(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170019
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】サーモスタット装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/68 20060101AFI20241129BHJP
F01P 7/16 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
F16K31/68 Q
F01P7/16 502B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086929
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000228741
【氏名又は名称】日本サーモスタット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】西村 哲弥
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 敏広
【テーマコード(参考)】
3H057
【Fターム(参考)】
3H057AA02
3H057BB09
3H057BB25
3H057CC13
3H057DD03
3H057EE01
3H057FA12
3H057FA24
3H057FB03
3H057FB09
3H057FC05
3H057HH03
3H057HH17
(57)【要約】
【課題】冷却水の流れおよび感温性能を改善可能とするサーモスタット装置を提供する。
【解決手段】
本発明にかかるサーモスタット装置1は、ラジエータを経由した第1通路を通ってエンジンに供給される冷却水の流れを制御するサーモ動作ユニット2と、ラジエータを経由しない第2通路を通ってエンジンに供給される冷却水の流れを制御するリリーフ機構ユニット3と、を備え、サーモ動作ユニット2が冷却水の温度に反応して膨張、収縮する熱膨張体を内蔵するサーモエレメント6を有する。そして、このサーモスタット装置1は、サーモエレメント6とリリーフ機構ユニット3との間に一定間隔の隙間を設けるための取付プレート5を備え、サーモ動作ユニット2とリリーフ機構ユニット3は、それぞれ別体の構造を有し、取付プレート5を用いて取り付けることによって一体化される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエータを経由してエンジンへ戻る冷却水の流路である第1通路を冷却水温度に応じて開閉する制御バルブを有するサーモ動作ユニットと、ラジエータを経由せずにエンジンへ戻る冷却水の流路である第2通路を冷却水圧力に応じて開閉するリリーフバルブを有するリリーフ機構ユニットと、を備え、前記サーモ動作ユニットが冷却水温度に反応して膨張、収縮する熱膨張体を内蔵するサーモエレメントを有するサーモスタット装置において、
前記サーモ動作ユニットのサーモエレメントと前記リリーフ機構ユニットとの間に一定間隔の隙間を設けるための取付部材、
を備え、
前記サーモ動作ユニットと前記リリーフ機構ユニットは、それぞれ別体の構造を有し、前記取付部材を用いて取り付けることによって一体化される、
ことを特徴とするサーモスタット装置。
【請求項2】
前記サーモ動作ユニットは、さらに、前記熱膨張体の膨張、収縮により伸縮するピストンロッドと、前記サーモエレメントの端部を摺動可能に挿入する円筒部が設けられたフレームと、を有し、前記制御バルブが閉弁する方向に付勢された状態で前記熱膨張体の熱膨張により前記ピストンロッドが突出すると、前記サーモエレメントが前記円筒部の内部を摺動し、前記サーモエレメントに取り付けられた前記制御バルブが開弁する方向に移動し、
前記リリーフ機構ユニットは、弁軸としてのリリーフロッドの一端側に前記リリーフバルブが冷却水圧力に応じて開閉可能に取り付けられ、
前記取付部材は、U字形状に形成されたプレートとし、
前記プレートの両端を前記フレームに取り付けて前記一定間隔の隙間を設けるとともに、前記U字形状の底部外面に前記リリーフロッドの他端を固着する、
ことを特徴とする請求項1に記載のサーモスタット装置。
【請求項3】
前記サーモ動作ユニットを収容する本体フレーム、
をさらに備え、
前記取付部材は、円筒形状の側壁に冷却水を流通可能な2つの開口が形成され、前記本体フレームに取り付けられた状態で、前記サーモエレメントを円筒部分の内壁で摺動自在に保持する構造とし、
前記サーモ動作ユニットは、さらに、前記熱膨張体の膨張、収縮により伸縮するピストンロッドを有し、前記制御バルブが閉弁する方向に付勢された状態で前記熱膨張体の熱膨張により前記ピストンロッドが突出すると、前記サーモエレメントが前記円筒部分の内壁を摺動し、前記サーモエレメントに取り付けられた前記制御バルブが開弁する方向に移動し、
前記リリーフ機構ユニットは、弁軸としてのリリーフロッドの一端側に前記リリーフバルブが冷却水圧力に応じて開閉可能に取り付けられ、さらに、前記リリーフロッドの他端が、前記サーモエレメントとの間に前記一定間隔の隙間を確保しつつ前記取付部材の側壁の内側に固定される、
ことを特徴とする請求項1に記載のサーモスタット装置。
【請求項4】
前記サーモ動作ユニットを収容する本体フレーム、
をさらに備え、
前記取付部材は、対向する弧状の側壁間に冷却水を流通可能な開口が形成され、階段状に縮径する環状の接合部を介して2つの前記側壁が連結され、前記本体フレームに取り付けられた状態で、前記サーモエレメントを前記環状の接合部の中心に形成された円筒形状の先端部の内壁で摺動自在に保持する構造とし、
前記サーモ動作ユニットは、さらに、前記熱膨張体の膨張、収縮により伸縮するピストンロッドを有し、前記制御バルブが閉弁する方向に付勢された状態で前記熱膨張体の熱膨張により前記ピストンロッドが突出すると、前記サーモエレメントが前記取付部材の先端部の内壁を摺動し、前記サーモエレメントに取り付けられた前記制御バルブが開弁する方向に移動し、
前記リリーフ機構ユニットは、弁軸としてのリリーフロッドの一端側に前記リリーフバルブが冷却水圧力に応じて開閉可能に取り付けられ、さらに、前記リリーフロッドの他端が、前記サーモエレメントとの間に前記一定間隔の隙間を確保しつつ前記取付部材の側壁の内側に固定される、
ことを特徴とする請求項1に記載のサーモスタット装置。
【請求項5】
弾性体による付勢力または溶接により前記リリーフロッドの他端を前記取付部材の側壁の内側に固定する、
ことを特徴とする請求項3または4に記載のサーモスタット装置。
【請求項6】
前記リリーフ機構ユニットの軸線は、前記サーモ動作ユニットの軸線の延長線上であるか、前記サーモ動作ユニットの軸線に対して偏芯しているか、または、前記サーモ動作ユニットの軸線に対して傾きを有する、
ことを特徴とする請求項2、3または4に記載のサーモスタット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の内燃機関(以下、エンジンと呼ぶ)とラジエータとの間で冷却水を循環させる流路内に配置され、冷却水の温度を制御するサーモスタット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サーモスタット装置は、エンジンとラジエータとの間の流路内を流れる冷却水の温度変化を感知して膨張、収縮する熱膨張体(ワックス)を内蔵するサーモエレメントを備え、この熱膨張体の膨張、収縮に伴うピストンロッドの進退動作により、制御バルブ(弁体)の開閉を行うことよって、冷却水を所定の温度内に保持するように機能する。
【0003】
具体的には、熱膨張体を内蔵するサーモエレメントと、制御バルブとピストンロッドとを含むサーモ動作ユニットは、ハウジングとしての本体フレーム内に収容され、たとえば、エンジンの冷却水入口側に配置される。そして、冷却水の温度が所定の温度より低い場合には、制御バルブは閉じられ、冷却水はラジエータを経由せずに(迂回して)循環される。一方、冷却水の温度が所定の温度より高くなった場合には、コイルスプリングの付勢力に抗って制御バルブが開くことで、冷却水はラジエータ(冷却流路)を通して循環される。これにより、エンジン内を通る冷却水の温度を所望の状態に制御する(下記特許文献1、2参照)。
【0004】
また、下記特許文献1、2において、この種のサーモスタット装置は、サーモエレメントの両端側に、たとえば、傘状、板状等といった形状の弁体(第1の弁体、第2の弁体)が設けられている(
図8参照)。
【0005】
第1の弁体は、ラジエータからエンジンへの冷却水の流れを制御する制御バルブとして機能し、第2の弁体は、バイパス流路からエンジンへの冷却水の流れを制御するバイパスバルブとして機能する。そして、サーモ動作ユニットにおいては、冷却水の温度に応じた熱膨張体の膨張、収縮に伴うピストンロッドの進退動作に連動して、制御バルブが流体通路を適宜開閉する。
【0006】
また、バイパスバルブは、バイパスロッドの先端部に嵌装して係止され、かつコイルスプリングにより付勢された状態で弾性保持され、たとえば、流体圧力を開放する圧力バルブとして動作する。そして、流体圧力によるバイパスロッドの軸線方向の動きに連動して、流体通路を適宜開閉する。このようなバイパスバルブは、サーモ作動時にバイパス流路を遮断することによりラジエータからの流量を確保する流量調整用バルブや、相手側に常時着座するリリーフバルブとして機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-137070号公報
【特許文献2】特開2013-241918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献に記載のサーモスタット装置は、いずれもサーモエレメント周辺にバイパスロッドおよびコイルスプリング(バイパスバルブ開閉用)が配置されていることから、特にバイパスバルブがリリーフバルブとして機能する場合において、冷却水の流れが阻害され、冷却水の圧損が発生している。
【0009】
また、上記特許文献に記載のサーモスタット装置においては、バイパスロッドがサーモエレメントの下端部に取り付けられているため、サーモエレメントの底面に冷却水を接触させることができない。すなわち、サーモエレメントの周囲全体が冷却水と接触する場合と比較して接触面積が縮小し、感温性能が低下することになるため、感温性能向上の観点で改善の余地がある。
【0010】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、冷却水の流れおよび感温性能を改善可能とするサーモスタット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかるサーモスタット装置は、ラジエータを経由してエンジンへ戻る冷却水の流路である第1通路を冷却水温度に応じて開閉する制御バルブを有するサーモ動作ユニットと、ラジエータを経由せずにエンジンへ戻る冷却水の流路である第2通路を冷却水圧力に応じて開閉するリリーフバルブを有するリリーフ機構ユニットと、を備え、サーモ動作ユニットが冷却水温度に反応して膨張、収縮する熱膨張体を内蔵するサーモエレメントを有する。そして、このサーモスタット装置は、サーモ動作ユニットのサーモエレメントとリリーフ機構ユニットとの間に一定間隔の隙間を設けるための取付部材を備え、サーモ動作ユニットとリリーフ機構ユニットは、それぞれ別体の構造を有し、取付部材を用いて取り付けることによって一体化されることを特徴とする。
【0012】
本発明にかかるサーモスタット装置によれば、サーモエレメントの周辺にリリーフロッドおよびコイルスプリングが配置されていた従来技術と比較して、サーモエレメント周辺の冷却水の水流を改善することができる。また、上述した構造により、サーモエレメント周辺の水流が改善され、冷却水をサーモエレメントに効率良く接触させることができるようになるため、感温性能が向上する。
【0013】
また、本発明にかかるサーモスタット装置において、サーモ動作ユニットは、さらに、熱膨張体の膨張、収縮により伸縮するピストンロッドと、サーモエレメントの端部を摺動可能に挿入する円筒部が設けられたフレームと、を有し、制御バルブが閉弁する方向に付勢された状態で熱膨張体の熱膨張によりピストンロッドが突出すると、サーモエレメントが上記円筒部の内部を摺動し、サーモエレメントに取り付けられた制御バルブが開弁する方向に移動する。また、リリーフ機構ユニットは、弁軸としてのリリーフロッドの一端側にリリーフバルブが冷却水圧力に応じて開閉可能に取り付けられる。また、取付部材は、U字形状に形成されたプレートとする。そして、本発明にかかるサーモスタット装置においては、プレートの両端をフレームに取り付けて一定間隔の隙間を設けるとともに、U字形状の底部外面にリリーフロッドの他端を固着する。
【0014】
また、本発明にかかるサーモスタット装置は、サーモ動作ユニットを収容する本体フレームを備えることとしてもよく、このとき、取付部材は、円筒形状の側壁に冷却水を流通可能な2つの開口が形成され、本体フレームに取り付けられた状態で、サーモエレメントを上記円筒部分の内壁で摺動自在に保持する構造とする。また、サーモ動作ユニットは、熱膨張体の膨張、収縮により伸縮するピストンロッドを有し、制御バルブが閉弁する方向に付勢された状態で熱膨張体の熱膨張によりピストンロッドが突出すると、サーモエレメントが上記円筒部分の内壁を摺動し、サーモエレメントに取り付けられた制御バルブが開弁する方向に移動する。また、リリーフ機構ユニットは、弁軸としてのリリーフロッドの一端側にリリーフバルブが冷却水圧力に応じて開閉可能に取り付けられ、さらに、リリーフロッドの他端が、サーモエレメントとの間に一定間隔の隙間を確保しつつ取付部材の側壁の内側に固定される。この際、弾性体による付勢力または溶接により、リリーフロッドの他端を取付部材の側壁の内側に固定することとしてもよい。
【0015】
また、本発明にかかるサーモスタット装置は、サーモ動作ユニットを収容する本体フレームを備えることとしてもよく、このとき、取付部材は、対向する弧状の側壁間に冷却水を流通可能な開口が形成され、階段状に縮径する環状の接合部を介して2つの側壁が連結され、本体フレームに取り付けられた状態で、サーモエレメントを環状の接合部の中心に形成された円筒形状の先端部の内壁で摺動自在に保持する構造とする。また、サーモ動作ユニットは、熱膨張体の膨張、収縮により伸縮するピストンロッドを有し、制御バルブが閉弁する方向に付勢された状態で熱膨張体の熱膨張によりピストンロッドが突出すると、サーモエレメントが取付部材の先端部の内壁を摺動し、サーモエレメントに取り付けられた制御バルブが開弁する方向に移動する。また、リリーフ機構ユニットは、弁軸としてのリリーフロッドの一端側にリリーフバルブが冷却水圧力に応じて開閉可能に取り付けられ、さらに、リリーフロッドの他端が、サーモエレメントとの間に一定間隔の隙間を確保しつつ取付部材の側壁の内側に固定される。この際、弾性体による付勢力または溶接により、リリーフロッドの他端を取付部材の側壁の内側に固定することとしてもよい。
【0016】
また、本発明にかかるサーモスタット装置において、リリーフ機構ユニットの軸線は、サーモ動作ユニットの軸線の延長線上であるか、サーモ動作ユニットの軸線に対して偏芯しているか、または、サーモ動作ユニットの軸線に対して傾きを有する、こととしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかるサーモスタット装置によれば、冷却水の流れおよび感温性能を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明にかかるサーモスタット装置を含む冷却回路の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態のサーモスタット装置の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態のサーモスタット装置の分解構成図である。
【
図4-1】
図4-1は、第2の実施形態のサーモスタット装置の構成の一例を示す図である。
【
図4-2】
図4-2は、第2の実施形態のサーモスタット装置の構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、取付部材の構造の一例を示す斜視図である。
【
図6-1】
図6-1は、第3の実施形態のサーモスタット装置の構成の一例を示す図である。
【
図6-2】
図6-2は、第3の実施形態のサーモスタット装置の構成の一例を示す図である。
【
図6-3】
図6-3は、第3の実施形態のサーモスタット装置の構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、取付部材の構造の一例を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、従来のサーモスタット装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明にかかるサーモスタット装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、本願の明細書および図面において、同様に説明することが可能な要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する場合がある。
【0020】
<第1の実施形態>
まず、第1の実施形態のサーモスタット装置を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
<冷却回路>
図1は、第1の実施形態のサーモスタット装置を含む冷却回路の一例を示す図である。本実施形態のサーモスタット装置1は、たとえば、エンジン(シリンダヘッド側)から流出した冷却液がラジエータを経由してエンジン(シリンダブロック側)へ戻る冷却流路である第1通路と、エンジン(シリンダヘッド側)から流出した冷却液がラジエータを経由せずに(迂回して)エンジン(シリンダブロック側)へ戻る第2通路(後述する第1の循環流路に相当)と、を備えた自動車の冷却回路において使用されることを想定する。
【0022】
具体的には、たとえば、冷却水の温度が所定の温度より高い場合には、
図1に示す冷却流路を開閉するバルブ(サーモスタット装置1内の弁体)が開かれる。そして、冷却水は、エンジンから、アウトレット、ラジエータを経由してサーモスタット装置1を通過し、ウォーターポンプによって加圧されてエンジンに戻る冷却流路で循環される(
図1参照)。
【0023】
また、たとえば、エンジンの水室内で急激に冷却水圧力が上昇した場合には、
図1に示す第1の循環流路を開閉するバルブ(サーモスタット装置1内の弁体)が開かれる。そして、冷却水は、エンジンから、ラジエータを経由せずにサーモスタット装置1に流入して通過し、ウォーターポンプによって加圧されてエンジンに戻る第1の循環流路で循環される(
図1参照)。この第1の循環流路を開閉するバルブは、圧力リリーフ用なので、エンジン側の冷却水圧力が高まったときに開弁して冷却水を流し、過度に冷却水圧力が高くなることを防ぐ安全弁として機能する。
【0024】
なお、
図1において、エンジンから、アウトレット、さらにEGRクーラー,スロットルボディ,CVTウォーマ,ヒータ等の各種機器を経由してサーモスタット装置1を通過し、ウォーターポンプによって加圧されてエンジンに戻る冷却水の通路、すなわち、
図1に示す第2の循環流路については、各種機器の利用状況に応じて適宜冷却水が循環されている。
【0025】
<サーモスタット装置>
図2は、第1の実施形態のサーモスタット装置の構成の一例を示す図であり、(a)はハウジングの一部を破断して示した斜視図であり、(b)はX部の拡大図であり、(c)は断面図である。また、
図3は、第1の実施形態のサーモスタット装置の分解構成図である。
【0026】
本実施形態のサーモスタット装置1は、エンジンとラジエータとの間で冷却水を循環させる流路内に配置され(
図1に示す冷却回路参照)、上述した冷却流路を通りエンジンに供給される冷却水の流れを制御するサーモ動作ユニット2と、上述した第1の循環流路を通りエンジンに供給される冷却水の流れを制御するリリーフ機構ユニット3とを備える。そして、サーモスタット装置1は、サーモ動作ユニット2がハウジング4内に収容され、さらに、リリーフ機構ユニット3が、後述する本実施形態の取付部材5を介してサーモ動作ユニット2の長手方向の一端側に取り付けられて構成される(
図2参照)。すなわち、サーモ動作ユニット2とリリーフ機構ユニット3は、それぞれ別体の構造を有し、取付部材5を用いて取り付けることによって、サーモスタット装置1として一体化される。
【0027】
<サーモ動作ユニット側の構造>
ハウジング4の中央部には略円筒状の内部空間が設けられており、この内部空間には、冷却水の流通路が形成されるとともに、サーモ動作ユニット2が組み込まれている。また、ハウジング4には、ラジエータからの冷却水を取り込む流入口4aが形成されている。
【0028】
サーモ動作ユニット2には冷却水の温度に反応して膨張、収縮する熱膨張体(ワックス)を内蔵する円筒状のサーモエレメント6が備えられており、熱膨張体の膨張、収縮により、ピストンロッド7がサーモ動作ユニット2の長手方向に伸縮するように動作する。ピストンロッド7の先端は、
図2に示すように、ハウジング4内の中央上部に形成されたピストン受け孔4bに嵌め込まれている。
【0029】
また、サーモエレメント6には傘状の制御バルブ8(弁体)が取り付けられており、この制御バルブ8は、ハウジング4の内部空間に形成された弁座4cに当接することにより閉弁状態となる。そして、傘状の制御バルブ8の凹み部分に形成された第1のばね受け部8aに一端が接するように、コイルスプリング9がサーモエレメント6の周囲を囲むようにして配置され、コイルスプリング9の他端は、サーモ動作ユニット2の一端を形成するフレーム10によって保持される。
【0030】
サーモ動作ユニット2のフレーム10には、コイルスプリング9の他端を保持する円板状の第2のばね受け部10aの中央部に、コイルスプリング9に囲まれたテーパー状の円筒部10bが設けられている。そして、円筒部10bの先端にはその先端と略同一形状のサーモエレメント6の端部が挿入され、サーモエレメント6は、ピストンロッド7の伸縮動作に応じて円筒部10b内を軸方向に摺動する。また、第2のばね受け部10a周縁には、たとえば、曲げ絞り加工により形成された回転止め用のフック部10cが等間隔に4つ設けられ、これらのフック部10cは、ハウジング4内の内壁に設けられたフレーム支持部4dに掛け合わせるように載置される。これにより、サーモ動作ユニット2がハウジング4の内部空間に組み込まれる。そして、制御バルブ8は、コイルスプリング9により閉弁する方向に付勢される。なお、ハウジング4の底部には、リング状のシール部材4eが取り付けられている。
【0031】
上記のように構成されるサーモ動作ユニット2は、ピストンロッド7が熱膨張体の熱膨張によって突出すると、コイルスプリング9の付勢力に抗ってサーモエレメント6と制御バルブ8が下方へ移動し、制御バルブ8が開弁状態となる。これにより、サーモ動作ユニット2は、ラジエータ側からの冷却水をエンジン側に流通させる。
【0032】
<リリーフ機構ユニット側の構造>
つづいて、本実施形態のリリーフ機構ユニット3および取付部材5の構成について説明する。
【0033】
図2および
図3において、本実施形態のサーモスタット装置1は、サーモ動作ユニット2のサーモエレメント6に対して一定間隔の隙間を設けてリリーフ機構ユニット3を取り付け可能な取付部材5として、U字形状に形成された取付プレート(以後、取付プレート5と呼ぶ)を備える。取付プレート5は、そのU字形状の両端部を、たとえば、フレーム10に設けられた4つのフック部10cのうち、隣接しない2つのフック部10cに設けられた貫通孔10dに挿通して、加締め等の取付方法で接合する。これにより、冷却水を流通可能なU字形状の開口が形成される。なお、フレーム10に対する取付プレート5の取付方法は、加締めに限らず、確実に固定できていればどのような方法で取り付けてもよい。
【0034】
また、取付プレート5は、U字形状の底部外面に、たとえば、サーモ動作ユニット2の軸線方向に対して垂直な面で形成された平面部5aが設けられており、平面部5aには、弁軸としてのリリーフロッド11の一端(
図2に示す第1の循環流路側の端部とは逆の端部)が固着される。平面部5aに対するリリーフロッド11の取付方法については、上記同様、加締めであってもよく、また、その他の取付方法であってもよい。
【0035】
また、リリーフロッド11の軸線(リリーフ機構ユニット3の軸線)は、サーモ動作ユニット2の軸線の延長線上であってもよく、また、平面部5aの範囲内であれば、サーモ動作ユニット2の軸線に対して偏心していてもよい。
【0036】
また、上述したように、取付プレート5にはU字形状の底部外面に平面部5aを設けることとしたが、これに限るものではなく、たとえば、U字形状の底部外面を曲面で形成することとしてもよい。これにより、リリーフロッド11(リリーフ機構ユニット3)を、取付プレート5への取付位置に応じて、サーモ動作ユニット2の軸線に対して傾けることが可能となる。
【0037】
また、リリーフロッド11の他端側には、略板状の弁体であるリリーフバルブ12が嵌装して組付けられてEリング等で係止されている。このリリーフバルブ12は、リリーフロッド11の周囲を囲むように平面部5aとリリーフバルブ12との間に配置されたコイルスプリング13によって相手側ハウジングの部材である弁座14側に付勢されることにより、弾性支持されている。なお、相手側ハウジングの部材は、サーモスタット装置1を取り付ける相手方の部材であって、ハウジング4と一体となって流路を構成する部材である。
【0038】
上記のように構成されるリリーフ機構ユニット3は、リリーフバルブ12によって開閉される第1の循環流路を形成する。そして、本実施形態において、リリーフバルブ12は、コイルスプリング13の付勢力によって弁座14に着座する構造となっており、第1の循環流路側での冷却水圧力に応じて開閉される。
【0039】
<効果等>
このように、本実施形態のサーモスタット装置1においては、取付プレート5を介してリリーフ機構ユニット3とサーモ動作ユニット2とを一体化することによって、サーモ動作ユニット2のサーモエレメント6とリリーフ機構ユニット3のリリーフロッド11およびコイルスプリング13との間に、一定間隔の隙間を設ける構造とした。これにより、サーモエレメントの周辺にリリーフロッドおよびコイルスプリングが配置されていた従来技術と比較して、サーモエレメント6周辺の冷却水の水流を改善することができる。また、上述した構造により、サーモエレメント6周辺の水流が改善され、冷却水をサーモエレメント6に効率良く接触させることができるようになるため、感温性能が向上する。なお、冷却水の圧損やサーモエレメント6による感温性能を考慮すると、取付プレート5による隙間は大きいほど望ましい。
【0040】
また、サーモ動作ユニット2とリリーフ機構ユニット3とを別体構造とし、取付プレート5にサーモ動作ユニット2の軸線方向に対して垂直な面で形成された平面部5aを設けることにより、サーモ動作ユニット2の軸線に対して、リリーフバルブ12(リリーフ機構ユニット3)の軸線を容易に偏心させることが可能となる。さらに、取付プレート5におけるU字形状の底部外面を曲面にて形成することにより、リリーフロッド11(リリーフ機構ユニット3)を、取付プレート5への取付位置に応じて、サーモ動作ユニット2の軸線に対して容易に傾けることが可能となる。
【0041】
また、本実施形態のサーモスタット装置1において、サーモ動作ユニット2を収容するハウジング4は、一例として樹脂製のものを使用するが、材質については特に限定するものではない。
【0042】
なお、本実施形態のサーモスタット装置1の形状および構造については、上述した本実施形態の形状および構造に限るものではなく、各部の形状および構造は、装置の仕様や使用環境等に応じて適宜変形、変更等が可能である。
【0043】
また、本実施形態においては、サーモスタット装置1を、
図1に示す冷却回路におけるエンジンの冷却水入口側に組み込んだ例について説明したが、これに限るものではなく、たとえば、エンジンの冷却水出口側に組み込んだ場合においても、同等の作用効果が得られる。
【0044】
<第2の実施形態>
つづいて、第2の実施形態のサーモスタット装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、前述した第1の実施形態と同様に説明することが可能な要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する。また、
図1に示す冷却回路の構成については、サーモスタット装置1をサーモスタット装置1’に読み替えて説明可能である。
【0045】
<サーモスタット装置>
図4(
図4-1,
図4-2)は、第2の実施形態のサーモスタット装置の構成の一例を示す図であり、
図4-1(a)は正面図であり、
図4-1(b)は平面図であり、
図4-1(c)はA-A’断面図であり、
図4-1(d)はB部の拡大図であり、
図4-2(a)および(b)は斜視図である。
【0046】
本実施形態のサーモスタット装置1’は、前述した第1の実施形態と同様に、エンジンとラジエータとの間で冷却水を循環させる流路内に配置され(
図1に示す冷却回路参照)、冷却流路を通りエンジンに供給される冷却水の流れを制御するサーモ動作ユニット2’と、第1の循環流路を通ってエンジンに供給される冷却水の流れを制御するリリーフ機構ユニット3’と、を備える。そして、サーモスタット装置1’は、サーモ動作ユニット2’がフレーム21およびフランジ22からなる外殻部20内に収容され、さらに、リリーフ機構ユニット3’が、取付部材23を介してサーモ動作ユニット2’の長手方向の一端側に取り付けられて構成される(
図4参照)。すなわち、サーモ動作ユニット2’とリリーフ機構ユニット3’は、それぞれ別体の構造を有し、取付部材23における取り付け構造によって、サーモスタット装置1’として一体化される。
【0047】
<サーモ動作ユニット側の構造>
外殻部20において、フレーム21は、サーモ動作ユニット2’の周囲を覆うように形成され、フレーム21における冷却流路側の端部には、所定の勾配で突出したブリッジ構造のピストン係止部22aを有するフランジ22が連結されている。
【0048】
サーモ動作ユニット2’には、第1の実施形態と同様に、冷却水の温度に反応して膨張、収縮する熱膨張体(ワックス)を内蔵する円筒状のサーモエレメント6が備えられており、熱膨張体の膨張、収縮により、ピストンロッド7がサーモエレメント6の長手方向に伸縮するように動作する。ピストンロッド7の先端は、フランジ22のピストン係止部22aに形成されたピストン受け孔22bに嵌め込まれている。
【0049】
また、サーモエレメント6には傘状の制御バルブ8(弁体)が取り付けられており、この制御バルブ8は、フランジ22の内側に形成された弁座22cに当接することにより閉弁状態となる。そして、傘状の制御バルブ8の凹み部分に形成された第1のばね受け部8aに一端が接するように、コイルスプリング9がサーモエレメント6の周囲を囲むようにして配置され、コイルスプリング9の他端は、フレーム21の冷却水出口側の端部(フレーム21の下端)に環状に形成された第2のばね受け部21aによって保持される。具体的には、フレーム21に形成された第2のばね受け部21aは、環状に形成された鉤状の凹部を備え、その凹みにコイルスプリング9の端部(上記コイルスプリング9の他端に相当)が装着される。これにより、サーモ動作ユニット2’が外殻部20に組み込まれる。そして、制御バルブ8は、コイルスプリング9により閉弁する方向に付勢される。
【0050】
上記のように構成されるサーモ動作ユニット2’は、ピストンロッド7が熱膨張体の熱膨張によって突出すると、コイルスプリング9の付勢力に抗ってサーモエレメント6と制御バルブ8が移動し、制御バルブ8が開弁状態となる。これにより、サーモ動作ユニット2’は、ラジエータ側からの冷却水をエンジン側に流通させる。
【0051】
<リリーフ機構ユニット側の構造>
つづいて、本実施形態のリリーフ機構ユニット3’および取付部材23の構造について説明する。
【0052】
図4において、本実施形態のサーモスタット装置1’は、サーモ動作ユニット2’の長手方向の端部を形成するサーモエレメント6に対して一定間隔の隙間を設けてリリーフ機構ユニット3’を取り付け可能な取付部材として、略円筒形状の側壁に冷却水を流通可能な2つの開口23aが形成された取付部材23を備える。また、この取付部材23は、サーモ動作ユニット2’のピストンロッド7が熱膨張体の熱膨張によって突出した際にこれに伴って下方へ移動したサーモエレメント6を、円筒部分の内壁(開口23a以外の部分)で摺動自在に保持する構造とした。
【0053】
図5(a)および(b)は、取付部材23の構造の一例を示す斜視図である。取付部材23の円筒部分の一端には、外側に向かって形成された環状の鍔部23bが設けられ、その鍔部23bの外周端には上述したフレーム21に形成された第2のばね受け部21aに対して吊り下げるように取り付け可能なフック部23cが形成されている。また、取付部材23の円筒部分内壁の中央付近には、サーモ動作ユニット2’の軸線方向に対して垂直な面で形成された鍔状の係止部23dが設けられ、さらに、取付部材23の円筒部分の他端には、サーモ動作ユニット2’の軸線方向に対して垂直な平面で形成された第3のばね受け部23eが設けられている。なお、係止部23dは、上記一定間隔の隙間を確保できる位置であって、かつ開口23aを通る冷却水の流量を充分に確保可能な位置に設けられる。
【0054】
また、リリーフ機構ユニット3’は、弁軸としてのリリーフロッド24を備え、リリーフロッド24の長手方向の一端には2つのばね受け部が階段状に形成されている。具体的には、先端から1段目には拡径に形成された第4のばね受け部24aが設けられ、さらに、2段目には第4のばね受け部24aよりも縮径に形成された第5のばね受け部24bが設けられている。また、リリーフロッド24の他端には略板状の弁体であるリリーフバルブ25が嵌装して組付けられてEリング等で係止されている。
【0055】
また、リリーフバルブ25は、リリーフロッド24の周囲を囲むように第5のばね受け部24bとリリーフバルブ25との間に配置されたコイルスプリング26の付勢力により、弾性支持される。
【0056】
そして、本実施形態においては、取付部材23の係止部23dとリリーフロッド24のばね受け側の先端とを当接した状態で、コイルスプリング26を外側から囲うように第4のばね受け部24aと取付部材23に設けられた第3のばね受け部23eとの間にコイルスプリング27を配置し、このコイルスプリング27の付勢力によって、取付部材23にリリーフロッド24を固定する。これにより、取付部材23が取り付けられた状態のリリーフ機構ユニット3’が得られる。
【0057】
なお、本実施形態においては、上述したように、コイルスプリング27の付勢力によって取付部材23にリリーフロッド24を固定することとしたが、これに限るものではなく、たとえば、取付部材23の係止部23dとリリーフロッド24のばね受け側の先端とを当接させ、この部分を溶接などにより固着することとしてもよい。これにより、コイルスプリング27を用いることなく、取付部材23が取り付けられた状態のリリーフ機構ユニット3’が得られる。また、コイルスプリング27に替えて、たとえば、板バネやゴムなどの弾性体を使用することとしてもよい。
【0058】
上記のように構成されるリリーフ機構ユニット3’は、リリーフバルブ25によって開閉される第1の循環流路を形成する。そして、本実施形態において、リリーフバルブ25は、コイルスプリング26の付勢力によって相手側ハウジングの部材である弁座14に着座する構造となっており、第1の循環流路(エンジン)側での冷却水圧力に応じて開閉される。
【0059】
さらに、本実施形態においては、フレーム21に形成された第2のばね受け部21aに、取付部材23に形成されたフック部23cを係合させて、上記で得られた取付部材23が取り付けられた状態のリリーフ機構ユニット3’を、フレーム21に吊り下げるように取り付ける。これにより、サーモ動作ユニット2’のサーモエレメント6に対して一定間隔の隙間を設けた状態で、リリーフ機構ユニット3’がフレーム21に取り付けられる。
【0060】
ここで、第2のばね受け部21aとフック部23cとの係合部分は、
図4-1(d)に示すように、下から第2のばね受け部21a、フック部23c、コイルスプリング9の順に配置され、フレーム21と取付部材23は、コイルスプリング9の付勢力によって固定される。これにより、サーモ動作ユニット2’とリリーフ機構ユニット3’が一体化された状態のサーモスタット装置1’が得られる。
【0061】
なお、本実施形態においては、
図4に示すように、リリーフ機構ユニット3’を、取付部材23を介してサーモ動作ユニット2’の軸線の延長線上に取り付ける構造としたが、これに限るものではない。このような構造の変形例として、たとえば、リリーフ機構ユニット3’を保持する構造である鍔状の係止部23dを取付部材23の側壁(開口23a以外の部分)に設ける一方で、サーモエレメント6を摺動自在に保持する構造を、取付部材23の側壁とは別の独立した壁面として設けることとしてもよい。具体的には、サーモエレメント6を摺動自在に保持するために、取付部材23の側壁の内側に、冷却水を流通可能な開口が形成された円筒形状の壁面を新たに設けることとしてもよい。
【0062】
このような構造の取付部材によれば、サーモ動作ユニット2’のサーモエレメント6を、取付部材23の側壁の内側に設けた円筒形状の壁面で摺動自在に保持することができる。さらに、サーモエレメント6を摺動自在に保持するために新たに設けた円筒形状の壁面の位置を維持しつつ、取付部材23の側壁の位置をずらす、または側壁を傾けることによって、リリーフ機構ユニット3’をサーモ動作ユニット2の軸線に対して偏心させる、または傾けることができる。
【0063】
<効果等>
このように、本実施形態のサーモスタット装置1’においては、取付部材23を介してリリーフ機構ユニット3’とサーモ動作ユニット2’とを一体化することによって、サーモ動作ユニット2’のサーモエレメント6とリリーフ機構ユニット3’のリリーフロッド24との間に、一定間隔の隙間を設ける構造とした。これにより、サーモエレメントの周辺にリリーフロッド等が配置されていた従来技術と比較して、サーモエレメント6周辺の冷却水の水流を改善することができる。また、上述した構造により、サーモエレメント6周辺の水流が改善され、冷却水をサーモエレメント6に効率良く接触させることができるようになるため、感温性能が向上する。なお、冷却水の圧損やサーモエレメント6による感温性能を考慮すると、取付部材23により設けられる隙間は大きいほど望ましい。
【0064】
<第3の実施形態>
つづいて、第3の実施形態のサーモスタット装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、前述した第1の実施形態および第2の実施形態と同様に説明することが可能な要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する。また、
図1に示す冷却回路の構成については、サーモスタット装置1をサーモスタット装置1’’に読み替えて説明可能である。また、サーモ動作ユニット側の構成については、前述した第2の実施形態と同様である。
【0065】
<サーモスタット装置>
図6(
図6-1,
図6-2,
図6-3)は、第3の実施形態のサーモスタット装置の構成の一例を示す図であり、
図6-1(a)は正面図であり、
図6-1(b)は平面図であり、
図6-2(a)はC-C’断面図であり、
図6-2(b)はD-D’断面図であり、
図6-2(c)はE部の拡大図であり、
図6-3(a)および(b)は斜視図である。
【0066】
本実施形態のサーモスタット装置1’’は、前述した各実施形態と同様に、エンジンとラジエータとの間で冷却水を循環させる流路内に配置され(
図1に示す冷却回路参照)、前述したサーモ動作ユニット2’と、第1の循環流路を通ってエンジンに供給される冷却水の流れを制御するリリーフ機構ユニット3’’と、を備える。そして、サーモスタット装置1’’は、サーモ動作ユニット2’がフレーム21およびフランジ22からなる外殻部20内に収容され、さらに、リリーフ機構ユニット3’’が、取付部材31を介してサーモ動作ユニット2’の長手方向の一端側に取り付けられて構成される(
図6参照)。すなわち、サーモ動作ユニット2’とリリーフ機構ユニット3’’は、それぞれ別体の構造を有し、取付部材31における取り付け構造によって、サーモスタット装置1’’として一体化される。
【0067】
<リリーフ機構ユニット側の構造>
つづいて、本実施形態のリリーフ機構ユニット3’’および取付部材31の構造について説明する。
【0068】
図6において、本実施形態のサーモスタット装置1’’は、サーモ動作ユニット2’の長手方向の端部を形成するサーモエレメント6に対して一定間隔の隙間を設けてリリーフ機構ユニット3’’を取り付け可能な取付部材として、対向する弧状の側壁31a間に冷却水を流通可能な開口が形成された取付部材31を備える。
図7(a)および(b)は、取付部材31の構造の一例を示す斜視図である。この取付部材31は、階段状に縮径する環状の接合部31bを介して2つの側壁31aが連結され、サーモ動作ユニット2’のピストンロッド7が熱膨張体の熱膨張によって突出した際にこれに伴って下方へ移動したサーモエレメント6を、環状の接合部31bの中心に形成された円筒形状の先端部31cの内壁で摺動自在に保持する構造とした。
【0069】
また、取付部材31に形成された階段状の接合部31bは、フレーム21に形成された第2のばね受け部21aに対して取付部材31を吊り下げて取り付け可能なフックとして機能する。また、取付部材31の側壁31a内側の中央付近には、サーモ動作ユニット2’の軸線方向に対して垂直な面で形成された鍔状の係止部31dが設けられ、さらに、取付部材31の第1の循環流路側の端部(側壁31aの下端側)には、フック状に形成された第3のばね受け部31eが設けられている。なお、係止部31dは、上記一定間隔の隙間を確保できる位置であって、かつ
図6-2(b)に示す開口を通る冷却水の流量を充分に確保可能な位置に設けられる。
【0070】
また、リリーフ機構ユニット3’’は、弁軸としてのリリーフロッド32を備え、リリーフロッド32の長手方向の一端には鍔状に形成された第4のばね受け部32aが設けられている。また、リリーフロッド32の他端には略板状の弁体であるリリーフバルブ25が嵌装して組付けられてEリング等で係止されている。
【0071】
また、リリーフバルブ25は、リリーフロッド32の周囲を囲むように第4のばね受け部32aとリリーフバルブ25との間に配置されたコイルスプリング26の付勢力により、弾性支持される。
【0072】
そして、本実施形態においては、取付部材31の係止部31dとリリーフロッド32のばね受け側の先端とを当接した状態で、コイルスプリング26を外側から囲うように第4のばね受け部32a(係止部31d)と第3のばね受け部31eとの間にコイルスプリング27を配置し、このコイルスプリング27の付勢力によって、取付部材31にリリーフロッド32を固定する。これにより、取付部材31が取り付けられた状態のリリーフ機構ユニット3’’が得られる。
【0073】
なお、本実施形態においては、上述したように、コイルスプリング27の付勢力によって取付部材31にリリーフロッド32を固定することとしたが、これに限るものではなく、たとえば、取付部材31の係止部31dとリリーフロッド32のばね受け側の先端とを当接させ、この部分を溶接などにより固着することとしてもよい。これにより、コイルスプリング27を用いることなく、取付部材31が取り付けられた状態のリリーフ機構ユニット3’’が得られる。また、コイルスプリング27に替えて、たとえば、板バネやゴムなどの弾性体を使用することとしてもよい。
【0074】
上記のように構成されるリリーフ機構ユニット3’’は、リリーフバルブ25によって開閉される第1の循環流路を形成する。そして、本実施形態において、リリーフバルブ25は、コイルスプリング26の付勢力によって相手側ハウジングの部材である弁座14に着座する構造となっており、第1の循環流路(エンジン)側での冷却水圧力に応じて開閉される。
【0075】
さらに、本実施形態においては、フレーム21に形成された第2のばね受け部21aに、取付部材31に形成された階段状の接合部31bを係合させて、上記で得られた取付部材31が取り付けられた状態のリリーフ機構ユニット3’’を、フレーム21に吊り下げるように取り付ける。これにより、サーモ動作ユニット2’のサーモエレメント6に対して一定間隔の隙間を設けた状態で、リリーフ機構ユニット3’’がフレーム21に取り付けられる。
【0076】
ここで、第2のばね受け部21aと接合部31bとの係合部分は、
図6-2(c)に示すように、下から第2のばね受け部21a、接合部31b、コイルスプリング9の順に配置され、フレーム21と取付部材31は、コイルスプリング9の付勢力によって固定される。これにより、サーモ動作ユニット2’とリリーフ機構ユニット3’’が一体化された状態のサーモスタット装置1’’が得られる。
【0077】
なお、本実施形態においては、
図6に示すように、リリーフ機構ユニット3’’を、取付部材31を介してサーモ動作ユニット2’の軸線の延長線上に取り付ける構造としたが、これに限るものではない。このような構造の変形例として、たとえば、2つの側壁31aの係止部31dと第3のばね受け部31eの相互の位置関係を維持しつつ、対向する側壁31aによって形成される円筒の中心線が、サーモ動作ユニット2の軸線の延長線からずれた位置となるように、または、サーモ動作ユニット2の軸線に対して傾くように、側壁31aの係止部31dより上の部分を変形させることとしてもよい。このような構造の取付部材によれば、リリーフ機構ユニット3’’をサーモ動作ユニット2’の軸線に対して偏心させる、または傾けることができる。
【0078】
<効果等>
このように、本実施形態のサーモスタット装置1’’においては、取付部材31を介してリリーフ機構ユニット3’’とサーモ動作ユニット2’とを一体化することによって、サーモ動作ユニット2’のサーモエレメント6とリリーフ機構ユニット3’’のリリーフロッド32との間に、一定間隔の隙間を設ける構造とした。これにより、サーモエレメントの周辺にリリーフロッド等が配置されていた従来技術と比較して、サーモエレメント6周辺の冷却水の水流を改善することができる。また、上述した構造により、サーモエレメント6周辺の水流が改善され、冷却水をサーモエレメント6に効率良く接触させることができるようになるため、感温性能が向上する。なお、冷却水の圧損やサーモエレメント6による感温性能を考慮すると、取付部材31により設けられる隙間は大きいほど望ましい。
【符号の説明】
【0079】
1,1’,1’’ サーモスタット装置
2,2’ サーモ動作ユニット
3,3’,3’’ リリーフ機構ユニット
4 ハウジング
4a 流入口
4b ピストン受け孔
4c 弁座
4d フレーム支持部
4e シール部材
5 取付部材(取付プレート)
5a 平面部
6 サーモエレメント
7 ピストンロッド
8 制御バルブ
8a 第1のばね受け部
9 コイルスプリング
10 フレーム
10a 第2のばね受け部
10b 円筒部
10c フック部
10d 貫通孔
11 リリーフロッド
12 リリーフバルブ
13 コイルスプリング
14 弁座
20 外殻部
21 フレーム
21a 第2のばね受け部
22 フランジ
22a ピストン係止部
22b ピストン受け孔
22c 弁座
23,31 取付部材
23a 開口
23b 鍔部
23c フック部
23d,31d 係止部
23e,31e 第3のばね受け部
24,32 リリーフロッド
24a,32a 第4のばね受け部
24b 第5のばね受け部
25 リリーフバルブ
26,27 コイルスプリング
31a 側壁
31b 接合部
31c 先端部