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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170012
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】水分量測定装置
(51)【国際特許分類】
   A01D 41/127 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
A01D41/127 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086919
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 敬典
(72)【発明者】
【氏名】森原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】寺西 陽之
【テーマコード(参考)】
2B396
【Fターム(参考)】
2B396JA04
2B396JC07
2B396JE01
2B396JE03
2B396JE10
2B396KA04
2B396KA07
2B396KE03
2B396LN02
2B396LR02
2B396QA29
2B396QE31
(57)【要約】
【課題】圧砕ローラと電極端子との間で錆による導通不良が生じることを防止できる、水分量測定装置を提供する。
【解決手段】圧砕ローラ17,18の周面間で収穫物である穀粒が圧砕されているときに、測定回路61から電極端子45に測定用電流が供給されて、測定回路61から電極端子45,46間の電気抵抗値に応じた信号が出力される。ローラ電極32,35と電極端子45,46が接触する局部に錆が発生し、圧砕ローラ17,18と電極端子45,46との間での導通が低下すると、電極端子45,46間の電気抵抗値が大きくなる。そこで、測定回路61の出力信号から取得される電気抵抗値が異常値である場合には、外部定電流源66から電極端子45に測定用電流よりも大きい異常解消電流が供給されて、電極端子45,46間に異常解消電流が流される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫機に搭載されて、前記収穫機に収穫される収穫物の水分量を測定する水分量測定装置であって、
周面が互いに近接して配置され、回転により互いの周面間で前記収穫物を圧砕する1対の圧砕ローラと、
前記圧砕ローラのそれぞれの一端面に取り付けられるローラ電極と、
前記ローラ電極のそれぞれに接触する電極端子と、
一方の前記圧砕ローラの周面と他方の前記圧砕ローラの周面との間で前記収穫物が圧砕されているときに、前記電極端子に測定用電流を供給して、一方の前記電極端子と他方の前記電極端子との間の電気抵抗値に応じた信号を出力する測定回路と、
制御装置と、を含み、
前記制御装置は、
前記測定回路が出力する信号から前記電気抵抗値を取得する取得処理と、
前記取得処理で取得した前記電気抵抗値が異常値であるか否かを判断する判断処理と、
前記判断処理で前記電気抵抗値が異常値であると判断した場合に、前記測定用電流よりも大きい異常解消電流を一方の前記電極端子と他方の前記電極端子との間に流す電流処理と、を実行する、水分量測定装置。
【請求項2】
収穫機に搭載されて、前記収穫機に収穫される収穫物の水分量を測定する水分量測定装置であって、
周面が互いに近接して配置され、回転により互いの周面間で前記収穫物を圧砕する1対の圧砕ローラと、
前記圧砕ローラのそれぞれに接触する電極端子と、
一方の前記圧砕ローラの周面と他方の前記圧砕ローラの周面との間で前記収穫物が圧砕されているときに、前記電極端子に測定用電流を供給して、一方の前記電極端子と他方の前記電極端子との間の電気抵抗値に応じた信号を出力する測定回路と、
制御装置と、を含み、
前記制御装置は、
前記測定回路が出力する信号から前記電気抵抗値を取得する取得処理と、
前記取得処理で取得した前記電気抵抗値が異常値であるか否かを判断する判断処理と、
前記判断処理で前記電気抵抗値が異常値であると判断した場合に、前記測定用電流よりも大きい異常解消電流を一方の前記電極端子と他方の前記電極端子との間に流す電流処理と、を実行する、水分量測定装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記判断処理で前記電気抵抗値が異常値であると判断したことに応じて、前記電流処理を実行する、請求項1または2に記載の水分量測定装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記判断処理で前記電気抵抗値が異常値であると判断したことに応じて、異常を報知する異常報知処理を実行し、
前記異常報知処理後、外部から前記電流処理の実行の指示が入力されたことに応じて、前記電流処理を実行する、請求項1または2に記載の水分量測定装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記電流処理後、前記取得処理および前記判断処理を再実行し、
その再実行した前記判断処理で前記電気抵抗値が異常値であると判断した場合、前記電流処理を再実行する、請求項1または2に記載の水分量測定装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記電流処理を所定回数実行した後に、前記取得処理および前記判断処理を再実行し、
その再実行した前記判断処理で前記電気抵抗値が異常値であると判断した場合、前記電極端子の交換を報知する交換報知処理を実行する、請求項5に記載の水分量測定装置。
【請求項7】
収穫機に搭載されて、前記収穫機に収穫される収穫物の水分量を測定する水分量測定装置であって、
周面が互いに近接して配置され、回転により互いの周面間で前記収穫物を圧砕する1対の圧砕ローラと、
前記圧砕ローラのそれぞれの一端面に取り付けられるローラ電極と、
前記ローラ電極のそれぞれに接触する電極端子と、
前記電極端子と第1導線を介して電気的に接続され、測定用電流を出力する内部定電流源を有する測定回路と、
前記電極端子と第2導線を介して電気的に接続され、前記測定用電流よりも大きい異常解消電流を出力する外部定電流源と、
前記第1導線に設けられ、開閉により前記第1導線における切断および導通を切り替える第1スイッチと、
前記第2導線に設けられ、開閉により前記第2導線における切断および導通を切り替える第2スイッチと、
一方の前記ローラ電極と他方の前記ローラ電極とを電気的に接続する第3導線に設けられ、開閉により前記第3導線における切断および導通を切り替える第3スイッチと、を含み、
前記第1スイッチが閉じられ、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチが開かれて、一方の前記圧砕ローラの周面と他方の前記圧砕ローラの周面との間で前記収穫物が圧砕されているときに、前記内部定電流源から前記電極端子に前記測定用電流が供給されて、前記測定回路から一方の前記電極端子と他方の前記電極端子との間の電気抵抗値に応じた信号が出力される測定状態と、前記第1スイッチが開かれ、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチが閉じられて、前記外部定電流源から前記電極端子に前記異常解消電流が供給されて、前記第3導線に前記異常解消電流が流れる電流処理状態とを有する、水分量測定装置。
【請求項8】
収穫機に搭載されて、前記収穫機に収穫される収穫物の水分量を測定する水分量測定装置であって、
周面が互いに近接して配置され、回転により互いの周面間で前記収穫物を圧砕する1対の圧砕ローラと、
前記圧砕ローラのそれぞれに接触する電極端子と、
前記電極端子と第1導線を介して電気的に接続され、測定用電流を出力する内部定電流源を有する測定回路と、
前記電極端子と第2導線を介して電気的に接続され、前記測定用電流よりも大きい異常解消電流を出力する外部定電流源と、
前記第1導線に設けられ、開閉により前記第1導線における切断および導通を切り替える第1スイッチと、
前記第2導線に設けられ、開閉により前記第2導線における切断および導通を切り替える第2スイッチと、
一方の前記圧砕ローラと他方の前記圧砕ローラとを電気的に接続する第3導線に設けられ、開閉により前記第3導線における切断および導通を切り替える第3スイッチと、を含み、
前記第1スイッチが閉じられ、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチが開かれて、一方の前記圧砕ローラの周面と他方の前記圧砕ローラの周面との間で前記収穫物が圧砕されているときに、前記内部定電流源から前記電極端子に前記測定用電流が供給されて、前記測定回路から一方の前記圧砕ローラと他方の前記圧砕ローラとの間の電気抵抗値に応じた信号が出力される測定状態と、前記第1スイッチが開かれ、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチが閉じられて、前記外部定電流源から前記電極端子に前記異常解消電流が供給されて、前記第3導線に前記異常解消電流が流れる電流処理状態とを有する、水分量測定装置。
【請求項9】
前記第1スイッチ、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチの開閉を制御する制御装置、をさらに含む、請求項7または8に記載の水分量測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインなどの収穫機に搭載されて、収穫機に収穫される収穫物の水分量を測定する水分量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、コンバインは、米や麦などの穀粒を収穫する収穫機である。コンバインでは、圃場に植立している作物が刈取装置により刈られ、その刈られた作物が刈取装置から脱穀装置に搬送されて、脱穀装置で作物の穀稈から穀粒が外される。穀稈から外れた穀粒は、脱穀装置から穀粒タンク内の上部に設けられた排出部に搬送され、その排出部から穀粒タンク内に排出されて収集される。
【0003】
コンバインには、穀粒の水分量を測定するため、電気抵抗式の水分量測定装置(水分計)を穀粒タンク内に備えるものがある。水分量測定装置は、排出部から排出される穀粒を受け入れることができる位置に配置される。水分量測定装置には、1対の圧砕ローラが備えられ、電極ローラ間の電気抵抗値を測定するための電極端子が各圧砕ローラの軸に接触して設けられている。水分量測定装置内に受け入れられた穀粒は、圧砕ローラの回転により、圧砕ローラの周面間に巻き込まれて、圧砕ローラの周面間で圧砕される。圧砕ローラの周面間に穀粒の圧砕物が挟まれた状態で、圧砕ローラ間の電気抵抗値が測定され、その電気抵抗値から穀粒の水分量が求められる(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6451513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の水分量測定装置では、圧砕ローラの軸と電極端子とが接触する局部に錆が発生することが判った。その錆が発生すると、圧砕ローラと電極端子との間で導通不良が生じ、圧砕ローラ間の電気抵抗値を精度よく測定できなくなる。
【0006】
本発明の目的は、圧砕ローラと電極端子との間で錆による導通不良が生じることを防止できる、水分量測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明の一の局面に係る水分量測定装置は、収穫機に搭載されて、収穫機に収穫される収穫物の水分量を測定する水分量測定装置であって、周面が互いに近接して配置され、回転により互いの周面間で収穫物を圧砕する1対の圧砕ローラと、圧砕ローラのそれぞれの一端面に取り付けられるローラ電極と、ローラ電極のそれぞれに接触する電極端子と、一方の圧砕ローラの周面と他方の圧砕ローラの周面との間で収穫物が圧砕されているときに、電極端子に測定用電流を供給して、一方の電極端子と他方の電極端子との間の電気抵抗値に応じた信号を出力する測定回路と、制御装置とを含み、制御装置は、測定回路が出力する信号から電気抵抗値を取得する取得処理と、取得処理で取得した電気抵抗値が異常値であるか否かを判断する判断処理と、判断処理で電気抵抗値が異常値であると判断した場合に、測定用電流よりも大きい異常解消電流を一方の電極端子と他方の電極端子との間に流す電流処理とを実行する。
【0008】
この構成によれば、圧砕ローラの周面と他方の圧砕ローラの周面との間で収穫物が圧砕されているときに、測定回路から電極端子に測定用電流が供給されて、測定回路から一方の電極端子と他方の電極端子との間の電気抵抗値に応じた信号が出力される。ローラ電極と電極端子とが接触する局部に錆が発生し、圧砕ローラと電極端子との間での導通が低下すると、一方の電極端子と他方の電極端子との間の電気抵抗値が大きくなる。そこで、測定回路の出力信号から取得される電気抵抗値が異常値である場合には、一方の電極端子と他方の電極端子との間に測定用電流よりも大きい異常解消電流が流される。これにより、ローラ電極と電極端子との間でアークが生じ、アークによるクリーニング作用で錆(酸化被膜)を破壊することができる。その結果、圧砕ローラと電極端子との間で錆による導通不良が生じることを防止でき、一方の圧砕ローラと他方の圧砕ローラとの間の電気抵抗値を精度よく測定できる。ひいては、一方の圧砕ローラと他方の圧砕ローラとの間で圧砕されている収穫物の水分量を精度よく測定することができる。
【0009】
また、本発明の他の局面に係る水分量測定装置は、収穫機に搭載されて、収穫機に収穫される収穫物の水分量を測定する水分量測定装置であって、周面が互いに近接して配置され、回転により互いの周面間で収穫物を圧砕する1対の圧砕ローラと、圧砕ローラのそれぞれに接触する電極端子と、一方の圧砕ローラの周面と他方の圧砕ローラの周面との間で収穫物が圧砕されているときに、電極端子に測定用電流を供給して、一方の電極端子と他方の電極端子との間の電気抵抗値に応じた信号を出力する測定回路と、制御装置とを含み、制御装置は、測定回路が出力する信号から電気抵抗値を取得する取得処理と、取得処理で取得した電気抵抗値が異常値であるか否かを判断する判断処理と、判断処理で電気抵抗値が異常値であると判断した場合に、測定用電流よりも大きい異常解消電流を一方の電極端子と他方の電極端子との間に流す電流処理とを実行する。
【0010】
この構成によれば、圧砕ローラの周面と他方の圧砕ローラの周面との間で収穫物が圧砕されているときに、測定回路から電極端子に測定用電流が供給されて、測定回路から一方の電極端子と他方の電極端子との間の電気抵抗値に応じた信号が出力される。圧砕ローラと電極端子とが接触する局部に錆が発生し、圧砕ローラと電極端子との間での導通が低下すると、一方の電極端子と他方の電極端子との間の電気抵抗値が大きくなる。そこで、測定回路の出力信号から取得される電気抵抗値が異常値である場合には、一方の電極端子と他方の電極端子との間に測定用電流よりも大きい異常解消電流が流される。これにより、圧砕ローラと電極端子との間でアークが生じ、アークによるクリーニング作用で錆(酸化被膜)を破壊することができる。その結果、圧砕ローラと電極端子との間で錆による導通不良が生じることを防止でき、一方の圧砕ローラと他方の圧砕ローラとの間の電気抵抗値を精度よく測定できる。ひいては、一方の圧砕ローラと他方の圧砕ローラとの間で圧砕されている収穫物の水分量を精度よく測定することができる。
【0011】
制御装置は、判断処理で電気抵抗値が異常値であると判断したことに応じて、電流処理を(自動的に)実行してもよい。
【0012】
また、制御装置は、判断処理で電気抵抗値が異常値であると判断したことに応じて、異常を報知する異常報知処理を実行し、異常報知処理後、外部から電流処理の実行の指示が入力されたことに応じて、電流処理を実行してもよい。
【0013】
収穫機に情報の表示および入力のための操作パネル(メータパネル)が設けられている場合、操作パネルの表示により異常が報知され、操作パネルの操作により操作パネルから制御装置に電流処理の実行の指示が入力されてもよい。
【0014】
制御装置は、取得処理から電流処理までの一連の処理を所定回数実行した後、取得処理および判断処理を実行し、最後の判断処理で電気抵抗値が異常値であると判断したことに応じて、電極端子の交換を報知する交換報知処理を実行してもよい。
【0015】
制御装置は、電流処理後、取得処理および判断処理を再実行し、その再実行した判断処理で電気抵抗値が異常値であると判断した場合、電流処理を再実行してもよい。
【0016】
電流処理が繰り返されることにより、圧砕ローラと電極端子との間での導通を良好な状態に回復させることができ、圧砕ローラと電極端子との間で錆による導通不良が生じることを防止できる。
【0017】
制御装置は、電流処理を所定回数実行した後に、取得処理および判断処理を再実行し、その再実行した前記判断処理で前記電気抵抗値が異常値であると判断した場合、前記電極端子の交換を報知する交換報知処理を実行してもよい。
【0018】
電流処理の実行が所定回数繰り返されてもなお、電気抵抗値が異常値である場合、電極端子の交換を報知することにより、収穫機のユーザに電極端子の交換を促すことができる。
【0019】
本発明のさらに他の局面に係る水分量測定装置は、収穫機に搭載されて、収穫機に収穫される収穫物の水分量を測定する水分量測定装置であって、周面が互いに近接して配置され、回転により互いの周面間で収穫物を圧砕する1対の圧砕ローラと、圧砕ローラのそれぞれの一端面に取り付けられるローラ電極と、ローラ電極のそれぞれに接触する電極端子と、電極端子と第1導線を介して電気的に接続され、測定用電流を出力する内部定電流源を有する測定回路と、電極端子と第2導線を介して電気的に接続され、測定用電流よりも大きい異常解消電流を出力する外部定電流源と、第1導線に設けられ、開閉により第1導線における切断および導通を切り替える第1スイッチと、第2導線に設けられ、開閉により第2導線における切断および導通を切り替える第2スイッチと、一方のローラ電極と他方のローラ電極とを電気的に接続する第3導線に設けられ、開閉により第3導線における切断および導通を切り替える第3スイッチとを含み、第1スイッチが閉じられ、第2スイッチおよび第3スイッチが開かれて、一方の圧砕ローラの周面と他方の圧砕ローラの周面との間で収穫物が圧砕されているときに、内部定電流源から電極端子に測定用電流が供給されて、測定回路から一方の電極端子と他方の電極端子との間の電気抵抗値に応じた信号が出力される測定状態と、第1スイッチが開かれ、第2スイッチおよび第3スイッチが閉じられて、外部定電流源から電極端子に異常解消電流が供給されて、第3導線に異常解消電流が流れる電流処理状態とを有する。
【0020】
この構成によれば、測定状態では、一方の圧砕ローラの周面と他方の圧砕ローラの周面との間で収穫物が圧砕されているときに、測定回路の内部定電流源から電極端子に測定用電流が供給されて、測定回路から一方の電極端子と他方の電極端子との間の電気抵抗値に応じた信号が出力される。測定状態では、ローラ電極と電極端子とが接触する局部に錆が発生し、圧砕ローラと電極端子との間での導通が低下することがある。電流処理状態では、外部定電流源から電極端子に異常解消電流が供給されて、一方のローラ電極と他方のローラ電極とを接続する第3導線に異常解消電流が流れる。これにより、ローラ電極と電極端子との間でアークが生じ、アークによるクリーニング作用で錆(酸化被膜)を破壊することができる。したがって、適当なタイミングで測定状態から電流処理状態に切り替えられることにより、圧砕ローラと電極端子との間で錆による導通不良が生じることを防止でき、一方の圧砕ローラと他方の圧砕ローラとの間の電気抵抗値を精度よく測定できる。ひいては、一方の圧砕ローラと他方の圧砕ローラとの間で圧砕されている収穫物の水分量を精度よく測定することができる。
【0021】
また、本発明のさらに他の局面に係る水分量測定装置は、収穫機に搭載されて、収穫機に収穫される収穫物の水分量を測定する水分量測定装置であって、周面が互いに近接して配置され、回転により互いの周面間で収穫物を圧砕する1対の圧砕ローラと、圧砕ローラのそれぞれに接触する電極端子と、電極端子と第1導線を介して電気的に接続され、測定用電流を出力する内部定電流源を有する測定回路と、電極端子と第2導線を介して電気的に接続され、測定用電流よりも大きい異常解消電流を出力する外部定電流源と、第1導線に設けられ、開閉により第1導線における切断および導通を切り替える第1スイッチと、第2導線に設けられ、開閉により第2導線における切断および導通を切り替える第2スイッチと、一方の圧砕ローラと他方の圧砕ローラとを電気的に接続する第3導線に設けられ、開閉により第3導線における切断および導通を切り替える第3スイッチとを含み、第1スイッチが閉じられ、第2スイッチおよび第3スイッチが開かれて、一方の圧砕ローラの周面と他方の圧砕ローラの周面との間で収穫物が圧砕されているときに、内部定電流源から電極端子に測定用電流が供給されて、測定回路から一方の圧砕ローラと他方の圧砕ローラとの間の電気抵抗に応じた信号が出力される測定状態と、第1スイッチが開かれ、第2スイッチおよび第3スイッチが閉じられて、外部定電流源から電極端子に異常解消電流が供給されて、第3導線に異常解消電流が流れる電流処理状態とを有する。
【0022】
この構成によれば、測定状態では、一方の圧砕ローラの周面と他方の圧砕ローラの周面との間で収穫物が圧砕されているときに、測定回路の内部定電流源から電極端子に測定用電流が供給されて、測定回路から一方の電極端子と他方の電極端子との間の電気抵抗値に応じた信号が出力される。測定状態では、圧砕ローラと電極端子とが接触する局部に錆が発生し、圧砕ローラと電極端子との間での導通が低下することがある。電流処理状態では、外部定電流源から電極端子に異常解消電流が供給されて、一方の圧砕ローラと他方の圧砕ローラとを電気的に接続する第3導線に異常解消電流が流れる。これにより、圧砕ローラと電極端子との間でアークが生じ、アークによるクリーニング作用で錆(酸化被膜)を破壊することができる。したがって、適当なタイミングで測定状態から電流処理状態に切り替えられることにより、圧砕ローラと電極端子との間で錆による導通不良が生じることを防止でき、一方の圧砕ローラと他方の圧砕ローラとの間の電気抵抗値を精度よく測定できる。ひいては、一方の圧砕ローラと他方の圧砕ローラとの間で圧砕されている収穫物の水分量を精度よく測定することができる。
【0023】
水分量測定装置は、第1スイッチ、第2スイッチおよび第3スイッチの開閉を制御する制御装置をさらに含む構成であってもよい。
【0024】
電極端子は、一方の圧砕ローラと他方の圧砕ローラとの間に電流を供給するための電流源端子と、一方の圧砕ローラと他方の圧砕ローラとの間の電位差を検出するための検出端子と、を備えていてもよい。すなわち、測定回路は、4端子法により電気抵抗値を測定する構成であってもよい。
【0025】
この構成によれば、2端子法により電気抵抗値を測定する構成よりも、一方の圧砕ローラと他方の圧砕ローラとの間の電気抵抗値を精度よく測定でき、ひいては、一方の圧砕ローラと他方の圧砕ローラとの間で圧砕されている収穫物の水分量を精度よく測定することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、圧砕ローラと電極端子との間で錆による導通不良が生じることを防止できる。そのため、一方の圧砕ローラと他方の圧砕ローラとの間の電気抵抗値を精度よく測定でき、ひいては、一方の圧砕ローラと他方の圧砕ローラとの間で圧砕されている収穫物の水分量を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係る水分量測定装置が搭載されるコンバインの右側面図である。
図2】水分量測定装置の斜視図である。
図3】水分量測定装置を前方から見た図である。
図4】ローラユニットの前下部を前下方から見た斜視図である。
図5】水分量測定装置の回路構成を図解的に示す図である。
図6】コンバインの電気的構成の要部を示すブロック図である。
図7】異常解消制御の流れを示すフローチャートである。
図8】変形例に係る異常解消制御の流れを示すフローチャートである。
図9】変形例に係る電極端子の側面図である。
図10】変形例に係る取付台を前方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0029】
<コンバインの全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る水分量測定装置が搭載されるコンバイン1の右側面図である。
【0030】
コンバイン1は、圃場を走行しながら作物の刈り取りおよび作物からの脱穀を行う農業機械であり、穀粒を収穫する収穫機である。
【0031】
コンバイン1は、圃場などの不整地を走破する能力を有する走行装置として、左右1対のクローラ走行装置2を採用している。左右のクローラ走行装置2により、機体フレーム3が支持され、クローラ走行装置2には、機体フレーム3上に設けられたエンジンの動力がトランスミッションを介して伝達される。
【0032】
また、機体フレーム3上には、キャビン4、脱穀装置5および穀粒タンク6が設けられている。クローラ走行装置2および機体フレーム3の前方には、作物を刈り取る刈取装置7が設けられている。
【0033】
キャビン4は、機体フレーム3の前端部上に配置されている。キャビン4は、その内部にユーザが搭乗する空間を提供し、その空間内には、たとえば、ユーザが着座する運転席、ユーザが操作する操作レバーなどが配置されている。キャビン4の右側面には、開閉可能なドア8が設けられており、ユーザは、ドア8を開いて、キャビン4内に乗り込むことができる。
【0034】
脱穀装置5は、キャビン4の左後方に配置されている。穀粒タンク6は、キャビン4の後方かつ脱穀装置5の右方に配置されている。脱穀装置5では、作物を脱穀して得られる選別対象物が選別されて回収される。回収された選別対象物(穀粒)は、穀粒タンク6に搬送されて、穀粒タンク6に貯留される。穀粒タンク6には、アンローダ9が接続されており、穀粒タンク6に貯留された穀粒は、アンローダ9により、穀粒タンク6から機外に排出することができる。
【0035】
<水分量測定装置>
図2は、水分量測定装置11の斜視図である。
【0036】
穀粒タンク6内には、穀粒タンク6に貯留される穀粒の水分量を測定する水分量測定装置11が設けられている。また、図示されていないが、穀粒タンク6内には、脱穀装置5から搬送される穀粒を排出する排出部が設けられている。排出部には、上下方向に延びる軸線を中心に回転する回転羽根が設けられており、排出部に搬送されてくる穀粒は、回転する回転羽根により掃き飛ばされる。水分量測定装置11は、排出部から排出される穀粒を受け入れることができる位置、たとえば、穀粒タンク6の前内壁面に配置される。
【0037】
以下では、水分量測定装置11が穀粒タンク6の前内壁面に配置されているとして、水分量測定装置11の前後方向、左右方向および上下方向をコンバイン1の前後方向、左右方向および上下方向と同じ方向とする。
【0038】
水分量測定装置11は、箱型の筐体12を備えている。筐体12内には、ローラユニット13が設けられており、筐体12の後面には、ローラユニット13の後面を露出させる開口14が形成されている。
【0039】
ローラユニット13は、前面が開放された後ケース15を備えている。後ケース15の後面には、後ケース15内に穀粒を受け入れるための受入口16が形成されている。
【0040】
後ケース15内には、1対の圧砕ローラ17,18が収容されている。圧砕ローラ17,18は、受入口16の後方に、それらの回転軸線が前後方向に延びるように、左右に並べて配置されている。圧砕ローラ17,18の周面間には、たとえば、米(籾米)のサイズに応じた間隔、米の幅(長手方向と直交する方向の長さ)よりもやや小さい間隔が空けられている。圧砕ローラ17,18の周面には、微小な凹凸が多数形成されている。圧砕ローラ17,18は、モータ82(図6参照)の動力により、左の圧砕ローラ17が時計回りに回転し、右の圧砕ローラ18が反時計回りに回転する。
【0041】
穀粒タンク6内の排出部から飛散する穀粒の一部は、筐体12の位置に到達し、筐体12の受入口16から筐体12内に直接受け入れられる。また、筐体12の後面には、案内部材19が取り付けられており、案内部材19上に到達した穀粒は、案内部材19上を流動して、案内部材19から落下し、受入口16から後ケース15内に受け入れられる。受入口16から後ケース15内に受け入れられた穀粒は、圧砕ローラ17,18の周面上に貯まる。そして、圧砕ローラ17,18が回転すると、穀粒が圧砕ローラ17,18の周面間に挟まれて圧砕される。
【0042】
図3は、水分量測定装置11を前方から見た図である。
【0043】
ローラユニット13は、板状の前ケース21を備えている。前ケース21は、後ケース15の前面を閉鎖するように設けられ、後ケース15と前ケース21とにより、圧砕ローラ17,18を収容するローラ収容空間が提供されている。
【0044】
図4は、ローラユニット13の前下部を前下方から見た斜視図である。
【0045】
前ケース21には、圧砕ローラ17,18の軸線上に、それぞれ円形の開口22,23が形成されている。圧砕ローラ17,18は、それぞれローラ軸25,26を一体的に有している。ローラ軸25の前端面27およびローラ軸26の前端面28(図9参照)は、それぞれ開口22,23から前方に露出している。
【0046】
ローラ軸25の前端面27には、固定ねじ31により、円環板状のローラ電極32およびスペーサ33が取替可能に取り付けられている。具体的には、固定ねじ31は、互いに重ね合わされたローラ電極32およびスペーサ33の中央に、ローラ電極32側から挿通される。ローラ軸25の前端面27の中央には、ねじ穴が形成されており、そのねじ穴にローラ電極32およびスペーサ33に挿通された固定ねじ31の先端部がねじ込まれる。これにより、ローラ軸25の前端面27とローラ電極32との間にスペーサ33が介在された状態で、ローラ電極32およびスペーサ33がローラ軸25に対して固定される。ローラ軸25の前端面27とローラ電極32との間にスペーサ33が介在されていることにより、ローラ電極32は、前ケース21から浮いた状態で、前ケース21と非接触に設けられている。固定ねじ31が外されると、ローラ軸25に対するローラ電極32およびスペーサ33の固定が解除される。したがって、固定ねじ31を外すことにより、ローラ電極32およびスペーサ33をローラ軸25から取り外すことができる。そして、固定ねじ31により、別のローラ電極32およびスペーサ33をローラ軸25の前端面27に取り付けることができる。
【0047】
ローラ軸26の前端面27には、固定ねじ34により、円環板状のローラ電極35およびスペーサ36が取替可能に取り付けられている。ローラ電極35およびスペーサ36の取り付けの構成は、ローラ電極32およびスペーサ33の取り付けの構成と同様であるから、その説明を省略する。
【0048】
前ケース21には、端子ユニット41が取り付けられている。端子ユニット41は、取付台42と、取付台42に取り付けられる端子保持部材43,44と、端子保持部材43,44にそれぞれ保持される電極端子45,46とを備えている。
【0049】
取付台42は、略矩形板状をなしている。取付台42は、前ケース21の前面において、ローラ電極32,35の下方の位置に、上下方向よりも左右方向に長く延びるように配置されている。取付台42は、たとえば、2本の固定ねじ37により、前ケース21に取り付けられている。
【0050】
端子保持部材43,44は、取付台42の前面において、それぞれローラ電極32,35の中心に対して左方にずれた位置に配置されている。端子保持部材43,44は、同じ構成であり、端子保持部材43,44のそれぞれは、前後に重ね合わされる前保持板47および後保持板48を備えている。
【0051】
電極端子45,46は、同じ構成である。ここでは、電極端子45の構成を取り上げて説明し、電極端子46の構成についての説明を省略し、図3および図4では、電極端子46について、電極端子45の各部に相当する部分には、電極端子45の各部と同一の参照符号が付されている。
【0052】
電極端子45の基端部51は、略矩形板状をなしている。電極端子45は、基端部51から基端部51の長手方向に延びる2本の端子アーム52,53を有している。端子アーム52,53の先端部の一方面には、略半円板状の端子接点54,55が突出して設けられている。
【0053】
電極端子45は、基端部51が端子保持部材43の前保持板47と後保持板48との間に挟まれて、端子接点54,55がローラ電極32の中心(圧砕ローラ17の回転軸線)に対して左方にずれた位置でローラ電極32に接触するように配置される。そして、端子保持部材43を前後方向に貫通する固定ねじ56により、前保持板47と後保持板48とが一体化された状態で取付台42に取り付けられ、前保持板47と後保持板48とにより、電極端子45の基端部51が挟持される。
【0054】
電極端子46は、基端部51が端子保持部材44の前保持板47と後保持板48との間に挟まれて、端子接点54,55がローラ電極35の中心(圧砕ローラ18の回転軸線)に対して右方にずれた位置でローラ電極35に接触するように配置される。そして、端子保持部材43を前後方向に貫通する固定ねじ57により、前保持板47と後保持板48とが一体化された状態で取付台42に取り付けられ、前保持板47と後保持板48とにより、電極端子46の基端部51が挟持される。
【0055】
ローラ電極32,35および電極端子45,46は、同種の金属からなり、圧砕ローラ17,18は、ローラ電極32,35および電極端子45,46と異種の金属からなる。スペーサ33,36および固定ねじ31,34の各材料は、ローラ電極32,35および電極端子45,46の材料と同種の金属であってもよいし、ローラ電極32,35および電極端子45,46の材料と異種の金属であってもよい。また、スペーサ33,36および固定ねじ31,34の各材料は、圧砕ローラ17,18の材料と同種の金属であってもよいし、圧砕ローラ17,18の材料と異種の金属であってもよい。ただし、スペーサ33,36および固定ねじ31,34は、ローラ電極32,35と接触するので、異種金属接触腐食の発生を抑制するため、ローラ電極32,35および電極端子45,46の材料と自然電位(イオン化傾向)が近い材料であることが好ましい。たとえば、圧砕ローラ17,18は、鉄からなり、ローラ電極32,35および電極端子45,46は、銅からなり、スペーサ33,36および固定ねじ31,34は、ステンレスからなる。
【0056】
図5は、水分量測定装置11の回路構成を図解的に示す図である。
【0057】
水分量測定装置11は、測定回路61を備えている。測定回路61には、測定用電流を出力する内部定電流源62が含まれる。測定回路61は、電極端子45,46にそれぞれ第1導線63,64を介して接続される。第1導線63には、第1スイッチ65が設けられている。第1スイッチ65の開閉により、第1導線63における切断および導通が切り替わる。第1導線64は、アースに接続されている。
【0058】
また、電極端子45には、外部定電流源66が第2導線67を介して接続されている。外部定電流源66は、たとえば、後述するECU81(図6参照)に内蔵されている。第2導線67には、第2スイッチ68が設けられている。第2スイッチ68の開閉により、第2導線67における切断および導通が切り替わる。
【0059】
さらに、水分量測定装置11には、図3および図4には示されていないが、図5に示されるように、電極端子71,72が備えられている。電極端子71,72は、電極端子45,46と同様の構成であり、2本の端子アーム73,74を有している。電極端子71は、端子アーム73,74のそれぞれの先端部に設けられた端子接点がローラ電極32の中心(圧砕ローラ17の回転軸線)に対して右方にずれた位置でローラ電極32に接触するように配置される。電極端子72は、端子アーム73,74のそれぞれの先端部に設けられた端子接点がローラ電極35の中心(圧砕ローラ18の回転軸線)に対して左方にずれた位置でローラ電極35に接触するように配置される。電極端子71,72には、それぞれ第3導線75の一端および他端が接続されている。これにより、電極端子45,46は、ローラ電極32,35、電極端子71,72および第3導線75を介して電気的に接続される。第3導線75には、第3スイッチ76が設けられている。第3スイッチ76の開閉により、第3導線75における切断および導通が切り替わる。
【0060】
<コンバインの電気的構成>
図6は、コンバイン1の電気的構成の要部を示すブロック図である。
【0061】
コンバイン1には、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)81が搭載されている。ECU81は、マイコン(マイクロコントローラ)を備えており、マイコンには、たとえば、CPU、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリおよびDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリが内蔵されている。
【0062】
ECU81は、水分量測定装置11に備えられるモータ82を制御して、圧砕ローラ17,18の回転および停止を切り替える。また、ECU81は、測定回路61の第1スイッチ65、第2スイッチ68および第3スイッチ76の開閉を制御する。
【0063】
第1スイッチ65、第2スイッチ68および第3スイッチ76の開閉により、水分量測定装置11は、測定回路61の内部定電流源62から電極端子45に測定用電流が供給される測定状態と、外部定電流源66から電極端子45に異常解消電流が供給される電流処理状態とに切り替わる。すなわち、第1スイッチ65が閉じられ、第2スイッチ68および第3スイッチ76が開かれることにより、測定回路61の内部定電流源62と電極端子45とが電気的に接続され、水分量測定装置11は、内部定電流源62から電極端子45に測定用電流が供給される測定状態となる。また、第1スイッチ65が開かれ、第2スイッチ68および第3スイッチ76が閉じられることにより、水分量測定装置11は、外部定電流源66から電極端子45に測定用電流よりも大きい異常解消電流が供給される電流処理状態となる。
【0064】
ECU81は、穀粒タンク6内に貯留される穀粒の水分量を測定する際には、水分量測定装置11を測定状態にする。圧砕ローラ17,18の周面間で穀粒が圧砕されているときに、測定回路61の内部定電流源62から電極端子45に測定用電流が供給されることにより、電極端子45,46に電位差が生じ、その電位差に応じた信号(電圧)が測定回路61から出力される。電極端子45,46間の電気抵抗値が大きいほど、電極端子45,46の電位差が大きくなるので、測定回路61から出力される信号は、電極端子45,46間の電気抵抗値に応じた信号となる。ECU81は、測定回路61が出力する信号から電極端子45,46間の電気抵抗値を取得する。さらに、ECU81は、その取得した電極端子45,46間の電気抵抗値から、検量線を用いて、圧砕ローラ17,18の周面間で圧砕された穀粒の水分量を求める。
【0065】
キャビン4内には、運転席に着座したユーザが視認および操作可能な位置に、操作パネル83が配置されている。操作パネル83は、たとえば、液晶表示器などのディスプレイ上に感圧式または静電容量式の透明フィルムスイッチを重ねて構成されたタッチパネルからなる。操作パネル83には、ECU81の制御により、各種の情報や操作ボタンなどの画像が表示される。また、ユーザが操作ボタンをタッチ操作することにより、そのタッチ操作された操作ボタンの種類に応じた指示が操作パネル83に受け付けられる。操作パネル83に指示が受け付けられると、その指示の内容に応じた信号が操作パネル83からECU81に入力される。
【0066】
<異常解消制御>
図7は、異常解消制御の流れを示すフローチャートである。
【0067】
たとえば、ローラ電極32と電極端子45とが接触する局部で錆が発生すると、圧砕ローラ17と電極端子45との間での導通が低下し、電極端子45,46間の電気抵抗値が大きくなる。また、ローラ電極35と電極端子46とが接触する局部で錆が発生すると、圧砕ローラ18と電極端子46との間での導通が低下し、電極端子45,46間の電気抵抗値が大きくなる。錆が原因で電極端子45,46間の電気抵抗値が大きくなると、穀粒タンク6内に貯留される穀粒の水分量を精度よく求めることができない。
【0068】
そこで、錆による異常を解消するため、ECU81により、異常解消制御が実行される。
【0069】
異常解消制御では、第1スイッチ65が閉じられ、第2スイッチ68および第3スイッチ76が開かれて(ステップS11)、水分量測定装置11が測定状態とされる。
【0070】
その後、測定回路61が出力する信号から電極端子45,46間の電気抵抗値が取得される(ステップS12:取得処理)。そして、電極端子45,46間の電気抵抗値が閾値を超えているか否かが判断される(ステップS13:判断処理)。
【0071】
電気抵抗値の取得(ステップS12)および電気抵抗値が閾値を超えているか否かの判断(ステップS13)は、圧砕ローラ17,18の周面間で穀粒が圧砕されているときに実行されてもよい。
【0072】
電極端子45,46間の電気抵抗値が閾値を超えていない場合(ステップS13のNO)、錆による異常が発生していないので、異常解消制御が終了される。
【0073】
電極端子45,46間の電気抵抗値が閾値を超える異常値である場合(ステップS13のYES)、第1スイッチ65が開かれ、第2スイッチ68および第3スイッチ76が閉じられて(ステップS14)、水分量測定装置11が測定状態から電流処理状態に切り替えられる。これにより、外部定電流源66から電極端子45に測定用電流よりも大きい異常解消電流が供給される(ステップS15:電流処理)。
【0074】
また、ECU81の揮発性メモリに設定されている電流処理回数カウンタのカウント値Nがインクリメント(+1)される(ステップS16)。カウント値Nは、たとえば、新品の電極端子45,46が水分量測定装置11に組み込まれた時点で0にリセットされる。
【0075】
異常解消電流の供給開始から予め設定された一定時間が経過すると、第1スイッチ65が閉じられ、第2スイッチ68および第3スイッチ76が開かれて、水分量測定装置11が電流処理状態から測定状態に切り替えられる。そして、測定回路61が出力する信号から電極端子45,46間の電気抵抗値が再び取得される(ステップS17:取得処理)。そして、電極端子45,46間の電気抵抗値が閾値を超えているか否かが再び判断される(ステップS13:判断処理)。
【0076】
外部定電流源66から電極端子45に異常解消電流が供給されると、その異常解消電流が電極端子45からローラ電極32、電極端子71、第3導線75、電極端子72およびローラ電極35を介して電極端子46に流れる。これにより、ローラ電極32と電極端子45との間およびローラ電極35と電極端子46との間でアークが生じ、アークによるクリーニング作用で、ローラ電極32と電極端子45とが接触する局部および/またはローラ電極35と電極端子46とが接触する局部で錆(酸化被膜)が発生している場合、その錆を破壊することができる。
【0077】
電極端子45,46間の電気抵抗値が閾値を超えていない場合(ステップS18のNO)、電極端子45に異常解消電流が供給されたことにより、ローラ電極32と電極端子45とが接触する局部および/またはローラ電極35と電極端子46とが接触する局部の錆が破壊され、錆による異常が解消されているので、異常解消制御が終了される。
【0078】
一方、電極端子45に異常解消電流が供給されてもなお、電極端子45,46間の電気抵抗値が閾値を超える異常値である場合(ステップS18のYES)、錆による異常が解消されていない。この場合、電流処理回数カウンタのカウント値Nが所定数に達しているか否かが判断され(ステップS19)、カウント値Nが所定数に達していなければ(ステップS19のNO)、第1スイッチ65が開かれ、第2スイッチ68および第3スイッチ76が閉じられて(ステップS14)、水分量測定装置11が測定状態から電流処理状態に再び切り替えられる。これにより、外部定電流源66から電極端子45に測定用電流よりも大きい異常解消電流が再び供給される(ステップS15)。
【0079】
こうして、電極端子45,46間の電気抵抗値が閾値を超えるか(ステップS18のNO)、または、電流処理回数カウンタのカウント値Nが所定数に達するまで(ステップS19のYES)、電極端子45への異常解消電流の供給が繰り返される。異常解消電流の供給が繰り返されることにより、ローラ電極32と電極端子45とが接触する局部および/またはローラ電極35と電極端子46とが接触する局部に発生している錆を破壊して、圧砕ローラ17と電極端子45との間および圧砕ローラ18と電極端子46との間での導通を良好な状態に回復させることができる。
【0080】
そして、電流処理回数カウンタのカウント値Nが所定数に達した場合には(ステップS19のYES)、操作パネル83におけるメッセージの表示により、電極端子45,46の交換が報知されて(S20:交換報知処理)、異常解消制御が終了される。電極端子45,46の交換が報知されることにより、コンバイン1のユーザに電極端子45,46などの交換を促すことができる。
【0081】
なお、電極端子45,46の交換が報知されるとしたが、ローラ電極32,35などの他の部品の交換が必要な場合があり、交換が必要な部品の判断は、コンバイン1のメンテナンスを行うサービスマンが行うので、電極端子45,46の交換の報知に代えて、水分量測定装置11の他の部品の交換が報知されてもよく、それらの報知は同義である。
【0082】
<作用効果>
以上のように、圧砕ローラ17,18の周面間で収穫物である穀粒が圧砕されているときに、測定回路61から電極端子45に測定用電流が供給されて、測定回路61から電極端子45,46間の電気抵抗値に応じた信号が出力される。ローラ電極32と電極端子45が接触する局部および/またはローラ電極35と電極端子46とが接触する局部に錆が発生し、圧砕ローラ17と電極端子45との間および/または圧砕ローラ18と電極端子46との間での導通が低下すると、電極端子45,46間の電気抵抗値が大きくなる。そこで、測定回路61の出力信号から取得される電気抵抗値が異常値である場合には、外部定電流源66から電極端子45に測定用電流よりも大きい異常解消電流が供給されて、電極端子45,46間に異常解消電流が流される。これにより、ローラ電極32と電極端子45との間およびローラ電極35と電極端子46との間でアークが生じ、アークによるクリーニング作用で、ローラ電極32と電極端子45とが接触する局部および/またはローラ電極35と電極端子46とが接触する局部で錆(酸化被膜)が発生している場合、その錆を破壊することができる。圧砕ローラ17と電極端子45との間および圧砕ローラ18と電極端子46との間で錆による導通不良が生じることを防止でき、圧砕ローラ17,18間の電気抵抗値を精度よく測定できる。ひいては、圧砕ローラ17,18の周面間で圧砕されている穀粒の水分量を精度よく測定することができる。
【0083】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0084】
たとえば、前述の実施形態では、圧砕ローラ17のローラ軸25の前端面27に、ローラ電極32およびスペーサ33が取替可能に取り付けられて、電極端子45の端子接点54,55がローラ電極32に接触し、圧砕ローラ18のローラ軸26の前端面28に、ローラ電極35およびスペーサ36が取替可能に取り付けられて、電極端子46の端子接点54,55がローラ電極35に接触する構成を取り上げた。
【0085】
これに限らず、ローラ電極32,35およびスペーサ33,36が省略されて、圧砕ローラ17のローラ軸25の前端面27および圧砕ローラ18のローラ軸26の前端面28に、それぞれ電極端子45,46の端子接点54,55が接触する構成が採用されてもよい。この構成では、外部定電流源66から電極端子45に測定用電流よりも大きい異常解消電流が供給されて、電極端子45,46間に異常解消電流が流れることにより、ローラ軸25と電極端子45との間およびローラ軸26と電極端子46との間でアークが生じ、アークによるクリーニング作用で、ローラ軸25と電極端子45とが接触する局部および/またはローラ軸26と電極端子46とが接触する局部で錆(酸化被膜)が発生している場合、その錆を破壊することができる。
【0086】
図7に示される異常解消制御では、電極端子45,46間の電気抵抗値が閾値を超える異常値であると判断された場合(ステップS13のYES)、これに応じて直ちに、第1スイッチ65が開かれ、第2スイッチ68および第3スイッチ76が閉じられて(ステップS14)、水分量測定装置11が測定状態から電流処理状態に切り替えられるとした。
【0087】
これに限らず、図8に示されるように、電極端子45,46間の電気抵抗値が閾値を超える異常値であると判断された場合(ステップS13のYES)、水分量測定装置11に異常が発生している旨が操作パネル83に表示されることにより、水分量測定装置11の異常が報知されてもよい(ステップS21)。そして、コンバイン1のユーザなどによる操作パネル83の操作により、異常を解消する処理、つまり外部定電流源66から電極端子45に測定用電流よりも大きい異常解消電流を供給する電流処理の実行の指示が入力されると(’ステップS22のYES)、それに応じて、第1スイッチ65が開かれ、第2スイッチ68および第3スイッチ76が閉じられて(ステップS14)、水分量測定装置11が測定状態から電流処理状態に切り替えられてもよい。
【0088】
また、図9に示されるように、電極端子45,46は、端子アーム52,53が上下方向に延び、端子アーム52,53の途中部が屈曲して、先端部の端子接点54,55がローラ電極32,35に接触していてもよい。
【0089】
電極端子45,46が屈曲することにより、端子接点54,55とローラ電極32,35との接圧が上がる。その結果、ローラ電極32,35と端子接点54,55とが接触する局部における錆の発生を防止でき、錆が発生しても、圧砕ローラ(ローラ電極32,35)の回転時に、端子接点54,55により錆を削り落とすことができる。そのため、圧砕ローラ17,18と電極端子45,46との間で錆による導通不良が生じることを防止できる。
【0090】
また、図10に示されるように、取付台42の前面には、端子保持部材43,44の取付位置に、それぞれ溝91,92が形成されてもよい。溝91は、端子保持部材43の左右方向の幅に応じた間隔で左右方向に互いに対向する壁面93,94を有している。溝92は、端子保持部材44の左右方向の幅に応じた間隔で左右方向に互いに対向する壁面95,96を有している。そして、端子保持部材43,44がそれぞれ溝91,92に嵌められてもよい。
【0091】
電極端子45が圧砕ローラ17の回転軸線に対して左方にずれた位置でローラ電極32に接触し、電極端子46が圧砕ローラ18の回転軸線に対して左方にずれた位置でローラ電極35に接触していると、圧砕ローラ17,18の回転時に、電極端子45,46が左右方向にぶれて、電極端子45,46とローラ電極32,35との接触状態が不安定になるおそれがある。端子保持部材43,44がそれぞれ溝91の壁面93,94間および溝92の壁面95,96間に配置されることにより、圧砕ローラ17,18の回転時に、それぞれ電極端子45,46が左右方向にぶれることを抑制できる。
【0092】
収穫機の一例として、コンバイン1を取り上げたが、本発明は、コンバイン1に限らず、人参や大根、枝豆、キャベツなどの野菜を収穫する収穫機にも適用することができる。
【0093】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0094】
1:コンバイン(収穫機)
11:水分量測定装置
17,18:圧砕ローラ
32,35:ローラ電極
45,46:電極端子
61:測定回路
62:内部定電流源
63:第1導線
65:第1スイッチ
66:外部定電流源
67:第2導線
68:第2スイッチ
75:第3導線
76:第3スイッチ
81:ECU(制御装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10