(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170037
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】除去方法、除去装置、インプリント装置、レプリカ製造装置、及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20241129BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086963
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】阿部 慶子
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 陽
(72)【発明者】
【氏名】浅見 詠子
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 敬恭
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 裕一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 順
【テーマコード(参考)】
4F209
5F146
【Fターム(参考)】
4F209AA44
4F209AF01
4F209AG05
4F209AH33
4F209AM13
4F209PA02
4F209PB01
4F209PN09
4F209PQ11
4F209PQ20
5F146AA31
5F146AA32
(57)【要約】
【課題】少なくともモールドの凸部の側面付近に発生する残渣を除去可能とする。
【解決手段】除去方法であって、主面を有する基体と、主面上に設けられた凸部とを有し、凸部における上面に、硬化性組成物に押し付けられる凹凸パターンが形成されたモールドに付着した残渣を除去する除去方法であって、残渣を除去する第1の除去工程を有し、第1の除去工程においては、少なくとも凸部の側面に形成される撥液層を所定の溶剤で溶解することで残渣を除去する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有する基体と、前記主面上に設けられた凸部とを有し、前記凸部における上面に、硬化性組成物に押し付けられる凹凸パターンが形成されたモールドに付着した残渣を除去する除去方法であって、
前記残渣を除去する第1の除去工程を有し、
前記第1の除去工程においては、少なくとも前記凸部の側面に形成される撥液層を所定の溶剤で溶解することで前記残渣を除去することを特徴とする除去方法。
【請求項2】
前記撥液層がフッ化炭素鎖を有するポリマーを含有することを特徴とする請求項1記載の除去方法。
【請求項3】
前記第1の除去工程では、前記撥液層の膜厚が3nm以上となるように前記撥液層を溶解することを特徴とする請求項1に記載の除去方法。
【請求項4】
前記所定の溶剤は、フッ化炭素鎖を有するポリマーを溶かす揮発性溶剤であることを特徴とする請求項1に記載の除去方法。
【請求項5】
前記所定の溶剤は、ハイドロフルオロエーテル、パーフルオロカーボン、およびハイドロフルオロカーボンの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の除去方法。
【請求項6】
前記モールドにおける前記凹凸パターンの少なくとも外周部に前記撥液層が形成されることを防止する保護層を形成する第1の形成工程を有することを特徴とする請求項1に記載の除去方法。
【請求項7】
前記モールドの少なくとも前記凸部の側面に前記撥液層を形成する第2の形成工程を有し、
前記第2の形成工程は、前記第1の形成工程の後に実施することを特徴とする請求項6に記載の除去方法。
【請求項8】
前記保護層及び前記保護層の一部に形成された前記撥液層を除去する第2の除去工程を有し、
前記第2の除去工程は、前記第2の形成工程の後に実施することを特徴とする請求項7に記載の除去方法。
【請求項9】
前記第1の除去工程は、前記第2の除去工程の後に実施することを特徴とする請求項8に記載の除去方法。
【請求項10】
主面を有する基体と、前記主面上に設けられた凸部とを有し、前記凸部における上面に、硬化性組成物に押し付けられる凹凸パターンが形成されたモールドに付着した残渣を除去する除去装置であって、
前記モールドを保持した状態で移動可能なステージと、
少なくとも前記凸部の側面に形成される撥液層を所定の溶剤で溶解することで前記残渣を除去する第1の除去部と、を有する、
ことを特徴とする除去装置。
【請求項11】
前記撥液層がフッ化炭素鎖を有するポリマーを含有することを特徴とする請求項10に記載の除去装置。
【請求項12】
前記残渣を除去した後の前記撥液層の膜厚が3nm以上あることを特徴とする請求項10に記載の除去装置。
【請求項13】
前記所定の溶剤は、フッ化炭素鎖を有するポリマーを溶かす揮発性溶剤であることを特徴とする請求項10に記載の除去装置。
【請求項14】
前記所定の溶剤は、ハイドロフルオロエーテル、パーフルオロカーボン、およびハイドロフルオロカーボンの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項10に記載の除去装置。
【請求項15】
前記モールドにおける前記凹凸パターンの少なくとも外周部に前記撥液層が形成されることを防止する保護層を形成する第1の形成部を有することを特徴とする請求項10に記載の除去装置。
【請求項16】
前記モールドの少なくとも前記凸部の側面に前記撥液層を形成する第2の形成部を有することを特徴とする請求項10に記載の除去装置。
【請求項17】
前記保護層及び前記保護層の一部に形成された前記撥液層を除去する第2の除去部を有することを特徴とする請求項15に記載の除去装置。
【請求項18】
凹凸パターンを有するモールドを用いて基板上の複数のパターン形成領域に硬化性組成物のパターンを形成するインプリント装置であって、
前記硬化性組成物を前記基板上に吐出する吐出装置と、
前記基板を保持した状態で移動可能な基板ステージと、
請求項10乃至17のいずれか1項に記載の除去装置と、を有する、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項19】
凹凸パターンを有するモールドのレプリカを製造するレプリカ製造装置であって、
硬化性組成物を基板上に吐出する吐出装置と、
前記基板を保持した状態で移動可能な基板ステージと、
請求項10乃至17のいずれか1項に記載の除去装置と、を有する、
ことを特徴とするレプリカ製造装置。
【請求項20】
請求項18に記載のインプリント装置を用いて前記基板に前記凹凸パターンを形成するパターン形成工程と、
前記パターン形成工程で前記パターンが形成された前記基板を加工する加工工程と、
前記加工工程で加工された前記基板から物品を製造する工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除去方法、除去装置、インプリント装置、レプリカ製造装置、及び物品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノサイズ(例えば1nm以上1000nm以下)の微細パターン(凹凸構造)を形成する手法として、光ナノインプリント技術が注目されている。光ナノインプリント技術では、凹凸パターンが形成されて露光光に対して透明なインプリント用のモールド(型、マスク)を、下地基板上に塗布した硬化性組成物(レジスト、インプリント材)に接触させる。硬化性組成物が硬化して硬化物が形成された後、モールドを硬化物から離型することにより、下地基板上に硬化物パターンが形成される。そして、硬化物パターンをモールドとして下地基板を加工することで、下地基板に微細パターンが形成される。インプリント法では、モールドを基板上で移動させながら、基板上の所望の位置に硬化物パターンを形成する処理を繰り返す。
【0003】
光ナノインプリント技術で使用されるモールドは、石英ガラス等の材料を加工して形成されることがある。インプリント用のモールドは凸形状のメサ部を形成し、メサ部の上面である硬化性組成物との接触面(インプリント面)に微細な凹凸パターンを形成する。この凹凸パターンが硬化性組成物に押しつけられることになる。
【0004】
ここで、モールドのメサ部の上面に形成される凹凸パターンを硬化性組成物に押しつけた時点では、硬化性組成物は流動性を持っている。そのため、硬化性組成物がメサ部の上面の接触面(インプリント面)から外側にはみ出してメサ側壁に這い上がる場合がある(以下、この現象を「浸み出し」と称する)。
【0005】
モールドは、硬化性組成物が硬化した段階で基板上の硬化物から引き離されるが、メサ部の側壁に浸み出した硬化性組成物は、メサ部の側壁に付着したままになる。このため、モールドを硬化性組成物に押しつける処理を繰り返すと、メサ側壁に付着する硬化性組成物の量が次第に増えて、やがて、この硬化性組成物は意図せぬタイミングで基板上に落下し、基板上に大きな欠陥を引き起こすという問題がある。
【0006】
特許文献1には、凹凸パターン面を事前に保護材で保護することで、メサ側壁のみを硬化性組成物に対して撥液化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の凹凸パターン面を保護する方法としては、遮蔽板を凹凸パターンのごく近傍まで接近させて保護する方法、もしくはモールド基板を凹凸パターン面に対して接触させて保護する方法が記載されている。しかしながら、遮蔽板を凹凸パターンのごく近傍まで接近させても完全に密着はしない以上、撥液成分は凹凸パターン側に侵入してしまう。また、モールド基板を接触させることで保護する方法は、インプリント用のモールドとモールド基板のどちらも硬い固体材料であるため、保護すべき全領域において板材料を接触させることが困難である。そのため、いずれかの場所で撥液成分の侵入を防ぐことができず、凹凸パターン上に撥液材の残滓が残ってしまう場合がある。従って、特許文献1に記載の方法では、撥液材からなる残渣が発生し、当該残渣がメサ側壁に残ってしまう可能性がある。即ち、特許文献1の方法では残渣が発生した場合に除去することができない。
【0009】
そこで、本発明は上記の課題を解決するために、少なくともモールドの凸部の側面付近に発生する残渣を除去可能とする除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての除去方法は、主面を有する基体と、前記主面上に設けられた凸部とを有し、前記凸部における上面に、硬化性組成物に押し付けられる凹凸パターンが形成されたモールドに付着した残渣を除去する除去方法であって、前記残渣を除去する第1の除去工程を有し、前記第1の除去工程においては、少なくとも前記凸部の側面に形成される撥液層を所定の溶剤で溶解することで前記残渣を除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、少なくともモールドの凸部の側面付近に発生する残渣を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】実施形態に係る保護層形成ユニットの概略図である。
【
図4】実施形態に係る保護層除去ユニットの概略図である。
【
図5】実施形態に係る残渣を除去する各工程の説明図である。
【
図6】本実施形態における残渣除去処理を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態に係るインプリント方法を説明する図である。
【
図8】物品の製造方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明においては、その趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下に説明する実施形態に対して適宜変更、改良等が加えられたものについても本発明の範囲に含まれる。
【0014】
<実施形態1>
ナノインプリントに使用される、モールド(型、マスク)は、モールドと被加工基板(基板)の平行度が完全でない場合にも、被加工基板(基板)と、接触面(インプリント面)以外のモールド基板が被加工基板には接触しないように形成される。具体的には、モールドの接触面が周囲の側壁面を有してモールド基材から出っ張った(突出した)形状になるように形成されている。上記接触面が形成される凸部分、即ち、接触面を上面として側壁面とから形成される台地部分をメサ部と呼ぶ。このような構成とすることで、インプリント時にモールドのインプリント面以外と被加工基板との間には一定のクリアランスが取れ、両者が接触しないようにすることが出来る。
【0015】
図1は、本実施形態におけるモールド11の断面図である。以下、
図1を参照して、撥液層が形成され、且つ残渣を除去した本実施形態のモールド11と、当該モールド11にするためにモールドに付着した残渣の除去方法(モールド洗浄方法)について説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態によるモールド11は、メサ部(凸状のパターン形成部)11aを有し、メサ部11aの下面(インプリント面)には微細な凹凸パターン(パターン部)11bが形成されている。この凹凸パターン11bを基板12上の硬化性組成物13に押しつけることで、硬化性組成物13に凹凸パターン11bが転写されて、硬化性組成物パターン13aが形成される。即ち、本実施形態におけるモールド11は、主面を有する基体と、当該主面上に設けられた凸部とを有し、凸部における上面に、硬化性組成物に押し付けられる凹凸パターンが形成されている。モールド11は、例えば石英等により形成される。
【0017】
モールド11の凹凸パターン11bを硬化性組成物13に押しつけたときに、硬化性組成物13がインプリント面の外側にはみ出して、メサ部11aの側壁11dに這い上がって付着することがある。本実施形態におけるモールド11には、これを防止するために、メサ部11aの側壁11dには、撥液表面を有する撥液層14が形成されている。撥液層14は、ある程度の厚さを有するように形成される。撥液層14は、撥液層14が形成されるモールド11の表面材料、例えば石英よりも硬化性組成物13との接触角が高い膜(撥液層)とする。撥液層は、特に液体材料を塗布して乾燥させるような湿式法での形成が好ましい。
【0018】
撥液層14の形成方法については後述するが、本実施形態では撥液層14の形成にあたり、少なくともモールド11の側壁(メサ部11aの側壁11d)に撥液層14を形成する。これにより、上記したようにモールド11を基板12上の硬化性組成物13に押し付けた時、有機材料である硬化性組成物13がモールド11の側壁に這い上がらないようにすることができる。尚、撥液層14は、メサ部11aを支持する基材のベース部11cの上面11eや側壁11fにも形成されていてもよいが、上記したように少なくともメサ部11aの側壁11dに形成されるようにする。
【0019】
ここで、メサ部11aの側壁11dに撥液層14を形成する際に、インプリント面には撥液層が形成されないようにする必要がある。インプリント面に撥液層が形成されると硬化性組成物13の未充填欠陥が生じる恐れがあるためである。即ち、モールド11の凹凸パターン11bに十分に硬化性組成物が充填されないことが起こり得る。
【0020】
本実施形態におけるモールド11に形成する撥液層14の形成方法は、インプリント面に保護層を形成した後に、メサ部11aの側壁11dに撥液層14を形成し、その後インプリント面に形成した保護層を除去することで形成をする。撥液層14を形成するに際し、撥液層14の形成よりも先にインプリント面に保護層を形成することで、インプリント面に撥液層が形成されることを防止することができる。また、その際にインプリント面の端部にわずかに撥液層14からなる残渣(撥液材からなる残渣)が形成されることがあるため、最後に撥液成分からなる残渣を溶解する所定の溶剤(溶媒)で撥液層14(モールド11のインプリント面を含む)の洗浄を行う。このように、保護層の形成、撥液層14の形成、保護層の除去、撥液層14の洗浄(残渣の除去)の順で処理を行うことで、残渣を除去しつつ、適切にモールド11のメサ部11aの側壁11dに撥液層14を形成することができる。
【0021】
保護層を形成する方法としては、保護材料をインプリント面に塗布する方法が好ましい。例えば、ディスペンサや印刷法によりインプリント面に対して塗布することができる。インプリント面に塗布する保護材料の塗布領域としては、少なくともインプリント面の外周部に塗布されればよい。しかし、インプリント面全域に塗布してもよく、インプリント面の外周部及びその近傍も含むように塗布してもよく、撥液層14の形成方法に合わせて選択すればよい。インプリント面の外周部の塗布であれば、前面の塗布に比べ保護材料を削減することができ、保護材料の塗布時間も短くすることができる。
【0022】
保護層を形成するための材料(保護材料)としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリアクリル酸水溶液などがあげられるが、特にこれらに限定されるわけではない。またこれらの複数材料を混合して使用してもよい。
【0023】
撥液層14を形成する方法としては、スパッタ法や蒸着法などの乾式法で形成してもよく、液体材料を塗布して乾燥させるような湿式法で撥液層14を形成してもよい。尚、撥液層14の形成においては、湿式法の方がより好ましい。ここで、撥液層14を乾式法で形成する場合には、保護層は、インプリント面全域に形成すればよい。また、湿式法のように部分的に撥液層14を形成可能な方法であれば、保護層はインプリント面の外周部に形成する。ここで、外周部以外にもインプリント面の全域に保護層を形成するようにしてもよい。
【0024】
本実施形態における撥液層14を形成する撥液材としては、湿式法においては液状の撥液材であることが好ましく、特にフッ化炭素鎖を有するポリマーとポリマーを溶かす揮発性溶剤を含む溶液であることが好ましい。フッ化炭素鎖を有するポリマーは、硬化組成物に対する接触角が高く、良好な撥液層を形成できる。ポリマーを溶かす揮発性溶剤は、フッ化炭素鎖を有するポリマーを溶解する揮発性の溶剤であれば特に限定されない。たとえばスリーエム製のNovec7200、Novec7300などがあげられるが、特にこれらに限定されるわけではない。またこれらの複数材料を混合して使用してもよい。
【0025】
保護層の除去方法としては、水や有機溶媒で保護層を形成している保護材料を溶解させて除去することが好ましい。保護材料を溶解させる材料としては、保護材料に対する溶解度が高く、また撥液層14に影響を与えない材料を選択すればよい。また保護層が形成されている間は、ごみや有機物の付着(異物の付着)などのインプリント面の汚染を防止することができるため、撥液層14を形成したのちに直ちに除去してもよいが、インプリント処理を実施する直前に除去してもよい。
【0026】
撥液層14を形成する際に、液状の撥液材が少量であるが凸部の端からはみ出し、はみ出した液状の撥液材が凸部の側壁に沿ってわずかに盛り上がることがある。この盛り上がり部分が残渣としてパターン面に残留すると、インプリント面の接触不良などの問題が起きてしまうため残渣は除去する必要がある。本実施形態では、このような残渣を除去するために、溶剤を用いて溶解することで、撥液層14の表面と、撥液層14の端部に発生する撥液材からなる残渣を除去する除去処理(洗浄処理)を行う。
【0027】
撥液層14を形成する撥液材からなる残渣を除去するための除去方法(洗浄方法)としては、撥液層14の表面を、当該撥液層14における撥液材成分を溶解できる揮発性溶剤で溶解しながら、不要な残渣を全て溶解させて除去することが好ましい。そのため、撥液材に対する溶解度が高く、残渣を除去することができ、かつ撥液層には影響を与えない材料を選択することが好ましい。
【0028】
具体的な残渣除去方法としては、例えば、撥液材を供給可能な供給ヘッドから撥液材の溶媒を供給し保護材料を溶解させながら、モールド11を回転可能な回転機構によって回転させる。これにより、撥液層の周辺に残る不要な残渣を撥液材の溶媒に溶解させて除去することができる(スピン方式)。
【0029】
また例えば、撥液材の溶媒を容器に満たした浸漬機構を用いてモールド11を浸漬機構により撥液材の溶媒内に複数回浸漬と引き上げを繰り返すことで、撥液層14の周辺に残る不要な残渣を撥液材の溶媒に溶解させて除去することができる(浸漬方式)。
【0030】
溶剤に接触することで不要な残渣はすみやかに溶解する。この際の洗浄時間としては、数秒あれば、残渣を除去することができる。尚、洗浄時間は最低でも5秒あれば、不要な残渣を全て除去することが可能となる。即ち、5秒の洗浄時間とすることで、確実に残渣を溶解させて除去することができる。
【0031】
また、この洗浄(撥液層14を溶剤で融解して残渣を除去する)により撥液層14自身も表面がわずかに溶解するが、撥液層の膜厚が数nm程度残っていれば最低限必要な撥液性能は維持される。例えば、3nm以上程度残っていれば最低限必要な撥液性能は維持される。尚、膜厚が10nm以上残っていることが好ましく、膜厚が15nm以上残っていれば十分な撥液性能が発揮されるためより好ましい。
【0032】
撥液層14からなる残渣を除去するための溶媒は、ハイドロフルオロエーテル、パーフルオロカーボン、およびハイドロフルオロカーボンの少なくとも1つを含み、下記特性(a)~(d)を持つ常温(25℃)で液体である。
(a)沸点が100℃未満
(b)25℃における蒸気圧が5~30KPa
(c)25℃における密度が1050kg/m3以上
(d)25℃における表面張力が20mN/m以下
【0033】
本実施形態において用いられるハイドロフルオロエーテル(HFE)は、特に限定されない。好ましくは式、R1-O-R2(式中、R1 はC1~C12の炭化水素アルキル基またはハイドロフルオロカーボン、R2はC1~C12の好ましくはC3~C12のパーフルオロカーボン又はハイドロフルオロカーボンである)を有するものである。
【0034】
ハイドロフルオロエーテルの具体例としては、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2,-トリフルオロエチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテルなどを挙げることができる。さらに、メチルパーフルオロイソブチルエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテル、HFE-347pc-f(CF3CH2OCF2CHF2)などを挙げることができる。さらに、HFC-52-13p(CF3CF2CF2CF2CF2CHF2)、HFC-569sf(CF3CF2CF2CF2CH2CH3)などを挙げることができる。具体的商品としては住友スリーエム社製商品名「ノベック」、旭硝子社製商品名「アサヒクリン」、アサヒクリンAE-3000(旭硝子)、アサヒクリンAC-2000(旭硝子)などが挙げられる。さらに、アサヒクリンAC-4000(旭硝子)、ノベックHFE-7100(住友スリーエム)、ノベックHFE-7200(住友スリーエム)などが挙げられる。上記ハイドロフルオロエーテルは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
本実施形態において用いることのできるパーフルオロカーボンの具体例としては、パーフルオロブタン、パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサンなどを挙げることができる。さらに、パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロデカンなどを挙げることができる。具体的な商品としてはフロリナート(住友スリーエム)、フルーテック(ローヌプラン)、ガルデン(アウジモント)、アルフード(旭硝子)などがあげられる。上記パーフルオロカーボンは単独又は2種類以上混合してもよい。
【0036】
ハイドロフルオロカーボンの具体例としては、HFC-43-10mee、1,1,1,3,3ペンタフルオロブタン、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンなどを挙げることができる。さらに、オクタフルオロシクロペンタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-4-トリフルオロメチル-ペンタン、2,3-ジハイドロデカフロロペンタンなどを挙げることができる。具体的商品としては、日本ゼオン社製「ゼオローラ」、バートレル(三井・デュポンフロロケミカル)、ソルカン365mfc(ソルベイ)などが挙げられる。上記ハイドロフルオロカーボンは単独又は2種類以上混合してもよい。
【0037】
撥液層14からなる残渣を除去するための溶媒は、フッ化炭素鎖を有するポリマーを溶かす揮発性溶剤であることが好ましい。撥液材の形成時、揮発性溶剤は蒸発させるため、早く蒸発させるためには沸点が低いほうが望ましいが、低すぎると供給ヘッドの先端でフッ化炭素鎖を有するポリマーが固化してしまい、安定して塗布を行うことができない。沸点は50~140℃であることが好ましく、60~100℃であることがより好ましい。尚、例えば、スリーエム製のNovec7200、Novec7300などがあげられるが、特にこれらに限定されるわけではない。またこれらの複数材料を混合して使用してもよい。
【0038】
上記の方法により、インプリント面でもあるメサ部11aの外周部エッジに撥液材の残渣がなく、撥液層14を形成する側壁に対して、浸み出しの抑制に最も寄与する側壁のパターン面に向かう方向の端部まで撥液層14を形成することができる。これにより、撥液層による染み出しについて効果的に抑制することができる。
【0039】
図2は、本実施形態におけるモールド11の残渣を除去する(洗浄する)除去装置(洗浄装置、クリーニング装置)の構成の例を示す図である。本実施形態における除去装置は、保護層を形成後、撥液層14をモールド11に形成し、その後、溶剤を用いてモールド11の撥液層14を溶解することで撥液材の残渣を除去(洗浄、クリーニング)する装置として機能する。
【0040】
図2に示す本実施形態における除去装置は、保護層形成ユニット(第1の形成部)と、撥液層形成ユニット(第2の形成部)と、保護層除去ユニット(第2の除去部)と、残渣除去ユニット(第1の除去部)と、搬送部と、制御部111と、を備えている。各ユニットは、インプリント用モールドを搬送する搬送部によって接続されている。また、制御部は、各ユニット及び搬送部の動作内容や動作タイミング等を制御する。
【0041】
図3は、本実施形態に係る保護層形成ユニットの概略図である。保護層形成ユニットは、モールド11に対し、液状の保護材料を用いてインプリント面に撥液層14が形成されることを防止する保護層を形成するユニットである。尚、後述するが、保護層形成ユニットは、モールド11の凹凸パターン11bの少なくとも外周部に保護層を形成する。保護層形成ユニットは、ステージ(モールド保持部、移動機構)102と、供給ヘッド103と、移動機構104と、処理室109と、撮像部110と、を備えている。
【0042】
ステージ102は、未処理のモールド11が配置される、またステージ102は、当該モールド11を保持した状態でX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動可能とするモールド保持部として機能する。
【0043】
供給ヘッド103は、液状の保護材料を吐出するディスペンサである。供給ヘッド103は、処理室109外のタンクなどから供給される液状の保護材料を内部に収容可能とする。そして、供給ヘッド103は、その収容した液状の保護材料を所定タイミングで、ステージ102上の未処理のモールド11に向けて吐出する。供給ヘッド103は、制御部111に電気的に接続されており、その駆動は制御部111より制御されている。
【0044】
移動機構104は、供給ヘッド103を保持し、当該供給ヘッド103を保持した状態でステージ102に相対移動させる。移動機構には、X軸、Y軸、Z軸方向に移動する可動機構が含まれ、それぞれが独立に動作する。移動機構104としては、例えば、リニアモータ式の移動機構やエアステージ式の移動機構、送りねじ式の移動機構などの移動機構を用いることが可能である。
【0045】
処理室109は、供給ヘッド103やステージ102、撮像部110、移動機構104などを収容することが可能なように、箱形状に形成されている。この処理室の上面には、空気の異物を除去するフィルタが取り付けられたフィルタユニット112が設けられており、処理室109の下面(底面)には排気口113が設けられている。処理室109内では空気がフィルタユニット内のフィルタから排気口113へと流れており、処理室109内はダウンフロー(垂直層流)によって清浄に保たれている。フィルタとしては、例えば、ULPAフィルタやHEPAフィルタなどを用いることが可能である。モールド11は、処理室109内で処理される。
【0046】
撮像部110は、ステージ102上のモールド11を撮像可能なカメラ等の撮像装置である。撮像部110は、特にモールド11の凸部及びその周辺を撮像することが可能に処理室109の上面に取り付けられている。この撮像部110は、制御部111に電気的に接続されており、撮像した画像(例えば、モールド11の凸部の平面画像)を制御部111や情報処理装置等の外部機器に送信する。
【0047】
撥液層形成ユニット(第2の形成部)は、少なくともモールド11のメサ側壁(凸部の側面)に撥液層14を形成するユニットである。尚、本実施形態における撥液層形成ユニット(第2の形成部)は、モールド11のメサ部11aの側壁11dに撥液層14を形成する際、一部の保護層上にも撥液層14を形成する。撥液層形成ユニットの構成は、特に限定されることはないが、乾式法と湿式法で構成は異なる。
【0048】
ここで、乾式法の場合、例えば、チャンバと、撥液材料保持部と、ヒーターなどの撥液材料加熱部を備え、撥液材料を撥液材料加熱部で加熱することで撥液材料を蒸発・ガス化させモールド11に撥液層14を形成する。
【0049】
また、湿式法の場合、例えば、保護材料塗布ユニットと構成を同様とすることができる。即ち、ステージ、供給ヘッド、移動機構、処理室、及び撮像部を備えるように構成することができる。その場合、供給ヘッドから液体の撥液材料を供給し、モールドのメサ側壁を含む所定領域に液体の撥液材料を塗布する。尚、撥液層も
図3と同様の構成でモールド11上に撥液材を塗布し撥液層を形成する。
【0050】
図4は、本実施形態に係る保護層除去ユニットの概略図である。保護層除去ユニット(第2の除去部)は、保護層を溶解可能な保護層除去材料で保護層を溶解させ、モールド11に形成した保護層を除去するユニットである。保護層除去ユニットが保護層を溶解することによって、保護層及び保護層の一部に形成された撥液層14も除去することができる。保護層除去ユニット(第2の除去部)は、ステージ(モールド保持部、移動機構)102と、移動機構104、処理室109と、供給ヘッド118と、回転ステージ119と、を備えている。
【0051】
ステージ102は、保護層と撥液層14が形成されたモールド11が配置される。またステージ102は、当該モールド11を保持した状態でX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動可能とするモールド保持部として機能する。
【0052】
移動機構104は、供給ヘッド118を保持し、当該供給ヘッド118を保持した状態でステージ102に相対移動させる。移動機構には、X軸、Y軸、Z軸方向に移動する可動機構が含まれ、それぞれが独立に動作する。移動機構104としては、例えば、リニアモータ式の移動機構やエアステージ式の移動機構、送りねじ式の移動機構などの移動機構を用いることが可能である。
【0053】
処理室109は、供給ヘッド118やステージ102、移動機構104などを収容することが可能なように、箱形状に形成されている。この処理室の上面には、空気の異物を除去するフィルタが取り付けられたフィルタユニット112が設けられており、処理室109の下面(底面)には排気口113が設けられている。処理室109内では空気がフィルタユニット内のフィルタから排気口113へと流れており、処理室109内はダウンフロー(垂直層流)によって清浄に保たれている。フィルタとしては、例えば、ULPAフィルタやHEPAフィルタなどを用いることが可能である。モールド11は、処理室109内で処理される。
【0054】
供給ヘッド118は、保護層除去材料を吐出するディスペンサである。供給ヘッド118は、処理室109外のタンクなどから供給される液状の除去材料を収容可能とする。そして、供給ヘッド118は、その収容した液状の保護材料を所定タイミングで、ステージ102上のモールド11に向けて吐出する。供給ヘッド118は、制御部111に電気的に接続されており、その駆動は制御部111より制御されている。
【0055】
回転ステージ119は、モールド11を真空吸着等で保持しつつ、当該モールド11をZ軸周りに回転させる回転機構である。
【0056】
本実施形態における保護層の除去は、供給ヘッド118と回転ステージ119を組み合わせた構成で実施する。具体的には、回転ステージ119の上に撥液層を形成したモールド11を回転ステージ119と回転中心をあわせるように設置する。この時、モールド11は、真空吸着等の方法で回転ステージ119に保持される。モールド11を保持後、回転ステージ119を回転することで、モールド11も連動して回転する。この際、回転ステージ119は低速で回転させることが好ましい。
【0057】
次に、供給ヘッド118を所定の高さを維持しつつ、移動機構104により、インプリント面11g上の中心部の上部に移動させた後、供給ヘッド118から保護層除去材料をモールド11に吐出(塗布、供給)する。保護層除去材料は、インプリント面11gの中心部または中心部近傍に吐出され、回転の遠心力により外周部に向かって広がっていく。これにより、保護層の成分を溶解しつつ、溶解した保護層(保護材料)をモールド11外に流すことができる。そして、保護層を溶解して除去することで、保護層上に形成された撥液層14の一部もインプリント面11gから除去される。保護層除去材料を吐出し続けることにより、保護層の成分が保護層除去材料にすべて溶解する。そしてインプリント面11gから保護層(保護層に形成された撥液層も含む)が除去されたら、保護層除去材料の吐出を停止し、モールド11表面の乾燥を行う。また、回転ステージ119の回転も停止させる。
【0058】
尚、保護層の除去を行うに際し、上記したように供給ヘッド118から保護層除去材料を供給し、回転ステージ119でモールド11を回転させながら保護材料を溶解して除去する、いわゆるスピン方式としてもよい。しかし、保護層の除去方法はスピン方式に限定されない。例えば、保護層除去ユニットは、保護層除去材料で容器に満たした浸漬機構を備えていてもよい。そして、モールド11を保護層除去材料で満たした浸漬機構に複数回浸漬と引き上げを繰り返すことで、保護材料を保護層除去材料に溶解させ除去する、いわゆる浸漬方式としてもよい。
【0059】
残渣除去ユニット(第1の除去部)は、撥液層からなる残渣を溶解可能な所定の溶剤(撥液材の溶媒)を用いて残渣を溶解させることでモールド11から残渣を除去するユニットである。尚、残渣除去ユニットの構成は、特に限定されることはない。例えば、残渣除去ユニットは、撥液材の溶媒を供給する
図3や
図4に示したような供給ヘッドと、モールド11を回転させる回転機構を備えるようにしてもよい。供給ヘッドから撥液材の溶媒を供給し撥液材からなる残渣を溶解させながら、回転機構でインプリントモールドを回転することで、撥液層の周辺に残る残渣を撥液材の溶媒に溶解させて除去することができる(スピン方式)。尚、残渣の除去も保護層除去ユニットにおける方法と同様にモールド11上のインプリント面に溶剤を吐出し、回転の遠心力により残渣を溶解してモールドの外に流していく。
【0060】
また例えば、撥液材の溶媒を容器に満たした浸漬機構を備えていてもよい。そして、モールド11を撥液材の溶媒で満たした浸漬機構に複数回浸漬と引き上げを繰り返すことで、撥液層14の周辺に残る残渣を撥液材の溶媒に溶解させて除去することができる(浸漬方式)。
【0061】
搬送部は、モールド11を保持しつつ各ユニットの間を搬送する。搬送部としては、移動式ステージでもよく多軸ロボットを用いてもよい。
【0062】
制御部111は、CPUやメモリ(記憶部)などを含み、少なくとも1つのコンピュータで構成され、除去装置の各構成要素に回線を介して電気的に接続される。また、制御部111は、メモリに格納されたプログラムに従って、各ユニットと搬送部の動作内容と動作タイミング等、除去装置全体の各構成要素の動作調整などを統括的に制御する。また、制御部111は、除去装置の他の部分と一体で(共通の筐体内に)構成してもよい。さらに、除去装置の他の部分とは別体で(別の筐体内に)構成してもよいし、除去装置とは別の場所に設置し遠隔で制御してもよい。また、CPUはMPUであってもよい。また、メモリには、例えば、各種の動作内容や動作タイミング等が記憶される。
【0063】
本実施形態においては、
図2に示すように保護層形成ユニットと、撥液層形成ユニットと、保護層除去ユニットと、残渣除去ユニットとはそれぞれ独立して処理装置内に配置される構成について示している。しかし、1つのユニット内に複数のユニットの機構を集約させてもよい。例えば、1つユニット内に材料供給ヘッドを複数備えて、保護層の形成と撥液層の形成を1つのユニット内で実施する形態としてもよい。
【0064】
図5は、本施形態に係る残渣を除去する除去工程(洗浄工程、クリーニング工程)の各処理段階の説明図である。
図6は、本実施形態における残渣除去処理を示すフローチャートである。尚、
図5に示す15は保護層を示す(以下、保護層15)。また、14aは、保護層除去前でありメサ側壁部及び保護層15の一部に形成された撥液層を示す(以下、撥液層14a)。また、14bは、保護層15を除去した後の撥液層を示す(以下、撥液層14b)。また、14cは、残渣を除去した後の撥液層を示す(以下、撥液層14c)。尚、
図5では、説明を明瞭とすべく保護層と各段階における撥液層に対してそれぞれ符号を付している。
【0065】
本実施形態においては、上記で説明したように保護層15をモールド11のインプリント面の外周部に形成し、メサ側壁に撥液層14aを形成する。その後、保護層15を除去し、最後に残渣を除去する除去方法で不要な残渣を除去することで、
図5に示すような撥液層14cを形成する。以下、
図5及び
図6を参照して詳細に説明する。以下の各処理は、処理装置の制御部111がメモリに記憶されたプログラムを実行することによって実現される。また、各工程(ステップ)について先頭にSを付けて表記することで、工程(ステップ)の表記を省略する。
【0066】
まず、S101では、制御部111は、保護層形成ユニットを制御し、供給ヘッド103よりモールド11上のインプリント面の外周部に液体の保護材料を塗布し、モールド11に
図5に示すような保護層15を形成する(第1の形成工程)。撥液層が形成されることを防止する保護層15を形成する際には、モールド11における凹凸パターンの少なくとも外周部に保護層15を形成する。ここで、供給ヘッド103は、所定の高さを維持しつつ、移動機構104により、
図5に示すようにインプリント面11g上の塗布経路P1-1~P5-1に沿って移動し、モールド11上のインプリント面11gに保護材料を連続して供給する。
【0067】
塗布経路P1-1~P5-1は、インプリント面11gの外周部から所定距離L-1(例えば0.2mm)だけ離されている。P1-1が吐出開始位置でありP5-1が吐出停止位置である。この塗布経路によってインプリント面11gの外周部にのみ保護材料が塗布される。また、この塗布経路上に塗布された液体の保護材料は、表面エネルギーによる濡れ広がりによってインプリント面上を濡れ広がっていき、インプリント面の外周部エッジ11hまで到達する。このように、第1の形成工程を実施することで、モールド11の外周部に保護層15を形成することができる。
【0068】
次に、S102では、制御部111は、撥液層形成ユニットを制御し、供給ヘッドよりモールド11上の上面11eに撥液材料を塗布し、
図5に示すような撥液層14aを形成する(第2の形成工程)。撥液層14aを形成する際には、モールド11の少なくとも凸部の側面に形成するようにする。塗布経路P1-2~P5-2は、インプリント面11gの外周に沿って、上面11e上にP1-2、P2-2、P3-2、P4-2、P5-2の順に移動する。塗布経路は、インプリント面11gから所定距離L-2(例えば1mm)だけ離されている。本実施形態では、P1-2が吐出開始位置でありP5-2が吐出停止位置である。
【0069】
この塗布経路によって塗布された領域は例えば、インプリント面11gを囲う枠形状になる。この塗布経路によって塗布された液状の撥液材は、濡れ性により広がっていきメサ部11aの側壁11d部分まで到達し、さらにメサ部11aの側壁11d部分を乗り越えてインプリント面11gの外周に形成された保護層15にまで到達する。このように塗布することで、側壁11d及び側壁11d周囲の上面11eに液状の撥液材を塗布することができる。
【0070】
その後、液状の撥液材に含まれる揮発性溶剤が揮発して乾燥すると、メサ部11aの側壁11d及び保護層15の一部に撥液層14aが形成される。このように、第1の形成工程の後に第2の形成工程を実施することで、保護層15が形成されていないインプリント面までは、液状の撥液材が到達しない。そのため、インプリント面11gに撥液層14aを形成せずに、モールド11の少なくとも凸部の側面に撥液層を形成することができる。
【0071】
次に、S103では、制御部111は、保護層除去ユニットを制御し、供給ヘッド118から保護層15を溶解可能な保護層除去材料をモールド11に供給し、モールド11に形成された保護層15の除去を行う(第2の除去工程)。保護層15の除去に際し、まずは、回転ステージ119上に撥液層14aを形成したモールド11を回転ステージ119と回転中心を合わせるように設置する。この時、モールド11設置後は、モールド11は、真空吸着等の方法で回転ステージ119に保持する。モールド11を保持後、回転ステージ119とモールド11を低速で回転させる。低速でモールド11を回転させたら、供給ヘッド118を所定の高さに維持しつつ、移動機構104により、インプリント面11g上の中心部の上部に移動させた後、供給ヘッド118から保護層除去材料をモールド11上に吐出する。
【0072】
保護層除去材料は、インプリント面11gの中心部に吐出され、回転の遠心力により外周部に向かって広がり、保護層15の成分を溶解してモールド11の外に流れていく。保護層15が溶解して除去されると共に、保護層15に形成された撥液層14aの一部も除去される。保護層除去材料を吐出し続けることにより、保護層15の成分が保護層除去材料にすべて溶解しインプリント面11gから除去されたら、保護層除去材料の吐出を停止し、モールド11表面の乾燥を行う。このように第2の形成工程の後に第2の除去工程を行うことで、
図5に示すような撥液層14bを形成することができる。
【0073】
最後に、S104では、制御部111は、残渣除去ユニットを制御し、保護層15が除去された後の撥液層である撥液層14bが形成されたモールド11における残渣の除去を行う(第1の除去工程)。残渣の除去においては、撥液層14bを所定の溶剤で溶解することで、メサ部11aの外周部エッジ等にある残渣を除去する。また、残渣の除去は、
図4に示した供給ヘッド118と回転ステージ119を組み合わせた構成で実施する。回転ステージ119上に撥液層14bが形成されたモールド11を回転ステージ119と回転中心をあわせるように設置される。
【0074】
この時、モールド11設置後は、モールド11は、真空吸着等の方法で回転ステージ119に固定させ、その後、回転ステージとモールドを低速で回転させる。供給ヘッド118を所定の高さを維持しつつ、移動機構104により、インプリント面11g上の中心部の上部に移動させた後、供給ヘッド118から撥液材の溶媒をモールドに吐出する。撥液材の溶媒はインプリント面11gの中心部に吐出され、回転の遠心力により外周部に向かって広がり、残渣を溶解してモールド11の外に流れて除去される。撥液材の溶媒を吐出し続け、不要な残渣が撥液材の溶媒にすべて溶解しインプリント面11gから除去されたら、撥液材の溶媒の吐出を停止する。これにより不要な残渣を除去した撥液層14cを形成することができる。その後、モールド11表面の乾燥を行う。このように、第2の除去工程の後に第1の除去工程を行うことで、
図5に示すような不要な残渣が除去された撥液層14cを少なくともメサ部11aの側壁11dに形成することができる。
【0075】
上記の除去方法により、インプリント面の保護材料と不要な残渣が除去され、且つメサ側壁にのみ残渣が除去された撥液層である撥液層14cが形成されたモールドとすることができる(モールドを製造することができる)。
【0076】
以上、実施形態1における除去装置を用いた除去方法では、モールド11の凹凸パターン面の全域を撥液化することなくメサ側壁のみを高精度に撥液層を形成することができる。そして、少なくともモールドの凸部の側面に発生する残渣を高精度に除去することができる。
【0077】
尚、本実施形態では、モールド11のパターン面へ保護層を形成後に、撥液層を形成したが、モールド11のメサ部11aの側面に露光光を遮光する遮光層を形成するようにしてもよい。遮光層を形成する際にも予め保護層を形成する、本実施形態における方式は有効となる。
【0078】
また、モールド11のインプリント面全域に形成した保護層は、撥液材料以外のゴミや汚染からも保護することができるため、インプリント用のモールド11に限らず、モールド11の搬送時の汚染防止層としても機能する。
【0079】
上記で説明した除去装置は、搬送機構やロード部、アンロード部等を付属させることにより、モールド11のメサ側壁部を撥液化させ、残渣を除去する装置として導入することが可能である。
【0080】
本実施形態では、保護層形成ユニットにより保護層を形成した。ここで、例えば、所定の形状をした遮光板により凹凸パターン11bの保護を行った後、撥液層形成ユニットにより撥液層を形成し、残渣除去ユニットでメサ部11a端部等に生じる残渣を除去してもよい。この際、遮蔽板は、凹凸パターン11bに対して離隔して対向配置される。また、例えば、所定の緩衝材を凹凸パターン11bに接触させ、緩衝材の上にモールド基板を配置して凹凸パターン11bの保護を行う。その後、撥液層形成ユニットにより撥液層14を形成し、残渣除去ユニットでメサ部11a端部等に生じる残渣を除去してもよい。尚、緩衝部材とは、例えば、水、アルコール、シンナーなどの液体やゲル状部材等である。また、モールド基板は、例えば石英等により形成される。また、例えば、凹凸パターン11bを硬化性組成物13に押しつけた状態で、撥液層形成ユニットにより撥液層14を形成し、残渣除去ユニットでメサ部11a端部等に生じる残渣を除去してもよい。このような除去方法とする場合、保護層除去ユニットを除去装置の構成から無くすことができる。保護層除去ユニットが無くなることで、除去装置全体のサイズを縮小することができる。
【0081】
また、本実施形態における除去装置の外部、即ち外部の装置等を用いて、メサ部11aの側壁11dに撥液層14を形成したモールド11を用意し、残渣除去ユニットを用いてメサ部11a端部等に生じる残渣を除去してもよい。このような場合、除去装置は、残渣除去ユニットのみで構成することができる。即ち、保護層形成ユニットと、撥液層形成ユニットと、保護層除去ユニットを除去装置の構成から無くすことができ、除去装置全体のサイズを縮小することができる。また、残渣を除去する時間を短縮することができる。
【0082】
(実施例1)
以下、本実施形態の除去方法を用いて、モールド11の側面(メサ部11aの側壁11d)を撥液化した実験例を以下に示す。本実施形態の方法を用いてモールド11の側面を撥液化する条件として、保護材料にはグリセリンを用い、保護層除去材料には水を用いた。また、撥液材には炭素鎖2であるパーフルオロポリエーテル基を主鎖中に有するポリマーを0.09wt%の固形分濃度で揮発性溶剤に溶解したものを用い、撥液材の洗浄溶剤にはスリーエム製のNovec7200を用いた。また、洗浄溶剤による洗浄時間は5秒とした。
【0083】
撥液化処理後の撥液化の評価として、インプリント面に対して撥液材による残渣の有無を光学顕微鏡による観察機構で確認した。また、成膜された撥液層についてFIB-SEMによる断面露出加工とSEM観察を行い、膜厚を測定した。さらに、撥液性の評価として撥液層成膜後のモールド11の側壁部に硬化前の硬化性組成物を滴下し、その接触角を測定した。尚、接触角の判定は70-100°のときに撥液性〇、65-69°のときに撥液性△、68°以下と101°以上は撥液性×とする。
【0084】
実施例1における撥液層の膜厚計測と評価結果としては、残渣は残っておらず、膜厚は35nmであり、撥液性は○(マル)であった。従って、実施例1における条件では、残渣の除去及び残渣除去後の膜厚について良好な結果が得られた。
【0085】
(実施例2)
実施例2は、実施例1と同様の方法で、洗浄時間を30秒に変えてモールド11の側面を撥液化した。尚、実施例2においては、洗浄時間を30秒に変えた以外の条件は実施例1と同様である。ここで、実施例1と同様に撥液層の膜厚計測と撥液性能の評価を行ったところ、残渣は残っておらず、膜厚は30nmであり、撥液性は○(マル)であった。従って、実施例2における条件では、残渣の除去及び残渣除去後の膜厚について良好な結果が得られた。
【0086】
(実施例3)
実施例3は、実施例1と同様の方法で、洗浄時間を15分に変えてモールド11の側面を撥液化した。尚、実施例3においては、洗浄時間を15分に変えた以外の条件は実施例1と同様である。ここで、実施例1と同様に撥液層の膜厚計測と撥液性能の評価を行ったところ、残渣は残っておらず、膜厚は21nmであり、撥液性は○(マル)であった。従って、実施例3における条件では、残渣の除去及び残渣除去後の膜厚について良好な結果が得られた。
【0087】
(実施例4)
実施例4は、実施例1と同様の方法で、洗浄溶剤をスリーエム製のNovec7300に変えてモールド11の側面を撥液化した。尚、実施例4においては、洗浄溶剤をスリーエム製のNovec7300に変えた以外の条件は実施例1と同様である。ここで、実施例1と同様に撥液層の膜厚計測と撥液性能の評価を行ったところ、残渣は残っておらず、膜厚は38nmであり、撥液性は○(マル)であった。従って、実施例4における条件では、残渣の除去及び残渣除去後の膜厚について良好な結果が得られた。
【0088】
(実施例5)
実施例5は、実施例4と同様の方法で、洗浄時間を30秒に変えてモールド11の側面を撥液化した。尚、実施例5においては、洗浄時間を30秒に変えた以外の条件は実施例4と同様である。ここで、実施例1と同様に撥液層の膜厚計測と撥液性能の評価を行ったところ、残渣は残っておらず、膜厚は35nmであり、撥液性は○(マル)であった。従って、実施例5における条件では、残渣の除去及び残渣除去後の膜厚について良好な結果が得られた。
【0089】
(実施例6)
実施例6は、実施例1と同様の方法で、洗浄溶剤をアセトンに変えてモールド11の側面を撥液化した。尚、実施例6においては、洗浄溶剤をアセトンに変えた以外の条件は実施例1と同様である。ここで、実施例1と同様に撥液層の膜厚計測と撥液性能の評価を行ったところ、残渣は残っておらず、膜厚は11nmであり、撥液性は△であった。従って、実施例6における結果としては、実施例1~5よりは撥液層の膜厚が少なくなっているが、必要な撥液性能は維持されており、残渣も除去されているため、問題ない結果が得られた。
【0090】
(比較例1)
比較例1は、実施例1と同様の方法で、洗浄溶剤を水に変えてモールド11の側面を撥液化した。尚、比較例1においては、洗浄溶剤を水に変えた以外の条件は実施例1と同様である。ここで、実施例1と同様に撥液層の膜厚計測と撥液性能の評価を行ったところ、インプリント面の一部に残渣が残っていた。膜厚は80nmであり、撥液性は○で(マル)あった。従って、比較例1における結果としては、撥液層の膜厚は十分な厚さが残っているが、残渣が除去できない結果が得られた。
【0091】
(比較例2)
比較例2は、実施例1と同様の方法で、洗浄溶剤をヘキサンに変えてモールド11の側面を撥液化した。尚、比較例2においては、洗浄溶剤をヘキサンに変えた以外の条件は実施例1と同様である。ここで、実施例1と同様に撥液層の膜厚計測と撥液性能の評価を行ったところ、インプリント面の一部に残渣が残っていた。膜厚は71nmであり、撥液性は○(マル)であった。従って、比較例1における結果としては、撥液層の膜厚は十分な厚さが残っているが、残渣が除去できない結果が得られた。
【0092】
(比較例3)
比較例3は、実施例1と同様の方法で、洗浄溶剤をエタノールに変えてモールド11の側面を撥液化した。尚、比較例3においては、洗浄溶剤をエタノールに変えた以外の条件は実施例1と同様である。ここで、実施例1と同様に撥液層の膜厚計測と撥液性能の評価を行ったところ、インプリント面の一部に残渣が残っていた。膜厚は69nmであり、撥液性は○(マル)であった。従って、比較例1における結果としては、撥液層の膜厚は十分な厚さが残っているが、残渣が除去できない結果が得られた。
【0093】
以上のように、実施例1~6における結果と比べると、比較例1~3ではそれぞれ撥液層の膜厚については充分な厚さが残っているが、残渣が除去できていない結果となった。ここで、以下に示す表1に上記した実施例1~6、及び比較例1~3における洗浄条件と評価を示す。
【表1】
【0094】
上記で説明した本実施形態における処理装置は、インプリント装置に搭載することが可能とである。インプリント装置は、基板上のパターン形成領域に配置されたインプリント材とモールドの凹凸パターンとを接触させ、インプリント材を硬化させることによって、基板の上にインプリント材の硬化物からなるパターンを形成する装置である。そして、インプリント装置は、複数のパターン形成領域に硬化物からなるパターンを形成するインプリント装置は、例えば、半導体デバイスなどのデバイスの製造に使用される。尚、本実施形態では、光硬化法を採用したインプリント装置とする。
【0095】
インプリント材は、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱等が用いられうる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、例えば、赤外線、可視光線、紫外線などでありうる。硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物でありうる。
【0096】
これらのうち、光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。インプリント材は、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板上に配置されうる。
【0097】
インプリント装置は、モールド保持部、構造体、照射部、基板駆動機構、ベース定盤、基板保持部(基板ステージ)、ディスペンサ(吐出装置)、モールド駆動機構、撮像部、制御部等を備えうる。
【0098】
モールド保持部は、モールドを保持しながら、モールドを移動させる駆動機構(移動部)を有する。モールド保持部は、モールドにおける照射光の照射面の外周領域を真空吸着力や静電力により引き付けることでモールドの保持が可能である。構造体は、型駆動機構を支持する。
【0099】
照射部(硬化部)は、基板上のインプリント材に対して、例えば、紫外線等の照射光についてプリズムを介して照射することによってインプリント材を硬化させる。照射部は、露光光源と、この露光光源から照射された照射光をインプリントに適切な光に調整する光学素子と、露光光源から照射された照射光の照射領域(照射範囲)を制限する遮光板(マスキングブレード)を含みうる。
【0100】
基板保持部は、基板を保持しながら、基板を各軸方向に移動可能とする基板駆動機構(移動部)を有する。ベース定盤は、基板保持部及び基板駆動機構を支持する。基板駆動機構及びモールド駆動機構は、基板とモールドとの相対位置が調整されるように基板及びモールドの少なくとも一方を駆動する相対駆動機構として構成される。相対駆動機構(基板駆動機構と型駆動機構)による相対位置の調整は、基板上のインプリント材とモールドの凹凸パターンとの接触、及び硬化したインプリント材とモールドとの分離のための駆動を含む。
【0101】
基板駆動機構は、基板を複数の軸(例えば、X軸、Y軸、θZ軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。型駆動機構は、モールドを複数の軸(例えば、Z軸、θX軸、θY軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。
【0102】
ディスペンサ(供給部)は、基板上のパターン形成領域(インプリント領域)にインプリント材を配置(供給)する。ディスペンサは、例えば、基板駆動機構によって基板を走査しながらディスペンサからインプリント材を吐出することによって、基板上の目標位置にインプリント材を配置することができる。
【0103】
撮像部は、1又は複数で構成され、基板のパターン形成領域のアライメントマークとモールドのアライメントマークとによって形成される像を撮像することによって両アライメントマークの相対位置を計測する。撮像部は、プリズムを介して上記の撮像を行うように構成されうる。
【0104】
制御部は、CPUやメモリ(記憶部)などを含み、少なくとも1つのコンピュータで構成され、インプリント装置の各構成要素に回線を介して接続される。また、制御部は、メモリに格納されたプログラムに従って、インプリント装置全体の各構成要素の動作調整などを統括的に制御する。即ち、制御部は、照射部、基板駆動機構、ディスペンサ、型駆動機構、撮像部等を制御する。制御部は、インプリント装置の他の部分と一体で(共通の筐体内に)構成してもよい。さらに、インプリント装置の他の部分とは別体で(別の筐体内に)構成してもよいし、インプリント装置とは別の場所に設置し遠隔で制御してもよい。
【0105】
また、制御部は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのPLD(Programmable Logic Device)で構成されてもよい。または、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)で構成されてもよい。または、プログラムが組み込まれた汎用コンピュータ、または、これらの全部または一部の組み合わせによって構成されてもよい。
【0106】
本実施形態のインプリント装置が実施する基板のパターン形成領域上にインプリント材によってパターンを形成する処理であるインプリント処理は、積層工程、接触工程、光照射工程、及び離型工程を含みうる。このインプリント処理は、1つのパターン形成領域に対し、積層工程、接触工程、光照射工程、離型工程の順番で行う。尚、インプリント処理は、接触工程と光照射工程との間に行う基板とモールドとの位置合わせを行う位置合わせ工程を含むようにしてもよい。以下、本実施形態に係るインプリント処理の各工程について、
図7を参照して説明する。
図7は、インプリント装置が行うインプリント処理を示した模式断面図である。
図7(A)は、積層工程の一例を示す模式断面図である。
図7(B)は、接触工程の一例を示す模式断面図である。
図7(C)は、光照射工程の一例を示す模式断面図である。
図7(D)は、離型工程の一例を示す模式断面図である。
【0107】
本実施形態に係るインプリント方法によって得られる硬化性組成物の硬化膜は、1nm以上10mm以下のサイズのパターンを有する膜であることが好ましい。尚、一般に、光を利用してナノサイズ(1nm以上1000nm以下)のパターン(凹凸構造)を有する膜を作製するパターン形成技術は、光ナノインプリント法と呼ばれている。本実施形態に係るインプリント方法は、光ナノインプリント法を利用している。以下、各工程について説明する。以下の各工程における各処理は、インプリント装置の制御部がメモリに記憶されたプログラムを実行することによって実現される。尚、処理装置の制御部111によって実現されるようにしてもよい。
【0108】
図7(A)に例示する積層工程の一例としては、
図7に示す通り、ディスペンサを介して硬化性組成物202の液滴を基板201上に離散的に滴下して配置する。配置方法としてはインクジェット法が特に好ましい。硬化性組成物202の液滴は、モールド204上に凹部が密に存在する領域に対向する基板201上には密に、凹部が疎に存在する領域に対向する基板上には疎に配置される。このことにより、後述する残膜を、モールド204上のパターンの疎密によらずに均一な厚さに制御することができる。
【0109】
滴下された液滴は、時間とともに基板面上を次第に広がる。図中に示している矢印203は、液滴の広がる方向を示している。
【0110】
尚、積層工程の別の例としては、スピンコート法を用いて硬化性組成物202を基板201上に配置してもよい。この場合、硬化性組成物202は基板201上に連続的に配置される。
【0111】
本実施形態に係る硬化性組成物202の溶剤を除く成分の混合物の25℃での粘度は、1mPa・s以上40mPa・s未満であることが好ましい。また、より好ましくは、1mPa・s以上20mPa・s未満である。硬化性組成物202の粘度が40mPa・sを越えると、所望のパターンの粗密に合わせ液滴を離散的に配置することにより残膜厚を均一にし、高精度パターンを形成することができるインクジェット方式による塗布ができなくなる。また、粘度が1mPa・sより低いと、組成物を塗布(配置)したときに流れることにより塗りムラが発生したり、後述する接触工程において、モールド204端部から組成物が流れ出したりする場合があり、好ましくない。
【0112】
本実施形態に係る硬化性組成物202の表面張力は、溶剤を除く成分の組成物について23℃での表面張力が、5mN/m以上70mN/m以下であることが好ましい。また、より好ましくは、7mN/m以上50mN/m以下であり、さらに好ましくは、10mN/m以上40mN/m以下である。
【0113】
ここで、表面張力が高いほど、例えば5mN/m以上であると、毛細管力が強く働くため、硬化性組成物202をモールド204に接触させた際に、充填(スプレッド及びフィル)が短時間で完了する。また、表面張力を70mN/m以下とすることにより、硬化性組成物を硬化して得られる硬化膜が表面平滑性を有する硬化膜となる。
【0114】
本実施形態に係る硬化性組成物202のインプリント面及び基板表面に対する接触角は、溶剤を除く成分の組成物について、0°以上90°以下であることが好ましい。接触角が90°より大きいと、モールド204の凹凸パターンの内部や基板201とモールド204の間隙において毛細管力が負の方向(モールドと硬化性組成物間の接触界面を収縮させる方向)に働き、充填しない。0°以上30°以下であることが特に好ましい。接触角が低いほど毛細管力が強く働くため、充填速度が速い。
【0115】
硬化性組成物202を配置する対象である基板201は、被加工基板であり、例えばシリコン基板が用いられる。基板201上には、被加工層が形成されていてもよい。基板201及び被加工層の間にさらに他の層が形成されていてもよい。また、基板201として石英基板を用いれば、石英インプリントモールドのレプリカ(モールドレプリカ)を作製することができる。
【0116】
ただし、基板201は、シリコン基板や石英基板に限定されるものではない。基板201は、アルミニウム、チタン-タングステン合金、アルミニウム-ケイ素合金、アルミニウム-銅-ケイ素合金、酸化ケイ素、窒化ケイ素等の半導体デバイス用基板として知られているものの中からも任意に選択することができる。
【0117】
尚、使用される基板201(被加工基板)あるいは被加工層の表面は、シランカップリング処理、シラザン処理、有機薄膜の成膜、等の表面処理によって硬化性組成物202との密着性が向上されていてもよい。
【0118】
次に、接触工程では、
図7(B)に示すように、前工程(積層工程)で形成された硬化性組成物202にパターン形状を転写するための原型パターンを有するインプリント用のモールド204を接触させる。これにより、モールド204が表面に有する微細パターンの凹部に硬化性組成物202が充填(フィル)されて、モールド204の微細パターンに充填(フィル)された液膜となる。ここでも、矢印203は液滴(硬化性組成物)の広がる(凹部に充填されていく)方向を示している。
【0119】
モールド204としては、次の工程(光照射工程)を考慮して光透過性の材料で構成されたモールド204を用いるとよい。モールド204を構成する材料の材質としては、具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂等の光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサン等の柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が基材として好ましい。ただし、モールド204を構成する材料の材質として光透明性樹脂を使用する場合は、硬化性組成物202に含まれる成分に溶解しない樹脂を選択する必要がある。熱膨張係数が小さくパターン歪みが小さいことから、モールド204を構成する材料の材質は、石英であることが特に好ましい。
【0120】
モールド204が表面に有する微細パターンは、4nm以上200nm以下のパターン高さを有することが好ましい。パターン高さが低いほど、離型工程においてモールドを硬化性組成物の光硬化膜から引き剥がす力、すなわち離型力が低く、また、離型に伴って硬化性組成物パターンがひきちぎられてモールド204側に残存する離型欠陥数が少ない。モールドを引き剥がす際の衝撃による硬化性組成物パターンの弾性変形で隣接硬化性組成物パターン同士が接触し、硬化性組成物パターンが癒着あるいは破損する場合がある。しかし、パターン幅に対してパターン高さが2倍程度以下(アスペクト比2以下)であると、それらの不具合を回避できる可能性が高い。一方、パターン高さが低過ぎると、被加工基板の加工精度が低い。
【0121】
尚、前述のように、硬化性組成物の平坦面を得ることを目的として、インプリント面に微細パターンを有さないモールドを用いる場合も、本発明に含まれる。即ち、インプリント面に微細パターンを有さないモールドを用いる平坦化装置等に本実施形態における処理装置を搭載することも可能である。
【0122】
モールド204には、光硬化した硬化性組成物202とモールド204の表面との剥離性を向上させるために、硬化性組成物202とモールド204との接触工程の前に表面処理を行っておいてもよい。表面処理の方法としては、モールド204の表面に離型剤を塗布して離型剤層を形成する方法が挙げられる。ここで、モールド204の表面に塗布する離型剤としては、シリコン系離型剤、フッ素系離型剤、炭化水素系離型剤、ポリエチレン系離型剤、ポリプロピレン系離型剤、パラフィン系離型剤、モンタン系離型剤、カルナバ系離型剤等が挙げられる。例えば、ダイキン工業(株)製のオプツール(登録商標)DSX等の市販の塗布型離型剤も好適に用いることができる。尚、離型剤は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用して用いてもよい。これらの中でも、フッ素系および炭化水素系の離型剤が特に好ましい。
【0123】
接触工程において、
図7(B)に例示するように、モールド204と硬化性組成物202とを接触させる際に、硬化性組成物202に加える圧力は特に限定はされない。該圧力は0MPa以上100MPa以下とするとよい。また、該圧力は0MPa以上50MPa以下であることが好ましく、0MPa以上30MPa以下であることがより好ましく、0MPa以上20MPa以下であることがさらに好ましい。
【0124】
接触工程において、モールドと硬化性組成物202を接触させる時間は、特に限定はされないが、例えば0.1秒以上600秒以下とすると良い。また、該時間は0.1秒以上3秒以下であることが好ましく、0.1秒以上1秒以下であることが特に好ましい。0.1秒より短いと、スプレッド及びフィルが不十分となり、未充填欠陥と呼ばれる欠陥が多発する傾向がある。
【0125】
接触工程は、大気雰囲気下、減圧雰囲気下、不活性ガス雰囲気下のいずれの条件下でも行うことができる。ここで、酸素や水分による硬化反応への影響を防ぐことができるため、減圧雰囲気や雰囲気制御気体として不活性ガスを使用し不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。不活性ガス雰囲気下で接触工程を行う場合に使用することができる不活性ガスの具体例としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、各種フロンガス等、あるいはこれらの混合ガスが挙げられる。大気雰囲気下を含めて特定のガスの雰囲気下で接触工程を行う場合、好ましい圧力は、0.0001気圧以上10気圧以下である。
【0126】
次に、光照射工程では、
図7(C)に例示するように、硬化性組成物202に対し、モールド204を介して光(照射光)205を照射する。より詳細には、モールド204の微細パターンに充填された硬化性組成物202に、モールド204を介して光205を照射する。これにより、モールド204の微細パターンに充填された硬化性組成物202は、光205によって硬化してパターン形状を有する硬化膜206となる。
【0127】
ここで、モールド204の微細パターンに充填された硬化性組成物202に照射する光205は、硬化性組成物202の感度波長に応じて選択される。具体的には、150nm以上400nm以下の波長の紫外光や、X線、電子線等を適宜選択して使用することが好ましい。
【0128】
これらの中でも、光205は、紫外光が特に好ましい。これは、硬化助剤(光重合開始剤)として市販されているものは、紫外光に感度を有する化合物が多いからである。ここで紫外光を発する光源としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、Deep-UVランプ、炭素アーク灯、ケミカルランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が挙げられる。さらに、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、F2エキシマレーザ等が挙げられるが、超高圧水銀灯が特に好ましい。また使用する光源の数は1つでもよいし複数であってもよい。また、光照射を行う際には、モールド204の微細パターンに充填された硬化性組成物202の全面に行ってもよく、一部領域にのみ行ってもよい。
【0129】
また、光照射工程は、基板201上の全領域に断続的に複数回行ってもよいし、全領域に連続照射してもよい。さらに、第1の照射過程で領域Aを照射し、第2の照射過程で領域Aとは異なる領域Bを照射するようにしてもよい。
【0130】
次に、離型工程では、
図7(D)に例示するように、パターン形状を有する硬化膜206とモールド204とを引き離す。これにより、光照射工程においてモールド204上に形成された微細パターンの反転パターンとなるパターン形状を有する硬化膜206が自立した状態で得られる。尚、パターン形状を有する硬化膜206の凹凸パターンの凹部にも硬化膜が残存するが、この膜のことを残膜207と呼ぶこととする。
【0131】
パターン形状を有する硬化膜206とモールド204とを引き離す方法としては、引き離す際にパターン形状を有する硬化膜206の一部が物理的に破損しなければ特に限定されず、各種条件等も特に限定されない。例えば、基板201(被加工基板)を固定してモールド204を基板201から遠ざかるように移動させて剥離してもよい。もしくは、モールド204を固定して基板201をモールド204から遠ざかるように移動させて剥離してもよい。あるいは、これらの両方を正反対の方向へ引っ張って剥離してもよい。
【0132】
以上の各工程を複数パターン形成領域(インプリント領域)へ連続して実施することで、所望の凹凸パターン形状(モールド204の凹凸形状に因むパターン形状)を、基板201上の所望の位置に有する硬化膜206を得ることができる。
【0133】
また、本実施形態における処理装置は、インプリント装置に限らず、例えばモールドの洗浄装置や、モールドのレプリカを製造するレプリカ製造装置へ搭載することが可能である。尚、レプリカ製造装置は、インプリント装置と同様の構成(機能部及びハードウエア構成も含む)を有する。
【0134】
<物品製造方法に係る実施例>
本実施例にかかる物品の製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。本実施例の物品の製造方法は、基板に塗布された組成物に上記のインプリント装置を用いてパターンを形成する工程(基板に処理を行う工程)と、かかる工程でパターンを形成された基板を加工する工程とを含む。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、組成物剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施例の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。尚、本実施例における物品の製造方法において、インプリント装置が行うインプリント処理を開始する前に、上記の除去装置を用いてモールド(型、原版)の残渣を除去する除去工程を実施する。即ち、インプリント処理を行う際は、既に残渣が除去され、且つモールドのメサ側壁部に撥液層が形成されているモールドを用いる。
【0135】
インプリント装置を用いて成形した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、モールド等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。モールドとしては、インプリント等の基板処理用のモールド等が挙げられる。
【0136】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、組成物マスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチングまたはイオン注入等が行われた後、組成物マスクは除去される。
【0137】
次に、物品の具体的な製造方法について
図8を参照して説明する。
図8(A)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコン基板等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面に組成物3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になった組成物3zが基板1z上に付与された様子を示している。
【0138】
図8(B)に示すように、モールド4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板1z上の組成物3zに向け、対向させる。
図8(C)に示すように、組成物3zが付与された基板1zとモールド4zとを接触させ、圧力を加える(接触工程)。組成物3zはモールド4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を、モールド4zを透して照射すると、組成物3zは硬化する(硬化工程)。このとき本実施例では、装置内で取得した分光感度特性に基づき、最適光重合度となるような照射量で組成物に光を照射することが可能となる。
【0139】
図8(D)に示すように、組成物3zを硬化させた後、モールド4zと基板1zを引き離すと、基板1z上に組成物3zの硬化物のパターンが形成される(パターン形成工程、成形工程)。この硬化物のパターンは、モールド4zの凹部が硬化物の凸部に、モールド4zの凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、組成物3zにモールド4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0140】
図8(E)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。
図8(F)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。尚、モールド4zとして、凹凸パターンを設けた回路パターン転写用のモールドを用いた例について述べたが、凹凸パターンがない平面部を有する平面テンプレートであってもよい。
【0141】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。また、上述の実施形態を組み合わせて実施してもよい。
【0142】
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
【0143】
(構成1)
主面を有する基体と、前記主面上に設けられた凸部とを有し、前記凸部における上面に、硬化性組成物に押し付けられる凹凸パターンが形成されたモールドに付着した残渣を除去する除去方法であって、
前記残渣を除去する第1の除去工程を有し、
前記第1の除去工程においては、少なくとも前記凸部の側面に形成される撥液層を所定の溶剤で溶解することで前記残渣を除去することを特徴とする除去方法。
【0144】
(構成2)
前記撥液層がフッ化炭素鎖を有するポリマーを含有することを特徴とする構成1記載の除去方法。
【0145】
(構成3)
前記第1の除去工程では、前記撥液層の膜厚が3nm以上となるように前記撥液層を溶解することを特徴とする構成1または2に記載の除去方法。
【0146】
(構成4)
前記所定の溶剤は、フッ化炭素鎖を有するポリマーを溶かす揮発性溶剤であることを特徴とする構成1乃至3のいずれか1つに記載の除去方法。
【0147】
(構成5)
前記所定の溶剤は、ハイドロフルオロエーテル、パーフルオロカーボン、およびハイドロフルオロカーボンの少なくとも1つを含むことを特徴とする構成1乃至4のいずれか1つに記載の除去方法。
【0148】
(構成6)
前記モールドにおける前記凹凸パターンの少なくとも外周部に前記撥液層が形成されることを防止する保護層を形成する第1の形成工程を有することを特徴とする構成1乃至5のいずれか1つに記載の除去方法。
【0149】
(構成7)
前記モールドの少なくとも前記凸部の側面に前記撥液層を形成する第2の形成工程を有し、
前記第2の形成工程は、前記第1の形成工程の後に実施することを特徴とする構成6に記載の除去方法。
【0150】
(構成8)
前記保護層及び前記保護層の一部に形成された前記撥液層を除去する第2の除去工程を有し、
前記第2の除去工程は、前記第2の形成工程の後に実施することを特徴とする構成7に記載の除去方法。
【0151】
(構成9)
前記第1の除去工程は、前記第2の除去工程の後に実施することを特徴とする構成8に記載の除去方法。
【0152】
(構成10)
主面を有する基体と、前記主面上に設けられた凸部とを有し、前記凸部における上面に、硬化性組成物に押し付けられる凹凸パターンが形成されたモールドに付着した残渣を除去する除去装置であって、
前記モールドを保持した状態で移動可能なステージと、
少なくとも前記凸部の側面に形成される撥液層を所定の溶剤で溶解することで前記残渣を除去する第1の除去部と、を有する、
ことを特徴とする除去装置。
【0153】
(構成11)
前記撥液層がフッ化炭素鎖を有するポリマーを含有することを特徴とする構成10に記載の除去装置。
【0154】
(構成12)
前記残渣を除去した後の前記撥液層の膜厚が3nm以上あることを特徴とする構成10または11に記載の除去装置。
【0155】
(構成13)
前記所定の溶剤は、フッ化炭素鎖を有するポリマーを溶かす揮発性溶剤であることを特徴とする構成10乃至12のいずれか1つに記載の除去装置。
【0156】
(構成14)
前記所定の溶剤は、ハイドロフルオロエーテル、パーフルオロカーボン、およびハイドロフルオロカーボンの少なくとも1つを含むことを特徴とする構成10乃至13のいずれか1つに記載の除去装置。
【0157】
(構成15)
前記モールドにおける前記凹凸パターンの少なくとも外周部に前記撥液層が形成されることを防止する保護層を形成する第1の形成部を有することを特徴とする構成10乃至14のいずれか1つに記載の除去装置。
【0158】
(構成16)
前記モールドの少なくとも前記凸部の側面に前記撥液層を形成する第2の形成部を有することを特徴とする構成10乃至15のいずれか1つに記載の除去装置。
【0159】
(構成17)
前記保護層及び前記保護層の一部に形成された前記撥液層を除去する第2の除去部を有することを特徴とする構成15に記載の除去装置。
【0160】
(構成18)
凹凸パターンを有するモールドを用いて基板上の複数のパターン形成領域に硬化性組成物のパターンを形成するインプリント装置であって、
前記硬化性組成物を前記基板上に吐出する吐出装置と、
前記基板を保持した状態で移動可能な基板ステージと、
構成10乃至17のいずれか1つに記載の除去装置と、を有する、
ことを特徴とするインプリント装置。
【0161】
(構成19)
凹凸パターンを有するモールドのレプリカを製造するレプリカ製造装置であって、
硬化性組成物を基板上に吐出する吐出装置と、
前記基板を保持した状態で移動可能な基板ステージと、
構成10乃至17のいずれか1つに記載の除去装置と、を有する、
ことを特徴とするレプリカ製造装置。
【0162】
(構成20)
構成18に記載のインプリント装置を用いて前記基板に前記凹凸パターンを形成するパターン形成工程と、
前記パターン形成工程で前記パターンが形成された前記基板を加工する加工工程と、
前記加工工程で加工された前記基板から物品を製造する工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。
【0163】
また、上述した各実施例における制御の一部または全部を上述した各実施例の機能を実現するコンピュータプログラムをネットワークまたは各種記憶媒体を介して除去装置やインプリント装置、レプリカ製造装置等に供給するようにしてもよい。そしてその各装置におけるコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。その場合、そのプログラム、該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することとなる。
【符号の説明】
【0164】
11 モールド
11a メサ部
11b 凹凸パターン
11c ベース部
11d 側壁
12 基板
13 硬化性組成物
14 撥液層