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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170062
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】電子制御式レギュレータ
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20241129BHJP
   G05D 16/20 20060101ALI20241129BHJP
   G05D 16/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
G05D16/20 Z
G05D16/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087018
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000153122
【氏名又は名称】株式会社ニッキ
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末永 直也
(72)【発明者】
【氏名】末松 幸倫
(72)【発明者】
【氏名】會澤 修太郎
【テーマコード(参考)】
3H062
5H316
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062AA16
3H062BB28
3H062CC01
3H062DD01
3H062DD10
3H062DD11
3H062EE06
3H062HH02
3H062HH10
5H316AA01
5H316BB01
5H316BB05
5H316DD20
5H316EE02
5H316FF16
5H316JJ13
5H316KK02
(57)【要約】
【課題】電子制御式レギュレータについて、電動モータへの電力供給が停止した閉弁状態でも調圧弁を介したスローリークの発生を防止できるようにする。
【解決手段】弁体22を有して軸線方向に往復動作可能な弁軸21Aと、高圧流体室2A側で弁体22が密着するシート面24を有する弁座23と、電動モータ30で弁軸21Aを往復動作させ流体圧力を調整する吐出圧調整手段と、からなる調圧弁20Aを備え、導入した高圧流体を調圧弁20Aで減圧・調整しながら吐出圧室3Aで設定圧力の減圧流体にして吐出する電子制御式レギュレータ1Aにおいて、吐出圧室3A側にシリンダ状の空間36Aが形成され、吐出圧室3A内の圧力を受けるピストン37Aが弁軸22に固定されて空間36A内を摺動可能とされており、電動モータ30を停止した閉弁時にピストン37Aで受けた流体圧力が弁体22をシート面24に押し付ける圧力荷重に変換されるものとした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入口および吐出口を形成したボディの内部に、弁体が同軸的に設けられて軸線方向に往復動作可能な弁軸と、前記導入口に続く高圧流体室側で前記弁体が密着可能なシート面を有する弁座と、電子制御された電動モータの駆動により前記弁軸を往復動作させて前記弁体と前記弁座の距離を変化させることで流体の圧力を調整する吐出圧調整手段と、からなる調圧弁を備えており、前記導入口から前記高圧流体室内に導入された高圧流体を前記調圧弁により減圧・調整しながら吐出圧室側で設定圧力の減圧流体として前記吐出口から吐出する電子制御式レギュレータにおいて、
前記吐出圧室側にシリンダ状の空間が形成されて、前記吐出圧室内の流体圧力を受けるピストンが前記弁軸の外周側に固定された状態で前記弁軸とともに前記空間内を摺動可能に配設されており、前記電動モータの駆動を停止した閉弁時に、前記ピストンで受ける流体圧力が前記弁体を前記シート面に押し付ける方向の圧力荷重に変換される、ことを特徴とする電子制御式レギュレータ。
【請求項2】
前記ピストンの外周シール径は、前記弁座のシート径よりも大径とされており、前記外周シール径による受圧面積から前記シート径の受圧面積を差し引いた分の圧力荷重が、前記弁体を前記シート面に押し付ける方向の圧力荷重として作用する、ことを特徴とする請求項1に記載の電子制御式レギュレータ。
【請求項3】
前記ピストンは、その内周側で前記弁軸と接着又は溶接により一体化されていることを特徴とする請求項1または2記載の電子制御式レギュレータ。
【請求項4】
前記ピストンは、前記弁軸とは別体で設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の電子制御式レギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス燃料等の高圧の流体を所定圧力に減圧・調整しながら吐出するレギュレータに関し、殊に、吐出する流体の圧力を電子制御により調整する電子制御式レギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧の流体を所定圧力に減圧して送出するレギュレータとしては、例えば特許第3594507号公報(特許文献1)や特開2011-256759号公報(特許文献2)に記載されているガス燃料用のものが周知である。このレギュレータは、弁体を同軸的に設けた弁軸と中央を弁孔が貫通して前記弁体が密着するシート面を有したドーナツ状のシート部とを備え、ボディの入口から流入したCNG等の高圧流体が、弁体の開口状態において弁体と軸線方向に往復摺動可能に設けた弁軸を、その弁体がシート面に所定圧力で密着して押圧されるように調圧バネで付勢した構造とされており、高圧のガス燃料を所定圧力に減圧・調整しながら吐出する構造である。
【0003】
しかし、このような従来のレギュレータの減圧構造において、レギュレータによる流体の吐出圧は機械的に調圧バネの荷重に依存するため、指定された吐出圧ごとに調圧バネを予め用意する必要がある。また、車両の燃料供給システムで使用するレギュレータにあっては、その調圧バネを指定されたセット高さに予め固定しておくことから、エンジン要求流量が多い場合には圧力降下が大きくなり、要求流量が少ない場合には圧力降下が小さくなるため、機械的に吐出圧範囲と流量範囲が限られてしまうという問題があった。
【0004】
一方、実開昭59-160842号公報(特許文献3)には、1次側ダイヤフラム室と2次側ダイヤフラム室を備えたLPG用レギュレータにおいて、1次側ダイヤフラム室内の調圧バネの付勢力を調節する付勢力調節手段として1次側ダイヤフラム室内に設けた圧力センサからの出力信号に対応しながらパルス制御されるステッピングモータを備えた調圧機構が提案されている。
【0005】
このように、電子制御されるステッピングモータを備えた調圧機構により、1次側ダイヤフラム室内の圧力が予め設定した圧力よりも高くなった場合は調圧バネの付勢力を弱くし、1次側ダイヤフラム室内の圧力が予め設定した圧力よりも低くなった場合は調圧バネの付勢力を強くして、1次側ダイヤフラム室内の圧力を所望の圧力に維持することを可能としている。
【0006】
しかしながら、このレギュレータにおいて所望する圧力に調節して維持できるのは1次側ダイヤフラム室内だけであり、2次側ダイヤフラム室から吐出する燃料の圧力はその室内に配設された調圧バネに依存するため、1種類のレギュレータで様々な吐出圧力に設定することは依然として困難であり、また、吐出圧範囲と流量範囲が機械的に限られるという問題も解決されてはいない。
【0007】
そこで、本願発明者・出願人らは、先に特願2022-088066(特許文献4)において、図6に示すような電動モータの電子制御によるレギュレータを提案した。この電子制御式レギュレータ1Cは、円柱状のボディ10Cの内部に、高圧流体を導入する流体導入路11の導入口から調圧弁20Cの弁部分までを構成する高圧流体室2Cと、その弁部分から減圧流体を吐出する流体送出路12の吐出口までを構成する吐出圧室3Cと、前記調圧弁20Cを操作しながら吐出する流体の圧力を所定圧力に減圧・調整する吐出圧調整手段としての圧力調整部4Cとを備えている。
【0008】
そして、その吐出圧調整手段が、電動モータ30の駆動により作動しながら先端側にスプリング25を設けた弁軸21Cを移動させて弁体22と弁座23との間の距離を変更する弁軸移動構造を構成しており、減圧流体の圧力を検出する圧力センサの値に基づいて前記電動モータ30でその弁軸移動構造を作動させながら、減圧流体の圧力が設定圧力を維持するように前記調圧弁20Cの開閉を行うものとしている。
【0009】
このように、前記弁軸21Cの先端側に配置した前記スプリング25だけで吐出圧力を調整するのではなく、センサで検出した吐出圧力を基に前記電動モータ30を駆動制御しながら前記弁軸21Cに設けた前記弁体22の開閉動作を行うようにして、設定した吐出圧力を維持する方式を採用したことにより、要求流量の変動に柔軟に対応可能としながら、設定された様々な吐出圧力を自動的に維持可能としている。
【0010】
ところが、このような前記電子制御式レギュレータ1Cにおいては、エンジン停止時などの前記電動モータ30への通電が停止した閉弁時に、前記弁体22を閉方向に作動させる荷重が前記弁軸21Cに設けた前記スプリング25の付勢力のみとなり前記弁座23のシート面24への押圧力が小さくなってしまうため、その部分からスローリークが発生しやすくなるという問題がある。また、前記弁軸21Cの外周シール径(Dp)<前記弁座23のシート径(Ds)の関係になる場合は、前記調圧弁20Cを介して前記吐出圧室3C側にスローリークがあると、開弁方向に作用する荷重が増大して流体が一層リークしやすい状態になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3594507号公報
【特許文献2】特開2011-256759号公報
【特許文献3】実開昭59-160842号公報
【特許文献4】特願2022-088066
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、電子制御式レギュレータについて、電動モータへの電力供給が停止した閉弁状態でも調圧弁を介したスローリークの発生を防止できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明は、導入口および吐出口を形成したボディの内部に、弁体が同軸的に設けられて軸線方向に往復動作可能な弁軸と、前記導入口に続く高圧流体室側で前記弁体が密着可能なシート面を有する弁座と、電子制御された電動モータの駆動により前記弁軸を往復動作させて前記弁体と前記弁座の距離を変化させることで流体の圧力を調整する吐出圧調整手段と、からなる調圧弁を備えており、前記導入口から前記高圧流体室内に導入された高圧流体を前記調圧弁により減圧・調整しながら吐出圧室側で設定圧力の減圧流体として前記吐出口から吐出する電子制御式レギュレータにおいて、前記吐出圧室側にシリンダ状の空間が形成されて、前記吐出圧室内の流体圧力を受けるピストンが前記弁軸の外周側に固定された状態で前記弁軸とともに前記空間内を摺動可能に配設されており、前記電動モータの駆動を停止した閉弁時に、前記ピストンで受ける流体圧力が前記弁体を前記シート面に押し付ける方向の圧力荷重に変換されることを特徴とするものとした。
【0014】
このように、吐出圧を受けるピストンを弁軸に設けて吐出圧室側の流体圧力を閉弁方向の圧力荷重に変換するようにしたことで、電動モータを停止した閉弁時であっても、吐出圧室側の圧力で調圧弁を閉弁方向に作動させる荷重を発生させながらセルフシール機能を発揮するものとなり、調圧弁を介したスローリークの発生を防止することが可能となる。
【0015】
また、この電子制御式レギュレータにおいて、前記ピストンの外周シール径が前記弁座のシート径よりも大径とされており、前記外周シール径による受圧面積から前記シート径の受圧面積を差し引いた分の圧力荷重が、前記弁体を前記シート面に押し付ける方向の圧力荷重として作用する構成とした場合は、ピストンの外周シール径が弁座のシート径よりも大きい分だけ、調圧弁を閉弁方向に動作させる圧力荷重が大きくなるため、スローリークの発生を一層防止しやすいものとなる。
【0016】
さらに、上述した電子制御式レギュレータにおいて、前記ピストンがその内周側で前記弁軸と接着又は溶接により一体化されている場合は、ピストン内径側のシール部材が不要になることから、製品の部品点数を削減することができる。
【0017】
或いは、前記ピストンが前記弁軸とは別体で設けられている場合は、製造工程における自由度の高いものとなる。
【発明の効果】
【0018】
弁軸にピストンを設けて吐出圧室側の流体圧力を閉弁方向の圧力荷重に変換するものとした本発明によると、電動モータへの電力供給が停止した閉弁時でも調圧弁を介したスローリークの発生を防止できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明における第1の実施の形態である電子制御式レギュレータの開弁した状態を示す縦断面図。
図2図1の電子制御式レギュレータの閉弁した状態を示す縦断面図。
図3】本発明における第2の実施の形態である電子制御式レギュレータの開弁した状態を示す縦断面図。
図4図3の電子制御式レギュレータの閉弁した状態を示す縦断面図。
図5図4の電子制御式レギュレータにおけるピストンおよび弁軸の異なる構造を示す拡大縦断面部分図。
図6】出願人が以前出願した電子制御式レギュレータを示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。
【0021】
図1は、本発明における第1実施の形態である電子制御式レギュレータ1Aの開弁状態を示し、図2は閉弁状態を示している。この電子制御式レギュレータ1Aは、主にガス燃料等の供給システム等において、高圧の流体であるガス燃料を所定圧力に減圧しながら送出する減圧手段として使用することを想定したものである。
【0022】
その構成を大きく分けて説明すると、金属製で円柱状に形成されたボディ10Aの内部において、高圧流体を導入する流体導入路11の導入口から調圧弁20Aの弁部分までの高圧部を構成している高圧流体室2A、前記調圧弁20Aの弁部分から減圧・調整された流体を吐出する流体送出路12の吐出口までの吐出圧部を構成している吐出圧室3A、吐出する流体の圧力を調整して維持するための吐出圧調整手段を備えている圧力制御部4Aからなる。
【0023】
前記調圧弁20Aは、傘状の弁体22が同軸的に設けられて軸線方向に往復動作可能な弁軸21Aと、前記弁体22が密着可能なシート面24を有するとともに中心に弁孔を形成したドーナツ状の弁座23と、前記弁軸21Aを往復動作させて前記弁体22と前記弁座23との距離を変化させることで吐出圧力を調整する吐出圧調整手段とからなる。
【0024】
前記吐出圧調整手段は、前記電動モータ30の駆動により作動して前記弁軸21を軸方向に移動させるための後述する弁軸移動構造を備えており、前記流体送出路12側に設置された、減圧後の流体の圧力を検出する圧力センサ(図示せず)の値に基づいて、前記電動モータ30で弁軸移動構造を動作させながら吐出する流体の圧力を設定圧力に維持するように前記調圧弁20Aの開閉を行うものである。なお、圧力センサは流体送出路12と並列に連通孔13で接続された圧力センサ設置部14内に設置するほか、任意の位置に設置することができる。
【0025】
前記電動モータ30は、巻線32を巻回した状態で支持している複数個のステータ31と、各前記ステータ31に対向するように複数個の磁石34を外周側に配設した略円筒状のロータ33とを有し、その中心軸線を前記弁軸21Aと同一にして回動可能に配設されている。
【0026】
前記電子制御式レギュレータ1Aにおいて、その弁軸移動構造は、前記弁軸21A先端側に設けた円柱状の運動軸50Aの外周面に形成してなる台形雄ネジ51と、前記電動モータ30の一部を構成している円筒状の部材であるロータ33の内周面に形成されて前記台形雄ネジ51に噛合する台形雌ネジ35との組合せからなる送りネジ機構であって、前記電動モータ30の駆動により前記ロータ33の内周面側と一体とされた前記台形雌ネジ35が前記台形雄ネジ51の周囲を回動する構成となっている。
【0027】
前記吐出圧調整手段は、前記電動モータ30と、これを駆動制御するドライバ40と、先端側の連結穴52に前記弁軸21Aの基端側を挿入して前記弁軸21Aと同軸的に連結された運動軸50Aとで構成されており、その下側に配置された前記弁軸21Aの前記弁体22を、前記弁座23の前記シート面24に対し電子制御された前記電動モータ30の駆動により、前記弁体22と前記シート面24が密着した閉弁位置(図2)と離間した開弁位置(図1)との間で軸線方向に往復摺動させて開口部面積を変化させながら、吐出する減圧流体の圧力が設定圧力と等しくなるように、自動的に調整を行うようになっている。
【0028】
前記運動軸50Aは、前記連結穴52と逆側の端部において内周面に平面部分を形成した挿入穴53が形成されており、前記ボディ10Aに基端61を固定して先端62の外周面に平面部分63を形成した回り止め軸60が、前記挿入穴53に対して軸線方向に摺動自在に挿入されており、互いの平面部分が密着することで運動軸50Aにおける回転動作を規制して軸線方向の直線動作に変換することによって、前記連結穴52により連結した前記弁軸21Aを移動させる構造である。
【0029】
このように、スプリング25だけで吐出圧力を調整するのではなく、圧力センサで検出している吐出圧力のデータを基に前記電動モータ30を駆動制御しながら、前記弁軸21Aに設けた前記弁体22の開閉や開弁位置の調整を行うことにより、設定した吐出圧力に調整・維持する方式を採用したものであり、要求流量の変動に柔軟に対応可能としながら、設定された様々な吐出圧力に対し部品の交換を要することなく1つの製品で自動的に維持することを可能としている。
【0030】
そして、本実施の形態においては、吐出圧室3A側の運動軸50Aの先端側に位置する部分にシリンダ状の空間36Aが形成されており、前記空間36A内でその内径とほぼ一致した外径を有するピストン37Aが、前記弁軸21A外周側に同軸的に固定された状態で前記電動モータ30及び前記運動軸50Aを内装した空間側と、前記調圧弁20Aの弁部分から流体送出路12の吐出口まで続く前記吐出圧室3A側との間を、Oリング70,71で外周側・内周側をシールされて気密・液密的に区画しながら、前記空間36A内で軸線方向に往復摺動可能な状態で配設されている。
【0031】
即ち、前記ピストン37Aが前記吐出圧室3A内の減圧後の流体圧力を受けながら、シリンダ状の前記空間36A内を軸線方向に往復摺動することで前記弁軸21Aを往復動作させる構造とされ、図2に示す前記電動モータ30の駆動を停止した閉弁状態で、前記ピストン37Aで受ける前記吐出圧室3A内の流体圧力が、前記弁体22を前記シート面24に押し付ける方向の圧力荷重に変換されるようになっており、この点が本発明における最大の特徴部分となっている。
【0032】
このように、前記吐出圧室3A側で吐出圧を受ける前記ピストン37Aを前記弁軸21Aに設けて、減圧後の流体圧力を閉弁方向の圧力荷重に変換する構成を採用したことで、前記スプリング25の付勢力に閉弁方向の圧力荷重が加わるため、前記調圧弁20Aを介したスローリークの発生を防止することが可能となる。
【0033】
図1に示した開弁状態から前記電動モータ30が停止した場合であっても、前記吐出圧室3A内の流体圧力で前記ピストン37Aが図示する上方向に移動し、前記運動軸50Aを押し上げ、前記弁軸21Aを閉弁方向に作動させる荷重を発生させることで、前記弁体22を前記シート面24に押し付ける圧力を増大させるセルフシール機能を発揮することができる。
【0034】
尚、図2の前記電動モータ30を停止した閉弁時において、前記ピストン37Aは、その基端側で突出した中央部を前記ロータ33の内径側に噛合している前記運動軸50Aの先端面に接した状態となっており、且つ、前記ピストン37Aを固定した前記弁軸21Aの基端側が運動軸50Aの連結穴52に固定されていることから、前記電動モータ30の駆動を停止した状態では軸線方向への動作が困難であるようにも見える。しかし、前記ロータ33における回転方向への抵抗は極めて小さく、前記電動モータ30の駆動を停止した状態であっても、前記運動軸50Aに対する軸線方向への僅かな付勢力で前記ロータ33は容易に回転しながら前記運動軸50Aが軸方向に移動するため、前記ピストン37A及び前記弁軸21Aにおける閉弁方向への動作を阻害する心配はない。
【0035】
また、本実施の形態においては、前記ピストン37Aの外周シール径(Dp)が前記弁座23における前記シート面24のシート径(Ds)よりも大径とされており、その外周シール径(Dp)による受圧面積からシート径(Ds)の受圧面積を差し引いた分の圧力荷重が、前記弁体22を前記シート面24に押し付ける方向の圧力荷重として作用するようになっている。
【0036】
即ち、前記ピストン37Aの外周シール径(Dp)が弁座22のシート径(Ds)よりも大きい分だけ、前記調圧弁20Aを閉弁方向に動作させる圧力荷重が大きくなって前記弁体22を前記シート面24に密着させる圧力が増大するため、スローリークの発生を一層防止しやすい状態を実現することになる。
【0037】
尚、本実施の形態において、前記ピストン37Aの内周側は、前記弁軸21Aの外周面に形成した溝の部分に前記Oリング71を介して固定されており、前記ピストン37Aと前記弁軸21Aは別体の構成となっているが、これらを溶接または接着により一体のものとしても良く、この場合は、前記Oリング71のようなシール部材が不要となって、部品点数の削減に繋がることになる。
【0038】
図3は、本発明における第2の実施の形態である電子制御式レギュレータ1Bの開弁時の状態を示し、図4はその閉弁時の状態を示している。この電子制御式レギュレータ1Bは、前記電子制御式レギュレータ1Aと同様に、主にガス燃料等の供給システム等において、高圧の流体であるガス燃料を所定圧力に減圧しながら吐出する減圧手段として使用することを想定したものである。
【0039】
その構成を大きく分けて説明すると、金属製で円柱状に形成されたボディ10Bの内部において、高圧流体を導入する流体導入路11の導入口から調圧弁80の弁部分までの高圧部を構成している高圧流体室2B、前記調圧弁80の弁部分から減圧流体を吐出する流体送出路12の吐出口までの吐出圧部を構成している吐出圧室3B、前記調圧弁80を操作して吐出する減圧流体の圧力を設定圧力に減圧・調整するための圧力制御部4Bとからなる点も、前記電子制御式レギュレータ1Aと同様である。
【0040】
前記調圧弁80は、円環状の弁体82が同軸的に設けられて軸線方向に往復動作可能であり流体が通過可能な通路83を有する筒状の弁軸81と、前記弁体82が密着可能なシート面85を有する円環状の弁座84と、前記弁軸81を往復動作させて前記弁体82と前記弁座84との間の距離を変化させることで流体の吐出圧力を調整する吐出圧調整手段とからなる。
【0041】
この吐出圧調整手段は、電動モータ30と、前記電動モータ30を駆動制御するドライバ40と、前記弁軸81の外周側で一体に形成された運動軸50Bとで構成されており、この吐出圧調整手段を貫通して配置された前記弁軸81の前記弁体82を、前記弁座84の前記シート面85に対し、電子制御された前記電動モータ30の駆動により前記弁体82と前記シート面85が密着した閉弁位置(図4)と離間した開弁位置(図3)との間で軸線方向に往復動作させて開口部面積を変化させながら、吐出する減圧流体の圧力が設定圧力と等しくなるように調整するものである点についても、前記電子制御式レギュレータ1Aと同様である。
【0042】
そして、本実施の形態の電子制御式レギュレータ1Bにおいても、前記運動軸50Bと一体とされた前記弁軸81基端側の前記吐出圧室3Bで流体送出路12の手前位置にシリンダ状の空間36Bが形成されており、前記空間36B内でその内径とほぼ一致した外径を有するピストン37Bが、筒状の前記弁軸81の基端部外周側に同軸的に固定された状態で、前記電動モータ30及び前記運動軸50Bを内装した空間側と前記吐出圧室3Bの前記流体送出路12側との間を、前記Oリング70,71で外周・内周側を気密・液密的に区画されながら、シリンダ状の空間33B内で軸線方向に往復摺動可能な状態で配設されている。
【0043】
即ち、前記ピストン37Bが前記吐出圧室3B側で減圧後の流体圧力を受けながら、シリンダ状の前記空間36B内を軸線方向に往復摺動することで弁軸81を往復動作させるものであり、図4に示した前記電動モータ30の駆動を停止した閉弁時に、前記ピストン37Bで受ける前記吐出圧室3B内の流体圧力が、前記弁体82を前記シート面85に押し付ける方向の圧力荷重に変換される構成となっており、この点も前記電子制御式レギュレータ1Aと共通しており、前記電動モータ30が駆動停止した閉弁時においても、前記調圧弁80を介したスローリークを防止することを可能としている。
【0044】
また、本実施の形態においても、図4に示したように、前記ピストン37Bの外周シール径(Dp)が前記弁座84における前記シート面85のシート径(Ds)よりも大径とされており、その外周シール径(Dp)による受圧面積からシート径(Ds)の受圧面積を差し引いた分の圧力荷重が、前記弁体82を前記シート面85に押し付ける方向の圧力荷重として作用するようになっている。
【0045】
そのため、前記ピストン37Bの外周シール径(Dp)が前記弁座82のシート径(Ds)よりも大きい分だけ、前記調圧弁80を閉弁方向に動作させる圧力荷重が大きくなることから、スローリークの発生を一層防止しやすい状態を実現している。
【0046】
尚、図5の拡大した縦断面部分図に示すように、前記弁軸81の基端側を、ピストン37Cの貫通孔に挿入した状態でその内周面にレーザー溶接等で固定する等して、前記弁軸81と前記ピストン37Cを一体のものとしてもよく、これにより、前記弁軸81の挿入部分に前記Oリング71等のシール部材が不要になるため、部品点数を削減することができる。
【0047】
以上、述べたように、電子制御式レギュレータについて、本発明により、電動モータへの電力供給が停止した閉弁状態であっても、調圧弁を介したスローリークの発生を防止できるようになった。
【符号の説明】
【0048】
1A,1B 電子制御式レギュレータ、2A,2B 高圧流体室、3A,3B 吐出圧室、4A,4B 圧力制御部、10A,10B ボディ、11 流体導入路、12 流体送出路、13 連通孔、14 圧力センサ設置部、20A 調圧弁、21A 弁軸、22 弁体、23 弁座、24 シート面、25 スプリング、30 電動モータ、31 ステータ、32 巻線、33 ロータ、34 磁石、35 台形雌ネジ、36A,36B 空間、37A,37B,37C ピストン、40 ドライバ、50A,50B 運動軸、51 台形雄ネジ、52 連結穴、53 挿入穴、60 回り止め軸、61 基端、62 先端、63 平面部分、70 Oリング、71 Oリング、80 調圧弁、81 弁軸、82 弁体、83 通路、84 弁座、85 シート面
図1
図2
図3
図4
図5
図6