(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170046
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】結晶化ガラス、重金属回収材、土壌改質材、結晶化ガラスの製造方法及び重金属の回収方法
(51)【国際特許分類】
C03C 3/083 20060101AFI20241129BHJP
C03C 10/00 20060101ALI20241129BHJP
C03C 3/085 20060101ALI20241129BHJP
C03C 3/091 20060101ALI20241129BHJP
C03C 3/093 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
C03C3/083
C03C10/00
C03C3/085
C03C3/091
C03C3/093
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086984
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】横田 裕基
(72)【発明者】
【氏名】保田 皓是
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
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4G062MM29
4G062NN29
4G062NN33
4G062NN34
(57)【要約】
【課題】重金属等を簡便な方法で回収可能な結晶化ガラス、重金属回収材、土壌改質材、結晶化ガラスの製造方法及び重金属の回収方法を提供する。
【解決手段】質量%で、Fe2O3 20~80%を含有し、磁性結晶を含む、結晶化ガラス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、Fe2O3 20~80%を含有し、磁性結晶を含む、結晶化ガラス。
【請求項2】
前記結晶化ガラスが、さらに質量%で、SiO2 0~80%、Al2O3 0~80%、B2O3 0~80%、P2O5 0~80%、Li2O 0~50%、Na2O 0~50%、K2O 0~50%、MgO 0~50%、CaO 0~50%、SrO 0~50%、BaO 0~50%、ZnO 0~50%、ZrO2 0~50%、HfO2 0~50%、TiO2 0~50%、SnO2 0~50%、V2O5 0~50%、NiO 0~80%、Cr2O3 0~80%、MoO3 0~80%を含有する、請求項1に記載の結晶化ガラス。
【請求項3】
質量%で、SnO2+Fe2O3+V2O5+NiO+Cr2O3+MoO3 20%以上を含有する、請求項1又は2に記載の結晶化ガラス。
【請求項4】
質量%比で、K2O/(Li2O+Na2O+K2O)が0.01~0.99である、請求項1又は2に記載の結晶化ガラス。
【請求項5】
質量%比で、(SiO2+P2O5)/(SiO2+Al2O3+P2O5)が0.01~0.99である、請求項1又は2に記載の結晶化ガラス。
【請求項6】
質量%比で、SiO2/(B2O3+P2O5+ZrO2+HfO2+TiO2+SnO2)が0.1~10000である、請求項1又は2に記載の結晶化ガラス。
【請求項7】
質量%比で、SiO2/(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)が0.1~10000である、請求項1又は2に記載の結晶化ガラス。
【請求項8】
質量%比で、SiO2/(SnO2+Fe2O3+V2O5+NiO+Cr2O3+MoO3)が0.01~10である、請求項1又は2に記載の結晶化ガラス。
【請求項9】
質量%で、MoO3 0%超を含有する、請求項1又は2に記載の結晶化ガラス。
【請求項10】
質量%で、Pt 100ppm以下を含有する、請求項1又は2に記載の結晶化ガラス。
【請求項11】
質量%で、Rh 100ppm以下を含有する、請求項1又は2に記載の結晶化ガラス。
【請求項12】
結晶化前の原ガラスのβ-OH値が0超~2/mmである、請求項1又は2に記載の結晶化ガラス。
【請求項13】
25℃~400℃のいずれかの一温度点以上で、ゼーベック係数の絶対値が0.000001V/K以上である、請求項1又は2に記載の結晶化ガラス。
【請求項14】
25℃~400℃のいずれかの一温度点以上で、熱電変換指数ZTが0.00001以上である、請求項1又は2に記載の結晶化ガラス。
【請求項15】
キャリア移動度が0.0001cm2/Vs以上である、請求項1又は2に記載の結晶化ガラス。
【請求項16】
重金属回収材として用いられる、請求項1又は2に記載の結晶化ガラス。
【請求項17】
質量%で、Fe2O3 20~80%を含有し、磁性結晶を含む結晶化ガラスからなる、重金属回収材。
【請求項18】
質量%で、Fe2O3 20~80%を含有し、磁性結晶を含む結晶化ガラスからなる、土壌改質材。
【請求項19】
請求項1又は2に記載の結晶化ガラスの製造方法であって、
ガラス原料とFe2O3原料の混合物を溶融する溶融工程、
溶融ガラスを所定の形状に成形して結晶化ガラスを得る結晶化工程、
を備える、結晶化ガラスの製造方法。
【請求項20】
磁性結晶を含む結晶化ガラスに重金属を吸着させる吸着工程、
重金属吸着後の前記結晶化ガラスを磁石で回収する回収工程、
を備える、重金属の回収方法。
【請求項21】
土壌中の重金属を回収する、請求項20に記載の重金属の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶化ガラス、重金属回収材、土壌改質材、結晶化ガラスの製造方法及び重金属の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的な人口増加により拡大する食料需要に対して、食料供給が追い付かなくなることが懸念されている。垂直農業や都市農業では主に葉物野菜が生産されており、全世界の人口の栄養素を賄えるほどの生産量や生産品種を網羅できていない。そのため、今後の人口増加や拡大する食料需要に対しては、既存の慣行農業で対応せざるを得ない状況と言える。
【0003】
慣行農業が抱える問題として、重金属や特定の有機物による生産土壌の汚染が挙げられる。例えば、リンなどの農業用肥料から汚染物質が混入することが挙げられる。リンは農作物の三大栄養素に数えられる重要な栄養成分であり、各業界からの需要にこたえるために重金属含有量が比較的多いリン原料も使用せざるを得ないことが想定されている。また、各国で下水汚泥等からリンを回収する方法が研究開発されているものの、こうした再利用リンにも重金属が多く残留する問題がある。したがって、どのリン源を用いるとしても農業用土壌に重金属が蓄積することが想定されており、結果的に、人体に蓄積する重金属量の増加及び腎障害等の各種疾病が生じるリスク増大が懸念されている。
【0004】
こうした背景から、リン原料や農業用土壌から重金属を回収する方法が検討されている(例えば、引用文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引用文献1ではシート状の回収材が検討されているが、シート状回収材自体の回収方法について検討が行われていない。世界的な重金属回収のニーズにこたえるため、回収プロセス全体のコストを考慮した重金属回収方法が求められている。
【0007】
以上に鑑み、本発明は、重金属等を簡便な方法で回収可能な結晶化ガラス、重金属回収材、土壌改質材、結晶化ガラスの製造方法及び重金属の回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する結晶化ガラス、重金属回収材、土壌改質材、結晶化ガラスの製造方法及び重金属の回収方法を提供する各態様について説明する。
【0009】
態様1の結晶化ガラスは、質量%で、Fe2O3 20~80%を含有し、磁性結晶を含むことを特徴とする。
【0010】
態様2の結晶化ガラスは、態様1において、結晶化ガラスが、質量%で、SiO2 0~80%、Al2O3 0~80%、B2O3 0~80%、P2O5 0~80%、Li2O 0~50%、Na2O 0~50%、K2O 0~50%、MgO 0~50%、CaO 0~50%、SrO 0~50%、BaO 0~50%、ZnO 0~50%、ZrO2 0~50%、HfO2 0~50%、TiO2 0~50%、SnO2 0~50%、V2O5 0~50%、NiO 0~80%、Cr2O3 0~80%、MoO3 0~80%を含有することが好ましい。
【0011】
態様3の結晶化ガラスは、態様1又は態様2において、質量%で、SnO2+Fe2O3+V2O5+NiO+Cr2O3+MoO3 20%以上を含有することが好ましい。ここで「SnO2+Fe2O3+V2O5+NiO+Cr2O3+MoO3」は、SnO2、Fe2O3、V2O5、NiO、Cr2O3及びMoO3の含有量の合量を意味する。
【0012】
態様4の結晶化ガラスは、態様1から態様3のいずれか一つの態様において、質量%比で、K2O/(Li2O+Na2O+K2O)が0.01~0.99であることが好ましい。ここで「K2O/(Li2O+Na2O+K2O)」はK2Oの含有量をLi2O、Na2O及びK2Oの含有量の合量で除した値を意味する。
【0013】
態様5の結晶化ガラスは、態様1から態様4のいずれか一つの態様において、質量%比で、(SiO2+P2O5)/(SiO2+Al2O3+P2O5)が0.01~0.99であることが好ましい。ここで「(SiO2+P2O5)/(SiO2+Al2O3+P2O5)」はSiO2及びP2O5の含有量の合量をSiO2、Al2O3及びP2O5の含有量の合量で除した値を意味する。
【0014】
態様6の結晶化ガラスは、態様1から態様5のいずれか一つの態様において、質量%比で、SiO2/(B2O3+P2O5+ZrO2+HfO2+TiO2+SnO2)が0.1~10000であることが好ましい。ここで「SiO2/(B2O3+P2O5+ZrO2+HfO2+TiO2+SnO2)」はSiO2の含有量をB2O3、P2O5、ZrO2、HfO2、TiO2及びSnO2の含有量の合量で除した値を意味する。
【0015】
態様7の結晶化ガラスは、態様1から態様6のいずれか一つの態様において、質量%比で、SiO2/(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)が0.1~10000であることが好ましい。ここで「SiO2/(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)」はSiO2の含有量をMgO、CaO、SrO、BaO及びZnOの含有量の合量で除した値を意味する。
【0016】
態様8の結晶化ガラスは、態様1から態様7のいずれか一つの態様において、質量%比で、SiO2/(SnO2+Fe2O3+V2O5+NiO+Cr2O3+MoO3)が0.01~10であることが好ましい。ここで「SiO2/(SnO2+Fe2O3+V2O5+NiO+Cr2O3+MoO3)」はSiO2の含有量をSnO2、Fe2O3、V2O5、NiO、Cr2O3及びMoO3の含有量の合量で除した値を意味する。
【0017】
態様9の結晶化ガラスは、態様1から態様8のいずれか一つの態様において、質量%で、MoO3 0%超を含有することが好ましい。
【0018】
態様10の結晶化ガラスは、態様1から態様9のいずれか一つの態様において、質量%で、Pt 100ppm以下を含有することが好ましい。
【0019】
態様11の結晶化ガラスは、態様1から態様10のいずれか一つの態様において、質量%で、Rh 100ppm以下を含有することが好ましい。
【0020】
態様12の結晶化ガラスは、態様1から態様11のいずれか一つの態様において、結晶化前の原ガラスのβ-OH値が0超~2/mmであることが好ましい。
【0021】
態様13の結晶化ガラスは、態様1から態様12のいずれか一つの態様において、25℃~400℃のいずれかの一温度点以上で、ゼーベック係数の絶対値が0.000001V/K以上であることが好ましい。
【0022】
態様14の結晶化ガラスは、態様1から態様13のいずれか一つの態様において、25℃~400℃のいずれかの一温度点以上で、熱電変換指数ZTが0.00001以上であることが好ましい。
【0023】
態様15の結晶化ガラスは、態様1から態様14のいずれか一つの態様において、キャリア移動度が0.0001cm2/Vs以上であることが好ましい。
【0024】
態様16の結晶化ガラスは、態様1から態様15のいずれか一つの態様において、重金属回収材として用いられることが好ましい。
【0025】
態様17の重金属回収材は、質量%で、Fe2O3 20~80%を含有し、磁性結晶を含む結晶化ガラスからなることを特徴とする。
【0026】
態様18の土壌改質材は、質量%で、Fe2O3 20~80%を含有し、磁性結晶を含む結晶化ガラスからなることを特徴とする。
【0027】
態様19の結晶化ガラスの製造方法は、態様1から態様16のいずれか一つの態様の結晶化ガラスの製造方法であって、ガラス原料とFe2O3原料の混合物を溶融する溶融工程、溶融ガラスを所定の形状に成形して結晶化ガラスを得る結晶化工程、を備えることを特徴とする。
【0028】
態様20の重金属の回収方法は、磁性結晶を含む結晶化ガラスに重金属を吸着させる吸着工程、重金属吸着後の前記結晶化ガラスを磁石で回収する回収工程、を備えることを特徴とする。
【0029】
態様21の重金属の回収方法は、態様20において、土壌中の重金属を回収することが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、重金属等を簡便な方法で回収可能な結晶化ガラス、重金属回収材、土壌改質材、結晶化ガラスの製造方法及び重金属の回収方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではない。また、以下の各成分の含有量に関する説明において、特に断りのない限り「%」は「質量%」を意味する。
【0032】
<結晶化ガラス>
本発明の結晶化ガラスは、質量%で、Fe2O3 20~80%を含有し、磁性結晶を含むことを特徴とする。より詳細には、結晶化ガラスが、さらに質量%で、SiO2 0~80%、Al2O3 0~80%、B2O3 0~80%、P2O5 0~80%、Li2O 0~50%、Na2O 0~50%、K2O 0~50%、MgO 0~50%、CaO 0~50%、SrO 0~50%、BaO 0~50%、ZnO 0~50%、ZrO2 0~50%、HfO2 0~50%、TiO2 0~50%、SnO2 0~50%、V2O5 0~50%、NiO 0~80%、Cr2O3 0~80%、MoO3 0~80%を含有することが好ましい。Fe2O3を含有することにより、重金属を吸着させることができる。また、磁性結晶を含むことにより本発明の結晶化ガラスを重金属回収材として用いた際に、磁石を用いて容易に回収することができる。
【0033】
Fe2O3は重金属吸着能を有する成分である。また、磁性結晶を構成しうる成分である。Fe2O3の含有量は20~80%である。より詳細には、Fe2O3の含有量の下限は20%以上、21%以上、23%以上、特に25%以上であることが好ましく、Fe2O3の含有量の上限は80%以下、70%以下、60%以下、特に55%以下であることが好ましい。Fe2O3の含有量が少なすぎると、結晶化ガラス中に磁性結晶を含ませることが難しくなる。Fe2O3の含有量が多すぎると、ガラス融液の粘性が低下し、所望の形状に成形することが困難になる。また、農業用土壌で使用した際に、Feイオンが溶出しやすくなり、結果的に、土壌の地力を下げやすくなる。
【0034】
ここで、磁性結晶とは、超強磁性、強磁性、常磁性、フェリ磁性などの性質を有する結晶を意味する。より詳細には、磁性結晶がフェライト系結晶であることが好ましい。フェライト系結晶としては、マグネタイト(Fe3O4)、マグヘマイト(γ-Fe2O3)、マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト、銅亜鉛フェライト、(Fe2O3)10.6667[γ-Fe2O3]、又はNa0.75Ca0.25Fe(Si2O6)のいずれか一種を含有することが好ましい。なお、本発明の結晶化ガラスは、所望の特性が得られる限り、先に例示した結晶以外の結晶を含んでもよい。例えば、ガーナイト、ウィレマイト(ケイ酸亜鉛)、Al2SiO5(ケイ酸アルミニウム)、ジルコニア、ジルコニアチタネート、スズ含有ジルコニア系酸化物、チタニア、アルミノチタネート、β-石英固溶体、α-石英、β-石英、β-スポジュメン固溶体、スポジュメン、ジルコン、α-コーディエライト以外のコーディエライト、エンスタタイト、マイカ、ネフェリン、アノーサイト、リチウムダイシリケート、リチウムメタシリケート、ウォラストナイト、ディオプサイト、クリストバライト、トリジマイト、長石、スピネル系結晶、金属コロイドなどを含有してもよい。これら結晶は一種類のみを含有してもよく、二種類以上を含有してもよい。
【0035】
SiO2はガラスの骨格を形成するとともに、結晶化ガラス中の結晶の構成成分になりうる。また、ガラスの化学的耐久性を向上させる成分でもある。さらに、熱膨張係数を低下させ、耐熱衝撃性に優れた結晶化ガラスを得やすくする成分でもある。SiO2の含有量は0~80%であることが好ましい。より詳細には、SiO2の含有量の下限は0%以上、1%以上、5%以上、10%以上、20%以上、25%以上、特に29%以上であることが好ましく、SiO2の含有量の上限は80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、特に60%以下であることが好ましい。SiO2の含有量が多すぎると、ガラスの溶融性が低下しやすい。また、ガラス融液の粘度が高くなり、清澄やガラスの成形が難しくなりやすい。さらに、結晶化に要する時間が長くなり、生産性が低下しやすい。
【0036】
Al2O3はガラスの骨格を形成するとともに、結晶化ガラス中の結晶の構成成分になりうる。また、ガラス融液の粘性に寄与し、成形性を高めやすい成分でもある。Al2O3の含有量は0~80%であることが好ましい。より詳細には、Al2O3の含有量の下限は0%以上、特に1%以上であることが好ましく、Al2O3の含有量の上限は80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、特に15%以下であることが好ましい。Al2O3の含有量が多すぎると、結晶化ガラスの化学的耐久性が低下しやすくなる。
【0037】
B2O3はガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性及び成形性を向上させる成分である。また、結晶化ガラス中の結晶の構成成分になりうる。B2O3の含有量は0~80%であることが好ましい。より詳細には、B2O3の含有量の下限は0%以上、1%以上、特に2%以上であることが好ましく、B2O3の含有量の上限は80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、特に10%以下であることが好ましい。B2O3の含有量が多すぎると、溶融時のB2O3の蒸発量が多くなり環境負荷が高くなるほか、結晶化ガラスの化学的耐久性が低下しやすくなる。なお、B2O3を実質的に含有しなくてもよい。ただし、B2O3は不純物として混入しやすいため、完全に除去しようとすると原料が高価になり製造コストが増加する傾向にある。したがって、B2O3は0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上含有してもよい。なお、本明細書において「実質的に含有しない」とは、意図的に原料として含有しないことを意味し、客観的には含有量が0.1%未満の場合を指す。
【0038】
P2O5はガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性及び成形性を向上させる成分である。また、場合によっては結晶化ガラス中の結晶の構成成分になりうる。P2O5の含有量は0~80%であることが好ましい。より詳細には、P2O5の含有量の下限は0%以上、0.5%以上、特に1%以上であることが好ましく、P2O5の含有量の上限は80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、特に5%以下であることが好ましい。P2O5の含有量が多すぎると、溶融時のP2O5の蒸発量が多くなり環境負荷が高くなるほか、結晶化ガラスの化学的耐久性が低下しやすくなる。なお、P2O5を実質的に含有しなくてもよい。ただし、P2O5は不純物として混入しやすいため、完全に除去しようとすると原料が高価になり製造コストが増加する傾向にある。したがって、P2O5は0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上含有してもよい。
【0039】
Li2Oはガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性及び成形性を向上させる成分である。また、場合によっては結晶化ガラス中の結晶の構成成分になりうる。Li2Oの含有量は0~50%であることが好ましい。より詳細には、Li2Oの含有量の下限は0%以上、0.5%以上、特に1%以上であることが好ましく、Li2Oの含有量の上限は50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、特に5%以下であることが好ましい。Li2Oの含有量が多すぎると、溶融時のLi2Oの蒸発量が多くなり環境負荷が高くなるほか、結晶化ガラスの化学的耐久性が低下しやすくなる。なお、Li2Oを実質的に含有しなくてもよい。ただし、Li2Oは不純物として混入しやすいため、完全に除去しようとすると原料が高価になり製造コストが増加する傾向にある。したがって、Li2Oは0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上含有してもよい。
【0040】
Na2Oはガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性及び成形性を向上させる成分である。また、場合によっては結晶化ガラス中の結晶の構成成分になりうる。Na2Oの含有量は0~50%であることが好ましい。より詳細には、Na2Oの含有量の下限は0%以上、0.1%以上、0.5以上、特に1%以上であることが好ましく、Na2Oの含有量の上限は50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、15%以下、特に11%以下であることが好ましい。Na2Oの含有量が多すぎると、溶融時のNa2Oの蒸発量が多くなり環境負荷が高くなるほか、結晶化ガラスの化学的耐久性が低下しやすくなる。なお、Na2Oを実質的に含有しなくてもよい。ただし、Na2Oは不純物として混入しやすいため、完全に除去しようとすると原料が高価になり製造コストが増加する傾向にある。したがって、Na2Oは0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上含有してもよい。
【0041】
K2Oはガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性及び成形性を向上させる成分である。また、場合によっては結晶化ガラス中の結晶の構成成分になりうる。K2Oの含有量は0~50%であることが好ましい。より詳細には、K2Oの含有量の下限は0%以上、0.1%以上、0.5以上、特に1%以上であることが好ましく、K2Oの含有量の上限は50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、特に3%以下であることが好ましい。K2Oの含有量が多すぎると、溶融時のK2Oの蒸発量が多くなり環境負荷が高くなるほか、結晶化ガラスの化学的耐久性が低下しやすくなる。なお、K2Oを実質的に含有しなくてもよい。ただし、K2Oは不純物として混入しやすいため、完全に除去しようとすると原料が高価になり製造コストが増加する傾向にある。したがって、K2Oは0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上含有してもよい。
【0042】
MgOはガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性及び成形性を向上させる成分である。また、場合によっては結晶化ガラス中の結晶の構成成分になりうる。MgOの含有量は0~50%であることが好ましい。より詳細には、MgOの含有量の下限は0%以上、0.1%以上、0.5以上、特に1%以上であることが好ましく、MgOの含有量の上限は50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、特に4%以下であることが好ましい。MgOの含有量が多すぎると、溶融時及び成形時に意図しない結晶(失透ブツ)が析出しやすくなり、結晶化ガラスや結晶化前の原ガラスが破損しやすくなる。なお、MgOを実質的に含有しなくてもよい。ただし、MgOは不純物として混入しやすいため、MgOを完全に除去しようとすると原料が高価になり製造コストが増加する傾向にある。したがって、MgOは0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上含有してもよい。
【0043】
CaOはガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性及び成形性を向上させる成分である。また、場合によっては結晶化ガラス中の結晶の構成成分になりうる。CaOの含有量は0~50%であることが好ましい。より詳細には、CaOの含有量の下限は0%以上、0.5%以上、特に1%以上であることが好ましく、CaOの含有量の上限は50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、特に5%以下であることが好ましい。CaOの含有量が多すぎると、溶融時及び成形時に意図しない結晶(失透ブツ)が析出しやすくなり、結晶化ガラスや結晶化前の原ガラスが破損しやすくなる。なお、CaOを実質的に含有しなくてもよい。ただし、CaOは不純物として混入しやすいため、CaOを完全に除去しようとすると原料が高価になり製造コストが増加する傾向にある。したがって、CaOは0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上含有してもよい。
【0044】
SrOはガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性及び成形性を向上させる成分である。また、場合によっては結晶化ガラス中の結晶の構成成分になりうる。SrOの含有量は0~50%であることが好ましい。より詳細には、SrOの含有量の下限は0%以上、0.5%以上、特に1%以上であることが好ましく、SrOの含有量の上限は50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、特に5%以下であることが好ましい。SrOの含有量が多すぎると、溶融時及び成形時に意図しない結晶(失透ブツ)が析出しやすくなり、結晶化ガラスや結晶化前の原ガラスが破損しやすくなる。なお、SrOを実質的に含有しなくてもよい。ただし、SrOは不純物として混入しやすいため、SrOを完全に除去しようとすると原料が高価になり製造コストが増加する傾向にある。したがって、SrOは0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上含有してもよい。
【0045】
BaOはガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性及び成形性を向上させる成分である。また、場合によっては結晶化ガラス中の結晶の構成成分になりうる。BaOの含有量は0~50%であることが好ましい。より詳細には、BaOの含有量の下限は0%以上、0.5%以上、特に1%以上であることが好ましく、BaOの含有量の上限は50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、特に5%以下であることが好ましい。BaOの含有量が多すぎると、溶融時及び成形時に意図しない結晶(失透ブツ)が析出しやすくなり、結晶化ガラスや結晶化前の原ガラスが破損しやすくなる。なお、BaOを実質的に含有しなくてもよい。ただし、BaOは不純物として混入しやすいため、BaOを完全に除去しようとすると原料が高価になり製造コストが増加する傾向にある。したがって、BaOは0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上含有してもよい。
【0046】
ZnOはガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性及び成形性を向上させる成分である。また、場合によっては結晶化ガラス中の結晶の構成成分になりうる。ZnOの含有量は0~50%であることが好ましい。より詳細には、ZnOの含有量の下限は0%以上、0.5%以上、特に1%以上であることが好ましく、ZnOの含有量の上限は50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、特に5%以下であることが好ましい。ZnOの含有量が多すぎると、溶融時及び成形時に意図しない結晶(失透ブツ)が析出しやすくなり、結晶化ガラスや結晶化前の原ガラスが破損しやすくなる。なお、ZnOを実質的に含有しなくてもよい。ただし、ZnOは不純物として混入しやすいため、ZnOを完全に除去しようとすると原料が高価になり製造コストが増加する傾向にある。したがって、ZnOは0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上含有してもよい。
【0047】
ZrO2は結晶化を促進しうる成分であり、結晶化ガラスの化学的耐久性を高めうる成分である。また、場合によっては結晶化ガラス中の結晶の構成成分になりうる。ZrO2の含有量は0~50%であることが好ましい。より詳細には、ZrO2の含有量の下限は0%以上、0.5%以上、特に1%以上であることが好ましく、ZrO2の含有量の上限は50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、特に5%以下であることが好ましい。ZrO2の含有量が多すぎると、溶融時及び成形時に意図しない結晶(失透ブツ)が析出しやすくなり、結晶化ガラスや結晶化前の原ガラスが破損しやすくなる。なお、ZrO2を実質的に含有しなくてもよい。ただし、ZrO2は不純物として混入しやすいため、ZrO2を完全に除去しようとすると原料が高価になり製造コストが増加する傾向にある。したがって、ZrO2は0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上含有してもよい。
【0048】
HfO2は結晶化を促進しうる成分であり、結晶化ガラスのヤング率等を向上させうる成分である。また、場合によっては結晶化ガラス中の結晶の構成成分になりうる。HfO2の含有量は0~50%であることが好ましい。より詳細には、HfO2の含有量の下限は0%以上、0.5%以上、特に1%以上であることが好ましく、HfO2の含有量の上限は50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、特に5%以下であることが好ましい。HfO2の含有量が多すぎると、溶融時及び成形時に意図しない結晶(失透ブツ)が析出しやすくなり、結晶化ガラスや結晶化前の原ガラスが破損しやすくなる。なお、HfO2を実質的に含有しなくてもよい。ただし、HfO2は不純物として混入しやすいため、HfO2を完全に除去しようとすると原料が高価になり製造コストが増加する傾向にある。したがって、HfO2は0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上含有してもよい。
【0049】
TiO2は結晶化を促進しうる成分である。また、場合によっては結晶化ガラス中の結晶の構成成分になりうる。TiO2の含有量は0~50%であることが好ましい。より詳細には、TiO2の含有量の下限は0%以上、0.5%以上、特に1%以上であることが好ましく、TiO2の含有量の上限は50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、特に5%以下であることが好ましい。TiO2の含有量が多すぎると、溶融時及び成形時に意図しない結晶(失透ブツ)が析出しやすくなり、結晶化ガラスや結晶化前の原ガラスが破損しやすくなる。なお、TiO2を実質的に含有しなくてもよい。ただし、TiO2を完全に除去しようとすると原料が高価になり製造コストが増加する傾向にある。したがって、TiO2は0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上含有してもよい。
【0050】
SnO2は高温化でSnO2→SnO+1/2O2の反応を起こし、ガラス融液中にO2ガスを放出する。この反応はSnO2の清澄機構として知られているが、反応時に放出されたO2ガスはガラス融液中に存在する微塵な泡を大きくし、ガラス系外に放出させる「脱泡作用」の他に、ガラス融液を混ぜ合わせる「撹拌作用」を有する。さらに、SnO2は結晶化を促進しうる成分であり、結晶化ガラスのヤング率等を向上させうる成分である。また、場合によっては結晶化ガラス中の結晶の構成成分になりうる。SnO2の含有量は0~50%であることが好ましい。より詳細には、SnO2の含有量の下限は0%以上、0.5%以上、特に1%以上であることが好ましく、SnO2の含有量の上限は50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、特に5%以下であることが好ましい。SnO2の含有量が多すぎると、溶融時及び成形時に意図しない結晶(失透ブツ)が析出しやすくなり、結晶化ガラスや結晶化前の原ガラスが破損しやすくなる。なお、SnO2を実質的に含有しなくてもよい。ただし、SnO2は不純物として混入しやすいため、SnO2を完全に除去しようとすると原料が高価になり製造コストが増加する傾向にある。したがって、SnO2は0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上含有してもよい。
【0051】
V2O5はガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性及び成形性を向上させる成分である。また、場合によっては結晶化ガラス中の結晶の構成成分になりうる。V2O5の含有量は0~50%であることが好ましい。より詳細には、V2O5の含有量の下限は0%以上、0.5%以上、特に1%以上であることが好ましく、V2O5の含有量の上限は50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、特に5%以下であることが好ましい。V2O5の含有量が多すぎると、溶融時及び成形時に意図しない結晶(失透ブツ)が析出しやすくなり、結晶化ガラスや結晶化前の原ガラスが破損しやすくなる。なお、V2O5を実質的に含有しなくてもよい。ただし、V2O5は不純物として混入しやすいため、V2O5を完全に除去しようとすると原料が高価になり製造コストが増加する傾向にある。したがって、V2O5は0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上含有してもよい。
【0052】
NiOはガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性及び成形性を向上させる成分である。また、場合によっては結晶化ガラス中の結晶の構成成分になりうる。さらに、還元状態においては他の金属元素と合金を形成し、結晶化ガラスの磁性や強度を向上させうる。合金としては、ニッケルクロム合金、ニッケル銅合金、ニッケル鉄合金などが挙げられる。NiOの含有量は0~50%であることが好ましい。より詳細には、NiOの含有量の下限は0%以上、0.5%以上、特に1%以上であることが好ましく、NiOの含有量の上限は50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、特に5%以下であることが好ましい。NiOの含有量が多すぎると、溶融時及び成形時に意図しない結晶(失透ブツ)が析出しやすくなり、結晶化ガラスや結晶化前の原ガラスが破損しやすくなる。なお、NiOを実質的に含有しなくてもよい。ただし、NiOは不純物として混入しやすいため、NiOを完全に除去しようとすると原料が高価になり製造コストが増加する傾向にある。したがって、NiOは0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上含有してもよい。
【0053】
Cr2O3はガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性及び成形性を向上させる成分である。また、場合によっては結晶化ガラス中の結晶の構成成分になりうる。さらに、還元状態においては他の金属元素と合金を形成し、結晶化ガラスの磁性や強度を向上させうる。合金としては、ニッケルクロムモリブデン鋼、クロムモリブデン鋼、ニクロムなどが挙げられる。Cr2O3の含有量は0~50%であることが好ましい。より詳細には、Cr2O3の含有量の下限は0%以上、0.5%以上、特に1%以上であることが好ましく、Cr2O3の含有量の上限は50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、特に5%以下であることが好ましい。Cr2O3の含有量が多すぎると、溶融時及び成形時に意図しない結晶(失透ブツ)が析出しやすくなり、結晶化ガラスや結晶化前の原ガラスが破損しやすくなる。なお、Cr2O3を実質的に含有しなくてもよい。ただし、Cr2O3は不純物として混入しやすいため、Cr2O3を完全に除去しようとすると原料が高価になり製造コストが増加する傾向にある。したがって、Cr2O3は0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上含有してもよい。
【0054】
MoO3はガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性及び成形性を向上させる成分である。また、場合によっては結晶化ガラス中の結晶の構成成分になりうる。さらに、還元状態においては他の金属元素と合金を形成し、結晶化ガラスの磁性や強度を向上させうる。合金としては、バイナリモリブデン合金、ニッケルクロムモリブデン鋼、クロムモリブデン鋼、ニクロムなどが挙げられる。MoO3の含有量は0~50%であることが好ましい。より詳細には、MoO3の含有量の下限は0%以上、0%超、0.1%以上、0.2%以上、0.5%以上、特に1%以上であることが好ましく、MoO3の含有量の上限は50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、特に5%以下であることが好ましい。MoO3の含有量が多すぎると、溶融時及び成形時に意図しない結晶(失透ブツ)が析出しやすくなり、結晶化ガラスや結晶化前の原ガラスが破損しやすくなる。なお、MoO3を実質的に含有しなくてもよい。ただし、MoO3は不純物として混入しやすいため、MoO3を完全に除去しようとすると原料が高価になり製造コストが増加する傾向にある。したがって、MoO3は0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上含有してもよい。
【0055】
本発明の結晶化ガラスは、さらに、以下の成分を含有してもよい。
【0056】
MnO2はガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性及び成形性を向上させる成分である。また、場合によっては結晶化ガラス中の結晶の構成成分になりうる。さらに、還元状態においては他の金属元素と合金を形成し、結晶化ガラスの磁性や強度を向上させうる。合金としては、フェロマンガンなどが挙げられる。MnO2の含有量は0~50%であることが好ましい。より詳細には、MnO2の含有量の下限は0%以上、0.1%以上、0.5%以上、特に1%以上であることが好ましく、MnO2の含有量の上限は50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、特に5%以下であることが好ましい。MnO2の含有量が多すぎると、溶融時及び成形時に意図しない結晶(失透ブツ)が析出しやすくなり、結晶化ガラスや結晶化前の原ガラスが破損しやすくなる。なお、MnO2を実質的に含有しなくてもよい。ただし、MnO2は不純物として混入しやすいため、MnO2を完全に除去しようとすると原料が高価になり製造コストが増加する傾向にある。したがって、MnO2は0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上であることが好ましい。
【0057】
Sb2O3、As2O3、SO3は清澄剤として添加されてもよく、その含有量はそれぞれ0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上であってもよく、1%以下、特に0.8%以下であってもよい。なお、環境的観点から、Sb2O3及びAs2O3の含有量は、それぞれ0.5%以下、0.2%以下、特に0.1%未満であることが好ましい。
【0058】
Cl、F、Y2O3、La2O3、WO3、Ta2O5、Nd2O3、Nb2O5、RfO2は、所望の特性が得られる限り、合量で30%まで含有してもよい。ただし、上記成分の原料は高価であり製造コストが増加する傾向にあるため、特段の事情が無い場合は実質的に含有しないことが好ましい。
【0059】
Ptは結晶化を促進しうる成分であるが貴金属であるため、コスト低減の観点から、その含有量は100ppm以下、50ppm以下、20ppm以下、10ppm以下、9ppm以下、8ppm以下、7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1.6ppm以下、1.4ppm以下、1.2ppm以下、1ppm以下、0.9ppm以下、0.8ppm以下、0.7ppm以下、0.6ppm以下、0.5ppm以下、0.45ppm以下、0.40ppm以下、0.35ppm以下、特に0.30ppm以下であることが好ましい。なお、Ptは溶融設備から混入することがあり、Ptを完全に除去しようとすると製造コストが高くなることがある。このため、本発明の結晶化ガラスは所望の特性が得られる限り、Ptの含有量の下限は0.0001ppm以上、0.001ppm以上、0.005ppm以上、0.01ppm以上、0.02ppm以上、0.03ppm以上、0.04ppm以上、0.05ppm以上、0.06ppm以上、特に0.07ppm以上であることが好ましい。なお、Ptを結晶化促進剤としても機能させる場合、PtはPt単独で使用してもよく、他の成分と複合してもよい。また、Ptを結晶化促進剤とする場合、特にPtの形態は問わない。例えば、Ptの形態はコロイドであってもよく、金属結晶であってもよい。
【0060】
Rhは結晶化を促進しうる成分であるが貴金属であるため、コスト低減の観点から、その含有量は100ppm以下、50ppm以下、20ppm以下、10ppm以下、9ppm以下、8ppm以下、7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1.6ppm以下、1.4ppm以下、1.2ppm以下、1ppm以下、0.9ppm以下、0.8ppm以下、0.7ppm以下、0.6ppm以下、0.5ppm以下、0.45ppm以下、0.40ppm以下、0.35ppm以下、特に0.30ppm以下であることが好ましい。なお、Rhは溶融設備から混入することがあり、Rhを完全に除去しようとすると製造コストが高くなることがある。このため、Rhの含有量の下限は0.0001ppm以上、0.001ppm以上、0.005ppm以上、0.01ppm以上、0.02ppm以上、0.03ppm以上、0.04ppm以上、0.05ppm以上、0.06ppm以上、特に0.07ppm以上であることが好ましい。なお、Rhを結晶化促進剤としても機能させる場合、RhはRh単独で使用してもよく、他の成分と複合してもよい。また、Rhを結晶化促進剤とする場合、特にRhの形態は問わない。例えば、Rhの形態はコロイドであってもよく、金属結晶であってもよい。
【0061】
本発明の結晶化ガラスは所望の特性が得られる限り、例えば、H2、CO2、CO、H2O、He、Ne、Ar、N2等の微量成分をそれぞれ0.1%未満まで含有してもよい。
【0062】
As、Sb、Ag、Au、Pd、Ir、V、Cr、Sc、Ce、Pr、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、Uは意図的に添加すると原料コストが高くなり、製造コストが高くなる傾向にある。したがって、上記成分の含有量はそれぞれ10%以下、5%以下、3%以下、1%以下、0.5%以下、0.3%以下、0.1%以下、500ppm以下、300ppm以下、100ppm以下、特に10ppm以下であることが好ましい。一方、AgやAuなどを含有させたガラスに光照射や熱処理を行うと、これらの成分の凝集体が形成され、それを起点に結晶化を促進することができる。また、Pdなどには種々の触媒作用があり、含有させることで結晶化ガラスに特異な機能を付与することが可能となる。こうした事情を鑑みて、結晶化促進やその他の機能の付与を目的とする場合、上記成分をそれぞれ0.1%以上、0.2%以上、特に0.5%以上含有させてもよい。
【0063】
ガラスの溶融性及び成形性を向上させる観点からは、SnO2、Fe2O3、V2O5、NiO、Cr2O3、MoO3の合量を制御することが好ましい。より詳細には、本発明の結晶化ガラスは、SnO2+Fe2O3+V2O5+NiO+Cr2O3+MoO3が20%以上、21%以上、23%以上、25%以上、特に30%以上であることが好ましい。上限は特に限定されないが、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、特に55%以下としてもよい。
【0064】
Li2O、Na2O、K2Oはガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性及び成形性を向上させる成分である。ここで、Kカチオンの含有量が増加すると、結晶化ガラスのヤング率と剛性率が低くなりやすく、加工時に結晶化ガラスが破損しやすくなる。一方、K2Oの原料はLi2Oと比べると安価である。また、K2OをLi2O及びNa2Oとともに含ませると、結晶化ガラスの残存ガラス内部におけるLiカチオン及びNaカチオンの拡散が起きにくくなり、結果的に結晶化ガラスの化学的耐久性が高まることがある。効率的かつ安価に製造を行い、意図せぬ破損や化学的耐久性の悪化を防ぐ観点から、K2O/(Li2O+Na2O+K2O)を制御することが好ましい。より詳細には、質量%比で、K2O/(Li2O+Na2O+K2O)が0.01~0.99、0.01~0.95、0.01~0.90、0.01~0.85、0.01~0.80、特に0.01~0.75であることが好ましい。
【0065】
ところで、結晶化ガラスを後述する土壌改質材として用いる場合、土壌に配合する際に残存ガラス部が傷付き、傷を起点に破損する可能性がある。一般に、ガラスネットワーク中に開空間(空隙、自由体積ともいう)が多く存在するガラスでは、開空間の構造変化でエネルギーが消費されるため傷が進展しにくい。ガラスネットワーク中にこのような開空間を設ける観点からは、結晶化ガラスがSiO2及び/又はP2O5を含有することが好ましい。一方、ガラスの硬度が高いほど傷が入りにくくなるため、ガラスネットワーク中の開空間を低減する観点からは、結晶化ガラスがAl2O3を含有することが好ましい。すなわち、本発明の結晶化ガラスは、傷が入りにくく、かつ残存ガラスに傷が入ったとしても破壊に至りにくくする観点から、(SiO2+P2O5)/(SiO2+Al2O3+P2O5)を制御することが好ましい。より詳細には、質量%比で、(SiO2+P2O5)/(SiO2+Al2O3+P2O5)が0.01~0.99、0.1~0.99、0.2~0.99、0.3~0.99、0.4~0.99、0.5~0.99、0.6~0.99、特に0.7~0.99であることが好ましい。
【0066】
ところで、原ガラスから結晶が析出する際に、原ガラス中の成分分布に偏りが生じることがある。以降、偏りが生じた状態を分相状態と表現する。この分相状態を制御することで効率的に結晶化を進行させやすくなる。分相状態は、例えば、主なガラス骨格であるSiO2が豊富な領域と、SiO2以外の成分が豊富な領域に分かれやすい。特にB2O3、P2O5、ZrO2、HfO2、TiO2、SnO2を含むガラスは分相が起きやすいため、効率的に結晶化を進行させる観点から、SiO2/(B2O3+P2O5+ZrO2+HfO2+TiO2+SnO2)を制御することが好ましい。より詳細には、質量%比で、SiO2/(B2O3+P2O5+ZrO2+HfO2+TiO2+SnO2)が0.1~10000、0.1~8000、0.1~6000、0.1~5000、0.2~5000、特に0.2~4000であることが好ましい。
【0067】
安定的にガラスを溶融及び成形する観点から、SiO2/(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)を制御することが好ましい。より詳細には、本発明の結晶化ガラスのSiO2/(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)は0.1~10000、0.1~8500、0.1~5000、0.1~3000、0.1~1000、0.5~1000、特に1~100であることが好ましい。
【0068】
結晶化ガラスの変質や構成成分の溶出を抑制する観点から、SiO2/(SnO2+Fe2O3+V2O5+NiO+Cr2O3+MoO3)を制御することが好ましい。より詳細には、本発明の結晶化ガラスは、SiO2/(SnO2+Fe2O3+V2O5+NiO+Cr2O3+MoO3)が0.01~10、0.1~8、0.3~5、特に0.5~3であることが好ましい。
【0069】
本発明の結晶化ガラスは、結晶化前の原ガラスのβ-OH値が0超~2/mmであることが好ましい。より詳細には、β-OH値の下限が、0超、0.01/mm以上、0.02/mm以上、0.03/mm以上、0.04/mm以上、0.05/mm以上、0.06/mm以上、0.07/mm以上、0.08/mm以上、0.09/mm以上、特に0.1/mm以上であることが好ましい。また、β-OH値の上限が、2/mm以下、1.5/mm以下、1.4/mm以下、特に1.3/mm以下であることが好ましい。β-OH値が上記範囲内にあると、ガラスの品質が低下しにくい。すなわち、β-OH値が小さすぎると、ガラスバッチを溶融する際に発生する水蒸気量が減少する。そのため、水蒸気の発生によるガラスバッチの撹拌作用が軽減されて初期反応が促進されづらくなり、製造負荷が高まりやすくなる。β-OH値が大きすぎると、Pt等の金属部材や耐火物部材とガラス融液の界面で泡が発生しやすくなり、結晶化ガラス内部に意図せぬ空隙が生じて強度が低下しやすくなる。また、結晶化ガラスの線熱膨張係数が高くなり、耐熱性や耐熱衝撃性が悪化する恐れがあるため、高温下での使用に適さなくなる。
【0070】
本発明の結晶化ガラスは、25℃~400℃のいずれかの一温度点以上で、ゼーベック係数の絶対値が0.000001V/K以上、0.000005V/K以上、0.00001V/K以上、0.00002V/K以上、0.00003V/K以上、0.00004V/K以上、0.00005V/K以上、特に0.00006V/K以上であることが好ましい。例えば、25℃、100℃、200℃又は400℃において、ゼーベック係数の絶対値が上記値を満たすことが好ましい。ゼーベック係数の絶対値が上記値を満たすことにより、熱電変換指数ZTを高めることができ、熱電変換効率を高めることができる。また、25℃~400℃における熱電変換が発現すると、海洋、河川、山岳地帯、砂漠地帯、住宅地、宇宙など、様々な場所で発電することが可能となる。さらに、自動車や電子機器等の排熱や体温等を利用した発電も可能となる。ゼーベック係数の絶対値の上限は特に限定されないが、例えば、0.0001V/K以下としてもよい。
【0071】
本発明の結晶化ガラスは、25℃~400℃のいずれかの一温度点以上で、熱電変換指数ZTが0.00001以上、0.00005以上、0.0001以上、特に0.0002以上であることが好ましい。例えば、400℃において、熱電変換指数ZTが上記値を満たすことが好ましい。熱電変換指数ZTが上記値を満たす結晶化ガラスは、熱電変換材料として好適である。熱電変換指数ZTの上限は特に限定されないが、例えば、0.01以下、特に0.001以下としてもよい。なお、熱電変換指数ZTは下記式によって示される。
【0072】
ZT=S2×σ/κ
ここで、Sはゼーベック係数[V/K]、σは導電率[S/m]、熱伝導率κは[W/m・K]を示す。
【0073】
本発明の結晶化ガラスは、キャリア移動度が0.0001cm2/Vs以上、0.001cm2/Vs以上、0.01cm2/Vs以上、特に0.1cm2/Vs以上であることが好ましい。キャリア移動度が上記値を満たす結晶化ガラスは、より高性能な半導体部材の作製に有用である。キャリア移動度の上限は特に限定されないが、例えば、1cm2/Vs以下としてもよい。
【0074】
本発明の結晶化ガラスは、30~300℃における熱膨張係数が、200×10-7/℃以下、180×10-7/℃以下、150×10-7/℃以下、120×10-7/℃以下、100×10-7/℃以下、特に98×10-7/℃以下であることが好ましい。上記熱膨張係数の下限は特に限定されないが、例えば50×10-7/℃以上としてもよい。また、30~380℃における熱膨張係数が、200×10-7/℃以下、180×10-7/℃以下、150×10-7/℃以下、120×10-7/℃以下、100×10-7/℃以下、特に98×10-7/℃以下であることが好ましい。上記熱膨張係数の下限は特に限定されないが、例えば50×10-7/℃以上としてもよい。
【0075】
本発明の結晶化ガラスは、結晶化前のガラスの熱膨張曲線の傾きが変化する温度をガラス転移温度Tgとし、軟化点の代替として取り扱う。ガラス転移温度Tgは、結晶化前のガラスの状態で、450℃以上、460℃以上、470℃以上、480℃以上、490℃以上、500℃以上、510℃以上、特に520℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度Tgが低すぎると、結晶化の際にガラスが流動しすぎてしまい、所望の形状に成形することが難しくなる。ガラス転移温度Tgの上限は、例えば700℃以下としてもよい。また、屈伏点Tfは、900℃以下、850℃以下、800℃以下、特に780℃以下であることが好ましい。結晶化ガラスの屈伏温度が900℃を超えると、再加熱による軟化が生じにくくなるため、曲げ加工などの軟化加工の精度が低下しやすくなる。屈伏点Tfの下限は、例えば500℃以上、520℃以上、特に520℃超としてもよい。
【0076】
本発明の結晶化ガラスは、結晶化後において、密度が2.4~4g/cm3、2.5~3.8g/cm3、2.6~3.6g/cm3、特に2.7~3.5g/cm3であることが好ましい。結晶化ガラスの密度が小さすぎると、土粒子に対する密度が低くなり過ぎて、土壌中へ均一に混合しづらくなる。一方、結晶化ガラスの密度が大きすぎると、単位面積当たりの重量が大きくなり、取り扱いが困難になる。また、結晶化ガラスの密度は、ガラスが十分に結晶化しているかどうかを判断する指標になる。具体的には、原ガラスと結晶化ガラスの密度差が大きいほど結晶化が進行しているといえる。
【0077】
本発明の結晶化ガラスは、結晶化度が1%以上、5%以上、10%以上、20%以上、特に25%以上であることが好ましい。結晶化度が小さすぎると、機械的強度が低下する傾向がある。結晶化度の上限は特に限定されないが、例えば80%以下、70%以下、特に60%以下としてもよい。ここで、「結晶化度」は、粉末法によりX線回折装置(リガク製RINT-2100)で評価することができる。例えば、非晶質の質量に相当するハローの面積と、結晶の質量に相当するピークの面積とをそれぞれ算出した後、[ピークの面積]×100/[ピークの面積+ハローの面積](%)の式により求めることができる。
【0078】
本発明の結晶化ガラスは、結晶粒径が1000nm以下、800nm以下、500nm以下、400nm以下、300nm以下、特に200nm以下であることが好ましい。これにより、結晶化ガラスの熱膨張係数を低くしやすくなる。なお、結晶粒径は、例えばX線回折装置(リガク製 全自動多目的水平型X線回折装置 Smart Lab)に搭載された解析ソフトを用いて評価することができる。
【0079】
本発明の結晶化ガラスは、ヤング率が60~120GPa、70~110GPa、75~110GPa、75~100GPa、特に75~95GPaであることが好ましい。ヤング率が低すぎても高すぎても、結晶化ガラスの機械的強度が低下しやすくなる。
【0080】
本発明の結晶化ガラスは、剛性率が25~40GPa、28~40GPa、特に30~40GPaであることが好ましい。剛性率が低すぎても高すぎても、結晶化ガラスの機械的強度が低下しやすくなる。
【0081】
本発明の結晶化ガラスは、ポアソン比が0.35以下、0.32以下、0.3以下、0.28以下、0.26以下、特に0.25以下であることが好ましい。ポアソン比が大きすぎると、結晶化ガラスの機械的強度が低下しやすくなる。ポアソン比の下限は特に限定されないが、例えば0.15以上としてもよい。
【0082】
本発明の結晶化ガラスは、電気抵抗値が100000Ω・m以下であり、10000Ω・m以下、5000Ω・m以下、1000Ω・m以下、500Ω・m以下、100Ω・m以下、50Ω・m以下、10Ω・m以下、5Ω・m以下、4Ω・m以下、特にΩ・m以下であることが好ましい。電気抵抗値が低いことで、重金属等を吸着・回収する重金属回収材及び土壌改質材に加え、本発明の結晶化ガラスを熱電変換部材、半導体用部材、通信用部材等の材料としても好適に用いることができる。
【0083】
本発明の結晶化ガラスは、キャリア種がイオン、電子、ホールのいずれか一種もしくはこれらの組み合わせであることが好ましい。特に、本発明の結晶化ガラスを熱電変換部材、半導体用部材、通信用部材、建築用部材、化学反応用部材、耐熱部材、宇宙用部材、医療用部材等の材料等として用いる場合には、電気伝導度が高くなりやすい電子、ホールのいずれか一種もしくはこれらの組み合わせであることが好ましい。
【0084】
本発明の結晶化ガラスは、ホール係数が0.0001cm3/C以上、0.0005cm3/C以上、0.001cm3/C以上、0.005cm3/C以上、0.01cm3/C以上、0.05cm3/C以上、0.1cm3/C以上、特に0.5cm3/C以上であることが好ましい。このようにすることで、本発明の結晶化ガラスを熱電変換部材、半導体用部材、通信用部材、建築用部材、化学反応用部材、耐熱部材、宇宙用部材、医療用部材等の材料等として用いやすくなる。
【0085】
本発明の結晶化ガラスは、キャリア濃度が1×1015/cm3、5×1015/cm3、1×1016/cm3、5×1016/cm3、1×1017/cm3、5×1017/cm3、特に1×1018/cm3以上であることが好ましく、シートキャリア濃度が1×1015/cm2、5×1015/cm2、1×1016/cm2、5×1016/cm2、特に1×1017/cm2以上であることが好ましい。このようにすることで、本発明の結晶化ガラスを熱電変換部材、半導体用部材、通信用部材、建築用部材、化学反応用部材、耐熱部材、宇宙用部材、医療用部材等の材料等として用いやすくなる。
【0086】
本発明の結晶化ガラスは、飽和磁化が0.5emμ/cm3以上、1emμ/cm3以上、5emμ/cm3以上、10emμ/cm3以上、15emμ/cm3以上、20emμ/cm3以上、25emμ/cm3以上、30emμ/cm3以上、35emμ/cm3以上、特に40emμ/cm3以上であることが好ましい。このようにすることで、土壌などに本発明の結晶化ガラスを分散させたのちに、本発明の結晶化ガラスを磁石等で回収しやすくなる。
【0087】
本発明の結晶化ガラスは、液相温度が1540℃以下、1535℃以下、1530℃以下、1525℃以下、1520℃以下、1515℃以下、1510℃以下、1505℃以下、1500℃以下、1495℃以下、1490℃以下、1485℃以下、1480℃以下、1475℃以下、1470℃以下、1465℃以下、1460℃以下、1455℃以下、1450℃以下、1445℃以下、1440℃以下、1435℃以下、1430℃以下、1425℃以下、1420℃以下、1415℃以下、特に1410℃以下であることが好ましい。液相温度が高すぎると、製造時に失透しやすくなる。また、液相温度が1480℃以下であれば、ロール法などでの製造が容易になり、1450℃以下であれば、鋳込み法などでの製造が容易になり、1410℃以下であれば、フュージョン法などでの製造が容易になるため好ましい。
【0088】
本発明の結晶化ガラスは、液相粘度(液相温度に対応する粘度の対数値)が1.70以上、1.75以上、1.80以上、1.85以上、1.90以上、1.95以上、2.00以上、2.05以上、2.10以上、2.15以上、2.20以上、2.25以上、2.30以上、2.35以上、2.40以上、2.45以上、2.50以上、2.55以上、2.60以上、2.65以上、2.70以上、2.75以上、2.80以上、2.85以上、2.90以上、2.95以上、3.00以上、3.05以上、3.10以上、3.15以上、3.20以上、3.25以上、3.30以上、3.35以上、3.40以上、3.45以上、3.50以上、3.55以上、3.60以上、3.65以上、特に3.70以上であることが好ましい。液相粘度が低すぎると、製造時に失透しやすくなる。一方、液相粘度が3.40以上であれば、ロール法などでの製造が容易になり、3.50以上であれば、鋳込み法などでの製造が容易になり、3.70以上であれば、フュージョン法などでの製造が容易になるため好ましい。
【0089】
<結晶化ガラスの製造方法>
本発明の結晶化ガラスを製造する際には、ガラス原料とFe2O3原料の混合物を溶融する溶融工程、溶融ガラスを所定の形状に成形して結晶化ガラスを得る結晶化工程、を備えることが好ましい。
【0090】
はじめに、ガラス原料とFe2O3原料の混合物を溶融する(溶融工程)。例えば、混合物を坩堝に入れ、電気炉にて1000~2000℃で3~5時間溶融することができる。なお、ガラス溶融は上記方法に限定されず、バーナー等を用いた火炎溶融、レーザー照射による溶融、プラズマによる溶融等を適宜用いることができる。
【0091】
ガラス原料としては、ガラスカレットを用いることが好ましい。ガラスカレットの種類は所望のガラス組成が得られる限り特に限定されないが、例えば、住宅用窓ガラス、車載用窓ガラス、ディスプレイ用ガラス、繊維用ガラス、建築用ガラス、光学ガラス、医薬・医療用ガラス、半導体部材料ガラス、太陽電池支持用ガラスのガラスカレットを原料として用いることが好ましい。上記ガラスはリサイクル率の向上が求められているため、上記ガラスからなるガラスカレットを用いることにより、ガラスのリサイクル・アップサイクルに特に貢献することができる。もっとも、ガラスカレットを用いずに、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等の粉末原料を調合してガラス原料としてもよい。また、粉末原料とガラスカレットの混合物をガラス原料としてもよい。Fe2O3原料としては、Fe2O3粉末原料を用いることが好ましい。
【0092】
次に、溶融ガラスを所定の形状に成形して結晶化ガラスを得る(結晶化工程)。このとき、溶融ガラスの冷却と同時に結晶化させてもよく、所定の形状に固化したガラス(原ガラス)を得た後、原ガラスを熱処理することにより結晶化させてもよい。また、ガラス融液を高温(1000℃以上)で保持して結晶化させてもよい。結晶化ガラス及び原ガラスの形状は特に限定されないが、例えば、板状、繊維状、フィルム状、ブロック状、粉末状、球状、中空状としてもよい。例えば、300~1000℃未満で熱処理を行った後、徐冷することにより結晶化ガラス試料を得てもよい。いずれの加熱処理も、ある特定の温度のみで行ってもよく、二水準以上の温度に保持し段階的に熱処理してもよく、温度勾配を与えながら加熱処理してもよい。また、音波や電磁波を印加、照射することで結晶化を促進してもよい。
【0093】
耐熱衝撃性を十分に得たい場合、冷却速度を制御して残存ガラス相の構造緩和を十分に行うことが好ましい。例えば、800℃から25℃までの平均冷却速度が、結晶化ガラスの最も表面から遠い肉厚内部の部分において、100000℃/h、50000℃/h、20000℃/h、10000℃/h、5000℃/h、2000℃/h、1000℃/h、500℃/h、300℃/h、100℃/h、50℃/h、20℃/h、15℃/h、10℃/h、5℃/h、3℃/h、2℃/h、1℃/h、0.5℃/h、特に0.1℃/hであることが好ましい。また、長期間にわたる寸法安定性を得たい場合は、さらに0.05℃/h以下、0.01℃/h以下、0.005℃/h以下、0.001℃/h以下、0.0005℃/h以下、特に0.0001℃/h以下であることが好ましい。風冷、水冷等による物理強化処理を行う場合を除き、結晶化ガラスの冷却速度は表面~表面から最も遠い肉厚内部の部分における冷却速度は近しいことが望ましい。表面から最も遠い肉厚内部の部分における冷却速度を表面の冷却速度で除した値は、0.0001~1、0.001~1、0.01~1、0.1~1、0.5~1、0.8~1、0.9~1、特に1であることが好ましい。1に近いことで、結晶化ガラスの全位置において、残留歪が生じにくく、長期の寸法安定性を得やすくなる。なお、表面の冷却速度は接触式測温や放射温度計で見積もることができ、内部の温度は高温状態の結晶化ガラスを冷却媒体中に置き、冷却媒体の熱量および熱量変化率を計測し、その数値データと結晶化ガラスと冷却媒体の比熱、熱伝導度等から見積もることができる。
【0094】
なお、本発明の結晶化ガラスは上述した製造方法に限定されない。例えば、混合物を浮遊させながらレーザー照射により溶融してもよい。例えば、バーナー加熱及び通電加熱を組み合わせた連続炉で溶融してもよい。例えば、アップドロー法、ダウンドロー法、スリット法、オーバーフロー(フュージョン)法又は手吹き法を用いてもよい。また、比重の大きい液体上にガラス融液を流し出し、ガラス組成物を板状に固化させてもよい。
【0095】
本発明の結晶化ガラスは、化学強化等を施してもよい。化学強化処理の処理条件はガラス組成、結晶化度、溶融塩の種類などを考慮して、処理時間や処理温度を適切に選択すればよい。例えば、結晶化後に化学強化しやすくなるように、残存ガラスに含まれうるNa2Oを多く含んだガラス組成を選択してもよく、結晶化度を意図的に下げてもよい。また、溶融塩はLi、Na、K等のアルカリ金属を単独で含んでもよいし、複数含んでもよい。さらに、通常の一段階強化だけでなく、多段階での化学強化を選択してもよい。
【0096】
<重金属回収材>
本発明の結晶化ガラスは、重金属回収材として好適に用いることができる。言い換えると、本発明の重金属回収材は、質量%で、Fe2O3 20~80%を含有し、磁性結晶を含む結晶化ガラスからなることを特徴とする。このようにFe2O3を大量に含有することにより、本発明の結晶化ガラスは重金属を吸着することができる。重金属は特に限定されないが、例えば、カドミウム、ヒ素、クロム、銅又は鉛の回収材として用いることができる。
【0097】
重金属回収材の形態は特に限定されないが、例えば、粉末状、粒状、小片状等であってもよい。特に重金属との接触面積を広くする観点から、粉末状であることが好ましい。重金属回収材の平均粒径(D50)は、例えば、10~200μmであることが好ましい。ここで、「平均粒径D50」とは、レーザー回折装置で測定した値を指し、レーザー回折法により測定した際の体積基準の累積粒度分布曲線において、その積算量が粒子の小さい方から累積して50%である粒子径を表す。
【0098】
重金属回収源に対する重金属回収材の添加量は、重量%で、0.1%以上、0.5%以上、1%以上、特に2%以上であることが好ましく、10%以下、8%以下、特に5%以下であることが好ましい。重金属回収材の添加量が少なすぎると、重金属回収効果が十分に得られなくなる。また、添加量が多すぎると回収コストが増大する。なお、重金属回収源としては、例えば、土壌や重金属含液が挙げられる。
【0099】
<土壌改質材>
本発明の結晶化ガラスは、土壌改質材として特に好適に用いることができる。言い換えると、本発明の土壌改質材は、質量%で、Fe2O3 20~80%を含有し、磁性結晶を含む結晶化ガラスからなることを特徴とする。上述したように、本発明の結晶化ガラスは磁性結晶を含むため、磁石に吸着する。また、Fe2O3を大量に含有するため、重金属を効果的に吸着することができる。そのため、本発明の結晶化ガラスを土壌改質材として土壌中に散布した場合、磁石を用いて吸着・回収することができる。具体的には、本発明の重金属の回収方法は、磁性結晶を含む結晶化ガラスに重金属を吸着させる吸着工程、重金属吸着後の結晶化ガラスを磁石で回収する回収工程、を備えることを特徴とする。特に、土壌中の重金属の回収に好適に用いることができる。
【0100】
なお、本発明の結晶化ガラスは重金属回収材及び土壌改質材の用途に限定されない。例えば、本発明の結晶化ガラスは水質改善用材、イオン交換用材、吸着材、肥料添加材としても好適に用いることができる。また、本発明の結晶化ガラスは、熱電変換部材、半導体用部材、通信用部材、建築用部材、化学反応用部材、耐熱部材、宇宙用部材、医療用部材等の材料としても好適に用いることができる。
【実施例0101】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0102】
表1、2には本発明の実施例(実施例1~9)を示している。
【0103】
【0104】
【0105】
試料は以下のように作製した。はじめに、Fe2O3の粉末原料とガラスカレットを混合し、ガラス原料とした。得られたガラス原料を1500℃で4時間溶融後、5mmの厚さにロール成形した。実施例1~5、7~9は、溶融ガラスをロール成形する際に結晶化させた。ロール成形後、徐冷炉を用いて400℃で3時間アニールし、100℃/hで室温まで徐冷することにより結晶化ガラス試料を得た。実施例6は、徐冷後の固化した原ガラスを900℃に加熱した電気炉に入れ、5時間保持して結晶化させた。結晶化後、400℃で3時間アニールを行い、100℃/hで室温まで徐冷することにより結晶化ガラス試料を得た。なお、表1中のSn+Fe+V+Ni+Cr+MoはSnO2+Fe2O3+V2O5+NiO+Cr2O3+MoO3を意味する。K/(Li+Na+K)はK2O/(Li2O+Na2O+K2O)を意味する。(Si+P)/(Si+Al+P)は(SiO2+P2O5)/(SiO2+Al2O3+P2O5)を意味する。Si/(B+P+Zr+Hf+Ti+Sn)はSiO2/(B2O3+P2O5+ZrO2+HfO2+TiO2+SnO2)を意味する。Si/(Mg+Ca+Sr+Ba+Zn)はSiO2/(MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO)を意味する。Si/(Sn+Fe+V+Ni+Cr+Mo)はSiO2/(SnO2+Fe2O3+V2O5+NiO+Cr2O3+MoO3)を意味する。
【0106】
試料組成は以下のように分析した。Pt、Rhの含有量はICP-MS装置(AGILEINT TECHNOLOGY製 Agilent8800)を用いて分析した。まず、作製したガラス試料を粉砕し純水で湿潤した後、過塩素酸、硝酸、硫酸、フッ酸を適宜添加して融解させた。その後、試料のPt、Rh含有量をICP-MSで測定した。予め準備しておいた濃度既知のPt、Rh溶液を用いて作成した検量線に基づき、各測定試料のPt、Rh含有量を求めた。測定モードはPt:Heガス/HMI(低モード)、Rh:HEHeガス/HMI(中モード)とし、質量数はPt:198、Rh:103とした。なお、作製試料のLi2Oの含有量は原子吸光分析装置(アナリティクイエナ製 ContrAA600)を用いて分析した。ガラス試料の融解の流れ、検量線を用いた点などは基本的にPt、Rh分析と同様である。その他成分に関しては、Pt、Rh、Li2Oと同様にICP-MSないし原子吸光分析で測定するか、予めICP-MS又は原子吸光分析装置を用いて調べた濃度既知のガラス試料を検量線用試料とし、XRF分析装置(RIGAKU製ZSX PrimusIV)で検量線を作成した後、その検量線に基づき、測定試料のXRF分析値から実際の各成分の含有量を求めた。XRF分析の際、管電圧や管電流、露光時間等は分析成分に応じて随時調整した。表1に各試料の分析値を示す。
【0107】
β-OH値は結晶化前のガラスを用いて測定可能である。本願の結晶化ガラスについては、結晶化するようにFe2O3を含有させるため、結晶化前のガラスのβ-OH値を求めることは容易でない。そこで、本発明においては、各実勢例のFe2O3を不含有させたガラスを同様の原料構成および製造工程で作製し、そのβ-OH値用いることで、実施例における結晶化前のβ-OH値として取り扱う。β-OH値は赤外分光光度計(Perkin Elmer社製 FT-IR Frontier)を用いてガラスの透過率を測定し、下記の式を用いて求めた。なお、スキャンスピードは100μm/min、サンプリングピッチは1cm-1、スキャン回数は1測定あたり10回とした。
【0108】
β-OH値=(1/X)log(T1/T2)
X:ガラス肉厚
T1:参照波数3846cm-1における透過率
T2:OH基吸収波数3600cm-1付近における最小透過率
【0109】
熱膨張係数は、20mm×3.8mmφに加工した結晶化ガラス試料を用いて、30~300℃及び30~380℃の温度域で測定した。測定にはNETZSCH製Dilatometerを用いた。また、結晶化ガラスのガラス転移点(Tg)と屈伏点(Tf)はそれぞれの熱膨張曲線において、熱膨張の傾きが変化する温度を算出することで測定した。
【0110】
密度はアルキメデス法で評価した。
【0111】
析出結晶はX線回折装置(スペクトリス(株)製 Aeris)を用いて評価した。スキャンモードは2θ/θ測定、スキャンタイプは連続スキャン、散乱スリット幅は9mm、発散スリット幅は1/4°、受光スリットは解放、測定範囲は5~60°、測定ステップは0.01°、スキャン速度は1.5°/分とし、同機種パッケージに搭載された解析ソフトを用いて主結晶及び結晶粒径の評価を行った。
【0112】
結晶化度は粉末法によりX線回折装置(リガク製RINT-2100)で評価した。具体的には、非晶質の質量に相当するハローの面積と、結晶の質量に相当するピークの面積とをそれぞれ算出した後、[ピークの面積]×100/[ピークの面積+ハローの面積](%)の式により求めた。
【0113】
ヤング率、剛性率及びポアソン比は、1200番アルミナ粉末を分散させた研磨液で表面を研磨した板状試料(40mm×20mm×20mm)について、自由共振式弾性率測定装置(日本テクノプラス製JE-RT3)を用いて室温環境下にて測定した。
【0114】
ゼーベック係数及び電気抵抗値はアドバンス理工(株)製の熱電特性評価装置ZEM-3を用いて、低圧ヘリウム雰囲気中で測定した。また、熱電変換指数ZTは下記式によって求めた。
【0115】
ZT=S2×σ/κ
ここで、Sはゼーベック係数[V/K]、σは導電率[S/m]、熱伝導率κは[W/m・K]を示す。
【0116】
キャリア種、ホール係数、キャリア濃度、シートキャリア濃度、キャリア移動度は株式会社東陽テクニカ製ResiTest8308を用いて、一キャリア式と仮定して室温で測定した。
【0117】
飽和磁化は東英工業(株)製の振動試料型磁力計VSMを用いて、室温で測定した。
【0118】
重金属等の吸着能を評価するため、カドミウム水溶液を用いて疑似汚染水溶液からのカドミウム吸着量を測定した。はじめに、実施例4の結晶化ガラス試料を粉砕し、53~150μmに篩分けして粉末試料を作製した。また、富士フイルム和光純薬(株)製のカドミウム標準液(Cd 1000)を純水で希釈し、pH7の10ppmカドミウム水溶液を調整した。10ppmカドミウム水溶液200mLに対して粉末試料を5g添加し、室温で3時間攪拌処理を行った。その後、カドミウム水溶液と粉末試料をロート及びろ紙で分離し、濾過したカドミウム水溶液中のカドミウムイオン濃度をICP-MS装置(AGILEINT TECHNOLOGY製 Agilent8800)を用いて分析した。試験後のカドミウムイオン濃度を試験前のカドミウムイオン濃度(10ppm)で除し、100を乗じることでカドミウム吸着量を評価した。
【0119】
表2から明らかなように、実施例1~9の結晶化ガラス試料は磁性結晶を含んでいた。より詳細には、磁性結晶としてマグネタイト(Fe3O4)、マグヘマイト(γ-Fe2O3)、(Fe2O3)10.6667[γ-Fe2O3]、Na0.75Ca0.25Fe(Si2O6)を含む結晶化ガラス試料が得られた。飽和磁化は0.7~54.9emu/cm2となった。また、実施例4において、疑似汚染水溶液からのCd吸着量は1%となった。
【0120】
実施例5において、熱電変換指数ZTは0.0002となった。
本発明の結晶化ガラスは、重金属等を吸着・回収する重金属回収材及び土壌改質材として好適に用いることができる。また、本発明の結晶化ガラスは、水質改善用材、イオン交換用材、吸着材、肥料添加材としても好適に用いることができる。さらに、本発明の結晶化ガラスは、熱電変換機能や電気伝導性を併せ持ちうることから、熱電変換部材、半導体用部材、通信用部材、建築用部材、化学反応用部材、耐熱部材、宇宙用部材、医療用部材等の材料として好適に用いることができる。さらに、本発明の結晶化ガラスはガラスカレットを用いて作製可能であるため、ガラス製品のリサイクル・アップサイクルに寄与し、持続可能な社会の実現に貢献することができる。