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特開2024-170042塗布構造物、接着構造物、及び塗布構造物の製造方法
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  • 特開-塗布構造物、接着構造物、及び塗布構造物の製造方法 図1
  • 特開-塗布構造物、接着構造物、及び塗布構造物の製造方法 図2
  • 特開-塗布構造物、接着構造物、及び塗布構造物の製造方法 図3
  • 特開-塗布構造物、接着構造物、及び塗布構造物の製造方法 図4
  • 特開-塗布構造物、接着構造物、及び塗布構造物の製造方法 図5
  • 特開-塗布構造物、接着構造物、及び塗布構造物の製造方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170042
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】塗布構造物、接着構造物、及び塗布構造物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 7/24 20060101AFI20241129BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20241129BHJP
   B05D 3/04 20060101ALI20241129BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20241129BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20241129BHJP
   A41D 31/02 20190101ALI20241129BHJP
【FI】
B05D7/24 301P
B05D1/26 Z
B05D3/04 Z
B05D3/00 D
B05D7/00 K
B05D7/00 P
A41D31/02 E
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086970
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】591232543
【氏名又は名称】株式会社サンツール
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】日高 昇二
【テーマコード(参考)】
4D075
【Fターム(参考)】
4D075AC07
4D075AC09
4D075AC88
4D075AC91
4D075BB05Z
4D075BB57Y
4D075BB91Y
4D075DA04
4D075DA33
4D075DB20
4D075DC38
4D075EA15
4D075EA35
4D075EB38
(57)【要約】
【課題】防水性及び防塵性を備えた、ホットメルト接着剤の塗布部を有する塗布構造物を提供する。
【解決手段】塗布構造物は、ホットメルト接着剤が塗布された帯状塗布部を有する。前記帯状塗布部は、輪状塗布部が連なって形成されている。隣接する前記輪状塗布部が互いに重なり合っていることで、前記帯状塗布部の長手方向の両側縁は、前記輪状塗布部の周縁が連なって形成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットメルト接着剤が塗布された帯状塗布部を有する塗布構造物であって、
前記帯状塗布部は、輪状塗布部が連なって形成されており、
隣り合う前記輪状塗布部同士が重なり合っていることで、前記帯状塗布部の長手方向の両側縁は、前記輪状塗布部の周縁が連なって形成されていることを特徴とする塗布構造物。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布構造物であって、
前記塗布構造物は、縫い目を有し、
前記帯状塗布部は、前記縫い目上に形成されていることを特徴とする塗布構造物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の塗布構造物であって、
前記帯状塗布部の幅は、5mm以上7mm以下であることを特徴とする塗布構造物。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の塗布構造物と、被着物とを、前記帯状塗布部を介して接着したことを特徴とする接着構造物。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の塗布構造物の製造方法であって、
糸状に吐出されたホットメルト接着剤に対して気体を噴射することで当該接着剤を被塗布物に向けて螺旋状に降下させるとともに、当該被塗布物を所定の搬送方向へと移動させて、当該被塗布物上に当該接着剤を塗布して帯状塗布部を形成する工程を備えることを特徴とする塗布構造物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塗布構造物、接着構造物、及び塗布構造物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
布帛、被服、シート等の被塗布物に対して、ホットメルト接着剤等の接着剤を所定のパターンで塗布する技術が普及している。ホットメルト接着剤は、熱可塑性樹脂を主成分とし常温では固体であり、加熱溶融した状態で塗布した後に冷却することで固化する接着剤である。例えば、特許文献1には、ノズル先端中央より吐出するホットメルト接着剤ビートに、加圧空気の旋回流を作用させることで、スパイラル(螺旋状)噴霧塗布パターンを形成するスパイラルスプレー塗布方法及びスパイラルスプレー塗布装置が開示されている。
【0003】
被塗布物に対して接着剤を所定のパターンにて塗布した塗布構造物に、被着物を貼り合わせて加熱圧着することで、所定の接着パターンを有する接着構造物が得られる。特許文献2には、接着剤の塗布により形成される接着パターンを介して伸縮性材料同士を貼り合わせた構造が開示されている。
【0004】
特許文献2における接着パターンは、接着剤を所定形状に形成することで伸縮性材料同士が連続的に接着される接着部と、接着部により平面視において開口形成され、伸縮性材料同士が接着剤により接着されない非接着部とで構成されており、非接着部は接着部によって周囲を囲まれていない構造とされている。特許文献2の図3(k)には「螺旋」として、輪状接着部を複数備える接着パターンが開示されており、隣り合う輪状接着部の間には隙間(開口形成された非接着部)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3837600号公報
【特許文献2】特許第6153544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、布帛、被服、シート等の製品においては、接着剤の塗布部の防水性及び防塵性の向上が望まれている。また、被服等の縫製物においては、縫い目から綿、毛等の詰め物が抜け出てくることを抑制することが望まれており、防水ウェアとする場合には縫い目に防水性を持たせることも望まれている。
【0007】
本開示はホットメルト接着剤の塗布部に関する斯かる事情に鑑みてなされたものであり、防水性及び防塵性に優れた塗布部を有する塗布構造物及び接着構造物の提供を目的とする。
【0008】
また、当該構造物が縫製物である場合には、綿、毛等の詰め物が抜け出てくることを抑制できる塗布部を有する塗布構造物及び接着構造物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本開示の塗布構造物は、ホットメルト接着剤が塗布された帯状塗布部を有する塗布構造物であって、前記帯状塗布部は輪状塗布部が連なって形成されており、隣り合う前記輪状塗布部同士が重なり合っていることで、前記帯状塗布部の長手方向の両側縁は前記輪状塗布部の周縁が連なって形成されていることを特徴とする。
【0010】
上記の塗布構造物にあっては、前記塗布構造物は縫い目を有し、前記帯状塗布部は前記縫い目上に形成されていてもよい。
【0011】
上記の塗布構造物にあっては、前記帯状塗布部の幅は5mm以上7mm以下であることが好ましい。
【0012】
上記課題を解決するために本開示の接着構造物は、上記の塗布構造物と、被着物とを、前記帯状塗布部を介して接着したことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するために本開示の塗布構造物の製造方法は、糸状に吐出されたホットメルト接着剤に対して気体を噴射することで当該接着剤を被塗布物に向けて螺旋状に降下させるとともに、当該被塗布物を所定の搬送方向へと移動させて、当該被塗布物上に当該接着剤を塗布して帯状塗布部を形成する工程を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本開示の塗布構造物及び接着構造物が有する接着剤の塗布部は、防水性及び防塵性に優れる、縫い目上に設けることで詰め物が抜け出てくるのを抑制できる等、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る帯状塗布部を模式的に例示する平面図である。
図2】縫い目上に形成した、本実施形態に係る帯状塗布部を模式的に例示する平面図である。
図3】本実施形態に係る帯状塗布部の形成に用いるノズルチップの断面図である。
図4図3のノズルチップの底面図である。
図5】本実施形態に係る塗布構造物の製造方法の一工程を模式的に示す断面図である。
図6】スパイラルスプレー塗布装置のガンユニット部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の塗布構造物、接着構造物、及び塗布構造物の製造方法の実施形態について説明する。
【0017】
本実施形態に係る塗布構造物は、ホットメルト接着剤が塗布された帯状塗布部を有する。図1は、その帯状塗布部Aを模式的に例示する平面図である。なお、図1中のwは帯状塗布部Aの幅を示しており、この幅方向と直交する方向が帯状塗布部Aの長手方向である。
【0018】
本実施形態に係る接着構造物は、帯状塗布部Aを有する塗布構造物に対して被着物を貼り合わせて加熱圧着することで製造することができる。換言すると、本実施形態に係る接着構造物は、塗布構造物と被着物とが、帯状塗布部Aを介して接着したものである。
【0019】
図1に示すように、帯状塗布部Aは、複数の輪状塗布部aが連なって形成されており、隣り合う輪状塗布部a同士は重なり合っている。隣り合う輪状塗布部a同士が重なり合っていることで、帯状塗布部Aの長手方向の両側縁は、複数の輪状塗布部aの周縁が連なって形成されている。このように隣り合う輪状塗布部a同士の間に隙間がないことで、その隙間から水及び塵が侵入することがないため、防水性及び防塵性に優れる。また、隣り合う輪状塗布部a同士の間に隙間があると接着剤の塗布幅が狭くなる部分が生じるのに対して、帯状塗布部Aはほぼ一定の塗布幅であることから、接着強度に優れる。
【0020】
本実施形態にあっては、図1に示すように、帯状塗布部Aの長手方向の両側縁は略直線状に形成されている。換言すると、帯状塗布部Aの長手方向の両側縁上において隣り合う輪状塗布部aの周縁同士が密着して連通するように、隣り合う輪状塗布部a同士が重なり合っている。このように、輪状塗布部a同士の重なりが大きいことで、帯状塗布部Aは優れた接着強度を有する。また、帯状塗布部Aの長手方向の両側縁が凹凸の少ない滑らかな形状であることからシームレスな仕上がりとなり、美しいスタイルを実現できる。なお、図1,2において帯状塗布部Aは直線状に形成されているが、帯状塗布部Aの形状はこれに限定されず、任意の角度で折れ曲がる形状に形成することも、曲線状に形成することも可能である。
【0021】
図2は、被塗布物が縫製物である場合に、縫い目T上に形成した本実施形態に係る帯状塗布部Aを模式的に例示する平面図である。帯状塗布部Aは一定した塗布幅を有するため、図2に示すように縫い目T上に帯状塗布部Aを形成することで、綿、毛等の詰め物が縫い目Tから抜け出てくるのを抑制できる。また、縫い目Tに防水性を付与することができる。
【0022】
本実施形態においては、図1,2に示す帯状塗布部Aの幅wが5mmであり、換言すると、輪状塗布部aの直径が5mmである。帯状塗布部Aの幅wは5mm以外にも変更可能であり、幅wの設定範囲としては例えば4mm以上8mm以下が挙げられるが、5mm以上7mm以下とすることが好ましい。
【0023】
図1,2に示す帯状塗布部Aを有する塗布構造物は、特許文献1に開示されているスパイラルスプレー塗布装置を使用して製造することができるが、特許文献1の図2等に開示されているノズルチップでは、被塗布物に対して形成される輪状塗布部の直径が15mm~20mm程度となるため、本実施形態においてはそれとは異なるノズルチップを使用する。
【0024】
図3は、本実施形態に係る帯状塗布部Aの形成に用いるノズルチップ1の断面図であり、図4は、図3のノズルチップ1の底面図である。ノズルチップ1は、スパイラルスプレー塗布装置に装着して使用される。図6は、スパイラルスプレー塗布装置のガンユニット部分を示す断面図であり、ノズルチップ1が装着された様子を例示している。図6には、ガンユニットを構成する部品のうち、ノズルチップ1と、ノズル本体2と、ガンベース3とが示されてる。
【0025】
図3,4に示すように、ノズルチップ1の底面1aには、糸状のホットメルト接着剤hを吐出する接着剤孔11と、空気Kを噴射する加圧空気孔12とが設けられている。図3に示すように、ノズルチップ1の底面1aの中央部には円錐状に突出した円錐突起部13が形成され、接着剤孔11は円錐突起部13の先端部分に開口している。また図4に示すようにノズルチップ1を底面側から見たときに、接着剤孔11は底面1aの中心に位置し、加圧空気孔12は接着剤孔11を中心とした円周上に複数個形成されている。
【0026】
図3に示すように、ノズルチップ1の上面1bには、接着剤孔11の周囲を覆うように突出したボス部5が設けられている。ボス部5に形成されたネジ7は螺合されて図6における螺合部8となることで、ノズルチップ1がノズル本体2に装着される。ノズルチップ1の上面1bに設けられた凹部6は、図6に示すようにノズルチップ1をノズル本体2に装着した状態において、加圧空気室9を形成している。
【0027】
図5は、本実施形態に係る塗布構造物の製造方法の一工程を模式的に示す断面図である。図5に示すように、複数の加圧空気孔12から空気Kが旋回流として噴射されることで、接着剤孔11から吐出される糸状(繊維状)のホットメルト接着剤hは螺旋状(スパイラル状)に降下する。空気Kを旋回流として噴射するために、加圧空気孔12は接着剤孔11の軸線に対して傾斜角及び回転角を有するように形成されている。ここで傾斜角とは、鉛直面上に投影したときに、加圧空気孔12の開口12a(底面1a側の開口)及び開口12b(上面1b側の開口)を通る直線と、接着剤孔11の軸線とが成す角度(図3に示すα)である。回転角とは、水平面上に投影したときに、接着剤孔11の軸点及び開口12aを通る直線と、接着剤孔11の軸点及び開口12bを通る直線とが成す角度である。
【0028】
特許文献1に開示されているノズルチップにおいてはさらに第2加圧空気孔が設けられているのに対し、本実施形態に係るノズルチップ1では、第2加圧空気孔は設けず、加圧空気孔12の個数も4個と少数化している。本実施形態にあっては、加圧空気孔12の口径を0.4mm程度に微細化することで、加圧空気孔12から噴射される空気Kを微細なエアとしている。このような特徴を持つノズルチップ1を用いることで、直径が小さい(5mm~7mm程度)輪状塗布部aを被塗布物100に対して形成することができる。また、真円度が高い輪状塗布部aを形成することができる。
【0029】
このノズルチップ1を、図6に示すようにスパイラルスプレー塗布装置に装着して、図5に示すように糸状のホットメルト接着剤hを被塗布物100に向けて螺旋状に降下させるとともに、被塗布物100を所定の搬送方向へと移動させることで、被塗布物100上に輪状塗布部aが連なった帯状塗布部Aを形成することができる。被塗布物100の移動速度は15m/分~20m/分とすることができ、低速度での塗布にも適応することができる。
【0030】
以上のようにして、帯状塗布部Aを有する塗布構造物を製造することができる。この製造方法(塗布方法)によれば、直線状の塗布から曲線状の塗布に変化させても、帯状塗布部Aの幅(パターン幅)を一定とすることができる。
【0031】
また、この製造方法によれば、布帛等の被塗布物100に対してホットメルト接着剤を120℃程度の低温で塗布することができるため、被塗布物100に熱ダメージを与えることなく塗布することができる。さらにこの製造方法は、(1)極めて少ない加圧空気の消費量でホットメルト接着剤を塗布することができる、(2)粘着系ホットメルト接着剤に適用することができる、(3)ウレタン系反応型ホットメルト接着剤(PUR)に適用することができる等、優れた効果を有する。
【0032】
このように製造された帯状塗布部Aを有する塗布構造物と被着物とを接着した接着構造物は、優れた接着強度を備えつつ、接着部の柔軟性にも優れる。加えて、(1)接着剤の微量塗布(1g/m程度)で接着効果が得られる、(2)素早く接着させることができる、(3)生産工程を簡素化できる等、コスト面に優れるという効果を有する。
【0033】
なお、今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0034】
100 被塗布物
A 帯状塗布部
a 輪状塗布部
h 糸状に吐出されたホットメルト接着剤
T 縫い目
w 帯状塗布部の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6