(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170051
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】情報記録装置および情報記録方法
(51)【国際特許分類】
G07C 5/00 20060101AFI20241129BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
G07C5/00 Z
G08G1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086999
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】324003048
【氏名又は名称】三菱電機モビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】中村 恒毅
【テーマコード(参考)】
3E138
5H181
【Fターム(参考)】
3E138AA07
3E138MA02
3E138MB01
3E138MB08
3E138MC01
3E138MD01
3E138ME02
3E138ME03
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB12
5H181BB13
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC27
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】必要となる記録容量を抑制しつつ、車両システムの解析や動作解析に必要なデータを記録することが可能な情報記録装置を提供する。
【解決手段】情報記録装置(100)において、周辺情報取得部(101)は、自車両の周辺の情報である周辺情報を取得し、車両情報取得部(102)は、自車両の情報である車両情報を取得する。記録形式決定部(103)は、自車両に特定のイベントが発生したときに、周辺情報および車両情報の少なくとも片方に基づいて、記録対象データの記録周期および記録時間を決定する。記録部(104)は、記録形式決定部(103)が決定した記録周期および記録時間に従って、記録対象データを記録媒体(105)に記録する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周辺の情報である周辺情報を取得する周辺情報取得部と、
前記自車両の情報である車両情報を取得する車両情報取得部と、
前記自車両に特定のイベントが発生したときに、前記周辺情報および前記車両情報の少なくとも片方に基づいて、記録対象データの記録周期および記録時間を決定する記録形式決定部と、
前記記録形式決定部が決定した前記記録周期および前記記録時間に従って、前記記録対象データを記録媒体に記録する記録部と、
を備える情報記録装置。
【請求項2】
前記記録形式決定部は、発生した前記特定のイベントの内容、前記自車両の走行速度、前記情報記録装置の処理負荷のうちの少なくとも1つの情報に基づいて、前記記録対象データの前記記録周期および前記記録時間を決定する、
請求項1に記載の情報記録装置。
【請求項3】
前記記録形式決定部は、さらに前記記録対象データの重要度に基づいて、前記記録対象データの全てのデータまたは特定のデータの前記記録周期および前記記録時間を決定する、
請求項1または請求項2に記載の情報記録装置。
【請求項4】
前記周辺情報および前記車両情報の少なくとも片方に基づいて前記記録対象データを選択するデータ選択部をさらに備え、
前記記録部は、前記データ選択部が選択した前記記録対象データを前記記録媒体に記録する、
請求項1または請求項2に記載の情報記録装置。
【請求項5】
前記データ選択部は、前記自車両の運転支援制御情報、位置情報、データ異常判定結果および故障判定結果のうちの少なくとも1つの情報に基づいて、前記記録対象データを選択する、
請求項4に記載の情報記録装置。
【請求項6】
情報記録装置の周辺情報取得部が、自車両の周辺の情報である周辺情報を取得し、
前記情報記録装置の車両情報取得部が、前記自車両の情報である車両情報を取得し、
前記自車両に特定のイベントが発生したときに、前記情報記録装置の記録形式決定部が、前記周辺情報および前記車両情報の少なくとも片方に基づいて、記録対象データの記録周期および記録時間を決定し、
前記情報記録装置の記録部が、前記記録形式決定部が決定した前記記録周期および前記記録時間に従って、前記記録対象データを記録媒体に記録する、
情報記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載され、取得した情報を記録する情報記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動ブレーキ制御や衝突などのイベント発生時に、車両内外の情報を記録する情報記録装置が普及している。このような情報記録装置は、一般にEDR(Event Data Recorder)などと呼ばれる。EDRによって記録されたデータは、例えば、自動ブレーキシステムの点検、事故や故障後の車両の動作解析などに利用される。
【0003】
例えば下記の特許文献1には、自動ブレーキの動作に関する計測データを記録する際に、先に記録されているデータの中から、最も重要度が低く、かつ最も古いデータを抽出して破棄した後に、新たなデータの記録を行うことで、重要なデータが重要でないデータに上書きされることを防止する情報記録装置が開示されている。
【0004】
また、下記の特許文献2には、事故等が発生した時点からより離れた時点のデータほど低い密度で記録することで、重要なデータを少ないメモリ容量で記録する情報記録装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-45265号公報
【特許文献2】特開2002-183876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
情報記録装置が記録したデータを保存する記録媒体の容量には限りがあるため、重要なデータを残しつつ、記録するデータ量を削減することが課題となる。特許文献1の技術では、記録するデータ量を削減することは考慮されていない。事故等のイベントが発生したときの状況(車両の状態や周辺環境の状態)によっては、イベントが発生した時点から離れた時点に重要なデータが存在する場合が考えられるが、特許文献2の技術では、そのような場合に重要なデータの記録密度が低くなってしまうという問題がある。
【0007】
本開示は以上のような課題を解決するためになされたものであり、重要なデータを残しつつ、記録するデータ量を削減することが可能な情報記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る情報記録装置は、自車両の周辺の情報である周辺情報を取得する周辺情報取得部と、自車両の情報である車両情報を取得する車両情報取得部と、自車両に特定のイベントが発生したときに、周辺情報および車両情報の少なくとも片方に基づいて、記録対象データの記録周期および記録時間を決定する記録形式決定部と、記録形式決定部が決定した記録周期および記録時間に従って、記録対象データを記録媒体に記録する記録部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る情報記録装置によれば、自車両の車両情報および周辺情報に応じて記録対象データの記録周期および記録時間が決定されることで、必要となる記録容量を抑制しつつ、車両システムの解析や動作解析に必要なデータを記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る情報記録装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】情報記録装置のバッファーに記憶される記録対象データの記録周期および記録時間の例を示す図である。
【
図3】記録対象データを記録媒体に記録するときの記録周期および記録時間の設定例(記録イベントごとの設定例)を示す図である。
【
図4】記録対象データを記録媒体に記録するときの記録周期および記録時間の設定例(走行速度に応じた設定例)を示す図である。
【
図5】記録対象データを記録媒体に記録するときの記録周期および記録時間の設定例(記録対象データの種類ごとの設定例)を示す図である。
【
図6】実施の形態1に係る情報記録装置の動作を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態2に係る情報記録装置の構成を示すブロック図である。
【
図8】実施の形態2に係る情報記録装置の動作を示すフローチャートである。
【
図9】実施の形態2における記録媒体のデータ更新方法の例を示す図である。
【
図10】情報記録装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図11】情報記録装置のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る情報記録装置100の構成を示すブロック図である。本実施の形態では、情報記録装置100が車両のECU(Electronic Control Unit)200に内蔵されているものとする。以下、情報記録装置100を内蔵したECU200を搭載した車両を「自車両」という。なお、情報記録装置100は、ECU200とは別体の装置として構成されてもよい。
【0012】
ECU200は、情報記録装置100と、自車両のアクチュエータ300を制御するための演算を行う制御演算部201とを備える。制御演算部201は、例えば、アクセル開度、ブレーキ開度、ステアリング角度など自車両の走る・曲がる・止まるを制御する情報や、ヘッドライトの点灯/消灯/ハイビーム/ロービームの切り替え、ハザードの点滅/消灯、ドアのロック/アンロックなど自車両のBODY制御情報等を演算する。
【0013】
情報記録装置100は、周辺情報取得部101、車両情報取得部102、記録形式決定部103、記録部104および記録媒体105を備える。
【0014】
周辺情報取得部101は、自車両の周辺環境の状態を示す情報である周辺情報を取得する。周辺情報取得部101は、例えば、GPS(Global Positioning System)装置、車載通信機、周辺センサ、ナビゲーションシステムなどから周辺情報を取得することができる。GPS装置は、複数のGPS衛星から測位信号を受信して、自車両の位置を測定する装置である。車載通信機は、自車両と他車両との間の通信(車車間通信)や、自車両と路側機との間の通信(路車間通信)を行う通信機である。周辺センサは、例えば、ミリ波レーダーや超音波ソナーなどの距離感知センサであり、自車両の周囲に存在する障害物(例えば、他車両、歩行者、建物など)の位置を検出するとともに、検出された障害物が移動体(他車両、歩行者等)であるときはその移動速度も検出する。ナビゲーションシステムは、GPS装置が測定した自車両の位置と地図情報とを用いて、地図画面上に自車両の位置を表示したり、目的地までの経路案内をしたりする。周辺情報取得部101に周辺情報を提供する手段は、これらに限られず、例えば車載カメラなどでもよい。
【0015】
車両情報取得部102は、自車両の動作状態を示す情報である車両情報を取得する。車両情報取得部102は、例えば、舵角センサ、車速センサ、ウィンカーセンサ、ライトセンサなどから車両情報を取得することができる。舵角センサは、自車両のステアリング角を検出するセンサである。車速センサは、自車両の走行速度を検出するセンサである。ウィンカーセンサは、自車両の方向指示器の指示方向を検出するセンサである。ライトセンサは、自車両のライトのオン、オフを検出するセンサである。車両情報取得部102に車両情報を提供する手段はこれらに限られず、その他のセンサ(例えば、ブレーキ、ギア、ワイパーなどの動作状態を検出するセンサなど)でもよい。また、車両情報取得部102は、AEB(緊急自動ブレーキ)情報など、制御演算部201による演算情報を車両情報として取得してもよい。制御演算部201による演算情報としては、AEB情報の他、LKS(Lane Keeping Assist System)情報、ACC(Adaptive Cruise Control)情報、自動駐車および自動運転の制御演算情報などがある。
【0016】
周辺情報取得部101が取得した周辺情報および車両情報取得部102が取得した車両情報は、制御演算部201に提供され、制御演算部201が行う各種の演算に利用される。
【0017】
また、車両情報および周辺情報のデータのうちの記録対象データは、情報記録装置100のバッファー(RAM(Random Access Memory)等)に、一時的に記憶される。
図2に、バッファーに記憶される記録対象データの記録周期および記録時間の例を示す。本実施の形態では、バッファーに記憶される記録対象データの記録周期および記録時間は、全てのデータで同じ記録周期および記録時間であるものとするが、データの種類ごとに予め定められた記録周期および記録時間でもよい。
【0018】
自車両が通常の状態のとき、バッファーに記憶された記録対象データは、古いものから消去され、新たな記録対象データで上書きされる。ただし、記録対象データを保存すべきイベントとして予め定められた特定のイベント(以下、「記録イベント」という)が自車両に発生すると、情報記録装置100は、バッファーに記憶されている記録対象データを記録媒体105に記録して保存する。
【0019】
記録形式決定部103は、自車両に記録イベントが発生したときに、周辺情報および車両情報の少なくとも片方に基づいて、記録対象データを記録媒体105に記録するときの記録周期および記録時間を決定する。記録部104は、記録形式決定部103が決定した記録周期および記録時間に従って、記録対象データを記録媒体105に記録する。
【0020】
記録媒体105は、記録対象データを記憶する電子記録媒体である。記録媒体105は、記録された情報を後で読み出し可能なものであれば、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、CD-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)、USBメモリ、SD(登録商標)(Secure Digital)カード等、どのような記録媒体でもよい。なお、記録媒体105は、記録されてから一定期間以上経過した古い情報から順次新しい情報に上書きする逐次書き込みを行うように構成されてもよい。
【0021】
ここで、記録形式決定部103の動作の具体例を説明する。記録形式決定部103は、例えば、発生した記録イベントの内容、自車両の走行速度、情報記録装置100の処理負荷(より具体的には、情報記録装置100を内蔵したECU200のCPU負荷)のうちの少なくとも1つの情報に基づいて、記録対象データを記録媒体105に記録するときの記録周期および記録時間を決定する。
【0022】
ECU200のCPU負荷が高負荷のときに、記録対象データの記録周期および記録時間を補正する処理を行うと、その処理中にデータの欠損が生じることが懸念される。そのため、記録形式決定部103は、ECU200のCPU負荷が高負荷のときは、記録対象データを記録媒体105に記録するときの記録周期および記録時間を、バッファー内の記録対象データの記録周期および記録時間(
図2)と同じにする。この場合、バッファー内の記録対象データをそのまま記録媒体105に記録すればよいため、記録対象データの記録周期および記録時間の補正は行われず、データの欠損は生じない。
【0023】
ECU200のCPU負荷が高負荷でないときは、記録対象データの記録周期および記録時間を補正する処理を行っても、データの欠損が生じる可能性は低い。そのため、記録形式決定部103は、ECU200のCPU負荷が高負荷でないときは、記録対象データの記録周期および記録時間の補正を行い、記録対象データのデータ量を削減する。なお、ここでいう記録対象データの記録周期および記録時間の「補正」とは、記録対象データのデータ量を減らすために、バッファーに記憶された記録対象データに対して、記録周期および記録時間のいずれかを変更することを意味する。記録対象データのデータ量を減らすには、記録周期を長くするか、記録時間を短くするか、あるいはその両方を行えばよい。
【0024】
また、記録媒体105に保存する記録対象データに必要とされるデータ量(すなわち、記録周期および記録時間)は、発生した記録イベントの内容によって異なると考えられる。そのため、記録形式決定部103は、発生した記録イベントの内容に基づいて、記録対象データを記録媒体105に記録するときの記録周期および記録時間を補正してもよい。
【0025】
例えば、発生した記録イベントが、自車両の障害物への衝突に対応する衝突イベント、または、自車両の衝突回避制御(自動ブレーキ制御など)の実施に対応する衝突回避イベントであった場合(以下、衝突イベントおよび衝突回避イベントをまとめて「衝突/回避イベント」という)と、センサ異常またはECU異常に対応するイベントであった場合とでは、衝突/回避イベントの場合により多くの記録対象データを記録することが望まれる。また、同じ衝突/回避イベントであっても、自車両の前方の障害物に関する記録対象データと、自車両の後方の障害物に関する記録対象データとで、記録媒体105に記録するときの記録周期および記録時間を異なる値にしてもよい。
図3に、記録対象データを記録媒体に記録するときの記録周期および記録時間の、記録イベントごとの設定例を示す。
【0026】
また、記録媒体105に保存する記録対象データに必要とされるデータ量(すなわち、記録周期および記録時間)は、記録イベントが発生したときの自車両の走行速度によって異なると考えられる。一般的に、記録イベントが発生したときの自車両の走行速度が速いほど、多くの記録対象データを記録することが望まれる。そのため、記録形式決定部103は、自車両の走行速度に基づいて、記録対象データを記録媒体105に記録するときの記録周期および記録時間を補正してもよい。
図4に、記録対象データを記録媒体に記録するときの記録周期および記録時間の、自車両の走行速度に応じた設定例を示す。
【0027】
自車両の走行速度は実測値である必要はなく、推定値でもよい。例えば、自車両の位置情報から走行中の道路を特定し、走行中の道路の制限速度を自車両の走行速度として推定してもよい。また、記録対象データを記録媒体105に記録するときの記録周期および記録時間を、自車両の走行速度が50km/h以上か否かで変更するようにし、自車両の走行中の道路が一般道であれば自車両の走行速度は50km/h未満、高速道路であれば自車両の走行速度は50km/h以上などと推定してもよい。
【0028】
なお、記録対象データが複数種類のデータを含んでいる場合、記録対象データを記録媒体105に記録するときの記録周期および記録時間は、記録対象データの全てのデータで同じにしてもよいし、データの種類ごとに異なってもよい。
図5に、記録対象データを記録媒体105に記録するときの記録周期および記録時間の、記録対象データの種類ごとの設定例を示す。
図5には、記録対象データが、アクセル、ブレーキおよびステアリングに関する記録対象データA、前方の障害物に関するデータB、および、後方の障害物に関するデータCそれぞれの記録周期および記録時間が示されてる。
【0029】
なお、データAに関し、アクセルに関するデータには、アクセル開度、ドライバの加速要求、自車両の走行速度、加速度などのうちの少なくとも1つが含まれる。ブレーキに関するデータには、ブレーキ開度、ドライバの減速要求、自車両の走行速度、減速度などのうちの少なくとも1つが含まれる。ステアリングに関するデータには、ステアリング角度、ステアリングトルク、ステアリング加速度などのうち少なくとも1つが含まれる。また、データBおよびデータCに関し、障害物のデータには、障害物の位置情報(絶対位置でも自車両に対する相対位置でもよい)、障害物の相対速度および相対加速度、障害物の移動方向などのうち少なくとも1つのデータが含まれる。
【0030】
記録対象データの種類はここで示したものに限られず、例えば自動ブレーキシステムの点検や、事故や故障の解析などに寄与するデータであれば、どのようなものでもよい。
【0031】
また、記録形式決定部103は、さらに記録対象データの重要度に基づいて、記録対象データの全てのデータまたは特定のデータの記録周期および記録時間を決定してもよい。記録対象データの重要度は、自車両の挙動や周辺の交通情報に応じて変化する。例えば、自車両の周囲に障害物が少なく、自車両が加減速の殆どない安定した走行をしている場合は、記録対象データの重要度は低いと考えられるため、データ量の削減を優先して、記録対象データの記録周期を長くし、且つ、記録時間を短くしてもよい。逆に、自車両の周囲に障害物が多く、自車両が加減速の激しい不安定な走行をしている場合は、記録対象データの重要度は高いと考えられるため、データ量の確保を優先して、記録周期を短くし、且つ、記録時間を増やしてもよい。
【0032】
また、自車両の前方に障害物が多くあり、自車両が急減速した場合は、自車両の前方の物体に関する記録対象データについては、記録周期を短く、且つ、記録時間を長くしてデータ量を増やし、さらに、自車両の後方の物体に関する記録対象データについては、記録周期を長く、且つ、記録時間を短くしてデータ量を減らしてもよい。逆に、自車両がバックしている場合や、自動駐車中に後側方から他車両が高速で接近している場合、レーンチェンジを行った場合などには、自車両の後方の物体に関する記録対象データについては、記録周期を短く、且つ、記録時間を長くしてデータ量を増やし、さらに、自車両の前方の物体に関する記録対象データについては、記録周期を長く、且つ、記録時間を短くしてデータ量を減らしてもよい。
【0033】
次に、
図6に示すフローチャートを参照しつつ、情報記録装置100の全体動作について説明する。ここでは、記録形式決定部103が、ECU200のCPU負荷と、発生した記録イベントの内容と、自車両の走行速度とに基づいて、記録対象データを記録媒体105に記録するときの記録周期および記録時間を決定する例を示す。
【0034】
情報記録装置100が、自車両のイグニッションスイッチのオン等に応じて動作を開始すると、周辺情報取得部101および車両情報取得部102がそれぞれ周辺情報および車両情報を取得する(ステップS11)。車両情報および周辺情報のうちの記録対象データは、情報記録装置100が持つバッファーに記憶される(ステップS12)。
【0035】
記録形式決定部103は、自車両に記録イベントが発生したか否かを確認する(ステップS13)。記録イベントが発生していなければ(ステップS13でNO)、ステップS11およびステップS12が繰り返し実行される。
【0036】
記録イベントが発生すれば(ステップS13でYES)、記録形式決定部103は、ECU200のCPU負荷が高負荷か否かを確認する(ステップS14)。ECU200のCPU負荷が高負荷であれば(ステップS14でYES)、データの欠損を防ぐため、記録形式決定部103は、記録対象データを記録媒体105に記録するときの記録周期および記録時間を、バッファー内の記録対象データの記録周期および記録時間と同じにする。この場合、記録部104は、バッファー内の記録対象データをそのまま記録媒体105に記録する(ステップS15)。
【0037】
ECU200のCPU負荷が高負荷でなければ(ステップS14でNO)、記録形式決定部103は、発生した記録イベントが衝突/回避イベントであったか否かを確認する(ステップS16)。記録イベントが衝突/回避イベントであった場合(ステップS16でYES)、記録形式決定部103は、イベントの内容に応じて、バッファー内の記録対象データを記録媒体105の記録周期および記録時間を補正し、記録媒体105に記録される記録対象データのデータ量を削減する(ステップS17)。そして、記録部104が、補正後の記録対象データを記録媒体105に記録する(ステップS15)。
【0038】
記録イベントが衝突/回避イベントでなかった場合(ステップS16でNO)、記録形式決定部103は、自車両の走行速度に応じて、バッファー内の記録対象データを記録媒体105の記録周期および記録時間を補正し、記録媒体105に記録される記録対象データのデータ量を削減する(ステップS18)。そして、記録部104が、補正後の記録対象データを記録媒体105に記録する(ステップS15)。
【0039】
実施の形態1に係る情報記録装置100によれば、自車両の車両情報および周辺情報に応じて、記録対象データを記録媒体105に記録するときの記録周期および記録時間が決定されるため、車両システムの解析や動作解析に必要となる重要なデータを残しつつ、記録媒体105に記録するデータ量を削減することできる。
【0040】
<実施の形態2>
図7は、実施の形態2に係る情報記録装置100の構成を示すブロック図である。
図7の情報記録装置100の構成は、実施の形態1の構成(
図1)に対し、情報記録装置100にデータ選択部106を追加したものである。データ選択部106は、周辺情報および車両情報の少なくとも片方に基づいて、記録媒体105に記録する記録対象データを選択する。記録部104は、データ選択部106が選択した記録対象データを記録媒体105に記録する。
【0041】
実施の形態2では、データ選択部106が、自車両の運転支援制御情報(例えば、AD(Autonomous Driving)またはADAS(Advanced Driver-Assistance Systems)制御状態)、位置情報(例えば、GPS情報)、データ異常判定結果および故障判定結果のうちの少なくとも1つの情報に基づいて、記録媒体105に記録する記録対象データを選択するものとする。運転支援制御情報としては、例えば、AD(Autonomous Driving)制御の状態、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems)制御の状態などの情報がある。位置情報としては、例えば、GPS情報などがある。データ異常判定結果としては、例えば、CANなどの通信データのチェックサム異常の判定結果、固着判定(一定期間以上値の変化がないデータの有無)の判定結果、異常変化判定(前回値からの変化量が閾値以上のデータの有無)の判定結果などがある。
【0042】
例えば、後方AEBの作動を伴う記録イベントが発生した場合、データ選択部106は、後方の障害物に関するデータの重要度が高いと判断し、記録媒体105に記録する記録対象データとして、後方の障害物に関するデータを優先的に選択する。後方の障害物に関するデータに加え、自車両の走行速度、アクセル情報、ブレーキ情報、AEB作動情報、エアバッグ展開情報なども選択されてもよい。一方、前方の障害物に関するデータや、LKSの作動情報など、後方AEBの作動に関係しない情報は、選択の優先度を低くするか、選択されなくてもよい。
【0043】
また、データ選択部106は、データ異常が発生しているデータおよび当該データから生成される車両情報や周辺情報を除外して、記録媒体105に記録するデータを選択してもよい。
【0044】
また、データ選択部106は、故障が生じている他ECUやセンサから送信された車両情報や周辺情報を除外して、記録媒体105に記録するデータを選択してもよい。
【0045】
データ異常判定および故障判定の例についてさらに説明する。例えば、データ選択部106は、車両情報取得部102が取得した車両情報および周辺情報取得部101が取得した周辺情報に基づいて、データ異常判定および故障判定を行ってもよい。例えば、周辺情報取得部101が車載センサから受信した信号が設定範囲外であったり、受信周期が設定範囲よりも長すぎたり短すぎたりした場合は、当該車載センサに異常または故障が生じたと判定することができる。また、車載センサからの受信信号に含まれるカウント値が正しくカウントアップ、カウントダウンされていない場合や、チェックサムおよびメッセージ認証コードが誤っていた場合など、受信異常がある場合も、当該車載センサに異常または故障が生じたと判定することができる。また、車載センサおよび車載制御ユニットが出力した異常ステータス情報を読み取って各センサおよびユニットの異常を判定してもよい。
【0046】
図8は、実施の形態2に係る情報記録装置100の動作を示すフローチャートである。
図8のフローチャートは、
図6のフローチャートに対し、ステップS15の前に、データ選択部106が、記録媒体105に記録する記録対象データを選択する処理を行うステップS20を追加したものである。ステップS15では、記録部104は、データ選択部106が選択した記録対象データを記録媒体105に記録する。その他のステップは、
図6のフローチャートと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0047】
実施の形態2に係る情報記録装置100によれば、データ選択部106が選択した重要度の高い記録対象データのみが記録媒体105に記録されるため、重要なデータを残しつつ、記録媒体105に記録するデータ量をさらに削減することできる。
【0048】
なお、記録部104は、データ選択部106が選択した記録対象データに、その重要度を紐付けして記録媒体105に記録してもよい。例えば、記録媒体105の記憶容量の制約により、記録媒体105に記録済みの記録対象データの一部を削除する必要が生じた場合、単純に最も古い記録対象データから削除するのではなく、データの重要度を考慮して、例えば
図9のように、古い記録対象データのうち比較的重要度の低いデータから削除することもできる(
図9内の「高」、「中」、「低」はデータの重要度を示している)。これにより、重要度の高いデータが記録媒体105に保存される期間を長くすることができる。なお、重要度の高いデータであっても、一定以上古いデータは、削除対象となってもよい。
【0049】
<ハードウェア構成例>
図10および
図11は、それぞれ情報記録装置100のハードウェア構成の例を示す図である。
図1に示した情報記録装置100の構成要素の各機能は、例えば
図10に示す処理回路500により実現される。すなわち、情報記録装置100は、自車両の周辺の情報である周辺情報を取得し、自車両の情報である車両情報を取得し、自車両に特定のイベントが発生したときに、周辺情報および車両情報の少なくとも片方に基づいて、記録対象データの記録周期および記録時間を決定し、決定した記録周期および記録時間に従って、記録対象データを記録媒体に記録するための処理回路500を備える。処理回路500は、専用のハードウェアであってもよいし、メモリに格納されたプログラムを実行するプロセッサ(中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)とも呼ばれる)を用いて構成されていてもよい。
【0050】
処理回路500が専用のハードウェアである場合、処理回路500は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものなどが該当する。情報記録装置100の構成要素の各々の機能が個別の処理回路で実現されてもよいし、それらの機能がまとめて一つの処理回路で実現されてもよい。
【0051】
図11は、処理回路500がプログラムを実行するプロセッサ501を用いて構成されている場合における情報記録装置100のハードウェア構成の例を示している。この場合、情報記録装置100の構成要素の機能は、ソフトウェア等(ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせ)により実現される。ソフトウェア等はプログラムとして記述され、メモリ502に格納される。プロセッサ501は、メモリ502に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。すなわち、情報記録装置100は、プロセッサ501により実行されるときに、自車両の周辺の情報である周辺情報を取得する処理と、自車両の情報である車両情報を取得する処理と、自車両に特定のイベントが発生したときに、周辺情報および車両情報の少なくとも片方に基づいて、記録対象データの記録周期および記録時間を決定する処理と、決定した記録周期および記録時間に従って、記録対象データを記録媒体に記録する処理と、が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ502を備える。換言すれば、このプログラムは、情報記録装置100の構成要素の動作の手順や方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。
【0052】
ここで、メモリ502は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disc)およびそのドライブ装置のほか、今後使用されるあらゆる記憶媒体であってもよい。
【0053】
以上、情報記録装置100の構成要素の機能が、ハードウェアおよびソフトウェア等のいずれか一方で実現される構成について説明した。しかしこれに限ったものではなく、情報記録装置100の一部の構成要素を専用のハードウェアで実現し、別の一部の構成要素をソフトウェア等で実現する構成であってもよい。例えば、一部の構成要素については専用のハードウェアとしての処理回路500でその機能を実現し、他の一部の構成要素についてはプロセッサ501としての処理回路500がメモリ502に格納されたプログラムを読み出して実行することによってその機能を実現することが可能である。
【0054】
以上のように、情報記録装置100は、ハードウェア、ソフトウェア等、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0055】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0056】
<付記>
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0057】
(付記1)
自車両の周辺の情報である周辺情報を取得する周辺情報取得部と、
前記自車両の情報である車両情報を取得する車両情報取得部と、
前記自車両に特定のイベントが発生したときに、前記周辺情報および前記車両情報の少なくとも片方に基づいて、記録対象データの記録周期および記録時間を決定する記録形式決定部と、
前記記録形式決定部が決定した前記記録周期および前記記録時間に従って、前記記録対象データを記録媒体に記録する記録部と、
を備える情報記録装置。
【0058】
(付記2)
前記記録形式決定部は、発生した前記特定のイベントの内容、前記自車両の走行速度、前記情報記録装置の処理負荷のうちの少なくとも1つの情報に基づいて、前記記録対象データの前記記録周期および前記記録時間を決定する、
付記1に記載の情報記録装置。
【0059】
(付記3)
前記記録形式決定部は、さらに前記記録対象データの重要度に基づいて、前記記録対象データの全てのデータまたは特定のデータの前記記録周期および前記記録時間を決定する、
付記1または付記2に記載の情報記録装置。
【0060】
(付記4)
前記周辺情報および前記車両情報の少なくとも片方に基づいて前記記録対象データを選択するデータ選択部をさらに備え、
前記記録部は、前記データ選択部が選択した前記記録対象データを前記記録媒体に記録する、
付記1から付記3のいずれか一つに記載の情報記録装置。
【0061】
(付記5)
前記データ選択部は、前記自車両の運転支援制御情報、位置情報、データ異常判定結果および故障判定結果のうちの少なくとも1つの情報に基づいて、前記記録対象データを選択する、
付記4に記載の情報記録装置。
【0062】
(付記6)
情報記録装置の周辺情報取得部が、自車両の周辺の情報である周辺情報を取得し、
前記情報記録装置の車両情報取得部が、前記自車両の情報である車両情報を取得し、
前記自車両に特定のイベントが発生したときに、前記情報記録装置の記録形式決定部が、前記周辺情報および前記車両情報の少なくとも片方に基づいて、記録対象データの記録周期および記録時間を決定し、
前記情報記録装置の記録部が、前記記録形式決定部が決定した前記記録周期および前記記録時間に従って、前記記録対象データを記録媒体に記録する、
情報記録方法。
【符号の説明】
【0063】
100 情報記録装置、101 周辺情報取得部、102 車両情報取得部、103 記録形式決定部、104 記録部、105 記録媒体、106 データ選択部、200 ECU、201 制御演算部、300 アクチュエータ、500 処理回路、501 プロセッサ、502 メモリ。