(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170048
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】電源コントローラ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20241129BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20241129BHJP
【FI】
H02M3/28 C
H02M3/28 P
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086991
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】井上 矩彦
【テーマコード(参考)】
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AS01
5H730AS13
5H730BB23
5H730BB43
5H730BB57
5H730DD04
5H730EE02
5H730EE07
5H730EE59
5H730FD24
5H730FG05
5H730XX43
5H770AA05
5H770BA01
5H770CA01
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770GA01
5H770GA13
5H770GA14
5H770LB05
(57)【要約】
【課題】ノイズフィルタを常時接続する構成においても、高電圧ノイズに対して保護できる電源コントローラを提供する。
【解決手段】インバータ1を構成するFET2を駆動するドライバ7に電力を供給する一石絶縁型の電源回路8において、電源コントローラ32はFET12をスイッチング制御する。ノイズ予測部22は、FET2のスイッチングによるノイズ発生期間を予測してスイッチング禁止パルスを出力する。エラーアンプ19は電源回路8の出力をフィードバックした入力電圧と基準電圧20との比較結果に基づいてエラー信号を出力する。パルス生成部21は、エラー信号とスイッチング禁止パルスとに基づいてFET12をスイッチングさせるスイッチングパルスを生成し、スイッチング禁止パルスが入力されている期間はスイッチングパルスの出力を禁止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータ(1)を構成するパワー素子(2)を駆動する駆動回路(7)に電力を供給する一石絶縁型の電源回路(8、33、37、40、42、50、56)において、1次側トランジスタ(12)をスイッチング制御する電源コントローラであって、
前記パワー素子のスイッチングによるノイズ発生期間を予測して、スイッチング禁止パルスを出力するノイズ予測部(22、34、38、38A、43、51,58)と、
前記電源回路の出力をフィードバックした入力電圧と基準電圧との比較結果に基づいてエラー信号を出力するエラーアンプ(19)と、
前記エラー信号と、前記スイッチング禁止パルスとに基づいて、前記1次側トランジスタをスイッチングさせるスイッチングパルスを生成するパルス生成部(21)と、を備え、
前記パルス生成部は、前記スイッチング禁止パルスが入力されている期間は、前記スイッチングパルスの出力を禁止する電源コントローラ。
【請求項2】
前記ノイズ予測部(22)は、前記パワー素子に出力される駆動信号の電圧を入力とし、それぞれの信号電圧の二値レベルが切替わるタイミングを起点として、前記スイッチング禁止パルスを一定時間出力する請求項1記載の電源コントローラ。
【請求項3】
前記ノイズ予測部(38)は、前記インバータの駆動電源に重畳されるスイッチングノイズをモニタして、前記スイッチングノイズが発生したタイミングを起点として前記スイッチング禁止パルスを一定時間出力する請求項1記載の電源コントローラ。
【請求項4】
前記ノイズ予測部(38A)は、前記インバータの制御部から出力される3相分の駆動信号の二値レベルが切替わるタイミングを起点として前記スイッチング禁止パルスを一定時間出力する請求項1記載の電源コントローラ。
【請求項5】
前記ノイズ予測部(43)は、前記インバータの駆動電源に重畳されるスイッチングノイズをモニタして、前記スイッチングノイズのレベルが閾値以下となったタイミングで、前記スイッチング禁止パルスの出力を停止する請求項1から4の何れか一項に記載の電源コントローラ。
【請求項6】
前記ノイズ予測部(51)は、前記インバータの制御部より入力されるPWM制御のキャリアである三角波信号を参照して、前記三角波信号がピークレベルを示すタイミングを含む一定期間を除く期間に、前記スイッチング禁止パルスを出力する請求項1記載の電源コントローラ。
【請求項7】
前記インバータより負荷に出力される電流の極性を判定する電流極性判定部(57)を備え、
前記ノイズ予測部(58)は、前記電流極性判定部が判定した極性に基づいて、前記パワー素子のオン・オフの何れでスイッチングノイズが発生するか予測し、前記スイッチングノイズノイズが発生すると判定するとスイッチング禁止パルスを出力する請求項1記載の電源コントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータを構成するパワー素子を駆動する駆動回路に電力を供給する一石絶縁型の電源回路において、1次側トランジスタをスイッチング制御するコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、以下のような構成が開示されている。スイッチモード電源装置に接続され、コンデンサC1を有する入力フィルタ回路を、フィルタ制御回路が制御する。フィルタ制御回路は、過電圧状態でない通常動作中であれば、コンデンサC1を入力リターンに接続し、過電圧事象が発生すると、コンデンサC1を入力リターンから切断する。これにより、入力フィルタコンデンサC1をスイッチモード電源装置から電気的に切断して、過電圧より保護している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、高電圧時に入力フィルタ回路が切り離されるため、ノイズや電圧の変動、上昇が発生し、その影響を主制御回路が受けるおそれがある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ノイズフィルタを常時接続する構成においても、高電圧ノイズに対して保護できる電源コントローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の電源コントローラによれば、インバータ(1)を構成するパワー素子(2)を駆動する駆動回路に電力を供給する一石絶縁型の電源回路(8、33、37、40、42、50、56)において、1次側トランジスタ(12)をスイッチング制御する。尚、パワー素子とは、例えば上記のインバータのような電力変換回路を構成する、比較的大きな電力をスイッチングするのに対応した半導体素子である。ノイズ予測部(22、34、38、38A、43、51,58)は、パワー素子のスイッチングによるノイズ発生期間を予測して、スイッチング禁止パルスを出力する。エラーアンプは、電源回路の出力をフィードバックした入力電圧と基準電圧との比較結果に基づいてエラー信号を出力する。パルス生成部(21)は、エラー信号とスイッチング禁止パルスとに基づいて、1次側トランジスタをスイッチングさせるスイッチングパルスを生成し、スイッチング禁止パルスが入力されている期間はスイッチングパルスの出力を禁止する。
【0006】
すなわち、パルス生成部は、ノイズ予測部が、パワー素子のスイッチングによるノイズ発生期間を予測して出力した、スイッチング禁止パルスが入力されている期間はスイッチングパルスの出力を禁止する。これにより、ノイズフィルタが、電力供給源と1次側トランジスタとの間に常時接続されている構成においても、パワー素子のスイッチングに伴う高電圧のノイズが、1次側トランジスタがスイッチングを行うタイミングで重畳されることは回避できる。したがって、ノイズフィルタの出力側に接続されている回路素子等を、常にノイズから保護することが可能になる。
【0007】
請求項2記載の電源コントローラによれば、ノイズ予測部(22)は、パワー素子に出力される駆動信号の電圧を入力とし、それぞれの信号電圧の二値レベルが切替わるタイミングを起点としてスイッチング禁止パルスを一定時間出力する。駆動信号の電圧の二値レベルが切替わるタイミングでは、パワー素子によりスイッチングされる電圧が大きく変化するので、そのタイミングを起点としてノイズが発生することが予測される。したがって、前記起点からスイッチング禁止パルスを一定時間出力することで、パルス生成部においてスイッチングパルスの出力を適切に禁止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態であり、電源コントローラを含む電源回路の構成を示す図
【
図3】スイッチングノイズの発生タイミングと、スイッチング禁止パルスの出力タイミングとを示す波形図
【
図4】第2実施形態であり、電源コントローラを含む電源回路の構成を示す図
【
図5】スイッチングノイズの発生タイミングと、スイッチング禁止パルスの出力タイミングとを示す波形図
【
図6】第3実施形態であり、電源コントローラを含む電源回路の構成を示す図
【
図8】スイッチングノイズの発生タイミングと、スイッチング禁止パルスの出力タイミングとを示す波形図
【
図9】第4実施形態であり、電源コントローラを含む電源回路の構成を示す図
【
図10】スイッチングノイズの発生タイミングと、スイッチング禁止パルスの出力タイミングとを示す波形図
【
図11】第5実施形態であり、電源コントローラを含む電源回路の構成を示す図
【
図13】ノイズ予測部の動作を示すタイミングチャート
【
図14】スイッチングノイズの発生タイミングと、スイッチング禁止パルスの出力タイミングとを示す波形図
【
図15】第6実施形態であり、電源コントローラを含む電源回路の構成を示す図
【
図17】PWM制御に使用するキャリアと、スイッチング禁止パルスの出力タイミングとの関係を示す波形図
【
図18】スイッチングノイズの発生タイミングと、スイッチング禁止パルスの出力タイミングとを示す波形図
【
図19】第7実施形態であり、電源コントローラを含む電源回路の構成を示す図
【
図20】スイッチングノイズの発生タイミングと、スイッチング禁止パルスの出力タイミングとを示す波形図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
図1に示すように、インバータ1は、パワー素子であるNチャネルのパワーMOSFET2a~2fを3相ブリッジ接続して構成されており、直流電源3の正側端子と負側端子との間に接続されている。その負側端子は、電源側グランドに接続されている。インバータ1の各相U,V,Wの出力端子は、それぞれモータ4の各相巻線の一端に接続されている。各FET2a~2fは、インバータ制御部5より出力される駆動信号により、1次側、2次側が絶縁されている通信部6a~6f及びドライバ7a~7fを介して駆動される。尚、
図1では、FET2aに対応したドライバ7aだけを示している。
【0010】
ドライバ7aは、電源端子Vcc、グランド端子GND及び入力端子INを備え、入力端子INには、通信部6aより駆動信号が入力される。電源端子Vccには、電源回路8より生成されたゲート駆動用の電源Vccが供給される。グランド端子GNDは、回路側グランド、及びFET2a及び2bの共通接続点に接続されている。電源回路8は、トランス9を備えている。直流電源3の正側端子と電源側グランドとの間には、ノイズ除去用のフィルタ10、トランス9の1次巻線11、及び1次側トランジスタであるNチャネルMOSFET12の直列回路が接続されている。フィルタ10に入力される直流電源3の正側端子の電圧をVinとする。
【0011】
トランス9の2次巻線13の一端は、ダイオード14を介してドライバ7aの電源端子Vccに接続されており、同他端はドライバ7aのグランド端子GNDに接続されている。電源端子Vccとグランド端子GNDとの間には、コンデンサ15が接続されている。トランス9の補助巻線16の一端は電源側グランドに接続され、同他端は、抵抗素子17及び18の直列回路を介して回路側グランドに接続されている。抵抗素子17及び18の共通接続点は、エラーアンプ19の非反転入力端子に接続されており、同反転入力端子には、基準電圧20が与えられている。エラーアンプ19が出力するエラー信号は、パルス生成部21に入力される。
【0012】
ノイズ予測部22の6つの入力端子は、インバータ制御部5の各駆動信号の出力端子にそれぞれ接続されており、ノイズ予測部22の出力端子は、パルス生成部21の入力端子に接続されている。ノイズ予測部22は、パルス生成部21に対して、スイッチング禁止パルスを出力する。
【0013】
ノイズ予測部22の構成は各相について同じであるから、
図2ではU相の構成のみを示している。また、上側のFET2a、及び下側のFET2bに対応する構成も同じであるから、上側の構成には符号にUを付し、下側の構成には符号にDを付して示す。FET2aのゲートに与えられるU相上側の駆動信号は、立上りエッジ検出部23U及び立下りエッジ検出部24Uに入力される。これらはそれぞれ、上記駆動信号の立上りエッジ、立下りエッジを検出したタイミングで、パルス信号を出力する。
【0014】
立上りエッジ検出部23Uの出力端子は、Dフリップフロップ25Uの負論理のクロック端子CKに接続されていると共に、遅延回路26Uを介してDフリップフロップ25Uの負論理のリセット端子Rに接続されている。Dフリップフロップ25Uのデータ入力端子Dは、電源にプルアップされている。同様に、立下りエッジ検出部24Uの出力端子は、Dフリップフロップ27Uの負論理のクロック端子CKに接続されていると共に、遅延回路28Uを介してDフリップフロップ27Uの負論理のリセット端子Rに接続されている。Dフリップフロップ27Uのデータ入力端子Dも、電源にプルアップされている。
【0015】
Dフリップフロップ25U及び27Uの出力端子Qは、ORゲート29Uの各入力端子に接続されており、Dフリップフロップ25D及び27Dの出力端子Qは、ORゲート29Dの各入力端子に接続されている。ORゲート29U及び29Dの出力端子は、ORゲート30の各入力端子に接続されている。ORゲート30は、各相について設けられているので、3つのORゲート30の出力端子は、それぞれ3入力のORゲート31の各入力端子に接続されている。そして、ORゲート31より出力される信号が、スイッチング禁止パルスとなる。スイッチング禁止パルスのパルス幅は、遅延回路28において付与される遅延時間に等しくなる。
【0016】
すなわち、ノイズ予測部22は、UVW各相の駆動信号の立上りエッジ又は立下りエッジ、つまりハイ、ローの二値レベルが変化するタイミングを検出すると、その検出タイミングから一定のパルス幅の信号をスイッチング禁止パルスとして出力する。パルス生成部21は、入力されるエラー信号と、スイッチング禁止パルスとに基づいて、FET12のゲートを駆動するスイッチングパルスを出力する。電源回路8において、エラーアンプ19、パルス生成部21及びノイズ予測部22は、電源コントローラ32を構成している。
【0017】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図3は、インバータ1においてU相上、W相上、V相下がオンしている初期状態から、W相上がオフに転じた後、W相下がオンに転じるケースを示している。この場合、ノイズ予測部22は、W相上のターンオフタイミングと、W相下のターンオンタイミングとを基点としてスイッチング禁止パルスを出力する。W相上のオンは整流側通電となるので、ターンオフタイミングでは大きなスイッチングノイズは発生しない。一方、W相下のオンはスイッチング側通電となるので、ターンオンタイミングで大きなスイッチングノイズが発生することが予測される。
【0018】
したがって、電源回路8のFET12が、W相下のターンオンタイミングと同じタイミングでオンすれば、そのオンに伴うドレイン電圧の変動に、上記のスイッチングノイズによる高い電圧が重畳されてしまう。これにより、FET12の耐圧を超えてしまうおそれがある。
【0019】
本実施形態では、パルス生成部21が、スイッチング禁止パルスが入力されている期間はFET12のゲートを駆動するパルス信号の出力を禁止し、禁止パルスが入力されなくなると駆動パルス信号を出力する。これにより、FET12のドレインにスイッチングノイズが印加されていないタイミングで、FET12をスイッチングさせる。
【0020】
以上のように本実施形態によれば、インバータ1を構成するFET2を駆動するドライバ7に電力を供給する一石絶縁型の電源回路8において、電源コントローラ32は、FET12をスイッチング制御する。ノイズ予測部22は、FET2のスイッチングによるノイズ発生期間を予測してスイッチング禁止パルスを出力する。エラーアンプ19は、電源回路8の出力をフィードバックした入力電圧と基準電圧20との比較結果に基づいてエラー信号を出力する。パルス生成部21は、エラー信号とスイッチング禁止パルスとに基づいて、FET12をスイッチングさせるスイッチングパルスを生成し、スイッチング禁止パルスが入力されている期間はスイッチングパルスの出力を禁止する。
【0021】
ノイズフィルタ10が、直流電源3とFET12との間に常時接続されている構成においても、FET2のスイッチングに伴う高電圧のノイズが、FET12がスイッチングを行うタイミングで、そのドレインに重畳されることは回避できる。したがって、ノイズフィルタ10の出力側に接続されている回路素子等を、常にノイズから保護することが可能になる。
【0022】
これにより、ノイズフィルタ10が直流電源3とトランス9との間に常時接続されている構成においても、FET2のスイッチングにより発生した高電圧のノイズが、FET12がスイッチングを行うタイミングで重畳されることは回避できる。したがって、ノイズフィルタ10の出力側に接続されているFET12のような回路素子等を、常にノイズから保護することが可能になる。
【0023】
また、ノイズ予測部22は、FET2に出力される駆動信号の電圧を入力とし、それぞれの信号電圧の二値レベルが切替わるタイミングを起点としてスイッチング禁止パルスを一定時間出力する。このように、上記の起点からスイッチング禁止パルスを一定時間出力することで、パルス生成部21においてスイッチングパルスの出力を適切に禁止させることができる。
【0024】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。
図4に示すように、第2実施形態の電源回路33は、ノイズ予測部22に替わるノイズ予測部34を備えている。ノイズ予測部34の入力端子には、通信部35を介してFET2のゲート電圧が入力される。ノイズ予測部34には、FET2aのゲート電圧だけでなく、その他のFET2b~2fのゲート電圧も、対応する通信部35を介して入力される。ノイズ予測部34の内部ロジックは、第1実施形態と同様である。以上が電源コントローラ36を構成している。
【0025】
次に、第2実施形態の作用について説明する。
図5に示すように、FET2がターンオフする際には、ゲート電圧が立下り始めた後にスイッチングノイズが発生する。したがって、第1実施形態のように、インバータ制御部5が出力する駆動信号のエッジタイミングに基づく場合よりも、スイッチング禁止パルスの出力時間、つまり遅延回路26、28で付与する遅延時間を短くすることができる。
【0026】
(第3実施形態)
図6に示すように、第3実施形態の電源回路37は、ノイズ予測部22に替わるノイズ予測部38を備えている。ノイズ予測部38の入力端子は、直流電源3の正側端子に接続されており、電圧Vinが入力される。ノイズ予測部38は、直流電源3の正側端子に発生するスイッチングノイズを直接検出し、その検出タイミングを基点としてスイッチング禁止パルスを一定時間出力する。この場合、ノイズ予測部38の内部ロジックは、
図7に示すように、ノイズ予測部22における1相片側分のみあれば良い。以上が電源コントローラ39を構成している。
【0027】
これにより、
図8に示すように、ノイズ予測部38は、電圧Vinに重畳されるスイッチングノイズの検出タイミングを基点としてスイッチング禁止パルスを出力するので、スイッチング禁止パルスの出力時間を更に短くすることができる。また、ノイズ予測部38の回路規模を小さくすることができる。
【0028】
(第4実施形態)
図9に示すように、第4実施形態の電源回路40では、ノイズ予測部38Aに、電圧Vinに替えて、インバータ制御部5に替わるインバータ制御部5Aが出力する駆動タイミング信号が入力されている。駆動タイミング信号は、インバータ制御部5Aが出力する各相上下の駆動信号の、各エッジタイミングを示すパルス信号である。したがって、
図10に示すように、スイッチング禁止パルスが出力されるタイミングは、第1実施形態と同様になる。以上が電源コントローラ41を構成している。
【0029】
(第5実施形態)
図11に示すように、第5実施形態の電源回路42では、例えば、第1実施形態のノイズ予測部22に、ノイズフィルタ10の出力を入力する構成を追加したことで、ノイズ予測部43としている。この場合、ノイズ予測部43がスイッチング禁止パルスを出力するタイミングは第1実施形態と同様であるが、スイッチング禁止パルスの出力を停止するのは、スイッチノイズのレベルが一定値以下になったタイミングとする。
【0030】
図12に示すように、ノイズ予測部43の内部ロジックは、ノイズ予測部22とはDフリップフロップ25,27をリセットする構成が相違している。遅延回路26,28に替えて、コンパレータ44、立下りエッジ遅延部45及び立下りエッジ検出部46によりリセット信号を生成する。
【0031】
図13に示すように、入力されるノイズのレベルが閾値を超えるタイミングで、コンパレータ44の出力信号はハイレベルになる。立下りエッジ遅延部45の出力信号は、上記出力信号の立下りエッジを遅延させる。同出力信号が短時間内にハイレベルになる状態を繰り返すと、それに応じて立下りエッジ遅延部45がトリガされるので、遅延部45の出力信号は立ち下がらない。ノイズのレベルが最後に閾値を超えたタイミングでコンパレータ44の出力信号がハイレベルになると、立下りエッジ遅延部45は、その立ち下がりタイミングを遅延させて出力信号がローレベルに変化する。立下りエッジ検出部46は、Sの立下りエッジを検出してリセットパルスを出力する。その結果、
図14に示すようにスイッチング禁止パルスが出力される。
【0032】
(第6実施形態)
図15に示すように、第6実施形態の電源回路50では、ノイズ予測部51に、インバータ制御部5に替わるインバータ制御部5Bが出力するキャリア情報が入力されている。キャリア情報は、PWM制御に使用されるキャリアとしての三角波の電圧である。
図16に示すように、ノイズ予測部51の内部ロジックは、2つのコンパレータ52及び53と、これらの出力信号が入力されるNORゲート54とで構成される。NORゲート54は、負論理入力のANDゲートと等価である。
【0033】
第5実施形態では、PWM制御において 、FET2はキャリア振幅がピーク;最大値を示すタイミングと、ボトム;最小値を示すタイミングとでスイッチングされるものとする。そこで、ノイズ予測部51は、キャリア振幅のピーク、ボトムが経過した後にスイッチングノイズが発生すると予測して、上記のピーク、ボトムを含む一定期間を除いてスイッチ禁止パルスを出力する。
【0034】
図17に示すように、キャリア振幅のピーク付近に設定した閾値をCP、ボトム付近に設定した閾値をCBとする。ノイズ予測部51のコンパレータ52の非反転入力端子、コンパレータ53の反転入力端子には、キャリア信号が入力されている。コンパレータ52の反転入力端子には閾値CPが設定され、コンパレータ53の非反転入力端子には閾値CBが設定される。
【0035】
コンパレータ52の出力信号は、キャリア振幅が閾値をCPを上回っている期間にハイレベルになり、コンパレータ53の出力信号は、キャリア振幅が閾値をCBを下回っている期間にハイレベルになる。したがって、NORゲート54からは、キャリア振幅が閾値CP~閾値CB間で変化する間に、スイッチ禁止パルスが出力される。以上が電源コントローラ55を構成している。
【0036】
図18に示すように、第1実施形態では、スイッチ禁止パルスを出力する際に、スイッチングノイズが発生すると想定されるタイミングよりも早いマージン期間t1を、トランス9への通電期間t2よりも長くなるように設定する必要があった。これに対して、第5実施形態では、キャリア振幅のピーク、ボトムが経過して、スイッチングノイズが発生したと予測される以降にスイッチ禁止パルスが出力されるので、第1実施形態のようにマージン期間t1を設定する必要がない。
【0037】
以上のように構成される第6実施形態によれば、ノイズ予測部51を、小規模なロジックで、且つ低速な回路で実現できる。
【0038】
(第7実施形態)
図19に示すように、第7実施形態の電源回路56では、インバータ1の各相出力端子部分に電流極性判定部57が配置されている。電流極性判定部57は、FET2を流れるドレイン電流やモータ4の相電流を検出したり、インバータ1の出力端子の電圧を中点電圧と比較する等して電流の極性を判定する。極性の判定結果は、通信部35を介してノイズ予測部58に入力される。ノイズ予測部58は、入力される電流極性の判定結果に応じてスイッチングノイズが発生する期間を予測する。
【0039】
図20に示すように、第1実施形態の
図3と同様のスイッチングパターンにおいて、W相上側のターンオフ時に、FET2aの寄生ダイオードを介して電流が流れる期間では、スイッチングノイズが発生しないと予測できる。第1実施形態では破線で示すように、スイッチング禁止パルスを当該期間でも出力していたが、第7実施形態ではスイッチング禁止パルスを出力しない。したがって、第7実施形態では、当該期間にFET12によるスイッチングが可能になる。
【0040】
(その他の実施形態)
パワー素子や1次側トランジスタはNチャネルMOSFETに限らず、PチャネルMOSFETやIGBT等でも良い。
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0041】
図面中、1はインバータ、2はNチャネルMOSFET、3は直流電源、5はインバータ制御部、7はドライバ、8は電源回路、9はトランス、12はNチャネルMOSFET、21はパルス生成部、22はノイズ予測部、32は電源コントローラを示す。