーティング剤として、例えば、具体的には次の(1)~(6)が挙げられる。
【0003】
(1)層間接着剤:回路基板同士を張り合わせるために用いられるもので、直接銅あるいは銀回路に接する。多層基板の層間に使用され、液状やシート状のものがある。
【0004】
(2)カバーレイフィルム用接着剤:カバーレイフィルム(回路の最表面を保護する目的で用いられるポリイミドフィルムなど)と、下地の回路基板と、を張り合わせるために用いられる。その使用形態として、あらかじめポリイミドフィルムと、接着層とが一体化されているものを下地と張り合わせる場合が多い。
【0005】
(3)銅張フィルム(CCL)用接着剤:ポリイミドフィルムと銅箔とを張り合わせるために用いられる。当該銅箔は、銅回路形成時にエッチング等の加工が施される場合が多い。
【0006】
(4)カバーレイ:回路の最表面を保護する目的で用いられ、その形態として、回路上に印刷した印刷インク層、張り合わせた接着シートなどがある。多くの場合、カバーレイを積層した後に、光や熱で硬化させる工程がある。
【0007】
(5)補強板用接着剤:配線板の機械的強度を補完する目的で、配線板の一部を、金属、ガラスエポキシ、ポリイミド等の補強板に固定するために用いられる。
【0008】
(6)電磁波シールド用接着剤:電子回路から発生する電磁ノイズを遮蔽する目的で、フレキシブルプリント配線板に貼着される。その形態として、接着剤そのものが電磁波シールド材を含む場合と、電磁波シールド性のカバーレイを電磁波シールド用接着剤で張り合わせる場合がある。
【0009】
これらの形態としては、液状(印刷用にインク化されたもの)やシート状(あらかじめフィルム化されたもの)等があり、用途に応じて適宜形態が選択される。
【0010】
こういった電子材料周辺部材への高い要求に応えるため、様々なポリイミド樹脂の検討が行われている。
【0011】
一方、高周波数領域化により銅箔は低粗化や、高多層化による密着性の需要増加のため、接着力の更なる改善が市場から強く求められており、近年接着力が高く耐熱性および誘電特性も良好なポリイミド樹脂の開発が行われてきた。
【0012】
例えば、特許文献1にはダイマージアミン骨格を含有する末端マレイミド樹脂により誘電特性が向上することが開示されている。
しかしながら、特許文献1記載の発明においても誘電特性の向上は不十分であり、加えてビスマレイミドが熱ラジカル架橋により剛直なネットワークを構築するため、樹脂塗膜の柔軟性を低下させ十分な接着力が出せない課題があった。
【0013】
また、特許文献2にはシトラコンイミドとエポキシ樹脂の組み合わせで接着力が高く、誘電特性が良好な組成物が開示されている。
しかし、特許文献2に記載の発明では接着力が高いものの、エポキシ樹脂による誘電特性の悪化が起こるため電子基板用としては十分な性能とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2020―196789号公報
【特許文献2】特開2022―147022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、従来よりも接着力と耐熱性が高く、かつ誘電特性が良好な硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、ポリイミド樹脂(A)および硬化助剤(B)を含み、
ポリイミド樹脂(A)が、テトラカルボン酸二無水物(C)とダイマージアミンとの反 応物である末端にアミノ基を有するプレポリマーと、炭素-炭素不飽和結合を有する酸無水物(a)とのイミド化反応による反応生成物であって、
ポリイミド樹脂(A)が、無水マレイン酸(a1)に由来する残基および無水マレイン酸以外の炭素-炭素不飽和結合を有する酸無水物(a2)に由来する残基を含み、
(a2)の分子量が112~351であり、
ポリイミド樹脂(A)中の、(a1)に由来する残基と(a2)に由来する残基のモル比率が、100:10~100:500であることを特徴とする、硬化性樹脂組成物に関する。
【0017】
また本発明は、前記(a2)がシトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アリルこはく酸無水物および5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む前記硬化性樹脂組成物に関する。
【0018】
また本発明は、テトラカルボン酸二無水物(C)が、フッ素又は、脂環構造を有する前記硬化性樹脂組成物に関する。
【0019】
また本発明は、前記ポリイミド樹脂(A)の重量平均分子量が、5,000~150,000である前記硬化性樹脂組成物に関する。
【0020】
また本発明は、さらに架橋剤、硬化促進剤および酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む前記硬化性樹脂組成物に関する。
【0021】
また本発明は、さらにフィラーを含有する前記硬化性樹脂組成物に関する。
【0022】
また本発明は、基材と樹脂組成物層を有する積層シートであって、樹脂組成物層が前記硬化性樹脂組成物から形成される、積層シートに関する。
【0023】
また本発明は、前記硬化性樹脂組成物を含浸させたプリプレグに関する。
【0024】
また本発明は、基板上に、前記硬化性樹脂組成物の硬化物を有する、硬化物付基板に関する。
【0025】
また本発明は、前記硬化物付基板を搭載した電子機器に関する。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、従来よりも高い接着力と誘電特性を両立可能な硬化性樹脂組成物、それを用いた積層シート、プリプレグおよび硬化物付基板、ならびに該硬化物基板を搭載した電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の硬化性樹脂組成物、それを用いた積層シート、プリプレグおよび硬化物付基板、ならびに該硬化物基板を搭載した電子機器について説明するが、これに限定されない。
なお、本明細書では、(メタ)アクリロキシ基とは、アクリロキシ基およびメタクリロキシ基を含み、(メタ)アクリルアミドとは、アクリルアミドおよびメタクリルアミドを含み、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートを含む。
本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。
本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
また、重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量である。重量平均分子量は、[実施例]の項に記載の方法にて測定することができる。
【0028】
≪硬化性樹脂組成物≫
本発明の硬化性樹脂組成物は、ポリイミド樹脂(A)および硬化助剤(B)を含む。なお、当該樹脂組成物は、塗膜などに成型後、熱硬化させる。熱硬化性樹脂組成物は、ポリイミド樹脂(A)を含んでなるA材と、硬化助剤(B)とを含んでなるB材とを、セットで用意し、使用前にこれらを配合する使用形態がある。
【0029】
<ポリイミド樹脂(A)>
本発明で用いるポリイミド樹脂(A)は、末端にアミノ基を有するプレポリマーと、炭素-炭素不飽和結合を有する酸無水物(a)とのイミド化反応による反応生成物であって、無水マレイン酸(a1)に由来する残基および無水マレイン酸以外の炭素-炭素不飽和結合を有する酸無水物(a2)に由来する残基を含む。また、末端にアミノ基を有するプレポリマーは、テトラカルボン酸二無水物(C)とダイマージアミンとの反応物である。
【0030】
本発明において、(A)中の、(a1)に由来する残基と(a2)に由来する残基のモル比率は100:10~100:500であり、100:20~100:400の範囲が接着力と誘電特性の観点から好ましい。
【0031】
前記(A)中の、(a1)に由来する残基と(a2)に由来する残基のモル比率は仕込み時の(a1)と(a2)の量に基づき算出する方法と、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて明らかにした化学構造から算出する方法がある。 核磁気共鳴分光法(NMR)の測定方法は、核磁気共鳴分光法(NMR)(RUFUTO社製「パルスNMR方式粒子界面特性評価装置Acorn Area」)を用いて行う。
いずれかの方法で算出したモル比率が、前記範囲内であれば良い。
【0032】
ポリイミド樹脂(A)は両末端が(a1)の樹脂と両末端が(a2)の樹脂を配合しても良く、末端に(a1)と(a2)をそれぞれ持つ樹脂であっても良い。またこれらが混在しても良い。
【0033】
ポリイミド樹脂(A)の重量平均分子量は、2,000~150,000であることが好ましく、更に好ましくは5,000~100,000である。上記範囲内にあることで基材への濡れ性が向上し、高い接着力を発現することができる。
【0034】
イミド化反応は、例えば10~80℃程度の比較的低温でアミンと酸無水物を反応させてポリアミック酸とし、ついで前記ポリアミック酸を熱イミド化又は化学イミド化して得ることができる。あるいは、ポリアミック酸とする工程を省略して、有機溶媒中例えば130℃~250℃程度の比較的高温で重合かつイミド化する一段反応によって得ることもできる。
【0035】
熱イミド化は例えば140℃~200℃程度の温度で行う事ができ、化学イミド化する方法は、例えば、ピリジンやトリエチルアミンなどの有機塩基と、無水酢酸などの存在下で行うことができる。このときの温度としては-20~200℃の任意の温度を選択することができる。
【0036】
<炭素-炭素不飽和結合を有する酸無水物(a)>
炭素-炭素不飽和結合を有する酸無水物(a)は、無水マレイン酸(a1)と無水マレイン酸以外の炭素-炭素不飽和結合を有する酸無水物(a2)に分類される。(a2)の分子量は112~351であり、112~200が好ましい。この範囲にあることでポリイミド樹脂に対する相溶性と反応時の揮発性に優れる。
【0037】
(a2)としては、例えば、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、アリルこはく酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、2-ブテン-1-イルこはく酸無水物、1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、3-メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、(2-メチル-2-プロペニル)こはく酸無水物、4,9-デカジエン-1,2-ジカルボン酸無水物、2,3-ジメチルマレイン酸無水物等が挙げられるが、これらに限定されない。
中でも、接着力向上の点でシトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、アリルこはく酸無水物が好ましく、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物がより好ましい。
(a2)は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。
【0038】
<末端にアミノ基を有するプレポリマー>
末端にアミノ基を有するプレポリマーは、テトラカルボン酸二無水物(C)とダイマージアミンとの反応物である。
【0039】
[テトラカルボン酸二無水物(C)]
本発明に用いられるテトラカルボン酸二無水物(C)として、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-[プロパン-2,2-ジイルビス(1,4-フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物、2,2-ビス(3,3’,4,4’-テトラカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)スルホン二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸無水物、9,9’-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸二無水物、9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フルオレン酸二無水物、1’,2’-二無水物;4,4’-[4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノキシ]ジフタル酸二無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸2、3:5,6-二無水物、ジシクロヘキシル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、7-メチル-4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、7-ターシャリブチル-4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、7-ターシャリブトキシ-4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物等が例示される。
テトラカルボン酸二無水物(C)は、上記に限定されるものではなく、単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
テトラカルボン酸二無水物(C)は、硬化助剤(B)との相溶性、接着性、及び誘電特性に優れることから、フッ素又は脂環構造を含有することが好ましい。具体的には、2,2-ビス(3,3’,4,4’-テトラカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、9,9-ビス(トリフルオロメチル)-9H-キサンテン2,3,6,7-テトラカルボン酸2,3:6,7-二無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、7-メチル-4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、7-ターシャリブチル-4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、7-ターシャリブトキシ-4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物等が挙げられる。その中でも2,2-ビス(3,3’,4,4’-テトラカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物が接着力向上と誘電特性の点でより好ましい。
【0041】
[ダイマージアミン]
ダイマージアミンは、例えば、ダイマー酸のカルボキシ基をアミノ基に転化することにより得られる。
【0042】
ダイマー酸とは、不飽和脂肪族カルボン酸の二量体又はその水添物をいう。例えば、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、菜種油脂肪酸等の天然の脂肪酸、或いはリノレン酸、リノール酸、オレイン酸、エルカ酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、エライジン酸、ステアロール酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、ブラシジン酸、ネルボン酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサトリエン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、セトレイン酸、アドレン酸、ボセオペンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸およびニシン酸等の不飽和脂肪酸を二量化してダイマー酸を得ることができる。不飽和結合を必要に応じて水添し、不飽和度を低下させてもよい。不飽和度を下げたダイマージアミンおよびダイマージイソシアネートは、耐酸化性(特に高温域における着色)や合成時のゲル化抑制の点で好適である。
【0043】
ダイマー酸は、炭素数20~60の化合物が好ましく、炭素数24~56の化合物がより好ましく、炭素数28~48の化合物が更に好ましく、炭素数36~44の化合物が更に好ましい。脂肪酸をディールス・アルダー反応させた分岐構造を有するジカルボン酸化合物が好ましい。前記分岐構造は、脂肪鎖および環構造が好ましく、環構造がより好ましい。前記環構造は、1又は2以上の芳香環および/又は脂環構造が好ましく、脂環構造がより好ましい。環構造が2つの場合、2つの環が独立していても、連続していてもよい。ダイマージアミンは一種又は複数種の化合物を用いることができる。脂環構造は、環内に二重結合を1つ又は複数有する場合、二重結合を有さない場合などがある。ダイマー酸のカルボキシ基をアミノ基に転化する方法は、例えば、カルボン酸をアミド化させ、ホフマン転位によりアミン化させ、更に蒸留・精製を行う方法が挙げられる。また、ダイマー酸のカルボキシ基をジイソシアネート基に転化する方法は、例えば、カルボン酸からクルチウス転移によりイソシアネート化させる方法が挙げられる。
【0044】
ダイマージアミン中のアミノ基は、環構造に直接結合していてもよいが、溶解性向上、柔軟性向上の観点から、当該アミノ基は脂肪族鎖を介して環構造と結合していることが好ましい。アミノ基環構造との間の炭素数は2~25であることが好ましい。脂肪族鎖の好適例として、アルキレン基等の鎖状炭化水素基が例示できる。好適な例として、当該2つのアミノ基がアルキレン基を介して環構造と結合している化合物が例示できる。
【0045】
ダイマージアミンを得るためのダイマー酸(多塩基酸)の具体例として、下記化学式(d1)~(d4)が挙げられる。これらは一例であり、ダイマー酸は下記構造に限定されない。
【0046】
【0047】
ダイマージアミンは、炭素数20~60の化合物が好ましく、炭素数24~56の化合物がより好ましく、炭素数28~48の化合物が更に好ましく、炭素数36~44の化合物が更に好ましい。かかる炭素数は、入手し易さの観点で好ましい。
【0048】
ダイマージアミンの市販品は、例えば、クローダジャパン社製の「プリアミン1071」、「プリアミン1073」、「プリアミン1074」、「プリアミン1075」およびBASFジャパン社製の「バーサミン551」等が挙げられる。
【0049】
(末端にアミノ基を有するプレポリマーの製造方法)
テトラカルボン酸二無水物(C)とジアミンとの反応は、非プロトン性極性溶媒中で公知の方法で行うことができる。非プロトン性極性溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、メチルジグライム、シクロヘキサノン、1,4-ジオキサンなどが例示できる。非プロトン性極性溶媒は、一種類のみ用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。この時、上記非プロトン性極性溶媒と相溶性がある非極性溶媒を混合して使用しても問題なく、例えばトルエン、キシレン、メシチレン、ソルベントナフサなどの芳香族炭化水素が良く使用される。混合溶媒における非極性溶媒の割合は、30質量%以下であることが好ましい。これは非極性溶媒が30質量%以上では溶媒の溶解力が向上しポリアミック酸が析出しにくくなるためである。テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分との反応は、良く乾燥したジアミン成分を脱水精製した前述反応溶媒に溶解し、これに良く乾燥したテトラカルボン酸二無水物を添加して反応を進める方法が好ましい。
【0050】
前記テトラカルボン酸二無水物(C)とジアミンとの反応は、ランダム反応及びブロック反応のいずれでも構わない。反応物は、例えば、ジアミン成分毎別々に反応したホモ反応物を混合しても構わないし、場合により反応物をさらに再結合反応させても構わない。例えば、予めテトラカルボン酸二無水物過剰で調製した末端に酸基を有するオリゴマーとジアミン過剰で調整した末端にアミノ基を有するオリゴマーを混合して更に反応しても構わない。
【0051】
<その他ポリイミド樹脂>
ダイマージアミン以外のジアミン化合物を用いたその他ポリイミド樹脂を含んでも良い。
その他ポリイミド樹脂は、ダイマージアミンをジアミン化合物に変える以外は前記ポリイミド樹脂(A)と同様にして得ることができる。その他ポリイミド樹脂を含むことで、耐熱性が向上する。
【0052】
(ジアミン化合物)
ダイマージアミン以外のジアミン化合物には、以下に例示される脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン等を併用しても良い。特に、耐熱性の観点から芳香族ジアミンやフェノール骨格含有ジアミンが好ましい。
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【化5】
併用できるジアミンは上記に限定されるものではなく、2種以上を併用しても良い。
【0057】
<硬化助剤(B)>
硬化助剤(B)とは、ラジカルを発生する化合物であって、ラジカル重合開始剤が例示できる。
【0058】
ラジカル重合開始剤は公知の化合物を用いることができる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の過酸化物が例示できる。また、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタンもラジカル重合開始剤として好適である。
【0059】
硬化助剤の配合量は、ポリイミド樹脂(A)100質量部に対し、0.01~10質量部の範囲、好ましくは、0.1~8質量部の範囲である。この範囲であれば、良好に反応が進行し、高い接着力を発現できる。
【0060】
本発明の硬化性樹脂組成物はポリイミド樹脂(A)および硬化助剤(B)に加えて、さらに架橋剤、硬化促進剤および酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0061】
<架橋剤>
本発明の硬化性樹脂組成物は、ポリイミド(A)との架橋や相分離構造を形成して耐熱性と接着性を向上させるために、更に架橋剤を含有することができる。架橋剤としてはエポキシ化合物、シアネート化合物、マレイミド化合物、アリル基含有化合物、ビニル基含有化合物、(メタ)アクリロイル基含有化合物、金属キレート化合物、カルボジイミド化合物等が挙げられる。特に接着力の観点からエポキシ化合物、金属キレート化合物、カルボジイミド化合物が好ましく、配合量は、ポリイミド樹脂(A)100質量部に対し、0.01~80質量部、好ましくは、0.1~30質量部である。この範囲であれば高い接着力を発現できる。
【0062】
(エポキシ化合物)
エポキシ化合物は、エポキシ基を有する硬化性化合物をいう。エポキシ化合物は、活性エステル化合物を併用して用いることが好ましい。活性エステル化合物とは、エポキシ基と反応するエステル基を1分子中に1個以上有し、エポキシ樹脂を硬化せしめる化合物をいう。活性エステル化合物の市販品として、DIC社製「HPC-8000-65T」、「EXB9416-70BK」および「EXB8100-65T」等が例示できる。
【0063】
活性エステル化合物を用いることにより、エポキシ化合物と活性エステル化合物との反応によりエステル基が生じる。このため、フェノール系硬化剤を用いる場合に比べて極性を低くできる。その結果、ポリイミド樹脂(A)のダイマー構造とエポキシ化合物の相溶性を効果的に高めることができる。
【0064】
エポキシ化合物の具体例として、グリジシルエーテル型エポキシ樹脂;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、トリグリシジルメタアミノフェノール、又はテトラグリシジルメタキシリレンジアミン、ソルビトールポリグリシジルエーテル等のグリジシルアミン型エポキシ樹脂;ジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、又はジグリシジルテトラヒドロフタレート等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂、;エポキシシクロヘキシルメチル-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、又はビス(エポキシシクロヘキシル)アジペートなどの環状脂肪族(脂環型)エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂が例示できる。また、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂が例示できる。
【0065】
(シアネート化合物)
シアネート化合物は、シアネート基を有する硬化性樹脂をいう。シアネート化合物として、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールA型シアン酸エステル、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールS型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールスルフィド型シアネートエステル樹脂、フェニレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ナフチレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ビフェニル型シアネートエステル樹脂、テトラメチルビフェニル型シアネートエステル樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型シアネートエステル樹脂、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、クレゾールノボラック型シアネートエステル樹脂、トリフェニルメタン型シアネートエステル樹脂、テトラフェニルエタン型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型シアネートエステル樹脂、フェノールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトールノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型シアネートエステル樹脂、ビフェニル変性ノボラック型シアネートエステル樹脂、アントラセン型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
【0066】
シアネート化合物の市販品、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製「PT-30」および「PT-60」)、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂が三量化されたプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA-230S」、「BA-3000S」、「BTP-1000S」および「BTP-6020S」)等を用いてもよい。
【0067】
(マレイミド化合物)
マレイミド化合物はマレイミド基を有する硬化性樹脂をいう。マレイミド化合物の種類は特に限定されない。長期耐熱性の観点から平均マレイミド基数が1.5~4であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。
【0068】
マレイミド化合物の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、乾燥時の揮発抑制の観点から100以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましい。Mwの上限値は特に限定されないが、入手容易性等を考慮すると8000以下、より好ましくは5000以下である。
【0069】
マレイミド化合物は、多官能アミンと無水マレイン酸を反応させて得られる多官能マレイミドを挙げることができる。多官能アミンとしては、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン、ハンツマン・コーポレーション社製の、末端アミノ化ポリプロピレングリコール骨格を有するジェファーミンD-230、HK-511、D-400、XTJ-582、D-2000、XTJ-578、XTJ-509、XTJ-510、T-403、T-5000、末端アミノ化エチレングリコール骨格を有するXTJ-500、XTJ-501、XTJ-502、XTJ-504、XTJ-511、XTJ-512、XTJ-590末端アミノ化ポリテトラメチレングリコール骨格を有するXTJ-542、XTJ-533、XTJ-536、XTJ-548、XTJ-559などが挙げられる。
【0070】
マレイミド化合物として、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、p-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、N,N’-エチレンジマレイミド、N,N’-ヘキサメチレンジマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド等の分子内に2つのマレイミド基を有する樹脂、ビフェニルアラルキル型マレイミド、ポリフェニルメタンマレイミド(CASNO:67784-74-1、ホルムアルデヒドとアニリンからなるポリマーと無水マレイン酸の反応物)、N,N’-(トルエン-2,6-ジイル)ビスマレイミド)、4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、N,N’-エチレンビスマレイミド、N,N’-トリメチレンビスマレイミド、N,N’-プロピレンビスマレイミド、N,N’-テトラメチレンビスマレイミド、N,N’-ペンタメチレンビスマレイミド、N,N’-(1,3-ペンタンジイル)ビス(マレインイミド)、N,N’-ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’-(1,7-ヘプタンジイル)ビスマレイミド、N,N’-(1,8-オクタンジイル)ビスマレイミド、N,N’-(1,9-ノタンジイル)ビスマレイミド、N,N’-(1,10-デカンジイル)ビスマレイミド、N,N’-(1,11-ウンデカンジイル)ビスマレイミド、N,N’-(1,12-ドデカンジイル)ビスマレイミド、N,N’-[(1,4-フェニレン)ビスメチレン]ビスマレイミド、N,N’-[(1,2-フェニレン)ビスメチレン]ビスマレイミド、N,N’-[(1,3-フェニレン)ビスメチレン]ビスマレイミド、1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、N,N’ -[(メチルイミノ)ビス(4,1‐フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’ -(2-ヒドロキシプロパン-1,3-ジイルビスイミノビスカルボニルビスエチレン)ビスマレイミド、N,N’ -(ジチオビスエチレン)ビスマレイミド、N,N’ -[ヘキサメチレンビス(イミノカルボニルメチレン)]ビスマレイミド、N,N’ -カルボニルビス(1,4-フェニレン)ビスマレイミド、N,N’,N’’ -[ニトリロトリス(エチレン)]トリスマレイミド、N,N’,N’’-[ニトリロトリス(4,1-フェニレン)]トリスマレイミド、N,N’ -[p-フェニレンビス(オキシ-p-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’ -[メチレンビス(オキシ)ビス(2-メチル-1,4-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[メチレンビス(オキシ-p-フェニレン)]ビス(マレインイミド)N,N’‐[ジメチルシリレンビス[(4,1-フェニレン)(1,3,4,-オキサジアゾール-5,2-ジイル)(4,1-フェニレン)]]ビスマレイミド、N,N’-[(1,3-フェニレン)ビスオキシビス(3,1-フェニレン)]ビスマレイミド、1,1’-[3’-オキソスピロ[9H-キサンテン-9,1’(3’H)-イソベンゾフラン]-3,6-ジイル]ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)、N,N’-(3,3’-ジクロロビフェニル-4,4’-ジイル)ビスマレイミド、N,N’-(3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイル)ビスマレイミド、N,N’-(3,3’-ジメトキシビフェニル-4,4’-ジイル)ビスマレイミド、N,N’-[メチレンビス(2-エチル-4,1-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[メチレンビス(2,6-ジエチル-4,1-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[メチレンビス(2-ブロモ-6-エチル-4,1-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[メチレンビス(2-メチル-4,1-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[エチレンビス(オキシエチレン)]ビスマレイミド、N,N’-[スルホニルビス(4,1-フェニレン)ビス(オキシ)ビス(4,1-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[ナフタレン-2,7-ジイルビス(オキシ)ビス(4,1-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[p-フェニレンビス(オキシ-p-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[(1,3-フェニレン)ビスオキシビス(3,1-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-(3,6,9-トリオキサウンデカン-1,11-ジイル)ビスマレイミド、N,N’-[イソプロピリデンビス[p-フェニレンオキシカルボニル(m-フェニレン)]]ビスマレイミド、N,N’-[イソプロピリデンビス[p-フェニレンオキシカルボニル(p-フェニレン)]]ビスマレイミド、N,N’-[イソプロピリデンビス[(2,6-ジクロロベンゼン-4,1-ジイル)オキシカルボニル(p-フェニレン)]]ビスマレイミド、N,N’-[(フェニルイミノ)ビス(4,1-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[アゾビス(4,1-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[1,3,4-オキサジアゾール-2,5-ジイルビス(4,1-フェニレン)]ビスマレイミド、2,6-ビス[4-(マレインイミド-N-イル)フェノキシ]ベンゾニトリル、N,N’-[1,3,4-オキサジアゾール-2,5-ジイルビス(3,1-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[ビス[9-オキソ-9H-9-ホスファ(V)-10-オキサフェナントレン-9-イル]メチレンビス(p-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[ヘキサフルオロイソプロピリデンビス[p-フェニレンオキシカルボニル(m-フェニレン)]]ビスマレイミド、N,N’-[カルボニルビス[(4,1-フェニレン)チオ(4,1-フェニレン)]]ビスマレイミド、N,N’-カルボニルビス(p-フェニレンオキシp-フェニレン)ビスマレイミド、N,N’-[5-tert-ブチル-1,3-フェニレンビス[(1,3,4-オキサジアゾール-5,2-ジイル)(4,1-フェニレン)]]ビスマレイミド、N,N’-[シクロヘキシリデンビス(4,1-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[メチレンビス(オキシ)ビス(2-メチル-1,4-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[5-[2-[5-(ジメチルアミノ)-1-ナフチルスルホニルアミノ]エチルカルバモイル]-1,3-フェニレン]ビスマレイミド、N,N’-(オキシビスエチレン)ビスマレイミド、N,N’-[ジチオビス(m-フェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-(3,6,9-トリオキサウンデカン-1,11-ジイル)ビスマレイミド、N,N’-(エチレンビス-p-フェニレン)ビスマレイミド、DesignerMolecules社製のBMI-689、BMI-1500、BMI-1700、BMI-3000、BMI-5000、BMI-9000、JFEケミカル社製のODA-BMI、BAFBMIなどの多官能マレイミドを挙げることができる。
【0071】
マレイミド化合物をラジカルにより架橋させる場合には、ラジカル重合開始剤を添加ができる。具体的にはアゾ系化合物、有機過酸化物が例示できる。重合開始剤は一種もしくは二種以上を組み合わせて用いられる。
アゾ系化合物としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]が例示できる。
有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシドが例示できる。
【0072】
(アリル基含有化合物)
アリル基含有化合物は、単官能、多官能のいずれでもよい。単官能アリル化合物として(メタ)アリルアルコールが例示できる。多官能アリル化合物としては、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、ポリアリルサッカロース、ジ(メタ)アリルフタレート、トリ(メタ)アリルイソシアヌレート、トリ(メタ)アリルシアヌレートが例示できる。また、以下の化合物が挙げられる。
【化6】
【0073】
(ビニル基含有化合物)
ビニル基含有化合物は、単官能でも多官能でもよい。単官能ビニル化合物として、スチレン、ビニルトルエン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾール、ビニルピリジンが例示できる。多官能ビニル化合物として、ヘキサンジオールジノルボルネンカルボキシレート、ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル、ペンタエリスリトールテトラノルボルネンカルボキシレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル等のビニルエーテル、ジビニルベンゼンが例示できる。これらのうちでも、ビニル基含有ポリフェニレンエーテルが特に好ましい。
【0074】
((メタ)アクリロキシ基含有化合物)
(メタ)アクリロキシ基含有化合物は、単官能でも多官能でもよい。例えば、単官能(メタ)アクリルアミド化合物、多官能(メタ)アクリルアミド化合物、単官能(メタ)アクリレート化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0075】
単官能(メタ)アクリルアミド化合物として、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、t-オクチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミドが例示できる。
多官能(メタ)アクリルアミド化合物として、N,N’-ジアクリロイル-4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン、N,N’,N’’-トリアクリロイルジエチレントリアミン、N,N’,N’’,N’’’-テトラアクリロイルトリエチレンテトラミン、N,N’-{[2-アクリルアミド-2-[(3-アクリルアミドプロポキシ)メチル]プロパン-1,3-ジイル)ビス(オキシ)]ビス(プロパン-1,3-ジイル)}ジアクリルアミドが例示できる。
【0076】
単官能(メタ)アクリレート化合物として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、p-クミルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、ノニルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルアルコールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(2-エチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-イソブチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(1,4-ジオキサスピロ[4,5]デカン-2-イル)メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、アリル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタルイミド、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、2-(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェートが例示できる。
前記アルキレンオキサイド付加物において、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドが例示できる。
【0077】
多官能(メタ)アクリレート化合物として、メタクリレート基含有ポリフェニレンエーテル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレートおよび1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族ジオールのジ(メタ)アクリレート;
シクロヘキサンジメチロールジ(メタ)アクリレートおよびトリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等の脂環族ジオールのジ(メタ)アクリレート;
ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;
ネオペンチルグリコールとヒドロキシピバリン酸と(メタ)アクリル酸のエステル化反応生成物(以下、「ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート」という。)、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート;
ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール系化合物のアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート;
水素添加ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート等の水素添加ビスフェノール系化合物のジ(メタ)アクリレート;
イソシアヌル酸アルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性イソシアヌル酸アルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性イソシアヌル酸アルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート等のイソシアヌル酸アルキレンオキサイド付加物のポリ(メタ)アクリレート;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート;
トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールアルキレンオキサイド付加物のトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールアルキレンオキサイド付加物のペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールアルキレンオキサイド付加物のポリ(メタ)アクリレート:
ウレタン(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート;並びに
ポリエステル(メタ)アクリレートが例示できる。
前記アルキレンオキサイド付加物において、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドが例示できる。
【0078】
(金属キレート化合物)
金属キレート化合物は、金属と有機物からなる有機金属化合物であり、ポリイミド樹脂(A)の反応性官能基と反応して架橋を形成するものである。有機金属化合物の種類は特に限定されないが、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物などが挙げられる。また、金属と有機物の結合は金属-酸素結合でもよく、金属-炭素結合に限定されるものではない。加えて、金属と有機物の結合様式は化学結合、配位結合、イオン結合のいずれであってもよい。更に3官能以上であることが耐熱性の観点から好ましい。
【0079】
前記有機アルミニウム化合物はアルミニウム金属キレート化合物が好ましい。アルミニウム金属キレート化合物は、例えば、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムジ-n-ブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウムジイソブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウムジ-sec-ブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウムイソプロピレート、モノsec-ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウム-sec-ブチレート、アルミニウムエチレート等が挙げられる。
【0080】
前記有機チタン化合物はチタン金属キレート化合物が好ましい。チタン金属キレート化合物は、例えば、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタン-1.3-プロパンジオキシビス(エチルアセトアセテート)、ポリチタンアセチルアセチルアセトナート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、ダーシャリーアミルチタネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テトラステアリルチタネート、チタンイソステアレート、トリ-n-ブトキシチタンモノステアレート、ジ-i-プロポキシチタンジステアレート、チタニウムステアレート、ジ-i-プロポキシチタンジイソステアレート、(2-n-ブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタン等が挙げられる。
有機ジルコニウム化合物はジルコニウム金属キレート化合物が好ましい。ジルコニウム金属キレート化合物は、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート、ステアリン酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物が熱硬化反応性の点から好ましい。
【0081】
(カルボジイミド基含有化合物)
カルボジイミド基含有化合物としては分子内にカルボジイミド基を有するものであれば、特に限定されない。カルボジイミド基含有化合物としては、例えば、カルボジライトV-01、V-03、V-05、V-07、V-09(日清紡ケミカル株式会社)、環状カルボジイミド(帝人株式会社)などが挙げられる。耐熱性の観点から1分子中に平均3個以上のカルボジイミド基を有するものが好ましい。
【0082】
また架橋剤は上記に限定されるものではなく、他にもフェノール樹脂、イソシアネート基含有化合物を用いてもよく、2種以上を併用しても良い。
【0083】
架橋剤の含有率は、ポリイミド樹脂(A)の不揮発分100質量%に対して0.1~20質量%が好ましい。これにより接着力、耐熱性がより向上する。
【0084】
<酸化防止剤>
本発明の硬化性樹脂組成物は、酸化防止剤を含有できる。酸化防止剤は熱硬化時の酸化による黄変を防ぎ、被膜の誘電特性の悪化を抑制できる。
【0085】
酸化防止剤は、ラジカル補足機能、又は過酸化物分解機能を有する化合物である。酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物、硫黄系化合物、ヒドロキシルアミン系化合物の化合物等が挙げられる。なお、酸化防止剤は、ハロゲン原子を含有しない化合物が好ましい。
【0086】
ヒンダードフェノール系化合物は、例えば、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,1,3-トリス-(2’-メチル-4’-ヒドロキシ-5’-t-ブチルフェニル)-ブタン、4,4’-ブチリデン-ビス-(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)、3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9-ビス[2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5 -メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニルメチル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリス(3-ヒドロキシ-4-t-ブチル-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,2’-メチレンビス(6-t-ブチル-4-エチルフェノール)、2,2’チオジエチルビス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、N,N-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナムアミド)、i-オクチル3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸モノエチルエステルのカルシウム塩、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、ビス[3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)プロピオン酸]エチレンビスオキシビスエチレン、
1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニ
ル)プロピオネート、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3
,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、2,2’-チオ-ビス-(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)、2,5-ジ-t-アミル-ヒドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-4-ノニルフェノール、2,2’-イソブチリデン-ビス-(4,6-ジメチル-フェノール)、2,2’-メチレン-ビス-(6-(1-メチル-シクロヘキシル)-p-クレゾール)、2,4-ジメチル-6-(1-メチル-シクロヘキシル)-フェノール等が挙げられる。
【0087】
市販品は、ADEKA社製アデカスタブAO-20、AO-30、AO-40,AO-50、AO-60、AO-80、AO-330、ケミプロ社製KEMINOX101、179、76、9425、BASF社製IRGANOX1010、1035、1076、1098、1135、1330、1726、1425WL、1520L、245、259、3114、5057、565、サンケミカル社製サイアノックスCY-1790、CY-2777等が挙げられる。
【0088】
ヒンダードアミン系化合物は、例えば、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-ウンデカノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カルボネート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、コハク酸ジメチルと1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンとの重縮合物、ポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-s-トリアジン-2,4-ジイル]-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]-ヘキサメチレン-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]]、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールと3,5,5-トリメチルヘキサン酸のエステル、N,N’-4,7-テトラキス〔4,6-ビス{N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ}-1,3,5-トリアジン-2-イル〕-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル,1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピリペリジル)[[3,5-ビス(1,1ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネートメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピリペリジルセバケート、ポリ[[6-モルホリノ-s-トリアジン-2,4-ジイル]-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]-ヘキサメチレン-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]]、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-C12-21およびC18不飽和脂肪酸エステル、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,6-ヘキサメチレンジアミン、2-メチル-2-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)プロピオンアミド等が挙げられる。
【0089】
市販品は、ADEKA社製アデカスタブLA-52、LA-57、LA-63P、LA-68、LA-72、LA-77Y、LA-77G、LA-81、LA-82、LA-87、LA-402F、LA-502XP、ケミプロ化成社製KAMISTAB29、62、77、94、BASF製Tinuvin249、TINUVIN111FDL、123、144、292、5100、サンケミカル社製サイアソーブUV-3346、UV-3529、UV-3853等が挙げられる。
【0090】
リン系化合物は、例えば、ジ(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)2-エチルヘキシルフォスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、テトラ(C12~C15アルキル)-4,4’-イソプロピリデンジフェニルジフォスファイト、ジフェニルモノ(2-エチルヘキシル)フォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト、トリス(イソデシル)フォスファイト、トリフェニルフォスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4-ビフェニルジフォスホニト、トリス(トリデシル)フォスファイト、フェニルイソオクチルフォスファイト、フェニルイソデシルフォスファイト、フェニルジ(トリデシル)フォスファイト、ジフェニルイソオクチルフォスファイト、ジフェニルトリデシルフォスファイト、4,4’イソプロピリデンジフェノールアルキルフォスファイト、トリスノニルフェニルフォスファイト、トリスジノニルフェニルフォスファイト、トリス(ビフェニル)フォスファイト、ジ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジフォスファイト、テトラトリデシル4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)ジフォスファイト、ヘキサトリデシル1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタントリフォスファイト、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルフォスファイトジエチルエステル、ソジウムビス(4-t-ブチルフェニル)フォスファイト、ソジウム-2,2-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)-フォスファイト、1,3-ビス(ジフェノキシフォスフォニロキシ)-ベンゼン、亜リン酸エチルビス(2,4-ジtert-ブチル-6-メチルフェニル)等が挙げられる。
【0091】
市販品は、ADEKA社製アデカスタブPEP-36、PEP-8、HP-10、2112、1178、1500、C、135A、3010、TPP、BASF製IRGAFOS168、クラリアントケミカルズ社製HostanoxP-EPQ等が挙げられる。
【0092】
硫黄系化合物は、例えば、2,2-ビス{〔3-(ドデシルチオ)-1-オキソプロポキシ〕メチル}プロパン-1,3-ジイルビス〔3-(ドデシルチオ)プロピオネート〕、3,3’-チオビスプロピオン酸ジトリデシル、2,2-チオ-ジエチレンビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4-ビス〔(オクチルチオ)メチル〕-o-クレゾール、2,4-ビス〔(ラウリルチオ)メチル〕-o-クレゾール等が挙げられる。
【0093】
市販品は、ADEKA社製アデカスタブAO-412S、AO-503、ケミプロ化成社製KEMINOXPLS等が挙げられる。
【0094】
酸化防止剤は、単独または2種類以上を混合して使用できる。
【0095】
酸化防止剤の含有率は、ポリイミド樹脂(A)の不揮発分100質量%に対して、0.1~1質量%が好ましい。これにより接着力、誘電率、誘電正接がより向上する。
【0096】
<硬化促進剤>
本発明の硬化性樹脂組成物は、効率的に硬化処理を促進する目的で、硬化促進剤を含有することができる。硬化促進剤の添加により硬化温度が低下し、樹脂の酸化劣化を防止することで誘電特性が向上する。硬化促進剤の好適例として、イミダゾール系触媒、アミン系触媒およびリン系触媒が例示できる。
【0097】
硬化促進剤は、アミン系触媒が好ましい。例えば、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N-メチルモルフォリン、N-エチルモルフォリン、N-ジメチルベンジルアミン等の非反応型モノアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビスジメチルアミノエチルエーテル、テトラメチルプロパンジアミン、ジメチルアミノエチルモルフォリン、テトラメチルエチレンジアミン、ジアザビシクロウンデセン、2-メチル-1,4-ジアゾ[2.2.2]ビシクロオクタン等の非反応型ジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン等の非反応型トリアミン、ジメチルエタノールアミン、N-トリオキシエチレン-N,N-ジメチルアミン、N,N-ジメチル-N-ヘキサノールアミン等の反応型アミン、等が挙げられる。これらの化合物は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
硬化促進剤の含有率はポリイミド樹脂(A)の不揮発分100質量%に対して0.1~5質量%が好ましい。0.1~1質量%が特に好ましい。上記範囲内にあることで誘電特性と接着力が最も向上する。
【0099】
<フィラー>
本発明の硬化性樹脂組成物はさらにフィラーを含有することが好ましい。フィラーを含有することで誘電特性を良化することができる。フィラーは無機フィラー、有機フィラーのいずれであっても良く、無機フィラーがより好ましい。
【0100】
フィラーの含有率は用途に応じて適宜調整すればよく、通常は、硬化性樹脂組成物の不揮発分100質量%に対して5~95質量%である。フィラー形状は特に限定されない。例えば、球状、粉状、繊維状、針状、鱗片状等が挙げられる。粒子サイズや形状が異なる複数種のフィラーを用いることにより、フィラーを高充填できる場合がある。フィラーは一種単独又は二種以上を併用して用いられる。
【0101】
無機フィラーの具体例としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化ジルコニウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化アンチモン、酸化ニッケル、ケイ酸カルシウム、ベリリア、チタン酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、チタンホワイト、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウムなどの金属化合物;タルク;クレー;マイカ;ガラス繊維、カオリン、ハイドロタルサイト、ウォラストナイト、ゾノトライト、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、ガラスフレーク、水和ガラス、セピオライトなどの金属酸化物や金属窒化物;水和金属化合物;溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶性シリカ、非結晶性シリカ、2次凝集シリカ、微粉シリカ、中空シリカ、多孔質シリカなどのシリカ系;炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化チタン、ダイヤモンドなどの窒化系や炭素系フィラーが例示できる。
これらの中でもアルミナ、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素がより好ましく、中でも窒化ホウ素が誘電特性を効果的に良化させる観点から特に好ましい。
【0102】
また、上記に挙げた無機フィラーの表面を樹脂や分散剤でコーティングしたフィラーを使用しても良い。本発明において、表面コーティングした無機フィラーは、無機フィラーに分類する。無機フィラーの表面を樹脂や分散剤でコーティングする方法としては、公知の方法を適用できる。無機フィラーの表面は、例えば、シラン系、チタネート系およびアルミネート系カップリング剤などで表面処理を行うことができる。表面処理により、バインダー成分に帯する無機フィラーの分散性を高め、効率的に誘電特性を良化できることができる。また、バインダー成分とフィラーとの界面接着強度を高めることもできる。
【0103】
有機フィラーの具体例としては、フッ素フィラー:ポリテトラフルオロエチレン粉末やその変性物、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル粉末、テトラフルオロエチレン-エチレン粉末、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン粉末、テトラフルオロエチレン-フッ化ビニリデン粉末、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル粉末、ポリクロロトリフルオロエチレン粉末、クロロトリフルオロエチレン-エチレン粉末、クロロトリフルオロエチレン-フッ化ビニリデン粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末、ポリフッ化ビニル粉末が挙げられる。
また、ポリエチレン粉末、ポリアクリル酸エステル粉末、エポキシ樹脂粉末、ポリアミド粉末、ポリイミド粉末、ポリウレタン粉末、液晶ポリマービーズ、ポリシロキサン粉末等の他、シリコーン、アクリル、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム等を用いた多層構造のコアシェル等の高分子フィラー;リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸グアニジン、ポリリン酸グアニジン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸アミドアンモニウム、ポリリン酸アミドアンモニウム、リン酸カルバメート、ポリリン酸カルバメート等の(ポリ)リン酸塩系化合物、有機リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスホン酸化合物、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、メチルエチルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、エチルブチルホスフィン酸アルミニウム、メチルブチルホスフィン酸アルミニウム、ポリエチレンホスフィン酸アルミニウム等のホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、ホスホルアミド化合物等のリン系フィラー;ベンゾグアナミン、メラミン、メラム、メレム、メロン、メラミンシアヌレート、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、トリアゾール系化合物、テトラゾール化合物、ジアゾ化合物、尿素等の窒素系フィラー等が挙げられる。
【0104】
シランカップリング剤としては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン;p-スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン等が例示できる。
【0105】
チタネートカップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル・アミノエチル)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ジイソプロピルビス(ジオクチルホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート等が例示できる。
【0106】
また、無機フィラーの表面にフッ素系樹脂を被覆する態様も好適である。
【0107】
フィラーの添加方法は特に制限されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。好適例として、ポリイミド樹脂(A)の重合前又は途中に重合反応液に添加する方法、3本ロールなどを用いてポリイミド樹脂(A)にフィラーを混錬する方法、フィラーを含む分散液を用意しこれをポリイミド樹脂(A)に混合する方法などが挙げられる。また、フィラーを良好に分散させ、また分散状態を安定化させるために分散剤、増粘剤等を樹脂組成物の物性に影響を及ぼさない範囲で用いることもできる。
【0108】
<その他の添加剤>
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに、例えば、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、防黴剤、増粘剤、可塑剤、顔料、光開始剤等の添加剤を必要に応じて含有してもよい。また、無溶剤であっても溶剤を含んでいてもよい。
【0109】
溶剤としては、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N-メチル-ピロリドン、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2-プロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2- プロパノール、2-アセトキシ-1-メトキシプロパン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノンおよびこれらの混合物が例示できる。
【0110】
≪積層シートおよびプリプレグ≫
本発明の積層シートは、基材と、本発明の硬化性樹脂組成物から形成される樹脂組成物層を有する。
樹脂組成物層は、硬化処理後に優れた接着性を示すので、各種材料(樹脂層、金属層、ITO等の無機層、複合層など)との接合用途として好適である。例えば、銅張積層板(CCL:Copper Clad Laminate)の接着シート、電子回路基板と電子部品等との部品同士の接合材料に好適である。
【0111】
基材は、ポリイミドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネート、ポリエチレン、液晶ポリマー、フェノール樹脂、アラミド樹脂などの樹脂材料;銅、アルミニウム、ステンレス等の金属材料;ITO、ガラス、シリコン、シリコンカーバイト等の無機材料およびこれらを任意に組み合わせた複合材料が例示できる。また、樹脂材料の表面を易剥離処理した剥離性基材であっても良い。本硬化性樹脂組成物のポリイミド樹脂(A)を用いることにより各種基材への接着力と誘電特性、耐熱性に優れる。
【0112】
積層シートの製造方法は特に限定されないが、例えば、有機溶剤を含む本硬化性樹脂組成物の塗布液(ワニス)を、剥離性基材の片面に塗布し、有機溶剤等の液状媒体を加熱により除去・乾燥することで得られる。得られた接着シートの表面に別の剥離性基材を積層することにより、両面剥離性基材付き接着シートである積層シートが得られる。両面を剥離性基材で積層することにより、接着シートの表面汚染を予防することができる。剥離性基材を剥がすことによって、接着シートを単離することができる。2つの剥離性基材は、同種または異種のいずれも用いることができる。剥離性の異なる剥離性基材を用いることによって、剥離力に強弱をつけることができるので順番に剥がしやすくなる。また、剥離性基材以外の基材に塗布液を塗工して接着シート(樹脂組成物層)を有する積層シートを得てもよい。
【0113】
塗布方法としては、例えば、コンマコート、ナイフコート、ダイコート、リップコート、ロールコート、カーテンコート、バーコート、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、ディップコート、スプレーコート、スピンコート等、公知の方法を選択することができる。接着シートの乾燥後の厚みは十分な接着性を発揮させるため、また、取り扱い易さの点から、5~500μmであることが好ましく、10~100μmであることが更に好ましい。
【0114】
本硬化性樹脂組成物は、基材に本硬化性樹脂組成物を含浸させることにより得たプリプレグ形成用としても好適に用いることができる。プリプレグは、例えば、繊維基材に本硬化性樹脂組成物を含浸させ、続いて、樹脂組成物を加熱乾燥せしめて半硬化(Bステージ化)することにより製造できる。樹脂組成物の繊維基材に対する固形分付着量は、プリプレグに対する乾燥後の樹脂組成物の含有率において20~90質量%とすることが好ましい。より好ましくは、30~80質量%であり、さらに好ましくは40~70質量%である。例えば、プリプレグ中の樹脂組成物の固形分付着量が20~90質量%となるように、本硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸または塗工した後、例えば40~250℃の温度で1~30分加熱乾燥し、半硬化(Bステージ化)させることにより製造することができる。
【0115】
繊維基材としては、公知の材料を制限なく利用できるが、有機繊維、無機繊維およびガラス繊維が例示できる。有機繊維としては、ポリイミド、ポリエステル、テトラフルオロエチレン、全芳香族ポリアミドなどが例示できる。無機繊維としては、炭素繊維が例示できる。ガラス繊維としては、Eガラスクロス、Dガラスクロス、Sガラスクロス、Qガラスクロス、NEガラスクロス、Lガラスクロス、Tガラスクロス、球状ガラスクロス、低誘電ガラスクロスなどが例示できる。これらのなかでも低熱膨張率の観点からは、Eガラスクロス、Tガラスクロス、Sガラスクロス、Qガラスクロスおよび有機繊維が好適である。繊維基材は一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0116】
繊維基材の形状は、目的とする用途および性能に応じて適宜選択できる。具体例としては、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマットおよびサーフェシングマットが例示できる。織布の織り方としては、平織り、ななこ織り、綾織りが例示できる。所望の特性に応じて、任意に選択・設計することができる。繊維基材の厚さは、例えば、約0.01~1.0mmの範囲とすることができる。薄膜化の観点からは500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましい。
【0117】
繊維基材は、必要に応じて、所望の特性を引き出すためにシランカップリング剤などで表面処理を施したり、機械的に開繊処理を施したりすることができる。その他、コロナ処理やプラズマ処理を行ってもよい。シランカップリング剤の表面処理は、アミノシランカップリング処理、ビニルシランカップリング処理、カチオニックシランカップリング処理、エポキシシランカップリング処理等がある。
【0118】
繊維基材に樹脂組成物を含浸させる方法は特に限定されないが、例えば、アルコール類、エーテル類、アセタール類、ケトン類、エステル類、アルコールエステル類、ケトンアルコール類、エーテルアルコール類、ケトンエーテル類、ケトンエステル類、或いはエステルエーテル類などの有機溶媒を用いて樹脂組成物のワニスを調製し、ワニス中に繊維基材を浸漬する方法、繊維基材にワニスを塗布またはスプレー等により散布する方法、繊維基材の両面を樹脂組成物からなる膜でラミネートする方法が挙げられる。
【0119】
更に、本硬化性樹脂組成物より形成されてなる樹脂組成物層、その硬化物層等は、半導体チップパッケージの絶縁層、アンダーフィル材、接着材等に好適である。また、銅張積層板用の組成物、配線板形成用ボンディングシート、フレキシブル基板のカバーコートにも好適である。
【0120】
(硬化物の製造方法)
本硬化性樹脂組成物を硬化処理することにより硬化物が得られる。熱硬化性化合物を含む場合には熱硬化処理を、光硬化性化合物を含む場合には光照射処理により通常硬化する。例えば、樹脂組成物をシート等の所望の形状に成形し、硬化処理する方法が例示できる。溶剤を含む樹脂組成物を塗布、乾燥することにより簡便に樹脂組成物のシートなどの成形体を得ることができる。そして、成形体を硬化することにより硬化物を形成する。成形体と硬化のタイミングは同時であってもよい。なお、硬化物のうちシート状のものを硬化層ともいう。
【0121】
熱硬化処理する場合の温度は、架橋剤の種類に応じて適宜選定すればよい。例えば、150~300℃の温度で、30~180分加熱処理する方法が例示できる。光硬化処理する場合、活性光線を硬化が行われる強度で照射すればよい。硬化時に、必要に応じて圧をかけて熱圧着(例えば、5MPa)することができる。硬化処理により、本硬化性樹脂組成物に架橋構造が形成され、3次元架橋した硬化物が得られる。
【0122】
≪硬化物付基板および電子機器≫
本発明の硬化物付き基板は、硬化性樹脂組成物の硬化物を有する基板である。具体的には、硬化性樹脂組成物の硬化物を有する金属張積層板やプリント配線板等が挙げられる。
本硬化性樹脂組成物の硬化物は、耐熱性に優れると共に接着力、誘電特性に優れるので、好適である。
【0123】
金属張積層板は、例えば、本硬化性樹脂組成物を用いて絶縁層を形成し、絶縁層と金属層を積層するプロセス等を経て得られる。例えば、金属層と本硬化性樹脂組成物を用いて形成したプリプレグを積層した後、加熱圧着により硬化処理工程を行うことにより、金属張積層板が得られる。加熱圧着工程は、公知の方法を利用できる。例えば、120~250℃の温度で0.5~10MPaの圧力で、0.5~5時間熱プレスすることにより行われる。
【0124】
金属張積層板の積層構成としては、金属層/硬化層の2層の積層体、金属層/硬化層/金属層の複層からなる積層体、或いは金属層/硬化層/金属層/硬化層/金属層等の交互に積層された多層構造を有する金属張積層板が例示できる。また、本硬化性樹脂組成物より形成した硬化層以外の絶縁層が積層体に含まれていてもよく、硬化層の厚みを調整するためにプリプレグ等を複数枚重ねて硬化させてもよい。また、金属層以外の導電層が積層されていてもよい。
【0125】
例えば、金属層/硬化層/金属層の層構成を有する金属張積層板は、硬化層の両主面上に形成された金属層に回路パターンを形成することにより、回路パターン層を有する回路基板を得ることができる。硬化層には、レーザー等によりスルーホールやビアを形成してもよい。コア基板にビルドアッププロセスによって、絶縁硬化層を重ね合わせて、ビアを形成し、多層化してもよい。回路基板は、例えば、サブトラクティブ法により金属張積層板の金属層を所望の回路パターンに形成する方法や、アディティブ法により絶縁層の片面または両面に所望の回路パターンを形成することにより得ることができる。
【0126】
金属層としては銅箔などが用いられる。銅張積層板では、銅箔面に電解銅めっきを行い、レジスト層を除去した後にアルカリ性等のめっき液でエッチングする工程がある。本硬化性樹脂組成物は、めっき液耐性等の基板加工適性に優れるので銅張積層板用途に好適である。更に、本硬化物は硬化物のヒートサイクル試験後のクラック耐性および耐熱性に優れるので、本硬化性樹脂組成物を硬化して形成される硬化物を含む硬化物付基板は様々な環境下で幅広い用途に利用できる。
【0127】
プリント配線板は、例えば、銅張積層板における銅箔をエッチング等によって加工し、信号回路等を形成して得た基板とカバーフィルムとを接着シートを介して貼り合わせ、硬化処理工程等を経て製造できる。また、例えば、絶縁性のフレキシブルフィルム上に導体パターンを形成し、その上に本接着シートを介して保護膜を形成し、熱圧着する工程等を経てフレキシブルプリント配線板を製造できる。前記フレキシブルフィルムとしては、ポリエステル、ポリイミド、液晶ポリマー、PTFEフィルムが例示できる。導体パターンは、プリント技術により形成する方法、スパッタリングおよびめっきによる方法が例示できる。
【0128】
プリント配線板の片面または両面に形成された本硬化性樹脂組成物の硬化層に対し、ドリル加工あるいはレーザー加工などにより開口部を設け、導電剤を充填してビアを形成してもよい。また、本硬化性樹脂組成物の硬化層上に回路層を形成することもできる。本硬化性樹脂組成物の硬化物はめっき液耐性に優れるので多層プリント配線板の製造に好適である。本硬化性樹脂組成物を用いて形成されたプリント配線板は、優れた加工適性を有し、耐熱性およびヒートサイクル試験後のクラック耐性に優れるので、スマートフォンやタブレット端末等の各種電子機器に好適である。
【0129】
本硬化性樹脂組成物のポリイミド樹脂(A)は誘電特性に優れるので、絶縁性に優れた硬化物を提供できる。例えば、回路基板上の絶縁層形成材料(プリント配線板のカバーレイ層、ビルトアップ基板等の層間絶縁層、ボンディングシート等を含む)等として好適に用いられる。また、熱伝導性フィラーなどのフィラーにおいて導電性材料を用いることにより、電子部品の導電性部材に利用することも可能である。電子部品は、例えば、パワー半導体装置、LED、インバーター装置等のパワーモジュールが例示できる。
【0130】
更に、本硬化性樹脂組成物の硬化物に熱伝導性フィラーを配合することにより、放熱性が求められる用途全般に適用できる。例えば、樹脂組成物の成形性を利用して、所望の形状の放熱部品として好適に利用できる。特に、軽薄短小化のために、ファンやヒートシンクを設置できない電子機器(スマートフォン、ダブレット端末等)、電池用外装材の放熱性接着材や放熱性シートとして有用である。また、本硬化性樹脂組成物の硬化物は、発熱体とヒートシンクとの接着層、或いはヒートスプレッダーとして好適である。また、基板上に搭載された一種または複数の電子部品を被覆する放熱層として適用できる。
【実施例0131】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。実施例及び比較例中の部、%は、特に指定がない場合は質量部、質量%を意味する。
【0132】
<質量平均分子量(Mw)の測定方法>
Mwの測定は東ソー株式会社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HPC-8020」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーである。本発明における測定は、カラムに「LF-604」(昭和電工株式会社製:迅速分析用GPCカラム:6mmID×150mmサイズ)を直列に2本接続して用い、流量0.6ml/min、カラム温度40℃の条件で行い、質量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。
【0133】
(合成例1)ポリイミド樹脂(1)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、キシレン224部、2,2-ビス(3,3’,4,4’-テトラカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物(6FDA)88.8部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら100℃まで昇温した。プリアミン1075(DA)135.4部を1時間かけて滴下した後、60℃で2時間攪拌を行った。メタンスルホン酸を4.2部加え、150℃に昇温し1時間還流化で反応を行った。40℃に冷却し、(a2)として無水シトラコン酸5.6部、無水マレイン酸(a1)4.9部を1時間かけて加え、2時間攪拌を行った。150℃に昇温して還流化で14時間脱水反応を行った。得られた溶液を水で3回洗浄した後、溶液を150℃で加熱して系中のキシレンと水を除去した後、トルエンを214部加えることで数平均分子量約6000、重量平均分子量約15,000のポリイミド樹脂(A-1)を得た。樹脂固形分濃度は50%であった。
【0134】
(合成例2~27)
合成例1と同様の方法で、表1、2の組成および仕込み質量部に従って合成を行い、ポリイミド樹脂を得た。その特性値を表1、2示す。
【0135】
【0136】
【0137】
表1、2の略称の内容を以下に示す。
DA1:プリアミン1075;炭素数6の環構造を有する炭素数36のダイマージアミン(ダイマー構造比率:95%以上、クローダジャパン社製)
DA2:バーサミン551;炭素数6の環構造を有する炭素数36のダイマージアミン(BASFジャパン社製)
NA:ビス(アミノメチル)ノルボルナン(東京化成社製)
6FDA:2,2-ビス(3,3’,4,4’-テトラカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物
BIS-DA:4,4’-[プロパン-2,2-ジイルビス(1,4-フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物(SABIC社製、BISDA-1000)
MCTC:5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物(東京化成社製)
TDA-100:4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物
【0138】
[実施例1]
(硬化性樹脂組成物の調製)
表3に従いポリイミド樹脂(A-1)を30部、硬化助剤(B)としてパークミルD(B-1)を0.3部仕込み、不揮発分濃度が60%になるように溶剤(トルエン:MEK=9:1(質量比))を加え、ディスパーで10分攪拌して実施例1に係る硬化性樹脂組成物を得た。
【0139】
(硬化物の作製)
硬化性樹脂組成物を、厚さ50μmの重剥離フィルム(重離型剤がコーティングされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)上に、乾燥後の厚みが50μmとなるようブレードコーターにて塗布し、120℃で20分間加熱した後、190℃の真空オーブンで2時間加熱し、重剥離フィルムを除去することにより硬化物を得た。
【0140】
(積層シートの作製)
得られた硬化性樹脂組成物を、ポリイミドフィルム:カプトン(R)Hタイプ(東レ・デュポン社製)上に、乾燥後の厚みが50μmとなるようブレードコーターにて塗布し、120℃で20分間加熱することにより積層シートを得た。
【0141】
(硬化物付き基板の作製)
得られた積層シートの接着面に、18μm厚の電解銅箔(商品名「F2-WS」、古河サーキットフォイル(株)製)の処理面を重ね合わせ、圧力10MPaで1分間ラミネートした後、190℃の真空オーブンで2時間加熱することにより積層体を作製した。
【0142】
[実施例2~32、比較例1~9]
表3、4に記載の配合成分および配合量に変更する以外は実施例1と同様の方法により、実施例2~32、比較例1~9に係る硬化性樹脂組成物を得た。続けて、各硬化性樹脂組成物を用いて硬化物、積層シートおよび積層体を作製した。
【0143】
実施例および比較例で使用した材料を下記に示す。
<硬化助剤(B)>
(B-1):パークミルD 日油社製
(B-2):パーロイルL 日油株式会製
【0144】
<無機フィラー(C)>
(C-1):SC2050-MB(シリカ、平均粒子径D50;0.5μm)アドマテックス社製
(C-2):SP-2(窒化ホウ素、平均粒子径D50;4.0μm)デンカ社製
(C-3):E101-S(液晶ポリマー、平均子粒径D50;17.5μm)住友化学社製
(C-4):エクソリットOP935(ホスフィン酸アルミニウム塩、平均子粒径D50;2.5μm)クラリアント社製
【0145】
<架橋剤(D)>
(D-1):YX-8800(グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、官能基当量180g/eq、2官能)三菱ケミカル社製
(D-2):オルガチックスZC-150(有機ジルコニア化合物、官能基当量122g/eq、4官能)マツモトファインケミカル社製
(D-3):カルボジライトV-05(カルボジイミド基含有化合物、官能基当量:262g/eq、多官能)日清紡ケミカル社製
【0146】
<硬化促進剤>
E:ジアゾビシクロウンデセン サンアプロ社製
【0147】
<酸化防止剤>
F:アデカスタブAО-40 アデカ社製
【0148】
各実施例および比較例の硬化性樹脂組成物の硬化物について接着性、耐熱性、誘電率、誘電正接の評価を行なった。測定方法、評価基準は以下の通りである。
【0149】
(機械特性の評価)
得られた積層シートについて、15mm幅で引張り試験機(株式会社島津製作所製、商品名:EZ-TEST)を用いて、垂直方向に引張り速度50mm/分、室温中で引き剥がしたときの荷重を測定し、以下の基準にて評価した。
◎:引張り強度15.0N/15mm以上(非常に良好)
○:引張り強度8.0N/15mm以上15.0N/15mm未満(良好)
△:引張り強度5.0N/15mm以上8.0N/15mm未満(使用可能)
×:引張り強度5.0N/15mm未満(使用不可)
【0150】
(耐熱性)
各例で作製した硬化物付き基板を、幅15mm、長さ65mmに切り出して試験片とした。試験片を各種条件で保管し、その後、各種温度にて溶融半田に銅箔面を接触させて1分間浮かべた。その後、試験片の外観を目視で観察し、硬化後接着層の発泡、浮き、剥がれ等の接着異常の有無を評価し、以下の基準で評価した。
◎:40℃90%の雰囲気下で24時間保管した試験片を、280℃の溶融半田に浮かべた際には外観変化なし。(非常に良好)
〇:23℃50%の雰囲気下で24時間保管した試験片を、280℃の溶融半田に浮かべた際には外観変化なし。40℃90%の雰囲気下で24時間保管した試験片を、280℃の溶融半田に浮かべた際には発泡が確認される。(良好)
△:23℃90%の雰囲気下で24時間保管した試験片を、260℃の溶融半田に浮かべた際には外観変化なし。23℃50%の雰囲気下で24時間保管した試験片を、280℃の溶融半田に浮かべた際には発泡が確認される。(使用可能)
×:23℃50%の雰囲気下で24時間保管した試験片を、260℃の溶融半田に浮かべた際に発泡が確認される。(使用不可)
【0151】
(比誘電率の評価)
エー・イー・ティー社製の比誘電率測定装置「ADMS01Oc」に、各例で作製した硬化物を幅3mm、長さ80mmに切り出した試験片を3つセットし、空洞共振器法により、測定温度23℃、測定周波数が10GHzにおける比誘電
率を求め、以下の基準にて評価した。
◎:比誘電率2.5未満(非常に良好)
○:比誘電率2.5以上2.7未満(良好)
△:比誘電率2.7以上2.8未満(使用可能)
×:比誘電率2.8以上(使用不可)
【0152】
(誘電正接の評価)
エー・イー・ティー社製の比誘電率測定装置「ADMS01Oc」に、各例で作製した硬化物を幅3mm、長さ80mmに切り出した試験片を3つセットし、空洞共振器法により、測定温度23℃、測定周波数が10GHzにおける誘電正
接を求め、以下の基準にて評価した。
◎:誘電正接0.002未満(非常に良好)
○:誘電正接0.002以上0.0024未満(良好)
△:誘電正接0.0024以上0.003未満(使用可能)
×:誘電正接0.003以上(使用不可)
【0153】
【0154】
【0155】
表3、4に示すように、炭素-炭素不飽和結合を有する酸無水物(a)中の(a2)の分子量が112~351の範囲内にあり、(A)中の、(a1)に由来する残基と(a2)に由来する残基のモル比率が100:10~100:500範囲内にある硬化組成物を用いた実施例1~32は(a1)のみを含む比較例1および比較例3、(a2)のみを含む比較例2および比較例4、上記の範囲外の比較例5~9と比較して良好な接着力を有し、誘電特性と耐熱性にも優れている。
【0156】
(プリプレグの製造)
次に、実施例1で得られたワニスをガラスクロス(日東紡績社製の♯2116タイプ、WEA116E、Eガラス)に、質量比がガラスクロス:不揮発成分の樹脂組成物=2:3になるように含浸させた後、140℃で約5分間加熱乾燥することにより実施例1に係るプリプレグを得た。
【0157】
(プリント配線板の作製)
L/S=25μm/25μmであり、銅の厚みがそれぞれ25μmと50μmである2種類の回路パターンが形成されたガラス布基材エポキシ樹脂銅張積層板を内層回路基板として用意した。その両面に、実施例1に係るプリプレグを190℃、3.0MPa、120分の条件で、真空減圧下で加熱プレスし、続いて両側の最外層に銅箔を配置することでプリント配線板を作成することができた。また、他の実施例に関しても同様にしてプリント配線板が作成できたことを確認した。