(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170055
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】取付具
(51)【国際特許分類】
F16L 3/08 20060101AFI20241129BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
F16L3/08 D
F16B5/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087005
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000119830
【氏名又は名称】因幡電機産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】清水 明
【テーマコード(参考)】
3H023
3J001
【Fターム(参考)】
3H023AA03
3H023AC08
3H023AD26
3H023AE06
3J001FA19
3J001GB01
3J001GC09
3J001GC12
3J001HA02
3J001JA03
3J001KA19
3J001KB04
(57)【要約】
【課題】取付具における固定部の取付部からの延出長さを極力短くしながら、取付具の固定に使用する電動工具が取付具の取付部又は対象物に干渉するのを抑制できるようにした上で、取付具の固定強度面での安定性の低下などを回避できるようにする。
【解決手段】第1方向Xに延びる取付部10から第1方向Xと直交する第2方向Yの外方側に延びて固定具6にて被固定面Cに固定される固定部20が備えられ、固定部20には、固定具6が刺し通される貫通孔21aと、固定具6の押圧部6Aにて押圧される被押圧面21bとを有して、固定具6による固定部20の被固定面Cへの押し付けを可能にする押付面部21が備えられ、少なくとも、押付面部21の一部が第2方向Yの外方側を向く斜め外方向き面部分21Bに形成されるとともに、斜め外方向き面部分21Bに貫通孔21aを有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びてその一方の延出端側にて対象物が取り付けられる取付部と、当該取付部の他方の延出端側から前記第1方向と直交する第2方向の外方側に延びて固定具にて被固定面に固定される固定部とが備えられた取付具であって、
前記固定部には、前記対象物の設置空間側から前記固定具が刺し通される貫通孔と、当該貫通孔に刺し通された前記固定具の押圧部にて押圧される被押圧面とを有して、前記固定具による前記固定部の前記被固定面への押し付けを可能にする押付面部が備えられ、
少なくとも、前記押付面部の一部が前記第2方向の外方側を向く斜め外方向き面部分に形成されるとともに、当該斜め外方向き面部分に前記貫通孔を有している取付具。
【請求項2】
前記斜め外方向き面部分の向きが、前記対象物の設置空間から前記第2方向の外方側に外れた非設置空間向きに設定されている請求項1に記載の取付具。
【請求項3】
前記斜め外方向き面部分の前記貫通孔よりも前記第2方向の外方側には、前記被固定面に接触する接触部が備えられている請求項1又は2に記載の取付具。
【請求項4】
前記押付面部は、その前記第2方向の内方側端部が前記第1方向に沿って前記対象物の設置空間側を向く第1方向向き面部分になるとともに、前記第2方向の外方側が前記斜め外方向き面部分になる形態で湾曲する湾曲部に形成され、
前記貫通孔が、前記湾曲部の湾曲方向に沿って延びる長孔に形成されるとともに、前記被押圧面が、前記長孔に沿って延びる長円に形成されている請求項1又は2に記載の取付具。
【請求項5】
前記固定部は、少なくとも前記第2方向における前記押付面部よりも外方側に、前記被固定面との面接触を可能にする面接触部が備えられている請求項4に記載の取付具。
【請求項6】
前記固定部は、その前記対象物の設置空間側に面する表面の全体が斜め外側方向を向く傾斜片で形成され、
前記傾斜片における前記第2方向の外方側が前記押付面部に形成されている請求項1又は2に記載の取付具。
【請求項7】
前記傾斜片の前記取付部側には、前記被固定面に向けて突出する脚部が備えられている請求項6に記載の取付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1方向に延びてその一方の延出端側にて対象物が取り付けられる取付部と、当該取付部の他方の延出端側から前記第1方向と直交する第2方向の外方側に延びて固定具にて被固定面に固定される固定部とが備えられた取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術としては、例えば、建物の壁に沿って配置される固定部(ベース部)と、固定部の表面から、表面に対して直交するように突出して形成された取付部とを有するT字状に形成された取付具がある。このような取付具の固定部を建物の壁面などの被固定面に固定する場合は、電動ドライバなどの電動工具を使用して、ビスなどの固定具を、固定部の左右両端側(第2方向の両外方側)に形成された貫通孔に刺し通すようにしながら壁などにねじ込むことにより、取付具の取付部を壁面などの被固定面から垂直方向に突出させた状態で、取付具の固定部を被固定面に固定することができる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の取付具においては、その固定部を、例えば、嵩の大きい電動ドライバなどを使用して建物の壁などにビス止め固定する際に、固定部から突出する取付部と電動ドライバとが干渉することがある。このような干渉が生じると、ビスなどの固定具が、取付具の固定部や被固定面に対して斜め方向からねじ込まれることになる。しかしながら、取付具の固定部は、固定具の斜め方向からのねじ込みには対応していないことから、このときの固定具による固定部の固定状態では、固定具における頭部などの押圧部の一部が取付具の固定部に押し当てられるだけで、押圧部の大部分が取付具の固定部から浮いた状態になる。そのため、固定具の押圧部による被固定面に対する固定部の押し付けが適切に行われないことに起因した取付具の固定強度面での安定性の低下などを招くことになる。
【0005】
又、取付具の施工方法には、配管などの対象物を設置する前の段階で、計画された配管経路に基づいて取付具を被固定面の所定位置に固定する先施工方法と、対象物を設置又は仮設置することで決まる対象物の固定位置に基づいて取付具を被固定面の所定位置に固定する後施工方法とがある。
【0006】
取付具の固定を後施工方法で行う場合には、取付具の固定部を被固定面にビスなどの固定具にて固定する際に、その固定に使用する電動ドライバなどの電動工具が、先に設置又は仮設置された対象物と干渉することにより、固定具が、取付具の固定部や被固定面に対してより浅い角度で斜め方向からねじ込まれることになる。そのため、固定具の押圧部による被固定面に対する固定部の押し付けが適切に行われないことに起因した取付具の固定強度面での安定性の低下などが顕著になる。
【0007】
上記のような取付具の固定強度面での安定性の低下などを回避するにあたり、取付具の固定を後施工方法で行う場合を考慮して、取付具における固定部の取付部からの延出長さを、対象物と電動工具との干渉を回避することが可能な程度に長くすることが考えられる。しかしながら、この場合には、対象物が大きいほど固定部の取付部からの延出長さを長くする必要があることから、固定部の長さが長くなることに起因した取付具の固定強度面での安定性の低下などを招くことになる。
【0008】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、取付具における固定部の取付部からの延出長さを極力短くしながら、取付具の固定に使用する電動工具が取付具の取付部又は対象物に干渉するのを抑制できるようにした上で、取付具の固定強度面での安定性の低下などを回避できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1特徴構成は、第1方向に延びてその一方の延出端側にて対象物が取り付けられる取付部と、当該取付部の他方の延出端側から前記第1方向と直交する第2方向の外方側に延びて固定具にて被固定面に固定される固定部とが備えられた取付具であって、
前記固定部には、前記対象物の設置空間側から前記固定具が刺し通される貫通孔と、当該貫通孔に刺し通された前記固定具の押圧部にて押圧される被押圧面とを有して、前記固定具による前記固定部の前記被固定面への押し付けを可能にする押付面部が備えられ、
少なくとも、前記押付面部の一部が前記第2方向の外方側を向く斜め外方向き面部分に形成されるとともに、当該斜め外方向き面部分に前記貫通孔を有している点にある。
【0010】
本構成によると、少なくとも、取付具の固定部に備えられた押付面部の一部が前述した貫通孔を有する斜め外方向き面部分であることにより、取付具の固定部を、例えば嵩の大きい電動ドライバや釘打ち機などの電動工具を使用したビスや釘などの固定具のねじ込みや打ち込みなどで建物の壁面などの被固定面に固定する場合には、固定部の押付面部における斜め外方向き面部分の貫通孔を使用して、この斜め外方向き面部分に対する垂直方向から固定具を電動工具にてねじ込む又は打ち込むことができる。よって、電動工具が取付具の取付部に干渉するのを抑制しながら、固定具にて取付具の固定部を被固定面に固定することができる。
【0011】
つまり、取付具の固定部に備えられた押付面部の少なくとも一部が前述した貫通孔を有する斜め外方向き面部分であることにより、例えば押付面部の全体が取付部に沿う方向(第1方向)を向いている場合に比較して、固定部の取付部からの延出長さを短くすることを可能にしながら、電動ドライバや釘打ち機などの電動工具が取付具の取付部に干渉するのを抑制した状態で、固定具にて取付具の固定部を被固定面に固定することができる。
【0012】
そして、このときの固定具による固定部の固定状態では、固定具が斜め外方向き面部分に対する垂直方向から固定部の貫通孔に刺し通されて被固定面側に入り込むことにより、固定具の押圧部が対向する押付面部の被押圧面に対して片寄りなく好適に押し当てられた状態になる。これにより、固定具の押圧部による被固定面に対する固定部の押し付けを適切に行うことができる。
【0013】
その結果、取付具における固定部の取付部からの延出長さを極力短くしながらも、取付具の固定に使用する電動工具が取付具の取付部に干渉するのを抑制することができる上に、固定具の押圧部による被固定面に対する固定部の押し付けを適切に行えることで、取付具の固定強度面での安定性の低下などを回避することができる。
【0014】
本発明の第2特徴構成は、前記斜め外方向き面部分の向きが、前記対象物の設置空間から前記第2方向の外方側に外れた非設置空間向きに設定されている点にある。
【0015】
本構成によると、斜め外方向き面部分の向きが非設置空間向きに設定されていることにより、例えば、取付具の施工方法が、対象物を設置する前の段階で取付具を被固定面の所定位置に固定する先施工方法であり、かつ、取付具の固定に嵩の大きい電動ドライバなどの電動工具を使用する場合や、取付具の施工方法が、対象物を設置又は仮設置することで決まる対象物の固定位置に基づいて取付具を被固定面の所定位置に固定する後施工方法である場合は、非設置空間向きとなる斜め外方向き面部分の貫通孔を使用して、この斜め外方向き面部分に対する垂直方向から例えばビスなどの固定具を電動ドライバなどの電動工具にてねじ込むことなどにより、電動工具が取付具の取付部や先に設置又は仮設置された対象物に干渉するのを抑制しながら、固定具にて取付具の固定部を被固定面に固定することができる。
【0016】
そして、このときの固定具による固定部の固定状態においても、固定具が斜め外方向き面部分に対する垂直方向から斜め外方向き面部分の貫通孔に刺し通されて被固定面側に入り込むことにより、固定具の押圧部が対向する押付面部の被押圧面に対して片寄りなく好適に押し当てられた状態になる。これにより、固定具の押圧部による被固定面に対する固定部の押し付けを適切に行うことができる。
【0017】
その結果、取付具における固定部の取付部からの延出長さを極力短くしながらも、取付具の施工方法などにかかわらず、取付具の固定に使用する電動工具が取付具の取付部や先に設置又は仮設置された対象物に干渉するのを抑制することができる上に、固定具の押圧部による被固定面に対する固定部の押し付けを適切に行えることで、取付具の固定強度面での安定性の低下などを回避することができる。
【0018】
本発明の第3特徴構成は、前記斜め外方向き面部分の前記貫通孔よりも前記第2方向の外方側には、前記被固定面に接触する接触部が備えられている点にある。
【0019】
本構成によると、取付具の固定部が固定具にて被固定面に固定される場合には、固定部の貫通孔に刺し通される固定具の押圧部が固定部の被押圧面を押圧することで、斜め外方向き面部分の貫通孔よりも第2方向の外方側に備えられた接触部が被固定面に接触する。これにより、固定具の押圧部による被固定面に対する固定部の押し付けを安定性良く行うことができる。
その結果、取付具の固定強度面での安定性を向上させることができる。
【0020】
本発明の第4特徴構成は、前記押付面部は、その前記第2方向の内方側端部が前記第1方向に沿って前記対象物の設置空間側を向く第1方向向き面部分になるとともに、前記第2方向の外方側が前記斜め外方向き面部分になる形態で湾曲する湾曲部に形成され、
前記貫通孔が、前記湾曲部の湾曲方向に沿って延びる長孔に形成されるとともに、前記被押圧面が、前記長孔に沿って延びる長円に形成されている点にある。
【0021】
本構成によると、取付具の固定に使用する電動ドライバなどの電動工具の大きさや、取付具の施工方法、あるいは、取付具に対する対象物の大きさ(第2方向の長さ)などに応じて、取付具の固定に使用する押付面部の面部分として、第1方向向き面部分と、斜め外方向き面部分又は非設置空間向きの斜め外方向き面部分とを適宜選択することができる。しかも、押付面部が湾曲部であることにより、押付面部の第2方向での延出長さを極力短くしながら、押付面部において取付具の固定に使用する面部分の選択の自由度を高くすることができる。
【0022】
そして、選択した押付面部の面部分に対して、その垂直方向から例えばビスなどの固定具を電動ドライバにてねじ込むことなどにより、電動工具が取付具の取付部や先に設置又は仮設置された対象物に干渉するのを抑制しながら、固定具にて取付具の固定部を被固定面に固定することができる。
【0023】
しかも、このときの固定具による固定部の固定状態においても、固定具が、選択した押付面部の面部分に対する垂直方向から固定部の貫通孔に刺し通されて被固定面側に入り込むことにより、固定具の押圧部が選択した面部分の被押圧面に対して片寄りなく好適に押し当てられた状態になる。これにより、固定具の押圧部による被固定面に対する固定部の押し付けを適切に行うことができる。
【0024】
その結果、取付具を、その固定に使用する電動工具の大きさや、取付具の施工方法、あるいは、取付具に対する対象物の大きさなどにかかわらず、取付具の固定に使用する電動工具が取付具の取付部や先に設置又は仮設置された対象物に干渉するのを抑制することができる上に、電動工具の大きさや取付具に対する対象物の大きさなどに応じて、取付具の固定に使用する押付面部の面部分をより好適に選択することができて、固定具の押圧部による被固定面に対する固定部の押し付けをより適切に行える汎用性の高いものにしながら、取付具の固定強度面での安定性の低下などを回避することができる。
【0025】
本発明の第5特徴構成は、前記固定部は、少なくとも前記第2方向における前記押付面部よりも外方側に、前記被固定面との面接触を可能にする面接触部が備えられている点にある。
【0026】
本構成によると、取付具の固定部が固定具にて被固定面に固定される場合には、少なくとも固定部の延出方向である第2方向における押付面部よりも外方側に備えられた面接触部が被固定面に面接触することにより、固定具の押圧部による被固定面に対する固定部の押し付けをより安定性良く行うことができる。
その結果、取付具の固定強度面での安定性を向上させることができる。
【0027】
本発明の第6特徴構成は、前記固定部は、その前記対象物の設置空間側に面する表面の全体が斜め外側方向を向く傾斜片で形成され、
前記傾斜片における前記第2方向の外方側が前記押付面部に形成されている点にある。
【0028】
本構成によると、取付具の固定部を、その表面全体が前述した斜め外側方向を向く傾斜片にて比較的簡単に形成しながらも、取付具の固定部を嵩の大きい電動ドライバなどの電動工具を使用して被固定面に固定する場合には、傾斜片におけるその延出方向である第2方向の外方側に形成された押付面部に対して、その垂直方向から例えばビスなどの固定具を電動ドライバにてねじ込むことなどにより、電動工具が取付具の取付部や先に設置又は仮設置された対象物に干渉するのを抑制しながら、固定具にて取付具の固定部を被固定面に固定することができる。
【0029】
そして、このときの固定具による固定部の固定状態においても、固定具が斜め外方向き面部分に対する垂直方向から固定部の貫通孔に刺し通されて被固定面側に入り込むことにより、固定具の押圧部が対向する押付面部の被押圧面に対して片寄りなく好適に押し当てられた状態になる。これにより、固定具の押圧部による被固定面に対する固定部の押し付けを適切に行うことができる。
【0030】
その結果、取付具の固定部を傾斜片にて形成することによる構成の簡素化を図りながらも、取付具の固定に使用する電動工具が取付具の取付部や先に設置又は仮設置された対象物に干渉するのを抑制することができる上に、固定具の押圧部による被固定面に対する固定部の押し付けを適切に行うことができ、取付具の固定強度面での安定性の低下などを回避することができる。
【0031】
本発明の第7特徴構成は、前記傾斜片の前記取付部側には、前記被固定面に向けて突出する脚部が備えられている点にある。
【0032】
本構成によると、固定具にて取付具の固定部となる傾斜片を被固定面に固定する場合には、傾斜片の取付部側に備えた脚部が被固定面に当接することにより、傾斜片の取付部側が被固定面側に沈み込む不具合の発生を防止することができる。
【0033】
その結果、傾斜片の取付部側が被固定面側に沈み込むことや、その沈み込みで取付具が傾くことなどに起因した対象物の設置不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図2】第1実施形態での取付具(第1取付具)の構成を示す断面図
【
図3】第1実施形態での取付具(第1取付具)の構成を示す斜視図
【
図4】第1実施形態での取付具(第1取付具)の別の構成を示す断面図
【
図5】第2実施形態での取付具(第2取付具)の構成を示す斜視図
【
図6】第2実施形態での取付具(第2取付具)の構成を示す断面図
【
図7】第2実施形態での取付具(第2取付具)の別の構成を示す断面図
【
図8】第2実施形態での取付具(第2取付具)の更に別の構成を示す断面図
【
図9】第3実施形態での取付具(第3取付具)を金属板製の溶接品とした場合の構成を示す斜視図
【
図10】第3実施形態での取付具(第3取付具)を金属板製の溶接品とした場合の構成を示す断面図
【
図11】第3実施形態での取付具(第3取付具)を金属板製のプレス加工品とした場合の構成を示す斜視図
【
図12】第3実施形態での取付具(第3取付具)を別の構成で金属板製の溶接品とした場合を示す斜視図
【
図13】第3実施形態での取付具(第3取付具)を別の構成で金属板製の溶接品とした場合を示す断面図
【
図14】第3実施形態での取付具(第3取付具)を別の構成で金属板製のプレス加工品とした場合を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0035】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係る取付具の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
【0036】
図1~2に示すように、本発明に係る取付具Aの一例である第1取付具A1は、対象物Bである断面円形の配管1又は配管1を覆う配管カバー2を、被固定面Cの一例である外壁3の外壁面3Aに沿って設置する場合に適用されている。
尚、本発明に係る取付具Aは、配管1などの対象物Bを被固定面Cの一例である外壁面3Aに沿って設置する場合に限らず、例えば、配線を覆う配線カバーなどの対象物Bを、床面や天井面などの被固定面Cに沿って設置する場合に適用することも可能である。
【0037】
本第1実施形態にて例示する第1取付具A1は、配管バンド4(支持具Dの一例)を介して配管1が取り付けられる第1使用状態と、カバー支持具5(支持具Dの一例)を介して配管カバー2が取り付けられる第2使用状態とに使い分けられている。第1使用状態の第1取付具A1は、配管1を設置する前の段階で、計画された配管経路に基づいて第1取付具A1を外壁面3Aの所定位置に固定する先施工方法にて外壁面3Aに固定されている。第2使用状態の第1取付具A1は、先施工方法にて外壁面3Aに固定された第1取付具A1に配管1を取り付けて設置した後、この配管1を配管カバー2で覆うことで決まる配管カバー2の固定位置に基づいて、第1取付具A1を外壁面3Aの所定位置に固定する後施工方法にて外壁面3Aに固定されている。
【0038】
図1~3に示すように、第1取付具A1は、金属板にプレス加工などを施して形成された金属板製のプレス加工品である。第1取付具A1には、第1方向Xに延びて、その一方の延出端側にて、配管バンド4やカバー支持具5などの支持具Dを介して、配管1や配管カバー2などの対象物Bが取り付けられる単一の取付部10が備えられている。又、第1取付具A1には、取付部10の他方の延出端側から第1方向Xと直交する第2方向Yの外方側に、互いに離れる逆向きに延びて、固定具の一例である皿ビス6にて外壁面3Aに固定される一対の固定部20が備えられている。
ちなみに、第1取付具A1を外壁面3Aなどの被固定面Cに固定した状態において、第1方向Xは被固定面Cに対する遠近方向となり、第2方向Yは被固定面Cに沿う方向となる。
尚、第1取付具A1は、金属板製のプレス加工品に限らず、複数の金属板を溶接して形成された金属板製の溶接品や樹脂成形された樹脂成形品などであってもよい。又、固定具は、皿ビス6に限らず例えば鍋ビスや釘などであってもよい。
【0039】
取付部10には、ボルト・ナットなどのねじ式締結具7による取付部10に対する配管バンド4やカバー支持具5などの取り付けを可能にする取付孔10aが備えられている。取付孔10aは、取付部10の延出方向である第1方向Xでの取付部10に対する配管バンド4やカバー支持具5などの位置調整を可能にする長孔に形成されている。
【0040】
図2~3に示すように、各固定部20は、それらの延出方向である第2方向Yの中間部に、配管1や配管カバー2の設置空間S1(
図2の参照)側から皿ビス6が刺し通される貫通孔21aと、固定部20の貫通孔周縁部分に形成されて、貫通孔21aに刺し通された皿ビス6の押圧部である頭部6A(
図2の参照)にて押圧される被押圧面21bとを有して、皿ビス6による各固定部20の外壁面3Aへの押し付けを可能にする押付面部21が備えられている。各固定部20は、それらの取付部10側(延出方向始端側)となる第2方向Yにおける押付面部21よりも内方側の部分と、取付部10から離れる外方側(延出方向終端側)となる第2方向Yにおける押付面部21よりも外方側の部分とのそれぞれに、外壁面3Aとの面接触を可能にする平坦形状の面接触部22,23が接触部として備えられている。
【0041】
押付面部21の被押圧面21bは、皿ビス6の頭部6Aの形状に応じて、貫通孔21aから離れる表面側ほど大きく開くすり鉢状に形成されている。これにより、貫通孔21aに刺し通された皿ビス6の頭部6Aを押付面部21の被押圧面21bにて安定性良く受け止められるようにしながら、皿ビス6の頭部6Aが押付面部21の表面から外方に突出するのを防止している。
【0042】
押付面部21は、その第2方向Yの内方側端部が第1方向Xに沿って配管1や配管カバー2の設置空間S1側を向く第1方向向き面部分21Aになるとともに、第2方向Yの外方側が、第1方向Xにおける配管1や配管カバー2の設置空間S1側で、かつ、第2方向Yにおける取付部10から離れる外方側を向く斜め外方向き面部分21Bになるように、斜め外側方向に膨らむ形態で小さい曲率で徐々に湾曲する湾曲部に形成されている。これに応じて、押付面部21の貫通孔21aが、押付面部(湾曲部)21の湾曲方向に沿って、第1方向向き面部分21Aと斜め外方向き面部分21Bとにわたって比較的長く延びる長孔に形成されるとともに、押付面部21の被押圧面21bが、長孔21aに沿って比較的長く延びる長円のすり鉢状に形成されている。又、各固定部20においては、押付面部21と、この押付面部21よりも第2方向Yの内方側に位置する面接触部22との間に、面接触部22における第2方向Yの外方側端部から押付面部21における第2方向Yの内方側端部にわたって斜め外側方向に向けて延びる傾斜部24が備えられている。
【0043】
以上の構成により、本第1実施形態にて例示する第1取付具A1においては、第1取付具A1の固定に使用する電動ドライバ(図示せず)の大きさや、第1取付具A1の施工方法などに応じて、第1取付具A1の固定に使用する押付面部21の面部分として、第1方向向き面部分21Aと斜め外方向き面部分21Bとのいずれかを適宜選択することができる。又、第1取付具A1に対する配管1や配管カバー2の大きさ(第2方向Yの長さ)に応じて、斜め外方向き面部分21Bを、配管1や配管カバー2の設置空間S1を向く設置空間向き部分21Baと、配管1や配管カバー2の設置空間S1から第2方向Yの外方側に外れた非設置空間S2を向く非設置空間向き部分21Bbとに分けることができる(
図2の参照)。そして、押付面部21が小さい曲率で徐々に湾曲する湾曲部であり、これに応じて、押付面部21の貫通孔21aが比較的長い長孔に形成されることにより、押付面部21の第2方向Yでの延出長さを極力短くしながら、押付面部21において第1取付具A1の固定に使用する面部分の選択の自由度を高くすることができる。
【0044】
これらの点から、例えば、第1取付具A1を前述した先施工方法にて使用するにあたって、第1取付具A1の固定に使用する電動ドライバが、第1取付具A1の取付部10との干渉を考慮する必要のない比較的小さいものである場合は、第1取付具A1の固定に使用する押付面部21の面部分として、第1方向向き面部分21Aを選択することができる。そして、選択した第1方向向き面部分21Aに対する垂直方向から電動ドライバによる皿ビス6のねじ込みを行うことにより、電動ドライバが第1取付具A1の取付部10に干渉するのを抑制しながら、外壁3に対する皿ビス6のねじ込み深さを深くした安定状態で、第1取付具A1の各固定部20を皿ビス6にて外壁3に固定することができる。
【0045】
又、第1取付具A1を前述した先施工方法にて使用するにあたって、第1取付具A1の固定に使用する電動ドライバが、第1取付具A1の取付部10との干渉を考慮する必要のある比較的大きいものである場合は、第1取付具A1の固定に使用する押付面部21の面部分として、斜め外方向き面部分21Bを選択することができる。又、使用する電動ドライバの大きさに応じて、選択した斜め外方向き面部分21Bの範囲内からより好適な面部分を選択することができる。そして、斜め外方向き面部分21Bの範囲内から選択した面部分に対する垂直方向から電動ドライバによる皿ビス6のねじ込みを行うことにより、電動ドライバが第1取付具A1の取付部10に干渉するのを抑制しながら、外壁3に対する皿ビス6のねじ込み深さを極力深くした安定状態で、第1取付具A1の各固定部20を皿ビス6にて外壁3に固定することができる。
ちなみに、第1取付具A1の固定に使用する固定具が釘である場合は、外壁面3Aに対する釘の打ち込み方向が斜め方向になることで、外壁面3Aに対する釘の打ち込み方向が垂直方向になる場合に比較して、釘を外壁3から抜け難くすることができる。
【0046】
更に、第1取付具A1を前述した後施工方法にて使用する場合は、第1取付具A1の固定に使用する押付面部21の面部分として、斜め外方向き面部分21Bの非設置空間向き部分21Bbを選択することができる。又、使用する電動ドライバの大きさに応じて、選択した非設置空間向き部分21Bbの範囲内からより好適な面部分を選択することができる。そして、非設置空間向き部分21Bbの範囲内から選択した面部分に対する垂直方向から電動ドライバによる皿ビス6のねじ込みを行うことにより、電動ドライバが配管カバー2に干渉するのを抑制しながら、外壁3に対する皿ビス6のねじ込み深さを極力深くした安定状態で、第1取付具A1の各固定部20を皿ビス6にて外壁3に固定することができる。
【0047】
そして、上記のように第1取付具A1の各固定部20を皿ビス6にて外壁3に固定した状態では、皿ビス6が選択した押付面部21の面部分に対する垂直方向から各固定部20の貫通孔21aに刺し通されて外壁3に入り込むことにより、皿ビス6の頭部6Aが対向する面部分の被押圧面21bに対して片寄りなく好適に押し当てられた状態になる。これにより、皿ビス6の頭部6Aによる外壁面3Aに対する各固定部20の押し付けを適切に行うことができるとともに、皿ビス6における頭部6Aの一部が被押圧面21bから浮いた状態になる見栄えの低下を回避することができる。
【0048】
しかも、各固定部20における第2方向Yの内方側部分と外方側部分とに備えられた面接触部22,23が外壁面3Aに面接触することにより、皿ビス6の頭部6Aによる外壁面3Aに対する各固定部20の押し付けをより安定性良く行うことができる。
【0049】
その結果、第1取付具A1を、その固定に使用する電動ドライバの大きさや、第1取付具A1の施工方法、あるいは、第1取付具A1に対する配管カバー2の大きさなどにかかわらず、電動ドライバが第1取付具A1の取付部10や配管カバー2に干渉するのを抑制することができる上に、皿ビス6の頭部6Aによる外壁面3Aに対する各固定部20の押し付けを適切に安定性良く行える汎用性の高いものにしながら、第1取付具A1の固定強度面での安定性の低下などを回避することができる。
【0050】
尚、本第1実施形態においては、押付面部21を、その第2方向Yの内方側端部が第1方向向き面部分21Aになるとともに、第2方向Yの外方側が斜め外方向き面部分21Bになるように、斜め外側方向に膨らむ形態で湾曲する湾曲部としたが、これに限らず、例えば、
図4に示すように、押付面部21を、その第2方向Yの外方側端部が第1方向向き面部分21Aになるとともに、第2方向Yの内方側が斜め外方向き面部分21Bになるように、斜め内側方向に窪む形態で湾曲する湾曲部としてもよい。
【0051】
又、本第1実施形態においては、押付面部21の貫通孔21aとして、第1方向向き面部分21Aと斜め外方向き面部分21Bとにわたる長孔に形成したものを例示したが、これに限らず、例えば、貫通孔21aとして、第1方向向き面部分21Aには丸孔を、斜め外方向き面部分21Bには、押付面部(湾曲部)21の湾曲方向に沿う長孔を、それぞれ個別に形成するようにしてもよい。更に、第1方向向き面部分21Aには貫通孔21aを形成せずに、斜め外方向き面部分21Bのみに前述した長孔からなる貫通孔21aを形成するようにしてもよい。
【0052】
そして、第1方向向き面部分21Aに丸孔からなる貫通孔21aを形成する場合は、丸孔の周縁部分に、円形のすり鉢状に形成された被押圧面21bが備えられる。又、斜め外方向き面部分21Bに長孔からなる貫通孔21aを形成する場合は、長孔の周縁部分に、長円のすり鉢状に形成された被押圧面21bが備えられる。
【0053】
〔第2実施形態〕
以下、本発明に係る取付具の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、本第2実施形態にて例示する取付具は、上記の第1実施形態にて例示した取付具とは固定部の構成が異なるだけであることから、以下においては、固定部の構成についてのみ説明する。
【0054】
図5~6に示すように、本第2実施形態にて例示する取付具Aの一例である第2取付具A2の各固定部30は、それらの延出方向である第2方向Yの中間部に、配管1や配管カバー2の設置空間S1(
図6の参照)側から皿ビス6が刺し通される貫通孔31aと、固定部30の貫通孔周縁部分に形成されて、貫通孔31aに刺し通された皿ビス6の頭部6A(
図6の参照)にて押圧される被押圧面31bとを有して、皿ビス6による各固定部30の外壁面3Aへの押し付けを可能にする押付面部31が備えられている。各固定部30は、それらの取付部10側(延出方向始端側)となる第2方向Yにおける押付面部31よりも内方側の部分と、取付部10から離れる外方側(延出方向終端側)となる第2方向Yにおける押付面部31よりも外方側の部分とのそれぞれに、外壁面3Aとの面接触を可能にする平坦形状の面接触部32,33が接触部として備えられている。
【0055】
押付面部31の被押圧面31bは、皿ビス6の頭部6Aの形状に応じて、貫通孔31aから離れる表面側ほど大きく開くすり鉢状に形成されている。これにより、貫通孔31aに刺し通された皿ビス6の頭部6Aを押付面部31の被押圧面31bにて安定性良く受け止められるようにしながら、皿ビス6の頭部6Aが押付面部31の表面から外方に突出するのを防止している。
【0056】
押付面部31は、その第2方向Yの内方側端部が第1方向Xに沿って配管1や配管カバー2の設置空間S1側を向く第1方向向き面部分31Aになるとともに、第2方向Yの外方側が、第1方向Xにおける配管1や配管カバー2の設置空間S1側で、かつ、第2方向Yにおける取付部10から離れる外方側を向く斜め外方向き面部分31Bになるように、斜め外側方向に膨らむ形態で大きい曲率で湾曲する湾曲部に形成されている。これに応じて、押付面部31の貫通孔31aが、押付面部(湾曲部)31の湾曲方向に沿って、第1方向向き面部分31Aと斜め外方向き面部分31Bとにわたって比較的短く延びる長孔に形成されるとともに、押付面部31の被押圧面31bが、長孔31aに沿って比較的短く延びる長円のすり鉢状に形成されている。又、各固定部30においては、押付面部31と、この押付面部31よりも第2方向Yの内方側に位置する面接触部32との間に、面接触部32における第2方向Yの外方側端部から押付面部31における第2方向Yの内方側端部にわたって斜め外側方向に向けて延びる傾斜部34が備えられている。
【0057】
以上の構成により、本第2実施形態にて例示する第2取付具A2においては、第2取付具A2の固定に使用する電動ドライバ(図示せず)の大きさや、第2取付具A2の施工方法などに応じて、第2取付具A2の固定に使用する押付面部31の面部分として、第1方向向き面部分31Aと斜め外方向き面部分31Bとのいずれかを適宜選択することができる。又、第2取付具A2に対する配管1や配管カバー2の大きさ(第2方向Yの長さ)に応じて、斜め外方向き面部分31Bを、配管1や配管カバー2の設置空間S1を向く設置空間向き部分31Baと、配管1や配管カバー2の設置空間S1から第2方向Yの外方側に外れた非設置空間S2を向く非設置空間向き部分31Bbとに分けることができる(
図6の参照)。そして、押付面部31が大きい曲率で湾曲する湾曲部であり、これに応じて、押付面部31の貫通孔31aが比較的短い長孔に形成されることにより、押付面部31の第2方向Yでの延出長さを極力短くしながら、押付面部31において第2取付具A2の固定に使用する面部分の選択の自由度を確保しつつ、貫通孔31aを長孔にすることに起因した外壁面3Aに対する第2取付具A2の第2方向Yでの位置ずれを抑制することができる。
【0058】
これらの点から、例えば、第2取付具A2を前述した先施工方法にて使用するにあたって、第2取付具A2の固定に使用する電動ドライバが、第2取付具A2の取付部10との干渉を考慮する必要のない比較的小さいものである場合や、第2取付具A2の固定に使用する電動ドライバが、第2取付具A2の取付部10との干渉を考慮する必要のある比較的大きいものである場合、あるいは、第2取付具A2を前述した後施工方法にて使用する場合のいずれにおいても、前述した第1実施形態の第1取付具A1と同様に、第2取付具A2の固定に使用する押付面部31の面部分として、それぞれの場合に適した面部分を選択することができる。そして、選択した面部分に対する垂直方向から電動ドライバによる皿ビス6のねじ込みを行うことにより、電動ドライバが第2取付具A2の取付部10や配管カバー2に干渉するのを抑制しながら、外壁3に対する皿ビス6のねじ込み深さを極力深くし、かつ、外壁面3Aに対する第2取付具A2の第2方向Yでの位置ずれを抑制した安定状態で、第2取付具A2の各固定部30を皿ビス6にて外壁3に固定することができる。
【0059】
そして、上記のように第2取付具A2の各固定部30を皿ビス6にて外壁3に固定した状態では、皿ビス6が選択した押付面部31の面部分に対する垂直方向から各固定部30の貫通孔31aに刺し通されて外壁3に入り込むことにより、皿ビス6の頭部6Aが対向する面部分の被押圧面31bに対して片寄りなく好適に押し当てられた状態になる。これにより、皿ビス6の頭部6Aによる外壁面3Aに対する各固定部30の押し付けを適切に行うことができるとともに、皿ビス6における頭部6Aの一部が被押圧面31bから浮いた状態になる見栄えの低下を回避することができる。
【0060】
しかも、各固定部30における第2方向Yの内方側部分と外方側部分とに備えられた面接触部32,33が外壁面3Aに面接触することにより、皿ビス6の頭部6Aによる外壁面3Aに対する各固定部30の押し付けをより安定性良く行うことができる。
【0061】
その結果、第2取付具A2を、その固定に使用する電動ドライバの大きさや、第2取付具A2の施工方法、あるいは、第2取付具A2に対する配管カバー2の大きさなどにかかわらず、電動ドライバが第2取付具A2の取付部10や配管カバー2に干渉するのを抑制することができる上に、皿ビス6の頭部6Aによる外壁面3Aに対する各固定部30の押し付けを適切に安定性良く行える汎用性の高いものにしながら、第2取付具A2の固定強度面での安定性の低下などを回避することができる。
【0062】
尚、本第2実施形態においては、押付面部31を、その第2方向Yの内方側端部が第1方向向き面部分31Aになるとともに、第2方向Yの外方側が斜め外方向き面部分31Bになるように、斜め外側方向に膨らむ形態で大きい曲率で湾曲する湾曲部としたが、これに限らず、例えば、押付面部31を、その第2方向Yの内方側端部が第1方向向き面部分31Aになるとともに、第2方向Yの外方側が斜め外方向き面部分31Bになるように、斜め外側方向に張り出す形態で屈曲する屈曲部としてもよい。
【0063】
このように押付面部31を屈曲部とする場合においては、斜め外方向き面部分31Bの向きを、配管1や配管カバー2の設置空間S1から第2方向Yの外方側に外れた非設置空間S2を向く非設置空間向きに設定すると好適である。
【0064】
つまり、第2取付具A2を前述した先施工用の取付具として使用するにあたって、第2取付具A2の固定に使用する電動ドライバが、第2取付具A2の取付部10との干渉を考慮する必要のある比較的大きいものである場合や、第2取付具A2を前述した後施工用の取付具として使用する場合は、第2取付具A2の固定に使用する押付面部31の面部分として、斜め外方向き面部分31Bを選択することができる。そして、選択した斜め外方向き面部分31Bに対する垂直方向から電動ドライバによる皿ビス6のねじ込みを行うことにより、電動ドライバが第2取付具A2の取付部10や配管カバー2に干渉するのを抑制しながら、外壁3に対する皿ビス6のねじ込み深さを極力深くし、かつ、外壁面3Aに対する第2取付具A2の第2方向Yでの位置ずれを抑制した安定状態で、第2取付具A2の各固定部30を皿ビス6にて外壁3に固定することができる。
【0065】
又、上記のように押付面部31を屈曲部とする場合においては、皿ビス6が刺し通される貫通孔31aを、押付面部31の屈曲方向に沿って第1方向向き面部分31Aと斜め外方向き面部分31Bとにわたる長孔に形成するのに代えて、例えば、押付面部31の第1方向向き面部分31Aと斜め外方向き面部分31Bとのそれぞれに個別に形成される丸孔とし、押付面部31の被押圧面31bを、各丸孔の周縁部分に形成される円形のすり鉢状としてもよい。
【0066】
この構成によると、第2取付具A2の固定に使用する電動ドライバの大きさや、第2取付具A2の施工方法、あるいは、第2取付具A2に対する配管カバー2の大きさなどに応じて、第2取付具A2の固定に使用する押付面部31の面部分として、第1方向向き面部分31Aと斜め外方向き面部分31Bとを選択することができ、これにより、電動ドライバが第2取付具A2の取付部10や配管カバー2に干渉するのを抑制することができる。又、これに加えて、貫通孔31aを長孔とした場合に生じる虞のある、外壁面3Aに対する第2取付具A2の第2方向Yでの位置ずれ、あるいは、一対の固定部30に対する皿ビス6のねじ込み位置やねじ込み角度が大きく異なることに起因した第2取付具A2の固定強度面での安定性の低下や見栄えの低下などを防止することができる。
【0067】
更に、貫通孔31aを、押付面部31の第1方向向き面部分31Aと斜め外方向き面部分31Bとのそれぞれに個別に形成するのに代えて、例えば、斜め外方向き面部分31Bのみに形成するようにしてもよい。
【0068】
又、上記のように押付面部31を湾曲部や屈曲部とするのに代えて、例えば
図7に示すように、押付面部31の全体が斜め外方向き面部分31Bとなるように傾斜する傾斜部としてもよい。
【0069】
この構成によると、第2取付具A2を外壁面3Aに固定する場合には、第2取付具A2の固定に使用する電動ドライバの大きさや第2取付具A2の使用方法などにかかわらず、押付面部21に対する垂直方向から電動ドライバによる皿ビス6のねじ込みを行うことにより、電動ドライバが第2取付具A2の取付部10や配管カバー2に干渉するのを抑制しながら、外壁3に対する皿ビス6のねじ込み深さを極力深くし、かつ、外壁面3Aに対する第2取付具A2の第2方向Yでの位置ずれを防止した安定状態で、第2取付具A2の各固定部30を皿ビス6にて外壁3に固定することができる。
【0070】
又、例えば
図8に示すように、各固定部30を、それらの押付面部21の全体が斜め外方向き面部分31Bとなるように傾斜する傾斜部とした上で、各固定部30の第2方向Yにおける押付面部31よりも内方側において、面接触部32と傾斜部34とが備えられていない構成としてもよい。
【0071】
〔第3実施形態〕
以下、本発明に係る取付具の第3実施形態を図面に基づいて説明する。
【0072】
図9~10に示すように、本第3実施形態にて例示する取付具Aの一例である第3取付具A3は、単一の取付部10を形成する金属板としての第1鋼板PL1と、一対の固定部40を形成する金属板としての第2鋼板PL2とを溶接して形成された金属板製の溶接品である。
【0073】
第3実施形態において、取付部10は、第1方向Xに延びて、その一方の延出端側にて、配管バンド4やカバー支持具5などの支持具D(
図1~2の参照)を介して、配管1や配管カバー2などの対象物Bが取り付けられる。各固定部40は、取付部10の他方の延出端側から第1方向Xと直交する第2方向Yの外方側に、互いに離れる逆向きに延びて、固定具の一例である皿ビス6にて外壁面3Aに固定される。
【0074】
各固定部40は、その配管1や配管カバー2の設置空間S1側に面する表面の全体が、第1方向Xにおける配管1や配管カバー2の設置空間S1側で、かつ、第2方向Yにおける取付部10から離れる外方側となる斜め外側方向を向く傾斜片で形成されている。各固定部40(傾斜片)は、それらの取付部10から離れる第2方向Yの外方側が、配管1や配管カバー2の設置空間S1側から皿ビス6が刺し通される丸孔からなる貫通孔41aと、固定部40の貫通孔周縁部分に形成されて、貫通孔41aに刺し通された皿ビス6の頭部6A(
図10の参照)にて押圧される被押圧面41bとを有して、皿ビス6による各固定部40の外壁面3Aへの押し付けを可能にする押付面部41に形成されている。これにより、押付面部41は、その全体が斜め外側方向を向く斜め外方向き面部分41Bとなり、この斜め外方向き面部分41Bに貫通孔41aを有している。
【0075】
第3取付具A3においては、各押付面部41の向きが、配管1や配管カバー2の設置空間S1から第2方向Yの外方側に外れた非設置空間S2を向く非設置空間向きになるように、各固定部40の取付部10からの延出長さや、各固定部(傾斜片)40の外壁面3A(被固定面C)に対する傾斜角が設定されている。
【0076】
押付面部41の被押圧面41bは、皿ビス6の頭部6Aの形状に応じて、貫通孔41aから離れる表面側ほど大きく開くすり鉢状に形成されている。これにより、貫通孔41aに刺し通された皿ビス6の頭部6Aを押付面部41の被押圧面41bにて安定性良く受け止められるようにしながら、皿ビス6の頭部6Aが押付面部41の表面から外方に突出するのを防止している。
【0077】
各固定部(傾斜片)40は、それらの斜め外方向き面部分41Bの貫通孔41aよりも第2方向Yの外方側、具体的には、各固定部40における第2方向Yの外端部に、外壁面3A(被固定面C)に接触する接触部41cが備えられている。各固定部(傾斜片)40の取付部10側には、各固定部(傾斜片)40から外壁面3Aに向けて突出する一対の脚部42が備えられている。各脚部42は、第2鋼板PL2の取付部10側となる第2方向Yの内方側に突出形成された4つの脚部用舌片を、第1方向Xにおける取付部10の延在側とは反対側に折り曲げることで形成されている。
【0078】
以上の構成により、本第3実施形態にて例示する第3取付具A3においては、第3取付具A3の各固定部40を、それらの表面全体が前述した斜め外側方向を向く傾斜片にて比較的簡単に形成しながらも、第3取付具A3を外壁面3Aに固定する場合には、第3取付具A3の固定に使用する電動ドライバの大きさや第3取付具A3の施工方法などにかかわらず、押付面部41に対する垂直方向から電動ドライバによる皿ビス6のねじ込みを行うことにより、電動ドライバが第3取付具A3の取付部10や配管カバー2に干渉するのを抑制しながら、外壁3に対する皿ビス6のねじ込み深さを極力深くした安定状態で、第3取付具A3の各固定部40を皿ビス6にて外壁3に固定することができる。
【0079】
又、押付面部41が、その全体が斜め外側方向を向く斜め外方向き面部分41Bとなるように傾斜していることにより、押付面部41の全体を、外壁面3Aに沿う方向(第2方向Y)に延びる平坦部で形成する場合に比較して、押付面部41の第2方向Yでの延出長さを短くすることができる。
【0080】
そして、上記のように第3取付具A3の各固定部40を皿ビス6にて外壁3に固定した状態では、皿ビス6が押付面部41に対する垂直方向から各固定部40の貫通孔41aに刺し通されて外壁3に入り込むことにより、皿ビス6の頭部6Aが押付面部41の被押圧面41bに対して片寄りなく好適に押し当てられた状態になる。これにより、皿ビス6の頭部6Aによる外壁面3Aに対する各固定部40の押し付けを適切に行うことができるとともに、皿ビス6における頭部6Aの一部が被押圧面41bから浮いた状態になる見栄えの低下を回避することができる。
【0081】
更に、皿ビス6が刺し通される貫通孔41aが丸孔であることにより、貫通孔41aを長孔とした場合に生じる虞のある、外壁面3Aに対する第3取付具A3の第2方向Yでの位置ずれ、あるいは、一対の固定部40に対する皿ビス6のねじ込み位置が大きく異なることに起因した第3取付具A3の固定強度面での安定性の低下や見栄えの低下などを防止することができる。
【0082】
しかも、第3取付具A3の外壁3への固定状態では、各固定部40における第2方向Yの外端部に備えた接触部41cが外壁面3Aに接触するのに加えて、各固定部40の取付部10側に備えた各脚部42が外壁面3Aに当接することにより、各固定部40の取付部10側が外壁面3A側に沈み込む不具合の発生を防止することができる。これにより、各固定部40の取付部10側が外壁面3A側に沈み込むことや、その沈み込みで第3取付具A3が傾くことなどに起因した配管1や配管カバー2の設置不良を防止することができる。
【0083】
その結果、第3取付具A3の各固定部40を傾斜片にて形成することによる構成の簡素化を図りながらも、第3取付具A3を、その固定に使用する電動ドライバの大きさや第3取付具A3の施工方法などにかかわらず、電動ドライバが第3取付具A3の取付部10や配管カバー2に干渉するのを抑制することができる上に、皿ビス6の頭部6Aによる外壁面3Aに対する各固定部40の押し付けを適切に安定性良く行える汎用性の高いものにしながら、第3取付具A3の固定強度面での安定性の低下などを回避することができる。
【0084】
尚、本第3実施形態においては、第3取付具A3として金属板製の溶接品を例示したが、これに限らず、第3取付具A3は、
図11に示すような金属板製のプレス加工品であってもよく、又、図示は省略するが、樹脂成形された樹脂成形品などであってもよい。
【0085】
又、本第3実施形態においては、第3取付具A3として、各固定部(傾斜片)40の取付部10側に一対の脚部42が備えられたものを例示したが、これに限らず、例えば、
図12~14に示すように、取付部10における固定部40側の延出端部を、第1方向Xにおける取付部10の延在側と反対側に延伸させることで、第3取付具A3における第2方向Yの中央に単一の脚部43を備えるようにしてもよい。
【0086】
ちなみに、
図12~13には、第3取付具A3が金属板製の溶接品である場合において単一の脚部43が備えられた形態が示されている。この場合、一対の固定部40を形成する第2鋼板PL2における第2方向Yの中央部位には、取付部10を形成する第1鋼板PL1に備えられた脚部43が刺し通される脚部用の貫通孔44が形成されている。
【0087】
又、
図14には、第3取付具A3が金属板製のプレス加工品である場合において単一の脚部43が備えられた形態が示されている。この場合、各固定部40における取付部10側の一部が脚部43として切り起されている。
【0088】
図示は省略するが、前述した一対の脚部42や単一の脚部43に代えて、各固定部(傾斜片)40の取付部10側に、ビード加工により形成された脚部を備えるようにしてもよい。
【0089】
〔別実施形態〕
本発明の別実施形態について説明する。
尚、以下に説明する各別実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0090】
(1)上記の各実施形態においては、取付具Aとして、単一の取付部10が備えられたものを例示したが、これに限らず、例えば、
図15に示すように、一対の全ネジ軸11からなる単一の取付部10が備えられて、取付部10における一方の延出端側(配管1などの設置空間S1側)にて、支持具Dの一例である一対のバンド部材8A、8Bからなるレベルバンド8などを介して、配管1などの対象物Bを支持するように構成されたものであってもよい。
【0091】
図15に示す取付具Aにおいては、各取付部10における他方の延出端部が溶接されるベースプレート12が備えられており、一対の取付部10における他方の延出端部から第1方向Xと直交する第2方向Yで互いに離れる逆向きに延びる状態になるベースプレート12の両端側が、皿ビス6などの固定具にて外壁面3Aなどの被固定面Cに固定される一対の固定部50となるように屈曲形成されている。
【0092】
尚、
図15に示す取付具Aにおいて、各固定部50の押付面部51は、その全体が斜め外方向き面部分51Bとなるように傾斜する傾斜部となっており、前述した他の押付面部21,31,41と同様に貫通孔51aと被押圧面51bとを有している。
【0093】
(2)上記の各実施形態においては、押付面部21,31,41,51の斜め外方向き面部分21B,31B,41B,51Bとして、対象物Bの設置空間S1から第2方向Yの外方側に外れた非設置空間S2を向く非設置空間向き部分21Bb,31Bbを含む、又は、斜め外方向き面部分31B,41Bが非設置空間向き部分となるものを例示したが、これに限らず、斜め外方向き面部分21B,31B,41Bとしては非設置空間向き部分21Bb,31Bbを含まない(斜め外方向き面部分31B,41Bが設置空間向き部分となる)ものであってもよい。
【0094】
(3)上記の各実施形態においては、対象物Bの設置空間S1と非設置空間S2とを、対象物Bにおける第2方向Yの外端縁部に接する境界線を基準にして区画設定するようにしたが、これに限らず、例えば、取付具Aの固定に使用される電動工具の大きさを考慮して、対象物Bにおける第2方向Yの外端縁部から対象物Bの外方側に偏倚させた境界線を基準にして、設置空間S1側に電動工具の大きさを考慮した空間が含まれるように設置空間S1と非設置空間S2とを区画設定するようにしてもよい。
【0095】
(4)上記の各実施形態においては、取付具Aとして、取付部10から第2方向Yの外方側に延びる一対の固定部20,30,40が備えられたものを例示したが、これに限らず、例えば、取付部10から第2方向Yの一方の外方側に延びる単一の固定部20,30,40が備えられた略L字状に形成されたものであってもよい。
【0096】
(5)上記の各実施形態においては、取付具Aとして、固定部20,30,40,50における押付面部21,31,41,51の斜め外方向き面部分21B,31B,41B,51Bが、第2方向Yの外方側を向くように形成されたものを例示したが、これに限らず、例えば、取付具Aを外壁面3Aに固定する場合には、押付面部21,31,41,51の斜め外方向き面部分21B,31B,41B,51Bが、第2方向Yの外方側向きで、かつ、下方側向きになるように形成して、外壁面3Aに対する取付具Aの下方側からのビスなどの固定具6による固定を行い易くして、作業性の向上を図れるようにしてもよい。
【0097】
(6)上記の各実施形態においては、取付具Aを固定する固定具6に皿ビスを使用する場合を例示していることから、押付面部21,31,41,51の被押圧面21b,31b,41b,51bとして、皿ビス6の頭部6Aの形状に応じてすり鉢状に形成されたものを例示したが、これに限らず、例えば、固定具6に鍋ビスやトラスビスを使用する場合は、貫通孔21a,31a,41a,51aの周縁部分を形成する固定部20,30,40,50の平坦な表面部分が被押圧面21b,31b,41b,51bとなる。
【0098】
(7)上記の第1実施形態と第2実施形態においては、各固定部20,30の第2方向Yにおける押付面部21,31よりも外方側の部分に、被固定面Cとの面接触を可能にする平坦形状の面接触部23,33を備えるようにしたが、これに限らず、例えば、面接触部23,33に代えて、各固定部20の斜め外方向き面部分21Bにおける貫通孔21aよりも第2方向Yの外方側に位置する端縁部を、被固定面Cに接触する接触部として備えるようにしてもよい。
【0099】
(8)上記の第3実施形態においては、各固定部40における第2方向Yの外端部に、被固定面Cに接触する接触部41cを備えるようにしたが、これに限らず、例えば、接触部41cに代えて、各固定部40の第2方向Yにおける押付面部41よりも外方側の部分に、被固定面Cとの面接触を可能にする平坦形状の面接触部を備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 配管(対象物B)
2 配管カバー(対象物B)
3A 外壁面(被固定面C)
6 ビス(固定具)
6A 頭部
10 取付部
20 固定部(第1実施形態)
21 押付面部
21A 第1方向向き面部分
21B 斜め外方向き面部分
21a 貫通孔
21b 被押圧面
23 面接触部(接触部)
30 固定部(第2実施形態)
31 押付面部
31A 第1方向向き面部分
31B 斜め外方向き面部分
31a 貫通孔
31b 被押圧面
33 面接触部(接触部)
40 固定部(第3実施形態)
41 押付面部
41B 斜め外方向き面部分
41a 貫通孔
41b 被押圧面
41c 接触部
42 脚部
43 脚部
50 固定部(別実施形態)
51 押付面部
51B 斜め外方向き面部分
51a 貫通孔
51b 被押圧面
S1 設置空間
S2 非設置空間
X 第1方向
Y 第2方向