IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 八千代工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車両用サンルーフのデフレクタ装置 図1
  • 特開-車両用サンルーフのデフレクタ装置 図2
  • 特開-車両用サンルーフのデフレクタ装置 図3
  • 特開-車両用サンルーフのデフレクタ装置 図4
  • 特開-車両用サンルーフのデフレクタ装置 図5
  • 特開-車両用サンルーフのデフレクタ装置 図6
  • 特開-車両用サンルーフのデフレクタ装置 図7
  • 特開-車両用サンルーフのデフレクタ装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017004
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】車両用サンルーフのデフレクタ装置
(51)【国際特許分類】
   B60J 7/22 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
B60J7/22
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119353
(22)【出願日】2022-07-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】390023917
【氏名又は名称】八千代工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕也
(72)【発明者】
【氏名】菊池 元
(57)【要約】
【課題】デフレクタ本体がデフレクタブレードから脱落することや弛むことを抑制する。
【解決手段】デフレクタ装置10は、折り畳み及び展開可能な布状のデフレクタ本体11と、デフレクタ本体11の上縁に沿って設けられた被保持部材21と、被保持部材21を収容するべく車幅方向に延在する溝22が形成されたデフレクタブレード14と、デフレクタブレード14に固定され、被保持部材21を溝22の内部に保持する保持部材23とを備える。保持部材23は、溝22の内部で被保持部材21に係合する一端(24a)を有する係合部24と、係合部の他端(24b)から係合部24に対して傾斜角度をもって延出し、デフレクタブレード14に取り付けられる固定部材(27)のための複数の挿通孔26が形成された固定部25とを含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用サンルーフのデフレクタ装置であって、
固定ルーフに形成された開口の前縁に沿って配置され、折り畳み及び展開可能な布状のデフレクタ本体と、
前記デフレクタ本体の上縁に沿って設けられた被保持部材と、
前記被保持部材を収容するべく車幅方向に延在する溝が形成されたデフレクタブレードと、
前記デフレクタブレードの左右の端部を支持し、前記デフレクタブレードを前記開口から出没させる1対のアームと、
前記デフレクタブレードに固定され、前記被保持部材を前記溝の内部に保持する保持部材と、を備え、
前記保持部材は、前記溝の内部で前記被保持部材に係合する一端を有する係合部と、前記係合部の他端から前記係合部に対して傾斜角度をもって延出し、前記デフレクタブレードに取り付けられる固定部材のための複数の挿通孔が形成された固定部と、を含む車両用サンルーフのデフレクタ装置。
【請求項2】
前記被保持部材は、前記溝の底部にて折り返されて前記係合部を挟む態様で前記溝に収容される、請求項1に記載の車両用サンルーフのデフレクタ装置。
【請求項3】
前記係合部を挟む前記被保持部材の部分のそれぞれに、前記係合部に向けて突出する突部が形成されている、請求項2に記載の車両用サンルーフのデフレクタ装置。
【請求項4】
前記固定部が前記係合部の前記車幅方向の長さに対応する長さにわたって前記車幅方向に延在しており、前記車幅方向に直交する断面において前記保持部材がL字形状をしている、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用サンルーフのデフレクタ装置。
【請求項5】
前記デフレクタブレードにおける、前記固定部材が取り付けられる部分の近傍には突起が設けられ、
前記固定部には前記突起が係合する位置決め孔が形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用サンルーフのデフレクタ装置。
【請求項6】
前記デフレクタブレードが、1対の湾曲部を介して1対の前記アームに連続するように1対の前記アームと一体に形成され、
前記保持部材が、前記車幅方向の中央に配置される中央部材と、前記湾曲部に配置される1対の湾曲部材とを含み、前記湾曲部材のそれぞれが、前記被保持部材の端部を対応する前記アームに形成された前記溝の内部に保持するように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用サンルーフのデフレクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用サンルーフのデフレクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ルーフにサンルーフパネルが設けられた車両用サンルーフでは、可動ルーフパネルのスライド動作によって固定ルーフの開口が開放されたときに、開口の前縁に沿って設けられたデフレクタを開口から上方へ突出させるデフレクタ装置が設けられる。
【0003】
このようなデフレクタ装置として、柔軟なシート材料で作られた展開可能なデフレクタ要素を備え、デフレクタ要素が、ルーフに取り付けられる剛性を有するデフレクタベース要素と、旋回可能な展開ブラケットとに接続されたものが公知である(特許文献1)。このデフレクタ装置では、デフレクタベース要素及び展開ブラケット(デフレクタブレード)に、デフレクタ要素(デフレク本体)に接続されたウェルト(配管)のための溝が形成され、各溝にウェルトが挿入される。ウェルトは、デフレクタ本体上に射出成形することができ、弾性的に変形可能なプラスチックからなり、デフレクタベース要素又はデフレクタブレードに螺合するねじ部材の頭部によって溝内に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許発明第102006043275号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のデフレクタ装置では、ねじ部材の頭部によってウェルト(保持部材)が溝に保持されるため、ねじ部材が緩んだときに頭部による係止が解けてウェルトが溝から脱落する虞がある。また、デフレクタ本体に対する張力がねじ部材の頭部が当接するウェルトの部分に集中するため、ウェルトが撓んでデフレクタ本体に均一な張力が作用しない虞がある。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑み、デフレクタ本体のデフレクタブレードからの脱落及び弛みを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、車両用サンルーフのデフレクタ装置(10)であって、固定ルーフ(3)に形成された開口(2)の前縁に沿って配置され、折り畳み及び展開可能な布状のデフレクタ本体(11)と、前記デフレクタ本体の上縁に沿って設けられた被保持部材(21)と、前記被保持部材を収容するべく車幅方向に延在する溝(22)が形成されたデフレクタブレード(14)と、前記デフレクタブレードの左右の端部を支持し、前記デフレクタブレードを前記開口から出没させる1対のアーム(16)と、前記デフレクタブレードに固定され、前記被保持部材を前記溝の内部に保持する保持部材(23)と、を備え、前記保持部材は、前記溝の内部で前記被保持部材に係合する一端(24a)を有する係合部(24)と、前記係合部の他端(24b)から前記係合部に対して傾斜角度をもって延出し、前記デフレクタブレードに取り付けられる固定部材(27)のための複数の挿通孔(26)が形成された固定部(25)と、を含む。
【0008】
この態様によれば、挿通孔に挿通される固定部材によって保持部材がデフレクタブレードに固定されるため、保持部材がデフレクタブレードから脱落し難い。また、保持部材が係合部とこれに対して傾斜した固定部とを含むため撓み難い。これにより、デフレクタ本体が弛むことが抑制される。
【0009】
上記の態様において、前記被保持部材(21)は、前記溝(22)の底部にて折り返されて前記係合部(24)を挟む態様で前記溝に収容されると良い。
【0010】
この態様によれば、被保持部材は係合部に接着又は結合していなくても、係合部から外れ難い。よって、デフレクタブレードの溝から被保持部材が脱落することが抑制される。
【0011】
上記の態様において、前記係合部(24)を挟む前記被保持部材(21)の部分(31、32)のそれぞれに、前記係合部に向けて突出する突部(34、35)が形成されていると良い。
【0012】
この態様によれば、係合部を挟む被保持部材の両部分を車幅方向の長い領域にわたって係合部に当接させることができる。これにより、被保持部材が係合部に対してずれることでデフレクタ本体の一部が弛むことが抑制される。
【0013】
上記の態様において、前記固定部(25)が前記係合部(24)の前記車幅方向の長さに対応する長さにわたって前記車幅方向に延在しており、前記車幅方向に直交する断面において前記保持部材(23)がL字形状をしていると良い。
【0014】
この態様によれば、車幅方向の全長にわたって保持部材の曲げ剛性が向上する。これにより、保持部材の撓みが抑制され、デフレクタ本体の弛みが抑制される。
【0015】
上記の態様において、前記デフレクタブレード(14)における、前記固定部材(27)が取り付けられる部分の近傍には突起(46)が設けられ、前記固定部には前記突起が係合する位置決め孔(44、45)が形成されていると良い。
【0016】
この態様によれば、位置決め孔に対する突起の係合により、保持部材のデフレクタブレードに対する位置合わせが行われる。これにより、固定部材のデフレクタブレードに対する取付作業が容易になる。
【0017】
上記の態様において、前記デフレクタブレード(14)が、1対の湾曲部(15)を介して1対の前記アームに連続するように1対の前記アームと一体に形成され、前記保持部材(23)が、前記車幅方向の中央に配置される中央部材(41)と、前記湾曲部に配置される1対の湾曲部材(42)とを含み、前記湾曲部材のそれぞれが、前記被保持部材(21)の端部を対応する前記アーム(16)に形成された前記溝(22)の内部に保持するように構成されていると良い。
【0018】
この態様によれば、製造誤差がある場合であっても、製造誤差による位置ずれを抑制した状態で、1対の湾曲部材によって湾曲部及びアームに形成された溝に被保持部材の端部を保持することができる。これにより、デフレクタ本体の端部の弛みが抑制される。
【発明の効果】
【0019】
以上の態様によれば、デフレクタ本体のデフレクタブレードからの脱落及び弛みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係るデフレクタ装置が適用された自動車のルーフの斜視図
図2】デフレクタ装置の斜視図
図3】デフレクタ装置の断面図
図4図3中の要部拡大図
図5】上部ホルダの底面図
図6図5中のVI部拡大図
図7図5中のVII部拡大図
図8図5中のVIII部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明にあたっては、本発明が適用された車両の進行方向を基準にして、前後方向及び横方向(車幅方向)が定義される。
【0022】
図1は実施形態に係るデフレクタ装置10が適用された自動車のルーフ1の斜視図である。図1に示すように、自動車のルーフ1は、概ね矩形をなす開口2が前部に形成された固定ルーフ3と、この開口2を塞ぐように設けられたサンルーフ装置4とを有しており、これによりサンルーフとして構成されている。サンルーフ装置4は、開口2の前部を閉じるフロントパネル5と、開口2の後部を閉じるリヤパネル6とを有している。フロントパネル5及びリヤパネル6は、それらの上面がルーフ1の上面に整合するようにルーフ1に沿って配置される。フロントパネル5は、ルーフ1に対して移動可能な可動パネルであり、リヤパネル6は、ルーフ1に対して移動不能な固定パネルである。フロントパネル5は、固定ルーフ3に対して前後方向にスライド可能に設けられており、後方へスライドすることにより開口2の前部を開き、前方へスライドすることにより開口2の前部を閉じる。
【0023】
固定ルーフ3の下方(車室側)には、フロントパネル5及びリヤパネル6を支持するサンルーフフレーム7が配置されている。サンルーフフレーム7は、1対のサイドメンバと、フロントメンバ8(図3参照)と、リヤクロスメンバとを有し、枠状を呈している。サイドメンバは、開口2の両側縁に沿って前後方向に延在する。サイドメンバは例えばアルミニウム合金の押出成形品からなる。フロントメンバ8は、開口2の前縁に沿って横方向に延在し、1対のサイドメンバの前端を連結する。リヤクロスメンバは、開口2の後縁に沿って横方向に延在し、1対のサイドメンバの後端を連結する。フロントメンバ8及びリヤクロスメンバは例えば樹脂の射出成形品からなる。
【0024】
サンルーフ装置4は、フロントパネル5を、開口2の前部を閉鎖する閉位置からチルトアップさせ、リヤパネル6の上方を後方へスライドさせるアウタスライド式である。フロントパネル5は、前スライダ及び後スライダがサイドメンバに形成されたガイドレールに沿って前後方向にスライド駆動されることによってチルト動作及びスライド動作を行う公知の駆動機構によって駆動される。ここでは駆動機構の詳細な説明は割愛する。
【0025】
開口2の前縁には、開口2が開いているときに開口2から上方へ突出し、開口2が閉じているときに開口2の下方に収納されるデフレクタ装置10が設けられている。デフレクタ装置10は、サンルーフフレーム7に組み付けられており、サンルーフ装置4の一部を構成する。サンルーフ装置4はユニットとして構成されており、サンルーフフレーム7が固定ルーフ3に固定されることによってルーフ1に搭載される。
【0026】
図2はデフレクタ装置10の斜視図である。デフレクタ装置10は概ね左右対称の構成とされている。デフレクタ装置10は、開口2の前縁に沿って配置され、折り畳み及び展開可能な布状のデフレクタ本体11を有している。デフレクタ本体11は、柔軟な生地素材の目の細かい網から構成されている。デフレクタ本体11の下縁は下部ホルダ12(図3)によってサンルーフフレーム7のフロントメンバ8(図3)に取り付けられる。デフレクタ本体11の上縁には上部ホルダ13が取り付けられている。
【0027】
上部ホルダ13は、樹脂の射出成形品であり、車幅方向に延在するデフレクタブレード14と、デフレクタブレード14に一体に形成され、デフレクタブレード14の両端に形成された湾曲部15から後方へ延出する1対のアーム16とを備えている。1対のアーム16は、後端においてサンルーフフレーム7に取り付けられる支持部材17によって車幅方向の軸線X周りに回動可能に支持される。上部ホルダ13とサンルーフフレーム7との間には、対応するアーム16を上方へ付勢する1対の付勢部材18(図2には右側のみ示される)が設けられている。付勢部材18は、図示例では捩じりコイルばねによって構成されている。他の実施形態では、付勢部材18が板ばね、圧縮コイルばね、引張コイルばねなどによって構成されても良い。1対のアーム16は、フロントパネル5が後方へスライドすることによってデフレクタブレード14を開口2から突出させ、フロントパネル5が前方へスライドすることによってデフレクタブレード14を開口2内へ没入させる。
【0028】
図3はデフレクタ装置10の断面図であり、展開状態のデフレクタ装置10を示している。図2及び図3に示すように、デフレクタ本体11の下縁には、下部ホルダ12が例えば接着剤によって結合されている。下部ホルダ12は、例えば樹脂の射出成形品であり、サンルーフフレーム7のフロントメンバ8に係合する爪12aを有する。これにより、下部ホルダ12はフロントメンバ8に着脱可能に取り付けられる。下部ホルダ12がフロントメンバ8に取り付けられることにより、デフレクタ本体11の下縁がフロントメンバ8に固定される。
【0029】
デフレクタ本体11の上縁には縫合によって被保持部材21が取り付けられている。被保持部材21は接着や溶着によってデフレクタ本体11に取り付けられても良い。デフレクタ本体11は、被保持部材21を介して上縁をデフレクタブレード14に保持される。図4図3中の要部拡大図である。図3及び図4に示すように、デフレクタブレード14の下面には車幅方向に延在する溝22が形成されている。被保持部材21は溝22に挿入された状態で、デフレクタブレード14に固定される保持部材23によって溝22の内部に保持されている。
【0030】
保持部材23は、板金製であり、断面視でL字形状をしている。具体的には、保持部材23は、溝22の内部で被保持部材21に係合する一端である上端24aを有する係合部24と、溝22の外部に配置される係合部24の他端である下端24bに連続する固定部25とを有している。固定部25は、係合部24の下端24bから係合部24に対して傾斜角度(本実施形態では90°)をもって延出し、デフレクタブレード14に固定される。係合部24及び固定部25は共に車幅方向に延在している。固定部25には、貫通孔からなる複数の挿通孔26が車幅方向に間隔を空けて形成されている。固定部25は、挿通孔26に挿通される複数のねじ部材27によってデフレクタブレード14に固定される。ねじ部材27は、雄ねじが形成された軸部28と頭部29とを有する固定部材であり、軸部28が挿通孔26に挿通されてデフレクタブレード14に形成されたねじ孔30に螺合することにより、頭部29によって固定部25をデフレクタブレード14に固定する。
【0031】
このように、挿通孔26に挿通されるねじ部材27によって保持部材23がデフレクタブレード14に固定されるため、保持部材23がデフレクタブレード14から脱落し難い。また、保持部材23が金属製であり、係合部24とこれに対して傾斜した固定部25とを含むために撓み難い。これにより、デフレクタ本体11が弛むことが抑制される。
【0032】
被保持部材21は、溝22の底部にて折り返されており、断面視で逆J字状をしている。被保持部材21は、樹脂の押出成形品であり、デフレクタブレード14に比べて柔らかな材料により形成されている。被保持部材21は、デフレクタ本体11に結合された基部31と、基部31に対向する先端部32と、基部31と先端部32とを連結する連結部33とを有している。連結部33は溝22の底部に位置し、先端部32を基部31に対向させるための折り返し部をなしている。被保持部材21は保持部材23の係合部24を挟む態様で溝22に収容される。保持部材23の係合部24は溝22の底部に配置された被保持部材21の折り返し部に当接によって係合する。固定部25がねじ部材27によってデフレクタブレード14に固定されることにより、被保持部材21が係合部24によって溝22の内部に保持される。
【0033】
このように、被保持部材21は、溝22の底部にて折り返されて係合部24を挟む態様で溝22に収容されるため、係合部24に接着又は結合していなくても係合部24から外れ難い。よって、デフレクタブレード14の溝22から被保持部材21が脱落することが抑制される。
【0034】
被保持部材21の先端部32は基部31及び連結部33に対して薄く形成されている。先端部32の基部31を向く面には車幅方向に延在する2本のリップ34が一体に形成されている。一方、基部31の先端部32を向く面には車幅方向に延在する突条35が一体に形成されている。突条35は、リップ34に対応する位置に配置され、係合部24の前面に当接する。2本のリップ34は係合部24の後面に当接する。すなわち、係合部24を挟む被保持部材21の基部31及び先端部32のそれぞれに、係合部24に向けて突出する突部としてリップ34及び突条35が形成されている。そのため、係合部24を挟む被保持部材21の両部分が車幅方向の長い領域にわたって係合部24に当接する。これにより、被保持部材21が係合部24に対してずれることでデフレクタ本体11の一部が弛むことが抑制される。
【0035】
図5は上部ホルダ13の底面図である。図5に示すように、被保持部材21は車幅方向に5分割されている。具体的には、被保持部材21は、デフレクタブレード14の車幅方向の中央に配置される中央部材41と、デフレクタブレード14の湾曲部15に配置される1対の湾曲部材42と、中央部材41と湾曲部材42との間に配置される1対の中間部材43とを有する。各湾曲部材42は、湾曲部15から後方へ延出して対応するアーム16にも取り付けられている。具体的には、各アーム16には、デフレクタブレード14に形成された溝22が湾曲部15を通過してアーム16に延出するように形成されている。図2に併せて示すように、被保持部材21の端部は、前後方向に延在し、対応するアーム16に形成された溝22の内部に保持される。
【0036】
図6図5中のVI部拡大図であり、中央部材41を示している。図6に示すように、中央部材41の右端には、ねじ部材27のための挿通孔26(図4)及び位置決め孔をなす2つの円形の丸孔44(1つはねじ部材27により見えない)が形成されている。中央部材41の左端には、挿通孔26及び位置決め孔をなす2つの長円形の長孔45が形成されている。上部ホルダ13の2つの位置決め孔に対応する部分には円形の突起46が形成されている。突起46が係合する丸孔44及び長孔45は、中央部材41の位置決めを行う位置決め孔として機能する。上部ホルダ13の2つの挿通孔26に対応する部分にはねじ孔30(図4)が形成されており、ねじ孔30に螺合するねじ部材27によって中央部材41が上部ホルダ13に固定される。
【0037】
図7図5中のVII部拡大図であり、右側の中間部材43を示している。図7に示すように、中間部材43は中央部材41との間に隙間を空けて配置される。中間部材43の左端には、ねじ部材27のための挿通孔26(図4)及び位置決め孔をなす2つの円形の丸孔44(1つはねじ部材27により見えない)が形成されている。中間部材43の右端には、挿通孔26及び位置決め孔をなす2つの長円形の長孔45が形成されている。中間部材43の中間位置にもねじ部材27のための挿通孔26(ねじ部材27により見えない)が形成されている。上部ホルダ13の2つの位置決め孔に対応する部分には円形の突起46が形成されている。上部ホルダ13の3つの挿通孔26に対応する部分にはねじ孔30(図4)が形成されており、ねじ孔30に螺合するねじ部材27によって中間部材43は上部ホルダ13に固定される。
【0038】
図8図5中のVIII部拡大図であり、右側の湾曲部材42を示している。図8に示すように、湾曲部材42は中間部材43との間に隙間を空けて配置されている。湾曲部材42の前端には、ねじ部材27のための挿通孔26をなす円形の丸孔44(ねじ部材27により見えない)及び位置決め用の切欠47が形成されている。湾曲部材42の後端は、係合部24のみを有し、固定部25を備えていない。湾曲部材42の後端近傍の固定部25には、位置決め孔をなす長円形の長孔45が形成されている。上部ホルダ13の切欠47及び位置決め孔に対応する部分には円形の突起46が形成されている。湾曲部材42の前端の挿通孔26に対応する部分及び、後端の係合部24の車幅方向内側近傍には、それぞれねじ孔30(図4)が形成されており、ねじ孔30に螺合するねじ部材27によって湾曲部材42が上部ホルダ13に固定される。湾曲部材42の後端に位置するねじ部材27は、頭部29の張出部分によって係合部24の端面を係止する。
【0039】
図2及び図3に併せて示すように、湾曲部材42は、被保持部材21の端部を対応するアーム16に形成された溝22の内部に保持するように構成されている。したがって、上部ホルダ13と保持部材23との寸法に製造誤差がある場合であっても、製造誤差による位置ずれを抑制した状態で、被保持部材21の端部が1対の湾曲部材42によって上部ホルダ13の湾曲部15及びアーム16に形成された溝22に保持される。これにより、デフレクタ本体11の端部の弛みが抑制される。
【0040】
また、製造誤差がない場合であっても、上部ホルダ13は樹脂から形成され、保持部材23は金属から形成されるため、熱膨張率の差によって保持部材23が溝22に適合しない可能性がある。本実施形態では、デフレクタブレード14が中央部材41と1対の湾曲部材42とを含むように形成され、これらが隣接する中間部材43に対して隙間を空けて配置されている。そのため、熱膨張率の差に起因する寸法差が生じても、位置ずれを抑制した状態で、被保持部材21の端部が1対の湾曲部材42によって上部ホルダ13の湾曲部15及びアーム16に形成された溝22に保持される。
【0041】
図5図8に示すように、中央部材41、中間部材43及び湾曲部材42において、固定部25は係合部24の車幅方向の長さに対応する長さにわたって車幅方向に延在している。つまり、車幅方向に延在する部分において、保持部材23はL字形状の断面に有している。したがって、車幅方向の全長にわたって保持部材23の曲げ剛性が向上する。これにより、保持部材23の撓みが抑制され、デフレクタ本体11の弛みが抑制される。
【0042】
上記のように、デフレクタブレード14における、ねじ部材27が取り付けられるねじ孔30(図4)の近傍には突起46が設けられ、保持部材23の固定部25には突起46が係合する位置決め孔としての丸孔44及び長孔45が形成される。つまり、位置決め孔に対する突起46の係合により、保持部材23のデフレクタブレード14に対する位置合わせを行うことができる。これにより、ねじ部材27のデフレクタブレード14に対する取付作業が容易になる。また、位置決め孔が長孔45を含むことによって、上部ホルダ13と保持部材23との寸法誤差を吸収して、両者を位置決めすることができる。
【0043】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、一例として自動車のルーフ1に適用してデフレクタ装置10の説明を行ったが、牽引車両や鉄道車両などにも広く適用することができる。また、上記実施形態では、アーム16が付勢部材18によって直接的に上方へ付勢されているが、付勢部材18はデフレクタブレード14を上方へ付勢してアーム16を間接的に付勢しても良い。この他、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、素材、角度など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更することができる。一方、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 :ルーフ
2 :開口
3 :固定ルーフ
4 :サンルーフ装置
5 :フロントパネル
6 :リヤパネル
10 :デフレクタ装置
11 :デフレクタ本体
13 :上部ホルダ
14 :デフレクタブレード
15 :湾曲部
16 :アーム
21 :被保持部材
22 :溝
23 :保持部材
24 :係合部
24a :上端(一端)
24b :下端(他端)
25 :固定部
26 :挿通孔
27 :ねじ部材(固定部材)
31 :基部
32 :先端部
33 :連結部
34 :リップ(突部)
35 :突条(突部)
41 :中央部材
42 :湾曲部材
43 :中間部材
44 :丸孔(挿通孔、位置決め孔)
45 :長孔(挿通孔、位置決め孔)
46 :突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8