(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170047
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】難燃性装飾用積層体、及び該積層体を備える装飾物品
(51)【国際特許分類】
B32B 27/18 20060101AFI20241129BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20241129BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241129BHJP
C09J 7/25 20180101ALI20241129BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B32B27/18 B
B32B27/20 A
B32B27/00 E
C09J7/25
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086987
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】近藤 紳介
(72)【発明者】
【氏名】小野 雄也
(72)【発明者】
【氏名】杉山 直大
(72)【発明者】
【氏名】加藤 圭祐
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AA08B
4F100AK15B
4F100AK42A
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA08B
4F100CA13B
4F100CB00C
4F100HB00
4F100JC00B
4F100JL10B
4F100JL11C
4F100JL16A
4F100YY00B
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004FA08
4J040DF021
4J040JB09
(57)【要約】
【課題】環境面に配慮した難燃性能に優れる装飾用積層体、及び該積層体を備える装飾物品の提供。
【解決手段】本開示の一実施態様の難燃性装飾用積層体は、基材、着色層、及び接着層を含み、着色層が、バイオマス由来の体質顔料を含み、かつ、リン系難燃剤及びホウ素系難燃剤からなる群から選択される少なくとも一種を約15質量%以上含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、着色層、及び接着層を含み、
前記着色層が、バイオマス由来の体質顔料を含み、かつ、リン系難燃剤及びホウ素系難燃剤からなる群から選択される少なくとも一種を15質量%以上含む、
難燃性装飾用積層体。
【請求項2】
前記着色層の厚さが、20マイクロメートル以上85マイクロメートル以下であり、前記積層体の厚さが、200マイクロメートル以下であり、かつ、前記積層体の厚さに対する前記着色層の厚さの比率が、0.20~0.80である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記基材中の難燃剤の配合量が、10質量%以下である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記着色層が、塩化ビニル系樹脂を含む、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項5】
前記基材が、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項6】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂が、リサイクルポリエチレンテレフタレート樹脂を含む、請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
前記バイオマス由来の体質顔料が、バイオマス由来の炭酸カルシウムを含む、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項8】
下記の発熱性試験において、試験片として、石膏ボードと該石膏ボードの輻射熱の与えられる側に積層された前記積層体とを有する積層板を用い、前記試験片の20分間の試験時間での総発熱量が8.0MJ/m2以下である、請求項1又は2に記載の積層体:
発熱性試験:ISO 5660-1:2002 コーンカロリーメータ法に準拠し、試験片表面での輻射熱条件が50kW/m2で前記総発熱量を測定する発熱性試験。
【請求項9】
支持部材と、
前記支持部材に接着されている請求項1又は2に記載の難燃性装飾用積層体と、
を備える、装飾物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、難燃性装飾用積層体、及び該積層体を備える装飾物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、難燃性を有する化粧シートが開発されており、かかる化粧シートは内装品又は外装品など幅広い分野で使用されている。
【0003】
特許文献1(特開2015-182379号公報)には、基材シート、透明性樹脂層及び表面保護層が順に積層された化粧シートであって、(1)基材シートは、樹脂成分及び難燃剤を含有し、(2)難燃剤の含有量が、樹脂成分100質量部に対して10~100質量部であり、(3)基材シートの厚みが15~150μmであり、(4)透明性樹脂層の厚みが15~150μmであり、(5)基材シートの厚み、透明性樹脂層の厚み及び表面保護層の厚みの合計が40~200μmである、化粧シートが記載されている。
【0004】
特許文献2(特開2017-177527号公報)には、熱発泡性を有する基材フィルムと、基材フィルムの少なくとも一方の側に設けられた粘着剤層と、を備えた化粧シートであって、下記の発熱性試験において、試験片として、石膏ボードと該石膏ボードの輻射熱の与えられる側に積層された化粧シートとを有する積層体を用い、この試験片の20分間の試験時間での総発熱量が7.2MJ/m2以下である化粧シートが記載されている:
発熱性試験:ISO 5660-1:2002 コーンカロリーメータ法に準拠し、試験片表面での輻射熱条件が50kW/m2で総発熱量を測定する発熱性試験。
【0005】
なお、例えば、特許文献3(特開2021-044191号公報)の背景技術の項目に記載されるように、炭酸カルシウム等の無機材料が難燃剤としての性能を有し得ることは知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-182379号公報
【特許文献2】特開2017-177527号公報
【特許文献3】特開2021-044191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、環境問題等の背景から、装飾用積層体を構成する材料においても環境問題を考慮した材料が使用されてきている。特許文献3にも記載されるように、炭酸カルシウム等の無機材料が難燃剤としての性能も有しているため、装飾用積層体の着色層に配合する顔料として、バイオマス由来の体質顔料を使用することによって、環境問題を配慮した難燃性能を有する装飾用積層体が得られることを期待した。しかしながら、バイオマス由来の体質顔料を使用した場合、装飾用積層体において近年求められる難燃性能を発現させることは難しかった。
【0008】
本開示は、環境面に配慮した難燃性能に優れる装飾用積層体、及び該積層体を備える装飾物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一実施態様によれば、基材、着色層、及び接着層を含み、着色層が、バイオマス由来の体質顔料を含み、かつ、リン系難燃剤及びホウ素系難燃剤からなる群から選択される少なくとも一種を約15質量%以上含む、難燃性装飾用積層体が提供される。
【0010】
本開示の別の実施態様によれば、支持部材と、この支持部材に接着されている上記の装飾用積層体とを備える、装飾物品が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、環境面に配慮した難燃性能に優れる装飾用積層体、及び該積層体を備える装飾物品を提供することができる。
【0012】
上述の記載は、本発明の全ての実施態様及び本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の代表的な実施態様を例示する目的でより詳細に説明するが、本開示はこれらの実施態様に限定されない。
【0014】
本開示において、例えば、「着色層が接着層の上に配置される」における「上」とは、着色層が接着層の上側に直接的に配置されること、又は、着色層が他の層を介して接着層の上側に間接的に配置されることを意図している。
【0015】
本開示において、例えば、「着色層が基材の下に配置される」における「下」とは、着色層が基材の下側に直接的に配置されること、又は、着色層が他の層を介して基材の下側に間接的に配置されることを意図している。
【0016】
本開示において「透明」とは、JIS K 7375に準拠して測定される可視光領域(波長400nm~700nm)の平均透過率が、約80%以上をいい、望ましくは約85%以上、又は約90%以上であってよい。平均透過率の上限値については特に制限はないが、例えば、約100%未満、約99%以下、又は約98%以下とすることができる。
【0017】
本開示において「半透明」とは、JIS K 7375に準拠して測定される可視光領域(波長400nm~700nm)の平均透過率が、約80%未満をいい、望ましくは約75%以下であってよく、下地を完全に隠蔽しないことを意図する。
【0018】
本開示において「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0019】
本開示において「フィルム」には、「シート」と呼ばれる部材も包含され得る。
【0020】
以下、本開示の難燃性装飾用積層体の代表的な実施態様を例示する目的で、各構成要素の詳細について説明する。
【0021】
本開示の難燃性装飾用積層体(単に「積層体」又は「装飾用積層体」と称する場合がある。)は、基材、着色層、及び接着層を含んでおり、着色層が、バイオマス由来の体質顔料を含み、かつ、リン系難燃剤及びホウ素系難燃剤からなる群から選択される少なくとも一種を約15質量%以上含んでいる。
【0022】
本発明者は、着色層に対し、バイオマス由来の体質顔料とともに、特定の難燃剤、すなわち、リン系難燃剤及びホウ素系難燃剤からなる群から選択される少なくとも一種を約15質量%以上配合すると、良好な難燃性能を有し、かつ、環境面に配慮した装飾用積層体が得られることを見出した。
【0023】
積層体の難燃性能は、例えば、ISO 5660-1:2002 コーンカロリーメータ法に準拠し、試験片表面での輻射熱条件が50kW/m2で総発熱量(単に「THR」と称する場合がある。)を測定する発熱性試験で評価することができる。ここで、試験に使用される試験片としては、石膏ボードと該石膏ボードの輻射熱の与えられる側に積層された装飾用積層体とを有する積層板を用いる。いくつかの実施態様において、本開示の難燃性装飾用積層体は、かかる試験片の20分間の試験時間での総発熱量を、約8.0MJ/m2以下、約8.0MJ/m2未満、約7.9MJ/m2以下、約7.8MJ/m2以下、約7.7MJ/m2以下、約7.6MJ/m2以下、又は約7.5MJ/m2以下にすることができる。かかる総発熱量の下限値としては特に制限はなく、例えば、約4.0MJ/m2以上、約4.5MJ/m2以上、約5.0MJ/m2以上、約5.5MJ/m2以上、又は約6.0MJ/m2以上にすることができる。
【0024】
いくつかの実施態様において、本開示の難燃性装飾用積層体は、後述する発熱性試験で求められる最大発熱速度(単に「PHRR」と称する場合がある。)を、約240kW/m2以下、約220kW/m2以下、約200kW/m2以下、約190kW/m2以下、又は約180kW/m2以下にすることができる。かかる最大発熱速度の下限値としては特に制限はなく、例えば、約100kW/m2以上、約110kW/m2以上、又は約120kW/m2以上にすることができる。
【0025】
いくつかの実施態様において、本開示の難燃性装飾用積層体は、後述する発熱性試験で求められる発熱速度に関し、200kW/m2を超える時間を、約10.0秒未満、約9.0秒以下、約7.0秒以下、約5.0秒以下、約3.0秒以下、又は約1.0秒以下にすることができる。かかる時間の下限値としては特に制限はなく、例えば、約0秒以上又は約0秒超とすることができる。
【0026】
本開示の難燃性装飾用積層体の厚さとしては、例えば、難燃性の観点から、約200マイクロメートル以下、約190マイクロメートル以下、約180マイクロメートル以下、約175マイクロメートル以下、又は約170マイクロメートル以下であることが好ましい。かかる厚さの下限値としては特に制限はなく、例えば、約100マイクロメートル以上、約110マイクロメートル以上、又は約120マイクロメートル以上とすることができる。ここで、積層体の厚さとは、被着体に適用した状態における積層体の厚さを意図し、例えば、積層体に剥離ライナーが適用されている場合には、そのライナーを除いた積層体の厚さを意図する。
【0027】
本開示の基材は、装飾用積層体を構成する、着色層、接着層、及び任意の層(例えば表面層)を支持する部材として用いることができる。
【0028】
基材としては特に制限はなく、例えば、ポリエステル樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂又はポリブチレンテレフタレート樹脂)、塩化ビニル系樹脂、ウレタン結合を有する樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリ乳酸樹脂、及びフッ素樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含む基材を使用することができる。ここで、本開示において「ウレタン結合を有する樹脂」とは、ウレタン樹脂の他、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーから選択される少なくとも一種を用いて調製した樹脂なども包含することができ、ウレタン樹脂には、(メタ)アクリルウレタン樹脂なども包含することができる。
【0029】
なかでも、ポリエステル樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレート樹脂(単に「PET樹脂」と称する場合がある。)がより好ましい。かかる樹脂を含む基材は、装飾用積層体の強度(例えば、しなやかで破れにくい性質)等の性能向上に貢献することができる。その一方で、PET樹脂、なかでも後述するリサイクルPET樹脂は、従来の装飾用積層体を構成する基材の材料として使用されていた塩化ビニル樹脂に比べて燃えやすい樹脂である。そのため、PET樹脂を含む基材を備える装飾用積層体に対して難燃性も付与することは一般的に困難である。本開示の装飾用積層体は、バイオマス由来の体質顔料を含み、かつ、リン系難燃剤及びホウ素系難燃剤からなる群から選択される少なくとも一種を約15質量%以上含む着色層を備えることによって、基材の材料としてPET樹脂を採用した場合であっても、優れた難燃性能を発現させることができる。
【0030】
本開示の基材は、PET樹脂を、基材の樹脂成分の全量に対し、約50質量%以上、約70質量%以上、又は約90質量%以上含むことができ、或いは、基材の樹脂成分の全てをPET樹脂とすることもできる。
【0031】
基材は、その表面に対し、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0032】
基材の厚さとしては特に制限はなく、例えば、装飾用積層体の強度及び取り扱い性等の観点から、約10マイクロメートル以上、約20マイクロメートル以上、約30マイクロメートル以上、又は約40マイクロメートル以上であることが好ましい。かかる厚さの上限値としては特に制限はなく、例えば、難燃性の観点から、約180マイクロメートル以下、約150マイクロメートル以下、約100マイクロメートル以下、約80マイクロメートル以下、又は約60マイクロメートル以下であることが好ましい。本開示の難燃性装飾用積層体における各層の厚さは、例えば、基材における任意の少なくとも5箇所の厚さをシックネスゲージ(TECLOCK製PC-465N)により測定し、その平均値として定義することができる。積層体を構成する層が薄く、シックネスゲージでの測定が困難な場合には、走査型電子顕微鏡を使用して積層構成の厚さ方向断面を測定し、積層構成のうちの目的とする層、例えば、表面層における任意の少なくとも5箇所の厚さの平均値として定義することもできる。
【0033】
いくつかの実施態様において、本開示の基材は、PET樹脂として、リサイクルPET樹脂を含む。リサイクルPET樹脂を含む本開示の基材は、環境面に配慮した装飾用積層体の提供に対してより貢献することができる。
【0034】
本開示の基材は、リサイクルPET樹脂を、基材中のPET樹脂成分の全量に対し、約10質量%以上、約30質量%以上、約50質量%以上、約70質量%以上、又は約90質量%以上含むことができ、或いは、PET樹脂成分の全てをリサイクルPET樹脂とすることもできる。リサイクルPET樹脂中に含まれるリサイクルされたPET樹脂成分の割合としては、リサイクルPET樹脂を構成するPET樹脂成分の全量に対し、約50質量%以上、約70質量%以上、又は約90質量%以上、約100質量%以下又は約100質量%未満とすることができる。ここで、「リサイクルPET樹脂」とは、リサイクルされたPET樹脂成分を含むPET樹脂を意図し、メカニカルリサイクルPET樹脂又はケミカルリサイクルPET樹脂のいずれであってもよい。「メカニカルリサイクルPET樹脂」とは、例えば、使用済みの成形品及び廃材などからの回収品を、分別、粉砕、洗浄、溶融状態でのろ過、有機溶媒による抽出、減圧下での熱処理などを経て得られるようなPET樹脂を意図し、「ケミカルリサイクルPET」とは、さらに解重合などを行って再生したようなPET樹脂を意図する。
【0035】
リサイクルPET樹脂は、例えば、示差走査熱量計(DSC)を用いることによって、バージンのPET樹脂との相違を評価することができる。リサイクルPET樹脂は、バージンのPET樹脂に比べて、不純物を含んでいたり、或いは、回収元の成形品の種類等に応じて共重合成分(例えばイソフタル酸)を含んでいたりすることから、一般的に、バージンのPET樹脂に比して融点が低い。リサイクルPET樹脂は、例えば、DSCによる2回目の昇温曲線から算出される融点(ピークトップ)が約250±約5℃程度であるのに対し、同様にしてバージンのPET樹脂から算出される融点に比して約2~約3℃低い値を示す。
【0036】
リサイクルPET樹脂としては、PETボトルの再生原料を使用することができる。かかる再生原料は、通常の重合法及び固相重合法で製造及び成型されたポリエステルであり、好ましくはポリエチレンテレフタレートを主体とするものであり、他のポリエステル成分、共重合成分を含んでいてもよい。再生原料は、触媒としてアンチモン、ゲルマニウム、チタンなどの金属化合物、安定剤としてのリン化合物などを含んでいてもよい。通常PETボトル用のポリエステルには触媒としてゲルマニウムが用いられることが多いため、PETボトル再生原料を使用して調製した基材は、基材の全量に対してゲルマニウムを約1ppm以上又は約3ppm以上、約100ppm以下又は約50ppm以下含み得る。したがって、基材中のゲルマニウム量を調べることによって、リサイクルPET樹脂の使用を評価することができる。ここで、基材中のゲルマニウムの含有量は以下の分析法により測定することができる:
(ゲルマニウムの分析法)
試料2gを白金ルツボにて灰化分解し、10%炭酸水素ナトリウム溶液5mlを加えて蒸発させ、さらに塩酸を加えて蒸発乾固させる。電気炉にて400℃から950℃まで昇温し、30分間放置し、融解させる。水10mlに加温溶解させ、ゲルマニウム蒸留装置に移す(水洗7.5ml×2)。塩酸35mlを加え、蒸留して留出液25mlを採取する。その中から適当量を分取し、最終濃度1mol/L~1.5mol/Lとなるように塩酸を加える。0.25%ポリビニルアルコール溶液2.5ml、1%セチルトリメチルアンモニウムクロライド溶液2.5ml及び0.04%フェニルフルオロン(2,3,7-トリヒドロキシ-9-フェニル-6-フルオロン)溶液5mlを添加し、水にて25mlとする。ゲルマニウムとの黄色の錯体を形成させ、505nmの吸光度を吸光光度計(島津製作所製、UV-150-02)で測定して比色定量する。
【0037】
PETボトルの再生原料は、典型的には、再生原料の製造段階において、水酸化ナトリウム溶液及び/又は水酸化カリウム溶液を用いてアルカリ洗浄が実施され得る。その結果、再生原料には、ナトリウム及び/又はカリウムが、0ppm超、約3ppm以上、又は約5ppm以上、約150ppm以下、約120ppm以下、又は約80ppm以下含まれ得る。したがって、基材中のナトリウム量及び/又はカリウム量を調べることによっても、リサイクルPET樹脂の使用を評価することができる。ここで、基材中のナトリウム量及び/又はカリウム量は以下の分析法により測定することができる:
(ナトリウム及びカリウムの分析法)
基材を平滑な金属板上で約5mmの厚みで円板状に成型し、平滑面を蛍光X線分析装置で測定する。検量線は予め発光プラズマ分析法で濃度を確認した標準サンプルを使用して作成する。
【0038】
本開示の基材は、本開示の効果に悪影響を及ぼさない範囲において、任意成分として、充填剤、補強材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、光安定剤、熱安定剤、分散剤、可塑剤、フロー向上剤、界面活性剤、レベリング剤、シランカップリング剤、触媒、顔料、染料などを含むことができる。任意成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。任意成分の個々の及び合計の配合量は、基材に必要な特性を損なわない範囲で決定することができる。
【0039】
いくつかの実施態様において、本開示の基材は、基材中の難燃剤の配合量が、約10質量%以下、約5質量%以下、約3質量%以下、約1質量%以下、又は約0.5質量%以下であり、或いは、本開示の基材は難燃剤を含まない。このような割合で難燃剤を含む又は難燃剤を含まない基材は透明性に優れるため、かかる基材の上又は下に配置される着色層等による装飾性能の低下を低減又は抑制することができる。本開示の装飾用積層体は、バイオマス由来の体質顔料を含み、かつ、リン系難燃剤及びホウ素系難燃剤からなる群から選択される少なくとも一種を約15質量%以上含む着色層を備えるため、基材中の難燃剤の配合量が低量であったり、或いは基材中に難燃剤が含まれていなかったりしても、優れた難燃性能を発現させることができる。
【0040】
本開示の着色層は、バイオマス由来の体質顔料を含み、かつ、リン系難燃剤及びホウ素系難燃剤からなる群から選択される少なくとも一種を約15質量%以上含んでいる。着色層は、着色された層であればよく、透明又は半透明であってもよく、或いは、不透明、すなわち隠蔽性能を有していてもよい。着色層は、例えば、白、黄等の淡色、又は赤、茶、緑、青、グレー、黒などの濃色を呈する層とすることができる。着色層は、装飾用積層体に対して部分的に適用されてもよいが、難燃性の観点から、装飾用積層体の全面に適用されていることが好ましい。着色層は単層構成であってもよく、或いは積層構成であってもよい。着色層は、上述した基材の片面又は両面に直接的又は間接的に適用され得る。
【0041】
着色層は、上述した基材の片面又は両面に直接的又は間接的に適用され得る。基材への適用方法としては特に制限はなく、例えば、ナイフコート、バーコート、ブレードコート、ドクターコート、ロールコート、及びキャストコートなどの公知の方法を使用することができる。
【0042】
本開示において「バイオマス由来の体質顔料」とは、動植物から生まれた再生可能な資源を意図するバイオマスを原料に製造された体質顔料を意味する。かかる体質顔料は、その原料の全てがバイオマス由来の原料を用いて調製した体質顔料であってもよく、或いは、その原料の少なくとも一部にバイオマス由来の原料を用いて調製した体質顔料であってもよい。すなわち、体質顔料の原料の少なくとも一部にバイオマス由来の原料を用いる場合、体質顔料は、体質顔料を構成する成分の全量に対し、バイオマス成分が、約50質量%以上、約70質量%以上、又は約90質量%以上含まれ、約100質量%未満、又は約95質量%以下含まれ得る。バイオマス由来の体質顔料は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0043】
原料となるバイオマスとしては特に制限はなく、例えば、ホタテ、カキ等の貝殻、卵の殻、木質材料などを採用することができる。難燃性の観点から、バイオマス由来の体質顔料は、バイオマス由来の無機系体質顔料(例えば、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素、酸化カルシウム)を含むことが好ましく、バイオマス由来の炭酸カルシウムを含むことがより好ましい。かかる体質顔料としては、例えば、ホタテ末、牡蠣殻ナノパウダー、及びパールパウダーといった製品が市販されている。いくつかの実施形態において、バイオマス由来の無機系体質顔料は、加工性の観点から、未焼成の無機系体質顔料が好ましく、未焼成の炭酸カルシウムがより好ましい。ここで「未焼成」とは、バイオマス顔料となった時点で焼成を実施していないことを意味する。未焼成の体質顔料は、焼成工程を経ないため、コスト及び環境負荷の軽減に対しても貢献することができる。
【0044】
バイオマス由来の無機系体質顔料(例えば炭酸カルシウム)は、バイオマス由来の体質顔料の全量に対し、約50質量%以上、約70質量%以上、又は約90質量%以上とすることができ、約100質量%以下又は約100質量%未満とすることができる。
【0045】
いくつかの実施形態において、バイオマス由来の体質顔料の平均粒径D50としては、約100マイクロメートル以下とすることができ、装飾性の観点から、好ましくは約60マイクロメートル以下とすることができ、より好ましくは約40マイクロメートル以下とすることができる。ここで、体質顔料の平均粒径D50は、JIS Z 8825:2013に準拠した測定条件により、マイクロトラック・ベル社製のレーザー回折散乱式粒子径分布測定装置「マイクロトラックMT3300EX IIシリーズ」を使用して計測することができる。
【0046】
バイオマス由来の体質顔料は、バージンの体質顔料に比べ不純物が多いため、例えば、熱分析装置(TG8120、株式会社リガク製(日本国東京都昭島市))を用いた熱重量(TG)測定により、バージンの体質顔料との相違を評価することができる。TG測定は、アルミパンにサンプルを約10mg入れて行い、昇温速度20℃/分、最高到達温度500℃の条件で実施することができる。バージンの体質顔料では質量減少は微量であるが、バイオマス由来の体質顔料は数%程度の質量減少が観察される。また、バイオマス由来の体質顔料は、バージンの体質顔料に比べ不純物が多いため、微量元素が多く検出される。したがって、バイオマス由来の体質顔料とバージンの体質顔料の相違は、ICP-MS(質量分析法によるイオン化放射線分析法)を使った微量元素の種類及び又は検出量比較により評価することもできる。この他、貝殻由来の体質顔料は、工業生産品のバージンの体質顔料(例えば、炭酸ガス法により生成された炭酸カルシウム)に比べ、マグネシウム、マンガン、リン、及びナトリウムからなる群から選択される少なくとも一種の元素量が多く観察されることもある。
【0047】
バイオマス由来の体質顔料の配合量としては、例えば、難燃性及び着色性等の観点から、着色層の全量に対し、約5.0質量%以上、約10質量%以上、約15質量%以上、約17質量%以上、又は約20質量%以上、約40質量%以下、約35質量%以下、約30質量%以下、又は約28質量%以下であることが好ましい。
【0048】
本開示の着色層は、リン系難燃剤及びホウ素系難燃剤からなる群から選択される少なくとも一種を、約15質量%以上、約17質量%以上、又は約20質量%以上含むことができる。かかる量の上限値としては、例えば、約50質量%以下、約45質量%以下、約40質量%以下、又は約35質量%以下とすることができる。かかる配合量は、リン系難燃剤又はホウ素系難燃剤のいずれかを単独で使用する場合には、単独の量を意図し、リン系難燃剤とホウ素系難燃剤とを併用する場合には、これらの合計量を意図する。リン系難燃剤とホウ素系難燃剤とを併用する場合、これらの配合割合は、例えば、90:10、80:20、70:30、60:40、50:50、40:60、30:70、20:80、10:90の質量比から、その範囲を設定することができる。
【0049】
リン系難燃剤としては、例えば、トリアリールホスフェート等に代表されるモノマー型リン酸エステル系難燃剤、レゾルシノールジフェニルホスフェート、ビスフェノールAジフェニルホスフェート等に代表される縮合型リン酸エステル系難燃剤、ホスホネート型難燃剤、ホスホン酸金属塩系難燃剤、ホスフィネート系難燃剤、ホスフィン酸金属塩系難燃剤、赤リン、及びポリリン酸アンモニウムを挙げることができる。ここで、ポリリン酸アンモニウムとして、表面被覆されたポリリン酸アンモニウム(例えばメラミン被覆ポリリン酸アンモニウム)なども使用することができる。この他、ポリリン酸メラミン、ホスファゼン化合物等に代用されるリン窒素系難燃剤を挙げることができる。なかでも、難燃性の観点から、ホスフィン酸金属塩、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、及びメラミン被覆ポリリン酸アンモニウムが好ましく、ホスフィン酸金属塩及びポリリン酸メラミンがより好ましく、耐水性の観点からポリリン酸メラミンが特に好ましい。リン系難燃剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる
【0050】
ホウ素系難燃剤は、ホウ素原子を含有する成分を含む難燃剤である。ホウ素系難燃剤としては、例えば、ホウ酸類、ホウ酸塩類、ホウ素系非金属化合物、ホウ酸塩鉱物、及び有機ホウ素系化合物を挙げることができる。ホウ酸類としては、例えば、ホウ酸、オルトホウ酸、及びメタホウ酸を挙げることができる。ホウ酸塩類としては、例えば、上述した各ホウ酸類と金属イオン又はアンモニウムイオンとの塩を挙げることができる。このうち、金属イオンを構成する金属種としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、及び亜鉛を挙げることができる。ホウ素系非金属化合物としては、例えば、酸化ホウ素、及び窒化ホウ素を挙げることができる。ホウ酸塩鉱物としては、例えば、ホウ砂、コレマナイト、及びウレキサイトを挙げることができる。有機ホウ素系化合物としては、例えば、ホウ酸エステル、ボロン酸塩、及びボロキシンを挙げることができる。なかでも、難燃性の観点から、ホウ酸塩類が好ましく、ホウ酸の金属塩がより好ましく、ホウ酸亜鉛、及びホウ酸アルカリ土類金属塩が特に好ましい。ホウ素系難燃剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる
【0051】
本開示の着色層は、様々な樹脂を一種以上含み得る。かかる樹脂として、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び放射線硬化性樹脂を挙げることができる。具体的には、フッ素系樹脂、PET、PENなどのポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ABS樹脂、アクリロニトリル-スチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル系樹脂、及びウレタン結合を有する樹脂を挙げることができる。なかでも、難燃性の観点から、塩化ビニル系樹脂が好ましい。ここで、本開示において、「塩化ビニル系樹脂」とは、塩化ビニルの単独重合体の他に、塩化ビニル単量体とこれと共重合可能な他の単量体との共重合体を含み得る。塩化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体としては、従来一般的に用いられているものを特に限定することなく使用することができる。例えば、酢酸ビニル等のビニルエステル類、エチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類、エチレン、プロピレン等のα-オレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸等の一価不飽和酸、及びこれらの一価不飽和酸のメチルエステル等のアルキルエステル類、マレイン酸、イタコン酸等の二価不飽和酸、これらの二価不飽和酸のメチルエステル等のアルキルエステル類、塩化ビニリデン等のビニリデン化合物、アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類などの一種又は二種以上の混合物を挙げることができる。これらの単量体の使用割合として特に制限はなく、例えば、塩化ビニル単量体に対し、約30質量%以下又は約20質量%以下の割合で使用することができる。
【0052】
本開示の着色層は、本開示の効果に悪影響を及ぼさない範囲において、任意成分として、充填剤、補強材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、上記以外の他の難燃剤、光安定剤、熱安定剤、分散剤、可塑剤、フロー向上剤、界面活性剤、レベリング剤、シランカップリング剤、触媒、上記以外の他の顔料、染料などを含むことができる。任意成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。任意成分の個々の及び合計の配合量は、着色層に必要な特性を損なわない範囲で決定することができる。
【0053】
本開示の難燃性装飾用積層体は、バイオマス由来の体質顔料を含み、かつ、リン系難燃剤及びホウ素系難燃剤からなる群から選択される少なくとも一種を約15質量%以上含む着色層を備えるため、優れた難燃性能を発現させることができる。その結果、着色層は、他の難燃剤は配合しなくてもよく、或いは、他の難燃剤を配合する場合には、かかる難燃剤の配合量を、着色層の全量に対し、約15質量%未満、約10質量%以下、約5質量%以下、約3質量%以下、約1質量%以下、又は約0.5質量%以下とすることができる。
【0054】
着色層の厚さとしては、例えば、約15マイクロメートル以上、約20マイクロメートル以上、約23マイクロメートル以上、又は約25マイクロメートル以上とすることができ、約90マイクロメートル以下、約85マイクロメートル以下、約80マイクロメートル以下、約75マイクロメートル以下、約70マイクロメートル以下、約65マイクロメートル以下、又は約60マイクロメートル以下とすることができる。難燃性の観点から、着色層の厚さは、約20マイクロメートル以上、約85マイクロメートル以下であることが好ましい。
【0055】
いくつかの実施態様において、本開示の着色層は、装飾用積層体の厚さに対する着色層の厚さの比率が、約0.20~約0.80の範囲を満足する。難燃性能を奏する本開示の着色層がかかる比率を満足すると、装飾用積層体の難燃性能をより向上させることができる。かかる比率は、約0.20以上、約0.21以上、又は約0.22以上とすることができ、約0.80以下、約0.70以下、約0.60以下、又は約0.50以下とすることができる。
【0056】
本開示の難燃性装飾用積層体は、接着層を含んでいる。接着層は、典型的には、被着体、例えば、後述する物品の支持部材に適用される層である。接着層は、透明又は半透明であってもよく、或いは、不透明、すなわち隠蔽性能を有していてもよい。接着層は、装飾用積層体に対して部分的に又は全面に適用されてもよい。接着層は単層構成であってもよく、或いは積層構成であってもよい。
【0057】
接着層は、上述した基材の片面、すなわち被着体に適用される側の面(視認される側の面に対して反対側の面)に直接的又は間接的に適用され得る。接着層の適用方法としては特に制限はなく、例えば、ナイフコート、バーコート、ブレードコート、ドクターコート、ロールコート、キャストコートなどの公知の方法を使用することができる。
【0058】
接着層の材料としては特に制限はなく、例えば、一般に使用される、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、ウレタン結合を有する樹脂(ポリウレタン系ポリマー)、ポリエステル系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、ゴム系材料(例えば、天然ゴム、合成ゴム)、シリコーン系ポリマーなどを用いた、溶剤型、エマルジョン型、感圧型、感熱型、熱硬化型又は紫外線硬化型の接着剤を使用することができる。かかる材料のなかでも、被着体への貼り合わせの容易性等の観点から、感圧型接着剤及び感熱型接着剤が好ましく、(メタ)アクリル系ポリマーを用いて調製した感圧型接着剤及び感熱型接着剤がより好ましい。ここで、本開示において「感圧型接着剤」とは、室温(例えば約20℃)で恒久的に粘着性であり、軽い圧力で様々な表面に接着し、相変化(液体から固体へ)を呈さない接着剤を指す。本開示において「感熱型接着剤」とは、加熱により接着性(タック性)を発現し得る接着剤を指す。
【0059】
本開示の接着層は、本開示の効果に悪影響を及ぼさない範囲において、任意成分として、例えば、粘着付与樹脂、架橋剤、導電性フィラー、熱伝導性フィラー等のフィラー(充填剤)、シランカップリング剤、可塑剤、増粘剤、顔料、染料、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定化剤等を配合することができる。任意成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。任意成分の個々の及び合計の配合量は、接着層に必要な特性を損なわない範囲で決定することができる。
【0060】
いくつかの実施態様において、本開示の接着層は、接着層中の難燃剤の配合量が、約10質量%以下、約5質量%以下、約3質量%以下、約1質量%以下、又は約0.5質量%以下であり、或いは、本開示の接着層は難燃剤を含まない。本開示の装飾用積層体は、バイオマス由来の体質顔料を含み、かつ、リン系難燃剤及びホウ素系難燃剤からなる群から選択される少なくとも一種を約15質量%以上含む着色層を備えるため、接着層中の難燃剤の配合量が低量であったり、或いは基材中に難燃剤が含まれていなかったりしても、優れた難燃性能を発現させることができる。
【0061】
本開示の接着層の厚さとしては、例えば、約5マイクロメートル以上、約10マイクロメートル以上、又は約20マイクロメートル以上とすることができ、約100マイクロメートル以下、約80マイクロメートル以下、又は約50マイクロメートル以下とすることができる。
【0062】
いくつかの実施態様では、本開示の難燃性装飾用積層体は、上述した層以外に、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲において、任意に追加の層を含む。かかる追加の層としては、例えば、表面層、装飾層(例えばパターン層、レリーフ層)、光輝層、接合層、及び剥離ライナーからなる群から選択される少なくとも一種を挙げることができる。追加の層は、積層体の全面に又は一部に適用することができる。追加の層は、その表面にエンボスパターンなどの3次元形状を有してもよい。
【0063】
本開示の難燃性装飾用積層体は、バイオマス由来の体質顔料を含み、かつ、リン系難燃剤及びホウ素系難燃剤からなる群から選択される少なくとも一種を約15質量%以上含む着色層を備えるため、優れた難燃性能を発現させることができる。その結果、追加の層は、他の難燃剤は配合しなくてもよく、或いは、他の難燃剤を配合する場合には、かかる難燃剤の配合量を、追加の層の各々の全量に対し、約15質量%未満、約10質量%以下、約5質量%以下、約3質量%以下、約1質量%以下、又は約0.5質量%以下とすることができる。なかでも、表面層は難燃剤を高濃度に含むと、耐擦傷性等の性能が低下するおそれがある。本開示の表面層は、難燃剤の配合量を低量にしたり、或いは難燃剤を配合しなかったりすることが可能であるため、装飾性積層体を適用した装飾物品の使用中の耐擦傷性等の性能の低下を低減又は抑制することができる。
【0064】
表面層の材料としては特に制限はなく、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)及び(メタ)アクリル共重合体を含む(メタ)アクリル樹脂、ウレタン結合を有する樹脂(例えばポリウレタン)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、メチルメタクリレート-フッ化ビニリデン共重合体(PMMA/PVDF)などのフッ素樹脂、シリコーン樹脂、塩化ビニル系樹脂(例えばポリ塩化ビニル(PVC))、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ナイロン等のポリアミド、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)及びそのアイオノマー、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)などの共重合体を、単独で又は二種以上ブレンドして使用することができる。
【0065】
表面層は多層構造であってもよい。例えば、表面層は、上記樹脂から形成されたフィルムの積層体であってもよく、上記樹脂の多層コーティングであってもよい。表面層はその表面の全面又は一部にエンボスパターンなどの3次元凹凸形状を有してもよい。
【0066】
表面層は、例えば、上述した着色層又は基材に直接又は接合層等を介して樹脂組成物をコーティングして形成することができる。表面層のコーティングは、装飾用積層体を被着体(例えば後述する支持部材)に適用する前又は適用した後に実施することができる。あるいは、剥離ライナーに樹脂組成物をコーティングして表面層フィルムを形成し、接合層を介して着色層又は基材にそのフィルムをラミネートすることもできる。例えば、着色層が、表面層フィルムに対して接着性を有する場合は、接合層を介さずに表面層フィルムを着色層に直接ラミネートすることもできる。表面層フィルムは、例えば、硬化性(メタ)アクリル樹脂組成物、反応性ポリウレタン組成物などの樹脂材料を、ナイフコート、バーコート、ブレードコート、ドクターコート、ロールコート、キャストコートなどによって剥離ライナーなどにコーティングし、必要に応じて光又は加熱硬化することによって、形成することができる。
【0067】
表面層として、押出、延伸などによってあらかじめフィルム状に形成されたものを使用してもよい。このようなフィルムは接合層を介して着色層又は基材にラミネートすることができる。あるいは、着色層がこのようなフィルムに対して接着性を有する場合は、接合層を介さずに着色層にフィルムを直接ラミネートすることもできる。かかるフィルムとして、平坦性の高いフィルムを使用することで、より表面平坦性の高い外観を物品(構造物)に与えることができる。表面層は、他の層と多層押し出しすることによって形成することもできる。他の層として、例えば、(メタ)アクリルフィルムを使用することができる。(メタ)アクリルフィルムとして、例えば、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリアクリル酸ブチル、(メタ)アクリル共重合体、エチレン/アクリル共重合体、エチレン酢酸ビニル/アクリル共重合体などを含む樹脂をフィルム状にして用いることができる。(メタ)アクリルフィルムは、透明性及び/又は耐擦傷性に優れ、熱及び/又は光に強く、退色及び/又は光沢変化が生じにくい。加えて、可塑剤を使用せずとも成形加工性に優れており、また、可塑剤を使用しなくてもよいため、耐汚染性にも優れている。なかでもPMMAを主成分とするものが好ましい。例えば、他の層として耐擦傷性等に優れる(メタ)アクリル樹脂を用い、表面層として耐薬品性等に優れるETFE、PVDF、PMMA/PVDFなどのフッ素樹脂を用いた場合には、形成される表面層は、両層の性能を兼ね備えたものとなり得る。
【0068】
本開示の表面層は、本開示の効果に悪影響を及ぼさない範囲において、任意成分として、例えば、充填剤、マット剤(艶消し剤)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、光安定剤、熱安定剤、レオロジー調整剤、表面調整剤、ハードコート材、光沢付与剤、分散剤、可塑剤、フロー向上剤、界面活性剤、レベリング剤、シランカップリング剤、触媒、顔料、染料などを含むことができる。なかでも、ベンゾトリアゾール、Tinuvin(登録商標)1130(BASF社製)などの紫外線吸収剤、Tinuvin(登録商標)292(BASF社製)などのヒンダードアミン光安定化剤(HALS)などを用いることによって、下層に位置する着色層等の、変色、退色、劣化などを有効に防止することができる。また、ACRYSOL(商標)RM-8Wなどのレオロジー調整剤、Dynol(商標)604などの界面活性剤などを用いることによって、塗工性を向上させることができる。ハードコート材は、表面層中に含まれていてもよく、表面層上に別途コーティングしてハードコート層として適用されていてもよい。
【0069】
表面層は、部分的に不透明であってもよいが、着色層又は任意の装飾層に対する視認性等の観点から、半透明又は透明であることが好ましい。
【0070】
表面層の厚さとしては特に制限はなく、例えば、約1マイクロメートル以上、約5マイクロメートル以上、又は約10マイクロメートル以上であってもよく、約150マイクロメートル以下、約100マイクロメートル以下、約80マイクロメートル以下、約50マイクロメートル以下、約30マイクロメートル以下、又は約20マイクロメートル以下であってもよい。難燃性の観点から、表面層は薄い方が有利であり、例えば、約50マイクロメートル以下、約30マイクロメートル以下、又は約20マイクロメートル以下であることが好ましい。
【0071】
いくつかの実施態様において、表面層は、マット剤(艶消し剤)を含む。マット剤を配合することによって、表面層は艶消し性を呈することができる。ここで、本開示において「艶消し性」とは、マット剤を含まない表面層に比べ、低い表面光沢度を呈することを意図する。
【0072】
艶消し性は、例えば、測定角を60度としたときの表面光沢度、すなわち、60度表面光沢度で評価することができる。いくつかの実施態様において、本開示の装飾用積層体の表面層は、約10.0GU以下、約8.0GU以下、約5.0GU以下、約4.5GU以下、又は約4.0GU以下の60度表面光沢度を呈する。表面光沢度の下限値については特に制限はなく、例えば、約0.1GU以上、約0.5GU以上、又は約1.0GU以上とすることができる。表面光沢度は、携帯用光沢計GMX-203(株式会社村上色彩技術研究所、日本国東京都中央区)を用いて測定した値である。
【0073】
マット剤としては、例えば、樹脂ビーズ及び無機粒子を使用することができる。マット剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0074】
樹脂ビーズとしては特に制限はなく、例えば、ウレタン結合を有する樹脂、スチレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、(メタ)アクリル樹脂などから調製された樹脂ビーズを挙げることができる。樹脂ビーズは、中実であってもよく又は空隙を有してもよく、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、艶消し性、耐スクラッチ性、表面層が伸長されるような場合の追従性などの観点から、ウレタン結合を有する樹脂を含む樹脂ビーズ(「ウレタン樹脂ビーズ」と称する場合がある。)が好ましい。樹脂ビーズは公知の表面改質剤でその表面が改質されていてもよい。
【0075】
ウレタン樹脂ビーズとしては、懸濁重合、シード重合、乳化重合などにより得られる架橋型のウレタン樹脂ビーズを用いることができる。かかる樹脂ビーズは柔軟性、強靭性、耐スクラッチ性などに優れており、これらの特性を表面層に付与することができる。
【0076】
樹脂ビーズとバインダーとが同種の樹脂成分である場合、例えば、ウレタン成分を含む樹脂ビーズ及びバインダー、或いは、(メタ)アクリル成分を含む樹脂ビーズ及びバインダーの場合、このような樹脂ビーズはバインダーとの親和性に優れるため、バインダーとの密着性を向上させることができる。その結果、積層体を伸長又は変形したとしても、バインダーからの樹脂ビーズの脱離を低減又は抑制することができる。ここで、「同種の樹脂成分」とは、樹脂の構成成分が完全に同一であることに限らず、樹脂を構成している成分において共通する樹脂成分が一つ以上存在している場合も含まれる。例えば、ウレタンアクリレートから調製された樹脂ビーズは、ウレタン成分とアクリル成分の二種類が存在しているため、かかる樹脂ビーズは、ウレタン樹脂バインダーと同種の樹脂成分であるとともに、アクリル樹脂バインダーとも同種の樹脂成分であるといえる。
【0077】
表面層表面の凹凸に基づく光の散乱効果に加え、表面層内部での樹脂ビーズによる光の散乱又は屈折効果も期待する場合には、樹脂ビーズの屈折率は、バインダーの屈折率と相違していることが好ましい。
【0078】
無機粒子としては特に制限はなく、例えば、無機酸化物粒子、二種以上の金属元素を含む混合酸化物粒子、又はこれらの混合物が挙げられる。無機酸化物粒子としては、例えば、アルミナ粒子、酸化スズ粒子、酸化アンチモン粒子、シリカ粒子、ジルコニア粒子、チタニア粒子、及びフェライト粒子からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。二種以上の金属元素を含む混合酸化物粒子としては、例えば、アルミ、スズ、アンチモン、ケイ素、ジルコニウム、チタン、及び鉄からなる群から選択される少なくとも二種の金属元素を含む混合酸化物粒子が挙げられる。無機粒子は単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、艶消し性及び耐スクラッチ性の観点から、アルミナ粒子が好ましい。
【0079】
マット剤の平均粒子径としては、約3マイクロメートル以上、約5マイクロメートル以上、約7マイクロメートル以上、約10マイクロメートル以上、約15マイクロメートル以上、約16マイクロメートル以上、約18マイクロメートル以上、約20マイクロメートル以上、約23マイクロメートル以上、又は約25マイクロメートル以上とすることができ、約50マイクロメートル以下、約45マイクロメートル以下、約40マイクロメートル以下、約35マイクロメートル以下、約30マイクロメートル以下、約25マイクロメートル以下、約20マイクロメートル以下、約18マイクロメートル以下、約17マイクロメートル以下、約16マイクロメートル以下、約15マイクロメートル以下、約14マイクロメートル以下、約13マイクロメートル以下、約12マイクロメートル以下、約11マイクロメートル以下、又は約10マイクロメートル以下とすることができる。マット剤の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定器を用いて測定される積算体積50%粒子径である。
【0080】
マット剤の配合量は、表面層の全量に対し、約10質量%以上、約20質量%以上、約30質量%以上、約40質量%以上、約45質量%以上、又は約50質量%以上とすることができ、約70質量%以下、約65質量%以下、約60質量%以下、約55質量%以下、又は約50質量%以下とすることができる。
【0081】
追加の層としての装飾層は、上述した着色層による装飾以外の装飾を付与し得る層を意図する。このような装飾層としては、次のものに限定されないが、例えば、木目、石目、幾何学模様、皮革模様などの模様、ロゴ、絵柄などを物品に付与するパターン層、表面に凹凸形状が設けられたレリーフ(浮き彫り模様)層、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0082】
装飾層は、次のものに限定されないが、装飾用積層体を構成する層、例えば、表面層、着色層、基材、接着層等の全面又は一部に、直接又は接合層等を介して適用することができる。
【0083】
パターン層としては、次のものに限定されないが、例えば、模様、ロゴ、絵柄などのパターンを、グラビアダイレクト印刷、グラビアオフセット印刷、インクジェット印刷、レーザー印刷、スクリーン印刷などの印刷法を用いて、表面層、メタリック層、接着層等に直接適用したものを採用してもよく、或いは、グラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、ナイフコートなどのコーティング、打ち抜き、エッチングなどにより形成された模様、ロゴ、絵柄などを有するフィルム、シートなどを使用することもできる。
【0084】
パターン層の材料としては、次のものに限定されないが、例えば、カーボンブラック、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、赤色酸化鉄などの無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料、アゾレーキ系顔料、インジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドンレッドなどのキナクリドン系顔料などの有機顔料などの顔料が、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン結合を有する樹脂などのバインダー樹脂に分散された材料を使用することができる。
【0085】
レリーフ層として、従来公知の方法、例えば、エンボス加工、スクラッチ加工、レーザー加工、ドライエッチング加工、又は熱プレス加工などによる凹凸形状を表面に有する熱可塑性樹脂フィルムを使用することができる。凹凸形状を有する剥離ライナーに硬化性(メタ)アクリル樹脂などの熱硬化性又は放射線硬化性樹脂を塗布し、加熱又は放射線照射により硬化させて、剥離ライナーを取り除くことによりレリーフ層を形成することもできる。
【0086】
レリーフ層に用いられる熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び放射線硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フッ素系樹脂、PET、PENなどのポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ABS樹脂、アクリロニトリル-スチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル系樹脂、ウレタン結合を有する樹脂などを使用することができる。レリーフ層は、パターン層で使用される顔料の少なくとも1種を含んでもよい。
【0087】
本開示の装飾層は、本開示の効果に悪影響を及ぼさない範囲において、任意成分として、例えば、充填剤、補強剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、光安定剤、熱安定剤、分散剤、可塑剤、フロー向上剤、界面活性剤、レベリング剤、シランカップリング剤、触媒などを含むことができる。
【0088】
装飾層の厚さとしては、要する装飾性等に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、約1.0マイクロメートル以上、約3.0マイクロメートル以上、又は約5.0マイクロメートル以上とすることができ、約50マイクロメートル以下、約40マイクロメートル以下、又は約30マイクロメートル以下とすることができる。
【0089】
光輝層は、次のものに限定されないが、装飾用積層体を構成する層、例えば、基材又は着色層上の全面若しくは一部に、真空蒸着、スパッタ、イオンプレーティング、めっきなどによって形成された、アルミニウム、ニッケル、金、銀、銅、白金、クロム、鉄、スズ、インジウム、チタニウム、鉛、亜鉛、ゲルマニウムなどから選択される金属、又はこれらの合金若しくは化合物を含む層であってよい。光輝層の厚さについては、要する装飾性及び輝度等に応じて適宜選択することができる。
【0090】
本開示の難燃性装飾用積層体は、積層体を構成する各層を接合するために接合層(「プライマー層」などと呼ばれる場合もある。)を用いることができる。接合層として、一般に使用される(メタ)アクリル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、ウレタン結合を有する樹脂(ポリウレタン系ポリマー)、ポリエステル系ポリマー、ゴム系材料などの、溶剤型、エマルジョン型、感圧型、感熱型、熱硬化型又は紫外線硬化型の接着剤を使用することができる。接合層は、公知のコーティング法などによって適用することができる。
【0091】
本開示の難燃性装飾用積層体は、典型的には、接着層に対して剥離ライナーが適用され得る。剥離ライナーとして、例えば、紙;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル(例えばPET)、及び酢酸セルロースなどのプラスチック材料;このようなプラスチック材料で被覆された紙などを挙げることができる。これらのライナーは、シリコーンなどの剥離剤により剥離処理した表面を有してもよい。剥離ライナーの厚さは、一般に、約5マイクロメートル以上、約15マイクロメートル以上、又は約25マイクロメートル以上とすることができ、約500マイクロメートル以下、約300マイクロメートル以下、又は約250マイクロメートル以下とすることができる。
【0092】
本開示の難燃性装飾用積層体は、例えば、枚葉品であってもよく、ロール状に巻かれたロール体であってもよく、或いは、3次元形状物であってもよい。
【0093】
一例として以下の製造方法を説明するが、本開示の難燃性装飾用積層体の製造方法はこれに限定されない。
【0094】
例えば、剥離ライナー、接着層、基材、着色層、及び表面層を順に備える構成の積層体の場合には、基材上に接着剤をコーティングし、必要に応じ、乾燥工程、硬化工程を適用した後、剥離ライナーを接着層に対して貼り合わせて積層体Aを形成する。かかる積層体Aの基材表面に対し、バイオマス由来の体質顔料及び特定の難燃剤を含む着色層用組成物をコーティングし、必要に応じ、乾燥工程、硬化工程を適用して着色層を形成した後、かかる着色層に対し、表面層用組成物をコーティングし、必要に応じ、乾燥工程、硬化工程を適用して表面層を形成して装飾用積層体を形成することができる。この他、基材に着色層を適用してからかかる着色層に対して接着剤を適用し、その後に、接着層の反対側の基材面に表面層を適用してもよい。
【0095】
いくつかの実施態様において、支持部材と、この支持部材に接着されている本開示の難燃性装飾用積層体とを備える装飾物品を提供する。かかる装飾物品は、難燃性能を奏することができる。
支持部材の材料としては特に制限はなく、例えば、樹脂材料(例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、無機材料(例えば、ガラス、セラミック、コンクリート、石膏、ケイ酸カルシウム、天然石、アスファルト)、ゴム材料、布材(例えば、織物、編物、不織布)、金属若しくは金属合金材料(例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス)、及び紙等を含む木質材料などを挙げることができる。
【0096】
支持部材の形状又は構成としては特に制限はなく、例えば、フィルム形状、板形状、曲面形状、異形状、又は3次元形状であってもよく、単層構成、積層構成、又は形状若しくは材料の相違する複数の部材が組み合わさったような複合構成であってもよい。
【0097】
本開示の装飾用積層体を適用した物品は、種々の用途で使用することができる。このような用途として、例えば、看板(例えば内照式看板及び外照式看板);標識(例えば内照式標識及び外照式標識);各種の内装品又は外装品、例えば、自動車、鉄道、航空機、及び船などの乗物の内装品又は外装品(例えば、ルーフ部材、ピラー部材、ドアトリム部材、インストルメントパネル部材、ボンネット等のフロント部材、バンパー部材、フェンダー部材、サイドシル部材、及びインテリアパネル部材)、並びに、建築物の内装品又は外装品(例えば、窓ガラス、ドア、サッシ、瓦等の屋根部材、外壁部材、壁紙など);パソコン、スマートフォン、携帯電話、冷蔵庫、及びエアコンなどの電化製品;文具;家具;机;缶等の各種容器などが挙げられる。なかでも、本開示の装飾用積層体は難燃性能に優れるため、本開示の装飾用積層を適用した物品は、建築物の内装品又は外装品として好適に使用することができる。
【0098】
装飾物品を構成する支持部材(被着体)に対して本開示の難燃性装飾用積層体を適用する方法としては特に制限はなく、公知の方法を適宜使用することができる。例えば、手貼り、インサート射出成形法、インモールド成形法、オーバーモールド成形法、二色射出成形法、コアバック射出成形法、サンドイッチ射出成形法などの射出成形法、ラミネート法、3次元加熱延伸成形法(TOM)などを挙げることができる。
【実施例0099】
以下の実施例において、本開示の具体的な実施態様を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。数値は本質的に測定原理及び測定装置に起因する誤差を含む。数値は通常の丸め処理が行われた有効数字で示される。
【0100】
本実施例で使用した商品などを以下の表1に示す。
【0101】
【0102】
《実施例1~15及び比較例1~5》
〈着色層を備えるPETフィルム基材の製造〉
表2に示す着色層を構成する各成分とメチルエチルケトン(MEK)とを含む製剤をシンキー(商標)AR-250(株式会社シンキー製(日本国東京都千代田区))で約3分間混合し、着色層用コーティング液を得た。このコーティング液を、リサイクルPETを含む透明なPETフィルム基材(リシャイン(登録商標)TA-065)上にナイフコートで塗布した。約65℃で約1.5分及び約155℃で約2分乾燥して着色層を備えるPETフィルム基材を得た。各実施例及び比較例で採用した着色層の厚さは表2に示す。
【0103】
〈実施例1〉
ETERNACOLL(登録商標)UW-1005Eを20質量部、アートパール(登録商標)C-800Tを15質量部、タケネート(登録商標)WB-3936を18質量部、純水を34質量部、イソプロピルアルコール(IPA)を7質量部、レオロジー調整剤を3質量部、界面活性剤を3質量部含む製剤をシンキー(商標)AR-250(株式会社シンキー製(日本国東京都千代田区))で約2分間混合し、表面層用コーティング液を得た。このコーティング液を、上述の着色層を備えるPETフィルム基材の着色層上にナイフコートで塗布した。約65℃で約2分及び約150℃で約5分乾燥して約12マイクロメートル厚の表面層を形成した。
【0104】
ブチルアクリレートとアクリレートのモノマー混合物を酢酸エチル中で共重合させ、約38質量%のアクリル系共重合体を含むアクリル系感圧接着剤組成物を調製した。得られた組成物を、乾燥後の厚みが約38マイクロメートルとなるように、PETフィルム基材における着色層が適用された面の反対側の面にナイフコートで塗布して装飾用積層体を作製した。なお、表2では、積層体の層構成を、以下の3つに分類しており、実施例1の層構成は層構成Aに該当する:
層構成A:表面層/着色層/PET基材/接着層
層構成B:表面層/PET基材/着色層/接着層
層構成C: 着色層/PET基材/接着層
【0105】
〈実施例2~7並びに比較例1~3〉
着色層の組成及び厚さを表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして装飾用積層体を各々作製した。
【0106】
〈実施例8〉
実施例1で得られた表面層用コーティング液を、上述の着色層を備えるPETフィルム基材における着色層が適用された面の反対側の面にナイフコートで塗布した。約65℃で約2分及び約150℃で約5分乾燥して約14マイクロメートル厚の表面層を形成した。次いで、実施例1で得られたアクリル系感圧接着剤組成物を、着色層上にナイフコートで乾燥後の厚みが約38マイクロメートルとなるように塗布して装飾用積層体を作製した。
【0107】
〈実施例9、10及び12~15〉
着色層の組成及び厚さを表2に示すように変更したこと以外は、実施例8と同様にして装飾用積層体を各々作製した。
【0108】
〈実施例11〉
表2に示す組成及び厚さとなるように、着色層を備えるPETフィルム基材を調製した。次いで、実施例1で得られたアクリル系感圧接着剤組成物を、乾燥後の厚みが約38マイクロメートルとなるように、PETフィルム基材における着色層が適用された面の反対側の面にナイフコートで塗布して装飾用積層体を作製した。
【0109】
〈比較例4〉
着色層の組成を表2に示すように変更したこと以外は、実施例11と同様にして装飾用積層体を作製した。
【0110】
〈比較例5〉
表面層の厚さ、並びに着色層の組成及び厚さを表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして装飾用積層体を作製した。
【0111】
〈物性評価試験〉
各装飾用積層体の特性を、以下の試験を実施して評価した。その結果を表2に示す。
【0112】
(発熱性試験:難燃性)
99mm±1mm角に切断した厚さ12.5ミリメートルの不燃認定の石膏ボード(平成12年(2000年)建設省告示第1400号に定める不燃材料)に、99mm±1mm角に切断した各装飾用積層体を重ねあわせて試験片を作製した。
【0113】
試験片を23℃相対湿度50%の環境下に1週間以上放置した後、当該試験片に対し、コーンカロリーメータ(株式会社東洋精機製作所製(日本国東京都北区))を用いて、ISO 5660-1:2002 コーンカロリーメータ法に準拠し、試験片の装飾用積層体側表面での輻射熱条件が50kW/m2となるようにして測定される発熱性試験を行った。かかる試験から、試験片の20分間の試験時間での総発熱量(THR)、最大発熱速度(PHRR)及び200kW/m2を超える時間を各々求めた。その結果表2に示す。
【0114】
(60度光沢度試験:艶消し性)
装飾用積層体の表面層又は着色層における60度光沢度を、JIS Z8741に準拠した、村上色彩研究所製のポータブル光沢計GMX-203で測定した。光沢度の測定は3点で行い、平均値をもって代表値とした。その結果を表2に示す。
【0115】
【0116】
本発明の基本的な原理から逸脱することなく、上記の実施態様及び実施例が様々に変更可能であることは当業者に明らかである。また、本発明の様々な改良及び変更が本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに実施できることは当業者には明らかである。
【0117】
本開示の実施態様の一部を以下の[項目1]-[項目9]に記載する。
[項目1]
基材、着色層、及び接着層を含み、
前記着色層が、バイオマス由来の体質顔料を含み、かつ、リン系難燃剤及びホウ素系難燃剤からなる群から選択される少なくとも一種を15質量%以上含む、
難燃性装飾用積層体。
[項目2]
前記着色層の厚さが、20マイクロメートル以上85マイクロメートル以下であり、前記積層体の厚さが、200マイクロメートル以下であり、かつ、前記積層体の厚さに対する前記着色層の厚さの比率が、0.20~0.80である、項目1に記載の積層体。
[項目3]
前記基材中の難燃剤の配合量が、10質量%以下である、項目1又は2に記載の積層体。
[項目4]
前記着色層が、塩化ビニル系樹脂を含む、項目1~3のいずれか一項に記載の積層体。
[項目5]
前記基材が、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
[項目6]
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂が、リサイクルポリエチレンテレフタレート樹脂を含む、項目5に記載の積層体。
[項目7]
前記バイオマス由来の体質顔料が、バイオマス由来の炭酸カルシウムを含む、項目1~6のいずれか一項に記載の積層体。
[項目8]
下記の発熱性試験において、試験片として、石膏ボードと該石膏ボードの輻射熱の与えられる側に積層された前記積層体とを有する積層板を用い、前記試験片の20分間の試験時間での総発熱量が8.0MJ/m2以下である、項目1~7のいずれか一項に記載の積層体:
発熱性試験:ISO 5660-1:2002 コーンカロリーメータ法に準拠し、試験片表面での輻射熱条件が50kW/m2で前記総発熱量を測定する発熱性試験。
[項目9]
支持部材と、
前記支持部材に接着されている項目1~8のいずれか一項に記載の難燃性装飾用積層体と、を備える、
装飾物品。