(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170057
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】ナットと連結構造
(51)【国際特許分類】
F16B 37/04 20060101AFI20241129BHJP
F16B 7/18 20060101ALI20241129BHJP
E04B 1/18 20060101ALI20241129BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
F16B37/04 K
F16B7/18 E
F16B7/18 D
F16B37/04 M
E04B1/18 G
E04B1/58 508H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087010
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】595034204
【氏名又は名称】SUS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092842
【弁理士】
【氏名又は名称】島野 美伊智
(74)【代理人】
【識別番号】100166578
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 芳光
(72)【発明者】
【氏名】長田 展幸
【テーマコード(参考)】
2E125
3J039
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA12
2E125AB16
2E125AC13
2E125AG12
2E125BD01
2E125BE07
2E125BF03
2E125CA04
3J039AA07
3J039BB02
3J039GA07
3J039GA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】雌ねじ部が設けられていない構造材の中空部に後付けで設置することができ、それによって、雌ねじ部を設けることなくその構造材に別の構造材を連結することができる連結構造を提供すること。
【解決手段】雌ネジ部を備えた内側部材35と、上記内側部材の外側に拡径可能に被冠された外側部材33と、を具備し、構造材の中空部内7に挿し込まれ、上記構造材の外側から上記内側部材に雄ネジ部材61を螺合させ、上記内側部材を上記雄ネジ部材側に引き寄せ、上記外側部材を拡径させて上記中空部内に押圧させ、上記内側部材と上記外側部材を上記中空部内に固定し、上記雄ネジ部材を撤去して上記内側部材と外側部材を上記中空部内に残置して構成されるもの。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌ネジ部を備えた内側部材と、上記内側部材の外側に拡径可能に被冠された外側部材と、を具備し、
構造材の中空部内に挿し込まれ、
上記構造材の外側から上記内側部材に雄ネジ部材を螺合させ、上記内側部材を上記雄ネジ部材側に引き寄せ、上記外側部材を拡径させて上記中空部内に押圧させ、上記内側部材と上記外側部材を上記中空部内に固定し、
上記雄ネジ部材を撤去して上記内側部材と外側部材を上記中空部内に残置して構成されることを特徴とするナット。
【請求項2】
請求項1記載のナットにおいて、
上記外側部材は一対の外側部材要素から構成されていることを特徴とするナット。
【請求項3】
請求項2記載のナットにおいて、
上記内側部材の外周面はテーパー面となっていて、
上記一対の外側部材要素の内周面もテーパー面となっていて、
上記雄ネジ部材を上記内側部材に螺合させ、上記雄ネジ部材側に引き寄せることにより、上記両テーパー面の作用により上記一対の外側部材要素が拡径方向に移動して上記中空部の内周面に押圧され、それによって、上記内側部材と外側部材が上記構造材の中空部に固定されることを特徴とするナット。
【請求項4】
請求項3記載のナットにおいて、
上記構造材の中空部はその横断面形状が四角形であり、
上記外側部材の横断面形状も四角形であり、
上記一対の外側部材要素は四角形を横断面において対角線上に二分した形状をなすものであることを特徴とするナット。
【請求項5】
請求項4記載のナットにおいて、
上記内側部材の上記中空部内に挿し込まれる側の端には鍔部が設けられていて、上記鍔の横断面形状も四角形であることを特徴とするナット。
【請求項6】
請求項4記載のナットにおいて、
上記外側部材要素の上記鍔部と反対側の端の内周面にはストッパ部が設けられていることを特徴とするナット。
【請求項7】
中空部を備えた第1構造材と、
上記中空部内に設置された請求項1~請求項6の何れかに記載のナットと、
貫通孔を備えた第2構造材と、
上記第2構造材を上記第1構造材に当接させ、雄ネジ部材を上記貫通孔に通して上記ナットの内側部材の雌ネジ部に螺合させ、
それによって、上記第2構造材を上記第1構造材に連結するようにしたことを特徴とする連結構造。
【請求項8】
請求項7記載の連結構造において、
上記第1構造材はその横断面形状が四角形であり、その中心位置には上記中空部が形成されていて、四辺には溝がそれぞれ形成されており、
上記第2構造材も上記第1構造材と同じであり、対向する二辺の溝を貫通するように上記貫通孔が穿孔されていて、
上記第2構造材は上記第1構造材に対して直交する方向から当接されて連結されることを特徴とする連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、構造材の中空部に任意に設置可能なナットとそのナットを使用した連結構造に係り、特に、雌ねじ部が設けられていない構造材の中空部に後付けで設置することができ、それによって、雌ねじ部を設けることなくその構造材に別の構造材を連結することができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
構造材の一つの柱部材は概略次のような構成をなしている。その横断面形状は略正方形であり、横断面形状において中心位置には中空部が設けられていて、この中空部は軸方向に延長されている。横断面形状において上記中空部を囲む四辺にはT溝が形成されている。
このような構成をなす柱部材の端面に同じ構成をなす別の柱部材の側面を当接させて連結する場合がある。この場合には予め構造材の中空部に雌ネジ部を設けておき、当接される上記別の柱部材側から雄ネジ部材を螺合させることにより上記柱部材同士を連結する。或いは、上記雌ネジ部を設ける代わりにセルフタッピングにより雄ネジ部材を螺合させ、それによって、上記柱部材同士を連結する。
【0003】
ところが、柱材の中空部を構成している壁の肉厚が薄い場合には、予め雌ネジ部を設けることができず、セルフタッピングにより螺合させることもできないという問題があった。
【0004】
そこで、中空部に雌ネジ部を設けることなく(セルフタッピングの場合も含む)柱材同士を連結する連結構造が提案されている。そのような連結構造を開示するものとして、例えば、特許文献がある。 特許文献1に記載された構造体は、支柱に桟が連結部材によって連結されたものである。上記連結部材は、垂直部と、上記垂直部に直交された水平部とから構成される。上記連結部材の垂直部は上記支柱の凹部に挿入される。上記支柱にはナット部材が設置されている。上記ナット部材は上記凹部内に設けられた補助凹部に一部に挿入された状態で上記支柱に係合されている。上記連結部材の垂直部はボルトを上記垂直部に貫通させ上記ナット部材に螺合させて上記支柱に固定されている。また、上記連結部材の水平部も、同様に、ボルトを上記水平部に貫通させ上記桟に挿入された板状のナット部材に螺合させて固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の構成では次のような問題があった。
特許文献1に記載された構造体では、ナット部材を支柱に係合させるために上記支柱の上端に乗る水平片と上記水平片から垂下され上記支柱の凹部に挿入される一対の垂下片から構成されている。また、桟にも複数の板状のナット部材が挿入される。また、連結部材を桟に固定するために上記桟の内部でボルトをナット部材に螺合させる作業を行わなければならない。そのため、構成が複雑で、連結作業も容易ではない。
【0007】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、雌ねじ部が設けられていない構造材の中空部に後付けで設置することができ、それによって、雌ねじ部を設けることなくその構造材に別の構造材を連結することを可能にするナットと連結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するべく本願発明の請求項1によるナットは、雌ネジ部を備えた内側部材と、上記内側部材の外側に拡径可能に被冠された外側部材と、を具備し、構造材の中空部内に挿し込まれ、上記構造材の外側から上記内側部材に雄ネジ部材を螺合させ、上記内側部材を上記雄ネジ部材側に引き寄せ、上記外側部材を拡径させて上記中空部内に押圧させ、上記内側部材と上記外側部材を上記中空部内に固定し、上記雄ネジ部材を撤去して上記内側部材と外側部材を上記中空部内に残置して構成されることを特徴とするものである。
又、請求項2によるナットは、請求項1記載のナットにおいて、上記外側部材は一対の外側部材要素から構成されていることを特徴とするものである。
又、請求項3によるナットは、請求項2記載のナットにおいて、上記内側部材の外周面はテーパ面となっていて、上記一対の外側部材要素の内周面もテーパ面となっていて、上記雄ネジ部材を上記内側部材に螺合させ、上記雄ネジ部材側に引き寄せることにより、上記両テーパ面の作用により上記一対の外側部材要素が拡径方向に移動して上記中空部の内周面に押圧され、それによって、上記内側部材と外側部材が上記構造材の中空部に固定されることを特徴とするものである。
又、請求項4によるナットは、請求項3記載のナットにおいて、上記構造材の中空部はその横断面形状が四角形であり、上記外側部材の横断面形状も四角形であり、上記一対の外側部材要素は四角形を横断面において対角線上に二分した形状をなすものであることを特徴とするものである。
又、請求項5によるナットは、請求項4記載のナットにおいて、上記内側部材の上記中空部内に挿し込まれる側の端には鍔部が設けられていて、上記鍔の横断面形状も四角形であることを特徴とするものである。
又、請求項6によるナットは、請求項4記載のナットにおいて、上記外側部材要素の上記鍔部と反対側の端の内周面にはストッパ部が設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項7による連結構造は、中空部を備えた第1構造材と、上記中空部内に設置された請求項1~請求項6の何れかに記載のナットと、貫通孔を備えた第2構造材と、上記第2構造材を上記第1構造材に当接させ、雄ネジ部材を上記貫通孔に通して上記ナットの内側部材の雌ネジ部に螺合させ、それによって、上記第2構造材を上記第1構造材に連結するようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項8による連結構造は、請求項7記載の連結構造において、上記第1構造材はその横断面形状が四角形であり、その中心位置には上記中空部が形成されていて、四辺には溝がそれぞれ形成されており、上記第2構造材も上記第1構造材と同じであり、対向する二辺の溝を貫通するように上記貫通孔が穿孔されていて、上記第2構造材は上記第1構造材に対して直交する方向から当接されて連結されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
以上述べたように本願発明の請求項1によるナットによると、雌ネジ部を備えた内側部材と、上記内側部材の外側に拡径可能に被冠された外側部材と、を具備し、構造材の中空部内に挿し込まれ、上記構造材の外側から上記内側部材に雄ネジ部材を螺合させ、上記内側部材を上記雄ネジ部材側に引き寄せ、上記外側部材を拡径させて上記中空部内に押圧させ、上記内側部材と上記外側部材を上記中空部内に固定し、上記雄ネジ部材を撤去して上記内側部材と外側部材を上記中空部内に残置して構成されるので、このナットを使用すれば、雌ねじ部を設けることなくその構造材に別の構造材を連結することができる。
又、請求項2によるナットによると、請求項1記載のナットにおいて、上記外側部材は一対の外側部材要素から構成されているので、外側部材の構成も簡単であり、そのような簡単な構成で上記効果を奏することができる。
又、請求項3によるナットによると、請求項2記載のナットにおいて、上記内側部材の外周面はテーパー面となっていて、上記一対の外側部材要素の内周面もテーパー面となっていて、上記雄ネジ部材を上記内側部材に螺合させ、上記雄ネジ部材側に引き寄せることにより、上記両テーパー面の作用により上記一対の外側部材要素が拡径方向に移動して上記中空部の内周面に押圧され、それによって、上記内側部材と外側部材が上記構造材の中空部に固定されるので、上記効果を確実なものとすることができる。
又、請求項4によるナットによると、請求項3記載のナットにおいて、上記構造材の中空部はその横断面形状が四角形であり、上記外側部材の横断面形状も四角形であり、上記一対の外側部材要素は四角形を横断面において対角線上に二分した形状をなすものであり、上記効果を確実なものとすることができる。
又、請求項5によるナットによると、請求項4記載のナットにおいて、上記内側部材の上記中空部内に挿し込まれる側の端には鍔部が設けられていて、上記鍔の横断面形状も四角形であり、上記効果を確実なものとすることができる。
又、請求項6によるナットによると、請求項4記載のナットにおいて、上記外側部材要素の上記鍔部と反対側の端の内周面にはストッパ部が設けられているので、過剰な締め付けを防止することができる。
又、請求項7による連結構造によると、中空部を備えた第1構造材と、上記中空部内に設置された請求項1~請求項6の何れかに記載のナットと、貫通孔を備えた第2構造材と、上記第2構造材を上記第1構造材に当接させ、雄ネジ部材を上記貫通孔に通して上記ナットの内側部材の雌ネジ部に螺合させ、それによって、上記第2構造材を上記第1構造材に連結するようにしたので、中空部に雌ネジ部が設けられていない場合であっても第1構造材と第2構造材を連結することができる。
又、請求項8による連結構造によると、請求項7記載の連結構造において、上記第1構造材はその横断面形状が四角形であり、その中心位置には上記中空部が形成されていて、四辺には溝がそれぞれ形成されており、上記第2構造材も上記第1構造材と同じであり、対向する二辺の溝を貫通するように上記貫通孔が穿孔されていて、上記第2構造材は上記第1構造材に対して直交する方向から当接されて連結されるので、中空部に雌ネジ部が設けられていない場合であっても第1構造材と第2構造材を連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態を示す図で、連結構造の斜視図である。
【
図2】本発明の一実施の形態を示す図で、連結構造の分解斜視図である。
【
図3】本発明の一実施の形態を示す図で、
図3(a)は柱部材の側面図、
図3(b)は
図3(a)のIIIb-IIIb断面図である。
【
図4】本発明の一実施の形態を示す図で、
図4(a)はナットの外側部材の分割要素を一方を一端側から視た図、
図4(b)はナットの外側部材の分割要素の一方を他端側から視た図、
図4(c)は
図4(a)のIVc-IVc矢視図である。
【
図5】本発明の一実施の形態を示す図で、
図5(a)はナットの内側部材の側面図、
図5(b)は
図5(a)のVb-Vb矢視図、
図5(c)は
図5(a)のVc-Vc矢視図である。
【
図6】本発明の一実施の形態を示す図で、
図6(a)は柱部材のナット用貫通孔内にナットを仮止めする前の状態を示す断面図、
図6(b)は柱部材のナット用貫通孔内にナットを仮止めした状態を示す断面図である。
【
図7】本発明の一実施の形態を示す図で、
図7(a)は
図6(a)のVIIa-VIIa矢視図、
図7(b)は
図6(a)のVIIb-VIIb矢視図、
図7(c)は
図6(b)のVIIc-VIIc矢視図、
図7(d)は
図6(b)のVIId-VIId矢視図である。
【
図8】本発明の一実施の形態を示す図で、柱部材のナット用貫通孔内にナットを固定した状態を示す断面図で、一対の外側部材要素の分割面を境にして斜めに切断した断面図である。
【
図9】本発明の一実施の形態を示す図で、
図8のIX-IX矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1から
図9を参照しながら、本発明の一実施の形態について説明する。
図1は、この一実施の形態による連結構造1全体を示す図であり、まず、連結対象物としての柱部材3、5があり、上記柱部材5の側面側に上記柱部材3の端面を直交する方向から押し当てて連結するものである。
図2に示すように、上記柱部材3の中心には中空部としての長さ方向(
図2中左下から右上に向かう方向)に延長されたナット用貫通孔7が設けられている。上記ナット用貫通孔7は略四角形の横段面形状を成している。
また、上記柱部材3の側面には、図示しない取り付け対象物を固定する際に用いられる図示しないTナットが挿入される複数のT字状の溝9が上記柱部材3の長さ方向(
図2中左下から右上に向かう方向)に延長されて設けられている。上記溝9は、上記柱部材3の中心側の横段面積が大きくなっている。
【0012】
上記柱部材5も、上記柱部材3と略同様の構成であるが、例えば、
図3に示すように、ボルト用貫通部21が設けられている。上記ボルト用貫通部21は、上記柱部材5の長さ方向(
図3中上下方向)に直交する方向(
図3(a)中紙面に直交する方向、
図3(b)中左右方向)に貫通しており、上記溝9の両内側面に後述するボルト61の頭部が通過できるように形成されたボルト頭部用凹部23、23と、上記溝9の底部に上記後述するボルト61の頭部が通過できるように形成されたボルト頭部用貫通孔25と、上記ナット用貫通孔7の上記ボルト頭部用貫通孔25の反対側に上記後述するボルト61の軸部が通過できるように形成されたボルト軸部用貫通孔27から構成される。
【0013】
又、ナット31があり、このナット31は予め柱部材3のナット用貫通孔7内の所定位置に仮止めにより設置されている。
図2に示すように、上記ナット31は外側部材33と上記外側部材33の内側に挿入される内側部材35とから構成される。上記外側部材33は、外形は略四角形の横段面形状を成しており、上記略四角形の横段面形状の対角線によって外側部材要素37、37に2分割される。
図4に示すように、上記外側部材要素37の分割面39側にはテーパー状凹部41が設けられている。上記テーパー状凹部41は、
図4(c)中右側から左側に向かって縮径されている。また、上記外側部材要素37の
図4(c)中左端側には上記外側部材要素37の
図4(c)中左側と上記テーパー状凹部41を連絡するボルト軸部用凹部43が設けられている。又、上記テーパー状凹部41とボルト軸部用凹部43との境界部にはストッパ部44が設けられている。
【0014】
上記内側部材35の内周面には、
図5に示すように、長さ方向(
図5(a)中左右方向)に延長された雌ネジ部51が設けられている。上記内側部材35の外周面53には上記外側部材要素37のテーパー状凹部41に対応したテーパー形状をなしたテーパー形状部55が設けられている。また、上記内側部材35の
図5(a)中右側は上記外側部材33の外部に露出される鍔部57となっている。
【0015】
上記外側部材要素37、37を上記分割面39、39を対向させた状態で組み合わせて上記外側部材33とし、上記内側部材35をテーパー形状部55側から上記テーパー状凹部41、41内に挿入して、上記ナット31が構成される。
【0016】
図6(a)、
図7(a)、及び、
図7(b)に示すように、上記ナット31は、上記柱部材3のナット用貫通孔7内に挿入されて、上記ナット用貫通孔7内に仮止めされる。上記ナット31を上記ナット用貫通孔7内に仮止めするには、まず、上記ナット31を上記柱部材3内に挿入する。このとき、上記ナット31は上記内側部材35の鍔部57側が上記ナット用貫通孔7の内側となるように指向されている。次に、
図6(a)、
図7(a)、及び、
図7(b)に示すように、上記内側部材35の雌ネジ部51に、ボルト61の雌ネジ部63を螺合させ、上記ナット31の
図6(a)中左端の面が上記柱部材3の
図6(a)中左端から突出しないように、上記ボルト61を回転させ、上記内側部材35を
図6(a)中左側に引き寄せ、
図6(b)、
図7(c)、及び、
図7(d)に示すような状態とする。このとき、上記外側部材33、33は、上記テーパー形状部55と上記テーパー状凹部41、41の作用によって上記柱部材3のナット用貫通孔7の内周面を押圧するように上記分割面39に直交する方向に互いに離間するように移動され、上記ナット31が上記ナット用貫通孔7内に保持され仮止めされる。このとき、
図7(c)中左上側の上記外側部材33は上記ナット用貫通孔7の
図7(c)中左側の面と上側の面を押圧し、
図7(c)中右下側の上記外側部材33は上記ナット用貫通孔7の
図7(c)中右側の面と下側の面を押圧する。
【0017】
上記ナット31が上記柱部材3のナット用貫通孔7内に仮止めされた後、上記ボルト61を反螺合方向に回転させて上記ナット31から撤去する。その後、柱部材3の端面に柱部材5の側面を当接させ、
図8に示すように、上記ボルト61を上記柱部材5のボルト用貫通部21に貫通させ上記柱部材3のナット用貫通孔7内のナット31の内側部材35の雌ネジ部51に螺合させ、上記柱部材5を上記柱部材3に連結する。
図8に示すように、上記ボルト61を回転させて上記ナット31の内側部材35を
図8中左側に引き寄せることで、
図9に示すように、上記外側部材要素37、37が上記テーパー形状部55と上記テーパー状凹部41、41の作用によって上記柱部材3のナット用貫通孔7の内周面をさらに押圧し、上記柱部材3と上記柱部材5が上記ボルト61と上記ナット31によって締結されて固定される。
【0018】
次に、この一実施の形態の作用について説明する。
柱部材3を柱部材5の側面に直交させた状態で連結するには次のような作業を行う。
まず、
図6(a)、
図7(a)、及び、
図7(b)に示すように、ナット31を上記柱部材3のナット用貫通孔7内に挿入して予め仮止めする。上記ナット31を上記ナット用貫通孔7内に仮止めするには、上記ナット31を上記内側部材35の鍔部57が設けられている側が上記ナット用貫通孔7の内側となるように上記柱部材3内に挿入した後、
図6(a)、
図7(a)、及び、
図7(b)に示すように、上記内側部材35の雌ネジ部51にボルト61の雌ネジ部63を螺合させ、上記ナット31の
図6(a)中左端の面が上記柱部材3の
図6(a)中左端から突出しないように、上記ボルト61を回転させ、上記内側部材35を
図6(a)中左側に引き寄せ、
図6(b)、
図7(c)、及び、
図7(d)に示すような状態とする。このとき、上記外側部材33、33は、上記テーパー形状部55と上記テーパー状凹部41、41の作用によって上記柱部材3のナット用貫通孔7の内周面を押圧するように移動され、上記ナット31が上記ナット用貫通孔7内に保持されて仮止めされる。
【0019】
次に、上記ボルト61と上記ナット31による上記柱部材3、5の締結作業を行う。
まず、上記ボルト61を上記柱部材3に仮止めされたナット31から撤去する。
次に、上記柱部材3の端面を上記柱部材5の側面に直交させた状態で当接させ、上記ボルト61を上記柱部材5のボルト用貫通部21に貫通させ、上記柱部材3のナット用貫通孔7内のナット31の内側部材35の雌ネジ部51に螺合させる。
次に、
図8に示すように、上記ボルト61を回転させて上記ナット31の内側部材35を
図8中左側にさらに引き寄せ、
図9に示すように、上記外側部材33、33が上記テーパー形状部55と上記テーパー状凹部41、41の作用によって上記柱部材3のナット用貫通孔7の内周面をさらに押圧するようにし、上記柱部材3と上記柱部材5を上記ボルト61と上記ナット31によって締結させて固定する。
尚、内側部材35の反鍔部57側の端面が外側部材要素37、37のストッパ部44、44に当接することにより、それ以上の内側部材35の引き寄せは規制される。
【0020】
次に、この一実施の形態の効果について説明する。
まず、雌ねじ部が設けられていない柱部材3のナット用貫通孔7内に後付けでナット31を設置することができ、そのナット31を使用して別の柱部材5を上記柱部材3に連結することができる。これは、柱部材3のナット用貫通孔7を構成する部分の肉厚が薄くて雌ネジ部を設けることができないような場合(セルフタッピングの場合を含む)に有効である。
また、ナット31の設置も簡単である。すなわち、内側部材35の外側に外側部材33を被冠させた状態で柱部材3のナット用貫通孔7内に挿し込み、外側からボルト61を内側部材35の雌ネジ部51に螺合させるだけでよいからである。
また、ナット31をナット用貫通孔7内に強固に固定することができる。すなわち、ボルト61を上記ナット31に螺合させ上記内側部材35が引き寄せられると、上記内側部材35のテーパー形状部55と上記外側部材33を構成する外側部材要素37、37のテーパー状凹部41、41の作用によって、上記外側部材要素37、37が上記ナット用貫通孔7の内周面を押圧するように移動されるからである。
これは、ボルト61を一旦撤去して柱部材5を柱部材3に押し当てて連結する場合も同様であり、簡単な作業によって柱部材5を柱部材3に強固に連結することができる。
【0021】
また、上記外側部材33は僅か2つの外側部材要素37、37から構成されているのでその構成も簡単であり、上記ナット31、ひいては、上記連結構造1をより簡易な構成とすることができる。
また、上記ナット31は、上記柱部材3を上記柱部材5に連結させる前に、上記柱部材3のナット用貫通孔7に仮止めしておくことにより、その後の上記柱部材3、5の連結作業を容易に行うことができる。
また、上記ナット用貫通孔7は略四角形の横段面形状を成しており、上記ナット31も外形が略四角形の横段面形状を成しており、上記外側部材33、33は上記ナット31を上記略四角形の横段面形状の対角線によって分割したものであるため、このとき、
図7(c)中左上側の上記外側部材33は上記ナット用貫通孔7の
図7(c)中左側の面と上側の面を押圧し、
図7(c)中右下側の上記外側部材33は上記ナット用貫通孔7の
図7(c)中右側の面と下側の面を押圧すし、上記内側部材35を上記ボルト61によって引き寄せることで効果的に上記ナット31を上記ナット用貫通孔7内に保持できるとともに、上記柱部材3を上記柱部材5に強固に固定することができる。
また、内側部材35の反鍔部57側の端面が外側部材要素37、37のストッパ部44、44に当接することにより、それ以上の内側部材35の引き寄せは規制されるので、過剰な締め付けを防止することができる。
【0022】
尚、本発明は前記一実施の形態に限定されるものではない。
まず、前記一実施の形態の場合には、所定形状の柱材を構造材の一例として挙げて説明したが、それに限定されるものではなく、様々な形態の構造材の連結に適用可能である。
又、本発明は図示したものに限定されず、様々な構成が考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、例えば、構造材の中空部に任意に設置可能なナットとそのナットを使用した連結構造に係り、特に、雌ねじ部が設けられていない構造材の中空部に後付けで設置することができ、それによって、雌ねじ部を設けることなくその構造材に別の構造材を連結することができるように工夫したものに関し、例えば、柱部材に対して別の柱部材を直交する方向から押し当てて連結する場合に好適である。
【符号の説明】
【0024】
1 連結構造
3 柱部材(構造材)
5 柱部材(構造材)
7 ナット用貫通孔(中空部)
31 ナット
33 外側部材
35 内側部材
37 外側部材要素
41 テーパー状凹部
44 ストッパ部
51 雌ネジ部
55 テーパー形状部
57 鍔部
61 ボルト(雄ネジ部材)