(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170011
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】水分量測定装置
(51)【国際特許分類】
A01D 41/127 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
A01D41/127 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086918
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 敬典
(72)【発明者】
【氏名】森原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】寺西 陽之
【テーマコード(参考)】
2B396
【Fターム(参考)】
2B396JA04
2B396JC07
2B396JE01
2B396JE10
2B396JG03
2B396KA04
2B396KA07
2B396KE03
2B396LN02
2B396LR02
2B396QA29
2B396QE31
(57)【要約】
【課題】圧砕ローラと電極端子との間で錆による導通不良が生じることを防止できる、水分量測定装置を提供する。
【解決手段】圧砕ローラ17,18の周面間で収穫物である穀粒が圧砕されているときに、測定回路から電極端子45,46間の電気抵抗値に応じた信号が出力される。圧砕ローラ17のローラ軸25の前端面27および圧砕ローラ18のローラ軸26の前端面28には、それぞれローラ電極32,35が取り替え可能に取り付けられている。これにより、ローラ電極32と電極端子45が接触する局部および/またはローラ電極35と電極端子46とが接触する局部に錆が発生した場合に、ローラ電極32,35を錆の発生していないローラ電極32,35、たとえば、新品のローラ電極32,35と取り替えることができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫機に搭載されて、前記収穫機に収穫される収穫物の水分量を測定する水分量測定装置であって、
周面が互いに近接して配置され、回転により互いの周面間で前記収穫物を圧砕する1対の圧砕ローラと、
前記圧砕ローラのそれぞれの一端面に取替可能に取り付けられるローラ電極と、
前記ローラ電極のそれぞれに接触する電極端子と、
一方の前記圧砕ローラの周面と他方の前記圧砕ローラの周面との間で前記収穫物が圧砕されているときの一方の前記電極端子と他方の前記電極端子との間の電気抵抗値に応じた信号を出力する測定回路と、を含む、水分量測定装置。
【請求項2】
前記圧砕ローラを収容するケース、をさらに含み、
前記電極端子は、前記ケースに取替可能に取り付けられる、請求項1に記載の水分量測定装置。
【請求項3】
前記ローラ電極は、前記ケースから露出しており、
前記電極端子は、前記ケース外で前記ローラ電極に接触する、請求項2に記載の水分量測定装置。
【請求項4】
前記ローラ電極の前記一端面と前記ローラ電極との間に介装されるスペーサ、をさらに含み、
前記ローラ電極は、前記ケースから浮いている、請求項3に記載の水分量測定装置。
【請求項5】
前記ケースに対して固定される端子保持部材、をさらに含み、
前記電極端子は、前記端子保持部材に保持されて、前記端子保持部材から延出する、請求項2に記載の水分量測定装置。
【請求項6】
前記電極端子は、前記圧砕ローラの回転軸線と交差する方向に延び、途中部で先端部が前記ローラ電極に近づく方向に屈曲し、前記先端部が前記ローラ電極に接触する、請求項5に記載の水分量測定装置。
【請求項7】
前記端子保持部材が取り付けられ、前記ケースに取り付けられる取付台、をさらに含む、請求項5に記載の水分量測定装置。
【請求項8】
前記電極端子は、前記圧砕ローラの回転軸線に対して所定方向にずれた位置で前記ローラ電極に接触しており、
前記取付台は、前記所定方向に互いに対向する1対の壁面を有し、
前記端子保持部材は、前記1対の壁面間に配置されている、請求項7に記載の水分量測定装置。
【請求項9】
前記端子保持部材が単一の前記取付台に取り付けられることにより、前記電極端子、前記端子保持部材および前記取付台が一体化されている、請求項7または8に記載の水分量測定装置。
【請求項10】
前記圧砕ローラは、前記電極端子と異種の金属からなり、
前記ローラ電極は、少なくとも前記電極端子と接触する部分が前記電極端子と同種の金属からなる、請求項1に記載の水分量測定装置。
【請求項11】
前記ローラ電極は、固定ねじにより前記圧砕ローラに固定され、
前記固定ねじは、前記ローラ電極と異種の金属からなる、請求項10に記載の水分量測定装置。
【請求項12】
前記圧砕ローラは、鉄からなり、
前記ローラ電極および前記電極端子は、銅からなり、
前記固定ねじは、ステンレスからなる、請求項11に記載の水分量測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインなどの収穫機に搭載されて、収穫機に収穫される収穫物の水分量を測定する水分量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、コンバインは、米や麦などの穀粒を収穫する収穫機である。コンバインでは、圃場に植立している作物が刈取装置により刈られ、その刈られた作物が刈取装置から脱穀装置に搬送されて、脱穀装置で作物の穀稈から穀粒が外される。穀稈から外れた穀粒は、脱穀装置から穀粒タンク内の上部に設けられた排出部に搬送され、その排出部から穀粒タンク内に排出されて収集される。
【0003】
コンバインには、穀粒の水分量を測定するため、電気抵抗式の水分量測定装置(水分計)を穀粒タンク内に備えるものがある。水分量測定装置は、排出部から排出される穀粒を受け入れることができる位置に配置される。水分量測定装置には、1対の圧砕ローラが備えられ、電極ローラ間の電気抵抗値を測定するための電極端子が各圧砕ローラの軸に接触して設けられている。水分量測定装置内に受け入れられた穀粒は、圧砕ローラの回転により、圧砕ローラの周面間に巻き込まれて、圧砕ローラの周面間で圧砕される。圧砕ローラの周面間に穀粒の圧砕物が挟まれた状態で、圧砕ローラ間の電気抵抗値が測定され、その電気抵抗値から穀粒の水分量が求められる(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の水分量測定装置では、圧砕ローラの軸と電極端子とが接触する局部に錆が発生することが判った。その錆が発生すると、圧砕ローラと電極端子との間で導通不良が生じ、圧砕ローラ間の電気抵抗値を精度よく測定できなくなる。
【0006】
本発明の目的は、圧砕ローラと電極端子との間で錆による導通不良が生じることを防止できる、水分量測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明に係る水分量測定装置は、収穫機に搭載されて、収穫機に収穫される収穫物の水分量を測定する水分量測定装置であって、周面が互いに近接して配置され、回転により互いの周面間で収穫物を圧砕する1対の圧砕ローラと、圧砕ローラのそれぞれの一端面に取替可能に取り付けられるローラ電極と、ローラ電極のそれぞれに接触する電極端子と、一方の圧砕ローラの周面と他方の圧砕ローラの周面との間で収穫物が圧砕されているときの一方の電極端子と他方の電極端子との間の電気抵抗値に応じた信号を出力する測定回路とを含む。
【0008】
この構成によれば、圧砕ローラの周面と他方の圧砕ローラの周面との間で収穫物が圧砕されているときに、測定回路から一方の電極端子と他方の電極端子との間の電気抵抗値に応じた信号が出力される。圧砕ローラのそれぞれの一端面に、ローラ電極が取り替え可能に取り付けられている。これにより、ローラ電極と電極端子とが接触する局部に錆が発生した場合に、ローラ電極を新品(錆の発生していないローラ電極)と取り替えることができる。ローラ電極を新品と取り替えることにより、圧砕ローラと電極端子との間で錆による導通不良が生じることを防止でき、一方の圧砕ローラと他方の圧砕ローラとの間の電気抵抗値を精度よく測定できる。ひいては、一方の圧砕ローラと他方の圧砕ローラとの間で圧砕されている収穫物の水分量を精度よく測定することができる。
【0009】
従来の水分量測定装置では、電極端子が圧砕ローラの軸に接触しているため、圧砕ローラの軸と電極端子とが接触する局部に錆が発生した場合、圧砕ローラを新品と取り替えなければならず、取り替え作業に手間がかかり、また、取り替えに要するコストが高くつく。これに対し、本発明に係る水分量測定装置では、ローラ電極と電極端子とが接触する局部に錆が発生した場合に、ローラ電極の取り替えですむので、従来の水分量測定装置と比較して、取り替え作業の手間を軽減でき、取り替えに要するコストを低減できる。
【0010】
なお、錆の発生の問題は、収穫機に設けられた水分量測定装置で顕著に現れるが、乾燥機に設けられた水分量測定装置では発生しにくい。収穫機と乾燥機とを比較すると、収穫機では、収穫物が貯留されるタンク内の湿度が高いのに対し、乾燥機では、乾燥対象物が貯留される室内の温度が低いからである。したがって、本願発明が解決しようとする課題は、乾燥機に設けられる水分量測定装置が有していない課題であり、乾燥機に設けられる水分量測定装置の構成に基づいては、本願発明に容易に想到し得ない。
【0011】
水分量測定装置は、圧砕ローラを収容するケースをさらに含み、電極端子は、ケースに取替可能に取り付けられていてもよい。
【0012】
この構成では、ローラ電極と電極端子とが接触する局部に錆が発生した場合に、その電極端子を新品(錆の発生していない電極端子)と取り替えることができる。電極端子を新品と取り替えることにより、圧砕ローラと電極端子との間で錆による導通不良が生じることを防止でき、一方の圧砕ローラと他方の圧砕ローラとの間の電気抵抗値をより精度よく測定できる。ひいては、一方の圧砕ローラと他方の圧砕ローラとの間で圧砕されている収穫物の水分量をより精度よく測定することができる。
【0013】
ローラ電極は、ケースから露出しており、電極端子は、ケース外でローラ電極に接触する構成であってもよい。
【0014】
この構成により、収穫機のユーザがローラ電極と電極端子とが接触する局部における錆の有無を目視することができる。
【0015】
水分量測定装置は、圧砕ローラの一端面とローラ電極との間に介装されるスペーサをさらに含み、ローラ電極は、ケースから浮いていることが好ましい。
【0016】
この構成により、圧砕ローラの回転時に、ローラ電極がケースに擦れることを防止できる。
【0017】
水分量測定装置は、ケースに対して固定される端子保持部材をさらに含み、電極端子は、端子保持部材に保持されて、端子保持部材から延出していてもよい。
【0018】
その構成において、電極端子は、圧砕ローラの回転軸線と交差する方向に延び、途中部で先端部がローラ電極に近づく方向に屈曲し、先端部がローラ電極に接触していてもよい。
【0019】
電極端子が屈曲することにより、電極端子の先端部とローラ電極との接圧が上がる。その結果、ローラ電極と電極端子とが接触する局部における錆の発生を防止でき、錆が発生しても、圧砕ローラ(ローラ電極)の回転時に、電極端子により錆を削り落とすことができる。そのため、圧砕ローラと電極端子との間で錆による導通不良が生じることを防止できる。
【0020】
水分量測定装置は、端子保持部材が取り付けられ、ケースに取り付けられる取付台をさらに含む構成であってもよい。
【0021】
また、電極端子は、圧砕ローラの回転軸線に対して所定方向にずれた位置でローラ電極に接触しており、取付台は、所定方向に互いに対向する1対の壁面を有し、端子保持部材は、1対の壁面間に配置されていてもよい。
【0022】
電極端子が圧砕ローラの回転軸線に対して所定方向にずれた位置でローラ電極に接触していると、圧砕ローラの回転時に、電極端子が所定方向にぶれて、電極端子とローラ電極との接触状態が不安定になるおそれがある。端子保持部材が取付台の1対の壁面間に配置されることにより、端子保持部材が所定方向に動くことが規制されるので、圧砕ローラの回転時に、電極端子が所定方向にぶれることを抑制できる。
【0023】
端子保持部材が単一の取付台に取り付けられることにより、電極端子、端子保持部材および取付台が一体化されていてもよい。
【0024】
この構成であれば、一方および他方の電極端子ならびにそれらを保持する端子保持部材を取付台ごとケースから取り外して、それらの新品と取り替えることができる。
【0025】
圧砕ローラが電極端子と異種の金属からなる場合、ローラ電極は、少なくとも電極端子と接触する部分が電極端子と同種の金属からなることが好ましい。
【0026】
これにより、ローラ電極と電極端子とが接触する局部において、異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)が発生することを防止できる。
【0027】
ローラ電極は、固定ねじにより圧砕ローラに固定され、固定ねじは、ローラ電極と異種の金属からなる構成が採用されてもよい。
【0028】
さらに、圧砕ローラが鉄からなり、ローラ電極および電極端子が銅からなり、固定ねじがステンレスからなる構成が採用されてもよい。
【0029】
銅とステンレスとは、自然電位(イオン化傾向)が近いので、ローラ電極が銅からなる場合に、ステンレスの固定ねじを使用することにより、ローラ電極と固定ねじとが接触する部分で異種金属接触腐食が発生することを抑制できる。その結果、ローラ電極に異種金属腐食による錆が発生することを抑制でき、圧砕ローラと電極端子との間で錆による導通不良が生じることを一層防止できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、圧砕ローラと電極端子との間で錆による導通不良が生じることを防止できる。そのため、一方の圧砕ローラと他方の圧砕ローラとの間の電気抵抗値を精度よく測定でき、ひいては、一方の圧砕ローラと他方の圧砕ローラとの間で圧砕されている収穫物の水分量を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態に係る水分量測定装置が搭載されるコンバインの右側面図である。
【
図4】ローラユニットの前下部を前下方から見た斜視図である。
【
図5】水分量測定装置の回路構成を図解的に示す図である。
【
図6】コンバインの電気的構成の要部を示すブロック図である。
【
図7】異常検知処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】変形例に係る取付台を前方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0033】
<コンバインの全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る水分量測定装置が搭載されるコンバイン1の右側面図である。
【0034】
コンバイン1は、圃場を走行しながら作物の刈り取りおよび作物からの脱穀を行う農業機械であり、穀粒を収穫する収穫機である。
【0035】
コンバイン1は、圃場などの不整地を走破する能力を有する走行装置として、左右1対のクローラ走行装置2を採用している。左右のクローラ走行装置2により、機体フレーム3が支持され、クローラ走行装置2には、機体フレーム3上に設けられたエンジンの動力がトランスミッションを介して伝達される。
【0036】
また、機体フレーム3上には、キャビン4、脱穀装置5および穀粒タンク6が設けられている。クローラ走行装置2および機体フレーム3の前方には、作物を刈り取る刈取装置7が設けられている。
【0037】
キャビン4は、機体フレーム3の前端部上に配置されている。キャビン4は、その内部にユーザが搭乗する空間を提供し、その空間内には、たとえば、ユーザが着座する運転席、ユーザが操作する操作レバーなどが配置されている。キャビン4の右側面には、開閉可能なドア8が設けられており、ユーザは、ドア8を開いて、キャビン4内に乗り込むことができる。
【0038】
脱穀装置5は、キャビン4の左後方に配置されている。穀粒タンク6は、キャビン4の後方かつ脱穀装置5の右方に配置されている。脱穀装置5では、作物を脱穀して得られる選別対象物が選別されて回収される。回収された選別対象物(穀粒)は、穀粒タンク6に搬送されて、穀粒タンク6に貯留される。穀粒タンク6には、アンローダ9が接続されており、穀粒タンク6に貯留された穀粒は、アンローダ9により、穀粒タンク6から機外に排出することができる。
【0039】
<水分量測定装置>
図2は、水分量測定装置11の斜視図である。
【0040】
穀粒タンク6内には、穀粒タンク6に貯留される穀粒の水分量を測定する水分量測定装置11が設けられている。また、図示されていないが、穀粒タンク6内には、脱穀装置5から搬送される穀粒を排出する排出部が設けられている。排出部には、上下方向に延びる軸線を中心に回転する回転羽根が設けられており、排出部に搬送されてくる穀粒は、回転する回転羽根により掃き飛ばされる。水分量測定装置11は、排出部から排出される穀粒を受け入れることができる位置、たとえば、穀粒タンク6の前内壁面に配置される。
【0041】
以下では、水分量測定装置11が穀粒タンク6の前内壁面に配置されているとして、水分量測定装置11の前後方向、左右方向および上下方向をコンバイン1の前後方向、左右方向および上下方向と同じ方向とする。
【0042】
水分量測定装置11は、箱型の筐体12を備えている。筐体12内には、ローラユニット13が設けられており、筐体12の後面には、ローラユニット13の後面を露出させる開口14が形成されている。
【0043】
ローラユニット13は、前面が開放された後ケース15を備えている。後ケース15の後面には、後ケース15内に穀粒を受け入れるための受入口16が形成されている。
【0044】
後ケース15内には、1対の圧砕ローラ17,18が収容されている。圧砕ローラ17,18は、受入口16の後方に、それらの回転軸線が前後方向に延びるように、左右に並べて配置されている。圧砕ローラ17,18の周面間には、たとえば、米(籾米)のサイズに応じた間隔、米の幅(長手方向と直交する方向の長さ)よりもやや小さい間隔が空けられている。圧砕ローラ17,18の周面には、微小な凹凸が多数形成されている。圧砕ローラ17,18は、モータ66(
図6参照)の動力により、左の圧砕ローラ17が時計回りに回転し、右の圧砕ローラ18が反時計回りに回転する。
【0045】
穀粒タンク6内の排出部から飛散する穀粒の一部は、筐体12の位置に到達し、筐体12の受入口16から筐体12内に直接受け入れられる。また、筐体12の後面には、案内部材19が取り付けられており、案内部材19上に到達した穀粒は、案内部材19上を流動して、案内部材19から落下し、受入口16から後ケース15内に受け入れられる。受入口16から後ケース15内に受け入れられた穀粒は、圧砕ローラ17,18の周面上に貯まる。そして、圧砕ローラ17,18が回転すると、穀粒が圧砕ローラ17,18の周面間に挟まれて圧砕される。
【0046】
図3は、水分量測定装置11を前方から見た図である。
【0047】
ローラユニット13は、板状の前ケース21を備えている。前ケース21は、後ケース15の前面を閉鎖するように設けられ、後ケース15と前ケース21とにより、圧砕ローラ17,18を収容するローラ収容空間が提供されている。
【0048】
図4は、ローラユニット13の前下部を前下方から見た斜視図である。
【0049】
前ケース21には、圧砕ローラ17,18の軸線上に、それぞれ円形の開口22,23が形成されている。圧砕ローラ17,18は、それぞれローラ軸25,26を一体的に有している。ローラ軸25の前端面27およびローラ軸26の前端面28(
図8参照)は、それぞれ開口22,23から前方に露出している。
【0050】
ローラ軸25の前端面27には、固定ねじ31により、円環板状のローラ電極32およびスペーサ33が取替可能に取り付けられている。具体的には、固定ねじ31は、互いに重ね合わされたローラ電極32およびスペーサ33の中央に、ローラ電極32側から挿通される。ローラ軸25の前端面27の中央には、ねじ穴が形成されており、そのねじ穴にローラ電極32およびスペーサ33に挿通された固定ねじ31の先端部がねじ込まれる。これにより、ローラ軸25の前端面27とローラ電極32との間にスペーサ33が介在された状態で、ローラ電極32およびスペーサ33がローラ軸25に対して固定される。ローラ軸25の前端面27とローラ電極32との間にスペーサ33が介在されていることにより、ローラ電極32は、前ケース21から浮いた状態で、前ケース21と非接触に設けられている。固定ねじ31が外されると、ローラ軸25に対するローラ電極32およびスペーサ33の固定が解除される。したがって、固定ねじ31を外すことにより、ローラ電極32およびスペーサ33をローラ軸25から取り外すことができる。そして、固定ねじ31により、別のローラ電極32およびスペーサ33をローラ軸25の前端面27に取り付けることができる。
【0051】
ローラ軸26の前端面27には、固定ねじ34により、円環板状のローラ電極35およびスペーサ36が取替可能に取り付けられている。ローラ電極35およびスペーサ36の取り付けの構成は、ローラ電極32およびスペーサ33の取り付けの構成と同様であるから、その説明を省略する。
【0052】
前ケース21には、端子ユニット41が取り付けられている。端子ユニット41は、取付台42と、取付台42に取り付けられる端子保持部材43,44と、端子保持部材43,44にそれぞれ保持される電極端子45,46とを備えている。
【0053】
取付台42は、略矩形板状をなしている。取付台42は、前ケース21の前面において、ローラ電極32,35の下方の位置に、上下方向よりも左右方向に長く延びるように配置されている。取付台42は、たとえば、2本の固定ねじ37により、前ケース21に取り付けられている。
【0054】
端子保持部材43,44は、取付台42の前面において、それぞれローラ電極32,35の中心に対して左方にずれた位置に配置されている。端子保持部材43,44は、同じ構成であり、端子保持部材43,44のそれぞれは、前後に重ね合わされる前保持板47および後保持板48を備えている。
【0055】
電極端子45,46は、同じ構成である。ここでは、電極端子45の構成を取り上げて説明し、電極端子46の構成についての説明を省略し、
図3および
図4では、電極端子46について、電極端子45の各部に相当する部分には、電極端子45の各部と同一の参照符号が付されている。
【0056】
電極端子45の基端部51は、略矩形板状をなしている。電極端子45は、基端部51から基端部51の長手方向に延びる2本の端子アーム52,53を有している。端子アーム52,53の先端部の一方面には、略半円板状の端子接点54,55が突出して設けられている。
【0057】
電極端子45は、基端部51が端子保持部材43の前保持板47と後保持板48との間に挟まれて、端子接点54,55がローラ電極32の中心(圧砕ローラ17の回転軸線)に対して左方にずれた位置でローラ電極32に接触するように配置される。そして、端子保持部材43を前後方向に貫通する固定ねじ56により、前保持板47と後保持板48とが一体化された状態で取付台42に取り付けられ、前保持板47と後保持板48とにより、電極端子45の基端部51が挟持される。
【0058】
電極端子46は、基端部51が端子保持部材44の前保持板47と後保持板48との間に挟まれて、端子接点54,55がローラ電極35の中心(圧砕ローラ18の回転軸線)に対して左方にずれた位置でローラ電極35に接触するように配置される。そして、端子保持部材43を前後方向に貫通する固定ねじ57により、前保持板47と後保持板48とが一体化された状態で取付台42に取り付けられ、前保持板47と後保持板48とにより、電極端子46の基端部51が挟持される。
【0059】
ローラ電極32,35および電極端子45,46は、同種の金属からなり、圧砕ローラ17,18は、ローラ電極32,35および電極端子45,46と異種の金属からなる。スペーサ33,36および固定ねじ31,34の各材料は、ローラ電極32,35および電極端子45,46の材料と同種の金属であってもよいし、ローラ電極32,35および電極端子45,46の材料と異種の金属であってもよい。また、スペーサ33,36および固定ねじ31,34の各材料は、圧砕ローラ17,18の材料と同種の金属であってもよいし、圧砕ローラ17,18の材料と異種の金属であってもよい。ただし、スペーサ33,36および固定ねじ31,34は、ローラ電極32,35と接触するので、異種金属接触腐食の発生を抑制するため、ローラ電極32,35および電極端子45,46の材料と自然電位(イオン化傾向)が近い材料であることが好ましい。たとえば、圧砕ローラ17,18は、鉄からなり、ローラ電極32,35および電極端子45,46は、銅からなり、スペーサ33,36および固定ねじ31,34は、ステンレスからなる。
【0060】
図5は、水分量測定装置11の回路構成を図解的に示す図である。
【0061】
水分量測定装置11は、測定回路61を備えている。測定回路61には、測定用電流を出力する内部定電流源62が含まれる。測定回路61は、電極端子45,46にそれぞれ導線63,64を介して接続される。導線64は、アースに接続されている。圧砕ローラ17の周面と圧砕ローラ18の周面との間で穀粒が圧砕されているときに、内部定電流源62から導線63を介して電極端子45に測定用電流が供給され、このときに生じる電極端子45,46の電位差に応じた信号(電圧)が測定回路61から出力される。電極端子45,46間の電気抵抗値が大きいほど、電極端子45,46の電位差が大きくなるので、測定回路61から出力される信号は、電極端子45,46間の電気抵抗値に応じた信号となる。
【0062】
<コンバインの電気的構成>
図6は、コンバイン1の電気的構成の要部を示すブロック図である。
【0063】
コンバイン1には、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)65が搭載されている。ECU65は、マイコン(マイクロコントローラ)を備えており、マイコンには、たとえば、CPU、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリおよびDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリが内蔵されている。
【0064】
ECU65は、水分量測定装置11に備えられるモータ66を制御して、圧砕ローラ17,18の回転および停止を切り替える。また、ECU65は、圧砕ローラ17,18の回転により、圧砕ローラ17,18の周面間で穀粒が圧砕されているときに、測定回路61の内部定電流源62から電極端子45に測定用電流が供給されるように、測定回路61を制御する。そして、ECU65は、測定回路61が出力する信号から電極端子45,46間の電気抵抗値を取得する。さらに、ECU65は、その取得した電極端子45,46間の電気抵抗値から、検量線を用いて、圧砕ローラ17,18の周面間で圧砕された穀粒、つまり穀粒タンク6内に貯留される穀粒の水分量を求める。
【0065】
また、キャビン4内には、運転席に着座したユーザが視認および操作可能な位置に、操作パネル67が配置されている。操作パネル67は、たとえば、液晶表示器などのディスプレイ上に感圧式または静電容量式の透明フィルムスイッチを重ねて構成されたタッチパネルからなる。操作パネル67には、ECU65の制御により、各種の情報や操作ボタンなどの画像が表示される。また、ユーザが操作ボタンをタッチ操作することにより、そのタッチ操作された操作ボタンの種類に応じた指示が操作パネル67に受け付けられる。操作パネル67に指示が受け付けられると、その指示の内容に応じた信号が操作パネル67からECU65に入力される。
【0066】
<異常検知処理>
図7は、異常検知処理の流れを示すフローチャートである。
【0067】
穀粒の水分量の測定時には、ECU65により、異常検知処理が実行される。
【0068】
異常検知処理では、測定回路61が出力する信号から電極端子45,46間の電気抵抗値が取得される(ステップS1)。
【0069】
そして、電気抵抗値が閾値を超えているか否かが判断される(ステップS2)。
【0070】
ローラ電極32と電極端子45とが接触する局部など、圧砕ローラ17と電極端子45との間で錆が発生して、圧砕ローラ17と電極端子45との間での導通が低下すると、電極端子45,46間の電気抵抗値が大きくなる。また、ローラ電極35と電極端子46とが接触する局部など、圧砕ローラ18と電極端子46との間で錆が発生して、圧砕ローラ18と電極端子46との間での導通が低下すると、電極端子45,46間の電気抵抗値が大きくなる。したがって、電極端子45,46間の電気抵抗値が閾値を超える異常値である場合、圧砕ローラ17と電極端子45との間および/または圧砕ローラ18と電極端子46との間で錆が発生している可能性がある。
【0071】
そこで、電極端子45,46間の電気抵抗値が閾値を超えた場合、水分量測定装置11に異常が発生している旨が操作パネル67に表示されることにより、水分量測定装置11の異常が報知される(ステップS3)。水分量測定装置11の異常が報知されることにより、コンバイン1のユーザに異常解消のためのメンテナンスを行うことを促すことができる。
【0072】
<作用効果>
以上のように、圧砕ローラ17,18の周面間で収穫物である穀粒が圧砕されているときに、測定回路61から電極端子45,46間の電気抵抗値に応じた信号が出力される。圧砕ローラ17のローラ軸25の前端面27および圧砕ローラ18のローラ軸26の前端面28には、それぞれローラ電極32,35が取り替え可能に取り付けられている。これにより、ローラ電極32と電極端子45が接触する局部および/またはローラ電極35と電極端子46とが接触する局部に錆が発生した場合に、ローラ電極32,35を錆の発生していないローラ電極32,35、たとえば、新品のローラ電極32,35と取り替えることができる。ローラ電極32,35を取り替えることにより、それぞれ圧砕ローラ17と電極端子45との間および圧砕ローラ18と電極端子46との間で錆による導通不良が生じることを防止でき、圧砕ローラ17,18間の電気抵抗値を精度よく測定できる。ひいては、圧砕ローラ17,18の周面間で圧砕されている穀粒の水分量を精度よく測定することができる。
【0073】
従来の構成では、電極端子が圧砕ローラの軸に直に接触しているため、圧砕ローラの軸と電極端子とが接触する局部に錆が発生した場合、圧砕ローラを新品と取り替えなければならず、取り替え作業に手間がかかり、また、取り替えに要するコストが高くつく。これに対し、水分量測定装置11では、ローラ電極32と電極端子45とが接触する局部および/またはローラ電極35と電極端子46とが接触する局部に錆が発生した場合に、ローラ電極32,35の取り替えですむので、従来の水分量測定装置と比較して、取り替え作業の手間を軽減でき、取り替えに要するコストを低減できる。
【0074】
水分量測定装置11は、圧砕ローラ17,18を収容する後ケース15および前ケース21を備えている、電極端子45,46は、前ケース21に取替可能に取り付けられている。これにより、ローラ電極32と電極端子45とが接触する局部および/またはローラ電極35と電極端子46とが接触する局部に錆が発生した場合に、電極端子45,46を新品の電極端子45,46など、錆の発生していない電極端子45,46と取り替えることができる。電極端子45,46を取り替えることにより、それぞれ圧砕ローラ17と電極端子45との間および圧砕ローラ18と電極端子46との間で錆による導通不良が生じることを防止でき、圧砕ローラ17,18の周面間の電気抵抗値をより精度よく測定できる。ひいては、圧砕ローラ17,18の周面間で圧砕されている穀粒の水分量をより精度よく測定することができる。
【0075】
ローラ電極32,35は、前ケース21から露出しており、電極端子45,46は、前ケース21外で、それぞれローラ電極32,35に接触する。この構成により、コンバイン1のユーザがローラ電極32と電極端子45とが接触する局部およびローラ電極35と電極端子46とが接触する局部における錆の有無を目視することができる。
【0076】
圧砕ローラ17の前端面27とローラ電極32との間および圧砕ローラ18の前端面28とローラ電極35との間には、スペーサ33,36をが介装されることにより、ローラ電極32,35は、前ケース21から浮いている。これにより、圧砕ローラ17,18の回転時に、ローラ電極32,35が前ケース21に擦れることを防止できる。
【0077】
水分量測定装置11は、前ケース21に対して固定される端子保持部材43,44をさらに含み、電極端子45,46は、それぞれ端子保持部材43,44に保持されて、それぞれ端子保持部材43,44から延出している。そして、端子保持部材43,44が単一の取付台42に取り付けられることにより、電極端子45,46、端子保持部材43,44および取付台42は、端子ユニット41として一体化されている。そのため、端子ユニット41を前ケース21から取り外して、端子ユニット41を新品と取り替えることにより、電極端子45,46、端子保持部材43,44および取付台42をまとめて新品と取り替えることができる。
【0078】
ローラ電極32,35は、電極端子45,46と同種の金属からなる。これにより、ローラ電極32と電極端子45とが接触する局部およびローラ電極35と電極端子46とが接触する局部において、異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)が発生することを防止できる。
【0079】
ローラ電極32は、固定ねじ31により圧砕ローラ17に固定され、ローラ電極35は、固定ねじ34により圧砕ローラ18に固定されている。そして、ローラ電極32,35および電極端子45,46が銅からなり、固定ねじ31,34がステンレスからなる。銅とステンレスとは、自然電位(イオン化傾向)が近いので、ローラ電極32,35が銅からなる場合に、ステンレスの固定ねじ31,34を使用することにより、ローラ電極32,35とそれぞれ固定ねじ31,34とが接触する部分で異種金属接触腐食が発生することを抑制できる。その結果、ローラ電極32,35に異種金属腐食による錆が発生することを抑制でき、圧砕ローラ17と電極端子45との間および圧砕ローラ18と電極端子46との間で錆による導通不良が生じることを一層防止できる。
【0080】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0081】
たとえば、
図8に示されるように、電極端子45,46は、端子アーム52,53が上下方向に延び、端子アーム52,53の途中部が屈曲して、先端部の端子接点54,55がローラ電極32,35に接触していてもよい。
【0082】
電極端子45,46が屈曲することにより、端子接点54,55とローラ電極32,35との接圧が上がる。その結果、ローラ電極32,35と端子接点54,55とが接触する局部における錆の発生を防止でき、錆が発生しても、圧砕ローラ(ローラ電極32,35)の回転時に、端子接点54,55により錆を削り落とすことができる。そのため、圧砕ローラ17,18と電極端子45,46との間で錆による導通不良が生じることを防止できる。
【0083】
また、
図9に示されるように、取付台42の前面には、端子保持部材43,44の取付位置に、それぞれ溝71,72が形成されてもよい。溝71は、端子保持部材43の左右方向の幅に応じた間隔で左右方向に互いに対向する壁面73,74を有している。溝72は、端子保持部材44の左右方向の幅に応じた間隔で左右方向に互いに対向する壁面75,76を有している。そして、端子保持部材43,44がそれぞれ溝71,72に嵌められてもよい。
【0084】
電極端子45が圧砕ローラ17の回転軸線に対して左方にずれた位置でローラ電極32に接触し、電極端子46が圧砕ローラ18の回転軸線に対して左方にずれた位置でローラ電極35に接触していると、圧砕ローラ17,18の回転時に、電極端子45,46が左右方向にぶれて、電極端子45,46とローラ電極32,35との接触状態が不安定になるおそれがある。端子保持部材43,44がそれぞれ溝71の壁面73,74間および溝72の壁面75,76間に配置されることにより、圧砕ローラ17,18の回転時に、それぞれ電極端子45,46が左右方向にぶれることを抑制できる。
【0085】
収穫機の一例として、コンバイン1を取り上げたが、本発明は、コンバイン1に限らず、人参や大根、枝豆、キャベツなどの野菜を収穫する収穫機にも適用することができる。
【0086】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0087】
1:コンバイン(収穫機)
11:水分量測定装置
17,18:圧砕ローラ
21:前ケース(ケース)
25,26:ローラ軸(圧砕ローラ)
27,28:前端面(一端面)
31,34:固定ねじ
32,35:ローラ電極
33,36:スペーサ
42:取付台
43,44:端子保持部材
45,46:電極端子
54,55:端子接点(先端部)
61:測定回路
65:ECU
73,74,75,76:壁面